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明細書 :骨セメント組成物及び骨セメント組成物キット並びに骨セメント硬化体の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5602127号 (P5602127)
登録日 平成26年8月29日(2014.8.29)
発行日 平成26年10月8日(2014.10.8)
発明の名称または考案の名称 骨セメント組成物及び骨セメント組成物キット並びに骨セメント硬化体の形成方法
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
FI A61L 27/00 F
請求項の数または発明の数 10
全頁数 37
出願番号 特願2011-501593 (P2011-501593)
出願日 平成22年2月23日(2010.2.23)
国際出願番号 PCT/JP2010/052703
国際公開番号 WO2010/098305
国際公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
優先権出願番号 2009041977
2009142131
優先日 平成21年2月25日(2009.2.25)
平成21年6月15日(2009.6.15)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成24年11月30日(2012.11.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】509010229
【氏名又は名称】アドバンスド・メディックス株式会社
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
発明者または考案者 【氏名】中村 孝志
【氏名】後藤 公志
【氏名】渋谷 武宏
【氏名】上田 泰行
【氏名】吹田 徳雄
【氏名】今村 匡志
【氏名】西井 啓晃
個別代理人の代理人 【識別番号】100078754、【弁理士】、【氏名又は名称】大井 正彦
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 特開2001-245821(JP,A)
特開2000-254220(JP,A)
国際公開第2006/123589(WO,A1)
米国特許出願公開第2007/0213425(US,A1)
特開2007-054619(JP,A)
特開2004-201869(JP,A)
特表2001-503290(JP,A)
調査した分野 A61L 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
平均粒子径が10~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と、(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とを含有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合が、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%であり、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の一部または全部が、平均粒子径30~50μmの凝集体の形態で含有されていることを特徴とする骨セメント組成物。
【請求項2】
フィラーが含有されていることを特徴とする請求項1に記載の骨セメント組成物。
【請求項3】
前記フィラーが、少なくとも二酸化チタン粒子を含むことを特徴とする請求項2に記載の骨セメント組成物。
【請求項4】
前記二酸化チタン粒子が、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmである球状のものであることを特徴とする請求項3に記載の骨セメント組成物。
【請求項5】
前記フィラーが、硫酸バリウムおよび/または酸化ジルコニウムを含むことを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の骨セメント組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の骨セメント組成物を得るための骨セメント組成物キットであって、
平均粒子径が10~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子および重合開始剤を含有する重合開始剤含有キット成分と、(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー含有キット成分とを含有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合が、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%であり、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の一部または全部が、平均粒子径30~50μmの凝集体の形態で含有されていることを特徴とする骨セメント組成物キット。

【請求項7】
前記重合開始剤含有キット成分が、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーを含有することを特徴とする請求項6に記載の骨セメント組成物キット。
【請求項8】
平均粒子径が10~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子との存在下において、(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤とを混練し、当該(メタ)アクリレート系モノマーを重合させる工程を有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%で用い、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の一部または全部が、平均粒子径30~50μmの凝集体の形態で混練されることを特徴とする骨セメント硬化体の製造方法
【請求項9】
(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤との混練物を放置する過程を経ることによって(メタ)アクリレート系モノマーを重合させることを特徴とする請求項8に記載の骨セメント硬化体の製造方法
【請求項10】
(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤との混練が、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子および(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と共に、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーの存在下において行われることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の骨セメント硬化体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメント組成物および骨セメント組成物キット並びに骨セメント硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨セメント組成物は、骨の欠損部の補填剤、あるいは人工股関節などの金属製の人工関節を周囲の骨と固定する接着剤などとして世界中において広く使用されており、このような骨セメント組成物としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系骨セメント組成物が最も汎用されている。
PMMA系骨セメント組成物とは、一般的に、ポリメチルメタクリレートと、重合性単量体であるメチルメタクリレートモノマーと、重合開始剤とを含有し、メチルメタクリレートモノマーがポリメチルメタクリレートの存在下において重合することによって徐々に粘度が高くなって最終的に硬化体を形成するものである。
【0003】
近年、PMMA系骨セメント組成物としては、従来から用いられているPMMA系骨セメント組成物において、当該組成物が生体親和性を有するものの、生体活性能、すなわち骨に結合する骨結合性能を有するものではないことから、特に人工関節と周囲の骨とを固定する接着剤として用いた場合には、適用してから長期間が経過することにより、接着剤が周囲の骨から隔離してしまい、これに起因して人工関節と骨との間に緩みを生じてしまうという問題が生じているために、この問題を解決すべく、生体活性能を付与する目的から二酸化チタン粒子を添加してなる組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような骨セメント組成物は、通常、手術中などの適用する直前に混練することによってメチルメタクリレート系モノマーの重合反応を開始させ、その混練物を放置するなどして粘度がある程度高い状態となったところでハンドリング作業により適用対象部位に適用されるなどして用いられている。
【0005】
しかしながら、従来から用いられている骨セメント組成物においては、多くの場合、特に手術中には、前記のハンドリング作業中に、例えば手に装着したラテックス製の外科用手袋に付着するなどの弊害が生じてしまう、という問題がある。
このような問題は、骨セメント組成物の混練物が十分な粘度を有する状態となる以前にハンドリング作業が開始されてしまっていることに起因するものであることから、「ダウタイム」と称される、良好なハンドリング作業を行うために必要とされる十分な粘度を有する状態となるために要する時間を短縮することが求められている。特に二酸化チタン粒子などのフィラーが添加されてなる場合においては、ダウタイムが長くなる傾向にあるために前述の問題が顕著であることから、ダウタイムを短縮することが強く求められている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-54619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、良好なハンドリング作業を行うことのできる状態となるまでに要する時間であるダウタイムが短く、その結果、ハンドリング作業を開始するまでに要する時間が短時間となることによって高い作業効率を得ることのできる骨セメント組成物および骨セメント組成物を得るための骨セメント組成物キット並びに骨セメント組成物が硬化してなる骨セメント硬化体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の骨セメント組成物は、平均粒子径が10~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と、(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とを含有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合が、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%であり、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の一部または全部が、平均粒子径30~50μmの凝集体の形態で含有されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の骨セメント組成物においては、フィラーが含有されていることが好ましい。
このような構成の本発明の骨セメント組成物においては、前記フィラーが、少なくとも二酸化チタン粒子を含むことが好ましい。
また、前記二酸化チタン粒子は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmである球状のものであることが好ましい。
さらに、前記フィラーが、硫酸バリウムおよび/または酸化ジルコニウムを含むことができる。
【0011】
本発明の骨セメント組成物キットは、上記の骨セメント組成物を得るための骨セメント組成物キットであって、
平均粒子径が10~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子および重合開始剤を含有する重合開始剤含有キット成分と、(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー含有キット成分とを含有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合が、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%であり、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の一部または全部が、平均粒子径30~50μmの凝集体の形態で含有されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の骨セメント組成物キットにおいては、前記重合開始剤含有キット成分が、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーを含有することが好ましい。
【0014】
本発明の骨セメント硬化体の製造方法は、平均粒子径が10~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子との存在下において、(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤とを混練し、当該(メタ)アクリレート系モノマーを重合させる工程を有し、
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%で用い
前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の一部または全部が、平均粒子径30~50μmの凝集体の形態で含有されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の骨セメント硬化体の製造方法においては、(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤との混練物を放置する過程を経ることによって(メタ)アクリレート系モノマーを重合させることが好ましい。
【0016】
本発明の骨セメント硬化体の製造方法においては、(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤との混練が、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子および(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と共に、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーの存在下において行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の骨セメント組成物によれば、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と共に、当該大径粒子よりも小径の特定の平均粒子径を有する(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子が特定の割合で含有されていることにより、ハンドリング作業を行うために必要とされる十分な粘度を有する状態に至るまでに要する時間が短くなるため、良好なハンドリング作業を行うことのできる状態となるまでに要する時間であるダウタイムが短くなり、その結果、ハンドリング作業を開始するまでに要する時間が短時間となることから高い作業効率を得ることができる。このような効果は、特に、二酸化チタン粒子を含むフィラーが含有されている場合において顕著に発揮され、当該フィラーが添加されることによって長時間を要する傾向にあるダウタイムの短縮化を図ることができることから、作業効率を改善することができる。
【0019】
本発明の骨セメント組成物キットによれば、キット成分を単に混練処理することによって骨セメント組成物を得ることができることから、骨セメント組成物の硬化体を容易に製造することができ、しかも(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とが個別のキット成分とされていることから、適用前の保管されている状態あるいは運搬されている状態などにおいて(メタ)アクリレート系モノマーが重合することを防止することができる。
【0020】
本発明の骨セメント硬化体の製造方法によれば、形成すべき骨セメント硬化体における基材成分を形成するための(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と共に、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の存在下において行われることによって初期段階において速やかに進行し、良好なハンドリング作業を行うために必要とされる十分な粘度を有する状態となるために要する時間が短くなることから、良好なハンドリング作業を行うことのできる状態となるまでに要する時間であるダウタイムが短くなり、その結果、ハンドリング作業を開始するまでに要する時間が短時間となることから高い作業効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例13に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の表面(疑似体液に浸漬する前)を示すSEM写真である。
【図2】実施例13に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【図3】実施例14に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【図4】実施例15に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【図5】実施例16に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【図6】実施例17に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【図7】実施例18に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【図8】実施例19に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【図9】X線造影性の測定によって得られた実施例13~実施例16の各々に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の写真であり、上から順に、実施例13に係る写真、実施例14に係る写真、実施例15に係る写真および実施例16に係る写真である。
【図10】X線造影性の測定によって得られた実施例13および実施例17~実施例19の各々に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の写真であり、上から順に、実施例13に係る写真、実施例17に係る写真、実施例18に係る写真および実施例19に係る写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0023】
<骨セメント組成物>
本発明の骨セメント組成物は、(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤と、平均粒子径が10~60μm、好ましくは20~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と共に、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子とを必須成分として含有し、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合が、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%、好ましくは5~20質量%であるものである。
この本発明の骨セメント組成物は、(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と共に、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を基材形成用成分とするものであり、この基材形成用成分のうちの重合性単量体である(メタ)アクリレート系モノマーが重合することにより、徐々に粘度が高くなってペースト状となり、最終的には硬化され、硬化体を形成するものである。
ここに、本発明の骨セメント組成物が硬化することによって得られる硬化体は、その基材成分が、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成されるポリマーと、この(メタ)アクリレート系モノマーと共に基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子および(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子とにより形成されてなるものである。

【0024】
((メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子)
本発明の骨セメント組成物の必須成分である(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子は、骨セメント組成物が硬化する過程における、良好なハンドリング作業を行うことのできる状態、具体的には十分な粘度を有する状態となるまでに要する時間であるダウタイムを調整して短くするためのダウタイム調整剤として作用するものである。
ここに、「ダウタイム」とは、アクリル系外科用骨セメントに係る国際規格であるISO規格による測定法「ISO5833 Annex B」において、混練を開始してからその混練物が手術用ラテックス手袋に付着しなくなるまでに要する時間と定義されている。

【0025】
この(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子は、平均粒子径が0.1μm以上で2.0μm以下であることが必要とされるが、好ましくは0.1~1.0μm、特に好ましくは0.1~0.7μmである。
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径である。
また、レーザー回折/散乱式粒度分布計としては、具体的に、例えば粒度分布測定装置「Microtrac」(日機装株式会社製)を用いることができる。

【0026】
(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の平均粒子径が過大である場合には、ダウタイムを実用上十分に短くすることができない。
また、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子は、その平均粒子径を2.0μm以下とすることによってダウタイムを短くする作用が発現され、具体的には、ダウタイムを実用上好ましいとされる2.5~5分間の範囲とすることができるのだが、平均粒子径が0.1μm未満の粒子を製造することは容易ではない。

【0027】
(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子は、重合性単量体としての(メタ)アクリレート系モノマーが重合されてなるものであり、その具体例としては、例えば、(A)メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレートなどのアルキルメタクリレートモノマーの重合体である、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)などのポリアルキルメタクリレート、(B)メチルメタクリレートと共に、スチレン、エチルメタクリレートおよびメチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種が共重合されてなる共重合体、(C)ビスフェノール-Aジグリシジルジメタクリレート(Bis-GMA)、2,2-ビス[4-(3-メタクリロキシ-2-ハイドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン(Bis-MEPP)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)などのジメタクリレート系モノマーの重合体などが挙げられる。

【0028】
本発明の骨セメント組成物を構成する(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子としては、共に基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と同一もしくは類似の材料よりなるものであることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と(メタ)アクリレート系モノマーとの関係から、メチルメタクリレートを重合性単量体として用いてなるポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいは共重合体であることが好ましく、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)であることが好ましい。

【0029】
(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子としては、重量平均分子量が好ましくは100,000以上、更に好ましくは100,000~400,000、特に好ましくは150,000~400,000であるものを用いることが好ましい。
(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の重量平均分子量を100,000~400,000の範囲とすることによっては、ダウタイムの十分な短縮化を図ることができると共に、得られる硬化体を十分な機械的強度を有するものとすることができる。
また、重量平均分子量が特に150,000~400,000であることが好ましいとされる理由は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の重量平均分子量が150,000以下である場合には、ダウタイムを短くする作用が小さくなることから、十分なダウタイムの短縮化を図るためにはその含有割合を大きくすることが必要とされ、一方、重量平均分子量が400,000を超える場合には、ダウタイムを十分に短くすることができるのだが、得られる硬化体に十分な機械的強度が得られなくなるおそれがあるからである。

【0030】
また、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子としては、その一次粒子形状が、球状であることが好ましい。
(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の形状を球状とすることにより、高い流動性が得られ、それにより、組成物中における均一な分散性が得られることとなる。
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の粒子形状は、電子顕微鏡写真にて観察することによって確認することができる。

【0031】
このような構成を有する(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子は、小径で球状のポリマー粒子を容易に得ることができることから、例えば重合性単量体としての(メタ)アクリレート系モノマーを水系媒体中において重合反応させること、例えば乳化重合や懸濁重合などを利用し、必要に応じてこの重合反応によって得られたポリマー粒子を解砕する目的から、粉砕処理することによって製造することができ、具体的には、下記の公知の手法によって製造することができる。

【0032】
本発明の骨セメント組成物に用いられる(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を製造するための最適な手法の具体例としては、例えば重合性単量体としての(メタ)アクリレート系モノマーを、重合開始剤として過硫酸カリウムとチオ硫酸ナトリウムよりなるレドックス触媒を用いると共に、重合促進剤として2価の銅イオン化合物を用い、かつ、重合温度70℃以上の条件によって重合反応させるソープフリー重合と称される手法が挙げられる。
この手法によれば、得られる(メタ)アクリレート系ポリマーの平均粒子径を所望の範囲に簡便に調整することができる。

【0033】
そして、本発明の骨セメント組成物においては、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子が一次粒子よりなるものであってもよいが、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の一部または全部が凝集体の形態で含有されていることが好ましい。

【0034】
(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の凝集体は、平均粒子径が30~50μmであることが好ましく、より好ましくは30~45μm、特に好ましくは35~45μmである。
また、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の凝集体の形状は、真球状、略球状などの球状であることが好ましい。
凝集体の形状を球状とすることにより、高い流動性が得られ、それにより、組成物中における均一な分散性が得られることとなる。
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の凝集体の形状は、電子顕微鏡写真にて観察することによって確認することができ、また、その平均粒子径は、電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて測定されるメジアン径である。

【0035】
このように(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子が、その平均粒子径が30~50μmの範囲の特定の大きさを有する凝集体の形態で含有されることにより、その大きさが(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と同等または近似することとなるため、組成物を混練した場合に均一性の高い状態を得ることができることから、ダウタイムを短くする作用が大きく発揮されることとなり、ダウタイムをより一層好ましいとされる範囲である2.5~4分間とすることができる、という効果が得られる。

【0036】
このような構成を有する(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の凝集体は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の分散液を得、その分散液を噴霧乾燥処理する手法によって製造することができる。
具体的には、噴霧乾燥装置を用い、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の分散液を、噴霧乾燥装置のノズルから微細な霧状液滴として噴射して熱風中に噴出させて乾燥することにより、その粒子形状が球状の乾燥造粒体として得られる。
噴霧乾燥装置としては、通常のスプレードライヤーなどの通常の噴霧乾燥機を用いることができ、また、その噴霧方式は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の分散液の性状や噴霧乾燥機の処理能力などに応じて、例えばディスク式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、四流体ノズル式などを適宜選択することができる。

【0037】
本発明の骨セメント組成物において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して、5質量%以上であって30質量%以下であることが必要とされ、好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~20質量%、更に好ましくは10~15質量%である。

【0038】
(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合が過小である場合には、ダウタイムを所望の範囲にまで短縮することができない。
一方、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合が過大である場合には、ダウタイムが所望の範囲よりも短くなるために良好なハンドリング作業を行うことができなくなる。また、含有割合が過大であることに起因して組成物の粘度が高くなる、あるいは硬化温度の上昇を招くことからも、良好なハンドリング作業を行うことができなくなる。

【0039】
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は、組成物全体に対しては、0.7~23.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは1.5~15.0質量%である。また、基材形成用成分全体に対しては、1.5~24.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは2.5~15.0質量%である。

【0040】
((メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子)
本発明の骨セメント組成物の必須成分である(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子は、基材形成用成分を構成するものである。

【0041】
この(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子は、平均粒子径が10μm以上であって60μm以下であることが必要とされるが、好ましくは20~60μm、更に好ましくは30~50μm、特に好ましくは35~45μmである。
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径である。
また、レーザー回折/散乱式粒度分布計としては、具体的に、例えば粒度分布測定装置「Microtrac」(日機装株式会社製)を用いることができる。

【0042】
(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の平均粒子径が過小である場合には、硬化時間が短くなることに伴って、硬化時間との関係から所望のダウタイムを得ることができなくなる。
一方、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の平均粒子径が過大である場合には、所望のダウタイムを得るために(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合を大きくすることが必要となり、この(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合を大きくすることによっては硬化温度の上昇を招くことなどから、良好なハンドリング作業を行うことができなくなる。

【0043】
(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と同様に、重合性単量体としての(メタ)アクリレート系モノマーが重合されてなるものであり、その具体例としては、例えば(A)ポリアルキルメタクリレート、(B)メチルメタクリレートと共に、スチレン、エチルメタクリレートおよびメチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種が共重合されてなる共重合体、(C)ジメタクリレート系モノマーの重合体などの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を構成する重合体として例示したものが挙げられる。

【0044】
(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子としては、共に基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系モノマーと同質の重合性単量体が重合されてなるものであることが好ましく、具体的には、基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとの関係から、メチルメタクリレートを重合性単量体として用いてなるポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいは共重合体であることが好ましく、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)であることが好ましい。

【0045】
(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子としては、重量平均分子量が好ましくは100,000以上、更に好ましくは130,000~170,000であるものを用いることが好ましい。

【0046】
また、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子は、通常、一次粒子よりなるものであり、その粒子形状が、球状であることが好ましい。
(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の形状を球状とすることにより、高い流動性が得られ、それにより、組成物中における均一な分散性が得られることとなる。
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の粒子形状は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の粒子形状と同様に電子顕微鏡写真にて観察することによって確認することができる。

【0047】
このような構成を有する(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と同様に、例えば重合性単量体としての(メタ)アクリレート系モノマーを水系媒体中において重合反応させること、具体例には、例えば乳化重合や懸濁重合などを利用し、必要に応じてこの重合反応によって得られたポリマー粒子を解砕処理することにより製造することができる。

【0048】
本発明の骨セメント組成物において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は、組成物全体に対して10~70質量%であることが好ましく、より好ましくは25~70質量%である。また、基材形成用成分全体に対しては、20~75質量%であることが好ましく、より好ましくは40~75質量%である。

【0049】
((メタ)アクリレート系モノマー)
本発明の骨セメント組成物の必須成分である(メタ)アクリレート系モノマーは、基材形成用成分を構成するものであり、この重合性単量体である(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって当該骨セメント組成物が硬化され、その結果、硬化体が得られることとなる。

【0050】
(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えばアルキルメタクリレートモノマー、ジメタクリレート系モノマーなどと共に基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系ポリマーを得るための重合性単量体として例示したものが挙げられる。
(メタ)アクリレート系モノマーの好ましい具体例としては、メチルメタクリレート(MMA)が挙げられる。

【0051】
(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合は、組成物全体に対して19~35質量%であることが好ましく、更に好ましくは24~35質量%である。また、基材形成用成分全体に対しては、20~70質量%であることが好ましく、更に好ましくは25~50質量%である。

【0052】
(重合開始剤)
本発明の骨セメント組成物の必須成分である重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化tert-ブチル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリルなどを用いることができる。
これらのうちでは、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が速やかに開始され、しかもその反応を持続させやすいことから、過酸化ベンゾイルを用いることが好ましい。

【0053】
重合開始剤の含有割合は、(メタ)アクリレート系モノマー100質量部に対して1~10質量部であることが好ましく、更に好ましくは2~9質量部である。
重合開始剤の含有割合が過小である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が進みにくくなるおそれがある。一方、重合開始剤の含有割合が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体に重合開始剤が残留しやすくなる。

【0054】
また、本発明の骨セメント組成物には、必須成分である、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子および(メタ)アクリレート系モノマーよりなる基材形成用成分、重合開始剤の他、最終的に得られる硬化体に使用用途に応じた機能を付与する目的から、フィラーが含有されていることが好ましく、また、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応をより一層速やかに進行させる目的から、重合開始剤と共に重合促進剤が含有されていることが好ましい。

【0055】
(重合促進剤)
重合促進剤としては、例えばN,N-ジメチル-p-トルイジン、2, 4, 6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどを用いることができる。
これらのうちでは、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が速やかに進行されることから、N,N-ジメチル-p-トルイジンを用いることが好ましい。

【0056】
重合促進剤の含有割合は、(メタ)アクリレート系モノマー100質量部に対して0.4~5. 0質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.5~2.0質量部である。
重合促進剤の含有割合が過小である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が進みにくくなるおそれがある。一方、重合促進剤の含有割合が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体に重合促進剤が残留しやすくなる。

【0057】
(フィラー)
フィラーとしては、二酸化チタン、リン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム)、硫酸バリウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などの無機物よりなり、これらの無機物を単独または2種以上を適宜に選択して組み合わせてなるものを用いることができる。これらのうちでは、二酸化チタンよりなるものが好ましい。
その理由は、二酸化チタンが、それ自体が体液環境下におけるアパタイト形成能を有するものであることから、この二酸化チタンよりなるフィラーが含有されることにより、最終的に得られる硬化体が高い生体活性能を有するものとなるためである。

【0058】
また、フィラーは、上述のように二酸化チタンよりなるものであることが好ましいが、二酸化チタンと共に、その他の無機物、具体的にはリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム)、硫酸バリウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などを併用してなるものであってもよい。これらのうちでは、X線造影効果を有する酸化ジルコニウムや硫酸バリウムを併用してなるものが好ましい。

【0059】
フィラーの含有割合は、組成物全体に対して5質量%以上であることが好ましい。
また、フィラーとして二酸化チタンと共にその他の無機物を組み合わせてなるものを用いる場合においては、それらの混合割合は適宜に設定することができるが、フィラーに含まれる二酸化チタンの含有割合が組成物全体に対して5~50質量%であることが好ましく、より好ましくは5~40質量%であり、更に好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは10~25質量%である。
フィラーに含まれる二酸化チタンの含有割合が過小である場合には、十分な生体活性能が得られなくなるおそれがある。
一方、フィラーに含まれる二酸化チタンの含有割合が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体が物理的強度の小さいものとなるおそれがある。

【0060】
また、フィラーにX線造影効果を有する酸化ジルコニウムおよび/または硫酸バリウムが含まれる場合においては、その含有割合は、造影性の観点から、組成物全体に対して5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上である。

【0061】
本発明の骨セメント組成物において、フィラーは少なくとも二酸化チタン粒子を含むものであることが好ましく、このフィラーを構成する二酸化チタン粒子は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであることが好ましく、より好ましくは1.5~7.0μm、更に好ましくは2.0~7.0μm、特に好ましくは2.0~6.5μmである。
ここに、レーザー回折/散乱式粒度分布計としては、具体的に、例えば粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用いることができる。

【0062】
二酸化チタン粒子のメジアン径が過小である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体が物理的強度が小さいものとなるおそれがある。
一方、二酸化チタン粒子のメジアン径が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体の物理的強度が過剰に大きくなるため、この硬化体と、組成物の適用部位に係る骨との物理的強度の差が大きくなることに起因して骨折が生じやすくなるなどの弊害が生じるおそれがある。

【0063】
また、前記二酸化チタン粒子は、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gであることが好ましく、より好ましくは0.5~5.0m2 /g、更に好ましくは0.5~4.0m2 /g、特に好ましくは0.5~3.0m2 /gである。
ここに、窒素吸着法によるBET比表面積の測定には、例えばBET比表面積測定装置「MONOSORB」(ユアサアイオニクス株式会社製)を用いることができる。

【0064】
二酸化チタン粒子のBET比表面積が過小である場合には、メジアン径が大きくなり、その結果、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体の物理的強度が過剰に大きくなるため、この硬化体と、組成物の適用部位に係る骨との物理的強度の差が大きくなることに起因して骨折が生じやすくなるなどの弊害が生じることとなる。
一方、二酸化チタン粒子のBET比表面積が過大である場合には、メジアン径が小さくなりすぎたり、二酸化チタン粒子が凝集した状態、あるいは多孔質状態となることに起因して(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体に実用上必要とされる物理的強度(例えば、曲げ強度)が得られなくなる。

【0065】
本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子としては、メジアン径が1.5~7.0μmであってBET比表面積が0.5~5.0m2 /gであるものが好ましく、また、メジアン径が1.5~7.0μmであってBET比表面積が0.5~4.0m2 /gであるものが更に好ましく、メジアン径が2.0~7.0μmであってBET比表面積が0.5~4.0m2 /gであるものがまた更に好ましく、メジアン径が2.0~6.5μmであってBET比表面積が0.5~3.0m2 /gであるものが特に好ましい。

【0066】
二酸化チタン粒子としては、その粒子形状が、通常の工業的製法で得られる粒状もしくは不定形状の他、板状、薄片状、針状、棒状、繊維状および柱状などの公知の種々の形状のものを使用することもできるが、粒状の粒子形状を有するものであることが好ましく、粒状の形状の好ましい具体例としては、真球状、略球状などの球状が挙げられる。
二酸化チタン粒子の形状を球状とすることにより、高い流動性が得られることに伴って組成物中における均一分散性、および良好な充填性が得られることになり、その結果、この組成物から形成される硬化体において均一性の高い状態で分散されることとなるため、この硬化体からの二酸化チタン粒子の脱離を抑制されるという効果が得られることが期待される。
また、本発明の骨セメント組成物においては、当該組成物を構成する二酸化チタン粒子のすべてが同等の形状を有するものであることが好ましい。

【0067】
また、本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子は、ルチル型、アナタース型およびブルッカイト型のいずれの結晶構造を有するものであってもよく、また非晶質(アモルファス)のものであってもよいが、より高いアパタイト形成能(生体活性能)を有するものであることから、ルチル型二酸化チタン粒子であることが好ましい。

【0068】
また、二酸化チタン粒子は、より一層高いアパタイト形成能 (生体活性能)が得られることから、(メタ)アクリレート系ポリマーとの親和性に弊害を伴わない範囲において、その粒子表面が親水性を有するものであることが好ましい。
二酸化チタン粒子の粒子表面をより一層親水性を有するものとするための手法としては、例えば酸洗浄処理が挙げられる。

【0069】
更に、二酸化チタン粒子は、適用する生体内における安全性および人工関節に対する悪影響を防止する観点からは、不純物が少ないものであることが好ましく、具体的には、二酸化チタンの純度が99質量%以上であることが好ましく、更には99.5質量%以上であることが好ましいが、その一方、(メタ)アクリレート系ポリマーとの親和性の観点からは、組成物に係る生体活性能および物理的強度に弊害を伴わない範囲において、シランカップリング剤などの有機物、あるいはシリカやアルミナなどの無機物の少量が被覆処理されてなるものを用いることができる。

【0070】
このような構成を有する二酸化チタン粒子は、通常の手法によって製造することができるが、例えばチタン酸を原料として用い、この原料としてのチタン酸のスラリーを、必要に応じて湿式粉砕処理した後、噴霧乾燥処理することによって乾燥造粒体を得、この乾燥造粒体を焼成処理する工程を経ることによって二酸化チタン粒子を得る手法により製造することが最適である。
この手法によれば、得られる二酸化チタン粒子のメジアン径などを所望の範囲に簡便に調整することができる。

【0071】
二酸化チタン粒子の原料としてのチタン酸としては、具体的にオルトチタン酸およびメタチタン酸を用いることができる。
ここに、オルトチタン酸とは、四塩化チタンまたは硫酸チタニルなどのチタン化合物の水溶液を、必要に応じてシードの存在下にアルカリ中和することによって得られ、「水酸化チタン」とも称される、「Ti(OH)4 」または「TiO2 ・2H2 O」の示性式によって表わされる化合物である。このオルトチタン酸は、無定形のものであることから、焼成処理において、低い加熱温度(焼成温度)によっても得られる二酸化チタン粒子がルチル型の結晶構造を有するものとなるように結晶転位がなされるため、原料として好ましく用いられる。
メタチタン酸とは、硫酸チタニルなどのチタン化合物を水溶液中において、必要に応じてシードの存在下に熱加水分解することによって得られ、「TiO(OH)2 」または「TiO2 ・H2 O」の示性式によって表わされる化合物であってアナタース型の結晶構造を有するものである。

【0072】
この原料としてのチタン酸を、例えば水などの溶媒に懸濁させることによってスラリーが調製される。
次いで、得られたチタン酸スラリーが供される湿式粉砕処理、噴霧乾燥処理および焼成処理について、以下に詳細に説明する。

【0073】
(1)湿式粉砕処理
この湿式粉砕処理においては、原料としてのチタン酸のスラリーを粉砕処理することにより、当該スラリー中のチタン酸を粉砕し、この粉砕されたチタン酸が溶媒中に分散した状態の粉砕チタン酸分散液を得る。
この湿式粉砕処理は、スラリー中のチタン酸を分散させることにより、後工程の噴霧乾燥処理および焼成処理を経ることによって得られる二酸化チタン粒子のメジアン径が小さくなるよう調整することができるものであることから、行うことが好ましい処理である。

【0074】
この湿式粉砕処理に係る粉砕方式としては、例えばコロイドミルなどにより、回転する円型の砥石の隙間にスラリーを流通させて摩擦力、せん断力を与えて粉砕する方式、あるいは例えばボールミル、ダイノミル、サンドグラインダーなどにより、撹拌機を挿入した円筒にスラリーを剛体ビーズ(例えば、硬質ガラス、セラミック等)の球状媒体とともに充填して混合し、高速撹拌、振動による物理的衝撃、せん断、摩擦などにより粉砕する方式などを用いることができる。また、加圧乳化機タイプの装置や高速撹拌装置などによる、その他の粉砕方式を用いることもできる。

【0075】
チタン酸スラリーや湿式粉砕処理によって得られる粉砕チタン酸分散液には、ルチル転位促進シードが混合されていることが好ましい。
このようにルチル転位促進シードが混合されている場合においては、焼成処理中において、得られる二酸化チタン粒子をルチル型の結晶構造を有するものとするための結晶転位が生じやすくなる。
ここに、「ルチル転位促進シード」とは、ルチル結晶構造を有する微小核晶であり、チタン酸のルチル転位を促進するものである。

【0076】
ルチル転位促進シードとしては、具体的に、例えば従来公知の硫酸法によってルチル型二酸化チタン白色顔料を製造する方法において、原料である硫酸チタニルを加水分解する際に添加するシードなどを用いることができる。
また、ルチル転位促進シードの混合量は、適宜設定することができるが、ルチル転位を十分に生じさせることができることから、チタン酸スラリーや粉砕チタン酸分散液中に存在する二酸化チタンとの質量比(チタン酸中の二酸化チタン質量/ルチル転位促進シード中の二酸化チタン質量)が90/10~99/1の範囲となる量であることが好ましい。
また、ルチル転位促進シードを混合する手法としては、例えば撹拌混合機、ミキサーなどの通常の混合装置を用いることができ、また、このルチル転位促進シードの混合は、湿式粉砕処理の前後、あるいは湿式粉砕処理を行う際、すなわち湿式粉砕処理と同時に行うことができる。

【0077】
(2)噴霧乾燥処理
この噴霧乾燥処理においては、噴霧乾燥装置を用い、チタン酸スラリー、あるいは必要に応じてなされた湿式粉砕処理において得られた粉砕チタン酸分散液を、噴霧乾燥装置のノズルから微細な霧状液滴として噴射して熱風中に噴出させて乾燥することにより、その粒子形状が球状の乾燥造粒体を得る。
噴霧乾燥装置としては、通常のスプレードライヤーなどの通常の噴霧乾燥機を用いることができ、また、その噴霧方式は、チタン酸スラリーや粉砕チタン酸分散液の性状や噴霧乾燥機の処理能力などに応じて、例えばディスク式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、四流体ノズル式などを適宜選択することができる。
また、霧状液滴の乾燥条件(噴霧乾燥温度)は、給気温度が150~250℃であって、排気温度が60~120℃であることが好ましい。

【0078】
このような噴霧乾燥処理においては、例えばチタン酸スラリーや粉砕チタン酸分散液における二酸化チタン濃度を調整すること、噴霧乾燥機の噴霧方式としてディスク式を選択する場合には、ディスクの回転数を調整すること、また、噴霧乾燥機の噴霧方式として圧力ノズル式、二流体ノズル式および四流体ノズル式を選択する場合には、噴霧圧を調整することなどによって、噴霧される液滴の大きさを制御することにより、得られる乾燥造粒体のメジアン径およびBET比表面積を制御することができる。
また、噴霧乾燥処理によっては、得られる乾燥造粒体を同等の球状の粒子形状を有するものとすることができる。

【0079】
(3)焼成処理
この焼成処理においては、噴霧乾燥処理において得られた乾燥造粒体を、当該噴霧乾燥処理に係る噴霧乾燥温度よりも高い温度条件(具体的には250℃以上)によって焼成処理することにより、二酸化チタンよりなる焼成粒子を得る。
この焼成処理によれば、得られる焼成粒子のメジアン径およびBET比表面積と共に、当該焼成粒子の結晶構造や硬度などを調整することができる。

【0080】
焼成処理に係る焼成条件は、焼成温度が、500~1200℃であることが好ましく、更に好ましくは700~1000℃であり、特に好ましくは800~950℃である。
焼成温度が500℃未満である場合には、得られる二酸化チタン粒子がルチル型の結晶構造を有するものとなるようになされる結晶転位が進行しにくくなるおそれがある。一方、焼成温度が1200℃を超える場合には、得られる二酸化チタン粒子の硬度が高くなることから、組成物の適用部位において、骨や人工関節に二酸化チタン粒子による摩耗が生じるおそれがある。

【0081】
また、焼成時間は、適宜に設定することができるが、具体的には、30分~10時間とすることにより、形成される焼成粒子に焼成による十分な効果、具体的には、ルチル体への相転位促進効果を得ることができる。
また、焼成雰囲気は、特に限定されるものではないが、経済的観点から、大気などの酸素が存在する雰囲気であることが好ましい。
更に、焼成処理は、焼成負荷を均一に付与する目的から、500~800℃の焼成温度によって第1の焼成処理を行った後、更に800~1200℃の焼成温度によって第2の焼成処理を行うものであってもよい。

【0082】
このようにして、湿式粉砕処理、噴霧乾燥処理および焼成処理を経ることによって形成された焼成粒子は、そのままの状態において本発明の骨セメント組成物の構成材料、すなわち本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子(フィラー)として用いることができるが、必要に応じて、より一層高いアパタイト形成能 (生体活性能)を得る目的から、その粒子表面に対してより一層高い親水性を付与するために、焼成処理において得られた焼成粒子を酸洗浄処理することが好ましい。

【0083】
(4)酸洗浄処理
酸洗浄処理は、例えば焼成粒子のスラリーを調製し、このスラリーと酸とを混合し、室温あるいは加熱下において撹拌することによって行うことができ、この酸洗浄処理の後、固液分離処理、洗浄処理および乾燥処理、必要に応じて解砕処理を経ることによって二酸化チタン粒子を得ることができる。
酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸を用いることができ、また、スラリーと酸との混合液における酸濃度は、例えば0.01~10mol/Lである。
酸洗浄処理を加熱下において行う場合は、スラリーと酸との混合液の温度が30~105℃となる条件で加熱することが好ましい。
この酸洗浄処理は、必要に応じて二酸化チタン粒子の表面により一層高い親水性を付与するためになされる処理であり、前記焼成粒子の他に、それ以外の他の方法によって製造された二酸化チタン粒子に対しても適用することができる。

【0084】
また、二酸化チタン粒子の製造過程においては、このような酸洗浄処理の他、必要に応じて、焼成処理において得られた焼成粒子に含まれる凝集体を解砕する目的から、例えば遠心粉砕機などを用いて乾式粉砕処理、または例えばボールミル、ダイノミル、サンドグラインダーなどを用いて湿式粉砕処理を行うこと、所望のメジアン径を有するものを選別する目的から、例えば静置法などによって湿式分級処理を行うこと、あるいは、メジアン径および/またはBET比表面積の異なる二酸化チタン粒子を混合することなどの他の工程を経ることもできる。

【0085】
更に、本発明の骨セメント組成物には、フィラーおよび重合促進剤の他、例えば色素、抗生物質、骨成長因子、その他薬学的に許容しうる任意成分が含有されていてもよい。

【0086】
以上のような構成の本発明の骨セメント組成物は、例えば適用する直前に混練処理することによって(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応を開始させ、その混練物を放置するなどして粘度がある程度高い状態となったところで適用対象部位に適用するためのハンドリング作業を行い、当該適用対象部位において硬化体を形成することによって適用される。

【0087】
而して、本発明の骨セメント組成物は、基材形成用成分として、特定の平均粒子径を有する(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子が特定の割合で含有されていることにより、ダウタイムを短くする作用が発現され、この作用により、良好なハンドリング作業を行うために必要とされる十分な粘度を有する状態に至るまでに要する時間としてのダウタイムを小さくすることができる、具体的には2.5~5分間とすることができる。
従って、本発明の骨セメント組成物によれば、ダウタイムを短くすることができることから、ハンドリング作業を開始するまでに要する時間が短時間となることによって高い作業効率を得ることができる。
また、本発明の骨セメント組成物においては、ダウタイムを短くすることができると共に、硬化時間が若干ではあるが遅延する傾向にあることから、ダウタイム経過後から硬化に至るまでの時間、すなわち作業時間が長くなることに伴う作業性の向上を図ることができる可能性がある。

【0088】
また、本発明の骨セメント組成物においては、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーが含有されることにより、当該二酸化チタン粒子自体の有する体液環境下におけるアパタイト形成能が発現されることから、優れた生体活性能が得られる。
更に、フィラーを構成する二酸化チタン粒子を、特定の大きさを有するものとすることにより、使用用途に応じた良好な強度が発揮されることとなることから、高い物理的強度を得ることができる。
そして、このように少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーが含有されている場合においては、ダウタイムを短くすることができるという効果が顕著に発揮されることとなるため、当該フィラーが添加されることによって長時間を要する傾向にあるダウタイムの短縮化を図ることができることから、作業効率を改善することができる。

【0089】
本発明の骨セメント組成物は、ダウタイムを短くすることによって高い作業効率を得ることができるものであることから、特に手術中などのできるだけ短時間のうちに作業を行うことが好ましいとされる場面において、骨の欠損部の補填剤、あるいは人工股関節などの金属製の人工関節を周囲の骨と固定する接着剤、人工関節の固定剤として好適に用いることができ、その他、人工骨を形成するための人工骨形成材料などとしても用いることができる。また、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーが含有されてなるものについては、生体活性能が得られると共に、高い物理的強度が得られることとなるため、骨の欠損部の補填剤、人工関節を周囲の骨と固定する接着剤、人工関節の固定剤および人工骨形成材料などとしてより一層好適なものとなる。

【0090】
このような本発明の骨セメント組成物は、必須成分である、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と(メタ)アクリレート系モノマーよりなる基材形成用成分および重合開始剤、その他、必要に応じた成分を混合することによって製造することができるものであり、製造に係る簡便性などの観点から、例えば各構成成分を予め個別の収容部材に収容してキットとして保管しておき、必要に応じて調製することもできる。

【0091】
<骨セメント組成物キット>
本発明の骨セメント組成物キットは、本発明の骨セメント組成物を得るための骨セメント組成物キットである。
この本発明の骨セメント組成物キットは、形成すべき本発明の骨セメント組成物の必須の構成成分である、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤のうちの少なくとも(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー含有キット成分と、少なくとも重合開始剤を含有する重合開始剤含有キット成分とを含有するものである。

【0092】
このような本発明の骨セメント組成物キットは、適用前において(メタ)アクリレート系モノマーが重合反応することを防止する観点から、(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とが個別のキット成分とされていればよく、例えば形成すべき骨セメント組成物の構成成分の各々を個別のキット成分とすることもできるが、骨セメント組成物キットの持ち運びに係る便宜性および重合反応操作の簡便性の観点から、モノマー含有キット成分と、重合開始剤含有キット成分との2つのキット成分よりなるものであることが好ましい。

【0093】
モノマー含有キット成分および重合開始剤含有キット成分の2つのキット成分よりなる骨セメント組成物キットにおいては、形成すべき骨セメント組成物の必須の構成成分のうちの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子および重合開始剤が、通常、固体状のものであり、また(メタ)アクリレート系モノマーが、通常、液体状のものであることから、モノマー含有キット成分には、(メタ)アクリレート系モノマーのみが含有され、重合開始剤含有キット成分には、重合開始剤と共に、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子および(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子が含有されていることが好ましい。また、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子は、その一部または全部が平均粒子径30~50μmの凝集体の形態で含有されていることがより好ましい。

【0094】
また、本発明の骨セメント組成物キットにおいては、得られる骨セメント組成物が、必須の構成成分、具体的には、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤と共に、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーおよび/または重合促進剤が含有されてなるものである場合には、これらのフィラーおよび/または重合促進剤を、各々、モノマー含有キット成分および重合開始剤含有キット成分とは異なる個別のキット成分とすることもできるが、持ち運びに係る便宜性および重合反応操作の簡便性の観点から、2つのキット成分のいずれかに含有させることが好ましい。
具体的には、フィラーは、通常固体状態のものであることから、2つのキット成分のうちの重合開始剤含有キット成分に含有することが好ましく、一方、重合促進剤は、通常液体状態のものであり、(メタ)アクリレート系モノマーに対する反応性を有するものではないことから、2つのキット成分のうちのモノマー含有キット成分に含有することが好ましい。

【0095】
骨セメント組成物キットに係るキット成分を収容するための収容部材としては、キット成分を保管および運搬することのできるようなものであればよく、例えばガラス、金属およびプラスチックよりなる容器、例えば紙やプラスチックよりなる包装部材などを適宜に選択して用いることができる。

【0096】
このような本発明の骨セメント組成物キットによれば、キット成分を単に混練処理することによって骨セメント組成物を得ることができることから、骨セメント硬化体を容易に製造することができ、しかも(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とが個別のキット成分とされていることから、適用前の保管されている状態あるいは運搬されている状態などにおいて、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することを防止することができる。

【0097】
また、本発明の骨セメント組成物キットが、モノマー含有キット成分および重合開始剤含有キット成分の2つのキット成分よりなるものである場合には、キット成分の総数が少ないことから、優れた骨セメント組成物キットの持ち運びに係る便宜性および重合反応操作の簡便性が得られる。

【0098】
<骨セメント硬化体の製造方法>
本発明の骨セメント硬化体の製造方法は、平均粒子径が10~60μm、好ましくは20~60μmの(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と、平均粒子径が0.1~2.0μmの(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子との存在下において、(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤とを混練し、当該(メタ)アクリレート系モノマーを重合させる工程を有し、前記(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対して5~30質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~20質量%、特に好ましくは10~15質量%で用いることを特徴とするものである。
すなわち、本発明の骨セメント硬化体の製造方法は、本発明の骨セメント組成物を材料とし、当該骨セメント組成物に係る基材形成用成分を構成する、(メタ)アクリレート系モノマーを重合させることによって形成される硬化体を得るためのものである。

【0099】
このような本発明の骨セメント硬化体の製造方法においては、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子として、その一部または全部が平均粒子径が30~50μmの凝集体の形態のものを用いることが好ましい。また、(メタ)アクリレート系モノマーと重合開始剤との混合および当該(メタ)アクリレート系モノマーの重合を、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子および(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と共に、少なくとも二酸化チタン粒子を含むフィラーの存在下において行うことが好ましい。

【0100】
具体的に、この本発明の骨セメント硬化体の製造方法によれば、先ず、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子および重合開始剤、必要に応じて二酸化チタン粒子などのフィラーを仕込んだ容器内に、(メタ)アクリレート系モノマーを添加して混練することによって(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤と接触させ、これにより、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応を開始する。そして、その混練物を放置することによって(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応を進行させる。
このような(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応に係る反応系においては、必要に応じて重合促進剤を用いることもできる。

【0101】
ここに、混練条件は、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤の各々の種類や使用量などによっても異なるが、例えば真空脱気することのできる密閉容器などを用いることによって脱気雰囲気を形成し、この脱気雰囲気下において、混練時間が1分30秒間程度である。

【0102】
次いで、混練物を放置する過程を経る。すなわちダウタイムを経過することにより、粘度がある程度高い状態となったところで適用対象部位に適用するためのハンドリング作業を行うことにより、当該適用対象部位において骨セメント硬化体が形成されることとなる。
具体的なハンドリング作業としては、例えば粘度がある程度高い状態となった混練物を適用対象部位に対して手作業によって配置したり、あるいは注入具を用いて注入したりする手法などが挙げられる。注入具としては、種々の道具および装置を用いることができ、例えばシリンジ、ディスペンサー、プランジャー、吐出口を備えた所謂セメントガンなどを用いることができる。
ここに、このようにして得られた骨セメント硬化体は、例えば骨の欠損部の補填剤、あるいは人工股関節などの金属製の人工関節を周囲の骨と固定する接着剤、人工関節の固定剤などとして適用対象部位に適用された骨セメント組成物が、当該適用対象部位において硬化されることによってその機能を発揮しているものである。

【0103】
このような本発明の骨セメント硬化体の製造方法によれば、形成すべき骨セメント硬化体における基材成分を形成するための(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の存在下において行われることにより、この(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の作用によって良好なハンドリング作業を行うために必要とされる十分な粘度を有する状態となるために要する時間であるダウタイムを、2.5~5分間程度、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を凝集体の形態で用いることによっては2.5~4分間程度にまで短くすることができる。
ここに、本発明の骨セメント硬化体の製造方法においては、混練に要する時間が1.5分間程度、ダウタイムを5分間以内とすることができると共に、混練を開始してから硬化するまでに要する硬化時間が10分間程度となり、通常のハンドリング作業によって混練物を適用対象部位に適用するまでに要する時間が3分間程度であることから、ダウタイム経過後から硬化に至るまでの時間よりなる作業時間を十分に確保することができる。

【0104】
また、本発明の骨セメント硬化体の製造方法によっては、下記のようにして人工骨を得ることもできる。

【0105】
すなわち、例えば(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子、重合開始剤および(メタ)アクリレート系モノマー、必要に応じて添加された二酸化チタン粒子などのフィラーおよび/または重合促進剤などの混練物を得、この混練物を、ダウタイムが経過した後、所望の形状を有し、離型性を有する容器内に挿入し、その状態で静置して硬化させることによって成形し、これにより、当該容器の形状に適合した形状を有するように成形体を、人工骨として得ることができる。

【0106】
このような人工骨としての骨セメント硬化体の製造方法においては、その製造条件は、二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤の各々種類や使用量、形成すべき成形体の形状などによっても異なるが、混練条件としては、例えば脱気雰囲気下において、混練時間が1. 5分間であってダウタイムが2.5~5分間の範囲内であり、また、静置条件としては、例えば温度30℃の環境下において、静置時間が24時間以上である。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0108】
また、以下の実施例および比較例において行った(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の平均粒子径および(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の平均粒子径(一次粒子径)の測定方法、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の凝集体の平均粒子径の測定方法は、以下の通りである。
【実施例】
【0109】
((メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子および小径粒子の平均粒子径の測定方法)
平均粒子径としては、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径を測定し、レーザー回折/散乱式粒度分布計としては、粒度分布測定装置「Microtrac」(日機装株式会社製)を用いた。
すなわち、平均粒子径を測定すべき粉体粒子を、濃度0.2質量%のTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、関東化学株式会社製)水溶液よりなる分散媒50mL中に添加して撹拌・混合することによって懸濁液を調製し、この懸濁液を、粒度分布測定装置「Microtrac」(日機装株式会社製)に対して試料投入口から投入し、3分間かけて超音波処理した後に測定を開始した。
【実施例】
【0110】
((メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の凝集体の平均粒子径の測定方法)
凝集体の平均粒子径としては、電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて算出されるメジアン径を測定した。
具体的には、電界放出型走査電子顕微鏡「S-4800型」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、加速電圧1. 5kV、表面無蒸着、対物200倍の倍率の条件にて測定を行った。
【実施例】
【0111】
また、以下の実施例および比較例に用いた二酸化チタン粒子の製造方法と共に、当該二酸化チタン粒子を製造するに際して行った二酸化チタン粒子のメジアン径の測定方法およびBET比表面積の測定方法、二酸化チタン濃度の測定方法は、以下の通りである。
【実施例】
【0112】
(二酸化チタン粒子のメジアン径の測定方法)
メジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるものであり、レーザー回折/散乱式粒度分布計として、粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用いて行った。
すなわち、メジアン径を測定すべき粉体粒子を、濃度0.2質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液よりなる分散媒50mL中に添加して撹拌・混合することによって懸濁液を調製し、この懸濁液を、粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)に対して試料投入口から投入し、3分間かけて超音波処理した後に測定を開始した。
【実施例】
【0113】
(二酸化チタン粒子のBET比表面積の測定方法)
BET比表面積は、窒素吸着法によって測定されるものであり、BET比表面積測定装置「MONOSORB」(ユアサアイオニクス株式会社製)を用いて行った。
このBET比表面積測定装置「MONOSORB」(ユアサアイオニクス株式会社製)は、BET一点法によって測定を行うものである。
【実施例】
【0114】
(二酸化チタン濃度の測定方法)
二酸化チタン濃度、具体的には、オルトチタン酸スラリーおよびルチル転位促進シードスラリーに係る二酸化チタン濃度は、スラリーをルツボに分取して乾燥した後に温度750℃の条件で焼成処理することによって測定した。
【実施例】
【0115】
〔二酸化チタン粒子の製造例1〕
(チタン酸スラリーの調製)
四塩化チタン水溶液をアンモニア水によって中和した後、ろ過して水洗することによってウェットケーキ状態のオルトチタン酸を得た。その後、得られたウェットケーキ状態のオルトチタン酸と、純水とをミキサーに仕込み、十分撹拌混合することによってオルトチタン酸スラリーを得た。
【実施例】
【0116】
(湿式粉砕過程)
ダイノミル「DYNO-MILL」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用い、このダイノミル本体の容積が約600mLの内部に、平均粒径0.6mmのチタニアビーズ(富山セラミックス株式会社製)480mLを充填すると共に、得られたオルトチタン酸スラリーを、流量160mL/分の条件で送液し、当該本体内部に設けられている回転羽根を回転することによってダイノミル処理を行うことにより、オルトチタン酸スラリー(以下、「粉砕処理済チタン酸スラリー」ともいう。)を得た。
この粉砕処理済チタン酸スラリーにおける二酸化チタン濃度は10.39質量%であった。
【実施例】
【0117】
(噴霧乾燥過程)
先ず、湿式粉砕過程において得られた粉砕処理済チタン酸スラリーに、二酸化チタン濃度19. 98質量%のルチル転位促進シードスラリーを、粉砕処理済チタン酸スラリー中に存在する二酸化チタンとの質量比(チタン酸中の二酸化チタン質量/ルチル転位促進シード中の二酸化チタン質量)が95/5となる割合で混合し、この混合物に対して純水を添加することによって二酸化チタン濃度が5.0質量%となるように調整して混合スラリーを調製した。得られた混合スラリーを家庭用ミキサーを用いて撹拌混合した後、200メッシュの篩によって粗粒子を除去することにより、噴霧乾燥処理用スラリー(以下、「噴霧乾燥処理用スラリー」ともいう。)を得た。
次いで、噴霧乾燥機「MDL-050C」(藤崎電機株式会社製)を用い、この噴霧乾燥機に対してローラーポンプによって噴霧乾燥処理用スラリーを送液し、ローラーポンプの流量25mL/分(純水を送液したときの設定流量)、給気温度200℃、排気温度65~85℃、空気量80L/分の条件により、噴霧乾燥処理を行った。この噴霧乾燥処理によって得られた乾燥造粒体を、噴霧乾燥機に設けられているガラス容器およびバグフィルターよりなる粉体回収部分において、メジアン径の大きいものをガラス容器内に、メジアン径の小さいものをバグフィルター内に回収した。
ここに、噴霧乾燥機において、ガラス容器内に回収されたものは「サイクロン品」と称され、一方バグフィルター内に回収されたものは「バグ品」と称される。
【実施例】
【0118】
(焼成過程)
噴霧乾燥過程において得られた乾燥造粒体のうちのサイクロン品として回収したものを焼成ルツボに入れ、電気炉「SK-3035F」(株式会社モトヤマ製)を用いて、焼成温度850℃(昇温速度10℃/分)、焼成時間6時間の焼成条件によって焼成処理を行った後、自然冷却を行うことにより、焼成粒子を得た。
【実施例】
【0119】
(湿式粉砕過程)
先ず、焼成過程において得られた焼成粒子200g、平均粒径0.6mmのチタニアビーズ(富山セラミックス株式会社製)350mLおよび純水350mLをそれぞれ0.87L容量のポットミルに投入し、ポットミル回転台「ANZ-51S」(日陶科学株式会社製)を用いて6時間かけて回転処理を行うことにより、焼成粒子が粉砕されて分散されてなる二酸化チタンスラリーを得た。
次いで、得られた二酸化チタンスラリーをガラス製ビーカーに入れた後、総液量が3Lになるよう純水を投入し、一晩にわたって自然沈降処理を行った。その後、上清を吸引除去し、残った残渣に適当量の純水を添加した後、超音波洗浄機を用いて分散処理を行うことにより、酸洗浄処理に供するための二酸化チタンスラリーを得た。
【実施例】
【0120】
(酸洗浄過程)
湿式粉砕過程において得られた二酸化チタンスラリーに、1規定濃度となる量の塩酸を添加し、室温下において撹拌モータを用いて3時間にわたって撹拌することによって酸洗浄処理を行った。その後、デカンテーションによって上澄みを除去し、残渣をブフナー漏斗を用いて純水によってろ過洗浄し、ろ液の比抵抗が10kΩ・m以上であることを確認した。その後、洗浄ケーキを回収し、恒温乾燥機を用いて温度110℃の条件で乾燥処理し、スクリーン径1.5mmのメッシュをセットした遠心粉砕機「ZM100」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数14000rpmの条件によって乾式粉砕処理を行うことにより、メジアン径が2.7μmであってBET比表面積が1.95m2 /gである二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(a)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(a)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、走査型電子顕微鏡「S-3200N」(株式会社日立製作所製)による観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0121】
〔二酸化チタン粒子の製造例2〕
二酸化チタン粒子の製造例1と同様の手法により、メジアン径が3.1μmであってBET比表面積が2.1m2 /gである二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(b)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(b)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、走査型電子顕微鏡「S-3200N」(株式会社日立製作所製)による観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0122】
〔二酸化チタン粒子の製造例3〕
二酸化チタン粒子の製造例1と同様の手法により、メジアン径が2.9μmであってBET比表面積が2.5m2 /gである二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(c)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(c)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、走査型電子顕微鏡「S-3200N」(株式会社日立製作所製)による観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0123】
〔実施例1〕
(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子としてポリメチルメタクリレート粉末(平均粒子径:39.77μm、重量平均分子量:167,000、粒子形状:球状;積水化成品工業株式会社製)44.885質量%と、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子としてポリメチルメタクリレート粉末(平均粒子径:0.5μm、平均分子量:190,000、粒子形状:球状;積水化成品工業株式会社製)6.707質量%と、フィラーとして二酸化チタン粒子(a)19.654質量%と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル(川口薬品株式会社製)1.474質量%とを混合することにより、混合粉体成分を得た。
一方、(メタ)アクリレート系モノマーとしてのメチルメタクリレート(和光純薬株式会社製)27.024質量%に、重合促進剤としてN,N-ジメチル-p-トルイジン(三星化学研究所製)0.256質量%を添加して混合することにより、混合液体成分を得た。
そして、得られた混合粉体成分および混合液体成分の各々を個別に容器内に収容することにより、当該混合粉体成分よりなる重合開始剤含有キット成分と、当該混合液体成分よりなるモノマー含有キット成分とにより構成されてなる骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(1)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(1)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して57.094質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して13.0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.454質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、0.947質量%であった。
【実施例】
【0124】
次いで、ポリテトラフルオロエチレン製の混練容器に、骨セメント組成物キット(1)のうちの重合開始剤含有キット成分を入れた後、当該骨セメント組成物キット(1)のモノマー含有キット成分を投入することによって骨セメント組成物を得た。
この骨セメント組成物について、ISO5833に基づく測定法に従い、30秒間にわたって混練した後、更に脱気雰囲気下において1分間かけて混練し、その後、パウダーフリーのラテックス製の外科用手袋を装着した手によって混練物をハンドリングし、この外科用手袋に付着が生じることのないような状態となるために要する時間を測定することによってダウタイムを確認した。結果を表1に示す。
また、ダウタイムを確認した後の混練物を、外径0.5mmの熱電対ワイヤーを備えたポリテトラフルオロエチレン製の型に挿入し、当該熱電対ワイヤーによって5秒毎に混練物の温度を測定することによって確認された最高温度に基づいて硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0125】
〔実施例2〕
実施例1において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子として、平均粒子径が33.93μmで重量平均分子量が141,000であって粒子形状が球状のポリメチルメタクリレート粉末(積水化成品工業株式会社製)を用い、この(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を45.401質量%、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を6.191質量%としたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(2)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(2)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して57.750質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して12. 0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.454質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、0.947質量%であった。
【実施例】
【0126】
そして、得られた骨セメント組成物キット(2)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0127】
〔実施例3〕
実施例1において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、噴霧乾燥機を用いて平均粒子径40μmの凝集体(粒子形状:球状)としてから用いたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(3)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(3)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0128】
〔実施例4〕
実施例2において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、噴霧乾燥機を用いて平均粒子径40μmの凝集体(粒子形状:球状)としてから用いたこと以外は、当該実施例2と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(4)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(4)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0129】
〔実施例5〕
実施例1において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子として、平均粒子径が45.58μmで重量平均分子量が141,000であって粒子形状が球状のポリメチルメタクリレート粉末(積水化成品工業株式会社製)を用い、この(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を44.369質量%、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を7.223質量%としたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(5)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(5)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して56.438質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して14. 0質量%であった。
【実施例】
【0130】
そして、得られた骨セメント組成物キット(5)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0131】
〔実施例6〕
実施例5において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、噴霧乾燥機を用いて平均粒子径40μmの凝集体(粒子形状:球状)としてから用いたこと以外は、当該実施例5と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(6)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(6)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0132】
〔実施例7〕
実施例1において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子として、平均粒子径が31.11μmで重量平均分子量が148,900であって粒子形状が球状のポリメチルメタクリレート粉末(積水化成品工業株式会社製)を用い、この(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を30.059質量%とし、また(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を5.305質量%とし、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、噴霧乾燥機を用いて平均粒子径40μmの凝集体(粒子形状:球状)としてから用いたこと、およびフィラーとして、二酸化チタン粒子(a)に代えて二酸化チタン粒子(b)を用い、その使用量を39.293質量%とし、過酸化ベンゾイルの使用量を1.473質量%としたこと、かつメチルメタクリレートの使用量を23.575質量%、およびN,N-ジメチル-p-トルイジンの使用量を0.295質量%としたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(7)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(7)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して51.000質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して15. 0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、6.248質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、1.251質量%であった。
【実施例】
【0133】
そして、得られた骨セメント組成物キット(7)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0134】
〔実施例8〕
実施例1において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子として、平均粒子径が12.93μmで重量平均分子量が139,600であって粒子形状が球状のポリメチルメタクリレート粉末(積水化成品工業株式会社製)を用い、この(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を23.575質量%とし、また(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を5.894質量%とし、当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、噴霧乾燥機を用いて平均粒子径40μmの凝集体(粒子形状:球状)としてから用いたこと、およびフィラーとして、二酸化チタン粒子(a)に代えて二酸化チタン粒子(b)を用い、その使用量を39.293質量%とし、過酸化ベンゾイルの使用量を1.473質量%としたこと、かつメチルメタクリレートの使用量を29.470質量%、およびN,N-ジメチル-p-トルイジンの使用量を0.295質量%としたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(8)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(8)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して39.999質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して20. 0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.000質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、1.000質量%であった。
【実施例】
【0135】
そして、得られた骨セメント組成物キット(8)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0136】
〔実施例9〕
実施例1において、二酸化チタン粒子を用いず、また(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子として、平均粒子径が30.00μmで重量平均分子量が135,000であって粒子形状が球状のポリメチルメタクリレート粉末(積水化成品工業株式会社製)を用い、この(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を63.425質量%とし、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を3.338質量%、かつメチルメタクリレートの使用量を31.419質量%、およびN,N-ジメチル-p-トルイジンの使用量を0.344質量%としたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(9)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(9)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して64.599質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して5. 0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、4.691質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は1.095質量%であった。
【実施例】
【0137】
そして、得られた骨セメント組成物キット(9)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0138】
〔実施例10〕
実施例9において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を60.087質量%、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を6.676質量%としたこと以外は、当該実施例9と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(10)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(10)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して61.200質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して10.0質量%であった。
そして、得られた骨セメント組成物キット(10)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0139】
〔実施例11〕
実施例9において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、噴霧乾燥機を用いて平均粒子径40μmの凝集体(粒子形状:球状)としてから用いたこと以外は、当該実施例9と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(11)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(11)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0140】
〔実施例12〕
実施例10において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を、噴霧乾燥機を用いて平均粒子径40μmの凝集体としてから用いたこと以外は、当該実施例10と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(12)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(12)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0141】
〔実施例13〕
実施例3において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子として、平均粒子径が40.46μmで重量平均分子量が154,700であって粒子形状が球状のポリメチルメタクリレートスチレン共重合体粉末(積水化成品工業株式会社製)を用い、この(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を43.867質量%、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を7.440質量%、フィラーとして、二酸化チタン粒子(a)に代えて二酸化チタン粒子(c)を用い、その使用量を19.646質量%とし、過酸化ベンゾイルの使用量を1.473質量%、メチルメタクリレートの使用量を27.279質量%とし、N,N-ジメチル-p-トルイジンの使用量を0.295質量%としたこと以外は、当該実施例3と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(13)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(13)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して55.820質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して14.5質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.400質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は1.081質量%であった。
【実施例】
【0142】
そして、得られた骨セメント組成物キット(13)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0143】
〔実施例14〕
実施例13において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を35.904質量%、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を6.336質量%、フィラーとして、二酸化チタン粒子(c)19.646質量%と硫酸バリウム9.823質量%とを用い、メチルメタクリレートの使用量を26.523質量%としたこと以外は、当該実施例13と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(14)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(14)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して52.214質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して15.0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.554質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は1.112質量%であった。
【実施例】
【0144】
そして、得られた骨セメント組成物キット(14)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0145】
〔実施例15〕
実施例14において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を32.181質量%、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を6.130質量%、硫酸バリウムの使用量を14.735質量%、メチルメタクリレートの使用量を25.540質量%としたこと以外は、当該実施例14と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(15)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(15)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して50.400質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して16.0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.767質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は1.155質量%であった。
【実施例】
【0146】
そして、得られた骨セメント組成物キット(15)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0147】
〔実施例16〕
実施例14において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を28.536質量%、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の使用量を5.846質量%、硫酸バリウムの使用量を19.646質量%、メチルメタクリレートの使用量を24.558質量%としたこと以外は、当該実施例14と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(16)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(16)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して48.415質量%であり、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子の含有割合は当該(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計に対して17.0質量%であった。
また、重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.998質量%であり、重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は1.201質量%であった。
【実施例】
【0148】
そして、得られた骨セメント組成物キット(16)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0149】
〔実施例17〕
実施例14において、硫酸バリウムに代えて酸化ジルコニウムを用いたこと以外は、当該実施例14と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(17)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(17)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0150】
〔実施例18〕
実施例15において、硫酸バリウムに代えて酸化ジルコニウムを用いたこと以外は、当該実施例15と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(18)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(18)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0151】
〔実施例19〕
実施例16において、硫酸バリウムに代えて酸化ジルコニウムを用いたこと以外は、当該実施例16と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(19)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた骨セメント組成物キット(19)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0152】
〔比較例1〕
実施例1において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を51.592質量%とし、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を用いなかったこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「比較用骨セメント組成物キット(1)」ともいう。)を作製した。
この比較用骨セメント組成物キット(1)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して65.625質量%であった。
そして、得られた比較用骨セメント組成物キット(1)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0153】
〔比較例2〕
実施例1において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子に代えて平均粒子径が4.0μmのポリメチルメタクリレート粉末を用いたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「比較用骨セメント組成物キット(2)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた比較用骨セメント組成物キット(2)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0154】
〔比較例3〕
実施例2において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を51.592質量%とし、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を用いなかったこと以外は、当該実施例2と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「比較用骨セメント組成物キット(3)」ともいう。)を作製した。
この比較用骨セメント組成物キット(3)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して65.625質量%であった。
そして、得られた比較用骨セメント組成物キット(3)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0155】
〔比較例4〕
実施例2において、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子に代えて平均粒子径が4.0μmのポリメチルメタクリレート粉末を用いたこと以外は、当該実施例2と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「比較用骨セメント組成物キット(4)」ともいう。)を作製した。
そして、得られた比較用骨セメント組成物キット(4)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0156】
〔比較例5〕
実施例7において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を35.364質量%とし、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を用いなかったこと以外は、当該実施例7と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「比較用骨セメント組成物キット(5)」ともいう。)を作製した。
この比較用骨セメント組成物キット(5)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して60.001質量%であった。
そして、得られた比較用骨セメント組成物キット(5)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0157】
〔比較例6〕
実施例8において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の使用量を29.470質量%とし、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子を用いなかったこと以外は、当該実施例8と同様にして骨セメント組成物キット(以下、「比較用骨セメント組成物キット(6)」ともいう。)を作製した。
この比較用骨セメント組成物キット(6)において、(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子の含有割合は基材形成用成分全体に対して50.000質量%であった。
そして、得られた比較用骨セメント組成物キット(6)について、実施例1と同様の手法によってダウタイムを確認すると共に、硬化時間を算出した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0158】
【表1】
JP0005602127B2_000002t.gif
【実施例】
【0159】
表1において、「PMMA大径粒子」とは、骨セメント組成物キットの作製に用いたポリメチルメタクリレート粉末であって、その組成物キットの作製に粒子径の異なる2種類のポリメチルメタクリレート粉末が用いられている場合においては、それらのうちの粒子径の大きいものを示し、「PMMA大径粒子の含有割合」とは、組成物における基材形成用成分全体に対する割合を示す。また、「MMA/Sty.大径粒子」とは、骨セメント組成物キットの作製に用いた、ポリメチルメタクリレートスチレン共重合体粉末を示し、「MMA/Sty.大径粒子の含有割合」とは、組成物における基材形成用成分全体に対する割合を示す。また、「PMMA小径粒子」とは、骨セメント組成物キットの作製に用いたポリメチルメタクリレート粉末であって、その組成物キットの作製に粒子径の異なる2種類のポリメチルメタクリレート粉末が用いられている場合においては、それらのうちの粒子径の小さいものを示し、「PMMA小径粒子の含有割合」とは、当該PMMA小径粒子と(メタ)アクリレート系ポリマー大径粒子との合計量に対する割合を示す。
【実施例】
【0160】
以上の結果から、実施例1~実施例19に係る骨セメント組成物によれば、ダウタイムが2.5~5分間の範囲となることが明らかである。
また、特に、実施例3と実施例1、実施例4と実施例2、実施例6と実施例5、実施例11と実施例9、および実施例12と実施例10の各々の結果を比較することにより、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子が凝集体として含有されている組成物は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子が凝集体としてではなく一次粒子として含有されている組成物に比して更にダウタイムが短くなることが明らかである。
一方、比較例1、比較例3、比較例5および比較例6に係る骨セメント組成物は、(メタ)アクリレート系ポリマー小径粒子が含有されていないものであることから、5分間以上のダウタイムが必要とされることが確認され、また、比較例2および比較例4に係る骨セメント組成物は、平均粒子径の異なる2種類の(メタ)アクリレート系ポリマー粒子が含有されてなるものであるが、小径のポリマー粒子の平均粒子径が4μmと過大であることから、5分間以上のダウタイムが必要とされることが明らかである。
更に、実施例1~実施例19に係る骨セメント組成物においては、ダウタイムの短縮化に基づいて作業時間(具体的には、ダウタイム経過後から硬化に至るまでの時間であって、「硬化時間(混練開始から硬化に至るまでの時間)」から「ダウタイム」を差し引いた時間をいう。)の延長に伴う作業性の向上が見込まれることが明らかである。
【実施例】
【0161】
また、実施例1~実施例8および実施例13~実施例19に係る組成物によれば、二酸化チタン粒子が含有されてなるものであることから、優れた生体活性能が得られることが確認された。特に実施例14~実施例19に係る組成物においては、組成物から得られた骨セメント硬化体について、その表面、および温度36.5℃の条件下において14日間にわたって疑似体液に浸漬した後の表面を電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、フィラーとして二酸化チタン粒子と共に酸化ジルコニウムまたは硫酸バリウムが含有された場合であっても、この酸化ジルコニウムや硫酸バリウムの添加が二酸化チタン粒子に由来の生体活性能の発現に弊害を及ぼさないことが確認された。具体的には、図1~図8に示すように、実施例14~実施例19に係る組成物から得られた骨セメント硬化体においても、フィラーとして二酸化チタン粒子のみが含有されてなる実施例13に係る組成物から得られた骨セメント硬化体のように、疑似体液に浸漬した後の表面に、ハイドロキシアパタイト(図においては、「HAp」の符号を付して示す)の形成が確認された。
ここに、図1は、実施例13に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の表面(疑似体液に浸漬する前)を示すSEM写真であり、図2は、実施例13に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真であり、また図3~図8は、各々、実施例14~実施例19に係る組成物から得られた骨セメント硬化体の疑似体液に浸漬後の表面を示すSEM写真である。
【実施例】
【0162】
更に実施例14~実施例19に係る組成物によれば、酸化ジルコニウムまたは硫酸バリウムが含有されてなるものであることから、下記のX線造影性の測定によって得られた図9および図10の結果から明らかなように、優れた造影性が得られ、その造影性が酸化ジルコニウムあるいは硫酸バリウムの添加量が大きくなるに従って高くなることが確認された。
ここに、図9においては、上から順に、実施例13に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,BaSO4 :0質量%)から得られた骨セメント硬化体、実施例14に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,BaSO4 :9.823質量%)から得られた骨セメント硬化体、実施例15に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,BaSO4 :14.735質量%)から得られた骨セメント硬化体および実施例16に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,BaSO4 :19.646質量%)から得られた骨セメント硬化体の写真を示し、各写真を上から下に向かうに従って硫酸バリウムの含有割合が大きくなるように並べたものである。また図10は、上から順に、実施例13に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,ZrO2 :0質量%)から得られた骨セメント硬化体、実施例17に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,ZrO2 :9.823質量%)から得られた骨セメント硬化体、実施例18に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,ZrO2 :14.735質量%)から得られた骨セメント硬化体および実施例19に係る組成物(TiO2 :19.646質量%,ZrO2 :19.646質量%)から得られた骨セメント硬化体の写真を示し、各写真を上から下に向かうに従って酸化ジルコニウムの含有割合が大きくなるように並べたものである。
【実施例】
【0163】
〔X線造影性の測定〕
骨セメント組成物から得られた骨セメント硬化体について、直径15mm、厚さ5mmの試験片を用意し、この骨セメント硬化体の試験片について、「小動物専用X線撮影装置VPX-40B」(東芝医療用品株式会社製)を用い、管電圧42kVおよび撮影電流時間積1.60mAsの条件にて、フィルムとして「メディカルフィルムSRD」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて撮影を行った。その後、フィルムを「自動現像機AP500」(ダイトー株式会社製)を用いて現像することによって得られた写真に基づいてその造影性を確認した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9