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明細書 :ユーザ行動最適化装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6085885号 (P6085885)
公開番号 特開2015-122579 (P2015-122579A)
登録日 平成29年2月10日(2017.2.10)
発行日 平成29年3月1日(2017.3.1)
公開日 平成27年7月2日(2015.7.2)
発明の名称または考案の名称 ユーザ行動最適化装置及び方法
国際特許分類 H04N  21/258       (2011.01)
H04N  21/2662      (2011.01)
FI H04N 21/258
H04N 21/2662
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2013-264409 (P2013-264409)
出願日 平成25年12月20日(2013.12.20)
審査請求日 平成28年1月21日(2016.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】本多 泰理
【氏名】高橋 玲
【氏名】新熊 亮一
【氏名】高橋 達郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100107766、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠重
【識別番号】100070150、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠彦
【識別番号】100124844、【弁理士】、【氏名又は名称】石原 隆治
審査官 【審査官】古川 哲也
参考文献・文献 特開2011-019068(JP,A)
特表2007-522770(JP,A)
国際公開第2012/167416(WO,A1)
国際公開第2013/044997(WO,A1)
寒川知生 他,モバイルサービスにおける位置制御のためのユーザ効用とユーザコストの定量的モデルとその応用例,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2006年11月 9日,Vol.106, No.359,p.1-6,ISSN 0913-5685
村瀬勉 他,パレート最適ネットワーク制御技術の実現にむけて,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2011年 9月 1日,Vol.111, No.203,p.33-38,ISSN 0913-5685
本多泰理 他,プログレッシブダウンロード型映像配信サービスの品質推定技術,NTT技術ジャーナル,日本,一般社団法人電気通信協会,2013年 2月 1日,Vol.25, No.2,p.20-23,ISSN 0915-2318
調査した分野 H04N 21/00 - 21/858
G06F 13/00
H04N 12/70 - 12/955
特許請求の範囲 【請求項1】
プログレッシブダウンロード型映像サービスにおけるユーザの行動を制御するユーザ行動最適化装置であって、
最大平均効用の値と制御則を格納する最大平均効用蓄積手段と、
与えられた、前記プログレッシブダウンロード型映像サービスを享受するユーザの端末の情報、該ユーザの物理的位置、属性及び該サービスの利用状況を含む、該プログレッシブダウンロード型映像サービスの提供する条件である前提条件と、該ユーザの標準的利用パターンを含み、映像視聴時のユーザの状態を示す「状態」情報と、サービスの利用品質に相関が高いネットワーク状態指標であるKPI(Key Performance Indication)、サービスの利用品質であるKQI(Key Quality Indicator)から決定される満足度を表す効用関数からユーザのモデルを生成するモデル構成手段と、
前記モデル構成手段で生成された前記ユーザのモデル、前記KQI及び前記効用関数を用いて、各制御則を実施した場合の各ユーザの満足度を求め、該満足度の平均値を平均効用の値とする平均効用算出手段と、
前記平均効用算出手段で求められた前記平均効用の値を前記最大平均効用蓄積手段に格納し、状態毎ユーザ数及び最適制御則の算出に用いる算出用制御則が与えられると、該算出用制御則を前記平均効用算出手段に渡し、該平均効用算出手段を用いて、該算出用制御則における平均効用の値を算出し、該最大平均効用蓄積手段に格納されているそれまでの平均効用の値と比較し、大きい方の平均効用の値と制御則を該最大平均効用蓄積手段に保持し、最終的に該最大平均効用蓄積手段に保持された制御則を最適制御則として出力する制御則算出手段と、
を有することを特徴とするユーザ行動最適化装置。
【請求項2】
前記モデル構成手段は、
前記プログレッシブダウンロード型映像サービスの前提条件と、サービスプロバイダや通信事業者がサービス品質向上を目的とする制御則に依存して決定付けられた、ユーザ、ネットワークまたはハードウェアに関する「状態」情報を用いる
請求項1記載のユーザ行動最適化装置。
【請求項3】
前記モデル構成手段は、
ネットワークに関する「状態」情報に依存して決定付けられたネットワーク状態を表現するKPIを用いる
請求項1記載のユーザ行動最適化装置。
【請求項4】
前記モデル構成手段は、
前記KPIに依存して決定付けられた前記KQIを用いる
請求項1記載のユーザ行動最適化装置。
【請求項5】
前記モデル構成手段は、
ユーザに関する「状態」情報及び前記KQIにより決定付けられたユーザの利用品質を表す効用関数を用い、
前記制御則算出手段は、
前記効用関数を通信事業者またはサービスプロバイダにフィードバックすることにより調整された制御則を用いる
請求項1記載のユーザ行動最適化装置。
【請求項6】
前記モデル構成手段は、
映像サービス利用品質に対するユーザ満足度をスカラー値で表現する効用関数、ユーザが前記プログレッシブダウンロード型映像サービスを利用する状況を表す、視聴状態および標準利用パターン状態情報を含む「状態」情報からユーザの標準的な映像視聴行動モデルを、該「状態」情報毎に生成する
請求項1記載のユーザ行動最適化装置。
【請求項7】
前記モデル構成手段は、
映像の再生停止時間、再生停止の発生頻度による前記KQIと、前記プログレッシブダウンロード型映像サービスの利用品質に対するユーザの満足度をスカラー値で表現する効用関数を用いる
請求項1記載のユーザ行動最適化装置。
【請求項8】
プログレッシブダウンロード型映像サービスにおけるユーザの行動を制御するユーザ行動最適化方法であって、
最大平均効用の値と制御則を格納する最大平均効用蓄積手段を有する装置において、
与えられた、前記プログレッシブダウンロード型映像サービスを享受するユーザの端末の情報、該ユーザの物理的位置、属性及び該サービスの利用状況を含む、該プログレッシブダウンロード型映像サービスの提供する条件である前提条件と、該ユーザの標準的利用パターンを含み、映像視聴時のユーザの状態を示す「状態」情報と、サービスの利用品質に相関が高いネットワーク状態指標であるKPI(Key Performance Indication)、サービスの利用品質であるKQI(Key Quality Indicator)から決定される満足度を表す効用関数からユーザのモデルを生成するモデル構成ステップと、
前記モデル構成ステップで生成された前記ユーザのモデル、前記KQI及び前記効用関数を用いて、各制御則を実施した場合の各ユーザの満足度を求め、該満足度の平均値を平均効用の値とする平均効用算出ステップと、
前記平均効用算出ステップで求められた前記平均効用の値を前記最大平均効用蓄積手段に格納し、状態毎ユーザ数及び最適制御則の算出に用いる算出用制御則が与えられると、該算出用制御則を用いて、該平均効用算出ステップを実行し、該算出用制御則における平均効用の値を算出し、該最大平均効用蓄積手段に格納されているそれまでの平均効用の値と比較し、大きい方の平均効用の値と制御則を該最大平均効用蓄積手段に保持し、最終的に該最大平均効用蓄積手段に保持された制御則を最適制御則として出力する制御則算出ステップと、
を行うことを特徴とするユーザ行動最適化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ行動最適化装置及び方法に係り、特に、映像データをダウンロードしながら再生するプログレッシブダウンロード型映像配信サービスを対象として、サービスを享受するユーザの状態と映像サービス利用品質に対するユーザの満足度の効果を考慮して、ユーザ側の利用行動を最適化するためのユーザ行動最適化装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル端末の普及に相俟って、大容量コンテンツのダウンロードと並行して映像再生を行う、プログレッシブダウンロード型映像サービスが普及している。当該サービスは、再生開始までに一定量のバッファリング(初期バッファ量)を要することを特徴とし、ネットワーク条件の劣化に起因する再生品質劣化の軽減が可能である一方、ネットワーク条件の劣化等により再生バッファ内の蓄積データ量が低下した場合、再生が停止する場合がある。
【0003】
YouTube(登録商標)に代表されるプログレッシブダウンロード型映像配信サービスは、いまやPC、モバイル端末のいずれにおいてもネットワークアプリケーションの代表的存在であり、インターネットトラヒック量の観点でも多大なボリュームを占めている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
従って、コンテンツプロバイダ、ネットワーク事業者双方にとり、プログレッシブダウンロード型映像配信サービスのユーザ体感品質の適切な把握と利用品質の向上が望まれている。
【0005】
そのための技術として、網内もしくはサービス提供事業者のヘッドエンドで取得したキャプチャデータに基づき、プログレッシブダウンロード型映像サービスの品質推定を実現する技術がこれまでに提案されている(例えば、非特許文献2,3,4参照)。これらの技術は、パケットキャプチャデータから端末の受信バイト量時系列を把握し、プレイアウトバッファモデルへ入力することで再生停止状態の推定を実現するものである。これらの技術を利用することにより、所与のパケットキャプチャデータから、個々のセッションの映像再生状態を推定可能である。
【0006】
また、KQI(Key Quality Indicator)に基づきユーザ満足度、すなわちQoE(Quality of Experience)を求める手段について種々提案されている(例えば、非特許文献5,6,7参照)。非特許文献5,6,7の技術は、プログレッシブダウンロード型映像サービスにおいて、KQIに基づき、ユーザ体感品質、すなわち、QoE(Quality of Experience)の表現を求めるものである。具体的には、映像の再生停止回数、単一の停止イベントあたりの平均停止時間、その発生間隔などを引数として、QoEを算出する数式を提供している。QoEは、主観評価実験で全ユーザが回答する1~5までの自然数値を平均した値、すなわちMOS(Mean Opinion Score)が用いられている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】A.Rao, Y.Lim, Network Characteristics of Video Streaming Traffic, Proc. CoNEXT2011(2011).
【非特許文献2】池上大介,本多泰理,山本浩司他:「プログレッシブダウンロード系サービスの停止時間推定法」信学技報, vol. 111, no. 278, CQ2011-59, pp. 91-96, 2011年11月.
【非特許文献3】池上大介,本多泰理,山本浩司他:「チャンク型映像配信サービスにおける再生状態推定法の検討」,電子情報通信学会総合大会,B-11-24,2012年3月.
【非特許文献4】本多泰理,池上大介,山本浩司:「Ack観測による映像再生状態推定法の検討 」,電子情報通信学会総合大会,B-11-25,2012年3月.
【非特許文献5】ITU-T勧告P.1201.1.
【非特許文献6】Tobias Hobfeld R. Schatz, E. Biersack, Internet Video Delivery in YouTube: From Traffic Measurements to Quality of Experience, Data Traffic Monitoring and Analysis, Lecture notes in Computer Science 7754 (2013), 264?301.
【非特許文献7】R. K. P. Mok, Edmond W. W. Chan, and Rocky K. C. Chang, Measuring the Quality of Experience of HTTP Video Streaming, Proc. W-MUST 2011(2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献2,3,4においては、主観評価実験もしくはアンケート調査によりQoEを計測しており、ユーザが当該サービスを利用する時の状態を勘案していない。実際には、プログレッシブダウンロード型映像サービスのユーザにも様々なユーザの状態が存在し、KQIとQoEの関係に影響を及ぼす可能性が考えられる。例えば、自宅における視聴時と、外出先で空き時間に利用する場合では、利用目的が異なることから、再生停止時間が同一の場合でも、ユーザが体感するQoEは異なる可能性がある。
【0009】
また、上記非特許文献5,6,7では、QoEを求めるための引数として、映像の再生停止回数、単一の停止イベントあたりの平均停止時間、その発生間隔等が与えられるが、ユーザの物理的位置や属性及び利用状況等は利用されないため、上記と同様に、求められるQoEとユーザが体感とは異なる可能性がある。
【0010】
従って、通信事業者やコンテンツ事業者がユーザ満足度を最大化する目的で制御を行う場合には、可能な限り各ユーザの視聴時の状態におけるQoEの傾向および利用形態を勘案することが望ましい。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、ユーザの視聴時の状態を勘案したユーザ満足度算出モデルの確立と、それに基づく制御則の導入により、ユーザ満足度平均値を最大化することが可能なユーザ行動最適化装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、プログレッシブダウンロード型映像サービスにおけるユーザの行動を制御するユーザ行動最適化装置であって、
最大平均効用の値と制御則を格納する最大平均効用蓄積手段と、
与えられた、前記プログレッシブダウンロード型映像サービスを享受するユーザの端末の情報、該ユーザの物理的位置、属性及び該サービスの利用状況を含む、該プログレッシブダウンロード型映像サービスの提供する条件である前提条件と、該ユーザの標準的利用パターンを含み、映像視聴時のユーザの状態を示す「状態」情報と、サービスの利用品質に相関が高いネットワーク状態指標であるKPI(Key Performance Indication)、サービスの利用品質であるKQIから決定される満足度を表す効用関数からユーザのモデルを生成するモデル構成手段と、
前記モデル構成手段で生成された前記ユーザのモデル、前記KQI及び前記効用関数を用いて、各算出用制御則を実施した場合の各ユーザの満足度を求め、該満足度の平均値を平均効用の値とする平均効用算出手段と、
前記平均効用算出手段で求められた前記最大平均効用の値を前記最大平均効用蓄積手段に格納し、状態毎ユーザ数及び最適制御則の算出に用いる算出用制御則が与えられると、該算出用制御側を前記平均効用算出手段に渡し、該平均効用算出手段を用いて、該算出用制御則における平均効用の値を算出し、該最大平均効用蓄積手段に格納されているそれまでの平均効用の値と比較し、大きい方の平均効用の値と制御則を該最大平均効用蓄積手段に保持し、最終的に該最大平均効用蓄積手段に保持された制御則を最適制御則として出力する制御則算出手段と、を有するユーザ行動最適化装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
一態様によれば、ネットワーク事業者は各ユーザの視聴状態や各状態にあるユーザ数を入力として、ユーザの満足度を最大化する制御を実現できる。また、当該アプリケーションがネットワーク事業者の提供するものである場合には、基地局や公衆無線LAN等のネットワーク状態を勘案して、場所の移動もしくはアプリケーション操作などのユーザ行動に対する誘導を行うことも可能である。これにより、アプリケーションの利用品質とネットワークリソースを最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の基本概念の相関図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるユーザ行動最適化装置100の構成例である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるユーザの状態モデルの例である。
【図4】本発明の一実施の形態における制御則算出部30の処理のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態における各状態におけるユーザ標準利用パターンの状態遷移の例である。
【図6】本発明を適用した場合の帯域割り当てシミュレーションの結果である。
【図7】制御則導入前後の平均効用の比較である。
【図8】制御則導入前後の接続試行回数の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面と共に本発明の実施の形態を説明する。

【0016】
図1に、本発明の基本概念の相関図を示す。

【0017】
同図において、前提条件1は、プログレッシブダウンロード型映像サービスを享受する端末スペック、ユーザの物理的位置、属性及び利用状況等のサービスの前提となる条件全般の要素である。

【0018】
「状態」情報2は、ユーザ、ネットワーク、ハードウェアの各状況を表し、これらは前記前提条件1に依存して決定づけられる要素である。

【0019】
当該プログレッシブダウンロード型映像サービスのユーザに関する「状態」情報2は視聴時におけるユーザの状態、例えば、前提条件1が、『屋内で視聴』、『外出先で視聴』等であるときの状態を表す。同時に、当該状態は各状態におけるユーザの標準的利用パターンを要素として含有する。例えば、『屋内でじっくり視聴する場合、初期待ち時間が長くても視聴を停止しない』などである。ネットワークに関する「状態」情報2は例えば遅延やパケットロス率などのネットワーク状態であり、ハードウェアに関する「状態」情報2は端末の負荷状態等を表す。

【0020】
KPI3は、ネットワークに関する「状態」情報2に依存して決定づけられ、サービスの利用品質に相関が高いネットワーク状態指標である。例えば、スループットなどを表す。

【0021】
KQI4は、KPI3に依存して決定付けられるものであり、サービスの利用品質、すなわち停止時間や回数を示す。

【0022】
効用関数5は、ユーザの利用品質を表し、ユーザに関する「状態」情報2及びKQI4により決定付けられる。

【0023】
制御則6は、サービスプロバイダや通信事業者にフィードバックすることで、サービス品質向上の観点で、算出された時点において最適な要素を表し、効用関数5により決定付けられる。

【0024】
図2は、本発明の一実施の形態におけるユーザ行動最適化装置100の構成例を示す。

【0025】
同図に示すユーザ行動最適化装置100は、所与の入力に基づきモデル50を決定するモデル構成部10と、平均効用算出部20と、制御則算出部30と、最大平均効用蓄積部40と、から構成される。なお、この他に図示しないが、システムオペレータとの間で入出力を行うユーザインタフェースや、算出結果等を一時的に格納するメモリを有するものとする。

【0026】
本装置100のシステムオペレータとしては、当該サービスを提供するコンテンツ事業者もしくはネットワーク事業者などが考えられる。

【0027】
モデル構成部10は、ユーザインタフェースを介して、システムオペレータから前提条件1、「状態」情報2、効用関数5の各要素が入力される。

【0028】
前提条件1は、対象とするネットワークの構成情報、具体的にはボトルネックリンクの帯域情報と各「状態」情報2に属するユーザ数、各ユーザのアクセス時刻などを含む。

【0029】
「状態」情報2は、ユーザ、ネットワーク、ハ-ドウェアに関する各状態の定義である。ユーザに関する「状態」情報2は、例えば『「じっくり」「ひまつぶし」状態』、『「ひまつぶし」状態』などの視聴状態および標準利用パターンである。例えば、前者の『「じっくり」「ひまつぶし」状態』では『フラグ"1"(状態1)から始め、40秒経過後にフラグ"2"(状態2)に移行』とし、『「じっくり」状態』では『「フラグ"1"」(状態1)から10秒で「フラグ"2"」(状態2)に移行』し、『「じっくり」状態』の場合、『視聴中に5回停止すると「フラグ"4"」(状態4)に移行するが、「ひまつぶし」状態の場合は視聴をやめる』などが考えられるが、その粒度については任意とする。当該シーケンスの入力形態は、例えば、統一モデリング言語のUML(Unified Modeling Language)に規定されるシーケンス図でもよいし、テキストによる記述等、それ以外の手段でもよい。ここで本装置のシステムオペレータは、ユーザの利用状態を、「視聴中」「ダウンロード中」のそれぞれに関する2値のフラグの組み合わせで定義する(図3の例では、○、×で示す)。これに基づき、システムオペレータは、ユーザの標準的利用パターンにおける状態遷移のシーケンスを記述する。

【0030】
さらに、モデル構成部10は、ユーザインタフェースを介して、システムオペレータによって定義されたKQI4とユーザの満足度の関係を表す効用関数5が入力される。当該効用関数5は、例えば映像の停止回数や総停止時間等のKQI4を引数として、スカラー値として表現するものである。プログレッシブダウンロード型映像配信における既存の効用関数として非特許文献5~7に記載の式が存在するが、ここでは任意の関数を採用してよいものとする。

【0031】
モデル構成部10は、上記で入力された前提条件1、「状態」情報2、効用関数5をメモリ(図示せず)に格納し、例えば、それらの要素をオブジェクトと見做し、その関係をUMLのクラス図を作成することにより、映像視聴行動モデル(以下、「モデル50」と記す)として出力する。

【0032】
平均効用算出部20は、メモリ(図示せず)からモデル50及びモデル構成部10に入力された情報を取得し、当該サービスが提供される回線における各利用ユーザの効用(平均ユーザ満足度60)を算出する。具体的には、入力である各ユーザのアクセス時間から各ユーザが標準利用パターンを実行するシミュレーションにより、各時刻における帯域の過不足から再生停止状態すなわちKQI4がユーザ毎に算出される。KQI4を入力として、効用関数5により、各ユーザの平均ユーザ満足度60が算出される。例えば非特許文献5,6に記載の数式によりKQI4からQoEを算出するものであるが、ここでは数式自体は本発明の範囲でなく、式は任意とする。最終的に、平均効用算出部20は各ユーザの平均ユーザ満足度60(後述する図4のフローチャートの平均効用η)を算出し、メモリ(図示せず)に出力する。

【0033】
制御則算出部30は、ユーザインタフェースを介して、システムオペレータが事前に複数用意した算出用制御則7(図5の例では、制御則{ξ1, ξ2,… ξiM}と、状態毎ユーザ数が入力されると、メモリ(図示せず)から平均効用算出部20で求められた各ユーザの平均ユーザ満足度60(平均効用η)と、前提条件1を取得し、プログレッシブダウンロード型映像サービスが提供される回線における平均効用の値を最大化すべく制御則70を決定する。

【0034】
具体的には、制御則算出部30は、平均効用算出部20を呼び出して、入力された各算出用制御則7を実施した場合における平均ユーザ満足度60(後述する図4のフローチャートの平均効用ηM)を算出し、その最大値を実現する制御則70を最適制御則9として採用し、最終出力する。当該制御則9とは、各状態に属するユーザに対する誘導規則、ネットワークの優先制御などを包含する概念である。なお、上記の算出用制御則7{ξ1, ξ2,… ξiM}は、システムオペレータが入力する以外に、予めメモリに格納されていてもよい。

【0035】
図4は、本発明の一実施の形態における制御則算出部30の処理のフローチャートである。

【0036】
初回の処理で、i=1とし(ステップ1)、制御則算出部30は、まず平均効用算出部20の出力結果である平均ユーザ満足度60をηMとして最大平均効用蓄積部40に格納しておく(ステップ2)。

【0037】
次に、インタフェースを介して算出用制御則7{ξ1, ξ2,… ξiM}が入力されると(ステップ3)、平均効用算出部20を用いて、入力された算出用制御則7{ξ1, ξ2,… ξiM}の下における平均ユーザ満足度60(平均効用η)を算出し(ステップ4)、最大平均効用蓄積部40に格納されている当該時点までの平均効用最大値ηM と比較する(ステップ5)。

【0038】
η≧ηMの場合には(ステップ5,No)、ηM=η,ξ=ξMとして、平均効用最大値ηMを更新し、最大平均効用蓄積部40に、当該制御則70(ξMとηMの値)を格納する(ステップ6及び7)。

【0039】
一方、η≦ηMの場合には(ステップ5,Yes)当該制御則70は最大効用を実現しないものと判断して破棄する(ステップ8)。

【0040】
i=i+1として(ステップ9,Yes及びステップ10)ステップ3に移行してi=iMになるまで上記過程を反復し、入力された全ての算出用制御則7{ξ1, ξ2,… ξiM}について平均効用の算出を完了した時点で(ステップ9,Yes)、最大平均効用蓄積部40に蓄積されている制御則ξMを、最適制御則9として出力する(ステップ11)。

【0041】
以下に、本発明をプログレッシブダウンロード型映像サービスのユーザの行動に適用した評価を述べる。

【0042】
以下の例では、本装置のシステムオペレータは、ユーザの「状態」情報2として、『じっくり視聴する状態』『空き時間に視聴する状態』の2つの状態を定義するものとする。以下、簡単のためそれぞれ当該「状態」情報2を『状態A』,『状態B』と表す。

【0043】
『状態A』に属するユーザは、映像コンテンツの視聴自体が目的であり、映像コンテンツの検索に時間に要する時間が短い、再生停止頻発時は視聴中断し再度視聴を再開する、などの行動特性を呈する傾向が強いと考えられる。

【0044】
『状態B』に属するユーザは、特定の映像コンテンツ視聴を目的とせず、漫然と映像サービスを利用する状態のため、検索時間が『状態A』ユーザのそれに比して長く、再生停止頻発時は当該コンテンツの視聴自体を中断する確率が高い、などの傾向が考えられる。

【0045】
これらを勘案し、図5のように各状態のユーザの標準的利用パターンの状態遷移を記述する。また、ここでの効用関数5(f(tc))は、状態に依らず
f(tc) = log(tc + 1)
と定義している。即ち、ここではKQI4としては総再生時間tcのみを採用している。またシミュレーションの諸元として、ここではユーザあたり利用帯域を1Mbps、ファイルサイズを6MByte、ファイル時間長を5分と設定している。

【0046】
図6に、上記の設定に基づき、シミュレーションにより平均ユーザ満足度を算出した結果を示す。同図に示す結果では、ほぼ全ての系内数について『状態A』のユーザ比率が高い方が平均効用の数値が高いことが分かる。また、系内数が8から16の場合に注目すると、『状態A』と『状態B』のユーザ混在時の方が、『状態B』のユーザのみの場合より効用が高くなっていることがわかる。
これは、『状態A』のユーザが視聴している間に『状態B』のユーザが帯域を有効に利用できていることによると考えられる。本結果より、『状態B』のユーザを制御し、ユーザAの再生停止時間を縮小することが、平均効用増大につながると考えられる。

【0047】
図7は、系内における『状態A』および『状態B』のユーザが各半々ずつの場合において、以下の制御則に従いユーザを誘導した場合の結果を示している。

【0048】
・『状態A』のユーザがダウンロード中(flag4)、『状態B』ユーザは動画のダウンロードを控えるように誘導する(flag1に留める)。

【0049】
・『状態A』のユーザが視聴中(flag3)、『状態B』のユーザは動画の視聴及びダウンロードをする(flag2)ようにユーザを誘導する。これより、系内数が7から12の場合においては"△"(制御則無し)と"×"(制御則有り)の差分が大きいことから、制御則を適用しない場合に比して平均効用を増大できていることが確認できる。

【0050】
図8は、各状態のユーザが同数の場合、『状態A』、『状態B』の各ユーザにおける前記制御則の適用有無の場合の接続試行回数を示すものである。グラフの横軸は系内の全ユーザ数を表す。

【0051】
制御則導入に伴い、『状態A』のユーザはダウンロードの高速化により接続試行が増大傾向を示している。一方、『状態B』のユーザは待機時間の増大に伴い制御則導入後に不要な接続試行を控える傾向を示している。

【0052】
なお、上記の図2に示すユーザ行動最適化装置100の各構成要素の動作をプログラムとして構築し、プログレッシブダウンロード型映像サービスにおける、ユーザ行動最適化装置100として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。

【0053】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 前提条件
2 「状態」情報
3 KPI(Key Performance Indication)
4 KQI(Key Quality Indicator)
5 効用関数
6 制御則
7 算出用制御則
8 状態毎ユーザ数
9 最適制御則
10 モデル構成部
20 平均効用算出部
30 制御則算出部
40 最大平均効用蓄積部
50 モデル
60 平均ユーザ満足度
70 制御則
100 ユーザ行動最適化装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7