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明細書 :骨セメント組成物及びその製造方法、並びにそれを製造するためのキット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5602126号 (P5602126)
登録日 平成26年8月29日(2014.8.29)
発行日 平成26年10月8日(2014.10.8)
発明の名称または考案の名称 骨セメント組成物及びその製造方法、並びにそれを製造するためのキット
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
FI A61L 27/00 F
請求項の数または発明の数 24
全頁数 29
出願番号 特願2011-501592 (P2011-501592)
出願日 平成22年2月23日(2010.2.23)
国際出願番号 PCT/JP2010/052702
国際公開番号 WO2010/098304
国際公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
優先権出願番号 2009041976
2009142130
優先日 平成21年2月25日(2009.2.25)
平成21年6月15日(2009.6.15)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成24年11月30日(2012.11.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】509010229
【氏名又は名称】アドバンスド・メディックス株式会社
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
発明者または考案者 【氏名】中村 孝志
【氏名】後藤 公志
【氏名】渋谷 武宏
【氏名】上田 泰行
【氏名】吹田 徳雄
【氏名】西井 啓晃
個別代理人の代理人 【識別番号】100078754、【弁理士】、【氏名又は名称】大井 正彦
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 特開2007-054619(JP,A)
特開2000-086419(JP,A)
調査した分野 A61L 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび(メタ)アクリレート系モノマーよりなる基材形成用成分とを含有し、
前記二酸化チタン粒子の含有割合が、組成物全体に対して5~50質量%であることを特徴とする骨セメント組成物。
【請求項2】
前記二酸化チタン粒子のメジアン径が1.5~7. 0μmであってBET比表面積が0.5~5.0m2 /gであることを特徴とする請求項1に記載の骨セメント組成物。
【請求項3】
前記二酸化チタン粒子がルチル型二酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の骨セメント組成物。
【請求項4】
前記二酸化チタン粒子が球状であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の骨セメント組成物。
【請求項5】
前記二酸化チタン粒子が酸洗浄処理されてなるものであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の骨セメント組成物。
【請求項6】
前記二酸化チタン粒子が、チタン酸のスラリーを噴霧乾燥処理することによって乾燥造粒体を得、この乾燥造粒体を焼成処理する工程を経ることによって製造されてなるものであることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の骨セメント組成物。
【請求項7】
前記基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系ポリマーの含有割合が、基材形成用成分全体に対して30~80質量%であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の骨セメント組成物。
【請求項8】
重合開始剤が含有されていることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の骨セメント組成物。
【請求項9】
生体内において、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することにより硬化されることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の骨セメント組成物。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の骨セメント組成物を得るための骨セメント組成物キットであって、
レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤のうちの少なくとも(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー含有キット成分と、少なくとも重合開始剤を含有する重合開始剤含有キット成分を含み、
前記二酸化チタン粒子の含有割合が、組成物全体に対して5~50質量%であることを特徴とする骨セメント組成物キット。
【請求項11】
前記重合開始剤含有キット成分は、重合開始剤と共に二酸化チタン粒子および(メタ)アクリレート系ポリマーを含有することを特徴とする請求項10に記載の骨セメント組成物キット。
【請求項12】
レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーよりなる基材成分とを含有し、
前記二酸化チタン粒子の含有割合が、5~50質量%であることを特徴とする骨セメント成形体。
【請求項13】
前記二酸化チタン粒子のメジアン径が1.5~7. 0μmであってBET比表面積が0.5~5.0m2 /gであることを特徴とする請求項12に記載の骨セメント成形体。
【請求項14】
前記二酸化チタン粒子がルチル型二酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の骨セメント成形体。
【請求項15】
前記二酸化チタン粒子が球状であることを特徴とする請求項12~請求項14のいずれかに記載の骨セメント成形体。
【請求項16】
前記二酸化チタン粒子が酸洗浄処理されてなるものであることを特徴とする請求項12~請求項15のいずれかに記載の骨セメント成形体。
【請求項17】
前記二酸化チタン粒子が、チタン酸のスラリーを噴霧乾燥処理することによって乾燥造粒体を得、この乾燥造粒体を焼成処理する工程を経ることによって製造されてなるものであることを特徴とする請求項12~請求項16のいずれかに記載の骨セメント成形体。
【請求項18】
ISO規格による測定法ISO5833によって測定される曲げ強度が70MPa以上であることを特徴とする請求項12~請求項17のいずれかに記載の骨セメント成形体。
【請求項19】
人工骨として用いられることを特徴とする請求項12~請求項18のいずれかに記載の骨セメント成形体。
【請求項20】
レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーとの存在下において、(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤によって重合させる重合工程を経ることにより、
前記二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーよりなる基材成分とを含有し、当該二酸化チタン粒子の含有割合が、成形体全体に対して5~50質量%である骨セメント成形体を得ることを特徴とする骨セメント成形体の製造方法。
【請求項21】
前記重合開始剤が過酸化ベンゾイルであることを特徴とする請求項20に記載の骨セメント成形体の製造方法。
【請求項22】
重合工程において、重合促進剤が用いられることを特徴とする請求項20または請求項21に記載の骨セメント成形体の製造方法。
【請求項23】
重合工程に供する(メタ)アクリレート系ポリマーの使用量が、この(メタ)アクリレート系ポリマーの使用量と、当該重合工程に供する(メタ)アクリレート系モノマーの使用量との総量に対して30~80質量%であることを特徴とする請求項20~請求項22のいずれかに記載の骨セメント成形体の製造方法。
【請求項24】
重合工程において、成形体を形成することを特徴とする請求項20~請求項23のいずれかに記載の骨セメント成形体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメント組成物および骨セメント組成物キット並びに骨セメント成形体およびその製造方法に関し、更に詳しくは体液環境下においてアパタイト形成能を有する生体活性骨セメント組成物およびその骨セメント組成物を得るための骨セメント組成物キット、並びに当該骨セメント組成物を成形することによって得られる骨セメント成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨セメント組成物は、骨の欠損部の補填剤、あるいは人工股関節などの金属製の人工関節を周囲の骨と固定する接着剤などとして世界中において広く使用されており、このような骨セメント組成物としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系骨セメント組成物が最も汎用されている。
【0003】
しかしながら、従来から用いられているPMMA系骨セメント組成物は、生体親和性を有するものの、生体活性能、すなわち骨に結合する骨結合性能を有するものではないことから、特に人工関節と周囲の骨とを固定する接着剤として用いた場合には、適用してから長期間が経過することにより、接着剤が周囲の骨から隔離してしまい、これに起因して人工関節と骨との間に緩みを生じてしまう、という問題がある。
【0004】
而して、PMMA系骨セメント組成物としては、生体活性能を付与する目的から、二酸化チタン粒子を添加してなる組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このような二酸化チタン粒子が含有されてなるPMMA系骨セメント組成物においては、生体活性能は得られるものの、実用上必要とされる物理的強度、具体的にはISO5833に基づく測定法によって測定される曲げ強度が60MPa以上の強度が得られない、という問題がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-54619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、生体活性能を有すると共に、実用上必要とされる高い物理的強度を有する硬化体を形成することのできる骨セメント組成物および骨セメント組成物を得るための骨セメント組成物キットを提供することにある。
本発明の目的は、生体活性能を有すると共に、実用上必要とされる高い物理的強度を有する骨セメント成形体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の骨セメント組成物は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび(メタ)アクリレート系モノマーよりなる基材形成用成分とを含有し、
前記二酸化チタン粒子の含有割合が、組成物全体に対して5~50質量%であることを特徴とする。
この本発明の骨セメント組成物においては、前記二酸化チタン粒子のメジアン径が1.5~7. 0μmであってBET比表面積が0.5~5.0m2 /gであることが好ましい。
【0008】
また、本発明の骨セメント組成物においては、前記二酸化チタン粒子が以下の特徴を有するものであることが好ましい。
(1)ルチル型二酸化チタン粒子であること。
(2)球状であること。
(3)酸洗浄処理されてなるものであること。
(4)チタン酸のスラリーを噴霧乾燥処理することによって乾燥造粒体を得、この乾燥造粒体を焼成処理する工程を経ることによって製造されてなるものであること。
【0009】
本発明の骨セメント組成物においては、前記基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系ポリマーの含有割合が、基材形成用成分全体に対して30~80質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明の骨セメント組成物においては、重合開始剤が含有されていることが好ましい。
【0011】
本発明の骨セメント組成物は、生体内において、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することにより硬化されることが好ましい。
【0012】
本発明の骨セメント組成物キットは、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤のうちの少なくとも(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー含有キット成分と、少なくとも重合開始剤を含有する重合開始剤含有キット成分を含み、
前記二酸化チタン粒子の含有割合が、組成物全体に対して5~50質量%であることを特徴とする。
【0013】
本発明の骨セメント組成物キットにおいては、前記重合開始剤含有キット成分は、重合開始剤と共に二酸化チタン粒子および(メタ)アクリレート系ポリマーを含有することが好ましい。
【0014】
本発明の骨セメント成形体は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーよりなる基材成分とを含有し、
前記二酸化チタン粒子の含有割合が、5~50質量%であることを特徴とする。
この本発明の骨セメント成形体においては、二酸化チタン粒子のメジアン径が1.5~7. 0μmであってBET比表面積が0.5~5.0m2 /gであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の骨セメント成形体においては、前記二酸化チタン粒子が以下の特徴を有するものであることが好ましい。
(1)ルチル型二酸化チタン粒子であること。
(2)球状であること。
(3)酸洗浄処理されてなるものであること。
(4)チタン酸のスラリーを噴霧乾燥処理することによって乾燥造粒体を得、この乾燥造粒体を焼成処理する工程を経ることによって製造されてなるものであること。
【0016】
本発明の骨セメント成形体においては、ISO規格による測定法ISO5833によって測定される曲げ強度が70MPa以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の骨セメント成形体は、人工骨として用いることができる。
【0018】
本発明の骨セメント成形体の製造方法は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーとの存在下において、(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤によって重合させる重合工程を経ることにより、
前記二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーよりなる基材成分とを含有し、当該二酸化チタン粒子の含有割合が、成形体全体に対して5~50質量%である骨セメント成形体を得ることを特徴とする。
【0019】
本発明の骨セメント成形体の製造方法においては、前記重合開始剤が過酸化ベンゾイルであることが好ましい。
【0020】
本発明の骨セメント成形体の製造方法においては、重合工程において、重合促進剤が用いられることが好ましい。
【0021】
本発明の骨セメント成形体の製造方法においては、重合工程に供する(メタ)アクリレート系ポリマーの使用量が、この(メタ)アクリレート系ポリマーの使用量と、当該重合工程に供する(メタ)アクリレート系モノマーの使用量との総量に対して30~80質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明の骨セメント成形体の製造方法においては、重合工程において、成形体を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の骨セメント組成物によれば、二酸化チタン粒子が含有されていることから、二酸化チタン粒子自体の有する体液環境下におけるアパタイト形成能が発現されると共に、当該二酸化チタン粒子の大きさ、形態およびその含有割合の点において、使用用途に応じた良好な曲げ強度が発揮されるものであるため、(メタ)アクリレート系モノマーが重合して硬化されることによって形成される硬化体において、生体活性能と共に、実用上必要とされる高い物理的強度を得ることができる。
【0024】
本発明の骨セメント組成物キットによれば、キット成分を単に混合処理することによって骨セメント組成物を得ることができることから、骨セメント組成物の硬化体や成形体を容易に製造することができ、しかも(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とが個別のキット成分とされていることから、適用前の保管されている状態あるいは運搬されている状態などにおいて(メタ)アクリレート系モノマーが重合することを防止することができる。
【0025】
本発明の骨セメント成形体によれば、二酸化チタン粒子が含有されていることから、二酸化チタン粒子自体の有する体液環境下におけるアパタイト形成能が発現されると共に、当該二酸化チタン粒子の大きさ、形態およびその含有割合の点において、使用用途に応じた良好な曲げ強度が発揮されるものであるため、生体活性能と共に、実用上必要とされる高い物理的強度を得ることができる。
【0026】
本発明の骨セメント成形体に製造方法によれば、形成すべき骨セメント成形体における基材成分を形成するための(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応を、(メタ)アクリレート系ポリマーと共に特定の二酸化チタン粒子の存在下において行うことにより、得られる硬化体よりなる成形体が特定の二酸化チタン粒子を特定の含有割合で含有するものとなることから、生体活性能と共に、高い物理的強度を有する骨セメント成形体を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例12および比較例4の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0029】
<骨セメント組成物>
本発明の骨セメント組成物は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5~7. 0μmであり、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5~7.0m2 /gである二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび(メタ)アクリレート系モノマーよりなる基材形成用成分とを必須成分として含有し、当該二酸化チタン粒子の含有割合が、組成物全体に対して5~50質量%、より好ましくは5~30質量%であるものである。
この本発明の骨セメント組成物は、基材形成用成分のうちの重合性単量体である(メタ)アクリレート系モノマーが重合することにより、徐々に粘度が高くなってペースト状となり、最終的には硬化され、硬化体を形成するものである。

【0030】
(二酸化チタン粒子)
本発明の骨セメント組成物の必須成分である二酸化チタン粒子は、特定のメジアン径とBET比表面積を有し、電子顕微鏡で観察される表面がポーラス構造(多孔質構造)を有さないものであり、そのためBET比表面積が比較的小さい緻密構造を有する粒子である。この二酸化チタン粒子は、フィラーを構成するものである。

【0031】
本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径が0.5μm以上で7. 0μm以下であることが必要とされるが、好ましくは1.5~7.0μm、更に好ましくは2.0~7.0μm、特に好ましくは2.0~6.5μmである。
ここに、「レーザー回折/散乱式粒度分布計」としては、具体的に、例えば粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用いることができる。

【0032】
二酸化チタン粒子のメジアン径が過小である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体に実用上必要とされる十分な物理的強度(例えば、曲げ強度)が得られなくなる。
一方、二酸化チタン粒子のメジアン径が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体の物理的強度(例えば、曲げ強度)が過剰に大きくなるため、この硬化体と、組成物の適用部位に係る骨との物理的強度の差が大きくなることに起因して骨折が生じやすくなるなどの弊害が生じることとなる。

【0033】
また、前記二酸化チタン粒子は、窒素吸着法によって測定されるBET比表面積が0.5m2 /g以上で7.0m2 /g以下であることが必要とされるが、好ましくは0.5~5.0m2 /g、更に好ましくは0.5~4.0m2 /g、特に好ましくは0.5~3.0m2 /gである。
ここに、窒素吸着法によるBET比表面積の測定には、例えばBET比表面積測定装置「MONOSORB」(ユアサアイオニクス株式会社製)を用いることができる。

【0034】
二酸化チタン粒子のBET比表面積が過小である場合には、メジアン径が大きくなり、その結果、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体の物理的強度(例えば、曲げ強度)が過剰に大きくなるため、この硬化体と、組成物の適用部位に係る骨との物理的強度の差が大きくなることに起因して骨折が生じやすくなるなどの弊害が生じることとなる。
一方、二酸化チタン粒子のBET比表面積が過大である場合には、メジアン径が小さくなりすぎたり、二酸化チタン粒子が凝集した状態、あるいは多孔質状態となることに起因して(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体に実用上必要とされる物理的強度(例えば、曲げ強度)が得られなくなる。

【0035】
本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子としては、メジアン径が1.5~7.0μmであってBET比表面積が0.5~5.0m2 /gであるものが好ましく、また、メジアン径が1.5~7.0μmであってBET比表面積が0.5~4.0m2 /gであるものが更に好ましく、メジアン径が2.0~7.0μmであってBET比表面積が0.5~4.0m2 /gであるものがまた更に好ましく、メジアン径が2.0~6.5μmであってBET比表面積が0.5~3.0m2 /gであるものが特に好ましい。
ここに、本発明の骨セメント組成物において、二酸化チタン粒子が、メジアン径が1.5~7.0μmであってBET比表面積が0.5~5.0m2 /gである場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体に実用上必要とされる十分な物理的強度(例えば、曲げ強度)、具体的には、ISO5833に基づく測定法によって測定される曲げ強度が60MPa以上となるような強度を一層確実に得ることができる。また、特に、二酸化チタン粒子が、メジアン径が2.0~6.5μmであってBET比表面積が0.5~3.0m2 /gであるものである場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体により一層高い物理的強度(例えば、曲げ強度)、具体的には、ISO5833に基づく測定法によって測定される曲げ強度が70MPa以上となるような強度を得ることができる。

【0036】
本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子としては、その粒子形状が、通常の工業的製法で得られる粒状もしくは不定形状の他、板状、薄片状、針状、棒状、繊維状および柱状などの公知の種々の形状のものを使用することもできるが、粒状の粒子形状を有するものであることが好ましく、粒状の形状の好ましい具体例としては、真球状、略球状などの球状が挙げられる。
二酸化チタン粒子の形状を球状とすることにより、高い流動性が得られることに伴って組成物中における均一分散性、および良好な充填性が得られることになり、その結果、この組成物から形成される硬化体中および成形体中において均一性の高い状態で分散されることとなるため、この硬化体および成形体からの二酸化チタン粒子の脱離が抑制されるという効果が期待される。
また、本発明の骨セメント組成物においては、当該組成物を構成する二酸化チタン粒子のすべてが同等の形状を有するものであることが好ましい。

【0037】
また、本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子は、ルチル型、アナタース型およびブルッカイト型のいずれの結晶構造を有するものであってもよく、また非晶質(アモルファス)のものであってもよいが、より高いアパタイト形成能(生体活性能)が得られることから、ルチル型二酸化チタン粒子であることが好ましい。

【0038】
また、二酸化チタン粒子は、より一層高いアパタイト形成能 (生体活性能)が得られることから、(メタ)アクリレート系ポリマーとの親和性に弊害を伴わない範囲において、その粒子表面が親水性を有するものであることが好ましい。
二酸化チタン粒子の粒子表面により一層高い親水性を付与するための手法としては、例えば後述の酸洗浄処理が挙げられる。

【0039】
更に、二酸化チタン粒子は、適用する生体内における安全性および人工関節に悪影響を与えることを防止する観点からは、不純物が少ないものであることが好ましく、具体的には、二酸化チタンの純度が99質量%以上であることが好ましく、更には99.5質量%以上であることが好ましいが、その一方、(メタ)アクリレート系ポリマーとの親和性の観点からは、組成物に係る生体活性能および物理的強度に弊害を伴わない範囲において、シランカップリング剤などの有機物、あるいはシリカやアルミナなどの無機物の少量が被覆処理されてなるものを用いることができる。

【0040】
このような構成を有する二酸化チタン粒子は、通常の手法によって製造することができるが、下記の手法によって製造することが最適である。

【0041】
本発明の骨セメント組成物に用いられる二酸化チタン粒子を製造するための最適な手法の具体例としては、例えばチタン酸を原料として用い、この原料としてのチタン酸のスラリーを、必要に応じて湿式粉砕処理した後、噴霧乾燥処理することによって乾燥造粒体を得、この乾燥造粒体を焼成処理する工程を経ることによって二酸化チタン粒子を得る手法が挙げられる。
この手法によれば、得られる二酸化チタン粒子のメジアン径およびBET比表面積を所望の範囲に簡便に調整することができる。

【0042】
二酸化チタン粒子の原料としてのチタン酸としては、具体的にオルトチタン酸およびメタチタン酸を用いることができる。
ここに、オルトチタン酸とは、四塩化チタンまたは硫酸チタニルなどのチタン化合物の水溶液を、必要に応じてシードの存在下にアルカリ中和することによって得られ、「水酸化チタン」とも称される、「Ti(OH)4 」または「TiO2 ・2H2 O」の示性式によって表わされる化合物である。このオルトチタン酸は、無定形のものであることから、焼成処理において、低い加熱温度(焼成温度)によっても得られる二酸化チタン粒子がルチル型の結晶構造を有するものとなるように結晶転位がなされるため、原料として好ましく用いられる。
メタチタン酸とは、硫酸チタニルなどのチタン化合物を水溶液中において、必要に応じてシードの存在下に熱加水分解することによって得られ、「TiO(OH)2 」または「TiO2 ・H2 O」の示性式によって表わされる化合物であってアナタース型の結晶構造を有するものである。

【0043】
この原料としてのチタン酸を、例えば水などの溶媒に懸濁させることによってスラリーが調製される。
次いで、得られたチタン酸スラリーが供される湿式粉砕処理、噴霧乾燥処理および焼成処理について、以下に詳細に説明する。

【0044】
(1)湿式粉砕処理
この湿式粉砕処理においては、原料としてのチタン酸のスラリーを粉砕処理することにより、当該スラリー中のチタン酸を粉砕し、この粉砕されたチタン酸が溶媒中に分散した状態の粉砕チタン酸分散液を得る。
この湿式粉砕処理は、スラリー中のチタン酸を分散させることにより、後工程の噴霧乾燥処理および焼成処理を経ることによって得られる二酸化チタン粒子のメジアン径が小さくなるよう調整することができるものであることから、行うことが好ましい処理である。

【0045】
この湿式粉砕処理に係る粉砕方式としては、例えばコロイドミルなどにより、回転する円型の砥石の隙間にスラリーを流通させて摩擦力、せん断力を与えて粉砕する方式、あるいは例えばボールミル、ダイノミル、サンドグラインダーなどにより、撹拌機を挿入した円筒にスラリーを剛体ビーズ(例えば、硬質ガラス、セラミック等)の球状媒体とともに充填して混合し、高速撹拌、振動による物理的衝撃、せん断、摩擦などにより粉砕する方式などを用いることができる。また、加圧乳化機タイプの装置や高速撹拌装置などによる、その他の粉砕方式を用いることもできる。

【0046】
チタン酸スラリーや湿式粉砕処理によって得られる粉砕チタン酸分散液には、ルチル転位促進シードが混合されていることが好ましい。
このようにルチル転位促進シードが混合されている場合においては、焼成処理中において、得られる二酸化チタン粒子をルチル型の結晶構造を有するものとするための結晶転位が生じやすくなる。
ここに、「ルチル転位促進シード」とは、ルチル結晶構造を有する微小核晶であり、チタン酸のルチル転位を促進するものである。

【0047】
ルチル転位促進シードとしては、具体的に、例えば従来公知の硫酸法によってルチル型二酸化チタン白色顔料を製造する方法において、原料である硫酸チタニルを加水分解する際に添加するシードなどを用いることができる。
また、ルチル転位促進シードの混合量は、適宜設定することができるが、ルチル転位を十分に生じさせることができることから、チタン酸スラリーや粉砕チタン酸分散液中に存在する二酸化チタンとの質量比(チタン酸中の二酸化チタン質量/ルチル転位促進シード中の二酸化チタン質量)が90/10~99/1の範囲となる量であることが好ましい。
また、ルチル転位促進シードを混合する手法としては、例えば撹拌混合機、ミキサーなどの通常の混合装置を用いることができ、また、このルチル転位促進シードの混合は、湿式粉砕処理の前後、あるいは湿式粉砕処理を行う際、すなわち湿式粉砕処理と同時に行うことができる。

【0048】
(2)噴霧乾燥処理
この噴霧乾燥処理においては、噴霧乾燥装置を用い、チタン酸スラリー、あるいは必要に応じてなされた湿式粉砕処理において得られた粉砕チタン酸分散液を、噴霧乾燥装置のノズルから微細な霧状液滴として噴射して熱風中に噴出させて乾燥することにより、その粒子形状が球状の乾燥造粒体を得る。
噴霧乾燥装置としては、通常のスプレードライヤーなどの通常の噴霧乾燥機を用いることができ、また、その噴霧方式は、チタン酸スラリーや粉砕チタン酸分散液の性状や噴霧乾燥機の処理能力などに応じて、例えばディスク式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、四流体ノズル式などを適宜選択することができる。
また、霧状液滴の乾燥条件(噴霧乾燥温度)は、給気温度が150~250℃であって、排気温度が60~120℃であることが好ましい。

【0049】
このような噴霧乾燥処理においては、例えばチタン酸スラリーや粉砕チタン酸分散液における二酸化チタン濃度を調整すること、噴霧乾燥機の噴霧方式としてディスク式を選択する場合には、ディスクの回転数を調整すること、また、噴霧乾燥機の噴霧方式として圧力ノズル式、二流体ノズル式および四流体ノズル式を選択する場合には、噴霧圧を調整することなどによって、噴霧される液滴の大きさを制御することにより、得られる乾燥造粒体のメジアン径およびBET比表面積を制御することができる。
また、噴霧乾燥処理によっては、得られる乾燥造粒体を同等の球状の粒子形状を有するものとすることができる。

【0050】
(3)焼成処理
この焼成処理においては、噴霧乾燥処理において得られた乾燥造粒体を、当該噴霧乾燥処理に係る噴霧乾燥温度よりも高い温度条件(具体的には250℃以上)によって焼成処理することにより、二酸化チタンよりなる焼成粒子を得る。
この焼成処理によれば、得られる焼成粒子のメジアン径およびBET比表面積と共に、当該焼成粒子の結晶構造や硬度などを調整することができる。

【0051】
焼成処理に係る焼成条件は、焼成温度が、500~1200℃であることが好ましく、更に好ましくは700~1000℃であり、特に好ましくは800~950℃である。
焼成温度が500℃未満である場合には、得られる二酸化チタン粒子がルチル型の結晶構造を有するものとなるようになされる結晶転位が進行しにくくなるおそれがある。一方、焼成温度が1200℃を超える場合には、得られる二酸化チタン粒子の硬度が高くなることから、組成物の適用部位において、骨や人工関節に二酸化チタン粒子による摩耗が生じるおそれがある。

【0052】
また、焼成時間は、適宜に設定することができるが、具体的には、30分~10時間とすることにより、形成される焼成粒子に焼成による十分な効果、具体的には、ルチル体への相転位促進効果を得ることができる。
また、焼成雰囲気は、特に限定されるものではないが、経済的観点から、大気などの酸素が存在する雰囲気であることが好ましい。
さらに、焼成処理は、焼成負荷を均一に付与する目的から、500~800℃の焼成温度によって第1の焼成処理を行った後、更に800~1200℃の焼成温度によって第2の焼成処理を行うものであってもよい。

【0053】
このようにして、湿式粉砕処理、噴霧乾燥処理および焼成処理を経ることによって形成された焼成粒子は、そのままの状態において本発明の骨セメント組成物の構成材料、すなわち本発明の骨セメントを構成する二酸化チタン粒子として用いることができるが、必要に応じて、より一層高いアパタイト形成能 (生体活性能)を得る目的から、その粒子表面に対してより一層高い親水性を付与するために、焼成処理において得られた焼成粒子を酸洗浄処理することが好ましい。

【0054】
(4)酸洗浄処理
酸洗浄処理は、例えば焼成粒子のスラリーを調製し、このスラリーと酸とを混合し、室温あるいは加熱下において撹拌することによって行うことができ、この酸洗浄処理の後、固液分離処理、洗浄処理および乾燥処理、必要に応じて解砕処理を経ることによって二酸化チタン粒子を得ることができる。
酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸を用いることができ、また、スラリーと酸との混合液における酸濃度は、例えば0.01~10mol/Lである。
酸洗浄処理を加熱下において行う場合は、スラリーと酸との混合液の温度が30~105℃となる条件で加熱することが好ましい。
この酸洗浄処理は、必要に応じて二酸化チタン粒子の表面により一層高い親水性を付与するためになされる処理であり、前記焼成粒子の他に、それ以外の他の方法によって製造された二酸化チタン粒子に対しても適用することができる。

【0055】
また、二酸化チタン粒子の製造過程においては、このような酸洗浄処理の他、必要に応じて、焼成処理において得られた焼成粒子に含まれる凝集体を解砕する目的から、例えば遠心粉砕機などを用いて乾式粉砕処理、または例えばボールミル、ダイノミル、サンドグラインダーなどを用いて湿式粉砕処理を行うこと、所望のメジアン径を有するものを選別する目的から、例えば静置法などによって湿式分級処理を行うこと、あるいは、メジアン径および/またはBET比表面積の異なる二酸化チタン粒子を混合することなどの他の工程を経ることもできる。

【0056】
本発明の骨セメント組成物を構成する二酸化チタン粒子の含有割合は、組成物全体に対して5質量%以上で50質量%以下であることが必要とされるが、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~30質量%、更に好ましくは10~30質量%、また更に好ましくは10~25質量%、特に好ましくは15~20質量%である。

【0057】
二酸化チタン粒子の含有割合が過小である場合には、十分な生体活性能が得られない。
一方、二酸化チタン粒子の含有割合が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体に実用上必要とされる物理的強度(例えば、曲げ強度)が得られなくなる。

【0058】
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマーとの関係における二酸化チタン粒子の含有割合、すなわち二酸化チタン粒子と(メタ)アクリレート系ポリマーとの総配合量(合計量)に対する二酸化チタン粒子の含有割合は、好ましくは6~77質量%、より好ましくは6~46質量%、更に好ましくは13~46質量%、また更に好ましくは13~38質量%、特に好ましくは20~29質量%である。

【0059】
((メタ)アクリレート系ポリマー)
本発明の骨セメント組成物の必須成分である(メタ)アクリレート系ポリマーは、後述の(メタ)アクリレート系モノマーと共に基材形成用成分を構成するものである。

【0060】
(メタ)アクリレート系ポリマーは、重合性単量体として(メタ)アクリレート系モノマーが重合されてなるものであり、その具体例としては、例えば、(A)メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレートなどのアルキルメタクリレートモノマーの重合体である、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)などのポリアルキルメタクリレート、(B)メチルメタクリレートと共に、スチレン、エチルメタクリレートおよびメチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種が共重合されてなる共重合体、(C)ビスフェノール-Aジグリシジルジメタクリレート(Bis-GMA)、2,2-ビス[4-(3-メタクリロキシ-2-ハイドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン(Bis-MEPP)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)などのジメタクリレート系モノマーの重合体などが挙げられる。

【0061】
本発明の骨セメント組成物の基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系ポリマーとしては、基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系モノマーと同質の重合性単量体が重合されてなるものであることが好ましく、具体的には、基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとの関係から、メチルメタクリレートを重合性単量体として用いてなるポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいは共重合体であることが好ましく、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいはメチルメタクリレート・スチレン共重合体であることが好ましい。

【0062】
(メタ)アクリレート系ポリマーとしては、重量平均分子量が好ましくは100,000以上、更に好ましくは130,000~170,000である粉末状のものを用いることが好ましい。
粉末状の(メタ)アクリレート系ポリマーにおいては、その粒子径(平均粒子径)が、10~60μmであることが好ましく、より好ましくは20~60μmであり、更に好ましくは30~50μmであり、特に好ましくは35~45μmである。
ここに、(メタ)アクリレート系ポリマーの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径である。レーザー回折/散乱式粒度分布計としては、具体的に、例えば粒度分布測定装置「Microtrac」(日機装株式会社製)を用いることができる。

【0063】
また、粉末状の(メタ)アクリレート系ポリマーは、球状の粒子形状を有するものであることが好ましい。
(メタ)アクリレート系ポリマーの形状を球状とすることにより、高い流動性が得られることに伴って組成物中における均一な分散性が得られることになる。

【0064】
(メタ)アクリレート系ポリマーの含有割合は、基材形成用成分全体に対して、30~80質量%であることが好ましく、より好ましくは50~75質量%、更に好ましくは53~72質量%、特に好ましくは59~72質量%である。

【0065】
(メタ)アクリレート系ポリマーの含有割合が過小である場合には、基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合が大きくなることから、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される硬化体を得るために長時間を要することとなるおそれがある。
一方、(メタ)アクリレート系ポリマーの含有割合が過大である場合には、他の必須成分を所望の含有割合で含有させること、あるいは必要とされる量の任意成分を含有させることができなくなるおそれがある。

【0066】
((メタ)アクリレート系モノマー)
本発明の骨セメント組成物の必須成分である(メタ)アクリレート系モノマーは、前述の(メタ)アクリレート系ポリマーと共に基材形成用成分を構成するものであり、この重合性単量体である(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって当該骨セメント組成物が硬化され、その結果、硬化体が得られることとなる。

【0067】
(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、例えばアルキルメタクリレートモノマー、ジメタクリレート系モノマーなどの基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系ポリマーを得るための重合性単量体として例示したものが挙げられる。
(メタ)アクリレート系モノマーの好ましい具体例としては、メチルメタクリレート(MMA)が挙げられる。

【0068】
(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合は、組成物全体に対して19~35質量%であることが好ましく、更に好ましくは25~35質量%である。

【0069】
また、本発明の骨セメント組成物には、必須成分である、二酸化チタン粒子、および(メタ)アクリレート系モノマーと(メタ)アクリレート系ポリマーとよりなる基材形成用成分の他、当該(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応をより速やかに開始および進行させる目的から、重合開始剤が含有されていることが好ましく、また、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応をより一層速やかに進行させる目的から、重合開始剤と共に重合促進剤が含有されていることが好ましい。

【0070】
重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化tert-ブチル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリルなどを用いることができる。
これらのうちでは、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応を速やかに開始することができ、しかもその反応を持続させやすいことから、過酸化ベンゾイルを用いることが好ましい。

【0071】
重合開始剤の含有割合は、(メタ)アクリレート系モノマー100質量部に対して1.0~10質量部であることが好ましく、更に好ましくは3~8質量部である。
重合開始剤の含有割合が過小である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が進みにくくなるおそれがある。一方、重合開始剤の含有割合が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される骨セメント組成物の硬化体に重合開始剤が残留しやすくなる。

【0072】
重合促進剤としては、例えばN,N-ジメチル-p-トルイジン、2, 4, 6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどを用いることができる。
これらのうちでは、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応を速やかに進行させることができることから、N,N-ジメチル-p-トルイジンを用いることが好ましい。

【0073】
重合促進剤の含有割合は、(メタ)アクリレート系モノマー100質量部に対して0.1~5質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.3~3質量部である。
重合促進剤の含有割合が過小である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が進みにくくなるおそれがある。一方、重合促進剤の含有割合が過大である場合には、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成される骨セメント組成物の硬化体に重合促進剤が残留しやすくなる。

【0074】
また、本発明の骨セメント組成物においては、フィラーとして、当該骨セメント組成物の必須成分である、特定のメジアン径とBET比表面積を有する二酸化チタン粒子と共に、例えばリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム)、硫酸バリウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などの二酸化チタン以外の無機物よりなるものを用いることができる。すなわち、本発明の骨セメント組成物においては、フィラーとして、前記二酸化チタン粒子を単独で、あるいは前記二酸化チタン粒子と、適宜に選択された1種以上の二酸化チタン以外の無機物よりなるものとを組み合わせて用いることができる。

【0075】
更に、本発明の骨セメント組成物には、重合開始剤、重合促進剤およびフィラーの他、例えば色素、抗生物質、骨成長因子、その他薬学的に許容しうる任意成分が含有されていてもよい。

【0076】
以上のような構成の本発明の骨セメント組成物は、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび(メタ)アクリレート系モノマーよりなる基材形成用成分と共に、特定のメジアン径およびBET比表面積を有する二酸化チタン粒子が特定の含有割合で含有されてなるものであることから、二酸化チタン粒子自体の有する体液環境下におけるアパタイト形成能が発現されると共に、当該二酸化チタン粒子の大きさ、形態およびその含有割合の点において、使用用途に応じた良好な曲げ強度が発揮されるものであるため、(メタ)アクリレート系モノマーが重合して硬化されることによって形成される硬化体において、生体活性能と共に、実用上必要とされる高い物理的強度、具体的には、ISO5833に基づく測定法によって測定される曲げ強度が60MPa以上となるような強度を得ることができる。
従って、本発明の骨セメント組成物は、弊害を伴うことなく長期間にわたって使用することが可能である。

【0077】
本発明の骨セメント組成物は、生体活性能を有すると共に、高い物理的強度が得られるものであることから、骨の欠損部の補填剤、あるいは人工股関節などの金属製の人工関節を周囲の骨と固定する接着剤、人工関節の固定剤として好適に用いることができ、その他、人工骨を形成するための人工骨形成材料などとしても用いることができる。

【0078】
また、本発明の骨セメント組成物は、生体内においても適用すること、すなわち生体内において、(メタ)アクリレート系モノマーを重合することによって硬化させることができる。具体的には、本発明の骨セメント組成物を混練したものを、適宜の手法によって生体内に導入し、例えば骨の欠損部、人工関節と骨との接着部または人工関節の固定部などの必要とされる適用部位に塗布することにより、補填剤、接着剤または固定剤などとして用いることができる。
ここに、本発明の骨セメント組成物を生体外において適用する場合の具体例としては、例えば生体外において硬化させて成形した、例えば人工骨、人工頭骨等を生体内に埋入するなどの人工骨形成材料としての適用が挙げられる。

【0079】
このような本発明の骨セメント組成物は、必須成分である二酸化チタン粒子、および(メタ)アクリレート系ポリマーと(メタ)アクリレート系モノマーよりなる基材形成用成分、その他、必要に応じた成分を混合することによって製造することができるものであり、製造に係る簡便性などの観点から、例えば各構成成分を予め個別の収容部材に収容してキットとして保管しておき、必要に応じて調製することもできる。

【0080】
<骨セメント組成物キット>
本発明の骨セメント組成物キットは、本発明の骨セメント組成物であって重合開始剤を含有するもの、および当該本発明の骨セメント組成物の硬化体および成形体を簡便に得るための骨セメント組成物キットである。
この本発明の骨セメント組成物キットは、二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤のうちの少なくとも(メタ)アクリレート系モノマーを含有するモノマー含有キット成分と、少なくとも重合開始剤を含有する重合開始剤含有キット成分を含むものである。

【0081】
このような本発明の骨セメント組成物キットは、適用前において(メタ)アクリレート系モノマーが重合反応することを防止する観点から、(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とが個別のキット成分とされていればよく、例えば構成成分の各々を個別のキット成分とすることもできるが、骨セメント組成物キットの持ち運びに係る便宜性および重合反応操作の簡便性の観点から、モノマー含有キット成分と、重合開始剤含有キット成分との2つのキット成分よりなるものであることが好ましい。

【0082】
モノマー含有キット成分および重合開始剤含有キット成分の2つのキット成分よりなる骨セメント組成物キットにおいては、必須の構成成分のうちの二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび重合開始剤が、通常、固体状のものであり、また(メタ)アクリレート系モノマーが、通常、液体状のものであることから、モノマー含有キット成分には、(メタ)アクリレート系モノマーのみが含有され、重合開始剤含有キット成分には、重合開始剤と共に、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび二酸化チタン粒子が含有されていることが好ましい。

【0083】
また、本発明の骨セメント組成物キットにおいて、二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤と共に、重合促進剤および/またはフィラーとして前記二酸化チタン粒子以外のもの、具体的には二酸化チタン以外の無機物よりなるもの(以下、「フィラー構成無機物」ともいう。)が含有されてなるものである場合には、これらの重合促進剤および/またはフィラー構成無機物を、各々、モノマー含有キット成分および重合開始剤含有キット成分とは異なる個別のキット成分とすることもできるが、持ち運びに係る便宜性および重合反応操作の簡便性の観点から、これらの2つのキット成分のいずれかに含有させることが好ましい。
具体的には、重合促進剤は、通常液体状態のものであり、(メタ)アクリレート系モノマーに対する反応性を有するものではないことから、2つのキット成分のうちのモノマー含有キット成分に含有することが好ましく、一方、フィラー構成無機物は、通常固体状態のものであることから、2つのキット成分のうちの重合開始剤含有キット成分に含有することが好ましい。

【0084】
骨セメント組成物キットに係るキット成分を収容するための収容部材としては、キット成分を保管および運搬することのできるようなものであればよく、例えばガラス、金属およびプラスチックよりなる容器、例えば紙やプラスチックよりなる包装部材などを適宜に選択して用いることができる。

【0085】
このような本発明の骨セメント組成物キットによれば、キット成分を単に混合処理することによって骨セメント組成物を得ることができることから、骨セメント組成物の硬化体や成形体を容易に製造することができ、しかも(メタ)アクリレート系モノマーと、重合開始剤とが個別のキット成分とされていることから、適用前の保管されている状態あるいは運搬されている状態などにおいて、(メタ)アクリレート系モノマーが重合することを防止することができる。

【0086】
また、本発明の骨セメント組成物キットが、モノマー含有キット成分および重合開始剤含有キット成分の2つのキット成分よりなるものである場合には、キット成分の総数が少ないことから、骨セメント組成物キットの持ち運びに係る便宜性および重合反応操作がより一層優れたものとなる。

【0087】
<骨セメント成形体>
本発明の骨セメント成形体は、特定のメジアン径および特定のBET比表面積を有する二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーよりなる基材成分とを必須成分として含有し、当該二酸化チタン粒子の含有割合が、成形体全体に対して5~50質量%、より好ましくは5~30質量%であるものであり、本発明の骨セメント組成物の硬化体よりなるものである。
すなわち、本発明の骨セメント成形体は、本発明の骨セメント組成物を材料とし、当該骨セメント組成物に係る基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系モノマーを重合させることによって形成される硬化体よりなるものであり、当該骨セメント成形体の基材成分は、材料としての本発明の骨セメント組成物の基材形成用成分である(メタ)アクリレート系ポリマーと、同じく基材形成用成分である(メタ)アクリレート系モノマーが重合することによって形成されてなるポリマーとにより構成されてなるものである。

【0088】
この本発明の骨セメント成形体において、二酸化チタン粒子の含有割合は、材料である本発明の骨セメント組成物と同様に、成形体全体に対して5質量%以上で50質量%以下であることが必要とされるが、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~30質量%、更に好ましくは10~30質量%、また更に好ましくは10~25質量%、特に好ましくは15~20質量%である。

【0089】
二酸化チタン粒子の含有割合が過小である場合には、十分な生体活性能が得られない。
一方、二酸化チタン粒子の含有割合が過大である場合には、実用上必要とされる物理的強度(例えば、曲げ強度)が得られなくなる。

【0090】
本発明の骨セメント成形体においては、ISO規格、具体的には、ISO5833に基づく測定法によって測定される曲げ強度が、60MPa以上とされるが、更に好ましくは65MPa以上、また更に好ましくは70MPa以上、特に好ましくは75MPa以上である。

【0091】
また、本発明の骨セメント成形体においては、ISO5833に基づく測定法によって測定される曲げ弾性率が1800MPa以上とされ、同方法によって測定される平均圧縮強度が70MPa以上とされる。

【0092】
このような本発明の骨セメント成形体によれば、(メタ)アクリレート系ポリマーよりなる基材成分と共に、特定の二酸化チタン粒子が特定の割合で含有されていることから、二酸化チタン粒子自体の有する体液環境下におけるアパタイト形成能が発現されると共に、当該二酸化チタン粒子の大きさ、形態およびその含有割合の点において、使用用途に応じた良好な曲げ強度が発揮されるものであるため、生体活性能と共に、実用上必要とされる高い物理的強度を得ることができる。

【0093】
本発明の骨セメント成形体は、生体活性能を有すると共に、高い物理的強度を有するものであることから、人工骨として好適に用いることができ、その他、例えば骨欠損部に埋設するための人工骨材料などとしても用いることができる。

【0094】
<骨セメント成形体の製造方法>
本発明の骨セメント成形体の製造方法は、特定のメジアン径および特定のBET比表面積を有する二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーの存在下において、(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤によって重合させる重合工程を経ることにより、二酸化チタン粒子と、(メタ)アクリレート系ポリマーよりなる基材成分とを含有する骨セメント成形体を得ることを特徴とするものである。
すなわち、本発明の骨セメント成形体の製造方法は、本発明の骨セメント組成物を材料とし、当該骨セメント組成物に係る基材形成用成分を構成する(メタ)アクリレート系モノマーを重合させることによって形成される硬化体を成形し、本発明の骨セメント成形体として得るものである。

【0095】
具体的に、この本発明の骨セメント成形体の製造方法における重合工程においては、二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマーおよび重合開始剤を仕込んだ容器内に、(メタ)アクリレート系モノマーを添加して混練することによって(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤と接触させ、これにより、(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応が進行し、この(メタ)アクリレート系モノマーが硬化することによって骨セメント成形体とされる硬化体が形成される。

【0096】
そして、この重合工程においては、二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤の混練物を、所望の形状を有し、離型性を有する容器内に挿入し、その状態で硬化させることによって成形し、これにより、当該容器の形状に適合した形状を有するように成形体を形成することが好ましい。
具体的には、例えば二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤の混合物を、真空脱気することのできる密閉容器などを用いて混練し、この混練物を、硬化する以前に、形成すべき骨セメント成形体の形状に適合した形状を有し、離型性を有する容器内に挿入し、その状態で静置して硬化させることによって成形し、これにより、所望の形状を有する成形体、すなわち骨セメント成形体を形成する。

【0097】
この重合工程において、成形体の成形条件は、二酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリレート系モノマーおよび重合開始剤の各々種類や使用量、形成すべき成形体の形状などによっても異なるが、混練条件としては、例えば脱気雰囲気下において、混練時間が1分間であり、また、静置条件としては、例えば温度30℃の環境下において、静置時間が24時間以上である。

【0098】
このような本発明の骨セメント成形体の製造方法によれば、形成すべき骨セメント成形体における基材成分を形成するための(メタ)アクリレート系モノマーの重合反応を、(メタ)アクリレート系ポリマーと共に特定の二酸化チタン粒子の存在下において行うことにより、得られる硬化体よりなる成形体が特定の二酸化チタン粒子を特定の含有割合で含有するものとなることから、生体活性能と共に、高い物理的強度を有する骨セメント成形体を容易に得ることができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0100】
また、以下の実施例および比較例において行った二酸化チタン粒子のメジアン径の測定方法およびBET比表面積の測定方法、二酸化チタン濃度の測定方法並びに(メタ)アクリレート系ポリマーの平均粒子径の測定方法は、以下の通りである。
【実施例】
【0101】
(二酸化チタン粒子のメジアン径の測定方法)
メジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるものであり、レーザー回折/散乱式粒度分布計として、粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用いて行った。
すなわち、メジアン径を測定すべき粉体粒子を、濃度0.2質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液よりなる分散媒50mL中に添加して撹拌・混合することによって懸濁液を調製し、この懸濁液を、粒度分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)に対して試料投入口から投入し、3分間かけて超音波処理した後に測定を開始した。
【実施例】
【0102】
(二酸化チタン粒子のBET比表面積の測定方法)
BET比表面積は、窒素吸着法によって測定されるものであり、BET比表面積測定装置「MONOSORB」(ユアサアイオニクス株式会社製)を用いて行った。
このBET比表面積測定装置「MONOSORB」(ユアサアイオニクス株式会社製)は、BET一点法によって測定を行うものである。
【実施例】
【0103】
(二酸化チタン濃度の測定方法)
二酸化チタン濃度、具体的には、オルトチタン酸スラリーおよびルチル転位促進シードスラリーに係る二酸化チタン濃度は、スラリーをルツボに分取して乾燥した後に温度750℃の条件で焼成処理することによって測定した。
【実施例】
【0104】
((メタ)アクリレート系ポリマーの平均粒子径の測定方法)
平均粒子径としては、レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定されるメジアン径を測定し、レーザー回折/散乱式粒度分布計として、粒度分布測定装置「Microtrac」(日機装株式会社製)を用いた。
すなわち、平均粒子径を測定すべき粉体粒子を、濃度0.2質量%のTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)よりなる分散媒50mL中に添加して撹拌・混合し、その後、1分間の超音波処理をすることによって懸濁液を調製し、この懸濁液を、粒度分布測定装置「Microtrac」(日機装株式会社製)に対して試料投入口から投入し、3分間かけて超音波処理した後に測定を開始した。
【実施例】
【0105】
〔二酸化チタン粒子の製造例1〕
(チタン酸スラリーの調製)
四塩化チタン水溶液をアンモニア水によって中和した後、ろ過して水洗することによってウェットケーキ状態のオルトチタン酸を得た。その後、得られたウェットケーキ状態のオルトチタン酸と、純水とをミキサーに仕込み、十分撹拌混合することによってオルトチタン酸スラリーを得た。このオルトチタン酸スラリーを構成するオルトチタン酸粒子のメジアン径を測定したところ、6.8μmであった。
【実施例】
【0106】
(湿式粉砕過程)
ダイノミル「DYNO-MILL」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用い、このダイノミル本体の容積が約600mLの内部に、平均粒径0.6mmのチタニアビーズ(富山セラミックス株式会社製)480mLを充填すると共に、得られたオルトチタン酸スラリーを、流量160mL/分の条件で送液し、当該本体内部に設けられている回転羽根を回転することによってダイノミル処理を行うことにより、オルトチタン酸スラリー(以下、「粉砕処理済チタン酸スラリー(a)」ともいう。)を得た。
この粉砕処理済チタン酸スラリー(a)における二酸化チタン濃度は9.15質量%であり、当該粉砕処理済チタン酸スラリー(a)を構成するオルトチタン酸粒子のメジアン径を測定したところ、1.7μmであった。
【実施例】
【0107】
(噴霧乾燥過程)
先ず、湿式粉砕過程において得られた粉砕処理済チタン酸スラリー(a)に、二酸化チタン濃度16. 08質量%のルチル転位促進シードスラリーを、粉砕処理済チタン酸スラリー(a)中に存在する二酸化チタンとの質量比(チタン酸中の二酸化チタン質量/ルチル転位促進シード中の二酸化チタン質量)が95/5となる割合で混合し、この混合物に対して純水を添加することによって二酸化チタン濃度が1.5質量%となるように調整して混合スラリーを調製した。得られた混合スラリーを家庭用ミキサーを用いて撹拌混合した後、400メッシュの篩によって粗粒子を除去することにより、噴霧乾燥処理用スラリー(以下、「噴霧乾燥処理用スラリー(a)」ともいう。)を得た。
次いで、噴霧乾燥機「MDL-050C」(藤崎電機株式会社製)を用い、この噴霧乾燥機に対してローラーポンプによって噴霧乾燥処理用スラリー(a)を送液し、ローラーポンプの流量30mL/分(純水を送液したときの設定流量)、給気温度200℃、排気温度65~85℃、空気量80L/分の条件により、噴霧乾燥処理を行った。この噴霧乾燥処理によって得られた乾燥造粒体を、噴霧乾燥機に設けられているガラス容器およびバグフィルターよりなる粉体回収部分において、メジアン径の大きいものをガラス容器内に、メジアン径の小さいものをバグフィルター内に回収した。
ここに、噴霧乾燥機において、ガラス容器内に回収されたものは「サイクロン品」と称され、一方バグフィルター内に回収されたものは「バグ品」と称される。
【実施例】
【0108】
(焼成過程)
先ず、噴霧乾燥過程において得られた乾燥造粒体のうちのサイクロン品として回収したメジアン径1.9μmのものを焼成ルツボに入れ、電気炉「SK-3035F」(株式会社モトヤマ製)を用いて、焼成温度650℃(昇温速度10℃/分)、焼成時間3時間の焼成条件によって第1の焼成処理を行った後、自然冷却を行った。その後、自然冷却した乾燥造粒体の焼成物(中間焼成体)に対して、スクリーン径2mmのメッシュをセットした遠心粉砕機「ZM1」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数12000rpmの条件によって乾式粉砕処理を行った。
次いで、乾式粉砕処理した焼成中間体を焼成ルツボに入れ、電気炉「SK-3035F」(株式会社モトヤマ製)を用いて、焼成温度950℃(昇温速度10℃/分)、焼成時間3時間の焼成条件によって第2の焼成処理を行った後、自然冷却を行った。その後、自然冷却した中間焼成体の焼成物である焼成粒子に対して、スクリーン径2mmのメッシュをセットした遠心粉砕機「ZM1」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数12000rpmの条件によって乾式粉砕処理を行うことにより、焼成粒子を得た。
【実施例】
【0109】
(酸洗浄過程)
焼成過程において得られた焼成粒子を1規定濃度の塩酸中に添加し、室温下において撹拌モータを用いて一晩にわたって撹拌することによって酸洗浄処理を行った。その後、デカンテーションによって上澄みを除去し、残渣をブフナー漏斗を用いて純水によってろ過洗浄し、ろ液の比抵抗が10kΩ・m以上であることを確認した後、恒温乾燥機を用いて温度110℃の条件で乾燥処理し、スクリーン径2mmのメッシュをセットした遠心粉砕機「ZM1」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数12000rpmの条件によって乾式粉砕処理を行うことにより、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(A)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(A)について、メジアン径を測定したところ、2.3μmであり、またBET比表面積を測定したところ、2.02m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(A)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0110】
〔二酸化チタン粒子の製造例2〕
二酸化チタン粒子の製造例1において、チタン酸スラリーの調製および湿式粉砕過程にて、オルトチタン酸中の二酸化チタン濃度が8.03質量%のオルトチタン酸スラリー(粉砕処理済チタン酸スラリー)を得たこと、噴霧乾燥過程にて、二酸化チタン濃度が4.0質量%となるように前記粉砕処理済チタン酸スラリーとルチル転位促進シードスラリーとの混合スラリーを調製し、噴霧乾燥処理用スラリーを得、この噴霧乾燥用スラリーを用いて、メジアン径が3.4μmの乾燥造粒体と、メジアン径が3.6μmの乾燥造粒体とを個別にサイクロン品として得たこと、焼成過程にて、メジアン径が3.4μmの乾燥造粒体およびメジアン径が3.6μmの乾燥造粒体の各々を個別に焼成処理して乾式粉砕処理することによって2種類の焼成粒子を得たこと、そして、得られた2種類の焼成粒子を混合して純水中に加えて懸濁液を得、この懸濁液を目開き10μmの篩を用いてろ過した後に自然沈降法によって回収した沈渣を酸洗浄過程に供したこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例1と同様にして、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(B)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(B)について、メジアン径を測定したところ、2.9μmであり、またBET比表面積を測定したところ、1.90m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(B)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0111】
〔二酸化チタン粒子の製造例3〕
二酸化チタン粒子の製造例1において、チタン酸スラリーの調製にて、オルトチタン酸中の二酸化チタン濃度が9.22質量%のオルトチタン酸スラリーを得たこと、湿式粉砕過程を経なかったこと、噴霧乾燥過程にて、二酸化チタン濃度が7.0質量%となるように前記オルトチタン酸スラリーとルチル転位促進シードスラリーとの混合スラリーを調製し、噴霧乾燥処理用スラリーを得たこと、およびメジアン径が6. 0μmの乾燥造粒体をサイクロン品として得たこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例1と同様にして、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(C)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(C)について、メジアン径を測定したところ、5.1μmであり、またBET比表面積を測定したところ、0.85m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(C)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0112】
〔二酸化チタン粒子の製造例4〕
二酸化チタン粒子の製造例3において、噴霧乾燥過程にて、噴霧乾燥機による噴霧乾燥処理の条件のうちの空気量を40L/分としたこと、およびメジアン径が7.4μmの乾燥造粒体をサイクロン品として得たこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例3と同様にして、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(D)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(D)について、メジアン径を測定したところ、6.4μmであり、またBET比表面積を測定したところ、0.59m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(D)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0113】
〔二酸化チタン粒子の製造例5〕
二酸化チタン粒子の製造例1において、チタン酸スラリーの調製および湿式粉砕過程にて、オルトチタン酸中の二酸化チタン濃度が9.44質量%のオルトチタン酸スラリー(粉砕処理済チタン酸スラリー)を得たこと、噴霧乾燥過程にて、二酸化チタン濃度が4.0質量%となるように前記粉砕処理済チタン酸スラリーと二酸化チタン濃度24.43質量%のルチル転位促進シードスラリーとの混合スラリーを調製して噴霧乾燥処理用スラリーを得たこと、焼成過程にて、得られたバグ品を用いたこと、焼成過程において得られた焼成粒子を、ポットミルを用いて24時間にわたって湿式処理した後に酸洗浄過程に供したこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例1と同様にして、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(E)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(E)について、メジアン径を測定したところ、1.2μmであり、またBET比表面積を測定したところ、3.40m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(E)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0114】
〔二酸化チタン粒子の製造例6〕
この二酸化チタン粒子の製造例6においては、メジアン径の異なる2種類の粒子を個別に作製し、最終的に、作製された2種類の粒子を混合することによって骨セメント組成物の成形体の製造例に供するための二酸化チタン粒子を製造した。
【実施例】
【0115】
(製造例6-1:第1の二酸化チタン粒子の製造例)
二酸化チタン粒子の製造例1において、チタン酸スラリーの調製および湿式粉砕過程にて、オルトチタン酸中の二酸化チタン濃度が8.10質量%のオルトチタン酸スラリー(粉砕処理済チタン酸スラリー)を得たこと、噴霧乾燥過程にて、二酸化チタン濃度が4.0質量%となるように前記粉砕処理済チタン酸スラリーと二酸化チタン濃度が17.20質量%のルチル転位促進シードスラリーとの混合スラリーを調製し、噴霧乾燥処理用スラリーを得、噴霧乾燥処理に係るローラーポンプの流量の条件を25mL/分とし、更にメジアン径が1.2μmの乾燥造粒体をバグ品として得たこと、焼成過程にて、得られたバグ品を用いたこと、焼成過程において得られた焼成粒子を、ポットミルを用いて40時間にわたって湿式処理した後に酸洗浄過程に供したこと、および、酸洗浄過程において、乾式粉砕処理を、スクリーン径1.5mmのメッシュをセットした遠心粉砕機「ZM100」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数14000rpmの条件にて行ったこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例1と同様にして、メジアン径1.1μmの二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(F-1)」ともいう。)を得た。
【実施例】
【0116】
(製造例6-2:第2の二酸化チタン粒子の製造例)
二酸化チタン粒子の製造例1において、チタン酸スラリーの調製および湿式粉砕過程にて、オルトチタン酸中の二酸化チタン濃度が8.10質量%のオルトチタン酸スラリー(粉砕処理済チタン酸スラリー)を得たこと、噴霧乾燥過程にて、二酸化チタン濃度が1.0質量%となるように調整した前記粉砕処理済チタン酸スラリーと二酸化チタン濃度が17.20質量%のルチル転位促進シードスラリーとの混合スラリーを、目開き5μmの篩を用いてろ過し、噴霧乾燥処理用スラリーを得、噴霧乾燥処理に係るローラーポンプの流量の条件を20mL/分とし、更にメジアン径が1.0μmの乾燥造粒体をバグ品として得たこと、焼成過程にて、得られたバグ品を用い、第2の焼成処理の焼成温度を850℃としたこと、焼成過程において得られた焼成粒子を、ポットミルを用いて17時間にわたって湿式処理した後に酸洗浄過程に供したこと、酸洗浄過程にて、純水によるろ過洗浄を孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用い、かつ乾式粉砕処理を、スクリーン径1.5mmのメッシュをセットした遠心粉砕機「ZM100」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数14000rpmの条件にて行ったこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例1と同様にして、メジアン径0.3μmの二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(F-2)」ともいう。)を得た。
【実施例】
【0117】
製造例6-1において得られた二酸化チタン粒子(F-1)30gと、製造例6-2において得られた二酸化チタン粒子(F-2)19gとを混合することにより、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(F)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(F)について、メジアン径を測定したところ、0.7μmであり、またBET比表面積を測定したところ、6.73m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(F)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0118】
〔比較用二酸化チタン粒子の製造例1〕
(噴霧乾燥過程)
先ず、ルチル転位促進シードと、純水とにより、ルチル転位促進シードの濃度が2. 0質量%のスラリーを調製し、このスラリーを家庭用ミキサーを用いて撹拌混合した後、200メッシュの篩によって粗粒子を除去することにより、噴霧乾燥処理用スラリーを得た。
次いで、噴霧乾燥機「MDL-050C」(藤崎電機株式会社製)を用い、この噴霧乾燥機に対してローラーポンプによって前記噴霧乾燥処理用スラリーを送液し、ローラーポンプの流量30mL/分、給気温度200℃、排気温度70~90℃、空気量110L/分の条件により、噴霧乾燥処理を行った。この噴霧乾燥処理によって得られた乾燥造粒体を、噴霧乾燥機に設けられているガラス容器およびバグフィルターよりなる粉体回収部分において、メジアン径が2.7μmの乾燥造粒体をサイクロン品としてガラス容器内に回収した。
【実施例】
【0119】
(焼成過程)
噴霧乾燥過程において得られた乾燥造粒体のサイクロン品(メジアン径が2.7μmのもの)を焼成ルツボに入れ、電気炉「SS-2030PKP」(株式会社モトヤマ製)を用いて、焼成温度650℃(昇温速度10℃/分)、焼成時間3時間の焼成条件によって第1の焼成処理を行った後、自然冷却を行った。その後、自然冷却した乾燥造粒体の焼成物(中間焼成体)を撹拌し、再度、電気炉「SS-2030PKP」(株式会社モトヤマ製)を用いて、焼成温度650℃(昇温速度10℃/分)、焼成時間3時間の焼成条件によって第2の焼成処理を行った後、自然冷却を行った。その後、自然冷却した焼成中間焼成体の焼成物である焼成粒子に対して、遠心粉砕機「ZM100」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数14000rpmの条件によって乾式粉砕処理を行うことにより、焼成粒子を得た。
【実施例】
【0120】
(酸洗浄過程)
焼成過程において得られた焼成粒子を家庭用ミキサーによって撹拌した後、塩酸中に添加して懸濁液を得てそのpHを8.5に調整し、目開き10μmの篩によって粗粒子を除去し、更に、自然沈降法を用いて上澄みを吸引除去する操作を2回繰り返すことによって微粒子を除去した後、沈渣を純水に添加して懸濁液を得、この懸濁液に、その濃度が1mol/Lとなるように硫酸を添加して一晩静置することによって酸洗浄処理を行った。その後、上澄みを除去し、残渣をブフナー漏斗を用いて純水によってろ過洗浄した後、恒温乾燥機を用いて乾燥処理し、遠心粉砕機「ZM100」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数14000rpmの条件によって乾式粉砕処理を行うことにより、二酸化チタン粒子(以下、「比較用二酸化チタン粒子(G)」ともいう。)を得た。
得られた比較用二酸化チタン粒子(G)について、メジアン径を測定したところ、3.4μmであり、またBET比表面積を測定したところ、30.6m2 /gであった。
【実施例】
【0121】
〔比較用二酸化チタン粒子の製造例2〕
(チタン酸スラリーの調製)
四塩化チタン水溶液をアンモニア水によって中和した後、ろ過して水洗することによってオルトチタン酸を得た。その後、得られたオルトチタン酸と、純水とをミキサーに仕込み、十分撹拌混合することによってオルトチタン酸スラリーを得た。このオルトチタン酸スラリーを構成するオルトチタン酸粒子のメジアン径を測定したところ、6.9μmであった。
【実施例】
【0122】
(湿式粉砕過程)
ダイノミル「DYNO-MILL」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用い、このダイノミル本体の容積が約600mLの内部に、平均粒径0.6mmのチタニアビーズ(富山セラミックス株式会社製)480mLを充填すると共に、得られたオルトチタン酸スラリーを、流量160mL/分の条件で送液し、当該本体内部に設けられている回転羽根を回転することによってダイノミル処理を行うことにより、オルトチタン酸スラリー(以下、「粉砕処理済チタン酸スラリー(h)」ともいう。)を得た。
この粉砕処理済チタン酸スラリー(h)における二酸化チタン濃度は8.22質量%であり、当該粉砕処理済チタン酸スラリー(h)を構成するオルトチタン酸のメジアン径を測定したところ、1.7μmであった。
【実施例】
【0123】
(噴霧乾燥過程)
先ず、湿式粉砕過程において得られた粉砕処理済チタン酸スラリー(h)に、ルチル転位促進シードスラリー(二酸化チタン濃度24.40質量%)を、粉砕処理済チタン酸スラリー(h)中に存在する二酸化チタンとの質量比(チタン酸中の二酸化チタン質量/ルチル転位促進シード中の二酸化チタン質量)が5/95となる割合で混合し、この混合物に対して純水を添加することによって二酸化チタン濃度が20質量%となるように調整して混合スラリーを調製した。得られた混合スラリーを家庭用ミキサーを用いて撹拌混合した後、200メッシュの篩によって粗粒子を除去することにより、噴霧乾燥処理用スラリー(以下、「噴霧乾燥処理用スラリー(h)」ともいう。)を得た。
次いで、噴霧乾燥機「MDL-050C」(藤崎電機株式会社製)を用い、この噴霧乾燥機に対してローラーポンプによって噴霧乾燥処理用スラリー(h)を送液し、ローラーポンプの流量40mL/分、給気温度210~220℃、排気温度65~85℃、空気量60L/分の条件により、噴霧乾燥処理を行った。この噴霧乾燥処理によって得られた乾燥造粒体を、噴霧乾燥機に設けられているガラス容器およびバグフィルターよりなる粉体回収部分において、メジアン径7.0μmの乾燥造粒体をサイクロン品としてガラス容器内に回収した。
【実施例】
【0124】
(焼成過程)
噴霧乾燥過程において得られた乾燥造粒体のうちのサイクロン品(具体的にはメジアン径が7.0μmのもの)を焼成ルツボに入れ、電気炉「SK-3035F」(株式会社モトヤマ製)を用いて、焼成温度650℃(昇温速度10℃/分)、焼成時間6時間の焼成条件によって焼成処理を行った後、自然冷却を行った。その後、自然冷却した乾燥造粒体の焼成物である焼成粒子に対して、スクリーン径1.5mmのメッシュをセットした遠心粉砕機「ZM100」(株式会社日本精機製作所製)を用い、回転数14000rpmの条件によって乾式粉砕処理を行うことにより、二酸化チタン粒子(以下、「比較用二酸化チタン粒子(H)」ともいう。)を得た。
得られた比較用二酸化チタン粒子(H)について、メジアン径を測定したところ、6.6μmであり、またBET比表面積を測定したところ、24.1m2 /gであった。
【実施例】
【0125】
〔実施例1〕
(骨セメント組成物の成形体の製造例)
二酸化チタン粒子(A)8.82gと、ポリメチルメタクリレート粉末(平均粒子径:35μm、平均分子量:150,000、粒子形状:球状;積水化成品工業株式会社製)32.34gと、過酸化ベンゾイル(川口薬品株式会社製)0.882gとを、ヘンシェルミキサー「IMC-1857」(株式会社井元製作所製)を用い、回転数1000rpmの条件で3分間にわたって混合し、得られた混合物を真空ポンプを用いて1時間脱気処理することにより、混合粉体成分を得た。
一方、メチルメタクリレート(三菱ガス化学株式会社製)17.64gにN,N-ジメチル-p-トルイジン(三星化学研究所製)0.2058gを添加し、スターラーを用いて5分間かけて混合することにより、混合液体成分を得た。
そして、得られた混合粉体成分および混合液体成分の各々を個別に容器内に収容することにより、当該混合粉体成分よりなる重合開始剤含有キット成分と、当該混合液体成分よりなるモノマー含有キット成分とにより構成されてなる骨セメント組成物キット(以下、「骨セメント組成物キット(1)」ともいう。)を作製した。
この骨セメント組成物キット(1)において、二酸化チタン粒子(A)の含有割合は15質量%((メタ)アクリレート系ポリマーとの関係における含有割合は21.4質量%)であり、ポリメチルメタクリレート粉末よりなる(メタ)アクリレート系ポリマーの基材形成用成分全体に対する含有割合は64.7質量%であった。また、メチルメタクリレートよりなる(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合は、組成物全体に対して29.5質量%であった。また、過酸化ベンゾイルよりなる重合開始剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、5.0質量%であり、N,N-ジメチル-p-トルイジンよりなる重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は、1.17質量%であった。
【実施例】
【0126】
次いで、ポリテトラフルオロエチレン製の混練容器に、骨セメント組成物キット(1)のうちの重合開始剤含有キット成分を入れた後、当該骨セメント組成物キット(1)のモノマー含有キット成分を投入することによって骨セメント組成物を得、この骨セメント組成物を、常圧にて30秒間吸引することによって形成した脱気雰囲気下において1分間かけて混練し、その混練物をポリテトラフルオロエチレン製の曲げ強度測定用試験片作製治具に流し入れ、流動性が小さい状態となったことを確認した後、蓋をして、温度30℃の環境下において、24時間以上にわたって静置することにより、骨セメント組成物の硬化体よりなる成形体(以下、「骨セメント成形体(1)」ともいう。)を得た。
ここに、得られた骨セメント成形体(1)における二酸化チタン粒子の含有割合は15質量%であった。
【実施例】
【0127】
(曲げ強度の測定)
得られた骨セメント成形体(1)を、♯400の研磨紙を用いて湿式研磨処理することにより、75mm×10mm×3.3mmの寸法となるように整え、ISO5833に基づく測定法に従って曲げ強度の測定を行った。結果を下記表1に示す。
【実施例】
【0128】
〔実施例2~実施例6〕
実施例1において、骨セメント組成物の成形体の製造例にて、二酸化チタン粒子(A)に代えて、各々、二酸化チタン粒子(B)~二酸化チタン粒子(F)を用いたこと以外は当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キットを得、その骨セメント組成物キットを用いて骨セメント組成物の硬化体よりなる成形体(以下、各々、「骨セメント成形体(2)」~「骨セメント成形体(6)」ともいう。)を得た。
そして、得られた骨セメント成形体(2)~骨セメント成形体(6)の各々について、実施例1と同様の手法によって曲げ強度の測定を行った。結果を下記表1に示す。
【実施例】
【0129】
〔比較例1〕
実施例1において、骨セメント組成物の成形体の製造例にて、二酸化チタン粒子(A)に代えて、ルチル型二酸化チタン「CR-EL」(石原産業株式会社製)を用いたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キットを得、その骨セメント組成物キットを用いて骨セメント組成物の硬化体よりなる成形体(以下、「比較用骨セメント成形体(1)」ともいう。)を得た。
そして、得られた比較用骨セメント成形体(1)について、実施例1と同様の手法によって曲げ強度の測定を行った。結果を下記表1に示す。
【実施例】
【0130】
ここに、ルチル型二酸化チタン「CR-EL」(石原産業株式会社製)について、メジアン径を測定したところ、1.0μmであり、またBET比表面積を測定したところ、7.35m2 /gであった。
【実施例】
【0131】
〔比較例2および比較例3〕
実施例1において、骨セメント組成物の成形体の製造例にて、二酸化チタン粒子(A)に代えて、各々、比較用二酸化チタン粒子(G)および比較用二酸化チタン粒子(H)を用いたこと以外は、当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キットを得、その骨セメント組成物キットを用いて骨セメント組成物の硬化体よりなる成形体(以下、「比較用骨セメント成形体(2)および比較用骨セメント成形体(3)」ともいう。)を得た。
そして、得られた比較用骨セメント成形体(2)および比較用骨セメント成形体(3)について、実施例1と同様の手法によって曲げ強度の測定を行った。結果を下記表1に示す。
【実施例】
【0132】
【表1】
JP0005602126B2_000002t.gif
【実施例】
【0133】
表1の結果から、実施例1~実施例6に係る骨セメント成形体(1)~骨セメント成形体(6)は、いずれも曲げ強度が60MPa以上であるものであり、実用上必要とされる高い物理的強度が得られていることが確認された。
また、特に実施例1~実施例4に係る骨セメント成形体(1)~骨セメント成形体(4)は、いずれも曲げ強度が80MPa以上であるものであり、極めて高い物理的強度が得られていることが確認された。
一方、比較例1~比較例3に係る比較用骨セメント成形体(1)~比較用骨セメント成形体(3)は、いずれも、含有されている二酸化チタン粒子のBET比表面積が過大であるものであることから、実用上必要とされる十分な物理的強度が得られないことが確認された。
【実施例】
【0134】
〔二酸化チタン粒子の製造例7〕
二酸化チタン粒子の製造例1において、噴霧乾燥過程にて、二酸化チタン濃度が4.0質量%となるように粉砕処理済チタン酸スラリーとルチル転位促進シードスラリーとの混合スラリーを調製して噴霧乾燥処理用スラリーを得たこと、およびメジアン径が3. 4μmの乾燥造粒体をサイクロン品として得たこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例1と同様にして、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(I)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(I)について、メジアン径を測定したところ、3.4μmであり、またBET比表面積を測定したところ、1.24m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(I)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0135】
〔実施例7~実施例10〕
実施例2において、骨セメント組成物の成形体の製造例にて、二酸化チタン粒子(B)に代えて二酸化チタン粒子(I)を用いたこと、この二酸化チタン粒子(I)およびポリメチルメタクリレート粉末(平均粒子径:35μm、平均分子量:150,000、粒子形状:球状;積水化成品工業株式会社製)の使用量を下記表2に示す量としたこと以外は当該実施例2と同様にして骨セメント組成物キットを得、その骨セメント組成物キットを用いて骨セメント組成物の硬化体よりなる成形体(以下、各々、「骨セメント成形体(7)」~「骨セメント成形体(10)」ともいう。)を得た。なお、骨セメント成形体(7)~骨セメント成形体(10)を得るために用いた骨セメント組成物キットの製造には、各々、メチルメタクリレート17.64g(29.5質量%)、過酸化ベンゾイル0.882g((メタ)アクリレート系モノマーに対する割合:5.0質量%)、N,N-ジメチル-p-トルイジン0.2058g((メタ)アクリレート系モノマーに対する割合:1.17質量%)を用いた。
そして、得られた骨セメント成形体(7)~骨セメント成形体(10)の各々について、実施例1と同様の手法によって曲げ強度の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【実施例】
【0136】
〔二酸化チタン粒子の製造例8〕
二酸化チタン粒子の製造例2において、チタン酸スラリーの調製および湿式粉砕過程にて、オルトチタン酸中の二酸化チタン濃度が8.34質量%のオルトチタン酸スラリー(粉砕処理済チタン酸スラリー)を得たこと、噴霧乾燥過程にて、二酸化チタン濃度が3.0質量%となるように前記粉砕処理済チタン酸スラリーとルチル転位促進シードスラリーとの混合スラリーを調製して噴霧乾燥処理用スラリーを得たこと、および噴霧乾燥処理に係る空気量の条件を90L/分としたこと以外は、当該二酸化チタン粒子の製造例2と同様にして、二酸化チタン粒子(以下、「二酸化チタン粒子(J)」ともいう。)を得た。
得られた二酸化チタン粒子(J)について、メジアン径を測定したところ、2.6μmであり、またBET比表面積を測定したところ、2.83m2 /gであった。
更に、二酸化チタン粒子(J)は、粉末X線回折計「RINT1200」(株式会社リガク製)を用いた粉末X線回折の結果から、ルチル型二酸化チタン粒子であることが確認され、また、電子顕微鏡観察の結果から、その形状が球状であることが確認された。
【実施例】
【0137】
〔実施例11〕
実施例1において、骨セメント組成物の成形体の製造例にて、二酸化チタン粒子(A)に代えて、二酸化チタン粒子(J)を用い、その使用量を17.64gとしたこと、およびポリメチルメタクリレート粉末の使用量を23.520gとしたこと以外は当該実施例1と同様にして骨セメント組成物キットを得、その骨セメント組成物キットを用いて骨セメント組成物の硬化体よりなる成形体(以下、「骨セメント成形体(11)」ともいう。)を得た。なお、骨セメント成形体(11)を得るために用いた骨セメント組成物キットの製造には、メチルメタクリレート17.64g(29.5質量%)、過酸化ベンゾイル0.882g((メタ)アクリレート系モノマーに対する割合:5.0質量%)、N,N-ジメチル-p-トルイジン0.2058g((メタ)アクリレート系モノマーに対する割合:1.17質量%)を用いた。
これらの骨セメント成形体(11)に係る骨セメント組成物キットおいて、ポリメチルメタクリレート粉末よりなる(メタ)アクリレート系ポリマーの基材形成用成分全体に対する含有割合は57.1質量%であった。
そして、得られた骨セメント成形体(11)について、実施例1と同様の手法によって曲げ強度の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【実施例】
【0138】
【表2】
JP0005602126B2_000003t.gif
【実施例】
【0139】
表2の結果から、二酸化チタン粒子の含有割合が5~30質量%である場合においては、実用上必要とされる十分な物理的強度が得られていることが確認された。
【実施例】
【0140】
〔実施例12〕
二酸化チタン粒子(J)15質量%、ポリメチルメタクリレート粉末(平均粒子径:33.9μm、平均分子量(Mw):141,000、粒子形状:球状)55質量%(基材形成用成分における割合、すなわちポリメチルメタクリレート粉末とメチルメタクリレートとの総量に対する割合64.7質量%)、メチルメタクリレート30質量%、過酸化ベンゾイル1. 5質量%、およびN,N-ジメチル-p-トルイジン0.35質量%よりなる骨セメント組成物を用いて作製した硬化体を、日本白色種のウサギの雄(体重3. 0~3.5kg;北山ラベス株式会社製)の大腿骨に形成した直径2. 5mmの穴に刺入した。そして、6週間後および12週間後に剖検し、接着強度を測定した。結果を図1に示す。
接着強度の測定は、測定機器として、「骨強度試験システムCTR-Win」(株式会社マルトー製)を用い、クロスヘッドスピード1 mm/minの条件でpush out法により、硬化体と骨(大腿骨)が破断したときの荷重(試験力)に基づいて接着強度を算出した。
【実施例】
【0141】
〔比較例4〕
実施例12において、骨セメント組成物として、市販の骨セメント組成物「Surgical Simplex P」を用いたこと以外は当該実施例12と同様にして硬化体を作製し、接着強度試験を行った。結果を図1に示す。
ここに、骨セメント組成物「Surgical Simplex P」は、硫酸バリウム6.8質量%、ポリメチルメタクリレート10. 2質量%、ポリメチルメタクリレート・スチレン共重合体51.0質量%、メチルメタクリレート31.2質量%、N,N-ジメチル-p-トルイジン0.8質量%を含有するものである。この骨セメント組成物におけるポリメチルメタクリレート粉末およびポリメチルメタクリレート・スチレン重合体よりなる(メタ)アクリレート系ポリマーの基材形成用成分全体に対する含有割合は66.3質量%であり、また、N,N-ジメチル-p-トルイジンよりなる重合促進剤の(メタ)アクリレート系モノマーに対する割合は2.49質量%である。
【実施例】
【0142】
図1の結果から、実施例12に係る硬化体は、6週間後および12週間後のいずれにおいても、比較例4に係る硬化体より優れた接着強度が得られていることから、市販されている骨セメント組成物に比しても優れた生体活性能を有するものであることが確認された。
図面
【図1】
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