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明細書 :関節リウマチの新規遺伝因子としてのミエリン塩基性蛋白の利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5565784号 (P5565784)
登録日 平成26年6月27日(2014.6.27)
発行日 平成26年8月6日(2014.8.6)
発明の名称または考案の名称 関節リウマチの新規遺伝因子としてのミエリン塩基性蛋白の利用
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/564       (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI G01N 33/53 ZNAN
G01N 33/564 B
G01N 33/53 M
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
C12Q 1/68 A
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 21
出願番号 特願2013-511015 (P2013-511015)
出願日 平成24年4月18日(2012.4.18)
国際出願番号 PCT/JP2012/060426
国際公開番号 WO2012/144512
国際公開日 平成24年10月26日(2012.10.26)
優先権出願番号 2011095625
優先日 平成23年4月22日(2011.4.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年11月5日(2013.11.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】松田 文彦
【氏名】三森 経世
【氏名】大村 浩一郎
【氏名】寺尾 知可史
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
審査官 【審査官】草川 貴史
参考文献・文献 特開2010-190898(JP,A)
特開2003-512599(JP,A)
特開2007-517019(JP,A)
特開2001-139496(JP,A)
特開2003-079270(JP,A)
調査した分野 G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed/MEDLINE/CAplus/BIOSIS(STN)

特許請求の範囲 【請求項1】
被験者からの生体試料における、関節リウマチ罹患の検査のためのミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を同定する方法であって、ミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型が、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)SNPデータベースのrs2000811であり、該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型がrs9958028である前記方法
【請求項2】
rs2000811の一塩基多型の塩基が少なくとも1つのアレルにおいてTであるか、あるいはrs2000811の一塩基多型の遺伝子型がC/T又はT/Tである場合に、関節リウマチへの罹患あるいは罹患の可能性が高いことを検出する請求項記載の方法。
【請求項3】
被験者のミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を検出しうる核酸プローブ及び/又は核酸プライマーを含む、関節リウマチ罹患のリスクを判定するためのキットであって、ミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型が、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)SNPデータベースのrs2000811であり、該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型がrs9958028である前記キット
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチの新規遺伝因子としてのミエリン塩基性蛋白の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(以下、RAと記す)は症状として関節の疼痛・破壊・変形の他、間質性肺炎、強膜炎などを示す全身性疾患で、成人の慢性炎症性関節炎の最多の原因であり、全世界で0.5-1%の有病率を示す。発症には遺伝要因と環境要因が知られている(非特許文献1,2)。ヒト主要組織適合抗原であるHLAの多型は最も強いRAの遺伝因子であるが、全遺伝因子の3-5割を説明できるに過ぎない(非特許文献3)。これまで、主にSNPをマーカーとした全ゲノムにわたる網羅的な症例対照群における解析(GWAS)により様々な新規遺伝因子が同定されてきた(非特許文献4~21)。しかしながら、新規遺伝因子全てを合わせてもやはり遺伝因子のごく一部しか説明できず、また、人種差が非常に強く、欧米人のみのリスクやアジア人のみのリスクとなる遺伝子も多い(非特許文献22~26、12、17)。
【0003】
また、従来からELISA法によって、関節リウマチ患者血清中における自己抗体の検出が行われており、現在最もよく用いられているものは抗CCP抗体検出ELISAである。抗CCP抗体は関節リウマチ患者に対する感度・特異度ともに優れた自己抗体である(非特許文献27、28)が、特定の蛋白質に対する抗体ではなく、シトルリン化を受けた複数の蛋白質に対するものであり、また商業化されている抗CCP抗体は、抗原が明らかにされていない。さらに、抗CCP抗体陰性の関節リウマチ患者の診断における有用な他の自己抗体はこれまでほとんど知られていなかった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Firestein GS (2003) Evolving concepts of rheumatoid arthritis. Nature 423: 356-361.
【非特許文献2】MacGregor AJ, Snieder H, Rigby AS, Koskenvuo M, Kaprio J, et al. (2000) Characterizing the quantitative genetic contribution to rheumatoid arthritis using data from twins. Arthritis Rheum 43: 30-37.
【非特許文献3】Deighton CM, Walker DJ, Griffiths ID, Roberts DF (1989) The contribution of HLA to rheumatoid arthritis. Clin Genet 36: 178-182.
【非特許文献4】Begovich AB, Carlton VE, Honigberg LA, Schrodi SJ, Chokkalingam AP, et al. (2004) A missense single-nucleotide polymorphism in a gene encoding a protein tyrosine phosphatase (PTPN22) is associated with rheumatoid arthritis. Am J Hum Genet 75: 330-337.
【非特許文献5】Plenge RM, Seielstad M, Padyukov L, Lee AT, Remmers EF, et al. (2007) TRAF1-C5 as a risk locus for rheumatoid arthritis--a genomewide study. N Engl J Med 357: 1199-1209.
【非特許文献6】Remmers EF, Plenge RM, Lee AT, Graham RR, Hom G, et al. (2007) STAT4 and the risk of rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus. N Engl J Med 357: 977-986.
【非特許文献7】Raychaudhuri S, Remmers EF, Lee AT, Hackett R, Guiducci C, et al. (2008) Common variants at CD40 and other loci confer risk of rheumatoid arthritis. Nat Genet 40: 1216-1223.
【非特許文献8】Plenge RM, Cotsapas C, Davies L, Price AL, de Bakker PI, et al. (2007) Two independent alleles at 6q23 associated with risk of rheumatoid arthritis. Nat Genet 39: 1477-1482.
【非特許文献9】Thomson W, Barton A, Ke X, Eyre S, Hinks A, et al. (2007) Rheumatoid arthritis association at 6q23. Nat Genet 39: 1431-1433.
【非特許文献10】Raychaudhuri S, Thomson BP, Remmers EF, Eyre S, Hinks A, et al. (2009) Genetic variants at CD28, PRDM1 and CD2/CD58 are associated with rheumatoid arthritis risk. Nat Genet 41: 1313-1318.
【非特許文献11】Gregersen PK, Amos CI, Lee AT, Lu Y, Remmers EF, et al. (2009) REL, encoding a member of the NF-kappaB family of transcription factors, is a newly defined risk locus for rheumatoid arthritis. Nat Genet 41: 820-823.
【非特許文献12】Stahl EA, Raychaudhuri S, Remmers EF, Xie G, Eyre S, et al. (2010) Genome-wide association study meta-analysis identifies seven new rheumatoid arthritis risk loci. Nat Genet 42: 508-514.
【非特許文献13】Suzuki A, Yamada R, Chang X, Tokuhiro S, Sawada T, et al. (2003) Functional haplotypes of PADI4, encoding citrullinating enzyme peptidylarginine deiminase 4, are associated with rheumatoid arthritis. Nat Genet 34: 395-402.
【非特許文献14】Tokuhiro S, Yamada R, Chang X, Suzuki A, Kochi Y, et al. (2003) An intronic SNP in a RUNX1 binding site of SLC22A4, encoding an organic cation transporter, is associated with rheumatoid arthritis. Nat Genet 35: 341-348.
【非特許文献15】Kochi Y, Yamada R, Suzuki A, Harley JB, Shirasawa S, et al. (2005) A functional variant in FCRL3, encoding Fc receptor-like 3, is associated with rheumatoid arthritis and several autoimmunities. Nat Genet 37: 478-485.
【非特許文献16】Suzuki A, Yamada R, Kochi Y, Sawada T, Okada Y, et al. (2008) Functional SNPs in CD244 increase the risk of rheumatoid arthritis in a Japanese population. Nat Genet 40: 1224-1229.
【非特許文献17】Kochi Y, Okada Y, Suzuki A, Ikari K, Terao C, et al. (2010) A regulatory variant in CCR6 is associated with rheumatoid arthritis susceptibility. Nat Genet 42: 515-519.
【非特許文献18】Kobayashi S, Ikari K, Kaneko H, Kochi Y, Yamamoto K, et al. (2008) Association of STAT4 with susceptibility to rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus in the Japanese population. Arthritis Rheum 58: 1940-1946.
【非特許文献19】Shimane K, Kochi Y, Yamada R, Okada Y, Suzuki A, et al. (2009) A single nucleotide polymorphism in the IRF5 promoter region is associated with susceptibility to rheumatoid arthritis in the Japanese population. Ann Rheum Dis 68: 377-383.
【非特許文献20】(2007) Genome-wide association study of 14,000 cases of seven common diseases and 3,000 shared controls. Nature 447: 661-678.
【非特許文献21】Orozco G, Sanchez E, Gonzalez-Gay MA, Lopez-Nevot MA, Torres B, et al. (2005) Association of a functional single-nucleotide polymorphism of PTPN22, encoding lymphoid protein phosphatase, with rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 52: 219-224.
【非特許文献22】Mori M, Yamada R, Kobayashi K, Kawaida R, Yamamoto K (2005) Ethnic differences in allele frequency of autoimmune-disease-associated SNPs. J Hum Genet 50: 264-266.
【非特許文献23】Ikari K, Kuwahara M, Nakamura T, Momohara S, Hara M, et al. (2005) Association between PADI4 and rheumatoid arthritis: a replication study. Arthritis Rheum 52: 3054-3057.
【非特許文献24】Kang CP, Lee HS, Ju H, Cho H, Kang C, et al. (2006) A functional haplotype of the PADI4 gene associated with increased rheumatoid arthritis susceptibility in Koreans. Arthritis Rheum 54: 90-96.
【非特許文献25】Barton A, Bowes J, Eyre S, Spreckley K, Hinks A, et al. (2004) A functional haplotype of the PADI4 gene associated with rheumatoid arthritis in a Japanese population is not associated in a United Kingdom population. Arthritis Rheum 50: 1117-1121.
【非特許文献26】Caponi L, Petit-Teixeira E, Sebbag M, Bongiorni F, Moscato S, et al. (2005) A family based study shows no association between rheumatoid arthritis and the PADI4 gene in a white French population. Ann Rheum Dis 64: 587-593.
【非特許文献27】Schellekens GA, de Jong BA, van den Hoogen FH, et al: Citrulline is an essential constituent of antigenic determinants recognized by rheumatoid arthritis-specific autoantibodies. J. Clin. Invest. 101:273-281, 1998
【非特許文献28】Schellekens GA, Visser H, de Jong BA et al: The diagnostic properties of rheumatoid arthritis antibodies recognizing a cyclic citrullinated peptide. Arthritis Rheum. 43: 155-163, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日本人のRA遺伝因子はまだ数多くが未発見と考えられるため、本発明は、大規模日本人GWASを行い、新規遺伝因子を探索することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、抗CCP抗体陰性の関節リウマチ患者の診断における有用な他の自己抗体を見つけることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
RAは成人の慢性炎症性関節炎の最多の原因である全身性疾患である。これまでいくつかの遺伝学的因子がRAの危険因子として同定されてきたが、それらは想定される全体の遺伝学的因子のごく一部に過ぎない。我々は計225079の一塩基多型(SNP)をマーカーとして、日本人における大規模な症例対照研究を行い、RAにおける新規の遺伝学的危険因子の同定を試みた。症例対照研究はスクリーニング2セット、結果確認2セットからなり、それぞれの検体数はRAと健常人でスクリーニング658人vs934人と332人vs307人、結果確認が874人vs855人、1264人vs948人であった。その結果、我々は18番染色体長腕上のミエリン塩基性蛋白(MBP)遺伝子のイントロン2番におけるSNP(rs2000811)を新規RA危険因子として発見した。P値はメタアナリシスで2.7*10^-8、オッズ比は1.23(95%信頼区間1.14-1.32)であった。MBP遺伝子の発現はイントロン2番のSNPと相関していた。また、RAの炎症の首座である滑膜において、RA患者ではMBPタンパクが強く発現していることを見出した。ヒトの脳由来のMBPタンパクに対する血清中の自己抗体(抗MBP抗体)の力価をELISA法により検索した結果、RA患者群では健常人群、他の膠原病群(p値<0.001)に比し有意に高いことが示された。抗MBP抗体が認識しているタンパクを詳しく調べるため、組み換えMBPタンパクを作成し、試験管内でシトルリン化を行い、シトルリン化していない組み換えMBPタンパクとしているMBPタンパクを用いてELISA法により抗体価の相関を見た。その結果、ヒトの脳由来のMBPと反応する抗体は、シトルリン化MBPと強く相関することが分かった。結論として、我々は遺伝学的な方法と免疫学的な方法を組み合わせることにより、RAの新規遺伝因子としてミエリン塩基性蛋白を同定した。本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)被験者からの生体試料におけるミエリン塩基性蛋白に対する自己抗体を検出することを含む、関節リウマチの検査方法。
(2)ミエリン塩基性蛋白を含む、関節リウマチの検査キット。
(3)ミエリン塩基性蛋白に対する抗体を含む、関節リウマチ診断マーカー。
(4)被験者のミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を同定することを含む、関節リウマチ罹患のリスクを判定する方法。
(5)ミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型が、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)SNPデータベースのrs番号rs2000811である(4)記載の方法。
(6)rs2000811の一塩基多型の塩基が少なくとも1つのアレルにおいてTであるか、あるいはrs2000811の一塩基多型の遺伝子型がC/T又はT/Tであれば、関節リウマチへの罹患率が高いと判定する(5)記載の方法。
(7)被験者のミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を検出しうる核酸プローブ及び/又は核酸プライマーを含む、関節リウマチ罹患のリスクを判定するためのキット。
(8)ミエリン塩基性蛋白遺伝子を発現する細胞に被験物質を添加した後、ミエリン塩基性蛋白遺伝子又はその遺伝子産物の発現量を測定することを含む、関節リウマチの予防及び/又は治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、rs2000811とRAとの関連が明らかになった。
【0010】
また、本発明により、抗MBP抗体がRAのマーカーであることも示された。抗MBP抗体は特異度が高いだけでなく、これまで診断が難しかった抗CCP抗体やリウマチ因子陰性の患者でもある程度陽性に出るため、診断に有用である。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2011‐95625の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】染色体18q23領域における、MBP遺伝子領域の関連解析の結果rs470131とrs2717096との間のSNPにおける関連解析のp値を対数を用いて表した。矢印は遺伝子の向きを表す。赤い円はrs2000811の4セットの結果である。青い点は2セットの結果である。三角形は連鎖不平衡の結果を示している。
【図2】アレル特異的リアルタイムPCRによる、アレル特異的MBP転写MBP遺伝子から転写された直後のmRNA前駆物質の量を、rs2000811のアレル別に比較した。ヘテロの多形を持つ細胞から取り出したRNAを用いて解析を行った。それらの細胞のDNAを、両アレルを1:1に混合したものとして、対照においた。
【図3】モノクローナル抗MBP抗体を用いた、ヒト滑膜におけるMBPタンパクの免疫組織化学の結果。A)RA患者由来の滑膜は滑膜表層に沿って特にMBPタンパクの発現が見られた。B)変形性関節症の患者にはMBPタンパクの発現は見られなかった。C)RA患者滑膜のMBPタンパク発現は、浸潤したリンパ球による濾胞構造の周囲では弱かった。D)MBPタンパクは滑膜細胞の細胞膜に局在していた。
【図4】血中の抗MBP抗体量の測定。A)健常人、RA患者、他の膠原病患者間の比較。***はp値が0.001以下であることを示す。B)ヒトの脳由来のMBPタンパクに対する抗体価と、組み換えMBPタンパクに対する抗体価との相関。C) ヒトの脳由来のMBPタンパクに対する抗体価と、シトルリン化組み換えMBPタンパクに対する抗体価との相関。
【図5】実際のp値と予測されるp値とを比較するためのQQプロット。A)実際のp値をY軸、予測されるp値をX軸においた。B)p値をそれぞれ対数で示した。構造化の有無を調べるための手法(genomic control)では、構造化はほとんど認められなかった。
【図6】MBPを含む156kbの連鎖不平衡ブロック0.05-0.95のアレル頻度を持つSNPに関しHaploviewソフトウェアを用い連鎖不平衡の図を作成した。
【図7】MBPの転写におけるアレル間の相違EBウイルスで不死化したヒトBリンパ芽球様細胞をPSCから取得し、rs2000811のgenotypeごとにRNAを抽出しcDNAに逆転写した(CC型50人,TC型50人,TT型49人)。βグルクロニダーゼ(Hs99999908_m1, Applied Biosystems Inc., Foster City, CA)を内因性標準とし、MBP(Hs00921943-m1, Applied Biosystems Inc., Foster City, CA)の転写をリアルタイムPCRで測定した。ΔΔCT法を用い、転写量を計算し、Jonckheere-Terpstra法で解析を行った。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0013】
本発明は、被験者からの生体試料におけるミエリン塩基性蛋白に対する自己抗体を検出することを含む、関節リウマチの検査方法を提供する。

【0014】
本明細書において、「関節リウマチの検査」とは、被験者が関節リウマチに罹患する可能性が高いか低いかを判定するための検査、すでに被験者が関節リウマチに罹患している場合にはその確定診断を行うための検査が含まれる。

【0015】
被験者からの生体試料としては、血液(例えば、全血、血清、血漿、血漿交換外液など)、皮膚、口腔粘膜、手術により採取あるいは切除した組織または細胞、検査等の目的で採取された体液(唾液、リンパ液、気道粘膜、精液、汗、尿など)等である。生体試料としては、血清が好ましい。

【0016】
ミエリン塩基性蛋白(MIM:159430 OMIMデータベース)は169個のアミノ酸からなる分子量約18000のタンパクで、主に神経細胞のミエリン鞘を構成するタンパクであり、神経変性疾患である多発性硬化症(以下MS)患者の血中及び髄液中にMBPに対する自己抗体が存在すること、マウスに注射することによりMSと類似した症状を誘発することからMSとの関連が想定されている。一方でMS患者にはMBP遺伝子に変異は見つかっていない。一方で、MBP遺伝子からは多くの転写バリアントが転写され、それらが翻訳されたタンパクは大きくミエリン鞘を構成するMBPタンパクであるclassicMBPと、希突起神経膠細胞や末梢のリンパ球に発現するGolliMBPの二種類に分けられる。GolliMBPの機能は不明な点が多いが、細胞内のCa濃度の調節に関わり免疫系細胞の分化に関わっている可能性が示唆されている。

【0017】
本発明の検査方法においては、被験者からの生体試料におけるミエリン塩基性蛋白に対する自己抗体を検出する。

【0018】
ミエリン塩基性蛋白に対する自己抗体を検出するには、ELISA法、ウエスタンブロット法を用いるとよい。自己抗体を測定するために用いるミエリン塩基性蛋白は、ヒト由来であることが好ましく、ヒト脳由来であることがより好ましい。ミエリン塩基性蛋白は、生化学的手法を用いて生体由来の試料から抽出することができ、また、遺伝子組み換え技術により作製することができる。あるいはまた、市販のもの(recombinant human MBP (Genscript, Piscataway, NJ.)など)を入手することもできる。ミエリン塩基性蛋白は、シトルリン化されたものであっても、シトルリン化されていないものであってもよい。また、ミエリン塩基性蛋白のシトルリン化は、PADを用いて公知の方法により行うことができる(Lundberg K, Kinloch A, Fisher BA, Wegner N, Wait R, et al. (2008) Antibodies to citrullinated alpha-enolase peptide 1 are specific for rheumatoid arthritis and cross-react with bacterial enolase. Arthritis Rheum 58: 3009-3019.)。

【0019】
ミエリン塩基性蛋白に対する自己抗体濃度が、2.74AUの場合には、被験者がRAに罹患する可能性が高い、あるいはRAに罹患していると判定することができる。あるいは、ミエリン塩基性蛋白に対する自己抗体濃度が、2.16AU以上の場合には、結果が陽性であるとして、他の検査方法(例えば、リウマトイド因子(RF)検査、抗CCP抗体測定法(シトルリン化ペプチドを人工的に環状化した抗原を用いた自己抗体測定法)、臨床所見など)の結果と組み合わせて、RAの判定を行ってもよい。

【0020】
ミエリン塩基性蛋白に対する自己抗体は、関節リウマチ診断マーカーとして有用である。

【0021】
被験者は、RAへの罹患が疑われる患者であるが、RAの発病危険性が考えられるすべてのヒトを対象としてもよい。

【0022】
また、本発明は、ミエリン塩基性蛋白を含む、関節リウマチの検査キットを提供する。

【0023】
ミエリン塩基性蛋白は、ヒト由来であることが好ましく、ヒト脳由来であることがより好ましい。ミエリン塩基性蛋白は、生化学的手法を用いて生体由来の試料から抽出することができ、また、遺伝子組み換え技術により作製することができる。あるいはまた、市販のもの(recombinant human MBP (Genscript, Piscataway, NJ.)など)を入手することもできる。ミエリン塩基性蛋白は、シトルリン化されたものであっても、シトルリン化されていないものであってもよい。また、ミエリン塩基性蛋白のシトルリン化は、PADを用いて公知の方法により行うことができる(Lundberg K, Kinloch A, Fisher BA, Wegner N, Wait R, et al. (2008) Antibodies to citrullinated alpha-enolase peptide 1 are specific for rheumatoid arthritis and cross-react with bacterial enolase. Arthritis Rheum 58: 3009-3019.)。生化学的手法を用いて生体由来の試料から抽出したMBPタンパクあるいは組み換えMBPタンパクあるいはそれらをシトルリン化修飾したものをELISAプレートに結合させるとよい。

【0024】
本発明の検査キットは、さらに、酵素標識抗体(例えば、アルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ヤギ))、酵素基質液(例えば、BCIP/NBT)、反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、反応停止液、標準液、陽性コントロール、陰性コントロール、RAの判定基準や操作方法などの説明書などを含んでもよい。

【0025】
また、本発明は、被験者のミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を同定することを含む、関節リウマチ罹患のリスクを判定する方法を提供する。ミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型は、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)SNPデータベースのrs番号rs2000811であるとよい。rs2000811の一塩基多型の塩基が少なくとも1つのアレルにおいてTであるか、あるいはrs2000811の一塩基多型の遺伝子型がC/T又はT/Tであれば、関節リウマチへの罹患率が高いと判定することができる。

【0026】
rs2000811の多型部位の塩基は、配列番号1のヌクレオチド配列における1102番目の塩基(y=C/T)として表すことができる。配列番号1のヌクレオチド配列は、ヒト18番染色体上にあるMBP遺伝子の第二イントロンに存在する。

【0027】
rs2000811と連鎖不平衡にある多型は、rs2000811のLDブロック内にある多型であるとよい。

【0028】
SNP間のD'が大きければ連鎖不平衡にあると考えられている(Barrett JC, Fry B, Maller J, Daly MJ. Haploview: analysis and visualization of LD and haplotype maps. Bioinformatics. 2005;21(2):263-265.; Gabriel SB, Schaffner SF, Nguyen H, et al. The structure of haplotype blocks in the human genome. Science. 2002;296(5576):2225-2229.)。従って、rs2000811と連鎖不平衡にある多型は、例えば、rs2000811との間のD'が0.8より大きい多型である。

【0029】
LDブロックはHaploviewソフト(Barrett JC, Fry B, Maller J, Daly MJ. Haploview: analysis and visualization of LD and haplotype maps. Bioinformatics. 2005;21(2):263-265.)を用いてGabrielらの方法(Gabriel SB, Schaffner SF, Nguyen H, et al. The structure of haplotype blocks in the human genome. Science. 2002;296(5576):2225-2229.)で決定することができる。

【0030】
rs2000811のLDブロック内にある多型としては、rs9958028を例示することができる。rs9958028の一塩基多型の塩基が少なくとも1つのアレルにおいてGであるか、あるいはrs9958028の一塩基多型の遺伝子型がA/G又はG/Gであれば、関節リウマチへの罹患率が高いと判定することができる。

【0031】
rs9958028の多型部位の塩基は、配列番号2のヌクレオチド配列における501番目の塩基(r=A/G)として表すことができる。配列番号2のヌクレオチド配列は、ヒト18番染色体上にあるMBP遺伝子の第二イントロンに存在する。

【0032】
本明細書において、一塩基多型(SNP)は、NCBIのSNPデータベースであるdbSNPにおけるreference SNP ID番号であるrs番号で示す。また、塩基の位置はNCBIのゲノムデータベース、build36に基づく。

【0033】
同定するSNPは、rs2000811のみでもよいし、rs2000811と他のSNPとの組み合わせでもよい。他のSNPとしては、rs9958028を挙げることができるが、これらに限定されることはない。

【0034】
多型部位の塩基の同定(すなわち、塩基種の決定)は、公知の一塩基多型解析方法によって行うことができる。一塩基多型解析方法としては、ダイレクトシークエンス法、RFLP法、PCR-SSCP法、アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI-TOF/MS法、モレキュラー・ビーコン法、RCA法、UCAN法、DNAチップ又はDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法などなどを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。

【0035】
多型部位の塩基を同定するために、被験者の生体試料からゲノムDNAを抽出するとよい。生体試料は、例えば、被験者の血液(例えば、全血、血清、血漿、血漿交換外液など)、皮膚、口腔粘膜、手術により採取あるいは切除した組織または細胞、検査等の目的で採取された体液(唾液、リンパ液、気道粘膜、精液、汗、尿など)等である。生体試料としては、血漿が好ましい。市販のDNA抽出キットを用いて、生体試料からゲノムDNAを抽出することができる。次いで、必要に応じて、多型部位を含むDNAを単離する。該DNAの単離は、多型部位を含むDNAにハイブリダイズすることができるプライマーを用いて、ゲノムDNA、あるいはRNAを鋳型としたPCR等によって行うことができる。

【0036】
また、本発明は、被験者のミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を検出しうる核酸プローブ及び/又は核酸プライマーを含む、関節リウマチ罹患のリスクを判定するためのキットを提供する。

【0037】
被験者のミエリン塩基性蛋白遺伝子上に存在する塩基の一塩基多型又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型は、上述の通りである。

【0038】
本発明のキットに含まれるプライマー及び/又はプローブは、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドであるとよい。オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さは、通常15bp~100bpであり、好ましくは17bp~30bpである。プライマーは、上記多型部位を含むDNAの少なくとも一部を増幅しうるものであれば、特に制限されない。プライマーが増幅することができるDNAの長さは、通常、15~1000bp、好ましくは、20~500bp、より好ましくは20~200bpである。また、オリゴヌクレオチドをプローブとして用いる場合、その長さは、通常15bp~500bpであり、好ましくは30bp~500bpである。プローブは、上記多型部位を含むDNAとハイブリダイズしうるものであれば、特に制限されない。プローブがハイブリダイズできるDNAの長さは、通常、16~500bp、好ましくは、20~200bp、より好ましくは20~500bpである。当業者であれば、多型部位を含む周辺DNA領域についての塩基配列情報を基に、適宜、プライマー及びプローブをデザインすることができる。プライマー及び/又はプローブは標識しておいてもよい(例えば、放射性同位元素、蛍光色素など)。プローブは、基板などの固相に固定化されてもよい。

【0039】
本発明のキットは、さらに、ハイブリダイゼーション用試薬、プライマー及び/又はプローブの標識を検出するための薬剤、緩衝液、RA罹患のリスクの判定基準やキットの操作方法を記載した説明書、生化学的手法を用いて生体由来の試料から抽出したMBPタンパクあるいは組み換えMBPタンパクあるいはそれらをシトルリン化修飾したものを結合させたELISAプレートなどを含んでもよい。

【0040】
さらに、本発明は、ミエリン塩基性蛋白遺伝子を発現する細胞に被験物質を添加した後、ミエリン塩基性蛋白遺伝子又はその遺伝子産物の発現量を測定することを含む、関節リウマチの予防及び/又は治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法を提供する。

【0041】
ミエリン塩基性蛋白遺伝子を発現する細胞は、ミエリン塩基性蛋白遺伝子の発現がタンパク質レベル又は核酸レベルで観察されるものであれば、いかなる生物に由来するものであってもよく、ヒト、ブタ、サル、チンパンジー、イヌ、ウシ、ウサギ、ラット、マウスなどの哺乳動物などに由来するものを挙げることができるが、ヒト由来の細胞(例えば、神経細胞)を使用することが好ましい。

【0042】
被験物質は、いかなる物質であってもよく、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ホルモン、多糖、オリゴ糖、単糖、低分子化合物、核酸(DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド等)、脂質、上記以外の天然化合物、合成化合物、植物抽出物、植物抽出物の分画物、それらの混合物などを挙げることができる。

【0043】
ミエリン塩基性蛋白遺伝子又はその遺伝子産物の発現量の測定は、ミエリン塩基性蛋白遺伝子の転写産物の量や翻訳産物の活性を測定することにより行うことができる。

【0044】
転写産物の量は、試料中のRNAの逆転写によって得られるcDNAから、ミエリン塩基性蛋白遺伝子特異的配列を増幅するためのプライマーセットによる定量的PCR分析を行うことにより、測定することができる。ミエリン塩基性蛋白遺伝子に特異的なプローブによるノーザンブロットを用いてもよい。あるいは、DNAチップを用いることによって転写産物を測定してもよい。

【0045】
ミエリン塩基性蛋白遺伝子の翻訳産物の量及び/又は活性は、免疫アッセイ、酵素活性の測定、は結合アッセイなどを用いて検出されうる。これらのアッセイは、抗ミエリン塩基性蛋白抗体又は抗ミエリン塩基性蛋白抗体に結合する二次抗体のいずれかに結合する、酵素的、蛍光的、放射性、磁性、発光標識などを使用して、前記翻訳産物と抗ミエリン塩基性蛋白抗体との間の結合量を測定することにより行うことができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
〔実施例1〕
手法
4つの症例対照群を用い、2つをスクリーニングのためのGWAS、2つをスクリーニング結果の確認に用いた。それぞれの検体数はRAと健常人でスクリーニングが第一セット658人vs934人と第二セット332人vs307人、結果確認が第三セット874人vs855人、第四セット1264人vs948人であった(表2)。スクリーニングの第一セットの健常人934人はJSNPの公開データを用いた。検体は京都大学、道後温泉病院、東京女子医大、東京大学、国立病院機構相模原病院、愛知がんセンターの患者検体(血漿)およびPSCの細胞を用いた。患者は全例ACR分類基準を満たす。研究に当たってはそれぞれの研究機関の倫理委員会の承認を得た。
【実施例】
【0048】
関連解析:
GWASのチップはイルミナ社のインフィニウムチップを用いた。4つの異なるチップを用い(Human-Hap300, CNV370-Duo, HumanHap550, Human610-Quad)、チップ間共通の277420SNPに注目した。コール成功率が90%未満/他の検体と血縁関係にある/主成分分析で日本人クラスターから外れている/他のDNAの混入が疑われる検体を除外し、コール成功率が95%以上で、マイナーアレル頻度が5%以上のSNPを選別した。結果、検体数は第一セット643vs934、第二セット327vs297となり、マーカーは225079マーカーとなった。第一、二セットそれぞれでマーカーごとに関連解析を行いそれぞれのセットでp値が0.005を下回り、そして第一、二セットのメタ解析でp値が0.0001を下回るマーカーを選別した。日本人RAで関連が既知の領域は除き、複数のマーカーが同一の連鎖不平衡ブロックにある場合、もっともメタ解析のp値の小さいものを選別した。選別されたSNPに関し、第三、四セットで関連の確認を行った。
【実施例】
【0049】
MBP領域の塩基配列決定:
MBP領域の関連を見出したのち、健常人84人のDNAを用い、遺伝子のプロモーター領域とアミノ酸配列を決定するエクソン領域の配列を調べた。
【実施例】
【0050】
バイオインフォーマティックス:
14種の有胎盤哺乳類のDNA塩基配列を公開データベースより取得した。関連のあったSNPを含む領域に転写調節部位がないかを検索した。
【実施例】
【0051】
アレル特異的MBP転写の測定:アレル特異的な転写の測定は既知の方法に従って行った(たとえばSuzuki A, Yamada R, Kochi Y, Sawada T, Okada Y, et al. (2008) Functional SNPs in CD244 increase the risk of rheumatoid arthritis in a Japanese population. Nat Genet 40: 1224-1229.)
簡単には、PSCから取得したEBVで不死化したヒトBリンパ芽球様細胞の中でrs2000811に関しヘテロ型(TC型)の22の細胞に関しDNAとRNAを標準的な手法で抽出した。SNPタイピング用のリアルタイムPCRプローブを用い、mRNA前駆物質の量をアレル間で比較した。
【実施例】
【0052】
CC型とTT型の細胞から抽出したDNAを2:1, 3:2, 1:1, 2:3, 1:2, 1:3, 1:4, 1:6の割合で混合し、標準曲線を描き、RNAの量を計算した。
【実施例】
【0053】
免疫組織化学:京都大学医学部付属病院病理診断部及び整形外科において23人のRA患者と5人の対照患者から関節滑膜を取得した。組織をパラフィン包埋し、標準的な手法で3umの厚さに切りだした。組織片はAPSコートしたスライドグラスに接着させた。MBPの免疫組織化学は標準的なABC法で行った。
【実施例】
【0054】
切片はPBS緩衝液で100倍希釈したマウス抗MBPモノクローナル抗体と4度で一晩反応させ、さらにビオチン化したウマ抗マウスIgG抗体と40分、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンと室温で50分反応させた。
【実施例】
【0055】
発色反応は0.3mg/mlジアミノベンジンと0.003%過酸化水素を50mMpH7.6に調整したTris-HCl緩衝液に溶かした溶液を用いて行った。
【実施例】
【0056】
それぞれの切片はHE染色も行った。MBP発現の評価は二人のリウマチ医と一人の病理学者が盲検法で行い、Fisherの正確検定で解析を行った。
【実施例】
【0057】
ELISA法:
323例のRA患者血清と133例の健常人血清、および162例の他の膠原病疾患患者血清(SLE38例 シェーグレン症候群25例、強皮症25例、ベーチェット20例、混合性結合組織病20例、皮膚筋炎または多発筋炎19例、血管炎15例)を用い、ELISA法により抗MBP抗体の有無の検索を行った。抗原にはヒト脳由来のMBPタンパク(Sigma, St. Louis, MO)を用いた。また、組み換えヒトMBPタンパク(Genscript, Piscataway, NJ.)を作成し、ウサギ骨格PAD (Sigma, St. Louis, MO)によりシトルリン化修飾を行い(Lundberg K, Kinloch A, Fisher BA, Wegner N, Wait R, et al. (2008) Antibodies to citrullinated alpha-enolase peptide 1 are specific for rheumatoid arthritis and cross-react with bacterial enolase. Arthritis Rheum 58: 3009-3019.)、シトルリン化なしの組み換えMBPタンパクおよびシトルリン化組み換えMBPタンパクを用い、自己抗体の反応性を測定した。
【実施例】
【0058】
結果
関連解析:
4つの症例対照群で合計症例3128例、対照3044例であった(表2)。GWASの結果によるマーカーの選別により、スクリーニングはチップ間共通でアッセイが問題ないと判断された225079マーカーに関して関連解析を行った。平均コール成功率は第一セット99.5%と第二セット99.8%であった。検体の構造化によるp値の低下は見られなかった(λ=1.03, 図5)。第一、二セットのメタアナリシスの結果、これまで日本人RAで関連が既知のHLA(mhp=3.6x10-31) と PADI4 (mhp=3.0x10-5) の2領域が低いp値を示した。これは我々のデータの正しさを示す結果と考えられた(表1)。SNP選別基準により、10SNP5領域が残ったため、それぞれの領域でp値の最も低い5SNPが選別され、第三、四セットでタイピングした。5つの内rs2000811のみが第三セット(p値0.023)および第四セット(p値0.0041)で関連を再現された。4つのセット全ての合計ではp値4.0x10-8 、オッズ比は1.23 (95%信頼区間1.14-1.32)であり、メタ解析ではmhp=2.7x10-8 、オッズ比は1.23 (95% 信頼区間 1.14-1.32)であった。Rs2000811は18番染色体上にあるMBP遺伝子の第二イントロンにあった。第一、二セットのSNPタイピング結果でこの領域の連鎖不平衡を評価したところ、このSNPは218kbの領域に含まれる、2つの連鎖不平衡ブロックに挟まれた18kbの領域にあることが分かった (図1)。この218kbの領域にはMBPの他にLOC100129089という遺伝子があった。GWASのチップの他のSNPとrs2000811は強い連鎖不平衡の関係になかったことから、MBP遺伝子がRAと関連すると考えられた。しかし、rs2000811自体が原因でRAへの感受性が異なるのか、別の原因となる変異があってrs2000811はその変異と連鎖不平衡にある単なるマーカーなのかはわからない。よって、われわれはMBP遺伝子のプロモーター領域とアミノ酸をコードするエクソン領域のDNA塩基配列の決定を84人の健常人DNAを用いて行った。結果、66のSNPと3つの欠失の変異が見つかったが、どれもrs2000811と強い連鎖不平衡の関係にはなかった(図6)。
【実施例】
【0059】
MBP遺伝子の発現とrs2000811との関わり:
次に、rs2000811を含む配列が転写にかかわっていないかを調べた。22人健常者で、rs2000811の多形がヘテロ型である人々の不死化したリンパ芽球様細胞からDNAとRNAを抽出し、RNAをcDNAに逆転写した。DNAとcDNAを用いてアレル特異的転写の解析では、rs2000811のRAにかかわる多形がMBP遺伝子の発現上昇に関わっていることが示された(図2)。MBPには大きく分けてclassic MBPとGolli MBPの二種類の転写産物およびタンパクがある。rs2000811の多形別に合計149人の健常者のリンパ芽球様細胞から得たcDNAを用いた検討では、classicMBPの発現とrs2000811の多形との関連は見いだされなかったことから(図7)、rs2000811とGolliMBPの発現との関連が考えられた。
【実施例】
【0060】
データベースを用いた既知の転写調節部位の検索ではrs2000811を含む領域には既知の転写調節部位は見当たらなかった。また、この領域は他の有胎盤哺乳類間であまり保存されていないということが分かった。
【実施例】
【0061】
RA患者の滑膜におけるMBPタンパクの発現の検討:
RAにおける炎症は主に関節滑膜にみられる。我々は23人のRAと5人の変形性関節症など非RA患者の滑膜を入手し、抗MBP抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、MBPタンパクはRA患者の滑膜に高頻度に強く発現していることが分かった(図3)。
【実施例】
【0062】
RA患者における抗MBP抗体の測定:
MBP抗体は自己免疫性神経変性疾患である多発性硬化症において重要な役割を果たすことが知られている。我々は323人のRA患者と133人の健常人、162人の他の膠原病患者血清を用い、血清中の抗MBP抗体の測定を行った。抗MBP抗体価は健常人および他の膠原病患者群に比しRAで高かった(p<0.001,図4A)。なお、抗MBP抗体価とrs2000811の型とに関連は見られなかった。抗MBP抗体が認識している抗原を詳しく調べるため、組み換えMBPタンパクを作成し、それらをシトルリン化修飾を行って、シトルリン化修飾を行った組み換えMBPタンパクと行わなかった組み換えMBPタンパクを用いてELISA法で検討した。その結果、組み換えMBPタンパクとヒト脳由来のMBPとの間に相関はなく(r=-0.19, 図4B)、シトルリン化修飾した組み換えMBPタンパクを用いた場合には、自己抗体力価に強い相関が示された(r=0.88, 図4C)。すなわち、抗MBP抗体はシトルリン化組み換えMBPと強く反応したことから(図4B、C)、シトルリン化MBPを主に認識しているものと考えられた。【0063】
考察
今回、我々はGWASを元にした解析により、18番染色体上のMBPの第二イントロン上にあるSNPとRAとの関連を明らかにした。このSNPは比較的弱めの連鎖不平衡ブロックに挟まれていた。MBP領域の塩基配列の決定により、エクソンやプロモーター領域にはこのSNPと強い連鎖不平衡に関係にある変異はないということが分かった。MBPの遺伝子発現がこのSNPに関わっていることが分かったが、このSNPを含む配列には既知の転写調節因子の関連性は示せなかった。このことから、rs2000811そのものか、今回見つけられなかったrs2000811と連鎖不平衡にある遺伝子変異が原因でMBP遺伝子の発現が変化するのかは分からなかった。Rs2000811が挟まれる、2つの連鎖不平衡ブロックの間の18kbの領域の塩基配列を調べることにより、真の原因の変異が分かるかもしれない。これまでヨーロッパ人でこの領域が関わるという報告はない。RAの疾患感受性は人種により大きく異なるため、ヨーロッパ人では関連がない可能性もあるが、人種ごとに結果を確認することは疾患の基礎にある病態を理解するために重要である。MBPには神経に存在するclassic MBPと血球系にも存在するGolli-MBPがあり、rs2000811はGolli-MBPをコードする領域のイントロン2番にある。RAで神経症状を呈する例が少ないことから、疾患感受性はGolli-MBPが関わっているのかもしれない。
【実施例】
【0064】
我々は、さらにRA患者の滑膜でMBPタンパクが強く高頻度に発現していることを示した。MBPタンパクが滑膜細胞表面に発現していることは、抗MBP抗体が滑膜細胞をターゲットにして炎症を引き起こすことを示唆しているのかもしれない。
【実施例】
【0065】
我々は抗MBP抗体がRAのマーカーであることも示した。抗MBP抗体はシトルリン化MBPを認識しているものが多いようだが、そうでないものもあるようだ。SNPとの関連はなかったが、タンパク翻訳後の修飾にSNPが関わっているのかもしれない。我々の研究結果は、MBPの遺伝学的なRAとの関連にとどまらず、MBP遺伝子発現、MBPタンパクの発現、MBPに対する自己抗体の出現までを示した初めてのものである。
【実施例】
【0066】
【表1】
JP0005565784B2_000002t.gif
【実施例】
【0067】
【表2】
JP0005565784B2_000003t.gif
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、RAの診断への利用が可能である。また、本発明は、RAの予防及び/又は治療に有効な物質のスクリーニングに利用できる。
【配列表フリ-テキスト】
【0069】
<配列番号1>
配列番号1は、rs2000811の多型部位を1102番目(y= C/T)に含む1602塩基長の塩基配列を示す。
配列番号2は、rs9958028の多型部位を501番目(r= A/G)に含む1001塩基長の塩基配列を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6