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明細書 :無機系多孔質体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4874976号 (P4874976)
登録日 平成23年12月2日(2011.12.2)
発行日 平成24年2月15日(2012.2.15)
発明の名称または考案の名称 無機系多孔質体及びその製造方法
国際特許分類 C01G  23/053       (2006.01)
C04B  38/00        (2006.01)
C01G  25/02        (2006.01)
C01G  27/02        (2006.01)
B01J  20/06        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
FI C01G 23/053
C04B 38/00 303Z
C01G 25/02
C01G 27/02
B01J 20/06 A
G01N 30/88 101E
G01N 30/88 201G
G01N 30/88 B
G01N 30/88 201X
請求項の数または発明の数 8
全頁数 28
出願番号 特願2007-531054 (P2007-531054)
出願日 平成18年8月18日(2006.8.18)
国際出願番号 PCT/JP2006/316671
国際公開番号 WO2007/021037
国際公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
優先権出願番号 2005238208
優先日 平成17年8月19日(2005.8.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年10月25日(2007.10.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】390030188
【氏名又は名称】ジーエルサイエンス株式会社
発明者または考案者 【氏名】中西 和樹
【氏名】藤田 晃司
【氏名】小西 順子
【氏名】平尾 一之
個別代理人の代理人 【識別番号】100063842、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 三雄
【識別番号】100118119、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 大典
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 国際公開第2005/051864(WO,A1)
特開2004-122056(JP,A)
特開2002-028485(JP,A)
特開2002-293657(JP,A)
特開2003-095764(JP,A)
特開平06-107461(JP,A)
特開平10-182261(JP,A)
特開2004-099418(JP,A)
特開2001-172089(JP,A)
特開2002-362918(JP,A)
小西 順子 ほか,チタニアコロイドを用いたゾル-ゲル系における相分離多孔体構造形成,日本セラミックス協会2004年年会講演予稿集,社団法人 日本セラミックス協会,2004年 3月22日,第223ページ下段
調査した分野 C01G1/00-23/08
C04B38/00
B01J20/06
G01N30/88
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamII)
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
pH3.5以下の強酸性水溶液中に於いて、極性溶媒の存在下で、加水分解性4族元素化合物を加水分解し、重合して反応溶液のゲル化を行う工程、生成したゲルを焼成する工程を含むことを特徴とする4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
【請求項2】
pH3.5以下の強酸性水溶液中に於いて、極性溶媒の存在下で、加水分解性4族元素化合物を加水分解し、重合して反応溶液のゲル化を行う工程、生成したゲルを密閉加熱処理を行う工程を含むことを特徴とする4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
【請求項3】
pH3.5以下の強酸性水溶液中に於いて、極性溶媒の存在下で、加水分解性4族元素化合物を加水分解し、重合して反応溶液のゲル化を行う工程、生成したゲルを密閉加熱処理を行う工程、以上の工程により得られた多孔質ゲルを焼成する工程を含むことを特徴とする4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
【請求項4】
生成したゲル中の有機成分を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
【請求項5】
反応溶液中の水の濃度を変化させることにより、貫通孔径及び細孔径を制御することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
【請求項6】
反応溶液中に強酸を滴下し、ゲル化反応速度を制御することにより、貫通孔径及び細孔径を制御することを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
【請求項7】
密閉加熱処理によって、細孔径を制御することを特徴とする請求項2~5の何れか1項に記載の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
【請求項8】
密閉加熱処理によって、多孔質体の比表面積を制御することを特徴とする請求項2~7の何れか1項に記載の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
本発明は、無機系多孔質体及びその製造方法に関するものであり、特に、4族元素アルコキシドの相分離を伴うゾルゲル法を用いて作成した無機系多孔質体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なクロマトグラフィー用カラムあるいは吸着材としては、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等の有機ポリマーよりなるものと、シリカゲル等の無機系充填材を筒内に充填したもの、さらには円柱状一体型多孔質体の側面を密閉して両端から通液できるようにしたものが知られている。
【0003】
有機系の材質で構成されたカラムは、低強度のために耐圧性が低い、溶媒により膨潤・収縮してしまう、加熱殺菌不可能である等の難点がある。従って、こうした難点を解消するカラムとして、無機系の材料、特にシリカゲルで構成されたカラムが汎用されている。
【0004】
しかし、シリカゲルカラムのうち、充填材を筒内に充填したものはカラム内に試料を流通させるために要する圧力が高く、高速分離に適さないという難点がある。
【0005】
一方、シリカ系多孔質体ではすでに細孔構造の形成と広範な構造の制御が実現され、液体クロマトグラフィー用の一体型分離媒体としての高性能が確認されている。
【0006】
特に本発明の発明者、中西は、ケイ素アルコキシドの加水分解重縮合によるゾルゲル法に於いて、スピノーダル分解による相分離を誘起し、その過度的構造をゲル化により固定し、共連続構造を有するシリカマクロ多孔体の発明に至り、国際特許出願をしている(WO2003/002458)(特許文献1)。
【0007】
又、シリカチタニア多孔質体をゾルゲル法により製造する発明は、幾つか提案されている。例えば、特開平6-107461(特許文献2)、特開2001-172089(特許文献3)等がある。
【0008】
又、タンパク質の細胞内でのリン酸化は、代謝においてあらゆる影響を与えており、その過程を調べるため、構造解析としてリン酸化ペプチドを分析することが重要である。リン酸化ペプチドは、混在する他のペプチドに比べて、微量である。質量分析計における感度も低く、微量のリン酸化ペプチドを直接HPLC分析することは、不可能である。そのため、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによりリン酸化ペプチドだけを選択的に濃縮精製する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】
国際公開第2003/002458号
【特許文献2】
特開平6-107461号公報
【特許文献3】
特開2001-172089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一体型多孔質体によるカラムは、カラム圧は低く高速分離が可能である。しかし、充填型、一体型でも基材であるシリカの化学的性質として、強塩基性条件で長時間使用すると基材が徐々に溶解して性能が損なわれるという難点が判明した。これは、従来のシリカを基材とする無機系充填剤一般についても共通の問題である。
【0011】
すなわちシリカは酸性酸化物であって、水に対する溶解度も高い酸化物であるため、強塩基性の条件下で水を含む溶媒に長時間接触すると、ケイ素-酸素-ケイ素結合が切断されて表面から溶解が起こり、物質分離に必要な表面積が失われてしまう。
【0012】
特許文献2に於いては、二酸化チタンモノリスの製造であるが、その製法上高温での加熱が必須条件であるが、この様な場合、巨大空孔の所謂マクロ細孔の形成が困難となり、マクロ細孔と通常ナノメートル領域の細孔、所謂メソ細孔の両者同時制御は至難である。
【0013】
また、特許文献3は、所謂シリカ系多孔質体であり、チタニア含量10%以下であって、上述したシリカ系の欠点は払拭し得ない。
【0014】
しかし、上述のような固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによりリン酸化ペプチドだけを選択的に濃縮精製する方法は、金属の固定化から始まり、途中の洗浄工程を経て、最終的にリン酸化ペプチドが得られるという煩雑な工程が必要で、時間も掛かってしまう。一方、チタニアゲルのリン酸化合物を選択的に保持する特性を利用して、これらのリン酸化ペプチドを分析する手法も考案されてきている。
【0015】
しかし、従来の方法から得られるチタニアゲルは、粒子状であり流れる液体との接触部分は少なく、より強い選択性を持つチタニアゲルが要求されていた。
【0016】
そこで、本発明者等が研究したところ、酸化チタンを始めとする4族元素化合物のみの構成による多孔質体が化学的重合反応によって形成できることが解明できた。これにより、一体型であって且つ気孔径及び気孔分布を適切に制御した非シリカ無機系多孔質体、就中4族元素化合物多孔質体の完成に至り、従来の充填型および一体型シリカカラムが有する欠点を生じないことを見いだした。
【0017】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。その目的は、従来のシリカ系多孔質体が有する課題を解決し、圧力損失が小さく、取扱いの容易な無機系多孔質体、就中4族元素化合物多孔質体を提供することにある。また、他の目的は、強塩基性条件下でも性能劣化することなく分離や吸着に使うことのできる、無機系多孔質体を提供することにある。
【0018】
更に、上記ゾルゲル法によっては、構造制御の困難であった酸化チタンを始めとする無機系多孔質体の製造方法を提供することにある。
【0019】
更に、本発明の他の目的は、4族元素多孔質体特有の性質によるエネルギー変換、センサー等機能資材の提供の他、チタニアは、紫外線によって活性酸素を発生し有機物を分解するために、消臭や減菌に利用でき、またクロマトグラフにおいては、リン酸化物の特異的な吸着性を利用し、生体内タンパク質のリン酸化代謝過程を調べるカラムとして利用され、またジルコニアは硫酸を担持させ触媒などに使われて、ハフニアはその撥水性の利用も出来る等の産業上の利用範囲拡大に資することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的達成の手段は、一つは、4族元素化合物より成り、孔径100nm以上で3次元網目状に連続した貫通孔と、この貫通孔を形成するゲル骨格に形成された孔径2~100nmの細孔とを有し、貫通孔と細孔の容積の和に対して、細孔の占める容積率が10%以上であることを特徴とする無機系多孔質体である。
【0021】
一つは、ゲル骨格1g当りの細孔の容積が10cm/g以下であって、貫通孔と細孔の容積の和に対して、貫通孔の占める容積率が20~90%であることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0022】
一つは、4族元素化合物が、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化ハフニウム(HfO)のいずれかを主成分とすることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0023】
一つは、4族元素化合物が二酸化チタン(TiO)であることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0024】
一つは、4族元素化合物が二酸化ジルコニウム(ZrO)である事を特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0025】
一つは、4族元素化合物は加水分解性金属化合物を原料とすることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0026】
一つは、加水分解性金属化合物は金属アルコキシドであることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0027】
一つは、金属アルコキシドはチタンアルコキシドであることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0028】
一つは、金属アルコキシドはジルコニウムアルコキシドであることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0029】
一つは、チタンアルコキシドはチタニウムn-プロポキシドであることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0030】
一つは、ジルコニウムアルコキシドはジルコニウムn-プロポキシドであることを特徴とする前記の無機系多孔質体である。
【0031】
一つは、前記の無機系多孔質体を用いることを特徴とするクロマトグラフィーカラムである。
【0032】
一つは、前記の無機系多孔質体を用いることを特徴とするリン酸化合物の分離あるいは濃縮用吸着材料である。
【0033】
一つは、前記の無機系多孔質体を用いることを特徴とする硫酸化合物の分離あるいは濃縮用吸着材料である。
【0034】
一つは、酸性水溶液中に於いて、極性溶媒の存在下で、4族元素化合物を加水分解し、重合して反応溶液のゲル化を行なう工程、生成したゲルを焼成する工程を含むことを特徴とする4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0035】
一つは、酸性水溶液中に於いて、極性溶媒の存在下で、4族元素化合物を加水分解し、重合して反応溶液のゲル化を行う工程、生成したゲルを密閉加熱処理を行う工程を含むことを特徴とする4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0036】
一つは、酸性水溶液中に於いて、極性溶媒の存在下で、4族元素化合物を加水分解し、重合して反応溶液のゲル化を行う工程、生成したゲルを密閉加熱処理を行う工程、以上の工程により得られた多孔質ゲルを焼成する工程を含むことを特徴とする4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0037】
一つは、生成したゲル中の有機成分を除去する工程を含むことを特徴とする前記の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0038】
一つは、反応溶液中の水の濃度を変化させることにより、貫通孔径及び細孔径を制御することを特徴とする前記の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0039】
一つは、反応溶液中に強酸を滴下し、ゲル化反応速度を制御することにより、貫通孔径及び細孔径を制御することを特徴とする前記の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0040】
一つは、密閉加熱処理によって、細孔径を制御することを特徴とする前記の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0041】
一つは、密閉加熱処理によって、多孔質体の比表面積を制御することを特徴とする前記の4族元素化合物より成る無機系多孔質体の製造方法である。
【0042】
本発明無機系多孔質体およびそれを使用したカラムは、以下のような多大の効果を有する。
【0043】
無機系多孔質体を部分的に密封した一体型カラムであるため、充填状態によって流量が変化するという問題がおこらず、ロット間のばらつきが小さい。
【0044】
又、孔径及び容積率が適切に制御された貫通孔を有するので、圧力損失が小さい。従って、入口圧力が同じであれば、単位時間当たりの流量が多くなり、従来よりも短時間で分析することができる。しかも細孔に固定されたすべての官能基と流体とが反応するので、官能基の消費効率が高い。従って、短いカラムで分析可能となる。
【0045】
又、血液注入カテーテルや注射器に用いるときの取扱いが容易である。
【0046】
又、流体の流路の形状・サイズの均一性が高いので、分析物質の溶液-カラム内部表面間の分配が場所によってばらつかない。
【0047】
又、シリカを主成分とするカラムが塩基性条件での使用によって性能劣化するのに比べて、本発明無機系多孔質材料はpH=13程度の塩基性条件においても、表面積や細孔構造などの変化がなく、分離媒体および吸着剤としての性能を損なわない。
【0048】
又、本発明のチタニアゲルは、リン酸化合物に対して強い選択性を有し、且つ化学的に安定で試料精製や前処理に有効である。
【0049】
又、本発明のジルコニアゲルは、硫酸化合物に対して強い選択性を有し、且つ、化学的に安定で試料精製や前処理に有効である。
【0050】
又、本発明の無機系多孔質体は、トリプシン、アルカリフォスファターゼ、グルコースイソメラーゼ等の酵素や白金、パラジウム等の触媒あるいは、オクタデシル基等の官能基が担持されて、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー用カラムに好適に利用され得る。また、シリンジ先端やキャピラリー内部に固定して通液することにより、特定のリン酸化合物を分離あるいは濃縮するために用いることができる。また、多数のタンパク質混合物から、特異吸着によって特定の性質をもったものだけを吸着・分離するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】多孔質二酸化チタンゲルの走査電子顕微鏡写真
【図2】水銀圧入測定図
【図3】試料の窒素吸着測定図で吸着—脱着等温線図
【図4】細孔径分布図
【図5】試料の電界放射型走査顕微鏡写真
【図6】蒸溜水の量の変化によるモルフォロジーの変化図
【図7】塩酸水溶液の変化によるモルフォロジーの変化図
【図8】熱処理温度依存性を示すX線回析パターン
【図9】熱処理した多孔質二酸化チタンゲルの走査電子顕微鏡写真
【図10】熱処理した多孔質二酸化チタンゲルの水銀圧入測定図
【図11】トリブロック重合体の変化によるモルフォロジーの変化図
【図12】本発明により得られた多孔質体の水銀圧入測定図
【図13】多孔質体の窒素吸着測定図で吸着一脱着等温線図
【図14】細孔径分布図であり、(a)は累積容積図、(b)は微分容積図
【図15】窒素吸着の測定結果表
【図16】本発明モノリスによるリン酸化合物の完全分離を示すクロマトグラム
【図17】チタニア膜モノリスによる同物質の不完全分離を示すクロマトグラム
【図18】チタニア膜モノリスによる同物質の不完全分離を示すクロマトグラム
【図19】未精製ペプチド混合物のクロマトグラム
【図20】本発明モノリスで精製したペプチド混合物のクロマトグラム
【図21】未精製ペプチド消化物のクロマトグラム
【図22】本発明モノリスで精製したペプチド消化物のクロマトグラム
【図23】シリカゲル充填材によるフェノール/ピリジン分離分析のクロマトグラム
【図24】本発明モノリスによるフェノール/ピリジン分離分析のクロマトグラム
【図25】本発明により得られた多孔質体の走査電子顕微鏡写真
【図26】本発明により得られた多孔質体を使用したカラムによるリン酸化試料のクロマトグラム
【図27】本発明により得られたジルコニウムゲルの走査電子顕微鏡写真
【図28】水銀圧入測定図
【図29】焼成温度の変化による結晶構造変化図
【図30】極性溶媒変化によるモルフォロジーの変化を示す走査電子顕微鏡写真図
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下本発明について詳細に説明する。本発明は、原理的には上記中西発明の所謂ゾルゲル反応によるものである。
【0053】
所謂ゾルゲル反応とは、重合可能な低分子化合物を生成し、最終的に凝集体や重合体を得る反応を云う。
【0054】
一般的なケイ素アルコキシドの場合では、加水分解速度が遅く、それを促進するために酸溶液を加えることも行われるのに対し、金属アルコキシドを用いたゾルゲル法は、金属アルコキシドの加水分解が生じ、放出されるアルコールにより水の比率が減り、重縮合が同時に起こりゲル化される。元来、チタンアルコキシド等の4族元素化合物は、水だけで急速に加水分解と重縮合が生じ、急速に固化してしまう。そのため、従来ではマクロ孔を持たないコロイドゲルをさらに焼結などで縮合させゲル化させていたが、機械的強度が弱かった。
【0055】
又、ジルコニウムアルコキシドでは、安定化した結晶構造を作成するには、1000℃以上での高温焼成が行われているが、高温焼成では、収縮により製造工程で割れ目が生じるため、目的に応じた固体を作成することが難しかった。
【0056】
本発明は、例えば極性溶媒を添加した酸性溶液中においてチタンアルコキシド等の4族元素化合物を加水分解・重合して、その反応溶液のゲル化を行った後、生成した多孔質ゲル中の有機成分を除去し、その後焼成することによって製造される4族元素化合物、詳しくは4族元素酸化物の無機系多孔質体及びその製造方法である。
【0057】
反応溶液は4族元素化合物と水と酸性溶液を含んで、加水分解及び重合反応をさせる溶液であり、極性溶媒を添加して均一化を図ることもある。
【0058】
本発明で使用される、4族元素化合物、詳しくは4族元素酸化物の無機系多孔質体の原料としての4族元素化合物としては、加水分解性金属化合物等が挙げられる。
【0059】
本発明の無機系多孔質体は1種又は2種以上の4族元素化合物詳しくは4族元素酸化物から成り、その原料としての4族元素化合物として1種又は2種以上の4族元素化合物、特に加水分解性金属化合物を用いることが出来る。
【0060】
加水分解性金属化合物としては、アルコールの水酸基の水素を金属原子で置換した金属アルコキシド等が挙げられる。
【0061】
金属アルコキシドとしては、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ハフニウムアルコキシド等が挙げられる。
【0062】
チタンアルコキシドとしては、チタニウムn-プロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムn-ブトキシド、チタニウムs-ブトキシド、チタニウムt-ブトキシド等が挙げられる。
【0063】
ジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn-ブトキシド、ジルコニウムs-ブトキシド、ジルコニウムt-ブトキシド等が挙げられる。
【0064】
ハフニウムアルコキシドとしては、ハフニウムプロポキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムn-ブトキシド、ハフニウムs-ブトキシド、ハフニウムt-ブトキシド等が挙げられる。
【0065】
さらにこれらの混合物およびこれらを適宜重合させて酸化物含量を上げた物等を挙げることができる。またオキシ塩化ジルコニウムなどの4族元素のオキシ塩化物も同様に用いることができる。
【0066】
又、テトラクロロチタンやテトラクロロジルコニア等の4族元素ハライド化合物等を用いることも出来る。但し、これらのハライド化合物では、加水分解の進行によって酸が生じてくるため、添加する酸などの細かい制御が必要となる。
【0067】
これまで述べたような4族元素化合物は総て加水分解性を有しており、本発明に必須であるゾルゲル反応の原料となり、その反応を進行させ、有効に作用する。その結果として、4族元素化合物、詳しくは4族元素酸化物の多孔質体を製造することが出来る。
【0068】
本発明では、上述のような急速な重縮合を抑えるために強酸条件下で加水分解・重合反応を行なう。強酸条件下では、加水分解された金属水酸化物が比較的反応性の低い多量体となるとともにイオン化し、求核攻撃が抑えられ、急速な重縮合反応を抑制することになる。
【0069】
一方、加水分解も同時に生じ、アルコールが作成されるので、酸の抑制効果も溶液中では減ってしまう。そのため、常に抑制させるためにpH3.5以下を維持できるように、酸性溶液を滴下添加することが望ましい。均一な溶液を得るために2分以上、-5℃以上10℃以下の低温で撹拌しながら反応を行うことが望ましい。
【0070】
酸性溶液としては、塩酸、硝酸等の鉱酸、酢酸、クエン酸等の有機酸等が使用できるが、十分な抑制効果を得るためには、10重量%以上の濃度が望ましい。
【0071】
次に、水を加えて撹拌することで、さらに加水分解を進行させる。加える水の量が多い程、加水分解の進行が早くなり、さらに酸濃度が下がるため重縮合も早くなり、最終のモノリスの貫通孔は小さくなる。この添加する水の量によって、貫通孔の孔径を制御することができる。
【0072】
加える水量は、最初の酸溶液に含まれる水の容量によるが、反応溶液に含まれる水量としては、完全に加水分解を起こさせるためには、金属アルコキシドの2~100倍モル程度が好ましい。
【0073】
水を滴下しながら、添加した方が溶液温度変化が少なくなり、アルコール分の蒸発が抑えられるので好ましい。
【0074】
これに更に、反応溶液を均一化させるため、極性溶媒、例えばホルムアミドなどを添加し撹拌する。全体量によるが、均一化させるためには、滴下しながら2分以上の撹拌が望ましい。酸性条件下では、重縮合に対して逆反応の加水分解が進み易く、ゾルゲル転移による反応系の固化に長時間を要するので、極性溶媒から生じる化合物によって中和させる事が望ましい。例えば、ホルムアミドの場合では、加えた酸量の0.5mol以上が好ましく、加水分解により生じるアンモニアによって酸が中和されることになる。
【0075】
この均一化した反応溶液を目的に応じた密閉容器に入れ、固化させることで4族元素化合物のモノリス多孔質体が得られる。尚、密閉容器の形状としては、使用用途により、種々の形状を適宜選択すれば良く、どのような形状を使用しても構わない。又、密閉容器の材質も種々の材質を適宜選択すれば良い。例えば、モノリス多孔質体として、密閉容器から取り出して使う場合では、密閉容器の内表面とモノリス多孔質体が結合しないようなポリマー材質が好ましい。
【0076】
逆に、容器内部にモノリス多孔質体を作る場合には、容器内面とモノリス多孔質体が反応するガラスやフューズドシリカキャピラリーやガラス化などの反応性を付加した容器が好ましい。
【0077】
得られるモノリス多孔質体の貫通孔及び細孔の孔径、形状などは、これら使用するアルコキシド、酸、水、極性溶媒の比率で制御することができるので、目的に応じたモノリス多孔質体を自由に作れることになる。
【0078】
恒温水槽中に保持することにより固化するゾルゲル反応に於いて、転移と相分離が同時に起こり、溶媒リッチ相と骨格相とからなるゲルが生成する。この反応抑制剤としての酸の使用により、貫通孔とゲル骨格が互いに連続した共連続構造が得られる。得られたゲルは、ゲル骨格にポリマーなどの添加なしで細孔が生成する。この理由については判然としないが、重合過程で生成する一次粒子のサイズが大きいためかと推測される。
【0079】
又、この方法において、更にポリマーを添加すると、その割合に応じて加水分解と重縮合の速度が変化するため、ポリマーの添加無しの場合から添加量に応じた細孔の孔径、形状などの態様を変化させることができ、目的に適した細孔形成を行うことができる。ポリマーの添加なしで作成する方法が基本となるが、この発明手法では、加水分解と重縮合を同時に起こすことが出来るため、ポリマー添加の緩衝効果から、骨格形成時間を予測し、孔径、形状など細孔形成を広範囲に制御することが可能になる。
【0080】
ゲル形成後、約24時間熟成させ所望温度で乾燥させ多孔質4族元素酸化物ゲルを得る。得られた多孔質4族元素酸化物ゲルには、孔径の揃った貫通孔が三次元網目状に絡み合った構造で形成される。該多孔質4族元素酸化物ゲル中の有機成分を除去し、その後焼成することによって、4族元素酸化物多孔質体が製造される。
【0081】
多孔質ゲルの固化したものを塩基性水溶液などに浸漬して密閉条件下で100℃以上に加熱する密閉加熱処理工程を、加水分解工程と焼成工程との中間に加えると、細孔径及び細孔容積率を制御し易くなる。尚、水の塩基性は必ずしも必須条件ではなく、水の特性を十分活かせる水溶液であれば、これに限定されない。
【0082】
密閉加熱処理の一つである水熱処理は、シリカゲルなどの多孔質体では、侵食効果があることが知られているが、本発明の4族元素化合物では侵食され難い。本発明では、加水分解と重縮合を同時に起こす特徴があるため、焼成前では、骨格が緩い状態で結合されており、その多孔質体内の含有水分により、又は水などを添加して密閉状態で加熱処理を行う事で、貫通孔を変化させずに状態を変化させることができ、細孔径を自由に制御することが出来る。
【0083】
求める細孔径の寸法を使用溶媒種、加熱温度、反応時間の選択で、自由に調整することが出来るため、結果として目的に応じた表面積を持つモノリスゲルを作成する事ができる。この調整は、加熱温度、加熱時間の選定、ゲル中の含有水だけでも行うことが出来るが、水を含む溶媒を添加することもでき、水を含む溶媒の存在下ならば、どのような温度でも密閉状態であれば良い。又、この処理によって、表面の状態を変化させることも可能になり、試料成分との相互作用も制御することが可能となる。
【0084】
又、極性溶媒に代えて、水溶性有機高分子、界面活性剤、両親媒性物質を用いても良い。
【0085】
更に、極性溶媒に水溶性有機高分子、界面活性剤、両親媒性物質を加えることで、ゲル化速度を、これらの添加物質の緩衝効果により制御することができ、細孔の孔径、形状などをより広範囲で自由に作成することができる。
【0086】
そして、本発明の4族元素化合物による無機系多孔質体は、図1に示すように、μmサイズの骨格(ゲル骨格)とμmサイズの複数の貫通孔が周期的に形成され、絡み合い、又、網目構造を作るゲル骨格は細孔を有している。従って、無機系多孔質体は、流路となる貫通孔と細孔を有する二重孔構造を形成している。
本発明の貫通孔は所謂マクロ細孔を意味し、本発明の細孔は所謂メソ細孔を意味するもので、貫通孔は無機系多孔質体の一端に開口し、途中枝分れし、他の貫通孔と合流し、他端に開口している。
【0087】
又、本発明の4族元素化合物、詳しくは4族元素酸化物による無機系多孔質体は、貫通孔とこの貫通孔を形成するゲル骨格に形成された細孔の孔径、細孔の全容積、カラムとして使用する場合の全容積に対する貫通孔の容積率、細孔と貫通孔との合計容積に対する細孔の容積率を重要な構成要件とする。無機系多孔質体やカラムの立体構造は、反応系の組成及び温度やpH値、有機高分子の分子量、その他4族元素化合物の反応性に影響を及ぼす各種条件によって変わる。従って、立体構造の制御の方法を一律に述べることは困難であるが、前述した条件が同じであれば細孔径等がほぼ同じ目的物を再現性良く提供できる。
【0088】
中間物質として生成する多孔質ゲルからの有機成分たる有機高分子の除去は、乾燥前のゲルを洗浄することによってある程度なすことができる。又、除去成分によっては、密閉加熱処理で有機成分たる有機高分子の除去を兼ねることもできる。しかし、洗浄過程の後に有機高分子が分解あるいは燃焼する温度までゲルを充分長時間加熱してこれを完全に除去する方が有効である。
【0089】
本発明4族元素化合物、詳しくは4族元素酸化物による無機系多孔質体の製造に使用する有機高分子は、理論的には適当な濃度の水溶液となし得る水溶性有機高分子であって、且つ4族元素化合物の加水分解によって生成するアルコールを含む反応系中に、均一に溶解し得るものであれば良いが、具体的には高分子金属塩であるポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、高分子酸であって解離してポリアニオンとなるポリアクリル酸、高分子塩基であって水溶液中でポリカチオンを生ずるポリアリルアミンおよびポリエチレンイミン、あるいは中性高分子であって主鎖にエーテル結合を持つポリエチレンオキシド、側鎖にピロリドン環を有するポリビニルピロリドン等が好適である。また界面活性を有する化合物、例えばポリエーテルを含むポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールそれぞれのブロック鎖から構成されるジブロックあるいはトリブロック共重合体(Pluronic F127, P123, F68, L122,L121ほか、いずれもドイツBASF社製品)も好適に用いられる。さらにハロゲン化アルキルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸(LDA)等の両イオン性界面活性剤も同様に用いることができる。
【0090】
有機高分子に代えて、極性溶媒であるホルムアミド、アセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド等の酸アミド類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールおよび糖アルコールなども用いることができる。
【0091】
尚、本発明の4族元素化合物による無機系多孔質体は、カラムとして使用する場合、その立体構造が上記の条件を充足していれば、後述の作用効果を発揮するものである。従って、その製造法は、限定されない。
【0092】
本発明の方法で作られたチタニアゲルは、3次元網目構造のモノリス構造であり、リン酸化合物を選択的に保持する特性があり、その分離に寄与する接触部分が多く、クロマトグラフィー用ゲルとして従来より強い選択性を得ることができる。また、従来のシリカゲルやチタニアコーティングシリカゲルなどと比べて、本発明ゲルは、純チタニアから作られており化学的安定性が高く、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーと異なり、バッファーだけで、濃縮、溶出ができ、得られたリン酸化ペプチドの純度を高くすることができ、溶出液には不純物が含まれず、試料精製や前処理に有効である。
【0093】
本発明の4族元素化合物の無機系多孔質体の貫通孔、細孔について、該無機系多孔質体をカラムとして使用する場合の作用を中心に述べる。試料溶液等の流体は、カラムの一端から入って三次元網目状に連続した貫通孔を通過し、他端から出る。通過途中、従来の充填型カラムにおけるビーズを用いた場合のような極端に狭い流路がなく、しかも貫通孔の孔径が100nm以上であるから、流体が受ける抵抗は小さい。従って、圧力損失も小さい。
【0094】
貫通孔の孔径が同じであるなら、カラム全体に対する貫通孔の容積率が高いほど、圧力損失が小さくなるので好ましいが、容積率が90%を超えると機械的強度が著しく損なわれてしまい、単体でクロマトグラフィー用などのカラムを構成することが困難となる。他方、容積率が20%に満たないとかえって充填型カラムよりも圧力損失が大きくなる。クロマトグラフィー用として好適な容積率の範囲は、50~80%である。
【0095】
そして、貫通孔を形成するゲル骨格に細孔が形成されているので、比表面積が高い。従って、その細孔に、例えばオクタデシル基等の官能基を化学的修飾によって固定したり、グルコースイソメラーゼ、トリプシン等の酵素や白金、パラジウム等の触媒を担持させておくと、流体が通過する過程でこれらの分子と効率よく反応する。しかも官能基が細孔内に固定されているので、流体の流れが速くても官能基が流されることはない。また本発明の無機系多孔質体がアナター結晶相を主成分とする二酸化チタンである場合には、溶液中のリン酸基を有する化合物を特異的に吸着することができ、液体クロマトグラフィー法の応用によって当該物質の選択的な濃縮や検出を行うことが可能である。
【0096】
但し、貫通孔、細孔を合わせた全気孔中の細孔の占める容積率は10%以上を必要とする。10%よりも少ないと、貫通孔の前記容積率を90%まであげたとしても、官能基をほとんど固定することができないからである。他方、ゲル骨格1g当りの細孔の容積は10cm/g以下であることを必要とする。ゲル骨格1g当りの細孔の容積が10cm/gを超えると機械的強度が著しく損なわれてしまい、単体でクロマトグラフィー用などのカラムを構成することが困難となる。クロマトグラフィー用として好適な細孔容積率及び容積の範囲は、全気孔に対する容積率が50%以上、ゲル骨格1g当りの細孔の容積が2cm/g以上である。
【0097】
尚、カラム全体に対する貫通孔の容積率及び細孔の全容積が、上記好適な上限値より高くても、本発明の範囲であれば、外周を筒体で覆うなどして機械的に補強することによって、クロマトグラフィーその他に適用可能である。
【0098】
又、本発明の無機系多孔質材料が4族元素化合物、例えば二酸化チタンである場合には、貫通孔の大きさを概ね10μm以上とし、しかもその割合を高くすることにより、体液の循環する部位に埋め込むことにより、生体に無害な薬剤徐放担体とすることができる。酸化チタンは通常の生体条件下では体液への溶出は非常に少なく、しばしば検出限界以下である。多孔質酸化チタン上には、表面の結晶相を適切に制御した場合には、生体内で骨の成分であるアパタイト層が該多孔質酸化チタン上に形成され、生体はこれを自身の骨とみなすために、何らの拒否反応を起こすことなく生体組織と親和する。したがってこの種の酸化チタン多孔質材料は、生体内への埋入によって不都合な拒絶反応を起こさない、生体組織親和基材或いは安全な薬剤徐放担体として利用することができる。
【0099】
二酸化ジルコニウムの場合では、硫酸化合物の分離や選択的な捕集に有効であるが、他の金属を取り込み固化する性質があり、化学的安定性が高く、廃棄物処理として有効利用が考えられる。さらに、本発明の方法では、全体を自由な形に作る事が出来るため、用途に応じた多孔質体を得ることが出来る。
【実施例1】
【0100】
まずチタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ製)17.404gに35重量%塩酸水溶液2.645mLを滴下し、5分間攪拌した。これに蒸溜水20.404mLを滴下し、5分間攪拌した。さらに、ホルムアミド1.203mLを滴下し、5分間攪拌した。得られた透明溶液を密閉容器に移し、30℃の恒温水槽中に保持したところ約1時間後に固化した。固化した試料を24時間熟成させ、60℃で乾燥した。これによって、多孔質二酸化チタンゲルを得た。
【0101】
得られた多孔質二酸化チタンゲルには2μm程度の揃った貫通孔が三次元網目状にからみあった構造で存在していることが、走査電子顕微鏡(日立,S-2600N)図(5000倍)(図1)及び水銀圧入装置(Micromeritics,PORESIZER9320)により測定した測定図(図2)によって確かめられた。60℃で乾燥した多孔質二酸化チタンゲルを60℃/hの昇温速度で300℃まで加熱した。貫通孔の内壁に5nm程度の細孔が多数存在していることが、窒素吸着測定(300℃で熱処理した多孔質二酸化チタンゲルの測定)によって確かめられた(図3に示す吸着一脱着等温線図、図4に示す細孔径分布図)。なお、60℃で乾燥した多孔質二酸化チタンゲルの気孔容積および気孔径は、熱処理を終えた多孔質二酸化チタンゲルのそれにほぼ一致しており、細孔の存在は電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子,JSM-6700F)によっても確認された(図5)。
【0102】
60℃で乾燥した多孔質二酸化チタンゲルには、アナターゼ相の二酸化チタンナノ結晶が形成されていることが、X線回折測定装置(Rigaku,RINT)によって確かめられた(図8)。X線回折ピークの半値幅を用いてScherrerの式を適用すると、ナノ結晶の結晶子サイズが約10nmであると評価された。60℃/hの昇温速度で300℃、500℃、700℃、900℃まで加熱して、各温度で2時間保持した後、X線回折測定を行った。300℃、500℃で加熱した多孔質二酸化チタンゲルではアナターゼ相の二酸化チタンが形成されているが、700℃および900℃以上での熱処理ではルチル相へ構造転移していることが確かめられた。
【0103】
900℃での熱処理した多孔質二酸化チタンゲルにおいて、三次元網目状にからみあった貫通孔は維持されており、貫通孔径は乾燥した多孔質二酸化チタンゲルとほぼ一致していることが、走査電子顕微鏡による図(図9)及び水銀圧入測定した図(図10)によって確かめられた。
【実施例1-a】
【0104】
上記反応溶液に蒸溜水を最大21.214mLまで添加して固化させると、水の量が多いほど得られる多孔体の貫通孔径は小さくなり、最小0.5μm程度までこれを連続的に制御することができた(図6)。
【0105】
図6-aは、蒸溜水を20.404mL加えたもので、2μm程度の揃った貫通孔が三次元網目状態で存在している。蒸溜水の量を20.944mLにしたものが図6-b、21.214mLにしたものが図6-cである。貫通孔は順に小さく変化していることがわかる。
【実施例1-b】
【0106】
また、用いる35重量%塩酸水溶液の量を、最小2.436mLから最大2.806mLまで変化させて、生成する多孔体の貫通孔径を最大5μmから最小0.2μmの範囲で制御することが出来た(走査電子顕微鏡による図7)。
図7-aは、塩酸を2.754mL加えたもので、3μm程度の揃った貫通孔が三次元網目状態で存在している。塩酸の量を2.645mLにしたものが図7-b、2.436mLにしたものが図7-cである。
【実施例1-c】
【0107】
さらに、反応温度を40℃から80℃まで変化させても同様に、蒸溜水の濃度および35重量%塩酸水溶液の濃度を調節することにより、上記と同様の範囲内で貫通孔径を制御することができた。
【実施例2】
【0108】
まずチタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ製)11.602gに35重量%塩酸水溶液1.624mLを滴下し、5分間攪拌した。これにトリブロック共重合体(F68、ドイツBASF社製)0.10gを加え、蒸溜水14.071mLを滴下し、5分間攪拌した。さらに、ホルムアミド0.738mLを滴下し、5分間攪拌した。得られた透明溶液を密閉容器に移し、40℃の恒温水槽中に保持したところ約1時間後に固化した。固化した試料を24時間熟成させ、60℃で乾燥した。これによって、多孔質二酸化チタンゲルを得た。
【0109】
得られた多孔質二酸化チタンゲルには3μm程度の揃った貫通孔が三次元網目状にからみあった構造で存在していることが、電子顕微鏡及び水銀圧入測定によって確かめられた。60℃で乾燥した試料を60℃/hの昇温速度で300℃まで加熱した。貫通孔の内壁に5nm程度の細孔が多数存在していることが、窒素吸着装置(Micromeritics,ASAP-2010)の測定によって確かめられた。なお、60℃で乾燥した試料の気孔容積および気孔径は、熱処理を終えた多孔質二酸化チタンゲルのそれにほぼ一致していた。
【0110】
60℃で乾燥した多孔質二酸化チタンゲルには、アナターゼ相の二酸化チタンナノ結晶が形成されていることが、X線回折測定によって確かめられた。X線回折ピークの半値幅を用いてScherrerの式を適用すると、ナノ結晶の結晶子サイズが約10nmであると評価された。60℃/hの昇温速度で300℃、500℃、700℃、900℃まで加熱して、各温度で2時間保持した後、X線回折測定を行った。300℃と500℃で加熱した試料ではアナターゼ相の二酸化チタンが形成されているが、700℃と900℃の熱処理ではルチル相へ構造転移していることが確かめられた。
【0111】
900℃での熱処理した試料において、三次元網目状にからみあった貫通孔は維持されており、貫通孔径は乾燥試料とほぼ一致していることが、電子顕微鏡及び水銀圧入測定によって確かめられた。
【実施例2-1】
【0112】
上記反応溶液に蒸溜水を最大14.630mLまで添加して固化させると、得られる多孔体の貫通孔径は小さくなり、最小0.5μm程度までこれを連続的に制御することができた。
【実施例2-2】
【0113】
また、用いる35重量%塩酸水溶液の量を、最小1.495mLから最大1.691mLまで変化させるか、あるいは、F68(トリブロック共重合体)の量Xを、最小0.06gから最大0.12gまで変化させて、生成するF68の量の変化によるモルフォロジー変化を示す(図11)。多孔体の貫通孔径を最大5μmから最小0.2μmの範囲で制御することができた。さらに、反応温度を30℃に下げるか、あるいは、50℃から80℃の範囲で上昇させても同様に、蒸溜水の濃度および35重量%塩酸水溶液の濃度を調節することにより、上記と同様の範囲内で貫通孔径を制御することができた。
【実施例2-3】
【0114】
極性溶媒に水溶性有機高分子であるポリエチレンオキシドを共存させ、モノリスゲルを作成した。
【0115】
まず、チタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ社製)34.807gに35重量%塩酸水溶液5.8265mLを滴下し、5分間撹拌した。これにポリエチレンオキシド(アルドリッチ社製)MW:10,000、1.05gを加え、蒸留水1.39355mLを滴下し、5分間撹拌した。更に、N-メチルホルムアミド量を滴下し、5分間撹拌した。得られた透明溶液を密閉容器に移し、40℃の恒温水槽中に保持したところ、約1時間後に固化した。固化した試料を24時間熟成させ、60℃で乾燥した。これによって、多孔質二酸化チタンゲルを得た。
【0116】
N-メチルホルムアミドの添加量(X)を変化させる事で、多孔体の貫通孔径を最大5μmから最小0.2μmの範囲で制御することができ、水銀圧入装置(前出)測定の測定図により、確かめられた(図12)。
【0117】
図12における1~5が示す曲線の実験条件は、下記のとおりである。
1:X=4.8206mL(0.081mol)
2:X=4.9991mL(0.084mol)
3:X=5.1776mL(0.087mol)
4:X=5.3562mL(0.090mol)
5:X=5.5347mL(0.093mol)
水溶性有機高分子の共存下でも孔径を自由に作れることが実証できた。
【実施例2-4】
【0118】
実施例2-3と同様の方法で、孔径等を制御された貫通孔を持つチタニア多孔質体を得て、更に、焼成前に密閉容器中で、加熱処理(以下、密閉加熱処理という)を行うことで、細孔を調整した。
【0119】
まず、チタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ社製)11.602gに35重量%塩酸水溶液1.942mLを滴下し、5分間攪拌した。
これにポリエチレンオキシド(アルドリッチ社製)MW:10,000、0.35gを加え、蒸留水1.39355mLを滴下し、5分間撹拌した。更に、N-メチルホルムアミド1.7854mLを滴下し、5分間撹拌した。得られた透明溶液を密閉容器に移し、60℃の恒温水槽中に保持したところ、約1時間後にゲル化した。ゲル化した試料を24時間熟成させ、60℃で乾燥した。
【0120】
更に、この多孔質体を乾燥させずに、耐圧性のある密封できる容器に入れて、密封して加熱した。熟成後、100℃、150℃、200℃で密閉加熱処理を行い、更に、それぞれを400℃で焼成した多孔質体、熟成後、密閉加熱処理を行わず60℃で乾燥させた多孔質体、熟成後、密閉加熱処理を行わず、60℃で乾燥させ、さらに400℃で焼成した多孔質体、合計8種を得た。
【0121】
各多孔質体を窒素吸着装置(Micromeritics,ASAP-2010)により、表面積および細孔径を前出の窒素吸着測定装置により測定した結果、吸着一脱着等温線図(図13)、細孔径分布図(累積容積図14(a)、微分容積図14(b))を得た。
【0122】
図13に示す吸着一脱着等温線では、各多孔質体のデータにヒステリシスが観察される。これが、高圧側で観察されるほど細孔サイズは大きくなることを示し、吸着等温線(2つのうち下の曲線)の増加が急になるほど、細孔サイズが揃っていることを示している。密閉加熱処理を施すと、細孔サイズは大きくなり、サイズが比較的揃うことが分かる。尚、各データは得られた数値どおりに作製すると重なって見づらいため、1から順に150cm/gずつ上にずらして表示している。
【0123】
図14-(a)に示す累積細孔容積では、曲線の立ち上がる位置や立ち上がり方で細孔のサイズや分布を評価でき、最終的な到達点で細孔がどれくらいの体積を占めているかが分かる。200℃で密閉加熱処理後、60℃で乾燥した多孔質体7は、曲線の立ち上がりが10nmくらいであり、比較的鋭いカーブを形成している一方、細孔サイズが小さくなってもダラダラと増加しているので、ある程度細孔サイズは揃っているものの分布があることが確認される。
加えて、この多孔質体7は8つの多孔質体の中で細孔の占める体積が最も大きいことも確認される。
【0124】
又、200℃で密閉加熱処理後、400℃で熱処理した8のデータから、熱処理によっても細孔はほとんど消失しないことも分かる。
【0125】
更に、60℃で乾燥した多孔質体1では、ほとんど細孔が存在しないことも分かる。
図14-(b)に示す微分細孔容積では、ピークの位置で細孔の平均サイズが確認される。
【0126】
更に、ピーク幅が狭いほど、細孔サイズが揃い、分布が少ないことが確認される。200℃で密閉加熱処理後、60℃で乾燥した多孔質体7、および200℃で密閉加熱処理後、400℃で熱処理した多孔質体8では、細孔サイズはともに平均10nmである。
【0127】
これらの図から得られた数値を表にして図15に示す。
全体をまとめると、60℃の乾燥状態では、細孔径、比表面積はほとんど存在しないが、密閉加熱処理を行なうと、比表面積、細孔径が増大することが分かる。4族元素化合物特有の効果を高めるためには、様々な試料との接触機会が多くなる比表面積が大きく制御された多孔質体が適しており、この密閉加熱処理が有効である事が分かる。更に、処理温度に応じて、その細孔径を制御する事が可能となる。
【0128】
更に、密閉加熱処理を行った後に焼成する事で、細孔径を大きくする事が可能となる。
焼成加熱温度を変化させると、貫通孔を大きく変化させず、細孔径を目的に応じて変化させることが出来る。密閉加熱処理は多孔質体を侵食させる効果があることは、周知の事実であるが、貫通孔はほとんど変化しないことにより、侵食作用でないことも実証された。更に、焼成工程を加えることで、細孔径を大きくすることができ、目的に応じた多孔質体を制御作成できることが実証できた。
【0129】
60℃で乾燥後、多孔質体重量に対して、20%重量のイオン交換水を含水し、同様の処理を行ったが、同様の結果になり、イオン交換水を添加しても細孔径および比表面積が制御できることが実証された。
【実施例3】
【0130】
まず、チタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ製)17.404gに35重量%塩酸水溶液2.645mLを滴下し、5分間攪拌した。
これに蒸溜水20.674mLを滴下し、5分間攪拌した後、ホルムアミド1.203mLを滴下し、さらに5分間攪拌して均一化し、ゾル-ゲル反応液とした。この反応液5mLを長さ200mm、内径6mmの寸法の円筒形密閉容器に入れ、その容器を恒温水槽に入れてゾル-ゲル反応液の温度を30℃に1時間保持し、加水分解・重縮合を行い、固化させ、24時間熟成後、60℃で乾燥して、カラム形状の試料を得た。
【実施例4】
【0131】
実施例3で、得られた円筒状のモノリスゲルを400℃で熱処理を行い、アナターゼ相を持つ外径2.1mmの固いモノリスゲルを得た。長さ150mmに切断し、ポリプロピレンチューブに挿入し、150℃で加熱し、ポリプロピレンチューブを収縮させてカラム化した。両端に接続ジョイントを取り付け、HPLC分析を行い、そのリン酸化合物の保持力を従来タイプのカラムと比較した。
【0132】
比較例として、細孔10nmの外径2.1mm、長さ150mmのシリカモノリスにチタニウム(IV)イソプロキシドをコーティングし、400℃で熱処理したチタニアコーティングモノリスを作成し、実施例4と同様な方法でカラム化したカラム、及び、粒子充填タイプカラムとして、細孔10nm、粒子径5μmチタニアゲルを2.1mm×150mmに充填したHPLCカラムを用意した。
【0133】
3種のカラムで、リン酸基の無いアデノシン、リン酸基の一つ結合したアデノシンモノフォスフェート、リン酸基の二つ結合したアデノシンジフォスフェート、リン酸基の3つ結合したアデノシントリフォスフェードを試料(各1μg/mL)として分析比較した。
【0134】
実験装置:
セミミクロHPLC対応ポンプ PU712、
紫外可視検出器 UV702(セミミクロセル)、
データステーション EZChrom Elite(以上ジーエルサイエンス社製)、
低拡散ステンレスインジェクター RHEODYNE 8125(レオダイン社製)
実験条件:
溶離液0.1Mリン酸緩衝液(pH7)/アセトニトリル=50/50
流速0.2mL/min
検出UV260nm
注入量 0.1μL
カラム温度 室温
【0135】
本発明チタニアモノリスでの実施例4による分析結果を(図16)に示す。図中1~4は以下を表す。
1:アデノシン、2:アデノシンモノフォスフェート、3:アデノシンジフォスフェート、4:アデノシントリフォスフェート
4成分ともにリン酸化の程度によって完全に分離され、高い選択性を有する事が判明した。3次元網目構造をとっているため、試料との接触が大きいためと考えられる。
【0136】
比較例のチタニアコーティングタイプでは、リン酸化合物を保持する特性を持つが、アデノシンとリン酸基が一つのアデノシンモノフォスフェートは分離せず1つのピークとなった(図17)。
【0137】
この事から、同様の構造であるシリカモノリス表面にチタニア膜を作成しても、細孔内部まではコーティングされず、選択性が低い事が判明した。
【0138】
別の比較例のチタニア粒子タイプでは、4成分の分離は見られたものの本発明であるモノリスタイプに比べて、選択性が低い結果であった(図18)。
【0139】
本発明チタニアモノリスは、シリカコーティングタイプ、チタニア粒子タイプより選択性が優れており、リン酸化合物の選択的な保持能力が大きいことが判明した。
【実施例5】
【0140】
チタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ製)17.404gに35重量%塩酸水溶液2.645mLを滴下し、5分間攪拌した。これに蒸留水20.404mLを滴下し、5分間攪拌した後、ホルムアミド1.203mLを滴下し、さらに5分間攪拌して均一化し、ゾル-ゲル反応液とした。この反応液5mLを長さ200mm、内径6mmの寸法の円筒形密閉容器に入れ、その容器を恒温水槽に入れてゾル-ゲル反応液の温度を30℃に1時間保持し、加水分解・縮重合を行い、固化させ、24時間熟成後、60℃で乾燥して、外径3.3mmの貫通孔径10μm棒状のチタニアモノリスを得た。
【0141】
このモノリスを厚さ1.5mmにダイヤモンドカッターで切断し、円盤状のモノリスとした。450℃で焼成し、径2.8mm厚さ1.2mmのフィルター状の固いチタニアモノリスを得た。
【0142】
さらに、同じ貫通孔径を持ち円盤状のシリカモノリスにチタニウム(IV)イソプロキシドをコーティングし400℃で熱処理したチタニアコーティングモノリスを作成した。
【0143】
これらのモノリスを0.1M水酸化ナトリウム水溶液中で一夜攪拌し続けたところ、チタニアコーティングタイプでは、溶解した。
【0144】
本発明チタニアモノリスでは、重量変化は無くアルカリ溶液中でも安定である事が実証された。
【実施例6】
【0145】
実施例5で、アルカリ溶液中で一夜攪拌したフィルター状モノリスを、ピペットチップに超音波融着器により融着した。
このチタニアモノリスを融着したピペットチップをピペッターに使用して、リン酸化ペプチドが選択的に濃縮精製できるかを調べた。
【0146】
濃縮精製工程は次のようである。
1.ピペッターの目盛りを200μLにあわせる。
2.コンディショニングのため、50%アセト二トリル水溶液(0.1~1%ギ酸)で3回ピペッティングする。
3.吸着のため、試料を20~25回ピペッティングする。
4.洗浄のため、50%アセトニトリル+0.5KCl水溶液(0.1%ギ酸)でピペッティングする。
5.溶出のため、0.2Mリン酸バッファー(pH7.0)で10回ピペッティングし、試料を得る。
【0147】
標準のリン酸化ペプチド(TRDIYpETDYYRK)(0.01mg/mL)と非リン酸化ペプチド(TRDIYETDYYRK)(0.05mg/mL)の混合試料10μLを、Inertsil(登録商標)WP300 C185μm (150×2.1mmI.D.)カラムを用いて、0.1%トリフルオロ酢酸添加10%アセトニトリルから0.1%トリフルオロ酢酸添加40%アセトニトリルへの15分グラジエント分析を行い、UV210nmで検出した。
【0148】
実験装置:
HPLCポンプ GL7411(低圧グラジエントユニット内蔵)、
カラムオーブン GL-7430、
オートサンプラー GL-7420、
UV検出器 GL-7450
専用ソフトウエア EZChrom Elite(以上ジーエルサイエンス社製)
【0149】
濃縮精製を行わない未精製の混合試料の分析結果を図19に示す。本発明チタニアモノリスゲルを用いて上記のピペッティング方法で精製した混合試料の分析結果を図20に示す。図20中1及び2は以下を表す。
1:リン酸化ペプチド
2:非リン酸化ペプチド
【0150】
精製を行わない試料では非リン酸化ペプチドがそのまま検出されているが、図20ではリン酸化ペプチドだけが精製濃縮されて、検出されていることがわかる。なお、その回収率は約70%であった。
本発明チタニアモノリスは、リン酸化ペプチドを効率良く、高い回収率で精製できる事が確認された。
【0151】
さらに、同じ方法で、実際のタンパク質であるβカゼイン(0.5mg/mL)溶液50μgをトリプシン消化したペプチドを試料として精製し、HPLC分析を行なった。
【0152】
試料10μLを、Inertsil(登録商標) WP300 C185μm (150×2.1mmI.D.)カラムを用いて、0.1%トリフルオロ酢酸添加10%アセトニトリルから0.1%トリフルオロ酢酸添加90%アセトニトリルへの15分グラジエント分析を行い、UV210nmで検出した。実験に使用した装置は、標準品の分析で使用したものと同様である。
【0153】
精製を行なっていないカゼインのペプチド消化物の分析では、他のペプチドが混在し、リン酸化ペプチドを検出する事は出来ない(図21)。
【0154】
しかし、本発明のチタニアモノリスを融着したピペットチップで前処理濃縮した結果、βカゼインの消化ペプチド中のリン酸化ペプチド2種FQpSEEQQQTEDELQDK(分子量:2061)、RELEELNVPGEIVEpSLpSpSpSpSEESLTR(分子量:3122)を検出、同定する事が出来た(図22)。図22中1及び2は以下を表す。
1:FQpSEEQQQTEDELQDK(分子量:2061)
2:RELEELNVPGEIVEpSLpSpSpSpSEESLTR(分子量:3122)
【0155】
実試料のタンパク消化物に含まれる微量のリン酸化ペプチドも選択的な精製回収でき、生体内代謝研究にも十分対応できる事が実証された。
【0156】
チタニアコーティングモノリスでも同様の結果は得られるが、アルカリ加水分解などを行なった生体試料などでは、モノリスが溶解してしまい、中和後の精製が必要となる。
【0157】
本発明のモノリスを用いた精製では、アルカリ耐久性もあり、中和工程も必要なく、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーのような煩雑な工程も必要なく、簡単にリン酸化ペプチドを選択的に濃縮精製できる。
【0158】
前処理自動化装置であるハミルトンマイクロラボスターを使用し、その専用チップに同じように本発明チタニアモノリスを融着させ、使用する前処理チップを構成した。さらに前述の手動ピペッティングプロトコールを装置に入力し自動で精製を行なわせ、分析を行なった結果、同等のクロマトグラムを得ることができた。
【0159】
このように、自動化装置に本発明チタニアモノリスを組み込む事で前処理の自動化も可能となる。
【実施例7】
【0160】
チタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ製)1.7kgに35重量%塩酸水溶液264mLを滴下し、5分間攪拌した。これに蒸留水2Lを滴下し、5分間攪拌した後、ホルムアミド150mLを滴下し、さらに5分間攪拌して均一化し、ゾル-ゲル反応液とした。この反応液500mLを長さ200mm、内径60mmの寸法の円筒形密閉容器に入れ、その容器を恒温水槽に入れてゾル-ゲル反応液の温度を30℃に1時間保持し、加水分解・縮重合を行い、固化させ、24時間熟成後、60℃で乾燥して、円筒状のモノリスゲルを得た。400℃で熱処理を行い、アナターゼ相を持つ外径20mmの固いモノリスゲルを得た。長さ150mmに切断し、ポリプロピレンチューブに挿入し、150℃で加熱し、ポリプロピレンチューブを収縮させてカラム化した。
【0161】
このチタニアモノリスカラムに化学修飾を施し、従来のシリカ充填剤と比較した。
チタニアモノリス重量に対して、1wt%ブタジエンモノマーと0.01wt%アゾビスイソブチロニトリルを1Lヘキサンに溶解した。この溶液中にゲルを浸漬し減圧にしながら、ヘキサン溶媒を蒸発させ、120℃で12時間反応、ブタジエンポリマーを化学結合させた。
【0162】
この化学修飾チタニアモノリスを実施例4と同じ方法でカラム化した。
比較例として、細孔径10nmを持つシリカ粒子に同様のコーティング処理を施し、内径20mm長さ150mmの分取カラムに充填した。
弱酸性試料であるフェノールと塩基性試料であるピリジンの混合物1mlを注入し30%メタノール溶離液で、流速20mL/minで分取分析しUV300nmで検出した。
【0163】
実験装置:
HPLC分取システム PLC561(ジーエルサイエンス社製)
図23及び24に示す1及び2は以下を表す。
1:フェノール
2:ピリジン
【0164】
図23は、比較例のシリカゲル充填剤による分析であるが、シラノール基の影響により塩基性化合物であるピリジンが吸着しピークがテーリングしている。本発明チタニアゲルに化学修飾したカラムでは、フェノールの逆相保持は同じように得られ、さらに、ピリジンの吸着が無く、早く溶出された(図24)。
【0165】
本発明のチタニアモノリスは、従来のゲルと同様に化学種を結合させる事により、種々の特性を付け加え得る事が可能である。シリカゲルのような吸着活性点も無く、化学的耐久性が高く、ゲルの溶解が無く精製用に使われる分取クロマトグラフィーにも適している。
【実施例8】
【0166】
チタニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ社製)11.602gに35重量%塩酸水溶液1.9422mLを滴下し、5分間撹拌した。これにポリエチレンオキシド(アルドリッチ社製)MW:10,000、0.35gを加え、蒸留水1.39355mLを滴下し、5分間撹拌した。さらに、N-メチルホルムアミド1.7854mLを滴下し、更に、5分間撹拌して均一化し、ゾルーゲル反応液とした。この反応液5mLを長さ150mm、内径6mmの寸法のPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)チューブに入れて両端を密栓し、そのチューブを恒温水槽に入れてゾルゲル反応液の温度を30℃に1時間保持し、加水分解、重縮合を行い、ゲル化させ、内径50mm、長さ150mmのステンレス製耐圧容器に入れ、200℃で密閉加熱処理を行い、400℃で焼成した。
【0167】
比表面積153m/g、平均細孔径13nm、貫通孔径5μmの制御された3.9mm×50mmの多孔質体が得られた。得られた試料の走査電子顕微鏡写真を図25に示す。
【0168】
得られた多孔質体をポリプロピレンチューブに挿入し、150℃で加熱し、ポリプロピレンチューブを収縮させてカラム化した。両端に接続ジョイントを取り付け、HPLC分析を行い、リン酸基の一つ結合したアデノシンモノフォスフェート、リン酸基の二つ結合したアデノシンジフォスフェート、リン酸基の三つ結合したアデノシントリフォスフェートを試料(各1μg/mL)として分析比較した。実験に使用した装置は、実施例4で使用したものと同様である。
【0169】
実験条件:
溶離液0.1Mリン酸バッファー(リン酸1カリウム、リン酸2カリウムを混合)pH=7/ACN=50/50
検出波長280nm
室温
流速0.5mL/min
検出UV280nm
注入量 5μL
カラム温度 室温
【0170】
本発明の密閉加熱処理により、細孔径をコントロールしたチタニアモノリスでの分析結果を図26に示す。図26中1~3は以下を表す。
1:アデノシンモノフォスフェート
2:アデノシンジフォスフェート
3:アデノシントリフォスフェート
【0171】
細孔径が適切に制御されているため、より短い時間で、リン酸化の程度によって3成分を分離する事ができ、充填タイプ(図18)に比べて、テーリングが無く対象性の良いクロマトグラムが得られた。密閉加熱処理により、表面活性状態を変える事ができ、かつ細孔径を制御することで、高速分析に適用できるカラムも作成できる事が実証された。
【実施例9】
【0172】
二酸化チタンと同様に極性溶媒に水溶性有機高分子であるポリエチレンオキシドを共存させ、二酸化ジルコニウムモノリスゲルを作製した。まず、ジルコニウム(IV)n-プロポキシド(アルドリッチ社製、70wt% in 1-propanol)9.3594gに60重量%硝酸水溶液1.6742mLを滴下し、5分間撹拌した。これに蒸留水6.9612mLを滴下し、ポリエチレンオキシド(Fluka社製)MW:35,000、0.15gを加え、30分間撹拌した。さらに、N-メチルホルムアミドを2.6781mL滴下し、5分間撹拌した。得られた透明溶液を密閉容器に移し、80℃の恒温槽中に保持したところ、約1時間後に固化した。固化した試料を24時間熟成させ、60℃で乾燥した。これによって、多孔質体二酸化ジルコニウムゲルを得た(図27)。N-メチルホルムアミドの添加量を変化させる事で、多孔質体の貫通孔径を最大5μmから最小1μmの範囲で制御することが出来た(図28)。図28中1、2は以下を表す。
1:N-メチルホルムアミド2.6781mL
2:N-メチルホルムアミド2.9161mL
水溶性有機高分子の共存下で孔径を自由に作れる事が実証できた。
【0173】
実施例9に記載の実施例の走査電子顕微鏡写真(図27)とN-メチルホルムアミドの添加量を2.9161mLと変化させて得た走査電子顕微鏡写真(図30)によっても貫通孔の変化が観察された。
【実施例9-1】
【0174】
さらに、実施例9ゲルを用いて、焼成温度に於ける結晶構造変化を調べた。本発明の方法では、固化した時点ではアモルファスであるが、300℃の低温で熱処理すると、化学的に安定である正方晶あるいは立方晶が得られており、多孔質体構造は得られている。さらに、1200℃で焼成する事で、単斜晶単相に多孔質体構造を壊さず、結晶構造だけを変化させる事が出来る(図29)。図29中四角のプロットは単斜晶、丸のプロットは正方晶又は立方晶を表す。
【0175】
多孔質体の構造は、ゲルの固化時点で決まる事から、密閉容器の形状によって、目的に応じて自由なを作成することができる。その後に、焼成する事で、化学的な性質が変化する結晶構造を目的に応じて作製可能である事が実証された。
【産業上の利用可能性】
【0176】
この発明は、クロマトグラフィーカラムや吸着材として利用できる無機系多孔質体に関する。この発明の無機系多孔質体は、トリプシン、アルカリフォスファターゼ、グルコースイソメラーゼ等の酵素や白金、パラジウム等の触媒あるいは、オクタデシル基等の官能基が担持されて、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー用カラムに好適に利用され得る。また、シリンジ先端やキャピラリー内部に固定して通液することにより、特定のリン酸化合物を分離あるいは濃縮するために用いることができる。また多数のタンパク質混合物から、特異吸着によって特定の性質をもったものだけを吸着・分離するために用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
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【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29