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明細書 :風力発電システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6257960号 (P6257960)
公開番号 特開2015-046984 (P2015-046984A)
登録日 平成29年12月15日(2017.12.15)
発行日 平成30年1月10日(2018.1.10)
公開日 平成27年3月12日(2015.3.12)
発明の名称または考案の名称 風力発電システム
国際特許分類 H02P   9/00        (2006.01)
F03D   7/04        (2006.01)
F03D   9/00        (2016.01)
FI H02P 9/00 F
F03D 7/04 Z
F03D 9/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2013-176088 (P2013-176088)
出願日 平成25年8月27日(2013.8.27)
審査請求日 平成28年5月6日(2016.5.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】岡崎 徹
【氏名】中村 武恒
個別代理人の代理人 【識別番号】100100147、【弁理士】、【氏名又は名称】山野 宏
審査官 【審査官】▲桑▼原 恭雄
参考文献・文献 特開2011-102576(JP,A)
特開昭58-140486(JP,A)
特開2011-216325(JP,A)
調査した分野 H02P 9/00
F03D 7/04
F03D 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
風車と、
前記風車の回転軸に連結される誘導回転機と、
前記誘導回転機に励磁電流を供給する電力変換装置と、
前記誘導回転機で発生した熱を受け取る熱媒体を流通させる熱媒体流通機構と、
前記熱媒体流通機構に流通する前記熱媒体の熱を蓄える蓄熱器と、
前記蓄熱器に蓄えられた前記熱媒体の熱を電気に変換する熱発電機と、
電力系統の電力需要に応じて、前記励磁電流を制御する電機子制御部と、を備え、
前記誘導回転機は、
界磁鉄心とその周囲に配置された界磁導体を有する界磁と、
前記界磁に対して間隔をあけて配置され、前記界磁に対向する突極を有する電機子鉄心とその突極に巻回された電機子巻線を有する電機子とを備え、
前記電機子制御部は、
前記励磁電流として前記電力系統から無効電流を供給する制御により、前記誘導回転機を発電機として動作させる発電モード制御と、
前記励磁電流として負荷トルクを生じるすべりとなるトルク電流を供給する制御により、前記誘導回転機を発熱機として動作させる発熱モード制御との一方又は両方を行う風力発電システム。
【請求項2】
前記電機子制御部は、前記発熱モード制御において、前記トルク電流を直流又は交流に制御する請求項1に記載の風力発電システム。
【請求項3】
前記電機子制御部は、前記発熱モード制御において、前記トルク電流を定格トルクから停動トルクまでとなる周波数の交流に制御する請求項1に記載の風力発電システム。
【請求項4】
前記誘導回転機を収納する断熱容器を備え、
前記熱媒体流通機構が、前記断熱容器内に前記熱媒体を流通させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の風力発電システム。
【請求項5】
前記電力系統の電力需要に応じて、前記熱発電機の発電電力を制御する電力制御部を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の風力発電システム。
【請求項6】
前記界磁導体がかご形導体である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の風力発電システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電システムに関する。特に、風力を利用して電気と熱の両方で発電でき、電力需要に応じた発電電力の制御が可能で、風力エネルギーを有効に利用できる風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーを利用した発電システムが注目されており、その一つとして、風車の回転エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換する風力発電システムが知られている。また最近では、風車の回転エネルギーを誘導加熱(渦電流)による発熱を利用した発熱機で熱エネルギーに変換し、その熱を電気エネルギーに変換する風力熱発電システムが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
また、例えば特許文献3、4には、再生可能エネルギーを利用した発電システムにおいて、発電効率を向上させる技術、発電電力を有効活用する技術が提案されている。特許文献3には、風力発電装置において、風車に軸結合した発電機の損失による排熱を利用してタービンを駆動し、このタービンに軸結合した発電機から発電電力として回収することで、装置の効率を向上させる技術が提案されている。一方、特許文献4には、自然エネルギー利用発電システムにおいて、発電手段(太陽光発電、風力発電)で発電した余剰の電力を電熱体で熱に変換し蓄熱手段(電気温水器)に蓄えることで、発電電力を熱エネルギーとして有効に活用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2011-102576号公報
【特許文献2】特開2012-43728号公報
【特許文献3】特開2003-120505号公報
【特許文献4】特開2004-63930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
風力発電システムは、自然現象である風を動力源とするため、発電電力が不安定であり、また、電力需要に関係なく発電することから、電力需要に応じて発電電力を制御することができない。つまり、電力需要が多いときに発電できず、電力を供給できなかったり、電力需要が少ないときに発電量が需要を上回り、余剰電力が発生する欠点がある。そこで、電力系統の需要と供給のバランスを維持するためのバックアップが必要であり、例えば、余剰電力を蓄電池に蓄えて、不足分の電力を蓄電池から供給したり、火力発電設備と組み合わせて、発電電力の変動分を調整することが行われている。しかし、蓄電池は高価であるので経済的ではないし、また、火力発電設備は直ぐに起動できるように常に待機させておく必要があり、待機中も燃料を消費してCOを排出する。
【0006】
特許文献1、2の記載の風力熱発電システムでは、発熱機で発生した熱を蓄熱器に蓄え、その熱を利用して発電することが可能であるため、高価な蓄電池などがなくても、電力需要に応じて電力を供給することができる。しかしながら、この風力熱発電システムは、風車の回転エネルギーを熱エネルギーに一旦変換した後、電気エネルギーに変換するため、風車の回転エネルギーを電気エネルギーに直接変換する従来の風力発電システムに比べて発電効率が劣る。また、構成要素である発熱機を一から設計する必要があり、コスト高を招くことが懸念される。
【0007】
一方、特許文献3に記載の技術は、発電機の損失による排熱を利用して発電し、発電電力を回収することで、風力発電装置の発電効率を高めようとするものである。また、特許文献4に記載の技術は、従来捨てられていた余剰電力を熱に変換して蓄熱し、熱として利用することで、発電電力を熱エネルギーとして有効活用しようというものである。しかし、いずれの技術も、安定した電力供給を可能にするものではなく、電力系統の安定化に貢献するものではない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、風力を利用して電気と熱の両方で発電でき、電力需要に応じた発電電力の制御が可能で、風力エネルギーを有効に利用できる風力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の風力発電システムは、風車と、誘導回転機と、電力変換装置と、熱媒体流通機構と、蓄熱器と、熱発電機と、電機子制御部と、を備える。誘導回転機は、風車の回転軸に連結される。電力変換装置は、誘導回転機に励磁電流を供給する。熱媒体流通機構は、誘導回転機で発生した熱を受け取る熱媒体を流通させる。蓄熱器は、熱媒体流通機構に流通する熱媒体の熱を蓄える。熱発電機は、蓄熱器に蓄えられた熱媒体の熱を電気に変換する。電機子制御部は、電力系統の電力需要に応じて、励磁電流を制御する。そして、電機子制御部は、励磁電流として電力系統から無効電流を供給する制御により、誘導回転機を発電機として動作させる発電モード制御と、励磁電流として負荷トルクを生じるすべりとなるトルク電流を供給する制御により、誘導回転機を発熱機として動作させる発熱モード制御との一方又は両方を行う。
【発明の効果】
【0010】
上記の風力発電システムは、風力を利用して電気と熱の両方で発電でき、電力需要に応じた発電電力の制御が可能で、風力エネルギーを有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の風力発電システムの全体構成の一例を示す概略図である。
【図2】実施形態1における誘導回転機の構成の一例を示す概略図である。
【図3】電機子における電機子巻線の結線の一例を示す説明図である。
【図4】誘導回転機を発電機として動作させる場合の励磁電流の一例を示す説明図である。
【図5】誘導回転機を発電機、発熱機の両方として動作させる場合の励磁電流の一例を示す説明図である。
【図6】変形例1における界磁の構成を示す概略図である。
【図7】典型的な誘導回転機の速度-トルク特性の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、風力発電システムにおいて、既存の誘導回転機(誘導発電機)を利用し、誘導回転機の励磁方式を工夫することで、1台の誘導回転機を通常の発電機として動作させたり、発熱機として動作させることを想起した。そして、この発想に基づいて、電力需要に応じて誘導回転機を発電機、発熱機として使い分けることによって、電力需要に応じた発電電力の制御が可能で、風力エネルギーを最大限に有効に利用できることを見出し、本願の風力発電システムを完成するに至った。

【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。

【0014】
(1)実施形態に係る風力発電システムは、風車と、誘導回転機と、電力変換装置と、熱媒体流通機構と、蓄熱器と、熱発電機と、電機子制御部と、を備える。誘導回転機は、風車の回転軸に連結される。電力変換装置は、誘導回転機に励磁電流を供給する。熱媒体流通機構は、誘導回転機で発生した熱を受け取る熱媒体を流通させる。蓄熱器は、熱媒体流通機構に流通する熱媒体の熱を蓄える。熱発電機は、蓄熱器に蓄えられた熱媒体の熱を電気に変換する。電機子制御部は、電力系統の電力需要に応じて、励磁電流を制御する。そして、電機子制御部は、励磁電流として電力系統から無効電流を供給する制御により、誘導回転機を発電機として動作させる発電モード制御と、励磁電流として負荷トルクを生じるすべりとなるトルク電流を供給する制御により、誘導回転機を発熱機として動作させる発熱モード制御との一方又は両方を行う。

【0015】
上記した風力発電システムによれば、電機子制御部によって誘導回転機を発電機、発熱機又はその両方として動作させることができ、安定した電力供給が可能である。例えば、電力系統の電力需要がピークで、風を受けて風車が回転している場合は、誘導回転機を通常の発電機として動作させ、誘導回転機から電力を供給できる。誘導回転機を発電機として動作させることで、従来の風力発電システムで利用されている誘導発電機と同様に風車の回転エネルギーを電気エネルギーに直接変換するため、風力熱発電システムに比べて発電効率が高く、発電電力も大きい。一方、電力系統の電力需要がオフピークで、風を受けて風車が回転している場合は、誘導回転機を発熱機として動作させ、誘導回転機で発生した熱を熱媒体流通機構を通じて蓄熱器に蓄熱できる。ここで、実施形態の風力発電システムでは、誘導回転機(誘導発電機)への励磁電流の制御を従来とは異なる制御で行うことで、誘導回転機の回転を妨げる負荷トルクを強制的に与え、発熱量を増やすことが可能である。具体的には、例えば、励磁電流として、通常時(発電モード時)は電力系統(商用電源)から無効電流(商用三相交流)を印加するところに直流を印加することで、誘導回転機の始動時と同じ状況を作り出し、始動トルクと同じだけの負荷トルクを与えることが挙げられる。また、誘導回転機を発電機としても動作させ、直接電力も取り出す場合は、上記の商用三相交流と直流とを重畳して印加することが挙げられる。さらに、電力系統の電力需要がピークでも、風車が回転していない場合は、蓄熱器に蓄えられた熱を利用して熱発電機(例、タービン発電機)で発電することが可能であるため、熱発電機から電力を供給できる。また、誘導回転機の発電電力の変動分を熱発電機によって調整することも可能である。

【0016】
つまり、実施形態の風力発電システムでは、電力が必要なときは、誘導回転機を発電効率の高い発電機として動作させ、効率良く発電することができる。一方、電力が必要ないときは、誘導回転機を発熱機として動作させ、熱を蓄熱器に蓄えることができる。そして、電力が必要になったときは、蓄熱器に蓄えられた熱を利用して熱発電機で発電することもできる。したがって、実施形態の風力発電システムは、電力需要に応じた発電電力の制御が可能で、風力エネルギーを最大限に有効に利用できる。

【0017】
また、実施形態の風力発電システムでは、誘導回転機に無効電流成分とトルク電流成分との励磁電流を供給することで、誘導回転機を発電機、発熱機の両方として動作させることもできる。そのため、誘導回転機の発電量と発熱量を制御することも可能であり、電力があまり必要ないときは、誘導回転機によって、風車の回転エネルギーのうち一部を電気エネルギーとして取り出し、残りを熱エネルギーとして取り出すことができる。ところで、従来の風力発電システムでは、発電機の容量(定格出力)を超える出力を得ることはできず、定格風速を超えるようになると、ピッチ制御などにより風をある程度逃がすように風車を制御している。即ち、強風の場合は、風力エネルギーを逃がすことになる。これに対し、実施形態の風力発電システムでは、誘導回転機を発電機として動作させながら発熱機としても動作させることが可能であり、強風の場合は、誘導回転機が発電と発熱の両方を行うことで、発電機としての定格出力を超える出力を得ることができる。したがって、風力エネルギーを無駄に逃がすことなく、最大限のエネルギーを回収することができ、使用可能風速範囲が広く、カットアウト風速も高くできる。

【0018】
更に、実施形態の風力発電システムでは、熱媒体流通機構により、熱媒体を流通させることで、発熱した誘導回転機を冷却できるので、誘導回転機が焼損などすることも防止できる。

【0019】
なお、誘導回転機は、誘導機とも呼ばれ、誘導発電機と誘導電動機の総称である。実施形態の風力発電システムでは、誘導回転機として既存の誘導発電機(誘導電動機)の技術を流用することで、誘導回転機を安価に且つ簡易に構成することができる。誘導回転機の一例として、キャンドモータを流用することが挙げられる。一般に、誘導回転機は、界磁鉄心とその周囲に配置された界磁導体を有する界磁と、この界磁に対して間隔をあけて配置され、界磁に対向する突極を有する電機子鉄心とその突極に巻回された電機子巻線を有する電機子と、を備える。そして、界磁及び電機子のいずれか一方が風車の回転軸に連結される回転子、他方が固定子となる構造である。また、誘導回転機は、外部から励磁電流が供給される一次側の電機子巻線と、外部とは電気的に接続されず、両端が短絡された二次側の導体(例、かご形導体)とを備える。ここで、この二次側は実質的に界磁として働くので、以下では二次側を「界磁」と呼び、二次側の鉄心及び導体をそれぞれ界磁鉄心及び界磁導体と表現する。

【0020】
(2)実施形態の風力発電システムの一形態として、電機子制御部は、発熱モード制御において、トルク電流を直流又は交流に制御することが挙げられる。

【0021】
図7は、典型的な誘導回転機の速度-トルク特性の一例を示す図であり、横軸が回転速度、縦軸がトルクを表す。図7に示すように、誘導回転機は通常、定格出力を出すときの定格トルクより始動トルクの方が大きい。また、誘導回転機の出力は、回転速度(回転数)とトルクの積に比例する。そして、風車の回転により誘導回転機(回転子)が定格回転速度(定格回転数)で回転している場合、電機子制御部により励磁電流を制御して、トルク電流として直流を供給すると、電機子に発生する磁界の回転速度が0の状態となり、ダイナミックブレーキと呼ばれる原理と同じ現象が起きる。これは、回転子が静止し、相対的に固定子が回転していると考えれば、すべりが100%の状態となり、誘導回転機の始動時と同じ状況である。これにより、始動トルクと同じだけの負荷トルクが現れ、その仕事量(出力)が発熱として消費される。つまり、誘導回転機(電機子巻線)に直流を印加することで、始動トルクと同じトルクを出すことができ、誘導回転機の損失が増えることから、発熱量を増やすことができる。なお、この場合は、定格トルクよりも大きいトルクで誘導回転機を運転することになるから、発電機としての定格出力よりも大きな仕事量(出力)が得られることを意味する。また、定格トルクよりも大きい負荷トルクを生じるすべりとなるのであれば、直流に限らず、トルク電流として交流を印加してもよい。

【0022】
(3)実施形態の風力発電システムの一形態として、電機子制御部は、発熱モード制御において、トルク電流を定格トルクから停動トルクまでとなる周波数の交流に制御することが挙げられる。

【0023】
図7に示すように、定格トルクから停動トルクまでのトルクは定格トルクよりも大きい。特に、停動トルクは、誘導回転機が出し得る最大トルクであり、定格トルクや始動トルクより更に大きい。そして、風車の回転により誘導回転機(回転子)が定格回転速度(定格回転数)で回転している場合、電機子制御部により励磁電流を制御して、トルク電流として、負荷トルクが定格トルクから停動トルクまでとなるすべり周波数の交流を供給すると、定格トルクよりも大きな仕事量(出力)を得ることができる。特に、停動トルクとなる周波数の交流を供給すると、更に大きな仕事量(出力)を得ることができる。具体的には、停動トルクを生じるすべりとなる交流の周波数に制御し、電機子に発生する磁界の回転速度を調整すると、停動トルクと同じだけの負荷トルクが現れ、その仕事量(出力)が発熱として消費される。よって、誘導回転機の損失が更に増えることから、発熱量を更に増やすことができる。

【0024】
(4)実施形態の風力発電システムの一形態として、誘導回転機を収納する断熱容器を備え、熱媒体流通機構が断熱容器内に熱媒体を流通させることが挙げられる。

【0025】
上記構成によれば、誘導回転機で発生した熱を逃がすことなく、熱媒体によって回収することができる。また、発熱する界磁が回転子であっても、界磁で発生した熱を熱媒体に容易に伝えることができる。

【0026】
(5)実施形態の風力発電システムの一形態として、電力系統の電力需要に応じて、熱発電機の発電電力を制御する電力制御部を備えることが挙げられる。

【0027】
上記構成によれば、電力系統の電力需要がピークであって、風車が回転していない場合は、熱発電機から電力を供給する他、風車が回転していても、より大きな発電電力が要求される場合は、誘導回転機と熱発電機とから同時に電力を供給できる。つまり、熱発電機からの発電電力を加えることで、誘導回転機の発電機としての発電電力を超える電力の供給が可能である。また、電力系統の電力需要がオフピークの場合は、熱発電機での発電を停止し、蓄熱状態で待機できる。

【0028】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。

【0029】
[実施形態1:界磁=回転子(内側)、電機子=固定子(外側)]
〈風力発電システムの全体構成〉
図1~図5を参照して、実施形態1に係る風力発電システムについて説明する。図1に示す風力発電システム1は、風車10と、誘導回転機20と、電力変換装置(インバータ)30と、熱媒体流通機構40と、蓄熱器50と、熱発電機60とを備える。誘導回転機20は、断熱容器250に収納されている(図2参照)。この例では、図1に示すように、塔91の上部に設置されたナセル92に風車10が取り付けられ、ナセル92内に誘導回転機20と電力変換装置30が格納されている。また、塔91の下部(土台)に建てられた建屋93に蓄熱器50と熱発電機60が設置されている。誘導回転機20と熱発電機60とは電力系統(商用電源)100に接続され連系されている。

【0030】
(風車)
風車10は、水平方向に延びる回転軸11を中心に、3枚の翼12を回転軸11に放射状に取り付けた構造である。風車10の回転軸11には、回転速度(回転数)を検出する回転検出器13(図2参照)が取り付けられている。

【0031】
(誘導回転機)
誘導回転機20は、既存の誘導機(高温ポンプに用いられるキャンドモータ)を流用して構成されている。この例では、誘導回転機20は、三相かご形誘導機(発電機・電動機)であり、図2に示すように、界磁210と、この界磁210に対して間隔をあけて配置される電機子220とを備え、界磁210が風車10の回転軸11に連結される回転子であり、電機子220が固定子である。具体的には、界磁(回転子)210は、風車10の回転軸11に連結される界磁鉄心211とその周囲に配置された界磁導体215を有する。界磁210は、風車10の回転により回転する。また、電機子(固定子)220は、界磁210の外側に間隔をあけて配置され、界磁210に対向する突極を有する電機子鉄心221とその突極に巻回された電機子巻線225を有する。この例では、風車10の回転軸11に誘導回転機20(界磁210)が直結されているが、増速機(図示せず)を介して増速機の出力軸に誘導回転機20を連結してもよい。増速機を用いないことで、増速機によるトラブルを回避することができる。

【0032】
誘導回転機20は、電力変換装置30を介して電力系統100と接続されており、電力系統100から励磁電流を得て発電し、発電電力を電力系統100に供給できる。

【0033】
界磁(回転子)210は、円柱状の界磁鉄心211の周囲に導体がかご形に配置されており、このかご形導体が界磁導体215を構成する。このかご形導体(界磁導体215)は、界磁鉄心211の外周に間隔をあけて設けられた多数のスロットに導体バー215bを埋め込み、界磁鉄心211の両端にこれら導体バー215bを短絡する導体エンドリング215rを設けることで形成されている。このようなかご形回転子は、極めて簡単な構造であり、故障が少ないなどの利点がある。この例では、界磁導体215にかご形導体を用いたかご形回転子であるが、界磁導体215として導体を巻回し、両端を短絡した巻線を用いた巻線形回転子であってもよい。界磁鉄心211は、例えばケイ素鋼板などの電磁鋼板を積層して形成することができる。界磁導体215は、例えば銅やアルミで形成することが挙げられる。

【0034】
電機子(固定子)220は、電機子鉄心221の突極に分布巻で三相(U相、V相、W相)の電機子巻線225が巻回されている。この例では、図3に示すように、電機子巻線225の各相がY結線されている。また、この例では、電機子鉄心221は、円筒状のヨーク部と、このヨーク部から界磁210に向かって内方に突出する突極を有する構造である。電機子巻線225は、分布巻としているが、集中巻とすることも可能である。電機子鉄心221は、例えばケイ素鋼板などの電磁鋼板を積層して形成することができる。この例では、電機子巻線225が、高温となる熱媒体400中に配置されるなど、高温環境下で使用されるため、例えばセラミック絶縁層を有する超耐熱巻線を使用することが好ましい。超耐熱巻線としては、400℃まで使用可能な耐熱性を有するものが知られている。もちろん、使用温度が低い場合は、ポリアミドイミド銅線やポリイミド銅線などのエナメル線を使用することも可能である。

【0035】
(断熱容器)
断熱容器250は、誘導回転機20(界磁(回転子)210及び電機子(固定子)220)を収納する。断熱容器250は、例えば金属製の容器の周囲に断熱材を配置して構成することが挙げられる。断熱材としては、例えばロックウール、グラスウール、発砲プラスチック、レンガ、セラミック、これら材料の任意の組み合わせからなる複合材などを用いることができる。

【0036】
断熱容器250には、回転軸11が挿入される軸挿入口253が形成されており、回転軸11がこの軸挿入口253を通って誘導回転機20の界磁(回転子)210に連結されている。この例では、界磁鉄心211の中心軸に貫通孔が形成されており、その貫通孔に回転軸11が挿通され、回転軸11に界磁210が固定されている。また、断熱容器250内には、回転軸11が挿入される側とその反対側の2箇所に軸受(ベアリング)261,262が設けられており、これら軸受261,262により回転軸11が回転可能に支持されている。

【0037】
また、断熱容器250には、熱媒体400が供給される入口部251と、熱媒体400が排出される出口部252が設けられており、誘導回転機20で発生した熱を受け取る熱媒体400が流通する。この例では、断熱容器250の回転軸11が挿入される側に入口部251が設けられ、その反対側に出口部252が設けられており、入口部251と出口部252に熱媒体流通機構40の供給管41と排出管42がそれぞれ接続されている。また、断熱容器250の軸挿入口253には、軸シール部263が配置されている。ここで、入口部251から断熱容器250内に供給する熱媒体400の温度は、100℃以下(例えば常温)とすることが好ましく、これにより発熱した誘導回転機20を効果的に冷却することができる。また、100℃以下とすることで、入口部251の近傍に配置される軸シール部263は100℃程度の耐熱性を有すれば十分であり、軸シール部263に市販の流体シールを採用することができる。誘導回転機20で発生した熱を受け取って、所定温度(例えば200℃~350℃)に加熱された熱媒体400は、出口部252から断熱容器250外に排出される。

【0038】
(熱媒体)
熱媒体400としては、例えば水、油、溶融塩などを用いることができる。水を熱媒体400に用いた場合、100℃を超えると蒸気化するため、熱媒体400が100℃を超える温度に加熱されると、断熱容器250の内圧が上昇する。一方、常圧で100℃超の沸点を有する油や溶融塩を熱媒体400に用いた場合、熱媒体400が100℃を超える温度に加熱されても、断熱容器250の内圧が上昇することを抑制できる。熱媒体400は、常圧で200℃超、より好ましくは350℃超の沸点を有することが好ましく、特に、使用温度範囲内(例えば常温~350℃)で液体であることが好ましい。この例では、熱媒体400に常圧で350℃超の沸点を有する油を用いており、断熱容器250内に熱媒体400を流通させ、誘導回転機20で熱媒体を350℃程度まで加熱することができる。

【0039】
(電力変換装置、電機子制御部)
電力変換装置30は、誘導回転機20(電機子巻線225)に励磁電流を供給する。また、電力変換装置30には、電力系統100の電力需要に応じて、誘導回転機20(電機子巻線225)への励磁電流を制御する電機子制御部310(図2参照)が接続されている。この電機子制御部310は、励磁電流として電力系統100から無効電流を供給する制御により、誘導回転機20を発電機として動作させる発電モード制御と、励磁電流として負荷トルクを生じるすべりとなるトルク電流を供給する制御により、誘導回転機20を発熱機として動作させる発熱モード制御との一方又は両方を行う。

【0040】
発熱モード制御では、風車10の回転により回転子(ここでは界磁210)が回転している際、負荷トルクを生じるすべりとなるように、誘導回転機20(電機子巻線225)への励磁電流を制御することで、電機子220に発生する磁界の回転速度を制御する。これにより、回転子に負荷トルクを強制的に与え、界磁210の界磁導体215に負荷トルクに応じた誘導電流が流れることで、界磁導体215が発熱する。つまり、誘導回転機20(回転子)の回転を妨げる負荷トルクによる仕事量(出力)が損失として熱に変換される。なお、電機子巻線225へのトルク電流値(電流の大きさ)は、所定の負荷トルクが得られるように、誘導回転機20の仕様に応じて適宜決定すればよく、例えば定格電流(設計値)と同じ電流値とすることが挙げられる。トルク電流値が大きくなるほど、原理的に負荷トルクが上がるが、トルク電流値が大き過ぎても、電機子鉄心221が磁気飽和してしまうため、負荷トルクが頭打ちになる。トルク電流値は、例えば定格電流値の50%以上110%以下とすることが挙げられる。

【0041】
例えば、風車10が回転し、誘導回転機20が回転している状態で、電力系統100から励磁電流として、図4に示すような無効電流(三相交流)を供給することで、誘導回転機20を通常の発電機として動作させることができる。なお、図4の横軸は時間(t)、縦軸は電流値(i)を表し、後述する図5も同じである。一方、負荷トルクを生じるすべりとなるトルク電流を供給すると、誘導回転機20で発生する損失(発熱量)が増え、誘導回転機20を発熱機として動作させることができる。この例では、発熱モード制御において、トルク電流を直流に制御する、即ち、トルク電流として、電機子巻線225のU相、V相及びW相のうち少なくとも二相に直流を流し、U相とV相との間、U相とW相との間、及びV相とW相との間のいずれかに直流を印加する。具体的には、例えば、上記した三相のうちの二相(例、U相及びW相)から等しい直流を入れて、残る一相(例、V相)から2つ合わせた直流を出すように流したり、一相から直流を入れて、別の一相から直流を出すように流すことが挙げられる。

【0042】
この場合での誘導回転機20が発熱機として動作する原理を説明する。例えば風車10の回転により界磁(回転子)210が定格回転速度(定格回転数)で回転している場合、電機子制御部310によって電力変換装置30から、トルク電流として直流を印加すると、始動トルクと同じだけの負荷トルクが現れる。そして、界磁210の界磁導体215に誘導電流が流れ、その仕事量(出力)が界磁導体215の発熱として消費される。ここで、図7を用いて上述したように、一般に始動トルクは定格トルクより大きいため、誘導回転機20の定格出力よりも大きな仕事量(出力)を得ることができ、発熱量が大きい。

【0043】
また、電機子制御部310により発電モード制御と発熱モード制御の両方を行い、誘導回転機20を発電機、発熱機の両方として動作させることもできる。この場合、無効電流成分とトルク電流成分との励磁電流を供給し、無効電流成分とトルク電流成分との比を調整することで、誘導回転機20の発電量と発熱量を制御することができる。例えば、図5に示すように、無効電流(三相交流)にトルク電流(直流)を重畳させることが挙げられる。図5では、定格電流値を10とするとき、U相及びW相に1の直流(図中の「i+1」)、V相に-2の直流(図中の「i-2」)を重畳させた励磁電流を示す。トルク電流成分を大きくするほど、誘導回転機20の発熱量の割合が増える。

【0044】
(熱媒体流通機構)
熱媒体流通機構40は、誘導回転機20で発生した熱を受け取る熱媒体400を断熱容器250内に流通させる(図1、図2参照)。この例では、断熱容器250の入口部251に一端が接続され、断熱容器250内に熱媒体400を供給する供給管41と、断熱容器250の出口部252に一端が接続され、断熱容器250外に熱媒体400を排出する排出管42と、供給管41に設けられた循環ポンプ43とで構成されている。また、供給管41及び排出管42の各他端は熱交換器50に接続され、循環ポンプ43により誘導回転機20(断熱容器250)と熱交換器50との間で熱媒体400を循環させることで、断熱容器250内に熱媒体400を流通させる。ここで、誘導回転機20の発熱によって加熱される熱媒体400の温度に応じて、循環ポンプ43により熱媒体400の流量を調整することが好ましい。具体的には、熱媒体400が所定温度より高い場合は、熱媒体400の流量を増やし、所定温度より低い場合は、流量を減らす。これにより、誘導回転機20を使用温度範囲内に維持することができる。

【0045】
誘導回転機20で加熱された熱媒体400は、排出管42を通って蓄熱器50に送られる。この例では、蓄熱器50内に蓄熱材が充填されると共に、第1熱交換管51と第2熱交換管52が配置されており、蓄熱器50は熱交換機能を有する。そして、第1熱交換管51の一端に排出管42が接続され、所定温度に加熱された熱媒体400(例、油)が第1熱交換管51を流通することで、蓄熱材との間で熱交換が行われ、熱媒体400の熱が蓄熱材に蓄えられる。一方、第2熱交換管52には、二次熱媒体(例、水)が流通しており、蓄熱材と二次熱媒体との間で熱交換が行われることで、第2熱交換管52に流通する二次熱媒体を蒸気化する。発生した二次熱媒体の蒸気(例、高温高圧蒸気)は、第2熱交換管52を介して熱発電機60に送られる。つまり、この蓄熱器50は、熱交換機器としての機能も兼ね備える。蓄熱材には、潜熱蓄熱材や顕熱蓄熱材などを用いることができ、これらを併用してもよい。一般に、潜熱蓄熱材は、固体と液体との間の相変化を伴うものであり、顕熱蓄熱材に比べて蓄熱密度が高い。ここで、第1熱交換管51の他端は供給管41が接続されており、熱交換が行われ冷却された熱媒体400は、循環ポンプ43により供給管41を通って誘導回転機20(断熱容器250)に再び送られる。

【0046】
(熱発電機、電力制御部)
熱発電機60は、誘導回転機20で加熱された熱媒体400の熱を電気に変換する。この例では、蓄熱器50に蓄えられた熱を電気に変換する。図1に示す熱発電機60は、蒸気タービン61と発電機62とを組み合わせた構成であり、蓄熱器50から供給された蒸気によって蒸気タービン61が回転して発電機62を駆動して発電し、発電電力を電力系統100に供給できる。また、熱発電機60には、電力系統100の電力需要に応じて、熱発電機60の発電電力を制御する電力制御部80が接続されている。

【0047】
熱発電機60(蒸気タービン61)から排出された二次熱媒体の蒸気は、復水器71で冷却され液体に戻された後、循環ポンプ72により蓄熱器50(第2熱交換管52)に供給されることで、蓄熱器50と熱発電機60との間で二次熱媒体が循環する。

【0048】
〈風力発電システムの効果〉
以上説明した実施形態1の風力発電システム1は、次の効果を奏する。

【0049】
(1)電機子制御部310によって誘導回転機20を発電機、発熱機又はその両方として動作させることができ、電力需要に応じた発電電力の制御が可能で、風力エネルギーを最大限に有効に利用できる。例えば、電力系統100の電力需要がピークで、風車10が回転している場合は、誘導回転機20を発電効率の高い発電機として動作させ(発電モード制御)、誘導回転機20から電力を供給できる。一方で、電力系統100の電力需要がオフピークで、風車10が回転している場合は、誘導回転機20を発熱機として動作させ(発熱モード制御)、誘導回転機20で発生した熱を熱媒体流通機構40を通じて蓄熱器50に蓄熱できる。そして、電力系統100の電力需要がピークでも、風車10が回転していない場合は、蓄熱器50に蓄えられた熱を利用して熱発電機60で発電し、熱発電機60から電力を供給できる。したがって、蓄電池や火力発電設備などのバックアップがなくても、安定した電力供給が可能である。

【0050】
(2)誘導回転機20を発電機、発熱機の両方として動作させる場合は、誘導回転機20の発電量と発熱量を制御することも可能である。そのため、電力があまり必要ないときは、誘導回転機20によって、風車10の回転エネルギーのうち一部を電気エネルギーとして取り出し、残りを熱エネルギーとして取り出すことができる。また、誘導回転機20を発電機として動作させながら発熱機としても動作させることで、強風の場合は、誘導回転機20で発電と発熱の両方を行い、発電機としての定格出力を超える出力を得ることができる。したがって、風力エネルギーを無駄に逃がすことなく、最大限のエネルギーを回収することができ、使用可能風速範囲が広く、カットアウト風速も高くできる。

【0051】
(3)電力系統100の電力需要がピークであって、風車10が回転していない場合は、熱発電機60から電力を供給する他、風車が回転していても、より大きな発電電力が要求される場合は、誘導回転機20と熱発電機60とから同時に電力を供給できる。

【0052】
(4)その他、誘導回転機は、既存の誘導機の技術を流用できることから、安価に且つ簡易に構成することができる。

【0053】
[実施形態2:界磁=回転子(内側)、電機子=固定子(外側)]
実施形態1では、発熱モード制御において、トルク電流として、誘導回転機20(電機子巻線225)に直流を印加する場合について説明した。実施形態2では、発熱モード制御において、トルク電流として、誘導回転機20(電機子巻線225)に定格トルクから停動トルクまでとなる周波数の交流を印加する場合について説明する。ここでは、具体例として、トルク電流を停動トルクとなる周波数の交流に制御する場合を例に挙げて説明する。なお、電機子制御部310による誘導回転機20の励磁方式が異なる点を除いて、実施形態1と同じであり、以下ではその相違点を中心に説明する。

【0054】
具体的には、発熱モード制御において、停動トルクを生じるすべりとなる所定周波数の三相交流に制御し、これをトルク電流として電機子巻線225に印加するように構成されている。

【0055】
この場合での誘導回転機20が発熱機として動作する原理を説明する。例えば風車10の回転により界磁(回転子)210が定格回転速度(定格回転数)で回転している場合、電機子制御部310によって電力変換装置30から停動トルクとなる周波数の交流を印加すると、停動トルクと同じだけの負荷トルクが現れる。そして、界磁210の界磁導体215に誘導電流が流れ、その仕事量(出力)が界磁導体215の発熱として消費される。ここで、図7を用いて上述したように、一般に、停動トルクは定格トルクや始動トルクより更に大きいため、誘導回転機20の定格出力よりも更に大きな仕事量(出力)を得ることができ、発熱量が更に大きい。

【0056】
[変形例1:界磁=固定子(外側)、電機子=回転子(内側)]
上述した実施形態1、2では、誘導回転機20において、界磁210を回転子、電機子220を固定子とした構成(回転界磁型)について説明した。この誘導回転機20を更に変更して、界磁210と電機子220との位置関係を逆にすると共に、界磁210を固定子、電機子220を回転子とした構成(回転電機子型)とすることも可能である。

【0057】
例えば、界磁(固定子)は、図6に示すように、円筒状の界磁鉄心211の内周に導体をかご形に配置し、このかご形導体を界磁導体215とすることが挙げられる。このかご形導体(界磁導体215)は、界磁鉄心211の内周に間隔をあけて設けられた多数のスロットに導体バー215bを埋め込み、界磁鉄心211の両端にこれら導体バー215bを短絡する導体エンドリング215rを設けることで形成されている。一方、電機子(回転子)は、界磁210の内側に間隔をあけて配置され、風車の回転軸に連結される。具体的には、風車の回転軸に電機子鉄心を連結し、界磁に向かって外方に突出する電機子鉄心の突極に電機子巻線を巻回する構造とすることが挙げられる。電機子巻線は、実施形態1と同じ三相分布巻とすることができる。また、電機子巻線には、電力変換装置からスリップリングを介して励磁電流を供給すればよい。

【0058】
このような構成であっても、風車の回転により回転子(ここでは電機子)が回転している際、電機子制御部により、負荷トルクを生じるすべりとなるように、電機子巻線への励磁電流を制御することで、界磁の界磁導体に負荷トルクに応じた誘導電流が流れ、界磁導体が発熱する。例えば風車の回転により電機子(回転子)が定格回転速度(定格回転数)で回転している場合、実施形態1と同様に、トルク電流として電機子巻線に直流を印加すると、始動トルクと同じだけの負荷トルクが現れ、その仕事量(出力)が界磁導体の発熱として消費される。または、実施形態2と同様に、トルク電流として電機子巻線に停動トルクとなる周波数の交流を印加すると、停動トルクと同じだけの負荷トルクが現れ、その仕事量(出力)が界磁導体の発熱として消費される。

【0059】
また、この構成であれば、発熱する界磁が固定子であるため、誘導回転機を断熱容器内に収納しない構成とすることも可能である。具体的には、界磁に熱媒体が流通する孔を形成したり、界磁の外周面に熱媒体が流通する配管を配置するなどして熱媒体流路を設け、この熱媒体流路によって熱媒体流通機構を構成することで、誘導回転機(界磁)で発生した熱を熱媒体に伝えることができる。この場合、断熱容器を省略することができるので、より小型化できる。

【0060】
[変形例2:界磁=固定子(内側)、電機子=回転子(外側)]
上述した実施形態1、2では、誘導回転機において、固定子(電機子220)の内側に回転子(界磁210)を配置した構成(インナーロータ型)について説明した。この誘導回転機20を更に変更して、界磁210と電機子220との位置関係を変えずに界磁210を固定子、電機子220を回転子とし、固定子(界磁210)の外側に回転子(電機子220)を配置した構成(アウターロータ型)とすることも可能である。

【0061】
例えば、風車の回転軸に連動して電機子が回転するように、回転軸に電機子鉄心を連結すると共に、断熱容器などのハウジングに界磁(界磁鉄心)を片持ち支持して固定する構造とすることが挙げられる。また、この場合、電機子巻線には、電力変換装置からスリップリングを介して励磁電流を供給すればよい。

【0062】
[変形例3:界磁=回転子(外側)、電機子=固定子(内側)]
上述した変形例1の誘導回転機においても、変形例2と同じように、電機子を固定子、界磁を回転子とし、固定子(電機子)の外側に回転子(界磁)を配置した構成(アウターロータ型)とすることが可能である。

【0063】
なお、上述した実施形態1、2及び変形例1~3の風力発電システムにおいて、例えば、断熱容器内に誘導回転機を収納し熱媒体を流通させる構成の場合、界磁鉄心211の表面に凹凸やフィンを設けて界磁210の表面積を大きくすることで、界磁210と熱媒体400との間の熱交換効率を向上させることができる。また、熱媒体流通機構40の供給管41や排出管42に断熱材を巻き付けるなどして断熱機能を持たせ、熱媒体流通機構40を蓄熱器として用いてもよく、この場合、熱媒体流通機構40に流通する熱媒体の熱を利用して熱発電機60で発電してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の風力発電システムは、再生可能エネルギーを利用した発電の分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 風力発電システム
10 風車
11 回転軸 12 翼 13 回転検出器
20 誘導回転機
210 界磁 211 界磁鉄心 215 界磁導体
215b 導体バー 215r 導体エンドリング
220 電機子 221 電機子鉄心 225 電機子巻線
250 断熱容器
251 入口部 252 出口部 253 軸挿入口
261,262 軸受(ベアリング) 263 軸シール部
30 電力変換装置
310 電機子制御部
40 熱媒体流通機構 400 熱媒体
41 供給管 42 排出管 43 循環ポンプ
50 蓄熱器
51 第1熱交換管 52 第2熱交換管
60 熱発電機
61 蒸気タービン 62 発電機
71 復水器 72 循環ポンプ
80 電力制御部
91 塔 92 ナセル 93 建屋
100 電力系統(商用電源)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6