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明細書 :細胞の膜蛋白質の標識方法、触媒化合物及び標識された細胞

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6454105号 (P6454105)
公開番号 特開2016-053485 (P2016-053485A)
登録日 平成30年12月21日(2018.12.21)
発行日 平成31年1月16日(2019.1.16)
公開日 平成28年4月14日(2016.4.14)
発明の名称または考案の名称 細胞の膜蛋白質の標識方法、触媒化合物及び標識された細胞
国際特許分類 G01N  33/48        (2006.01)
C07D 401/14        (2006.01)
FI G01N 33/48 P
C07D 401/14
請求項の数または発明の数 4
全頁数 16
出願番号 特願2014-178679 (P2014-178679)
出願日 平成26年9月3日(2014.9.3)
審査請求日 平成29年6月27日(2017.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】林 隆宏
【氏名】高岡 洋輔
【氏名】浜地 格
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】海野 佳子
参考文献・文献 Hangxiang Wang et al.,Chemical Cell-Surface Receptor Engineering Using Affinity-Guided, Multivalent Organocatalysts,J. Am. Chem. Soc.,2011年,133 (31),pp.12220-12228
Takahiro Hayashi et al.,Semisynthetic Lectin-4-Dimethylaminopyridine Conjugates for Labeling and Profiling Glycoproteins on Live Cell Surfaces,J. Am. Chem. Soc.,2013年,135 (33),pp.12252-12258
Yoichiro Koshi et al.,Target-Specific Chemical Acylation of Lectins by Ligand-Tethered DMAP Catalysts,J. Am. Chem. Soc.,2008年,130 (1),pp.245-251
調査した分野 G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(I)
【化1】
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(式中、Ab1-S-は、ジスルフィド結合に関与しない-SH基を有するシステイン残基を有するscFvまたはアフィボディ(Ab1-SH)からHが脱離した基を示す。L1は単結合又は2価の連結基を示す。Zは下記式(II)
【化2】
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で表される触媒部分(moiety)を少なくとも1つ含む基である)で表される触媒化合物と下記式(III)
Ar-X-CO-L2-Fl (III)
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基若しくはヘテロ芳香環基を示す。L2は単結合又は2価の連結基を示す。Flは標識基を示す。XはS又はOを示す。)
で表されるアシルドナー化合物を細胞に作用させる工程を含む、一般式(I)中のAb1が親和性を有する膜たんぱく質を-CO-L2-Fl基で標識する方法。
【請求項2】
Z基が下記式(IIIa)で示される基である請求項1に記載の方法。
【化3】
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【請求項3】
一般式(I)
【化4】
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(式中、Ab1-S-は、ジスルフィド結合に関与しない-SH基を有するシステイン残基を有するscFvまたはアフィボディ(Ab1-SH)からHが脱離した基を示す。Lは単結合又は2価の連結基を示す。Zは下記式(II)
【化5】
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で表される触媒部分(moiety)を少なくとも1つ含む基である)で表される触媒化合物。
【請求項4】
前記Lが、2価の連結基を示す、請求項3に記載の触媒化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の膜蛋白質の標識方法、触媒化合物及び標識された細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
標的タンパク質のリガンドとジメチルアミノピリジン(DMAP)からなる触媒部分を含む化合物をタンパク質に作用させてリガンド-タンパク質複合体を形成し、前記触媒の基質であるプローブ含有化合物を添加してプローブにより標的タンパク質を標識する触媒型ラベル化法が知られている(非特許文献1)。また、リガンドに代えて糖タンパク質の糖鎖を認識するレクチンを触媒部分と適当なリンカーを介して結合した化合物を用いて糖タンパク質を標識化する方法が知られている(非特許文献2)。
【0003】
これらの方法は、リガンド又は糖鎖を有する標的タンパク質には適用可能であるが、適当なリガンド又は糖鎖を持たないタンパク質を選択的に標識することはできない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Koshi and Hamachi et al. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 245
【非特許文献2】Hayashi and Hamachi et al. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 12252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、 生細胞上で標的となる膜タンパク質を選択的に標識することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、小分子リガンドやレクチンに代えてscFvまたはアフィボディを使用することで、これらscFv等が親和性を有するタンパク質(以下、これらscFv等と同等の親和性を有する抗体が結合するものも含めて標的タンパク質と記載する場合がある)を効率よく標識出来ることを見出した。抗体の代わりにscFvまたはアフィボディを用いることで標的タンパク質を効率よく標識出来ると言うことは意外なことであった。何故なら、これまで用いてきた小分子リガンドやレクチンの代わりに抗体を用いて同様な効果が得られるとは到底考えられなかったからである。
【0007】
つまり、抗体には多くの求核基、例えばリジン残基に由来するアミノ基が多数存在しているため、抗体に一般式(II)
【0008】
【化1】
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【0009】
で示される構造を有する、アシル化反応触媒活性を有する基を抗体に導入し、当該抗体を標的タンパク質と結合させた後に一般式(III)
Ar-X-CO-L-Fl (III)
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示す。Lは単結合又は2価の連結基を示す。Flは標識基を示す。XはS又はOを示す。)
で示されるアシルドナー化合物を接触させた場合、同アシルドナー化合物由来の-CO-L-Fl基、すなわち標識基は標的タンパク質の求核基と結合する前に抗体に存在する多くの求核基と先に結合してしまい、標的タンパク質そのものを効率よく標識することは出来なかったからである。そのため、抗体と同様の性質を有するscFvまたはアフィボディを抗体の代わりに用いても、抗体の時と同様に標的タンパク質を効率よく標識することは出来ないであろう、と考えられていた。
【0010】
ところが、抗体と同様に標的タンパク質に強い親和性を示すscFvまたはアフィボディを当該抗体の代わりに用いて実際に実験を行ってみると、標的タンパク質を効率よく標識出来ると言うことが確認できたのである。
【0011】
本発明は、以下の細胞の膜蛋白質の標識方法、触媒化合物及び標識された細胞を提供するものである。
項1. 一般式(I)
【0012】
【化2】
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【0013】
(式中、Ab-S-は、ジスルフィド結合に関与しない-SH基を有するシステイン残基を有するscFvまたはアフィボディ(Ab-SH)からHが脱離した基を示す。Lは単結合又は2価の連結基を示す。Zは下記式(II)
【0014】
【化3】
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【0015】
で表される触媒部分(moiety)を少なくとも1つ含む基である)で表される触媒化合物と下記式(III)
Ar-X-CO-L-Fl (III)
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基若しくはヘテロ芳香環基を示す。Lは単結合又は2価の連結基を示す。Flは標識基を示す。XはS又はOを示す。)
で表されるアシルドナー化合物を細胞に作用させる工程を含む、一般式(I)中のAbが親和性を有する膜たんぱく質を-CO-L-Fl基で標識する方法。
項2. Z基が下記式(IIIa)で示される基である項1に記載の方法。
【0016】
【化4】
JP0006454105B2_000005t.gif

【0017】
項3. 一般式(I)
【0018】
【化5】
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【0019】
(式中、Ab-S-は、ジスルフィド結合に関与しない-SH基を有するシステイン残基を有するscFvまたはアフィボディ(Ab-SH)からHが脱離した基を示す。Lは2価の連結基を示す。Zは下記式(II)
【0020】
【化6】
JP0006454105B2_000007t.gif

【0021】
で表される触媒部分(moiety)を少なくとも1つ含む基である)で表される触媒化合物。
項4. 細胞表面にある特定の膜タンパク質の有する、少なくとも1つの求核基が-CO-L-Fl基(ここで、Lは単結合又は2価の連結基を示す。Flは標識基を示す。)で標識され、当該膜タンパク質以外の膜タンパク質は標識されていない、細胞。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、標的タンパク質を選択的に認識する抗体にアシル基転移触媒である4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を連結した抗体を作製し、この抗体を用いて標的タンパク質に標識基をアシル基を介して共有結合させることができる。これにより、生細胞表層の任意の標的タンパク質の挙動を直接観察でき、かつ、挙動観察中に標識基が標的タンパク質から解離することはない。これにより、標的タンパク質の細胞系での局在変化や分解挙動の観察を行うことが可能になる。また、標的タンパク質の標識化アミノ酸を同定することで、抗原・抗体複合体の結晶作製及びその構造解析などの面倒な方法を用いる事なく抗体結合部位を推定することが可能になる。さらに、抗体医薬などのオフターゲットとなるようなタンパク質の同定のツールになると考えられる。
【0023】
標識が蛍光標識の場合、蛍光の変化は、ハイスループットな検出システムに利用できる。細胞表層タンパク質のうち受容体などは、リガンドの結合応答を蛍光の変化として可視化することが可能となる。また、アゴニストとアンタゴニストで蛍光応答に差異がある場合、アゴニストとアンタゴニストを蛍光変化として見分けることが可能である
また、標識基はFRET、BRETなどのエネルギー移動に関係する標識基を使用することができる。例えば、EGFR(標的蛋白質1)とHER2(標的蛋白質2)はどちらも細胞膜に存在し、EGFRとHER2の間でのヘテロ複合体を組んだ時に細胞内へとシグナルが伝わることが知られている。そこで、このEGFRとHER2をそれぞれ異なる蛍光色素などでラベル化できれば、ヘテロ複合体を組んだ時にFERTが生じるなどの応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】MALDI-TOF-MSによる化合物(I)の同定
【図1B】SDS-PAGEによる化合物(I)の同定
【図2】共焦点レーザー顕微鏡画像。(A)N87細胞上のAnti-HER2 scFv-P6-DMAPにより標識されたHER2。(B)A431 細胞上のAffibody-P6-DMAP により標識されたEGFR。
【図3A】ウエスタンブロッティングの結果。N87細胞上のanti-HER2 scFv-DMAPにより標識されたHER2。
【図3B】ウエスタンブロッティングの結果。HEK293T(Notch1)上のanti-Notch1 scFv-DMAPにより標識されたNotch1。
【図3C】ウエスタンブロッティングの結果。A431上のanti-EGFR Affibody-DMAPにより標識されたEGFR。
【図4】HER2の寿命解析(A)およびインターナリゼーション観察(B)
【図5】HER2の修飾アミノ酸同定。点線は結晶構造及び化合物IのL1構造から予想した“反応半径”。緑と橙の球はラベル化されたアミノ酸を示し、それぞれ反応半径の外側及び内側に存在する。
【図6】EGFRの修飾アミノ酸同定(A-C)。点線は修飾アミノ酸および化合物Iの反応半径(<40Å)から予想されるAffibody結合サイト。予想されるAffibody結合サイトが重複するエリア(D)
【発明を実施するための形態】
【0025】
一般式(I)の触媒化合物は、Ab1で表されるscFv又はアフィボディの部分で標的タンパク質に結合し、Zで表される触媒部分(DMAPを含む部分)でアシルドナー化合物と標的タンパク質の求核基とのアシル化反応を触媒し、標識基(Fl)を含むアシル基(-CO-L-Fl)を標的タンパク質に導入することができる(図1)。

【0026】
標識基(Fl)としては、Alexa Fluor dyes(Alexa-350、Alexa-430、Alexa-488、Alexa-532、Alexa-546、Alexa-555、Alexa-568、Alexa-594、Alexa-633、Alexa-647、Alexa-660、Alexa-680、Alexa-750)、 ATTO dyes(ATTO425、ATTO488、ATTO520、ATTO532、ATTO550、ATTO565、ATTO590、ATTO647、ATTO655、ATTO680)、BODIPY dyes(BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、 BODIPY TR、BODIPY 493/503、 BODIPY 530/550、 BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、 BODIPY 650/665)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、5-若しくは6-カルボキシフルオレセイン、Oregon green、PE、CypHer5E、Rhordamine B、Rhordamine 6G、Rhordamine 123、Texas Red、APC、インドシアニングリーン、ユウロピウムやサマリウムなどのランタノイド錯体、Q-dotなどを挙げることができ、好ましくはAlexa-488、Oregon green、5-若しくは6-カルボキシフルオレセイン、Alexa-546、Alexa-568、ATTO655が挙げられる。

【0027】
標識の対象となる膜タンパク質としては、例えば上皮増殖因子受容体(EGFR、HER2、HER3、HER4)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFRα、PDGFRβ)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR1-4)、幹細胞因子受容体、G蛋白質共役型受容体、グルタミン酸受容体(AMPA受容体、カイニン酸受容体、NMDA受容体)、イオンチャネル(ナトリウムチャネル、カリウムチャネル、カルシウムチャネル)、アクアポリン、ABC輸送体、インテグリン、カドヘリン、レクチン(ガレクチン、セレクチン、siglec)、CD分類(CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD44、CD45、CD66a-d、CD67、CD74、CD79a、CD80、 CD138)、HLA-DR、 TAG-72、葉酸受容体などが挙げられる。

【0028】
Z基は、下記の部分(moiety)(III)

【0029】
【化7】
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【0030】
を少なくとも1つ含む基であり、具体的には以下の基(IIIa)

【0031】
【化8】
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【0032】
が挙げられる。

【0033】
本発明の一般式(I)、(II)の化合物において、L1、L2は同一であっても異なっていてもよく、2価の連結基が挙げられる。2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-O-CO-、-NHCO-、-CONH-、-(CH)m1-(m1は1~6の整数を示す)、アリーレン基(特に、オルト、メタ、パラなどのフェニレン)、ヘテロアリーレン基、-NH-、-(CHCHO)m2-(m2は1~10の整数を示す。)、-(CHCH(CH)O)m2-(m2は1~10の整数を示す。)などが挙げられ、これらは1種のみでもよく、同一又は異なる2種以上を組み合わせて1つの二価の連結基を構成してもよい。

【0034】
アリール基としては、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味し、具体例としては、フェニル、ナフチル、トルイル、キシリル、フルオレニル、アントリル、ビフェニリル、テトラヒドロナフチル、クロマニル、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニル、インダニル及びフェナントリルが挙げられる。アリール基の置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、ハロゲン原子、OH、CN、NO、COOH、NH、アリール、アラルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、モノアルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、モノアルキル置換スルファモイル、ジアルキル置換スルファモイル、アルキルスルホニルアミノが挙げられる。

【0035】
ヘテロ芳香環基としては、ピリジル、ピラジル、ピリミジニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、イソキノリルなどが挙げられる。

【0036】
アリール基とヘテロ芳香族基は置換されていてもよい。アリール基とヘテロ芳香族基が有していてもよい置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、ハロゲン原子、OH、CN、NO2、COOH、NH2、アリール、アラルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、モノアルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、モノアルキル置換スルファモイル、ジアルキル置換スルファモイル、アルキルスルホニルアミノが挙げられる。アリール基、ヘテロ芳香族基の置換基の数は、0~5個、好ましくは0~3個、より好ましくは0~2個である。

【0037】
アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどの直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルキルが挙げられる。

【0038】
シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどのC3-10シクロアルキルが挙げられる。環の一部がヘテロ元素で置換されていたり、置換基を持っていてもよい。

【0039】
アルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ポリエチレングリコール誘導体などの直鎖状又は分枝鎖状のC1-18アルコシキが挙げられる。

【0040】
アルケニルとしては、ビニル、1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、イソプロペニル、1-、2-若しくは3-ブテニル、2-、3-若しくは4-ペンテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、5-ヘキセニル、1-シクロペンテニル、1-シクロヘキセニル、3-メチル-3-ブテニルなどの直鎖状、分枝鎖状又は環状のC2-6アルケニルが挙げられる。

【0041】
ハロゲン原子としては、F,Cl,Br,Iが挙げられる。

【0042】
アラルキルとしては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなどが挙げられる。

【0043】
モノアルキルアミノとしては、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、イソペンチルアミノ、ヘキシルアミノが挙げられる。

【0044】
ジアルキルアミノとしては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジn-プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジn-ブチルアミノ、ジイソブチルアミノ、ジtert-ブチルアミノ、ジn-ペンチルアミノ、ジイソペンチルアミノ、ジヘキシルアミノが挙げられる。

【0045】
アシルアミノとしては、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチリルアミノ、イソブチリルアミノ、バレリルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。

【0046】
アシルとしては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ベンゾイルが挙げられる。

【0047】
アルキルカルボニルオキシの具体例としては、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、n-プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、n-ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、n-ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシが挙げられる。

【0048】
アリールカルボニルオキシの具体例としては、フェニルカルボニルオキシ、ナフチルカルボニルオキシ、フルオレニルカルボニルオキシ、アントリルカルボニルオキシ、ビフェニリルカルボニルオキシ、テトラヒドロナフチルカルボニルオキシ、クロマニルカルボニルオキシ、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルカルボニルオキシ、インダニルカルボニルオキシ及びフェナントリルカルボニルオキシが挙げられる。

【0049】
アルコキシカルボニルとしては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル及びヘキシルオキシカルボニルなどのC1-6アルコキシカルボニルが挙げられる。

【0050】
アルコキシカルボニルアミノとしては、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、イソプロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、イソブトキシカルボニルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ、ペンチルオキシカルボニルアミノ、イソペンチルオキシカルボニルアミノ及びヘキシルオキシカルボニルアミノなどのC1-6アルコキシカルボニルアミノが挙げられる。

【0051】
フルオロアルキルとしては、モノフルオロメチル、ジフルオロメチルが挙げられる。

【0052】
パーフルオロアルキルとしては、C2n+1(nは1~6の整数)で表される直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルが挙げられる。

【0053】
モノアルキルカルバモイルとしては、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n-プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n-ブチルカルバモイル、イソブチルカルバモイル、tert-ブチルカルバモイル、n-ペンチルカルバモイル、イソペンチルカルバモイル、ヘキシルカルバモイルが挙げられる。

【0054】
ジアルキルカルバモイルとしては、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジn-プロピルカルバモイル、ジイソプロピルカルバモイル、ジn-ブチルカルバモイル、ジイソブチルカルバモイル、ジtert-ブチルカルバモイル、ジn-ペンチルカルバモイル、ジイソペンチルカルバモイル、ジヘキシルカルバモイルが挙げられる。

【0055】
モノアルキル置換スルファモイルとしては、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル、n-プロピルスルファモイル、イソプロピルスルファモイル、n-ブチルスルファモイル、イソブチルスルファモイル、tert-ブチルスルファモイル、n-ペンチルスルファモイル、イソペンチルスルファモイル、ヘキシルスルファモイルが挙げられる。

【0056】
ジアルキル置換スルファモイルとしては、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジn-プロピルスルファモイル、ジイソプロピルスルファモイル、ジn-ブチルスルファモイル、ジイソブチルスルファモイル、ジtert-ブチルスルファモイル、ジn-ペンチルスルファモイル、ジイソペンチルスルファモイル、ジヘキシルスルファモイルが挙げられる。

【0057】
アルキルスルホニルアミノとしては、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、n-プロピルスルホニルアミノ、イソプロピルスルホニルアミノ、n-ブチルスルホニルアミノ、イソブチルスルホニルアミノ、tert-ブチルスルホニルアミノ、n-ペンチルスルホニルアミノ、イソペンチルスルホニルアミノ、ヘキシルスルホニルアミノが挙げられる。

【0058】
アリーレンとしては、フェニレン、ナフチレン、トルイレン、キシリレン、フルオレニレン、ビフェニレン、テトラヒドロナフチレン、インダニレン及びフェナントリレンが挙げられる。

【0059】
ヘテロアリーレンとしては、ピリジレン、ピラジレン、ピリミジレン、ピリダジレン、オキサゾリレン、チアゾリレン、イソオキサゾリレン、イソチアゾリレン、インドリレン、キノリレン、イソキノリレン、テトラヒドロキノリレン、テトラヒドロイソキノリレン、ベンゾチアゾリレン、ベンゾオキサゾリレン、ベンゾイソオキサゾリレン、ベンゾイミダゾリレン、クロメニレン、イソインドリレン、シンノリレンなどが挙げられる。

【0060】
本発明の化合物(I)は、以下のスキーム1に従い合成することができる。

【0061】
【化9】
JP0006454105B2_000010t.gif

【0062】
(式中、Ab、L、Zは前記に定義されるとおりである。)
反応は、化合物(1)1モルに対し、化合物(2)を1モル程度使用し、中性バッファー中で4℃若しくは室温で15分~1時間反応させることにより進行する。バッファーとしては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
【実施例】
【0064】
なお、抗EGFR Affibodyは、スウェーデンのaffibody AB社から購入した。抗HER2 scFvの発現プラスミドは株式会社キヤノンから入手した。抗Notch1 scFvの発現プラスミドは英国ケンブリッジ大学McCafferty教授から入手した。
【実施例】
【0065】
実施例1
(A)Reactive抗体の調製
N-末端にシステイン点変異導入した抗HER2若しくは抗Notch1 scFvを発現・精製し、下記の1~3のいずれかの化合物との反応に用いた。Affibodyは購入品をそのまま用いた。
【実施例】
【0066】
【化10】
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【実施例】
【0067】
抗HER2又は抗Notch1 scFvは精製したものをそのまま、 抗EGFR AffibodyはDTTで還元処理し余剰の還元剤を除いた後に化合物(P6,P2又はP0)との反応に用いた。scFv若しくはAffibody1モルに対し、化合物(P6,P2又はP0)を1.2~1.5モル加え、PBS中で30分間反応を行った。サイズ排除クロマトグラフィーにより余剰の化合物(P6,P2又はP0)を除き、本発明の化合物(I)、すなわち抗HER2 scFv-DMAP (scfv-P0-DMAP, scFv-P2-DMAP, scFv-P6-DMAP)、 抗Notch1 scFv-DMAP (scFv-P6-DMAP)、抗EGFR Affibody-DMAP (Affibody-P0-DMAP, Affibody-P6-DMAP)を精製した。得られた化合物(I)はMALDI-TOF-MSやSDS-PAGEによって同定された(図1A:MSチャート及び図2B:SDS-PAGEの写真)
【実施例】
【0068】
(B)標的たんぱく質の細胞表層ラベリング
細胞実験にはHER2若しくはNotch1発現プラスミドを用いてトランスフェクションしたヒト胎児腎細胞由来HEK293Tやヒト胃癌細胞由来N87、ヒト上皮癌細胞由来A431を用いた。培養ディッシュに播種した細胞をHEPES緩衝生理食塩水(HBS)で2回洗浄し、同バッファーに溶解した化合物(I)及びL=-(CH)-、X=S、Fl=5-カルボキシフルオレセインの化合物(III)を添加し、4℃で90分間反応を行った。反応後、PBS(-)などのバッファーで細胞を6回洗浄した。まず共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞を観察したところ、細胞膜から強い蛍光が観察された(図2:共焦点レーザー顕微鏡画像)。これらは、化合物(III)のみを添加した場合には観察されなかったことから、触媒となる(I)の存在下のみで反応が進行する事が示された。次に、上記と同様に反応を行った細胞を用いてウエスタンブロッティングを行った。抗フルオレセイン抗体を用いて検出を行ったところ、標的タンパク質分子量付近(HER2:~180 kDa, Notch1:~300 kDa, EGFR:~160 kDa,)に強いバンドが検出された(図3A~図3C:ウエスタンプロッティングの結果)。これらの結果から、動物細胞表層おいて標的蛋白質を選択的に蛍光標識出来る事が示された。
【実施例】
【0069】
(C)細胞表層蛋白質の寿命解析
以下にHER2を選択的に標識したN87細胞におけるHER2のダイナミクス及び寿命解析の実施例をまとめた。上記のように標識したN87細胞を培地中、37℃でインキュベートし、標識化HER2(FL-HER2)に由来するバンド強度の経時変化をウエスタンブロッティングにより定量した。するとバンドの減少が確認され、その半減期は9.4時間である事がわかった(図4A:HER2の寿命解析)。一方、この間HER2の総量は変化しなかった事から、HER2の生合成がその分解と同等の速度で行われている事がわかった。しかし、Geldanamycin(GA)存在下では、標識化HER2に由来するバンドは素早く減少し、その半減期は1.9時間程度であった。また、HER2の総量の減少も見られた(t1/2 = 2.8時間)。これらの結果から、GA添加によりHER2の分解が加速され、HER2の生合成が追いつかなくなっていることがわかった。共焦点レーザー顕微鏡を用いて上記と同様の細胞を観察したところ、 標識化HER2の比較的遅いインターナリゼーション及びGA添加による速いインターナリゼーションを確認した(図4B:インターナリゼーション観察)。以上の結果から、本手法を用いることで細胞表層HER2の寿命測定及びダイナミクス解析やこれらの薬剤添加による影響を観察出来る事が示された。
【実施例】
【0070】
(D)ラベル化部位解析
上記のように標識したHER2の修飾アミノ酸同定を行った。標識したHER2のみを回収する為に細胞を回収・破砕し、抗フルオレセイン抗体を用いて免疫沈降を行った。免疫沈降産物をSDS-PAGEにより分離し、銀染色を行い、標識したHER2に相当するバンドを切り出した。切り出したゲル片を還元アルキル化及び酵素消化により標識したHER2をペプチド断片化し、LC-MS/MS解析を行った。すると全5つのアミノ酸の修飾が確認され、化合物(I)のL1の構造によりラベル化部位が異なる事がわかった(図5:HER2の修飾アミノ酸同定)。つまり、L1が短い場合(L1=Pro0, Pro2)はAb1近傍のアミノ酸が、L1が長い場合(L1=Pro6)はAb1から比較的離れたアミノ酸が修飾されていた。これらの結果から、修飾されたアミノ酸の場所及びL1の構造をもとにAb1と標的たんぱく質の相互作用部位を推測出来る事が示された。また、いくつかのラベル化部位がHER2/scFvの結晶構造及びL1の構造から予測された“反応半径”よりも離れたところに検出されたことから、結晶構造からは予想出来なかった細胞表層におけるHER2の揺らぎ構造を捉える事が出来た(図5)。
【実施例】
【0071】
次に抗EGFR Affibodyの結合部位をEGFR上の修飾アミノ酸をもとに予測した。検出された各修飾アミノ酸から“反応半径”を描き、これらのエリアが重なった部分が、 Affibodyの結合部位である事が予想された(図6:EGFRの修飾アミノ酸同定と抗EGFR Affibodyの結合部位の予想)。このように、本手法を用いることで生きた細胞表層におけるタンパク質間相互作用部位の推測が可能である事が示された。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3A】
3
【図3B】
4
【図3C】
5
【図4】
6
【図5】
7
【図6】
8