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明細書 :高周波整流回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6128653号 (P6128653)
公開番号 特開2015-162690 (P2015-162690A)
登録日 平成29年4月21日(2017.4.21)
発行日 平成29年5月17日(2017.5.17)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明の名称または考案の名称 高周波整流回路
国際特許分類 H01P   1/00        (2006.01)
H02J  50/20        (2016.01)
H02M   7/06        (2006.01)
FI H01P 1/00 Z
H02J 50/20
H02M 7/06 E
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2014-034730 (P2014-034730)
出願日 平成26年2月25日(2014.2.25)
審査請求日 平成28年1月13日(2016.1.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】川島 宗也
【氏名】関 智弘
【氏名】篠原 真毅
個別代理人の代理人 【識別番号】110001634、【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
審査官 【審査官】岸田 伸太郎
参考文献・文献 国際公開第2012/090840(WO,A1)
特開2009-044933(JP,A)
和木輝彦(外4名),ダイオードの等価回路パラメータによるシャント型RF-DC変換回路の効率解析,電子情報通信学会技術研究報告 エレクトロニクスシミュレーション,2012年 1月19日,vol.111,no.415,pp.201-206,EST2011-112
調査した分野 H01P 1/00-11/00
H02J 50/20
H02M 7/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
特許請求の範囲 【請求項1】
高周波信号を入力する入力端子と、
前記入力端子に一端が接続された容量素子と、
前記容量素子の他端に一端が接続された整合回路と、
前記整合回路の他端にカソードが接続されたダイオード素子と、
前記整合回路の他端に接続されたフィルタ回路と、
前記ダイオード素子のアノードに一端が接続され他端が接地された伝送線路と、
前記フィルタ回路の他端が直流信号を出力する出力端子と、
を備え、
前記ダイオード素子に対して逆方向に所定の電圧が印加された場合に使用周波数において前記ダイオード素子と前記伝送線路とを有する直列体のリアクタンス成分が直列共振する
ことを特徴とする高周波整流回路。
【請求項2】
前記伝送線路の電気長は、前記ダイオード素子の逆方向電圧印加時のインピーダンスをZdoff、前記伝送線路の特性インピーダンスをZとして、前記使用周波数で以下に示す式で表されることを特徴とする請求項1に記載の高周波整流回路。
【数1】
JP0006128653B2_000028t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波整流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レクテナ装置における高周波信号を直流信号に変換する高周波整流回路の例として、シングルシャント型の整流回路が知られている(特許文献1-3)。
図12は、従来のシングルシャント型の整流回路の基本的な回路図である。図12に示す整流回路は、入力端子91、出力端子92、ダイオード素子93、容量素子95、入力整合回路96、高周波成分を除去し直流成分のみを出力するフィルタ回路97を有している。ここで、整流回路の動作を、図12と図13を用いて説明する。図13は、従来の高周波整流回路の動作原理を示すイメージ図である。図13(a)には、図12に示す整流回路の電圧降下のない理想状態での動作原理を示すイメージ図が記載されている。図13(b)には、図12に示すA点における高周波信号入力直後の電圧変化を示すイメージ図が記載されている。図13(c)には、図12に示す出力端子92における定常状態での電圧変化を示すイメージ図が記載されている。
【0003】
図12において、入力端子91から入力した高周波信号は、容量Cを持つ容量素子95、入力整合回路96を介しダイオード素子93に入力する。入力した信号は、ダイオード素子93が逆方向に接続されているため、負の順方向降下電圧V以下でダイオード素子93に電流が流れ、容量素子95に電荷が供給され蓄電される(図13(a))。電荷が容量素子95に蓄電されることにより、図12のA点における直流電圧は昇圧される。図12のA点において、昇圧された高周波信号の負のピーク値がV以上となると、ダイオード素子93に電流が流れなくなる(図13(b))。昇圧された高周波信号は、フィルタ回路97により高周波成分が除去され、直流成分のみが出力端子92から出力される(図13(c))。この時、出力電圧Voutは、式(1)で表すことができる。
【0004】
【数1】
JP0006128653B2_000002t.gif

【0005】
なお、式(1)の第1項は、容量素子への蓄電を表し、第2項は、容量素子からの放電を表す項である。また、パラメータAは、整流回路での損失を示し、パラメータAは、蓄電された容量素子からの放電率を示す。また、パラメータA、Aは、蓄電および放電時間に関するパラメータを示す。ここで、第1項が第2項より大きい場合、高周波信号は、昇圧された後、直流信号として出力される。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2012-75227号公報
【特許文献2】特開2007-116515号公報
【特許文献3】特開平5-335811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のシングルシャント型の高周波整流回路は、高周波信号の周波数が高くなると、ダイオード素子などの寄生容量などによる信号漏洩が無視できなくなり、蓄電量が低下し、図14に示すように電圧降下が生じる。図14は、図12のA点において、従来の整流回路の高周波数帯で電圧降下が発生したことを示すイメージ図である。この電圧降下のため、高周波信号の負のピーク値がV以下のVminとなり、理想的な動作時より昇圧電圧が下がる現象が生じていた。その結果、出力端子92から出力される出力電力が低下し、変換効率が低下するという問題点があった。
【0008】
ここで、従来のシングルシャント型の整流回路の動作を図15、図16、図17を用いて説明する。図15は、従来のシングルシャント型の整流回路の動作原理を説明するために簡略したダイオード素子の等価回路である。図15に示すダイオード素子の等価回路は、並列に接続された抵抗素子13(抵抗値R)、容量素子14(容量値C)を有している。
【0009】
図16は、一般的なダイオード素子の等価回路を示す図である。図16に示すダイオード素子の等価回路は、入力端子101、出力端子102、接合抵抗(抵抗値R)103、接合容量(容量値C)104、接触抵抗(抵抗値R)105、寄生容量(容量値C)106を有している。図16に示すダイオード素子の等価回路を図15に示すダイオード素子の等価回路に変換すると、図17に示す抵抗素子と容量素子からなる等価回路とすることができる。図17は、図16に示すダイオード素子を図15に示すダイオード素子に変換した等価回路図である。ここで抵抗素子113の抵抗値R、容量素子114の容量値Cは、下記に示す式(2)、(3)から算出することができる。
【0010】
【数2】
JP0006128653B2_000003t.gif

【0011】
【数3】
JP0006128653B2_000004t.gif

【0012】
なお、抵抗素子R、容量素子Cの各々は、周波数依存性を有するが、ここでは周波数依存性がないと仮定する。この仮定より、図16に示す一般的なダイオード素子の等価回路を図15に示す簡略化したダイオード素子の等価回路に置き換えることができる。
ここで、ダイオード素子の容量素子14の容量値Cを一定とし、ダイオード素子に印加される電圧が順方向降下電圧(-V)以下では、抵抗素子13の抵抗値Rを抵抗値Rdoffとする。また、ダイオード素子に印加される電圧が順方向降下電圧(-V)以上では抵抗素子13の抵抗値Rを抵抗値Rdonとする。このときダイオード素子のアドミッタンスYは、式(4)で与えられる。
【0013】
【数4】
JP0006128653B2_000005t.gif

【0014】
また、ダイオード素子のインピーダンスZは、式(5)で与えられる。
【0015】
【数5】
JP0006128653B2_000006t.gif

【0016】
なお、ここで、インピーダンスZの実数成分R(Z)と虚数成分Im(Z)は、それぞれ式(6)、式(7)で与えられる。
【0017】
【数6】
JP0006128653B2_000007t.gif

【0018】
【数7】
JP0006128653B2_000008t.gif

【0019】
ここで、虚数成分Im(Z)の分子と分母をそれぞれf(x)、g(x)とおくと、f(x)、g(x)は、それぞれ式(8)、式(9)で与えられる。
【0020】
【数8】
JP0006128653B2_000009t.gif

【0021】
【数9】
JP0006128653B2_000010t.gif

【0022】
式(7)の虚数成分Im(Z)を微分すると、式(10)で表すことができる。
【0023】
【数10】
JP0006128653B2_000011t.gif

【0024】
式(10)の分母は、常に正の値となることから、虚数成分Im(Z)の周波数変化は、式(10)の分子のみを計算すればよい。式(10)の分子は、式(11)で求めることができる。
【0025】
【数11】
JP0006128653B2_000012t.gif

【0026】
式(12)に示した方程式を、ωについて解くと、式(13)となる。
【0027】
【数12】
JP0006128653B2_000013t.gif

【0028】
【数13】
JP0006128653B2_000014t.gif

【0029】
しかし、ω>0より、(13)式の解は、式(14)に示した式になる。
【0030】
【数14】
JP0006128653B2_000015t.gif

【0031】
式(6)より、ダイオード素子のインピーダンスZの実数成分R(Z)は、周波数が高くなるに従い単調に減少する。一方、虚数成分Im(Z)は、ωが式(14)に示す値で極小値を有する周波数特性となる。Rの値が小さい順方向降下電圧(-V)以上では、虚数成分Im(Z)は、周波数が高くなるに従い単調に減少する。Rの値が大きい順方向降下電圧(-V)以下では、ωが式(14)に示す値以上で、虚数成分Im(Z)の絶対値は、周波数が高くなるに従い単調に減少する。つまり、順方向降下電圧(-V)以下では、極小値以上でダイオード素子のインピーダンスZは、周波数が高くなるに従い低下することが分かる。その結果、高周波数帯でのダイオード素子のon/off比が低下し、整流器の変換効率が低下する。図4にCd=0.3pF、Rdoff=1000ohm、Rdon=10ohmとした場合のインピーダンスZの虚数成分Im(Z)の計算結果を示す。図4に示す三角はRdoff=1000ohm、黒く塗られた三角はRdon=10ohmの計算結果である。図4に示す通り、周波数が高くなると、RdonとRdoffでの間の差が小さくなっていることがわかる。
【0032】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、高周波帯においても、ダイオード素子等の信号漏洩による昇圧電圧の降下を抑えることができる高周波整流回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の一態様は、高周波信号を入力する入力端子と、前記入力端子に一端が接続された容量素子と、前記容量素子の他端に一端が接続された整合回路と、前記整合回路の他端にカソードが接続されたダイオード素子と、前記整合回路の他端に接続されたフィルタ回路と、前記ダイオード素子のアノードに一端が接続され他端が接地された伝送線路と、前記フィルタ回路の他端が直流信号を出力する出力端子と、を備え、前記ダイオード素子に対して逆方向に所定の電圧が印加された場合に使用周波数において前記ダイオード素子と前記伝送線路とを有する直列体のリアクタンス成分が直列共振することを特徴とする高周波整流回路である。
【0034】
また、本発明の一態様は、上述した高周波整流回路であって、前記伝送線路の電気長は、前記使用周波数で前記電気長を以下に示す式(実施形態における式(19))で表される。
【0035】
また、本発明の一態様は、上述した高周波整流回路であって、前記ダイオード素子は、順方向電圧が印加されたとき、前記伝送線路の電気長が90度に近づく値を有する接合容量である。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、逆方向電圧が印加された時のダイオード素子と伝送線路とを有する直列体のリアクタンス成分が使用周波数において直列共振するように、該伝送線路のパラメータが設定される。これにより、高周波帯においても、ダイオード素子等の信号漏洩による昇圧電圧の降下を抑えることができる高周波整流回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態における高周波整流回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における簡略化したダイオード素子を使用した高周波整流回路の等価回路図である。
【図3】本発明の実施形態におけるインピーダンスZの虚数成分をゼロとする伝送線路の電気長Eの周波数依存性を示す図である。
【図4】本実施形態のダイオード素子(本実施形態の構造)および図15に示す簡略化したダイオード素子(従来の構造)のインピーダンスの虚数成分の周波数依存性を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における高周波整流回路の効果を示すための回路図である。
【図6】従来の高周波整流回路の効果を示すための回路図である。
【図7】本発明の実施形態におけるシャント接続したダイオード素子と伝送線路および従来の構造のシャント接続したダイオード素子のSパラメータの周波数依存性を示す図である。
【図8】本発明の実施形態における高周波整流回路の動作原理を示すイメージ図である。
【図9】本発明の実施形態における高周波整流回路の具体的な回路(図10)と従来の高周波整流回路の具体的な回路(図11)の変換効率の計算例の比較を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態における高周波整流回路の具体的な回路図の例を示す図である。
【図11】従来の高周波整流回路の具体的な回路図の例を示す図である。
【図12】従来の高周波整流回路の構成を示すブロック図である。
【図13】従来の高周波整流回路の電圧降下のない理想状態での動作原理を示すイメージ図である。
【図14】従来の高周波整流回路の高周波数帯での課題を示すイメージ図である。
【図15】簡略化したダイオード素子の等価回路図である。
【図16】一般的なダイオード素子の等価回路図である。
【図17】図16のダイオード素子を図15のダイオード素子に変換した等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、シングルシャント型の高周波整流回路(以下、「整流回路」という。)10の回路図である。整流回路10は、高周波信号を入力する入力端子1、直流信号を出力する出力端子2、ダイオード素子3、伝送線路4、容量素子5、入力整合回路6、フィルタ回路7を有している。
以下に、本実施形態におけるシングルシャント型の整流回路10について図を用いて説明する。
図2は、整流回路10の動作原理を説明するためにダイオード素子3の簡略した等価回路に伝送線路25を接続した回路図である。並列に接続された抵抗素子23(抵抗値R)、容量素子24(容量値C)、伝送線路25を有している。ここで、抵抗素子23は抵抗値Rであり、容量素子24の容量値はCである。
図2に示す抵抗素子23の抵抗値Rは、図15の従来回路の場合と同様、順方向降下電圧V以下ではRdoff、順方向降下電圧V以上ではRdonとする。このとき図2に示す回路のインピーダンスZdnewは、式(15)で表される。

【0039】
【数15】
JP0006128653B2_000016t.gif

【0040】
なお、Zはダイオード素子3のインピーダンスを、ZTLは伝送線路25のインピーダンスを示している。伝送線路25のインピーダンスZTLは、特性インピーダンスZを用いて、式(16)で表される。

【0041】
【数16】
JP0006128653B2_000017t.gif

【0042】
なお、Eは伝送線路の電気長である。ここで、ダイオード素子3に所定の逆方向電圧を印加した場合、RがRdoffとなるインピーダンスZdnewをインピーダンスZdnewoffとする。また、ダイオード素子3に順方向電圧Vを印加した場合、RがRdonとなるインピーダンスZdnewをインピーダンスZdnewonとする。
インピーダンスZdnewoffが短絡となるためには、式(17)に示すように、式(15)の虚数成分、つまりダイオード素子3と伝送線路25とを有する直列体のリアクタンス成分が零となればよい。

【0043】
【数17】
JP0006128653B2_000018t.gif

【0044】
式(17)を、tanEで整理すると、式(18)で表される。

【0045】
【数18】
JP0006128653B2_000019t.gif

【0046】
したがって、伝送線路25の電気長Eは、式(19)で表される。

【0047】
【数19】
JP0006128653B2_000020t.gif

【0048】
式(19)より、伝送線路25の電気長Eは、逆方向電圧印加時のダイオード素子3のインピーダンスZdoffの虚数成分Im(Zdoff)から求めることができる。伝送線路25の電気長Eを、所望の周波数帯で式(19)とすれば、本実施形態における整流回路10は直列共振となり、短絡とすることが可能となる。つまり、ダイオード素子3と伝送線路25とを有する直列体のリアクタンス成分が直列共振する。ここで、所望の周波数帯は、整流回路10に入力される高周波信号の周波数帯である。
一方、順方向電圧時のインピーダンスZdnewonは、式(15)より、式(20)で表される。

【0049】
【数20】
JP0006128653B2_000021t.gif

【0050】
順方向電圧時のダイオード素子3の抵抗成分は、十分小さいとすると、式(20)は、式(21)となる。

【0051】
【数21】
JP0006128653B2_000022t.gif

【0052】
インピーダンスZdnewonの周波数特性は、式(21)における虚数成分、つまり伝送線路25に依存することが分かる。ここで、入力信号の周波数をf、伝送線路25が1/4波長となる周波数をfとすると、電気長は、式(22)で表される。

【0053】
【数22】
JP0006128653B2_000023t.gif

【0054】
ここで、vは位相速度である。周波数がfとなるとき伝送線路25は1/4波長となることから、伝送線路25の線路長lは、式(23)に表される。

【0055】
【数23】
JP0006128653B2_000024t.gif

【0056】
したがって、周波数fと周波数fとの関係式は、式(24)に表される。

【0057】
【数24】
JP0006128653B2_000025t.gif

【0058】
式(24)よりダイオード素子3の順方向電圧印加時、電気長Eが90度に近づく十分小さなCを持つダイオード素子3を選択すれば、周波数fで高インピーダンスとすることができる。よって、Cが十分小さいとき、インピーダンスZdnewonは、式(25)に表され、高インピーダンス、つまり開放となる。

【0059】
【数25】
JP0006128653B2_000026t.gif

【0060】
次に、インピーダンスZの虚数成分をゼロとする伝送線路25の電気長Eの周波数依存性について説明する。
図3は、(19)式から算出したインピーダンスZの虚数成分をゼロとする伝送線路25の電気長Eの周波数依存性を示す図であり、横軸が周波数(GHz)を示し、縦軸が電気長(degree)を示す。図3に示すとおり、周波数が2GHzのときの電気長は、78.6度となる。

【0061】
この値を用いて計算したインピーダンスZdnewの虚数成分を図4に示す。
図4は、丸がRdoff=1000ohm(ohm=Ω)、黒く塗られた丸がRdon=10ohmの計算結果を示す。図4に示す通り、周波数が2GHzでダイオード素子3に逆方向電圧を印加している場合(丸のとき、Rdoff=1000ohm)のインピーダンスZdnewの虚数成分はゼロとなる。つまり、インピーダンスは極小となる。
一方、ダイオード素子3に順方向電圧を印加している場合(黒く塗られた丸のとき、Rdon=10ohm)、インピーダンスの虚数成分が約300ohmとなり、インピーダンスが式(26)となり、高くなることがわかる。

【0062】
【数26】
JP0006128653B2_000027t.gif

【0063】
次に、本実施形態における効果について、図5、図6、図7を用いて説明する。図5は、本実施形態におけるダイオード素子33に伝送線路34をシャント接続した2端子回路を示す図である。図6は、従来構成であるダイオード素子43をシャント接続した2端子回路を示す図である。図7は、図5、図6で示した2端子回路について、Sパラメータ(透過特性S21)を計算した結果である。Sパラメータの値が低い場合、シャント接続した回路が高い高周波抑圧特性を有することを示し、Sパラメータの値が負の値から零に近づくほど高い高周波透過特性を有することを示している。なお、横軸が周波数(GHz)を示し、縦軸がSパラメータ(dB)を示す。

【0064】
図7に示すように、本実施形態の構造でダイオード素子33に逆方向電圧を印加している場合(Rdoff=1000ohm)が丸、ダイオード素子に順方向電圧を印加している場合(Rdon=10ohm)が黒く塗られた丸で示している。
また、従来構造でダイオード素子43に逆方向電圧を印加している場合(Rdoff=1000ohm)が三角、従来構造でダイオード素子に順方向電圧を印加している場合(Rdon=10ohm)が黒く塗られた三角で示している。

【0065】
ダイオード素子43のみの従来構造では、全周波数帯域にわたり、一定の周波数特性を示すのに対し、本実施形態の構造では、ダイオード素子33に逆方向電圧を印加している場合、設定周波数が2GHzでSパラメータが極小値となる周波数特性を示す。また、本実施形態の構造では、ダイオード素子33に順方向電圧を印加している場合、設定周波数が2.3GHzでSパラメータが極大値となる周波数特性を示す。

【0066】
つまり、本実施形態の構造では、ダイオード素子33に逆方向電圧を印加している場合(図7中の丸)、Sパラメータが極小値となる周波数2GHzでは、高周波信号が図5に示す回路を介しグランドに流れている。一方、ダイオード素子33に順方向電圧を印加している場合(図7中の黒く塗られた丸)、周波数2GHz帯のSパラメータの値は、Sパラメータが極大値となる周波数2.3GHz時より低い。

【0067】
しかし、本実施形態の構造は、従来の構造におけるダイオード素子43に逆方向電圧を印加した場合(図7中の三角)より高い高周波透過特性を示し、本実施形態において、ダイオード素子33に印加する電圧が、負の順方向電圧V以下で高い高周波抑圧性能を持つことが分かる。

【0068】
次に、本実施形態における整流回路10の動作原理について説明する。
図8(a)は、本実施形態における整流回路10の動作原理を示すイメージ図である。図8(b)は、図1のA点における高周波信号入力直後の電圧変化を示すイメージ図である。図8(c)は、図1の出力端子における定常状態での電圧変化を示すイメージ図である。

【0069】
入力した信号(図8(a))は、容量素子に蓄電されることにより直流電圧は昇圧される。本実施形態の構造は、順方向電圧V以下では高い高周波抑圧性能を有するため、昇圧された高周波信号の負のピーク値が順方向電圧V以下にはならず、順方向電圧V以上となる(図8(b))。昇圧された高周波信号は、フィルタ回路7により高周波成分が除去され、図13(c)に示す理想状態の動作原理と同じ動作となる(図8(c))。

【0070】
次に、本実施形態における整流回路10の変換効率の計算例を図9に示す。なお、ダイオード素子3のパラメータは、市販されているダイオード素子の一般的なパラメータを用いた。また、計算には本実施形態の具体例と、従来回路の具体例を用い、図9に示す丸は本実施形態の整流回路10、黒く塗られた三角は従来の整流回路の結果である。
図10は、本実施形態における整流回路10の具体的な回路図の例である。また、図11は、従来の整流回路の具体的な回路図の例である。

【0071】
図10に示す整流回路は、高周波信号を入力する入力端子51、直流信号を出力する出力端子52、ダイオード素子53、伝送線路54及び56~61、容量素子55、負荷抵抗62を有している。なお、図1で示す入力整合回路6は伝送線路56~58を有している。また、フィルタ回路7は伝送線路59~61を有している。
図11に示す従来の高周波整流回路は、高周波信号を入力する入力端子71、直流信号を出力する出力端子72、ダイオード素子73、伝送線路76~81、容量素子75、負荷抵抗82を有している。図12で示す入力整合回路96は、伝送線路76~78を有している。また、フィルタ回路97は、伝送線路79~81を有している。図9に示す通り、図10に示す整流回路は、従来回路に対し5%以上の高効率化を図れていることが分かる。

【0072】
上述したように、高周波信号を入力する入力端子1と、直流信号を出力する出力端子2と、入力端子に一端が接続された容量素子5と、容量素子5の他端に一端が接続された整合回路6と、整合回路6の他端に一端が接続され、出力端子2に他端が接続されたフィルタ回路7と、整合回路6とフィルタ回路7との接続点に一端(カソード)が接続されたダイオード素子3とを備えた整流回路10において、ダイオード素子の他端(アノード)に一端が接続され、他端が接地された伝送線路4をさらに備え、所定の逆方向電圧が印加された時のダイオード素子3と伝送線路4とを有する直列体のリアクタンス成分が使用周波数において直列共振するように、伝送線路4のパラメータを設定する。これにより、ダイオード素子3等の信号漏洩による昇圧電圧の降下を抑えることができ、高周波-直流変換効率を高めることが可能となる。その結果、より高い周波数帯で電力を無線で受電することが可能となり、電力を送受信するためのアンテナを小型化することができる。また、無線電力伝送装置の小型化と高効率化に寄与することができる。

【0073】
以上述べた実施形態は全て本発明の実施形態を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1、11、21、31、41、51、71、91、101、111 入力端子
2、12、22、32、42、52、72、92、102、112 出力端子
3、33、43、53、73、93 ダイオード素子
4、25、34、54、56~61、76~81 伝送線路
5、14、24、65、75、95 容量素子
6、96 入力整合回路
7、97 フィルタ回路
13、23 抵抗素子
62、82 負荷抵抗
103 接合抵抗
104 接合容量
105 接触抵抗
106 寄生容量
113 抵抗素子
114 容量素子
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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