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明細書 :プローブ型眼球組織切除装置及びプローブユニット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5578531号 (P5578531)
公開番号 特開2013-048934 (P2013-048934A)
登録日 平成26年7月18日(2014.7.18)
発行日 平成26年8月27日(2014.8.27)
公開日 平成25年3月14日(2013.3.14)
発明の名称または考案の名称 プローブ型眼球組織切除装置及びプローブユニット
国際特許分類 A61F   9/008       (2006.01)
A61F   9/007       (2006.01)
FI A61F 9/00 500
A61F 9/00 540
A61F 9/00 560
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2012-250900 (P2012-250900)
分割の表示 特願2009-502618 (P2009-502618)の分割、【原出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
出願日 平成24年11月15日(2012.11.15)
優先権出願番号 2007055868
優先日 平成19年3月6日(2007.3.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年12月13日(2012.12.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
発明者または考案者 【氏名】板谷 正紀
【氏名】吉村 長久
【氏名】中原 正彰
【氏名】宮田 和典
【氏名】江口 哲也
【氏名】刑部 安弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100091362、【弁理士】、【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
【識別番号】100090136、【弁理士】、【氏名又は名称】油井 透
【識別番号】100105256、【弁理士】、【氏名又は名称】清野 仁
【識別番号】100145872、【弁理士】、【氏名又は名称】福岡 昌浩
【識別番号】100161034、【弁理士】、【氏名又は名称】奥山 知洋
【識別番号】100187632、【弁理士】、【氏名又は名称】橘高 英郎
【識別番号】100156834、【弁理士】、【氏名又は名称】橋村 一誠
審査官 【審査官】川島 徹
参考文献・文献 特開平03-039155(JP,A)
特開平11-137594(JP,A)
特表2002-537017(JP,A)
特開2005-143576(JP,A)
特表2007-500582(JP,A)
米国特許第05843111(US,A)
米国特許第06027493(US,A)
米国特許第06464694(US,B1)
調査した分野 A61F 9/008
A61F 9/007
特許請求の範囲 【請求項1】
側面部と先端部とを有する細管状をなすとともに眼球組織を内部に吸引するための開口孔部を備えたプローブと、
前記プローブ内に設けられて前記プローブの開口孔部からプローブ内に吸引された眼球組織を細断する細断装置と、
を備えたプローブユニットを有し、
前記プローブユニットを通じて眼球組織を吸引除去する吸引力を前記プローブユニットに供給する吸引力供給装置、並びに、前記細断装置の機能を働かせる動力又はエネルギーを前記プローブユニットに供給するための細断駆動源供給装置を、前記プローブユニットに接続し、前記プローブを眼球組織に挿入して前記開口孔部を通じて眼球組織を吸引しながら前記細断装置で細断して吸引除去するプローブ型眼球組織切除装置であって、
前記プローブの側面部と先端部とのうち側面部に対して前記開口孔部を複数設け、
前記細断装置が、前記プローブの側面部に形成された開口孔部の内側空間部に向けてレーザ光を射出する導光体を有し、この導光体から射出されるレーザ光で前記眼球組織を細断するものであり、
前記プローブ型眼球組織切除装置はホルダ部を更に備え、
前記プローブユニットは更に、前記ホルダ部に取り付けられる取付具を備え、
前記取付具に対して前記プローブと前記導光体とが同軸に取り付けられ、
前記プローブ又は前記プローブユニットは着脱自在であることを特徴とするプローブ型眼球組織切除装置。
【請求項2】
前記眼球組織を細断するためのレーザ光としてEr:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Nd:YAGレーザのいずれかを用いることを特徴とする請求項1記載のプローブ型眼球組織切除装置。
【請求項3】
前記導光体が、石英もしくはサファイアファイバーであることを特徴とする請求項2記載のプローブ型眼球組織切除装置。
【請求項4】
前記プローブの複数の開口孔部は、1つの開口孔部を分割するようにして設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプローブ型眼球組織切除装置。
【請求項5】
前記プローブの外径が20G以上(約0.9mm以下)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のプローブ型眼球組織切除装置。
【請求項6】
前記細断駆動源供給装置はレーザ光源を備え、
前記ホルダ部には、前記レーザ光源から出力されるレーザ光を伝送する導光ケーブルが引き込まれ、前記取付具には、前記導光ケーブルから伝送されるレーザ光を受ける光ファイバが前記導光体として取り付けられている一方、
前記取付具に対して吸引口が設けられ、当該吸引口に対して前記吸引力供給装置が接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のプローブ型眼球組織切除装置。
【請求項7】
前記細断駆動源供給装置はレーザ光源を備え、
前記ホルダ部には、前記レーザ光源から出力されるレーザ光を伝送する導光ケーブルが引き込まれ、前記取付具には、前記導光ケーブルから伝送されるレーザ光を受ける光ファイバが前記導光体として取り付けられている一方、
前記取付具に対して吸引口が設けられ、当該吸引口に対して前記吸引力供給装置が接続されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のプローブ型眼球組織切除装置。
【請求項8】
側面部と先端部とを有する細管状をなすとともに眼球組織を内部に吸引するための開口孔部を備えたプローブと、
前記プローブ内に設けられて前記プローブの開口孔部からプローブ内に吸引された眼球組織を細断する細断装置と、
を備えたプローブユニットであり、
前記プローブユニットを通じて眼球組織を吸引除去する吸引力を前記プローブユニットに供給する吸引力供給装置、並びに、前記細断装置の機能を働かせる動力又はエネルギーを前記プローブユニットに供給するための細断駆動源供給装置を、前記プローブユニットに接続し、前記プローブを眼球組織に挿入して前記開口孔部を通じて眼球組織を吸引しながら前記細断装置で細断して吸引除去するプローブ型眼球組織切除装置に用いられるプローブユニットであって、
前記プローブの側面部と先端部とのうち側面部に対して前記開口孔部を複数設け、
前記細断装置が、前記プローブの側面部に形成された開口孔部の内側空間部に向けてレーザ光を射出する導光体を有し、この導光体から射出されるレーザ光で前記眼球組織を細断するものであり、
前記プローブ型眼球組織切除装置はホルダ部を更に備え、
前記プローブユニットは更に、前記ホルダ部に取り付けられる取付具を備え、
前記取付具に対して前記プローブと前記導光体とが同軸に取り付けられ、
前記プローブ又は前記プローブユニットは着脱自在であることを特徴とするプローブユニット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、眼球組織等のゲル状生体組織を細断しながら吸引除去するプローブ型生体組織切除装置及びプローブユニットに関し、たとえば、眼科分野における硝子体手術等に用いて有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の眼科分野の手術、たとえば白内障手術においては、手術後の術後乱視低減、早期の創傷治癒、眼内炎の減少、手術侵襲の軽減のため、極小切開の手術手技が開発されている。また、網膜硝子体手術においても、黄斑円孔に対する硝子体手術、内境界膜剥離術、黄斑下手術、黄斑移動術、視神経乳頭切開術などの新しい手術手技が開発されている。同様に術後乱視低減、早期の創傷治癒、眼内炎の減少、手術侵襲の軽減のために小切開による手術手技が提唱されている。
【0003】
このような手術手技を可能にするために、眼球等の生体組織に挿入して硝子体等のゲル状組織を細断しながら吸引除去するプローブ型の生体組織切除装置が提供されている。このプローブ型生体組織切除装置は、眼球組織等のゲル状生体組織中に挿入される細管状プローブを備え、このプローブの側面に設けた開口孔部から生体組織を吸引しながら細断して吸引除去することにより、硝子体等の生体組織を切除する。
【0004】
硝子体等のゲル状生体組織は生体分子が繊維状に連鎖している。このため、その生体組織を切除するためには、組織を開口孔部からプローブ内に部分的に引き込む吸引と同時に、その引き込んだ組織部分を切り取る細断をプローブ内で行う必要がある。この細断の方式としては、機械駆動式のカッター刃を用いる方式(たとえば特許文献1)と、レーザ光を用いる方式(たとえば特許文献2)とがある。また、切除効率を高めるために両者を併用した方式もある(たとえば特許文献3)。
【0005】
なお、上記細管状プローブあるいはこのプローブを保持するハンドホルダ部を含めた部分は名称定義が定まっておらず、コンタクトチップあるいはハンドピースなどとも呼ばれている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-177317号公報
【特許文献2】特開平11-318968号公報
【特許文献3】特開平11-137594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の技術には次のような問題があった。まず、プローブの内に部分的に引き込んだ生体組織の細断方式として機械駆動式のカッター刃を用いるものは、プローブ内に可動機構を組み込むために、プローブの細径化が困難であり、さらに、構造の複雑化による高コスト化およびメンテナンス負担の増大、カッター刃の劣化による切れ味の低下といった問題があった。
【0008】
一方、細断方式としてレーザ光を用いるものは、切除効率が必ずしも高くないという問題があった。そこで、たとえば特許文献2に記載のものでは、レーザ光の射出面を扁平状にするとともに、その扁平射出面を開口孔部上部のプローブ内壁面に沿わせるといったことが行われている。しかし、この構造はプローブの細径化を妨げる。
【0009】
切除効率については、カッター刃を用いる方式でも十分とは言えず、その向上が望まれている。そこで、特許文献3のように、両方式を併用する方式も提案されているが、この場合は、プローブ内に両方式の構成を組み込むことになるため、プローブの細径化がさらに困難化するなど、カッター刃を用いる機械駆動式の問題が拡大されてしまう。
【0010】
プローブの細径化は、たとえば前述した極小切開の手術手技ではきわめて重要な課題であるが、上述した従来のプローブ型生体組織切除装置はいずれも、そのプローブの細径化が困難であるという問題を有していた。
【0011】
ところで、プローブの細径化ができれば生体への侵襲性は低下する。反面、プローブの細径化によりプローブの剛性も低下する。使用部位によってはその剛性が低いことによる取り扱いの悪さによる手術効率、効果の低下もある。また、細径化による切除効率自体の低下も生ずる。これに対しては、プローブの吸引孔とカッター刃による開閉による機械式カッターでは開閉のサイクルであるカットレートを抑えることにより吸引される生体組織を多くし、切除効率を向上させる方法がある。しかしながら、例えば、眼科手術の網膜硝子体手術の場合には、吸引される硝子体を多くすると、その吸引力によって網膜を牽引してしまう虞が高くなり、網膜等にダメージを与える虞がでてきて安全性に問題が生ずる。そこで、カットレートを上げるなどして吸引力を抑え切除すべき生体組織以外への影響を抑えるなどの方法が取られるが、カットレートを上げるための機械的な構造を組み込みコントロールすることにも困難性があった。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、プローブ型生体組織切除装置においてプローブの細径化と切除効率の向上を両立して達成し、さらに構造の単純化による低コスト性とメンテナンス性の向上も可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明が提供する解決手段は以下のとおりである。
(1)細管状をなすとともに生体組織を内部に吸引するための開口孔部を備えたプローブと、前記プローブ内に設けられて前記プローブの開口孔部からプローブ内に吸引された生体組織を細断する細断装置とを備えたプローブユニットを有し、前記プローブユニットを通じて生体組織を吸引除去する吸引力を前記プローブユニットに供給する吸引力供給装置、並びに、前記細断装置の機能を働かせる動力又はエネルギーを前記プローブユニットに供給するための細断駆動源供給装置を、前記プローブユニットに接続し、前記プローブを生体組織に挿入して前記開口孔部を通じて生体組織を吸引しながら前記細断手段で細断して吸引除去するプローブ型生体組織切除装置であって、前記プローブの開口孔部を複数設けたことを特徴とするプローブ型生体組織切除装置。
【0014】
(2)前記プローブの開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさ又は孔の位置の少なくともいずれか一つが可変に構成されていることを特徴とする(1)記載のプローブ型生体組織切除装置。
(3)前記細管状プローブの内周面にその外周面が接するようにして前記プローブ内に移動調節可能に嵌められた開口孔調節管を有し、この開口孔調節管を移動調節することによって、この開口孔調節管による前記プローブの開口孔部の塞ぎ度合いを調節して前記プローブの開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさの少なくともいずれか一つを変えることを特徴とする(2)記載のプローブ型生体組織切除装置。
(4)前記開口孔調節管に調節用開口孔が設けられており、前記開口調節管を移動調節し、前記調節用開口孔と前記プローブの開口孔部との重なり具合を調節することで、前記プローブの開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさ又は孔の位置の少なくともいずれか一つを変えることを特徴とする(2)記載のプローブ型生体組織切除装置。
【0015】
(5)前記細断手段が、前記細管状プローブの内周面にその外周面が接するようにして前記プローブ内を長手方向に往復移動可能に設けられた細断刃であって、この細断刃を往復移動させて前記生体組織を細断する細断刃によって細断するものであることを特徴とする(1)記載のプローブ型生体組織切除装置。
(6)前記細断手段が、前記プローブの開口孔部の内側空間部に向けてレーザ光を射出する導光体を有し、この導光体から射出されるレーザ光で前記生体組織を細断するものであることを特徴とする(1)記載のプローブ型生体組織切除装置。
【0016】
(7)前記導光体が、前記プローブ内に設けられた光ファイバであり、この光ファイバとプローブの内壁間に、細断された生体組織の吸入・排出路が形成されていることを特徴とする(6)記載のプローブ型生体組織切除装置。
(8)前記プローブ外径が20G以上(約0.9mm以下)であることを特徴とする(1)記載のプローブ型生体組織切除装置。
【0017】
(9)前記生体組織を細断するためのレーザ光としてEr:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Nd:YAGレーザのいずれかを用いることを特徴とする(6)記載のプローブ型生体組織切除装置。
【0018】
(10)前記導光体が、石英もしくはサファイアファイバーであることを特徴とする(6)記載のプローブ型生体組織切除装置。
【0019】
(11)細管状をなすとともに生体組織を内部に吸引するための開口孔部を備えたプローブと、前記プローブ内に設けられて前記プローブの開口孔部からプローブ内に吸引された生体組織を細断する細断装置とを備えたプローブユニットであり、前記プローブユニットを通じて生体組織を吸引除去する吸引力を前記プローブユニットに供給する吸引力供給装置、並びに、前記細断装置の機能を働かせる動力又はエネルギーを前記プローブユニットに供給するための細断駆動源供給装置を、前記プローブユニットに接続し、前記プローブを生体組織に挿入して前記開口孔部を通じて生体組織を吸引しながら前記細断手段で細断して吸引除去するプローブ型生体組織切除装置に用いられるプローブユニットであって、前記プローブの開口孔部を複数設けたことを特徴とするプローブユニット。
【発明の効果】
【0020】
プローブ型生体組織切除装置においてプローブの細径化と切除効率の向上を両立して達成でき、さらに構造の単純化による低コスト性とメンテナンス性の向上も達成できる。
上記以外の作用/効果については、本明細書の記述および添付図面にてあきらかにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の技術が適用されたプローブ型生体組織切除装置の一実施形態を示す一部拡大側面概略図である。
【図2】本発明の要部をなすプローブの各種実施形態を示す図である。
【図3】プローブの開口孔部の設置数と切除特性の関係を示すグラフである。
【図4】機械式カッターを用いたプローブユニットの部分断面図であり図4(a)は切断刃21が細断前の位置にある状態を示す図であり図4(b)は切断刃21が細断後の位置にある状態を示す図である。
【図5】細管状プローブの開口孔部の塞ぎ度合いを調節して開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさの少なくともいずれか一つを変えることを可能にしたプローブユニットの一例を示す断面図である。
【図6】細管状プローブの開口孔部の塞ぎ度合いを調節して開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさ、孔の位置の少なくともいずれか一つを変えることを可能にしたプローブユニットの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に係るプローブ型生体組織切除装置の一実施形態を示す。同図に示すプローブ型生体組織切除装置は、プローブユニット部10、ホルダ部30、レーザ光源40、吸引装置50などによって構成されている。前記吸引装置50は、前記プローブユニット10を通じて生体組織を吸引除去する吸引力をプローブユニットに供給する吸引力供給装置に相当し、前記レーザ光源40は、前記プローブユニットに備えられた後述するレーザ光を用いた細断装置の機能を働かせるエネルギーを前記プローブユニットに供給するための細断駆動源供給装置に相当する。なお、この種の装置は、コンタクトチップあるいはハンドピースなどとも呼ばれているが、本発明に係る装置もそれらと同一目的で使用可能である。

【0023】
プローブユニット部10は、プローブ12と、その内部に配置された光ファイバ20とによって構成され、取付具16に取り付けられている。プローブ12はSUS等の耐蝕性金属の細管を用いて形成されている。このプローブ12は、その基端部が取付具16に取り付けられる一方、その先端部に近い側面部に複数の開口孔部14が設けられている。

【0024】
プローブ12内には光ファイバ20が同軸状に挿入されている。この光ファイバ20はレーザ光を導光して出射する導光体をなすものであって、そのレーザ光出射面をなす先端面は上記開口孔部14の内側空間部を向いている。つまり、プローブ12の先端方向にレーザ光を出射する。

【0025】
このプローブユニット部10は、吸引口18が設けられているとともに、連結具32を介してホルダ部(ハンドピースとも呼ばれる)30に着脱可能に連結されるようになっている。これにより、プローブユニット部10は着脱可能な交換部品であるプローブユニットとして使用でき、プローブ12の新品交換や用途に応じたプローブ12の使い分けが簡便に行えるようになる。この場合、プローブユニットは、プローブ12を切除装置に脱着可能に装着させるための最小限の部材(治具あるいはボス部材等)だけを備えるようにすれば、交換部分の最小化および経済化をはかることができる。

【0026】
吸引口18は、可撓性吸引チューブ52を介して吸引装置50に連通接続されている。また、ホルダ部30には、レーザ光源40から出力されるパルス状レーザ光を伝送する可撓性導光ケーブル42が引き込まれている。

【0027】
プローブユニット部10とホルダ部30の間には、両者を連結具32を介して連結した状態にて導光ケーブル42の出射光をプローブ12内の光ファイバ20に入光させる光カップラ(図示省略)が形成されるようになっている。

【0028】
導光体である光ファイバ20はプローブ12内に同軸状に挿通されているが、この光ファイバ20とプローブ12の間には、細断された生体組織の吸入・排出路が形成されている。プローブ12は外径が20G以上(約0.9mm以下)の細径に形成され、その先端部に近い側面には複数の独立した開口孔部14が互いに隣接して設けられている。

【0029】
生体への低侵襲性という観点からはプローブ12は25G(約0.5mm)の細径のものが好ましい。しかし、細径化による剛性の低下による取り扱いの効率、吸引効果の低下もあり、効率また剛性を優先させるならば20G(約0.9mm)が好ましい。さらに、症例によっては、低侵襲性と効率・効果とのバランスを考慮してその中間の23G(約0.6mm)が適宜選択される。

【0030】
レーザ光源40は、特に限定はされないが、水に吸収されやすい波長のレーザ光を発振するものがとくに望ましく、具体的には、Er:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Nd:YAGレーザが適している。特に、Er:YAGレーザは、水に対する吸収係数が特異的に高い波長2.94μm付近のレーザ光を発振するので、水分を多く含む生体組織には、周辺組織への熱影響がすくないことからも好適であり、また、とくに透明部分の多い眼球組織は熱による組織の不透明化もあり、本発明への利用にはもっとも適している。

【0031】
光ファイバ20としては、一般的にレーザの伝達効率の良いものが選択され、石英もしくはサファイアファイバーが好ましく、Er:YAGレーザを用いる場合には、伝達効率の良いサファイアファイバーが特に好ましい。

【0032】
上記のように構成されたプローブ型生体組織切除装置においては、プローブ12を眼球組織等のゲル状生体組織中に挿入した状態で、吸引装置50によるプローブ12内の吸引を行いながら、開口孔部14内側空間部に向けてレーザ光をパルス状に出射する。

【0033】
これにより、生体組織の一部が開口孔部14からプローブ12内に引き込まれる。この部分的に引き込まれた組織がレーザ光パルスによって細断される。細断された組織片はプローブ12内から可撓性吸引チューブ52介して吸引装置50に吸引除去される。なお、レーザ光を生体組織に照射した場合、その生体組織が硝子体繊維のような柔らかいものである場合には、その生体組織の繊維層の分子間結合が切り離され、液化したような状態になって吸引除去されることになる。

【0034】
このようにして生体組織を切除して行くことができるのであるが、この切除のメカニズムは、従来の装置でも基本的には同じである。しかし、ここで注目すべきことは、生体組織をプローブ12内に部分的に引き込む開口孔部14が、従来は一つであったのに対し、本発明では複数に分割されて設けられていることである。

【0035】
従来は、ゲル状生体組織を効率良く切除するためには、その生体組織をプローブ内に効率良く引き込んで細断することが必要であり、そのためにはプローブに設ける開口孔部の開口径をできる大きくすることが効果的であると考えられていた。

【0036】
しかし、本発明者らが実際に知得したところによると、その開口孔部の開口径を大きくしても切除効率は必ずしも向上しないことが判明した。さらに、従来の考えには反するが、本発明者らは、開口孔部14の開口径を小さくしてでも、その小さな開口孔部14を複数設けることの方が、切除効率の向上に大きく寄与するということを知得するに到った。

【0037】
これは、従来の技術ではまったく予想しえない意外な知得であったが、この新規な知得に基づいて構成された上記実施形態のプローブ型生体組織切除装置は、機械駆動式のカッター刃を用いない単純な構造により、プローブ12の細径化および低コスト化が可能になっている。これとともに、切除効率を大幅に向上させることを可能にした。

【0038】
開口孔部14を複数に分割して設けることによって切除効率が向上する理由については、必ずしも定かではないが、たとえば次のようなことが考えられる。すなわち、生体組織は複数の開口孔部14にそれぞれ小さく分割された状態でプローブ12内に引き込まれる。このため、レーザ光による細断はその分割された組織部分に対して個々に行われるようになる。このとき、レーザ光による細断は一つの大きな組織部分に対して一括的に行うよりも、小さく分割された複数の組織部分に対して個別に行う方が、効率良く行われると考えられる。さらに後者の場合は、細断された組織片のサイズが小さくなることにより、その吸引除去が円滑になると考えられる。これらが相俟って切除効率の大幅な向上が達成されるものと考えられる。

【0039】
いずれにせよ、プローブ12に設ける吸引用の開口孔部14を複数に分割して設けることで、構造の複雑化をともなうことなく、プローブ12の細径化に非常に適した構成でもって、切除効率を大幅に向上させることができた。

【0040】
図2は上記開口孔部14の構成例を示す。本発明に係る装置では、同図の(a)~(d)に示すように、開口孔部14が少なくとも2つ以上に分割されて設けられている。この場合、同図の(e)に示すように、開口孔部14が一つだけの場合は開口径を大きくできるが、切除効率はその開口径よりも開口孔部14の分割数に大きく依存することが判明した。

【0041】
図3は、プローブ12の開口孔部14の設置数と切除特性の関係をグラフ化して示す。同図においてグラフ線A~Eはそれぞれ、図2の(a)~(e)に示したプローブ12で豚の眼球組織(硝子体)の切除を行った場合の切除時間(横軸)と切除量(縦軸)の関係を示す。硝子体切除効率の評価における豚眼球硝子体切除重量は、切除前の豚眼球全体の重量から切除後の重量を測定し、減少量を硝子体切除重量とし、経時的に比較した。各プローブはいずれも、外径0.9mm(内径0.58mm)の細管を使用し、細断用のレーザ光源にはEr:YAGレーザ用いた。レーザ光はレーザ出力80mJ、50msec周期のパルスで外径0.44mmの光ファイバを通じて射出した。

【0042】
グラフ線A~Eはそれぞれ、図2(a)~(e)に示したプローブ12の切除特性を示すが、このグラフ線A~Eの比較からあきらかなように、複数の開口孔部14が設けられた図2(a)~(d)のプローブ12はいずれも、単一の開口孔部14が設けられた図2(e)のプローブ12に対して、切除効率が大幅に向上させられている。特に、6つの開口孔部14が設けられた図2(a)のプローブ12は、その6つの開口孔部14の総開口面積が、図2(e)の単一開口孔部14の開口面積とほぼ同じであるが、切除効率では非常に大きな差異が現れた。

【0043】
次に、(1)光ファイバ20の素材による切除効率の違い、(2)細断方式の違いによる切除効率の違い、(3)開口孔部が1個(従来)の場合と6個(本願)の場合との違いによる切除効率の違いの目安を付けるために、以下の組み合わせの試験を行った。すなわち、まず、導光体として、石英ファイバーを用いた場合と、サファイアファイバーを用いた場合とに分けて試験した。このときのレーザー光は、波長2.94μmのEr-YAGレーザーを用いた。また、この場合、プローブユニット10としても二通りの種類のものに分けて試験した。すなわち、上記実施の形態で示したレーザ光で硝子体を細断・液化するいわゆるレーザ硝子体カッターを用いた場合と、機械的に組織を細断するいわゆる機械式カッターを用いた場合との二通り場合である。さらに、開口孔部の数が1個である従来の場合と、6個の場合の本願の場合とに分けて試験した。この場合、開口孔部が1個である従来の場合でかつ細断方式が機械式の場合の試験には、アルコン社製アキュラス23Gシステム(アルコン社の商品名)と同等のものを用いた。プローブの径はいずれの場合も23Gとした。硝子体切除効率の評価における豚眼球硝子体切除重量は、切除前の豚眼球全体の重量から切除後の重量を測定し、減少量を硝子体切除重量とし、1秒間あたりの値に換算することにより比較を行った。図4は機械式カッターを用いたプローブユニットの部分断面図であり図4(a)は切断刃21が細断前の位置にある状態を示す図であり図4(b)は切断刃21が細断後の位置にある状態を示す図である。図4に示されるように、機械式カッターを用いたプローブユニットは、細管状プローブ12の内周面にその外周面が接するようにして前記プローブ12内に嵌合された細断刃21を長手方向に往復移動させることによって、前記プローブ12の複数の開口孔部14から吸引された生体組織を細断するものである。

【0044】
その結果を以下の表に示す。
【表1】
JP0005578531B2_000002t.gif
【表2】
JP0005578531B2_000003t.gif

【0045】
導光体としてサファイアファイバーを用いた試験例1(表1)は、石英ファイバーを用いた試験例2(表1)より同条件下において硝子体切除重量は多く、効率は改善されていることが判明した。また、試験例6(表2)の吸引力は同等(500ml/min)で,カットレートを抑えた(1000c.p.m)機械式カッターの硝子体切除重量は同等かそれ以上であり、機械式カッターと同等かそれ以上の効率を実現できる可能性が示唆された。更に、同様の吸引力で通常孔を多孔式である6孔の試験例4(表1)でも試験例6とほぼ同様の効率を得ることができる可能性が示唆された。また、安全性を確保する為に切除する生体組織以外へのダメージを低下させるためにカットレート上げた機械式カッターの試験例7と吸引力を抑えた試験例3とを比較すると、吸引力を下げた場合でも硝子体切除重量は多く、効率の面で有効であり、また多孔式である6孔の試験例5では特にその効果は顕著であることが窺われる。

【0046】
以上のように、本発明に係るプローブ型生体組織切除装置では、プローブ12に複数の開口孔部14を設け、この複数の開口孔部14の内側空間部にレーザ光を射出するようにしたことにより、プローブの細径化と切除効率の向上を両立して達成することが可能になっている。また、構造の単純化による低コスト性とメンテナンス性の向上も可能になっている。

【0047】
この場合、上記開口孔部14はプローブ12の側面に設けることが、レーザ光による細断効果を高める上で好ましい。また、プローブ12の側面であれば複数個の開口孔部14を容易に設けることができ、より細断効果を高める上で好ましい。また、組織を細かく吸引して少しずつレーザーで切除したほうが,切除効率が上昇することにより、吸引孔の開孔面積(大きさ)が一定の場合、孔数により吸引効率が改良されることを見出した。また、その孔形状、孔数を変化させることにより切除効率を制御し、周辺組織への侵襲を考慮すべきか吸引する部位、組織により選択可能であることが判った。

【0048】
また、プローブ12内の導光体として光ファイバ20を用いるとともに、この光ファイバ20をプローブ12内に同軸状に挿通し、その光ファイバ20とプローブ12の間に、細断された生体組織の吸入・排出路を形成させる構成とすることにより、限られた内径を効率的に使用することができるので、プローブ12をさらに細径化することができ、たとえば0.9mm以下の細径も比較的に容易に実現できる。プローブ外径を0.9mm以下に細径化した場合は、小切開による手術手技を可能にし、術後乱視低減、早期の創傷治癒、眼内炎の減少、手術侵襲の軽減を図ることができる。したがって、この場合のプローブ外径は20G(約0.9mm)以下の細径が好ましく、25G(約0.5mm)が手術侵襲の軽減等の効果は期待できるが、細径化による剛性の低下による取り扱いの効率、吸引効果の低下もあり、吸引効果、効率また剛性を優先させるならば20G(約0.9mm)、または低侵襲性及効率、効果の面からその中間の23G(約0.6mm)がその症例によって適宜選択される。

【0049】
生体組織を細断するためのレーザ光としては、上述したように、Er:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Nd:YAGレーザが適しているが、その中でもとくに、Er:YAGレーザは、水に対する吸収係数が特異的に高い波長2.94μm付近のレーザ光を発振することから、水分を多く含む生体組織には、周辺組織への熱影響が少ないことからも好適であり、特に透明部分の多い眼球組織は熱による組織の不透明化もあり、本発明への利用にはもっとも適している。レーザ光を導光して出射する導光体をなす光ファイバは、一般的にレーザの伝達効率の良いものが選択されるが、このEr:YAGレーザ光を使用する場合は、その発振波長2.94μmに対する伝送損失が小さく、機械強度も比較的高い合成石英(低損失にするため水酸基の含有を低くしたもの)、あるいはサファイアからなる導光体が好ましく、またEr:YAGレーザの伝達効率の良いものとしてサファイアファイバーが特効率の面において好ましく、その高効率により切除効率を上げ、反面、吸引力を抑えることができるので切除する生体組織以外へのダメージを低下させることができ、安全性の観点からも好ましい。

【0050】
また、上述の実施の形態では、プローブ12の開口孔部14の数、孔の形状、孔の大きさ又は孔の位置とは固定である例を掲げたが、これらの少なくともいずれか一つを変えられるようにしてもよい。図5は細管状プローブの開口孔部の塞ぎ度合いを調節して開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさの少なくともいずれか一つを変えることを可能にしたプローブユニットの一例を示す断面図である。図5に示されるように、このプローブユニット10は、細管状プローブ12の内周面にその外周面が接するようにして前記プローブ内に移動調節可能に嵌められた開口孔調節管13を有し、この開口孔調節管13を移動調節することによって、この開口孔調節管13による開口孔部14の塞ぎ度合いを調節する。例えば、図5に矢印で示したように、プローブ12の長手方向に開口孔調節管13の位置を移動調節したり、あるいは、プローブ12の中心軸を回転軸とした回転移動させたり、あるいは、これらの移動を組み合わせた移動調節をすることにより、前記プローブ12の開口孔部14の数、孔の形状、孔の大きさ等を実質的に変えることができる。

【0051】
図6は細管状プローブの開口孔部の塞ぎ度合いを調節して開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさ、孔の位置の少なくともいずれか一つを変えることを可能にしたプローブユニットの他の例を示す断面図である。図6に示されるように、このプローブユニット10は、図5に示される開口孔調節管13に、さらに調節用開口孔13aが設けられたものでおり、前記開口調節管13を上下・回転移動調節し、前記調節用開口孔13aと前記プローブの開口孔部14との重なり具合を調節することで、前記プローブの開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさ又は孔の位置の少なくともいずれか一つを変えられるようにしたものである。なお、図示しないが、この場合、プローブ12に、複数の開口孔部14を設ける代わりに、大きな開口孔部を設け、前記開口孔調節管13の調節用開口孔13aがこの大きな開口孔部内に収まるようにしておき、そのうえで、開口孔調節管13を移動調節すれば調節用開口孔13aの位置を移動させることができる。なお、以上は、プローブを2重管構造にしてプローブの開口孔部の数、孔の形状、孔の大きさ又は孔の位置等を変えられるようにしたものであるが、さらに、3重管構造にしたり、あるいは、写真機の絞り機構の原理を利用した機構等を用いてもよいことは勿論である。

【0052】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。たとえば、開口孔部14は用途等に応じて適宜変更可能であり、たとえば、プローブ12の先端面に設けてもよい。また、本発明は眼球組織以外のゲル状生体組織あるいは生体高分子の切除にも適用可能であり、また、機械式のものが物理的に切断するのに対し、レーザにより液化し、吸引切断することによりゲルより硬い凝固した生体高分子の切除にも利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
プローブ型生体組織切除装置においてプローブの細径化と切除効率の向上を両立して達成することが可能であり、さらに構造の単純化による低コスト性とメンテナンス性の向上も可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 プローブユニット部、
12 プローブ、
13 開口孔調節管
13a 調節用開口孔
14 開口孔部、
16 取付具、
18 吸引口、
20 光ファイバ(導光体)、
21 切断刃
30 ホルダ部、
32 連結具、
40 レーザ光源、
42 可撓性導光ケーブル、
50 吸引装置、
52 可撓性吸引チューブ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5