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明細書 :無線通信装置及び無線通信方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6146866号 (P6146866)
公開番号 特開2015-167288 (P2015-167288A)
登録日 平成29年5月26日(2017.5.26)
発行日 平成29年6月14日(2017.6.14)
公開日 平成27年9月24日(2015.9.24)
発明の名称または考案の名称 無線通信装置及び無線通信方法
国際特許分類 H04W  74/08        (2009.01)
H04W  84/12        (2009.01)
H04W  52/18        (2009.01)
H04B   1/04        (2006.01)
FI H04W 74/08
H04W 84/12
H04W 52/18
H04B 1/04 E
請求項の数または発明の数 8
全頁数 19
出願番号 特願2014-040878 (P2014-040878)
出願日 平成26年3月3日(2014.3.3)
審査請求日 平成28年1月13日(2016.1.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】工藤 理一
【氏名】石原 浩一
【氏名】アベーセーカラ ヒランタシティラ
【氏名】溝口 匡人
【氏名】山本 高至
【氏名】塩谷 郁弥
個別代理人の代理人 【識別番号】110001634、【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
審査官 【審査官】齋藤 浩兵
参考文献・文献 国際公開第2006/085365(WO,A1)
特開2004-015655(JP,A)
Measurement-Driven Guidelines for 802.11 WLAN Design,IEEE/ACM Transactions on Networking Vol:18 Issue:3,2010年 6月,URL,http://ieeexplore.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=5337940
Interference Mitigation Through Power Control in High Density 802.11 WLANs,IEEE INFOCOM 2007 - 26th IEEE International Conference on Computer Communications,2007年 5月29日,URL,http://ieeexplore.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=4215651
Attenuators enable inversely proportional transmission power and carrier sense threshold setting in WLANs,IEEE:Personal, Indoor, and Mobile Radio Communication(PIMRC),2014年 9月 5日,URL,http://ieeexplore.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7136310
調査した分野 H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 1/04
IEEE Xplore
特許請求の範囲 【請求項1】
ランダムアクセスを行う無線通信装置であって、
ンテナへ出力する送信信号に任意の減衰を与え、前記アンテナから入力された受信信号に前記送信信号と同じ量の減衰を与える信号減衰部と、
前記信号減衰部からの受信信号の受信信号レベルを検出する受信信号レベル検出部と、
前記検出された受信信号レベルから送信可能な前記信号減衰部の減衰量を決定する信号減衰量決定部と、
通信相手への送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記信号減衰部で信号を減衰させて送信する際の変調方式符号化率からなる変調モードを決定する変調モード決定部と、
前記信号減衰部に決定された前記減衰量を設定する信号減衰量設定部と、
前記変調モードに従い変調、符号化を行い、前記信号減衰部を介して前記送信信号の送信を行う無線信号送信部と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記受信信号レベル検出部で検出した信号の頻度情報を記憶する受信レベル頻度記憶部と、
前記生成された送信信号に減衰量を考慮して決定された変調モードと記憶された前記頻度情報からスループット評価値を計算し、決定された前記減衰量を用いて通信を行うか否かを判定する減衰利用判定部とをさらに備え、
通信を行うと判定した場合に、前記信号減衰量設定部は、前記信号減衰部に決定された減衰量を設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
受信した信号を送信した無線通信装置のIDまたは受信した信号の送信先となる無線通信装置のID、またはその両方のIDを取得するID取得部と、
取得した前記IDと対応する信号レベルをID受信レベル情報として記憶する受信レベルID記憶部と、
記憶された前記ID受信レベル情報から、前記信号減衰部で用いる減衰量を前記IDに対し決定する信号減衰量決定部と、
前記生成された送信信号に前記IDに対し決定されている減衰量を考慮して決定された変調モードのスループット評価値により、決定された前記減衰量を用いて前記送信信号の通信を行うか否かを判定する減衰利用判定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
受信した信号を送信した無線通信装置のIDまたは受信した信号の送信先となる無線通信装置のID、またはその両方のIDを取得するID取得部と、
取得した前記IDと対応する信号レベルおよび頻度情報をID受信レベル情報として記憶する受信レベルID記憶部と、
記憶された前記ID受信レベル情報から、前記信号減衰部で用いる減衰量を前記IDに対し決定する信号減衰量決定部と、
前記変調モードと記憶された前記頻度情報からスループット評価値を計算し、決定された前記減衰量を用いて通信を行うか否かを判定する減衰利用判定部とをさらに備え、
前記変調モード決定部は、前記IDに対し決定されている前記減衰量を用いて信号減衰部で信号を減衰させて送信する際の変調方式符号化率からなる変調モードを決定し、
通信を行うと判定した場合に、前記信号減衰量設定部は、前記信号減衰部に決定された前記減衰量を設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
受信中の信号の送信元となる無線通信装置のIDと受信中の信号の送信先となる無線端末IDを取得するID取得部と、
送信元となる前記無線通信装置のIDと対応する信号レベルをID受信レベル情報として記憶する受信レベルID記憶部と、
前記ID受信レベル情報で記憶された前記IDごとに減衰量を決定する信号減衰量決定部とさらに備え、
前記変調モード決定部は、前記受信中の信号の送信元となる無線通信端末のIDに対し決定されている減衰量と前記受信中の信号の送信先となる無線通信端末のIDに対し決定されている減衰量のうち大きい方の減衰量を用いて信号減衰部で信号を減衰させて送信する際の変調方式符号化率からなる変調モードを決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
特定IDに対し、減衰量を用いた通信の禁止、または受信レベルから決定される減衰量にさらなる付加減衰量を加えるペナルティを科す特定ID指定部をさらに備え、
前記受信レベルID記憶部は、特定IDから指定されたIDに対し、ID受信レベル情報で減衰量を用いた通信の禁止または付加減衰量の付与を記憶することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
ランダムアクセスを行う無線通信装置が行う無線通信方法であって、
ンテナへ出力する送信信号に任意の減衰を与え、前記アンテナから入力された受信信号に前記送信信号と同じ量の減衰を与える信号減衰ステップと、
前記信号減衰ステップによって前記減衰が与えられた受信信号の受信信号レベルを検出する受信信号レベル検出ステップと、
前記検出された受信信号レベルから前記信号減衰ステップにおける前記減衰量を決定する信号減衰量決定ステップと、
通信相手となる無線通信装置への送信信号を生成する送信信号生成ステップと、
前記信号減衰ステップにより前記送信信号の送信電力を減衰させて送信する際の変調モードを決定する変調モード決定ステップと、
前記変調モードに従い前記信号減衰ステップにより前記減衰量を与えた信号の送信を行う無線信号送信ステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
前記受信信号レベル検出ステップで検出した信号の頻度情報を記憶する受信レベル頻度記憶ステップと、
前記信号減衰量決定ステップにより決定された減衰量を考慮して決定された変調モードと記憶された前記受信レベル頻度情報とから計算したスループット評価値を参照して減衰量を用いて通信を行うか否かを判定する減衰利用判定ステップとをさらに有し、
前記減衰量を用いると判定した場合に、検出された前記受信信号レベルに対し決定された前記減衰量を用いて送信を行うことを特徴とする請求項7に記載の無線通信方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANシステムとその他の無線システムが共存するヘテロジニアスネットワークシステムに用いる無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信に求められるトラヒック量は年々増加しており、無線区間全体でのスループットを増加させることが求められている。無線LANの標準化規格IEEE802.11では、無線端末が密集しているような環境でもスループットを向上することを目指し、HEW(High efficent wireless LAN)SG(スタディグループ)を立ち上げ、標準化を目指している。このような中で、無線LANシステムにおいて前提条件であるCSMA/CAにおいて、CCA(Clear Channel Assessment)レベルを制御することが新たに提案されている。
【0003】
無線LAN端末はCCAレベル以下の受信信号であれば、送信を行えるため、CCAを大きく設定することで、送信権の取得率を向上することができる。しかしながら、その一方で、送信権の取得率を向上するために各端末が勝手にCCAレベルを高く設定すると全ての端末が自由に送信を開始し、干渉の増大によりシステムスループットは低下する。このような問題によりシステムスループットが低下しないように非特許文献1ではCCAを高くすると同時に送信電力を下げるように制御を行うことを想定している。しかしながら、個別の無線LAN端末が自己最適化を図ろうとすれば、CCAレベルを高くすることを優先してしまうリスクがある。
【0004】
図12は、従来の無線LANにおける無線端末2の構成を示すブロック図である。図12に示す無線端末2は、アンテナ10、無線システム信号送受信回路12、送信変調回路13、受信復号回路14、受信レベル取得回路16及び情報信号入出力回路17を備える。信号の受信を行う際に、無線端末2は、アンテナ10を介して、無線信号を無線システム信号送受信回路12において受信する。無線システム信号送受信回路12は受信信号に同期を行いアナログ・デジタル変換を行い、得られたデジタル信号を受信復号回路14へ出力するとともに、受信信号の受信レベルについて受信レベル取得回路16へ出力する。
【0005】
受信レベル取得回路16は、入力された受信レベルが予め定められたCCAレベルより高ければ、情報信号入出力回路17へ信号検出を通知する。また、受信レベル取得回路16は入力された受信レベルが予め定められたCCAレベルより低くなった際には、信号検出状態をキャンセルすることを情報信号入出力回路17へ通知する。考慮するCCAレベルは受信信号は未知のシステムである場合と、無線端末2と同種の無線システムである場合で異なる値を用いることができる。
【0006】
受信復号回路14は無線システム信号送受信回路12から入力されたデジタル信号に対し、復号を行い、得られた信号が自無線端末2宛ての信号であれば、得られたデータビットを情報信号入出力回路17へ出力する。受信復号回路14は、復号されたデータビットが自無線端末宛てでなければ、復号を行わないこともできる。受信復号回路14は、復号したビットが誤りなく取得されたと判定された場合、無線システム信号送受信回路12へ正常受信を通知する。無線システム信号送受信回路12は、正常受信が入力されると、正常受信を示すACK(Acknowledge)信号を生成し、送信に適したアナログ信号に変換し、搬送波周波数にアップコンバートした上で、アンテナ10を介して送信する。
【0007】
情報信号入出力回路17に他の無線端末宛ての送信信号が入力された場合、無線端末2が信号検出状態であるか判定し、信号検出状態であれば、信号検出状態が受信レベル取得回路16からキャンセルされるまで待機する。信号検出状態でない、または受信レベル取得回路16から信号検出状態をキャンセルされると、CSMA/CAのルールに従いランダム時間待機した後、データビットを送信変調回路13へ出力する。送信変調回路13は、入力されたデータビットに変調を行い、生成された送信信号を無線システム信号送受信回路12へ出力する。無線システム信号送受信回路12は、入力された変調信号をアナログ信号へ変換し、アップコンバートし、アンテナ10を介して通信相手となる無線端末へ送信する。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Koichi Ishihara, et al., "Simultaneous Transmission Technologies for HEW," IEEE 11-13/1395r2, Nov. 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、無線端末が自己のスループット最適化のため、受信レベル判定回路におけるCCAレベルを自由にコントロールすると、システムスループットが大きく低下する。すなわち、CSMA/CAに基づく無線システムにおいて、各無線端末が自己のスループットを最大化するようにCCAレベルを大きくすると、干渉の増大によりシステムスループットが大きく低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数の無線システムが共存する際に、システムスループットの低下を防ぐことができる無線通信装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ランダムアクセスを行う無線通信装置であって、アンテナから入力された受信信号および前記アンテナへ出力する送信信号に任意の減衰を与える信号減衰部と、前記信号減衰部からの受信信号の受信信号レベルを検出する受信信号レベル検出部と、前記検出された受信信号レベルから送信可能な前記信号減衰部の減衰量を決定する信号減衰量決定部と、通信相手への送信信号を生成する送信信号生成部と、前記信号減衰部で信号を減衰させて送信する際の変調方式符号化率からなる変調モードを決定する変調モード決定部と、前記信号減衰部に決定された前記減衰量を設定する信号減衰量設定部と、前記変調モードに従い変調、符号化を行い、前記信号減衰部を介して前記送信信号の送信を行う無線信号送信部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記受信信号レベル検出部で検出した信号の頻度情報を記憶する受信レベル頻度記憶部と、前記生成された送信信号に減衰量を考慮して決定された変調モードと記憶された前記頻度情報からスループット評価値を計算し、決定された前記減衰量を用いて通信を行うか否かを判定する減衰利用判定部とをさらに備え、通信を行うと判定した場合に、前記信号減衰量設定部は、前記信号減衰部に決定された減衰量を設定することを特徴とする。
【0013】
本発明は、受信した信号を送信した無線通信装置のIDまたは受信した信号の送信先となる無線通信装置のID、またはその両方のIDを取得するID取得部と、取得した前記IDと対応する信号レベルをID受信レベル情報として記憶する受信レベルID記憶部と、記憶された前記ID受信レベル情報から、前記信号減衰部で用いる減衰量を前記IDに対し決定する信号減衰量決定部と、前記生成された送信信号に前記IDに対し決定されている減衰量を考慮して決定された変調モードのスループット評価値により、決定された前記減衰量を用いて前記送信信号の通信を行うか否かを判定する減衰利用判定部とをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
本発明は、受信した信号を送信した無線通信装置のIDまたは受信した信号の送信先となる無線通信装置のID、またはその両方のIDを取得するID取得部と、取得した前記IDと対応する信号レベルおよび頻度情報をID受信レベル情報として記憶する受信レベルID記憶部と、記憶された前記ID受信レベル情報から、前記信号減衰部で用いる減衰量を前記IDに対し決定する信号減衰量決定部と、前記変調モードと記憶された前記頻度情報からスループット評価値を計算し、決定された前記減衰量を用いて通信を行うか否かを判定する減衰利用判定部とをさらに備え、前記変調モード決定部は、前記IDに対し決定されている前記減衰量を用いて信号減衰部で信号を減衰させて送信する際の変調方式符号化率からなる変調モードを決定し、通信を行うと判定した場合に、前記信号減衰量設定部は、前記信号減衰部に決定された前記減衰量を設定することを特徴とする。
【0015】
本発明は、受信中の信号の送信元となる無線通信装置のIDと受信中の信号の送信先となる無線端末IDを取得するID取得部と、送信元となる前記無線通信装置のIDと対応する信号レベルをID受信レベル情報として記憶する受信レベルID記憶部と、前記ID受信レベル情報で記憶された前記IDごとに減衰量を決定する信号減衰量決定部とさらに備え、前記変調モード決定部は、前記受信中の信号の送信元となる無線通信端末のIDに対し決定されている減衰量と前記受信中の信号の送信先となる無線通信端末のIDに対し決定されている減衰量のうち大きい方の減衰量を用いて信号減衰部で信号を減衰させて送信する際の変調方式符号化率からなる変調モードを決定することを特徴とする。
【0016】
本発明は、特定IDに対し、減衰量を用いた通信の禁止、または受信レベルから決定される減衰量にさらなる付加減衰量を加えるペナルティを科す特定ID指定部をさらに備え、前記受信レベルID記憶部は、特定IDから指定されたIDに対し、ID受信レベル情報で減衰量を用いた通信の禁止または付加減衰量の付与を記憶することを特徴とする。

【0017】
本発明は、ランダムアクセスを行う無線通信装置が行う無線通信方法であって、アンテナから入力された受信信号および前記アンテナへ出力する送信信号に任意の減衰を与える信号減衰ステップと、前記信号減衰ステップによって前記減衰が与えられた受信信号の受信信号レベルを検出する受信信号レベル検出ステップと、前記検出された受信信号レベルから前記信号減衰ステップにおける前記減衰量を決定する信号減衰量決定ステップと、通信相手となる無線通信装置への送信信号を生成する送信信号生成ステップと、前記信号減衰ステップにより前記送信信号の送信電力を減衰させて送信する際の変調モードを決定する変調モード決定ステップと、前記変調モードに従い前記信号減衰ステップにより前記減衰量を与えた信号の送信を行う無線信号送信ステップとを有することを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記受信信号レベル検出ステップで検出した信号の頻度情報を記憶する受信レベル頻度記憶ステップと、前記信号減衰量決定ステップにより決定された減衰量を考慮して決定された変調モードと記憶された前記受信レベル頻度情報とから計算したスループット評価値を参照して減衰量を用いて通信を行うか否かを判定する減衰利用判定ステップとをさらに有し、前記減衰量を用いると判定した場合に、検出された前記受信信号レベルに対し決定された前記減衰量を用いて送信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線通信システムのスループットの低下を防ぐことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】他のBSSからの受信レベル(RSSI)に対して、CCAレベル以下とすることが可能な対応する可変ATT11の減衰値を示す図である。
【図3】第1実施形態における第1の方法の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態における第2の方法の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態における無線端末1において記憶した端末IDと受信レベル(RSSI)を示す図である。
【図6】第2実施形態における第1の方法の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態における第2の方法の処理動作を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態による無線端末の効果を示すために定義した無線端末間のチャネル条件を示す図である。
【図9】パラメータの一例を示す説明図である。
【図10】本実施形態による制御方法を用いた際の効果を評価した結果を示す図である。
【図11】本実施形態による制御方法を用いた際の効果を評価した結果を示す図である。
【図12】従来の無線LANにおける無線端末2の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<<第1実施形態>>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態による無線通信装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、図12に示す従来の装置と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。この図に示す装置が従来の装置と異なる点は、可変減衰器(可変ATT)11と、ATT制御回路15が設けられている点である。

【0022】
信号の受信を行う際に、無線端末1は、アンテナ10と可変ATT11を介して、無線信号を無線システム信号送受信回路12において受信する。無線システム信号送受信回路12は受信信号に同期を行いアナログ・デジタル変換を行い、得られたデジタル信号を受信復号回路14へ出力するとともに、受信信号の受信レベルについて受信レベル取得回路16へ出力する。受信レベル取得回路16は、入力された受信レベルが予め定められたCCAレベルより高ければ、情報信号入出力回路17へ信号検出を通知する。また、受信レベル取得回路16は入力された受信レベルが予め定められたCCAレベルより低くなった際には、信号検出状態をキャンセルすることを情報信号入出力回路17へ通知する。考慮するCCAレベルは受信信号が未知のシステムである場合と、無線端末1と同種の無線システムである場合で異なる値を用いることができる。

【0023】
受信復号回路14は無線システム信号送受信回路12から入力されたデジタル信号に対し、復号を行い、得られた信号が自無線端末1宛ての信号であれば、得られたデータビットを情報信号入出力回路17へ出力する。受信復号回路14は、復号されたデータビットが自無線端末宛てでなければ、復号を行わないこともできる。受信復号回路14は、復号したビットが誤りなく取得されたと判定された場合、無線システム信号送受信回路12へ正常受信を通知する。無線システム信号送受信回路12は、正常受信が入力されると、正常受信を示すACK(Acknowledge)信号を生成し、送信に適したアナログ信号に変換し、搬送波周波数にアップコンバートした上で、アンテナ10を介して送信する。

【0024】
情報信号入出力回路17に他の無線端末宛ての送信信号が入力された場合、無線端末1の信号検出状態であるかを判定し、信号検出状態であれば、信号検出状態が受信レベル取得回路16からキャンセルされるまで待機する。信号検出状態でない、または受信レベル取得回路16から信号検出状態をキャンセルされると、CSMA/CAのルールに従いランダム時間待機した後、データビットを送信変調回路13へ出力する。送信変調回路13は、入力されたデータビットに変調を行い、生成された送信信号を無線システム信号送受信回路12へ出力する。無線システム信号送受信回路12は、入力された変調信号をアナログ信号へ変換し、アップコンバートし、アンテナ10を介して通信相手となる無線端末へ送信する。

【0025】
無線端末1とデータ通信を行う全ての無線端末、および無線端末1が通信を行う無線端末がデータ通信を行う無線端末から構成される無線端末のセットをBSS(Basic service set)と定義する。周辺に同一周波数で通信を行う他のBSSが存在しない場合、可変ATT11は信号減衰しないように設定することもできる(減衰率α=0dB)。

【0026】
図2は、他のBSSからの受信レベル(RSSI:Receive signal strength indication)に対して、CCAレベル以下とすることが可能な対応する可変ATT11の減衰値を示す図である。ここでは、5dB刻みの離散的な減衰値が選べる場合の例を示しているが、1dB刻みなどより細かい精度で制御したり、10dB刻みなどより粗い精度で制御することもできる。CCAレベルを-82dBmとしているため、-82dBm以下では減衰させる必要がなく、減衰値の値は0dBとなっている。-82dB~-77dBのRSSIに対しては、減衰値を5dBとすることで、受信装置におけるRSSI値を-87~-82dBmに低下させ、送信を可能とする。以下、-57dBmまで減衰値が設定されている。

【0027】
この上限値は可変ATT11が選択できる最大の減衰値に依存し、図2に示す例では、減衰値の最大値が25dBであるため、受信レベルが-57dBmより大きい場合には、減衰値の設定値が存在しない。減衰値の値を高くするほど、高いRSSIに対応することができるが、その分送信電力も低下するため、あまり大きな値を設定しても無線端末1の通信相手に対し実用的な変調方式が存在しなくなる。

【0028】
<第1の方法>
次に、第1実施形態における第1の方法を説明する。無線端末1の情報入出力回路17においてデータ送信を行おうとする通信相手への送信信号が存在し、無線端末1が他BSSからの信号を受信中の場合、ATT制御回路15は受信レベル取得回路16から取得する受信している信号のRSSIの値に対し設定されている減衰値で利用可能な変調方式と符号化率からなる変調モードが存在するか判定し、変調モードが存在する場合、可変ATT11へ当該減衰値を設定する。可変ATT11において減衰値が設定されると、受信レベル取得回路16で評価しているRSSIが低下するため、CCAレベル以下となり、通信検出状態のキャンセルを情報信号入出力回路17へ通知する。

【0029】
情報信号入出力回路17は信号検出状態をキャンセルされると、減衰値と送信を行うデータビットを送信変調回路13へ出力する。送信変調回路13は入力されたデータビットに対し、ATT制御回路15で決定した変調モードにより、変調・符号化を行い、無線システム信号送受信回路12によりアンテナ10からの送信に適する形に変換を行い(例えば、デジタルアナログ変換など)、可変ATT11とアンテナ10を介して送信する。ここで、可変ATT11で決定された、減衰値を用いることを考慮したうえでの変調モードは、通常減衰値が0dBであった(減衰させない)場合に対し低いビット量に対応するが、受信レベルが最高のビット量より十分に高い場合などは、減衰値が0dBの場合と変わらない変調モードが用いることができる場合もある。

【0030】
次に、図3を参照して、第1実施形態における第1の方法を用いた無線端末1の処理動作を説明する。図3は、第1実施形態における第1の方法の処理動作を示すフローチャートである。CCAレベルを超える無線信号が検出され、さらに無線端末1から他の無線端末へ送信したいデータ信号が生成されると(ステップS1)、受信レベルに応じて用いる減衰値を可変ATT11に設定し(ステップS2)、CCAレベルを超える無線信号が存在しなくなることから、データ信号の送信、またはRTS信号による送信権の取得を開始する(ステップS3)。そして、CCAレベルを超える無線信号の検出が終わった場合は、本処理を終了する。

【0031】
<第2の方法>
次に、第1実施形態における第2の方法を説明する。第1実施形態における第2の方法では、図2に示す表における通信確率の測定を行い、この値を用いて制御する。受信レベル取得回路16は、他BSSからの信号のRSSIを取得すると、情報信号入出力回路17に信号検出状態を通知するとともに、信号検出状態の継続状況について情報を収集する。具体的には、待機時間全体に占める、信号検出状態の時間的割合を計測する。単に信号検出状態となる割合(確率)を計測することもできるし、その際のRSSIと対応して割合を評価することもできる。図2に示すRSSIの範囲に対し、通信の発生頻度を評価した例を例1、例2として示す。通信確率の情報を用いることで、可変ATT11を不必要な場面で利用することを防ぎ、スループットの向上が期待できる場合のみ活用することができる。図2の通信確率は、自無線端末1からの送信および自無線端末1への受信の通信が行われている時間を除く時間で評価することもできる。

【0032】
例1では、可変ATT11を用いないで通信できる確率(RSSI<-82dBm)が60%あるため、他のBSSが通信中に可変ATTを用いて通信を行うメリットが小さい。RSSI値が-82から-57dBmの間での通信確率が10+15+10=35%であるが、これはアクセスできない時間ではなく、CSMA/CAに基づき、このうちの一定の割合は自無線端末の通信で取得できる。自無線端末以外の同一チャネルを用いる無線端末が4台存在したとして無線リソースを均等に取得できるとするなら、20%が自無線端末が用いることのできるアクセス時間となるため、35%×0.2=7%は可変ATT11を用いなくても通信できる。すなわち、本実施形態により可変ATT11を用いることで、60+7=67%の確率でアクセス権が取得できたところ、60+35=95%のアクセス権取得率に向上するため、およそ1.4倍のスループット向上と評価できる。

【0033】
無線端末1と通信相手間の位置が遠く、チャネルの強度が弱い場合は、減衰値に応じて変調モードをビット数の低いものに変更する必要があり、減衰値5~15dBを用いた計35%の通信のスループットは低くなる可能性がある。さらに、大きい減衰値が必要な通信ほど、無線端末1と通信相手間のスループットの低下が大きいことから、この場合は高い減衰値となるデータの受信中には可変ATT11による通信を行わないように判断できる。

【0034】
例2では、可変ATT11を使わなければ通信できない比率が例1より多い。このため、可変ATT11を用いるメリットは例1より大きい。可変ATT11を用いて通信できる通信確率は、30+15+10+10=65%である。例1と同様に、自無線端末以外の同一チャネルを用いる無線端末が4台存在したとして無線リソースを均等に取得できるとするなら、20%が自無線端末が用いることのできるアクセス時間となるため、65%×0.2=13%は可変ATT11を用いなくても通信できる。よって、アクセス権を取得できる確率は、30+13=43%から、95%に増加するため、およそ2.2倍のスループット向上効果ととらえることができる。

【0035】
例1に比べ、メリットが大きく、可変ATT11の減衰値を鑑みても、本実施形態による送信権の取得を行うメリットが大きくなる。実際に無線端末1から通信相手に対し送信する際に、可変ATTを用いるか否かは、以下のように判定することもできる。可変ATT11の減衰値を周辺環境に対し1つ決定し、全ての受信レベルに対し共通で用いる第1の評価方法と、受信レベルに対し適用的に減衰値を設定する第2の評価方法を示す。まず、第1の評価方法では、可変ATT11を用いる前のアクセス権の取得率をρとする。取得率ρは例1では、67%、例2では43%として評価されている。減衰値αを用いた際に得られるアクセス権の取得率をρ(α)と定義する。例1では、ρ(-15)=95%、例2ではρ(-20)=95%となっている。ここで、αの値としては、dB単位で表記している。

【0036】
次に、ある無線端末1が送信を行おうとする無線端末1-jとすると、無線端末1-jに対して可変ATT11における減衰を与えずに通信した場合の変調モードに対応するビットレートをB0,ijとし、減衰値αを用いた時に用いる変調モードに対応するビットレートをBij(α)とする。このとき本実施形態による通信を用いない場合の無線端末1から無線端末1-jへのスループット評価値T0,ij
0,ij=ρB0,ij ・・・(1)
と表せる。この方法による減衰値を導入した場合の評価値Tij(α)は
ij(α)=ρ(α)Bij(α) ・・・(2)
として得られる。とりうる減衰値αを(2)式に代入してスループット評価値を算出し、(1)式の評価値T0,ijと比較して、十分に増加していると判断される場合に、当該減衰値αを用いて通信を行うことができる。例えば、TijがT0,ijのK倍になっている場合に、減衰値αを可変ATTに設定して送信アクセス権を取得できる。ここで、Kは1以上の正数である。

【0037】
次に第2の評価方法を示す。この評価方法では、減衰値αを用いた際に得られる個別アクセス権の取得率をρ’(α)と定義し、減衰値に対し個別に設定する。例1では、図2よりρ’(0)=60%、ρ’(-5)=10%、ρ’(-10)=15%、ρ’(-15)=10%、例2ではρ’(0)=30%、ρ’(-5)=30%、ρ’(-10)=15%、ρ’(-15)=10%、ρ’(-20)=10%と設定される。

【0038】
次に、ある無線端末1が送信を行おうとする無線端末1-jとすると、減衰値αを用いた時に用いる変調モードに対応するビットレートをBij(α)と表せる。第2の評価方法では、αは受信レベルごとに変更されるため、通信確率から減衰値を用いる全ての組み合わせの総和で評価する。第2の評価方法によるスループットの評価値T’ij
T’ij(α’)=ρ(0)B0,ij+ρ(-5)Bij(-5)+・・・+ρ(α’)Bij(α’)・・・(3)
として減衰値α’以下となる全ての減衰値に対しスループットを評価する。第2の評価方法でもT’ijがT0,ijのK倍になっている場合に、減衰値αを可変ATTに設定して送信アクセス権を取得できる。ここで、Kは1以上の正数である。

【0039】
次に、図4を参照して、第1実施形態における第2の方法を用いた無線端末1の処理動作を説明する。図4は、第1実施形態における第2の方法の処理動作を示すフローチャートである。CCAレベルを超える無線信号が検出され、さらに無線端末1から他の無線端末へ送信したいデータ信号が生成されると(ステップS11)、対応する減衰値を用いた場合にスループット評価値がしきい値を超えるか評価し(ステップS12)、超える場合は、受信レベルに応じて用いる減衰値を可変ATT11に設定し(ステップS14)、CCAレベルを超える無線信号が存在しなくなることから、データ信号の送信、またはRTS信号による送信権の取得を開始する(ステップS15)。ステップS12においてしきい値を超えない場合は、他無線端末の通信が終わるまでデータ信号の送信を待機する(ステップS13)。CCAレベルを超える無線信号の検出が終わった場合は、本処理を終了する。

【0040】
<<第2実施形態>>
次に、図面を参照して、本発明の第2実施形態による無線通信装置を説明する。第2実施形態による無線端末1の装置構成は、図1に示す構成と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。第2実施形態では、図1の点線で示す矢印のとおり、受信復号回路14から受信レベル取得回路16に対し、復号した結果得られる送信元無線端末のIDを出力する。このように制御することで、受信レベル取得回路16では、無線システム信号送受信回路12から得られる受信レベルと、受信復号回路14から得られる無線端末IDを関連付けて記憶することができる。

【0041】
<第1の方法>
次に、第2実施形態における第1の方法を説明する。図5は、第2実施形態における無線端末1において記憶した端末IDと受信レベル(RSSI)を示す図である。第2実施形態においては、第1実施形態とは異なり、無線端末IDの情報による制御が可能となる。IDごとにRSSI、通信確率、無線端末のタイプおよびその通信相手情報をATT制御回路15において管理することができる。情報信号入出力回路17は、受信復号回路から受信している信号の送信元とのなる無線端末、送信先となる無線端末、またはその両方のIDを取得し、ATT制御回路15へ出力する。ATT制御回路15は受信レベル取得回路16から入力されるRSSIと合わせて図5のように記憶することができる。この際に、情報信号入出力回路17が当該通信に関して得た無線端末のタイプなどの情報を合わせてATT制御回路15で記憶することができる。ATT制御回路15は受信レベル取得回路16から信号検出状態とそのキャンセルについても取得することで、対応するIDの通信の通信確率についても評価できる。

【0042】
さらに、IDの用い方としては、IDごとに減衰値による制御を行うかの可否の判定をネットワークを介して外部から指定することもできる。情報信号入出力回路17に対し、外部からID情報を入力し、減衰値による制御を行うかの可否や、減衰値の指定など行うことができる。例えば、情報信号入出力回路17が外部からID1に関する通信に対して減衰値を用いた通信を行わないように指定された場合、ATT制御回路15において、ID1の通信に減衰値の設定を行わないことができる。また、ID1に関する全ての通信を禁止することで、ID1に所属する全ての無線端末のID(図5の例では、ID2とID3)に対し、減衰値の設定を行わないこともできる。また、ATT制御回路15において、IDに応じて、受信レベルから推定できる減衰値の値に更なる減衰値を付加することで、このIDの通信への影響を低減することもできる。このようにすることで、特定のIDの通信が無線端末1により影響を受けることがないように制御することができる。

【0043】
また、情報信号入出力回路17が外部からID1に関する全ての通信に対して減衰値を増やすように指定することもできる。図5の例では、ID1と通信するID2,ID3からの送信信号についても減衰値の設定にさらに指定された付加減衰値を加えて可変ATT11の減衰値を設定できる。通信確率は第1実施形態における第2の方法と同様、スループット評価値を計算し、減衰値を用いるかの判定に用いることができる。例えば図5においてIDに対し決定された減衰値に対し、対応する通信確率の和をとっていくことで、図2と同様の表を作成し、(2)式(3)式のようにスループットを評価できる。また、図5において、減衰値を用いた通信を禁止されたIDについて考慮しないこともできる。第2実施形態における第1の方法では、受信レベル取得回路16は、受信復号回路14から得られる受信信号の無線端末IDに基づき、可変ATT11における減衰値の設定を判断する。

【0044】
次に、図6を参照して、第2実施形態における第1の方法を用いた無線端末1の処理動作を説明する。図6は、第2実施形態における第1の方法の処理動作を示すフローチャートである。まず、CCAレベルを超える受信レベルとなる無線信号が検出されると、この無線信号を送信している無線端末のIDを取得し(ステップS21)、対応する受信レベルと対応付けて記憶する(ステップS22)。

【0045】
さらに無線端末1から他の無線端末へ送信したいデータ信号が生成されると(ステップS23)、取得した無線端末のIDが減衰値の利用に対応している無線端末のIDであるかを判定し(ステップS24)、対応していれば無線端末IDに対応する減衰値を可変ATTに設定し(ステップS26)、CCAレベルを超える無線信号が存在しなくなることから、データ信号の送信、またはRTS信号による送信権の取得を開始する(ステップS27)。ステップS24において、対応していない無線端末であれば、他無線端末の通信が終わるまでデータ信号の送信を待機する(ステップS25)。そして、CCAレベルを超える無線信号の検出が終わった場合は、本処理を終了する。

【0046】
<第2の方法>
次に、第2実施形態における第2の方法を説明する。この方法では、受信復号回路14から、受信している信号を送信している無線端末のIDと、送信先のIDをともに受信レベル取得回路16へ出力する。受信レベル取得回路16は、これまでの制御方法とは異なり、送信先の無線端末のIDを図5に示す情報を参照する。例えば、現在無線端末1で受信している無線信号の送信元IDがID1、送信先がID3であり、受信レベル-81dBmで受信しているものとする。第2実施形態における第2の方法では、通信相手であるID3に対応するRSSIを参照し、対応する減衰値20dBを用いる。

【0047】
受信している信号のレベルに対して設定される減衰値をΓとし(SはSourceの略)、受信している信号の送信先の無線端末1に対して設定されている減衰値をΓ(DはDestinationの略)とした際に、第1実施形態および第2実施形態における第1の方法は、受信レベル-81dBmにより減衰値Γ=5dBを用いるのに対し、第2実施形態における第2の方法では、Γ、またはmax(Γ,Γ)を用いる。max()は括弧内の最も大きい値を抽出する関数である。このように制御することで、他の無線端末への影響を最小化することができる。

【0048】
次に、図7を参照して、第2実施形態における第2の方法を用いた無線端末1の処理動作を説明する。図7は、第2実施形態における第2の方法の処理動作を示すフローチャートである。まず、CCAレベルを超える受信レベルとなる無線信号が検出されると、この無線信号を送信している無線端末のIDと、送信先となる無線端末のIDを取得し(ステップS31)、送信元となる無線端末のIDと受信レベルと対応付けて記憶する(ステップS32)。

【0049】
さらに無線端末1から他の無線端末へ送信したいデータ信号が生成されると(ステップS33)、取得した送信先となる無線端末のID、または送信先となる無線端末のIDおよび送信元となる無線端末のIDの両者に対応する減衰値の値を参照し、この減衰値を用いることによるスループットの評価値がしきい値を超えるかを判定する(ステップS34)。

【0050】
この判定の結果、超えれば前述したΓまたはmax(Γ,Γ)で決定される減衰値を可変ATT11に設定し(ステップS36)、データ信号の送信、またはRTS信号による送信権の取得を開始する(ステップS37)。ステップS34においてしきい値を超えない場合は、他無線端末の通信が終わるまでデータ信号の送信を待機する(ステップS35)。そして、CCAレベルを超える無線信号の検出が終わった場合は、本処理を終了する。

【0051】
次に、図面を参照して、前述した制御方法による効果について説明する。本実施形態による無線端末1-1と1-3が通信相手となる無線端末1-2と1-4にそれぞれデータパケットを送信することを考える。図8は、本実施形態による無線端末の効果を示すために定義した無線端末間のチャネル条件を示す図である。G21は無線端末1-1から無線端末1-2へ、G31は無線端末1-1から無線端末1-3へ、G13は無線端末1-3から無線端末1-1へ、G43は無線端末1-3から無線端末1-4へ、G23は無線端末1-3から無線端末1-2へ、G41は無線端末1-1から無線端末1-4へのチャネル利得をそれぞれ表す。ここで、チャネルの対称性を仮定し、G31=G13とし、Gijの範囲は0<Gij<1とした。

【0052】
周辺に同一周波数を用いる他の無線端末1は、無線端末1が自己スループット最適化のため、受信レベル判定回路におけるCCAレベルを自由にコントロールすると、システムスループットを大きく低下する問題があった。無線端末1-3と無線端末1-1が互いに検出できる程度に近い場合、
13P+N≧T
の関係を満たす。ここで、Pは送信電力、Nは熱雑音レベル、Tは無線端末がデータの送信を行わないことを判定するCCAレベルである。

【0053】
このような条件で無線端末1-3と無線端末1-1が通信相手となる無線端末1-4と無線端末1-2にそれぞれ常に送信を行おうとすると、これら無線端末2台を考慮したシステム全体の周波数利用効率は、
【数1】
JP0006146866B2_000002t.gif
と表すことができる。シャノン容量により、SINRから、log(1+SINR)として周波数利用効率を評価した。ログの前についた1/2は、無線端末1-3と無線端末1-1が時間領域を半分ずつシェアしているためである。

【0054】
本実施形態の構成により、無線端末1には可変ATT11により減衰率aだけ受信信号および送信信号のレベルを低下させることを考える。本実施形態の説明で減衰値と表現していたものはdBで表記していたため、真値で表現し、0<a≦1となる減衰率は異なる用語で定義したが、どちらも本質的には同じものである。減衰率をaで設定した場合の周波数利用効率は、
【数2】
JP0006146866B2_000003t.gif
として表せる。ここではまだCCAレベルを上回る信号が無線端末1-1と無線端末1-3で受信されている。減衰率を受信信号がCCAレベルを下回るように設定すると、
【数3】
JP0006146866B2_000004t.gif
として周波数利用効率が得られる。

【0055】
すなわち、減衰率の設定により周波数利用効率は、
【数4】
JP0006146866B2_000005t.gif
と定義できる。

【0056】
ここで、図9に示すパラメータにより、減衰率aによる周波数利用効率の変化を評価する。送信電力を13dBm、しきい値を-82dBm、ノイズレベルを-91dBm、周波数を2.4GHzとした。また、以下の説明を簡単にするため、SINRが十分に大きい環境を仮定し、減衰率を用いない従来の周波数利用効率をη’、減衰率を用いる本実施形態の周波数利用効率をη’として以下のように定義する。
【数5】
JP0006146866B2_000006t.gif
【数6】
JP0006146866B2_000007t.gif

【0057】
また、伝搬ロスとしては自由空間を仮定し、
ji=(λ/4πDji
とした。ここで、テザリングで用いられるような、無線端末間距離が非常に短い環境を考え、D21=D43=1[m]、D31=D41=D23=Dとした。本実施形態の構成では送信側のみ可変ATT11を用いるものとし、a=a=1とした。さらに、周波数利用効率の評価式はどんなに高いSINRに対しても実用的な変調方式が存在し、且つ理論的な上限値となる条件となっているため、実際のシステムのパフォーマンスとはずれが生じる問題がある。このため、無線LANの標準化規格IEEE802.11aで用いられている最も高い変調方式(64QAM)と符号化率(3/4)におけるビットレート、2.7bit/s/Hzを上限として用いた。

【0058】
さらに、SINRに対する周波数利用効率を実用の変調方式と符号化率に対して近似した文献を参照し、SINRに対する周波数利用効率の評価式をc(SINR)=log(1+SINR)とする代わりに、
c(SINR)=min{2.7,0.52log(1+0.25SINR)
とした。この条件で、可変ATT11の減衰率に対する本実施形態の周波数利用効率ηATTを、a1=a3としてDに対して評価した結果を図10に示す。Dが5mより遠い条件で、周波数利用効率を高めるaの値が存在し、周波数利用効率を最大2倍まで高めることができることを確認した。

【0059】
さらに、図8に示す条件において、無線端末1-1が本実施形態による無線端末であり、無線端末1-3が従来の無線端末であった場合、無線端末1-1のみで可変ATT11の値を制御した結果を図11に示す。Dを160mとして設定している。無線端末1-1の減衰値を0.08(-11dB)以下にすることで、無線端末1-1と無線端末1-3が同時に通信することが可能となり、両無線端末でスループットが増大することが確認できる。このように、送信電力とCCAレベルを一体制御することで、他の無線端末のスループットを低下させずに自無線端末のスループットを向上させる効果があることが確認できた。

【0060】
従来から、CSMA/CAのCCAレベルと送信電力を同時に制御することで、干渉の増大によるシステムスループットの低下を防止する手法が提案されている(非特許文献1)。しかし、この制御は個別の端末が行っているため、やはりシステムスループットの低下を招いてしまうという問題を有している。

【0061】
本実施形態では、例えば通信相手からの受信電力に対応する減衰値を設定し、この減衰量分、CCAレベルが上がると同時に、送信電力が下がり、送信電力に対応する変調モードに変更して、送信するようにした。また、これらを実現するために、送信アンテナと受信アンテナに対して、共通の減衰器を挿入して、受信電力を一定量減衰させることで、実質的にCCAレベルを上げている。この構成により、電波伝搬の可逆性により、無線機間の公平性が保たれ、システムスループットの低下を防止することができる。また、一台の減衰器で実現することで、無線機の小型化・簡略化を実現することができる。

【0062】
また、本実施形態による可変ATTを用いるかわりに、デジタル信号で同様の制御を行うこともできる。つまり、送信信号については、可変ATTで減衰させるのと同等の信号レベルまで、無線システム信号送受信回路の出力を低下させ、CCAレベルと比較する受信電力レベルも、可変ATTで用いる減衰量だけ減衰されたものとして、受信レベルを減衰量だけ低くしてCCAレベルと比較することができる。

【0063】
前述した実施形態における無線端末1をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。

【0064】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
CSMA/CAに基づく無線システムにおいて、減衰器により送信信号と受信信号に等しく減衰を与えることで、不当にアクセス権を取得する無線端末が生じるのを防ぐ無線通信システムを実現できる。
【符号の説明】
【0066】
1、2・・・無線端末、11・・・可変ATT(信号減衰部)、12・・・無線システム信号送受信回路(無線信号送信部)、13・・・送信変調回路(無線信号送信部)、14・・・受信復号回路、15・・・ATT制御回路(信号減衰量決定部、変調モード決定部、信号減衰量設定部、減衰利用判定部、受信レベルID記憶部)、16・・・受信レベル取得回路(受信レベル検出部)、17・・・情報信号入出力回路(受信レベルID記憶部)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11