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明細書 :非円形歯車要素対を用いた変速機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5403276号 (P5403276)
公開番号 特開2011-241840 (P2011-241840A)
登録日 平成25年11月8日(2013.11.8)
発行日 平成26年1月29日(2014.1.29)
公開日 平成23年12月1日(2011.12.1)
発明の名称または考案の名称 非円形歯車要素対を用いた変速機
国際特許分類 F16H   3/089       (2006.01)
FI F16H 3/089
請求項の数または発明の数 5
全頁数 18
出願番号 特願2010-111549 (P2010-111549)
出願日 平成22年5月13日(2010.5.13)
審査請求日 平成25年4月22日(2013.4.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
発明者または考案者 【氏名】小森 雅晴
【氏名】古賀 英隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100114502、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 俊則
審査官 【審査官】小林 忠志
参考文献・文献 再公表特許第2008/062718(JP,A1)
特開2006-057679(JP,A)
実開平03-046046(JP,U)
特開平01-141269(JP,A)
特開昭62-270863(JP,A)
調査した分野 F16H 3/00- 3/78
F16H 19/00-37/16
F16H 49/00
F16H 1/00- 1/26
F16H 1/28- 1/48
F16H 48/00-48/42
F16H 51/00-55/30
特許請求の範囲 【請求項1】
回転可能に支持された第1組の入力部材及び出力部材と、
前記第1組の入力部材と出力部材の間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対と、
前記第1組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する少なくとも2組の歯車要素対用クラッチと、
回転可能に支持された第2組の入力部材及び出力部材と、
前記第2組の入力部材と出力部材の間に配置された少なくとも1組の非円形歯車要素対と、
前記第2組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、
前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材とに結合され、前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材との間で回転を伝達し、前記第1組の入力部材から前記第2組の入力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第1の減速比となる入力側増減速機と、
前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材とに結合され、前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材との間で回転を伝達し、前記第2組の出力部材から前記第1組の出力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第2の減速比となる出力側増減速機と、
を備え、
減速比を、駆動側又は入力側の回転速度を被動側又は出力側の回転速度で除した値と定義したとき、
前記第1の減速比をRin、前記第2の減速比をRoutとすると、Rin×Rout≠1であり、´
各組の前記歯車要素対の減速比のうち最小値をR、最大値をR、mを自然数又は自然数の逆数とすると、少なくとも1つのmについて、R<m×Rin×Rout<Rを満たし、
前記非円形歯車要素対は、各組の前記歯車要素対のそれぞれの減速比Rに対応して、減速比がR/(Rin×Rout)となる第1組の噛み合い区間と、該第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間とを含み、平均すると減速比がmになることを特徴とする、変速機。
【請求項2】
回転可能に支持された第1組の入力部材及び出力部材と、
前記第1組の入力部材と出力部材の間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対と、
前記第1組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する少なくとも2組の歯車要素対用クラッチと、
回転可能に支持された第2組の入力部材及び出力部材と、
前記第2組の入力部材と出力部材の間に配置された少なくとも1組の非円形歯車要素対と、
前記第2組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、
前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材とに結合され、前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材との間で回転を伝達し、前記第1組の入力部材から前記第2組の入力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第1の減速比となる入力側増減速機と、
を備え、
前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材とは、前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材との間で回転を伝達するように結合され、
減速比を、駆動側又は入力側の回転速度を被動側又は出力側の回転速度で除した値と定義したとき、
前記第2組の出力部材から前記第1組の出力部材へ回転を伝達する場合の第2の減速比をRoutとすると、Rout=1であり、
前記第1の減速比をRinとすると、Rin≠1であり、
各組の前記歯車要素対の減速比のうち最小値をR、最大値をR、mを自然数又は自然数の逆数とすると、少なくとも1つのmについて、R<m×Rin×Rout<Rを満たし、
前記非円形歯車要素対は、各組の前記歯車要素対のそれぞれの減速比Rに対応して、減速比がR/(Rin×Rout)となる第1組の噛み合い区間と、該第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間とを含み、平均すると減速比がmになることを特徴とする、変速機。
【請求項3】
回転可能に支持された第1組の入力部材及び出力部材と、
前記第1組の入力部材と出力部材の間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対と、
前記第1組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する少なくとも2組の歯車要素対用クラッチと、
回転可能に支持された第2組の入力部材及び出力部材と、
前記第2組の入力部材と出力部材の間に配置された少なくとも1組の非円形歯車要素対と、
前記第2組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、
前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材とに結合され、前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材との間で回転を伝達し、前記第2組の出力部材から前記第1組の出力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第2の減速比となる出力側増減速機と、
を備え、
前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材とは、前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材との間で回転を伝達するように結合され、
減速比を、駆動側又は入力側の回転速度を被動側又は出力側の回転速度で除した値と定義したとき、
前記第1組の入力部材から前記第2組の入力部材へ回転を伝達する場合の第1の減速比をRinとすると、Rin=1であり、
前記第2の減速比をRoutとすると、Rout≠1であり、
各組の前記歯車要素対の減速比のうち最小値をR、最大値をR、mを自然数又は自然数の逆数とすると、少なくとも1つのmについて、R<m×Rin×Rout<Rを満たし、
前記非円形歯車要素対は、各組の前記歯車要素対のそれぞれの減速比Rに対応して、減速比がR/(Rin×Rout)となる第1組の噛み合い区間と、該第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間とを含み、平均すると減速比がmになることを特徴とする、変速機。
【請求項4】
前記非円形歯車要素対の減速比は、最小値がR/(Rin×Rout)と等しく、最大値がR/(Rin×Rout)と等しいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の変速機。
【請求項5】
m=1であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の変速機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は非円形歯車要素対を用いた変速機に関し、詳しくは、非円形歯車要素対を用いて減速比を切り替える変速機に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、「減速比」は、駆動側回転速度/被動側回転速度(あるいは、入力側回転速度/出力側回転速度)で表され、駆動側回転速度よりも被動側回転速度の方が小さくなる場合(いわゆる減速の場合)には1より大きい値となる。「減速比」は、駆動側回転速度よりも被動側回転速度の方が大きい場合(いわゆる増速の場合)についても同じ定義を用いて表し、この場合には、1より小さい値となる。駆動側回転速度と被動側回転速度が同じ場合は、減速比は1となる。すなわち、例えば、駆動側回転部材と被動側回転部材が直接的に結合されている場合は、駆動側回転部材と被動側回転部材の間の減速比は1となる。また、「減速比」は1つの回転部材の2つの部分の間の関係に対しても適用できるものとし、例えば、1つの回転部材の、ある部分と他の部分との間の「減速比」は1と考える。減速比は負の値をとらない。なお、上記の「回転速度」は「回転の角速度」に置き換えてもよい。
【背景技術】
【0003】
現在では、例えば、自動車のオートマチックトランスミッションなど、減速比を多段階に変えることが可能な変速機はすでに数多く開発され、確立された機械となりつつある。
【0004】
現在、大多数のロボットは、減速比が一定の減速機を装備した電動モータによって駆動されている。この電動モータは、低速回転時には大トルクを発生し、高速回転時には低トルクを発生する特性を有しているが、その対応範囲は狭い。また、減速比が一定の場合、この減速比は、通常、最大負荷時においても作業可能なように大きいものが選択されるため、無負荷時においても速度が制限されてしまい、作業効率が落ちるという問題があった。そのため、広い速度範囲で効率よくモータを駆動させるためには、必要に応じて減速比を変える変速機が必要である。
【0005】
ロボットにおいては、負荷状態において減速比を変えることが求められ、減速比を変える過程においても負荷を支持し続けることが必要である。さらに、高精度に作業を行う必要があることから、減速比を変えるときにおいても正確な回転角度の伝達が求められている。また、回転を止めることなく減速比を変えることが要求されている。
【0006】
一方、自動車、自転車では、すでに変速機が使われているが、減速比を変える際に動力を効率よく伝達することが課題となっている。
【0007】
通常、減速比の異なる歯車対を同時に噛み合わせて回転させることはできないため、回転を止めることなく負荷を支持しつつ、減速比を変えることはできない。また、通常の自動車などの変速機では、減速比を変える前には、これから締結する歯車と軸の回転速度が異なるため、摩擦を利用してこれらを一致させていることから、歯車と軸の間には大きな滑りが生じ、正確な回転角度の伝達は困難であり、動力の伝達効率も悪い。
【0008】
このような背景のもとに、非円形歯車要素対(非円形歯車対)を用いることにより、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる変速機が提案されている。
【0009】
例えば図8の構成図に模式的に示すように、変速機110は、入力軸112と出力軸114との間に、歯車対用クラッチ140,142を介して第1及び第2の歯車対116,117が配置され、非円形歯車対用クラッチ144を介して非円形歯車対118が配置されている。第1及び第2の歯車対116,117は、それぞれ、入力軸112側に配置された歯車120,122と、出力軸114側に配置された歯車130,132とが噛み合う。非円形歯車対118は、入力軸112側に配置された入力側非円形歯車124と、出力軸114側に配置された出力側非円形歯車134とが噛み合う。
【0010】
クラッチ140のONにより第1の歯車対116が入力軸112と出力軸114との間に連結されたとき、第1の歯車対116によって決まる入力軸112と出力軸114との間の減速比はRとなる。クラッチ142のONにより第2の歯車対117が入力軸112と出力軸114との間に連結されたとき、第2の歯車対117によって決まる入力軸112と出力軸114との間の減速比はRとなる。
【0011】
非円形歯車対118は、入力軸112と出力軸114との間に第1の歯車対116が連結されたときの減速比Rと等しい減速比となる噛み合い区間と、第2の歯車対117が連結されたときの減速比Rと等しい減速比となる噛み合い区間とを含む。入力軸112と出力軸114との間に連結する歯車対116,117を切り替えるとき、過渡的に入力軸112と出力軸114との間に非円形歯車対118を連結する。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】国際公開第2008/062718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
非円形歯車対118が噛み合い続けるためには、nを1以上の自然数とすると、入力側歯車124が1回転すると出力側歯車134がn回転又は1/n回転する必要がある。入力側歯車124が1回転すると出力側歯車134がn回転する場合、非円形歯車対118の減速比は、平均すると1/nとなり、過渡的には、1/nよりも大きい減速比と1/nよりも小さい減速比となる。入力側歯車124が1回転すると出力側歯車134が1/n回転する場合、非円形歯車対118の減速比は、平均するとnとなり、過渡的にはnよりも大きい減速比とnよりも小さい減速比となる。
【0014】
例えばR=1.2,R=0.8の場合、図6に示すように、非円形歯車対118の減速比は、1.2と0.8との間で変動し、平均すると1となるようにする。
【0015】
しかしながら、変速機の仕様としては、増速だけ、あるいは減速だけでよい場合がある。すなわち、各歯車対の減速比がいずれも1より小さくなる、あるいはいずれも1より大きくなる場合がある。例えばR=1.5,R=1.2としたい場合(減速だけの場合)、非円形歯車対118の減速比が平均すると1となるようにするためには、例えば図7に示すように、減速比が1よりも極端に小さくなる噛み合い区間(例えば減速比が0.3になる区間)を設ける必要がある。非円形歯車対118の減速比が平均すると2となるようにする場合には、減速比が2よりも大きくなる噛み合い区間(例えば減速比が2.8になる区間)を設ける必要がある。
【0016】
すなわち、nを1以上の自然数とすると、非円形歯車対の減速比の平均はn又は1/nしか取りえない。そのため、例えば入力軸と出力軸との間に配置された各組の歯車対の減速比が全てn以上かつn+1以下である場合、非円形歯車対の減速比の平均がn(又はn+1)になるようにするためには、減速比がnよりも小さい噛み合い区間(又はn+1より大きい噛み合い区間)を設ける必要がある。すなわち、所望の減速比の範囲(図7の例では1.2から1.5)から外れた減速比となる噛み合い区間を設ける必要がある。
【0017】
非円形歯車対が所望の減速比の範囲から外れた減速比の噛み合い区間を含むと、非円形歯車対の減速比の変化が円滑でなくなったり、変速の際に好ましくない大きな減速比状態あるいは小さな減速比状態が発生したりし、円滑な変速が困難となる。また、非円形歯車対の構成が複雑になる。
【0018】
本発明は、かかる実情に鑑み、減速比の様々な組み合わせに対して非円形歯車対の減速比の変化を円滑にでき、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる変速機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した変速機を提供する。
【0020】
変速機は、(a)回転可能に支持された第1組の入力部材及び出力部材と、(b)前記第1組の入力部材と出力部材の間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対と、(c)前記第1組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する少なくとも2組の歯車要素対用クラッチと、(d)回転可能に支持された第2組の入力部材及び出力部材と、(e)前記第2組の入力部材と出力部材の間に配置された少なくとも1組の非円形歯車要素対と、(f)前記第2組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、(g)前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材とに結合され、前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材との間で回転を伝達し、前記第1組の入力部材から前記第2組の入力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第1の減速比となる入力側増減速機と、(h)前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材とに結合され、前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材との間で回転を伝達し、前記第2組の出力部材から前記第1組の出力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第2の減速比となる出力側増減速機とを備える。減速比を、駆動側又は入力側の回転速度を被動側又は出力側の回転速度で除した値と定義したとき、(i)前記第1の減速比をRin、前記第2の減速比をRoutとすると、Rin×Rout≠1であり、(ii)各組の前記歯車要素対の減速比のうち最小値をR、最大値をR、mを自然数又は自然数の逆数とすると、少なくとも1つのmについて、R<m×Rin×Rout<Rを満たし、(iii)前記非円形歯車要素対は、各組の前記歯車要素対のそれぞれの減速比Rに対応して、減速比がR/(Rin×Rout)となる第1組の噛み合い区間と、該第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間とを含み、平均すると減速比がmになる。
【0021】
上記構成において、歯車要素対用クラッチによりいずれか1組の歯車要素対のみが第1組の入力部材と出力部材との間に連結され、非歯車要素対用クラッチにより非円形歯車要素対が第2組の入力部材と出力部材との間に連結されていないように制御すると、第1組の入力部材と出力部材との間に連結された歯車要素対を介して、第1組の入力部材から第1組の出力部材に回転が伝達される。
【0022】
変速機の減速比を切り替える場合には、ある歯車要素対が第1組の入力部材と出力部材との間に連結されている状態において、その歯車要素対に対応する第1組の噛み合い区間で非円形歯車要素対が噛み合うタイミングで、非円形歯車要素対を第2組の入力部材と出力部材との間に非歯車要素対用クラッチによって連結させた後、その歯車要素対の連結を歯車要素対用クラッチによって解除する。そして、第1組の入力部材と出力部材との間にはいずれの歯車要素対も連結されていない状態で、非円形歯車要素対の第2組の噛み合い区間によって減速比を変化させる。そして、他の歯車要素対に対応する第1組の噛み合い区間で非円形歯車要素対が噛み合うタイミングで、歯車要素対用クラッチにより他の歯車要素対を第1組の入力部材と出力部材との間に連結させた後、非円形歯車要素対については非歯車要素対用クラッチにより第2組の入力部材と出力部材との間の連結を解除する。
【0023】
このように、第1組の入力部材と出力部材との間、あるいは第2組の入力部材と出力部材との間に、常に歯車要素対あるいは非円形歯車要素対が連結されるように制御すると、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0024】
このように構成すると、例えば、第1組の入力部材と出力部材との間に配置される歯車要素対の減速比が全てn以上かつn+1以下である場合や、1/n以下かつ1/(n+1)以上である場合など、様々な減速比の組み合わせに対して、非円形歯車要素対の減速比が、平均すると自然数又は自然数の逆数となるようにすることが容易にできる。また、所望の減速比の範囲から外れた減速比となる噛み合い区間を小さくできる、あるいは設ける必要がないため、減速比の様々な組み合わせに対して非円形歯車要素対の減速比の変化を円滑にすることができる。
【0025】
なお、本発明において、「歯車要素」は広く歯を有する要素を意味し、歯車だけでなく、スプロケットやプーリ等も含まれる。「歯車要素対」は、歯車要素の歯が直接噛み合う場合に限らず、中間歯車、歯付きベルトやチェーン等を介して間接的に噛み合い、連動する場合も含まれる。
【0026】
また、本発明は、次のように構成した変速機を提供する。
【0027】
変速機は、(a)回転可能に支持された第1組の入力部材及び出力部材と、(b)前記第1組の入力部材と出力部材の間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対と、(c)前記第1組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する少なくとも2組の歯車要素対用クラッチと、(d)回転可能に支持された第2組の入力部材及び出力部材と、(e)前記第2組の入力部材と出力部材の間に配置された少なくとも1組の非円形歯車要素対と、(f)前記第2組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、(g)前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材とに結合され、前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材との間で回転を伝達し、前記第1組の入力部材から前記第2組の入力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第1の減速比となる入力側増減速機とを備える。前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材とは、前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材との間で回転を伝達するように結合される。減速比を、駆動側又は入力側の回転速度を被動側又は出力側の回転速度で除した値と定義したとき、(i)前記第2組の出力部材から前記第1組の出力部材へ回転を伝達する場合の第2の減速比をRoutとすると、Rout=1であり、(ii)前記第1の減速比をRinとすると、Rin≠1であり、(iii)各組の前記歯車要素対の減速比のうち最小値をR、最大値をR、mを自然数又は自然数の逆数とすると、少なくとも1つのmについて、R<m×Rin×Rout<Rを満たし、(iv)前記非円形歯車要素対は、各組の前記歯車要素対のそれぞれの減速比Rに対応して、減速比がR/(Rin×Rout)となる第1組の噛み合い区間と、該第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間とを含み、平均すると減速比がmになる。
【0028】
この場合、変速機は、出力側増減速機を備えていない。この場合、第1組の出力部材と第2組の出力部材は一体化されていてもよい。
【0029】
また、本発明は、次のように構成した変速機を提供する。
【0030】
変速機は、(a)回転可能に支持された第1組の入力部材及び出力部材と、(b)前記第1組の入力部材と出力部材の間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対と、(c)前記第1組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する少なくとも2組の歯車要素対用クラッチと、(d)回転可能に支持された第2組の入力部材及び出力部材と、(e)前記第2組の入力部材と出力部材の間に配置された少なくとも1組の非円形歯車要素対と、(f)前記第2組の入力部材と出力部材の間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、(g)前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材とに結合され、前記第1組の出力部材と前記第2組の出力部材との間で回転を伝達し、前記第2組の出力部材から前記第1組の出力部材へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第2の減速比となる出力側増減速機とを備える。前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材とは、前記第1組の入力部材と前記第2組の入力部材との間で回転を伝達するように結合される。減速比を、駆動側又は入力側の回転速度を被動側又は出力側の回転速度で除した値と定義したとき、(i)前記第1組の入力部材から前記第2組の入力部材へ回転を伝達する場合の第1の減速比をRinとすると、Rin=1であり、(ii)前記第2の減速比をRoutとすると、Rout≠1であり、(iii)各組の前記歯車要素対の減速比のうち最小値をR、最大値をR、mを自然数又は自然数の逆数とすると、少なくとも1つのmについて、R<m×Rin×Rout<Rを満たし、(iv)前記非円形歯車要素対は、各組の前記歯車要素対のそれぞれの減速比Rに対応して、減速比がR/(Rin×Rout)となる第1組の噛み合い区間と、該第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間とを含み、平均すると減速比がmになる。
【0031】
この場合、変速機は、入力側増減速機を備えていない。この場合、第1組の入力部材と第2組の入力部材は一体化されていてもよい。
【0032】
好ましくは、前記非円形歯車要素対の減速比の最小値がR/(Rin×Rout)と等しく、
最大値がR/(Rin×Rout)と等しい。
【0033】
この場合、非円形歯車要素対に所望の減速比の範囲から外れた減速比となる噛み合い区間が存在しないようにすることができ、変速の際に、好ましくない大きな減速比状態あるいは小さな減速比状態が発生しないようにすることができる。
【0034】
好ましくは、m=1である。
【0035】
この場合、非円形歯車要素対は減速比の平均が1となり、作製しやすい簡単な構成にできる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の変速機は、減速比の様々な組み合わせに対して非円形歯車要素対の減速比の変化を円滑にすることができ、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】変速機の構成を模式的に示す機構図である。(実施例)
【図2】非円形歯車対のピッチ曲線を模式的に示す略図である。(実施例)
【図3】(a)非円形歯車対の減速比の変化を模式的に示すグラフ、(b)クラッチのONとOFFを示す表である。(実施例)
【図4】(a)非円形歯車対の減速比の変化を模式的に示すグラフ、(b)クラッチのONとOFFを示す表である。(実施例)
【図5】非円形歯車対の回転に伴う減速比の変化を模式的に示す図である。(実施例)
【図6】非円形歯車対の回転に伴う減速比の変化を模式的に示す図である。(参考例)
【図7】非円形歯車対の回転に伴う減速比の変化を模式的に示す図である。(参考例)
【図8】変速機の構成を模式的に示す構成図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図1~図5を参照しながら説明する。

【0039】
図1の機構図に模式的に示すように、変速機10は、回転可能に支持された第1組の入力部材及び出力部材である入力軸12及び出力軸14と、少なくとも2組の歯車要素対である第1及び第2の歯車対16,17と、非円形歯車要素対である非円形歯車対18と、歯車要素対用クラッチであるクラッチ40,42と、非円形歯車要素対用クラッチであるクラッチ44と、回転可能に支持された第2組の入力部材及び出力部材である入力側中間軸52及び出力側中間軸54と、入力側増減速機60と、出力側増減速機70とを備えている。

【0040】
各歯車対16,17,18は、それぞれ、一対の歯車20,30;22,32;24,34が噛み合い、回転角度の遅れがない。すなわち、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達する。

【0041】
入力軸12には、第1及び第2の歯車対16,17の一方の歯車(入力側歯車)20,22が固定され、これらの歯車20,22は入力軸12と一体となって回転する。

【0042】
出力軸14には、第1及び第2の歯車対16,17の他方の歯車(出力側歯車)30,32が、相対回転可能な状態に支持されている。出力側歯車30,32は、クラッチ40,42により、選択的に出力軸14に結合される。すなわち、クラッチ40,42がつながっているONのときには、対応する出力側歯車30,32は出力軸14に対して結合され、結合された出力側歯車30,32と出力軸14とは一体となって回転する。クラッチ40,42が切れているOFFのときには、出力側歯車30,32は、出力軸14の軸方向の移動が拘束されながら、出力軸14に対して相対回転可能となる。したがって、入力軸12の回転は、クラッチ40,42がONになり入力軸12と出力軸14との間に連結された歯車対16,17を介して、出力軸14に伝達される。

【0043】
入力側中間軸52には、非円形歯車対18の一方の歯車(入力側歯車)24が固定され、この歯車24は入力側中間軸52と一体となって回転する。

【0044】
出力側中間軸54には、非円形歯車対18の他方の歯車(出力側歯車)34が、相対回転可能な状態に支持されている。出力側歯車34は、クラッチ44により、選択的に出力側中間軸54に結合される。すなわち、クラッチ44がつながっているONのとき、出力側歯車34は出力側中間軸54に対して結合され、結合された出力側歯車34と出力側中間軸54とは一体となって回転する。クラッチ44が切れているOFFのとき、出力側歯車34は、出力側中間軸54の軸方向の移動が拘束されながら、出力側中間軸54に対して相対回転可能となる。したがって、クラッチ44がONになっているとき、入力側中間軸52の回転は、入力側中間軸52と出力側中間軸54との間に連結された非円形歯車対18を介して、出力側中間軸54に伝達される。

【0045】
入力側増減速機60は、入力軸12と入力側中間軸52とに結合され、入力軸12と入力側中間軸52との間で回転を伝達し、入力軸12から入力側中間軸52へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第1の減速比Rinである。出力側増減速機70は、出力軸14と出力側中間軸54とに結合され、出力軸14と出力側中間軸54との間で回転を伝達し、出力側中間軸54から出力軸14へ回転を伝達する場合の減速比が一定の第2の減速比Routである。

【0046】
クラッチ40,42,44がONのとき、クラッチ40,42,44での滑り等がなければ、クラッチ40,42,44がONとなっている出力側歯車30,32,34から出力軸14又は出力側中間軸54に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。

【0047】
クラッチ40,42,44には、ドグクラッチ、ジョークラッチ、歯形クラッチ等の噛み合いクラッチを用いることが好ましい。円板クラッチ、ドラムクラッチなどの摩擦クラッチでは滑りが発生する可能性があるのに対して、噛み合いクラッチでは、駆動側と被動側とに形成された突起や穴等の機械的構造が噛み合い、摩擦クラッチのような滑りが発生しないので、噛み合いクラッチを用いると、回転角度を極めて正確に伝達し、かつ動力を極めて効率的に伝達することができるからである。なお、クラッチ40,42,44は、ドグクラッチ等の噛み合いクラッチに限定されるものではなく、噛み合いクラッチ以外の摩擦クラッチなどを用いてもよい。

【0048】
図示していないが、クラッチ40,42,44はアクチュエータによって駆動され、アクチュエータの動作は、制御装置によって制御される。また、非円形歯車対18の位相は不図示のセンサにより検出され、検出信号は制御装置に入力される。制御装置は、回転を止めることなく減速比を切り替え、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができるように、クラッチ40,42,44のON/OFFを制御する。

【0049】
各歯車対16,17,18は、クラッチ40,42,44のONによって、入力軸12又は入力側中間軸52と出力軸14又は出力側中間軸54との間に選択的に連結される。クラッチ40のONにより第1の歯車対16が入力軸12と出力軸14との間に連結されたとき、第1の歯車対16によって決まる入力軸12と出力軸14との間の減速比をRとする。クラッチ42のONにより第2の歯車対17が入力軸12と出力軸14との間に連結されたとき、第2の歯車対17によって決まる入力軸12と出力軸14との間の減速比をRとする。

【0050】
入力軸12と出力軸14との間には、3対以上の歯車対を配置し、クラッチによって、それぞれの歯車対が選択的に入力軸12と出力軸14との間に連結されるようにしてもよい。

【0051】
各歯車対が入力軸12と出力軸14との間に連結されたときに、i組目の歯車対によって決まる入力軸12と出力軸14との間の減速比をRとし、全ての組の歯車対についての減速比Rのうち最大値をR、最小値をRとする。図1の例では、R,Rのいずれか一方がR、他方がRとなる。

【0052】
入力側増減速機60の減速比Rinは、(入力軸12の回転速度)/(入力側中間軸52の回転速度)である。出力側増減速機70の減速比Routは、(出力側中間軸54の回転速度)/(出力軸14の回転速度)である。非円形歯車対18によって決まる入力側中間軸52と出力側中間軸54との間の減速比Rは、(入力側歯車24の回転速度)/(出力側歯車34の回転速度)である。減速比Rは非円形歯車の回転によって変化する。

【0053】
クラッチ44のONにより非円形歯車対18が入力側中間軸52と出力側中間軸54との間に連結されたとき、入力軸12から入力側増減速機60、入力側中間軸52、非円形歯車対18、出力側中間軸54、出力側増減速機70を経て出力軸14至る系の減速比、すなわち、(入力軸12の回転速度)/(出力軸14の回転速度)は、Rin×R×Routとなる。

【0054】
歯車対の減速比の最小値Rに対応する、非円形歯車対の第1組の噛み合い区間に含まれるある噛み合い区間での減速比をR'とすると、減速比RとR'との間には次の関係がある。
=Rin×R'×Rout ・・・(1)
すなわち、R'は次のように表わすことができる。
'=R/(Rin×Rout) ・・・(2)

【0055】
また、歯車対の減速比の最大値Rに対応する、非円形歯車対の第1組の噛み合い区間に含まれる他の噛み合い区間での減速比をR'とすると、減速比RとR'との間には次の関係がある。
=Rin×R'×Rout ・・・(3)
すなわち、R'は次のように表すことができる。
'=R/(Rin×Rout) ・・・(4)

【0056】
なお、非円形歯車対の減速比は回転中に変化するが、少なくとも減速比R'から減速比R'の範囲の減速比となる区間を有する必要がある。

【0057】
非円形歯車対18が噛み合い続けるためには、nを1以上の自然数とすると、入力側歯車24が1回転すると、出力側歯車34がn回転(又は1/n回転)する必要がある。非円形歯車対18の減速比は変動するが、平均すると1/n(又はn)となる必要がある。非円形歯車対18の減速比は、回転中は過渡的には、1/n(又はn)よりも大きい値になったり、1/n(又はn)よりも小さい値になったりする。

【0058】
'<1/n(又はn)<R'となっていれば、1/n(又はn)よりも小さい減速比(例えばR')となる噛み合い区間と、1/n(又はn)よりも大きい減速比(例えばR')となる噛み合い区間が、もともと存在するため、非円形歯車対18の減速比の平均を1/n(又はn)にすることが容易になる。

【0059】
mを1以上の自然数又はその逆数とすると、
'<m<R' ・・・(5)

【0060】
式(5)を書き直すと、
/(Rin×Rout)<m<R/(Rin×Rout) ・・・(6)
となる。

【0061】
したがって、式(6)を満たせば、非円形歯車対18について、非円形歯車対18の減速比の平均がmとなるように構成することが容易になる。また、非円形歯車対18の減速比が円滑に変化するようにしやすくなる。

【0062】
すなわち、入力軸12と出力軸14との間に連結される少なくとも2組の歯車対16,17の減速比Rの任意の組み合わせについて、減速比Rの最小値Rと最大値Rが決まると、式(6)を満たすように、m,Rin,Routを選択すればよい。

【0063】
非円形歯車対18は、各組の歯車対のそれぞれの減速比Rに対応して、減速比がR/(Rin×Rout)となる第1組の噛み合い区間と、この第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間とを含み、減速比の平均がmになるように構成する。

【0064】
非円形歯車対18の減速比の最小値は必ずしもR'とする必要はなく、また、非円形歯車対18の減速比の最大値は必ずしもR'とする必要はない。しかしながら、非円形歯車対の減速比の最小値をR'とし、その最大値をR'とすると、非円形歯車対18の減速比が変化する範囲はR'からR'までとなる。この場合、R'よりも小さな減速比状態や、R'よりも大きな減速比状態などの好ましくない減速比となる状態が発生しないようにすることができる。これにより、非円形歯車対18の構成を簡単なものにすることができ、非円形歯車対18の減速比が円滑に変化しやすい。

【0065】
特に、n=1、すなわちm=1の場合、式(6)は、
/(Rin×Rout)<1<R/(Rin×Rout) ・・・(7)
となる。

【0066】
この式(7)を満たすようにすると、非円形歯車対18の減速比の平均は1となり、非円形歯車対18は、作製しやすい簡単な構成にしやすくなる。

【0067】
例えばR=1.5,R=1.2の場合、式(7)を満たすように、Rin×Rout=4/3を選択すると、非円形歯車対18の減速比は、例えば図5に示すように、0.9と1.125との間を変動するように構成することができる。

【0068】
図5と図7とを比較して分かるように、この場合、非円形歯車対18の減速比の変化を円滑にすることができる。

【0069】
また、入力軸12と出力軸14の間に配置された各歯車対16,17のいずれかと、入力側中間軸52と出力側中間軸54との間に配置された非円形歯車対18とが同時に回転を伝達する区間、すなわち減速比が0.9、1.125である第1組の噛み合い区間を長くすることが可能である。それゆえに、入力軸12と出力軸14との間に連結する歯車対16,17の切り替えを円滑に行うことが容易である。

【0070】
in×Routの値は1以外である。これを実現するため、(a)入力側増減速機と出力側増減速機に異なる構成のものを用いる、あるいは、(b)入力側増減速機を出力側増減速機と同じ構成の増減速機と追加の増減速機の組み合わせにより構成する、または、(c)出力側増減速機を入力側増減速機と同じ構成の増減速機と追加の増減速機の組み合わせにより構成するなどの方法を用いる。

【0071】
なお、第1の減速比Rinや第2の減速比Routの一方が1であってもよい。その場合、増減速機60,70に対応する部分は、入力軸12と入力側中間軸52、出力側中間軸54と出力軸14をそれぞれ一体化したり、結合したり、カップリングで結合したりして、増減速されることなく回転が伝達されるようにすればよい。

【0072】
以上に説明したように、式(6)を満たすように、非円形歯車対18及び増減速機60,70を構成することによって、非円形歯車対18の減速比の変化を円滑にしやすくなる。式(6)は、入力軸12と出力軸14との間に配置された少なくとも2組の歯車対16,17の減速比Rの様々な組み合わせに対して、例えば、全ての減速比Rがn以上かつn+1以下である場合や、1/n以下かつ1/(n+1)以上である場合でも、m,Rin,Routを適宜に選択することで、満たすようにすることができる。

【0073】
図2は、非円形歯車対18のピッチ曲線を模式的に示す略図である。図2に示すように、非円形歯車対18の対をなす歯車24,34は非円形歯車であり、非円形歯車対18の対をなす歯車24,34のピッチ曲線は、第1の歯車対16に対応するピッチ円20p,30pの円弧と等しい第1の区間25,35と、第2の歯車対17に対応するピッチ円22p,32pの円弧と等しい第3の区間27,37と、第1の区間25,35と第3の区間27,37との間を接続する第2及び第4の区間26,36;28,38とを有する。第1及び第3の区間25,35;27,37は、歯車対16,17のそれぞれの減速比に対応する第1組の噛み合い区間である。第2及び第4の区間26,36;28,38は、第1組の噛み合い区間の間を接続する第2組の噛み合い区間である。

【0074】
非円形歯車対18の対をなす歯車24,34は、図2において矢印で示す方向に回転するとき、歯車24,34のピッチ曲線の各区間25,35;26,36;27,37;28,38同士が噛み合う。第1の歯車対16の減速比がRとなり、第2の歯車対17の減速比がRとなるとすると、第1の区間25,35における減速比は、第1の歯車対16の減速比Rに対応して、R/(Rin×Rout)となる。第3の区間27,37における減速比は、第2の歯車対17の減速比Rに対応して、R/(Rin×Rout)となる。第2及び第4の区間26,36;28,38における減速比は、R/(Rin×Rout)とR/(Rin×Rout)との間で変化する。

【0075】
非円形歯車対18が入力側中間軸52と出力側中間軸54との間に連結されている状況において、非円形歯車対18が、図2(a)に示すように、第3の区間27,37で噛み合う場合は、入力軸12と出力軸14との間の減速比はRとなり、図2(b)で示すように、第1の区間25,35で噛み合う場合は、入力軸12と出力軸14との間の減速比はRとなる。第2の区間26,36、第4の区間28,38で噛み合う場合は、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、RとRの間で変化する。

【0076】
次に、変速機10の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。

【0077】
図3(a)及び図4(a)は、非円形歯車対18の減速比Rのグラフである。横軸は入力側中間軸52の回転角度、縦軸は入力側歯車24と出力側歯車34との間の減速比である。図3(b)及び図4(b)の表では、クラッチ40,42,44のONの状態を○印で示し、クラッチ40,42,44のOFFの状態は空欄としている。

【0078】
第1の歯車対16の減速比がRとなり、第2の歯車対17の減速比がRとなるとする。図3(b)及び図4(b)において、減速比がRである第1の歯車対16のクラッチ40を「クラッチ(R)」、減速比がRである第2の歯車対17のクラッチ42を「クラッチ(R)」、減速比が変化する非円形歯車対18のクラッチ44を「クラッチ(変速)」と表している。

【0079】
減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40がON、クラッチ42,44がOFFのときには、入力軸12と出力軸14との間は、一定の減速比Rとなる。減速比Rの第2の歯車対17のクラッチ42がON、クラッチ40,44がOFFのときには、入力軸12と出力軸14との間は、一定の減速比Rとなる。非円形歯車対18の減速比は、図3(a)及び図4(a)に示すように、入力軸12の回転、すなわち、入力側中間軸52の回転に伴って減速比R/(Rin×Rout)とR/(Rin×Rout)とを含む所定範囲内で変化する。なお、図3(a)及び図4(a)において、非円形歯車対18の減速比が変化するときの曲線は模式的に図示されている。

【0080】
入力軸12と出力軸14との間の減速比をRからRに変える場合には、以下のようにクラッチ40,42,44を動作させる。

【0081】
図3(a)に示すように、減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40がONの状態で、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間301を通過し、一定の減速比R/(Rin×Rout)となる区間302に入ったら、図3(b)に示すように、第1の歯車対16のクラッチ40に加え、非円形歯車対18のクラッチ44をONにする。そして、区間302において非円形歯車対18のクラッチ44がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間303に入る前に、第1の歯車対16のクラッチ40をOFFにする。

【0082】
そして、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間303では、非円形歯車対18のクラッチ44のみがONである。区間303では、入力側中間軸52と出力側中間軸54との間に非円形歯車対18が連結されているので、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、RからRに変化する。この間、クラッチ44の滑りがなければ、非円形歯車対18の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。

【0083】
非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間303を通過して、一定の減速比R/(Rin×Rout)となる区間304に入ったら、図4(b)に示すように、減速比Rの第2の歯車対17のクラッチ42をONにする。そして、区間304において第2の歯車対17のクラッチ42がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間305に入る前に、非円形歯車対18のクラッチ44をOFFにする。このようにして、入力軸12と出力軸14との間に第2の歯車対17のみが連結された後は、入力軸12と出力軸14との間の減速比はR一定となり、第2の歯車対17の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。

【0084】
クラッチ40,42,44は、駆動側と被動側とが同じ速度のときにON/OFFの切り替えを行うので、クラッチ40,42,44に、ドグクラッチ等の噛み合いクラッチを問題なく用いることができる。

【0085】
入力軸12と出力軸14との間の減速比をRからRに変える場合も、上記と同様である。

【0086】
すなわち、図4(a)に示すように、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間401を通過し、一定の減速比R/(Rin×Rout)となる区間402に入ったら、図4(b)に示すように、減速比Rの第2の歯車対17のクラッチ42に加え、非円形歯車対18のクラッチ44をONにする。そして、区間402において非円形歯車対18のクラッチ44がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間403に入る前に、第2の歯車対17のクラッチ42をOFFにする。

【0087】
そして、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間403では、非円形歯車対18のクラッチ44のみがONである。区間403では、入力側中間軸52と出力側中間軸54との間に非円形歯車対18が連結されているので、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、RからRに変化する。この間、クラッチ44の滑りがなければ、非円形歯車対18の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。

【0088】
非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間403を通過して、一定の減速比R/(Rin×Rout)となる区間404に入ったら、図4(b)に示すように、減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40をONにする。そして、この区間404において第1の歯車対16のクラッチ40がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がR/(Rin×Rout)からR/(Rin×Rout)に変化する区間405に入る前に、非円形歯車対18のクラッチ44をOFFにする。このようにして、入力軸12と出力軸14との間に第1の歯車対16のみが連結された後は、入力軸12と出力軸14との間は一定の減速比Rとなり、第1の歯車対16の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。

【0089】
以上に説明したように、変速機10は、減速比の様々な組み合わせに対して非円形歯車対の減速比の変化を円滑にすることでき、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。

【0090】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形を加えて実施することが可能である。

【0091】
例えば、本発明の変速機に、第1組の入力部材と出力部材の間に配置され、第2組の入力部材と出力部材の間に配置された非円形歯車要素対とは無関係に、第1組の入力部材と出力部材の間に解除可能に連結される歯車要素対を追加してもよい。この場合、追加した歯車要素対の減速比から別の減速比に切り替える場合や別の減速比から追加した歯車要素対の減速比に切り替える場合には、減速比を切り替える際に、第2組の入力部材と出力部材の間に配置された非円形歯車要素対を使用しない、すなわち、非円形歯車要素対を第2組の入力部材と出力部材の間に連結しない。この場合、本発明の変速機における各組の歯車要素対の減速比のうち最小値R及び最大値Rは、本発明の変速機に追加された歯車要素対の減速比を無視して、決める。

【0092】
例えば、第1組の入力部材と出力部材の間に第1組及び第2組の歯車要素対が配置され、第2組の入力部材と出力部材の間に配置された非円形歯車要素対が、第1組の歯車要素対と第2組の歯車要素対との間で減速比を切り替えるときに第2組の入力部材と出力部材の間に連結されるように構成した本発明の変速機に、第1組の入力部材と出力部材の間に配置され、第1組の入力部材と出力部材の間に解除可能に連結される第3組乃至第5組の歯車要素対が配置された場合、本発明の変速機における各組の歯車要素対の減速比のうち最小値R及び最大値Rは、第1組及び第2組の歯車要素対の減速比のうちから決めればよく、第3組乃至第5組の歯車要素対の減速比とは無関係に決まる。
【符号の説明】
【0093】
10 変速機
12 入力軸(第1組の入力部材)
14 出力軸(第1組の出力部材)
16 第1の歯車対(歯車要素対)
17 第2の歯車対(歯車要素対)
18 非円形歯車対(非円形歯車要素対)
20,22,24 入力側歯車
30,32,34 出力側歯車
40 クラッチ(歯車要素対用クラッチ)
42 クラッチ(歯車要素対用クラッチ)
44 クラッチ(非円形歯車要素対用クラッチ)
52 入力側中間軸(第2組の入力部材)
54 出力側中間軸(第2組の出力部材)
60 入力側増減速機
70 出力側増減速機
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7