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明細書 :γ線エネルギースペクトル測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6574550号 (P6574550)
公開番号 特開2015-184188 (P2015-184188A)
登録日 令和元年8月23日(2019.8.23)
発行日 令和元年9月11日(2019.9.11)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明の名称または考案の名称 γ線エネルギースペクトル測定方法
国際特許分類 G01T   1/36        (2006.01)
G01T   1/20        (2006.01)
G01T   7/00        (2006.01)
G01T   1/167       (2006.01)
FI G01T 1/36 A
G01T 1/36 D
G01T 1/20 A
G01T 7/00 A
G01T 1/167 C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 16
出願番号 特願2014-062156 (P2014-062156)
出願日 平成26年3月25日(2014.3.25)
審査請求日 平成29年3月24日(2017.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】谷垣 実
個別代理人の代理人 【識別番号】100099793、【弁理士】、【氏名又は名称】川北 喜十郎
【識別番号】100154586、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 正広
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 輝雄
参考文献・文献 特開2012-233892(JP,A)
特開2012-251918(JP,A)
特開2013-134105(JP,A)
特開2014-025747(JP,A)
国際公開第2014/041836(WO,A1)
特開2005-181196(JP,A)
調査した分野 G01T 1/36
G01T 1/167
G01T 1/20
G01T 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
γ線のエネルギースペクトルを測定する方法であって、
前記測定を行う測定期間の間に、所定地域内でγ線検出器の位置を変えて、前記γ線検出器からの出力の所定期間であって前記測定期間よりも短い期間である所定期間ごとに、前記出力から、前記γ線検出器に入射したγ線の各イベントに対応するγ線のエネルギー情報を抽出することと、
前記所定期間ごとに、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する現在位置情報及び前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する現在時刻情報を取得することと、
前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記γ線のエネルギー情報と、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記現在位置情報と、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記現在時刻情報とを関連付けたエネルギースペクトルマッピングデータであって、前記所定期間ごとのエネルギースペクトルマッピングデータを少なくとも1つ含むデータの組であって、前記γ線のエネルギー情報、前記現在位置情報、前記現在時刻情報の少なくとも1つでソート可能であり、且つ、前記現在位置情報、前記現在時刻情報の少なくとも1つでソートすることにより、前記測定期間内の所望の時間、又は、前記所定地域内の所望の地域に対応する前記エネルギースペクトルマッピングデータを抽出して、前記所望の時間、又は、前記所定地域内の前記所望の地域におけるエネルギースペクトルを作成可能であるデータの組を生成して記憶することと、
を備えるγ線エネルギースペクトル測定方法。
【請求項2】
さらに、前記記憶されたデータを、前記現在位置情報、前記現在時刻情報の少なくとも1つでソートし、前記所望の時間、又は、前記所定地域内の所望の地域におけるエネルギースペクトルを作成することを備える請求項1に記載のγ線エネルギースペクトル測定方法。
【請求項3】
前記γ線検出器は、移動体に搭載されており、
前記移動体が移動している状態で、前記γ線のエネルギー情報を抽出することと、前記現在位置情報及び前記現在時刻情報を取得することとが実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載のγ線エネルギースペクトル測定方法。
【請求項4】
前記γ線検出器は、CsIシンチレーション検出器である請求項1又は2に記載のγ線エネルギースペクトル測定方法。
【請求項5】
前記現在位置情報は、ディファレンシャルGPSを用いて取得されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のγ線エネルギースペクトル測定方法。
【請求項6】
γ線のエネルギースペクトルを測定するγ線エネルギースペクトル測定システムであって、
移動体に搭載されたγ線検出器と、
タイマーと、
位置情報取得機構と、
メモリと、
前記γ線検出器、前記タイマー、前記位置情報取得機構と、前記メモリを制御するコントローラであって、
γ線のエネルギースペクトルを測定する測定期間の間に前記移動体が所定地域内を移動している状態で、前記γ線検出器からの出力の所定期間であって前記測定期間よりも短い期間である所定期間ごとに、前記γ線検出器からの前記出力から、前記γ線検出器に入射したγ線の各イベントに対応するγ線のエネルギー情報を抽出することと、
前記所定期間ごとに、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する現在位置情報及び前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する現在時刻情報を、前記位置情報取得機構及び前記タイマーから取得することと、
前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記γ線のエネルギー情報と、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記現在位置情報と、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記現在時刻情報とを関連付けたエネルギースペクトルマッピングデータであって、前記所定期間ごとのエネルギースペクトルマッピングデータを少なくとも1つ含むデータの組であって、前記γ線のエネルギー情報、前記現在位置情報、前記現在時刻情報の少なくとも1つでソート可能なデータの組を生成して、前記メモリに記憶させることと、
を実行するように構成されたコントローラと、
前記メモリに記憶された前記データの組を、前記現在位置情報、前記現在時刻情報の少なくとも1つでソートすることにより、前記測定期間内の所望の時間、又は、前記所定地域内の所望の地域に対応する前記エネルギースペクトルマッピングデータを抽出して、前記所望の時間、又は、前記所定地域内の前記所望の地域におけるエネルギースペクトルを作成することを実行するように構成されたデータ処理システムと、
を備えるγ線エネルギースペクトル測定システム。
【請求項7】
前記メモリは、前記コントローラと別体のコンピュータに含まれ、
前記コントローラは、前記別体のコンピュータに含まれる前記メモリに対して、前記データを送信するように構成されている請求項6に記載のγ線エネルギースペクトル測定システム。
【請求項8】
前記γ線検出器は、CsIシンチレーション検出器である請求項6又は7に記載のγ線エネルギースペクトル測定システム。
【請求項9】
前記位置情報取得機構は、ディファレンシャルGPSユニットである請求項6~8のいずれか一項に記載のγ線エネルギースペクトル測定システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば移動体に搭載されて、移動しながらγ線のエネルギースペクトルを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
福島第1原子力発電所で発生した大規模な放射性物質の漏洩事故のような原子力災害が発生した場合、漏れ出した放射性物質は半径数十km~数百km(あるいはそれ以上)の広範囲の地域に拡散する。このような原子力災害が発生した場合、空間線量の分布を示すマップ(以下、放射線量率マップと呼ぶ)を作製することは、拡散した放射性物質がどこにどのくらい分布しているかを推定するため、及び、住民の被曝管理や放射性物質の拡散状況を推定するために重要であり、住民の避難区域や屋内退避区域を画定したり、住民が無用の被曝をしないように種々の規制区域を設けたりするために有用である。また、放射線量率マップの作製することは、除染計画や被害を受けた地域の環境修復の計画等を立てる上でも非常に重要である。
【0003】
なお、空間線量率(又は放射線量率)とは、対象とする空間の単位時間当たりの放射線量のことである。放射線の量を、物質が放射線から吸収したエネルギー量(吸収線量)で測定する場合、空間線量率は、吸収線量の単位であるGy(グレイ)を用いてGy/h(グレイ/時)で表される。あるいは、放射線の量を、生体の被曝の影響による生物学的影響の大きさ(線量当量)で測定する場合、空間線量率は、線量当量の単位であるSv(シーベルト)を用いてSv/h(シーベルト/時)で表される。なお、線量当量は、吸収線量に生体への影響に応じた係数をかけることにより求められる。空間線量率をモニターすることにより、放射性物質の漏洩をいち早く検知することができるとともに、必要に応じて、近隣住民に対して避難勧告などの適切な指示を出すことができる。
【0004】
そこで、本発明者らは、福島第1原子力発電所で発生した放射性物質の漏洩事故後の環境の汚染状況を把握するために、放射線量率(γ線の空間線量率等)を容易に、且つ、長期的に計測するために好適な放射線量率マップデータ収集システムとして、KURAMAシステム(Kyoto University RAdiation MAppingシステム)の開発を行った(特許文献1参照)。さらに、特許文献2に示されるように、放射線計測に不慣れなユーザーであっても容易且つ正確に放射線量率マップデータを収集することができる放射線量率マップデータ収集システムとして、KURAMAシステムを改良したKURAMA-IIシステムの開発も行ってきた。
【0005】
そして、後述のように、KURAMA-IIシステムは、すでに福島県などにおいて、実用化に向けた試験が行われている。例えば、福島市内、郡山市内において、定期的に所定のルートを巡回する一部の路線バスには、KURAMA-IIシステムが搭載されており、路線バスのルート上の空間線量率測定を行うために用いられている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2013-032926号公報
【特許文献2】特開2013-134105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
KURAMA-IIシステムは、γ線の空間線量率を測定しうるだけではなく、後述のように、エネルギースペクトルを測定することも可能である。ここで、従来、ある地点において、γ線のエネルギースペクトルを測定する際には、γ線検出器をその地点に設置して、カウント数が十分な統計量に達するまで、数分~数時間にわたって測定を継続するのが一般的であった。この場合において、複数の測定区画を設定して、これらの複数の測定区画にわたって面的な測定を行うためには、検出器の設置→測定→移動→検出器の設置→測定→移動を繰り返す必要があった。KURAMA-IIシステムのように、車などの移動体に搭載して測定を行う場合においても、目的とする測定区画内で十分な統計量が得られるような遅い速度で移動することが必要であった。しかしながら、一般の交通との兼ね合いで、そのような測定を実施することは困難であった。
【0008】
本発明の目的は、車などの移動体に搭載して、所望の速度で移動しながら、複数の測定区画にわたって、面的にγ線のエネルギー測定を行うことができるγ線エネルギー測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に従えば、γ線のエネルギースペクトルを測定する方法であって、
前記測定を行う測定期間の間に、所定地域内でγ線検出器の位置を変えて、前記γ線検出器からの出力の所定期間であって前記測定期間よりも短い期間である所定期間ごとに、前記出力から、前記γ線検出器に入射したγ線の各イベントに対応するγ線のエネルギー情報を抽出することと、
前記所定期間ごとに、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する現在位置情報及び前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する現在時刻情報を取得することと、
前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記γ線のエネルギー情報と、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記現在位置情報と、前記γ線検出器に入射したγ線の前記各イベントに対応する前記現在時刻情報とを関連付けたエネルギースペクトルマッピングデータであって、前記所定期間ごとのエネルギースペクトルマッピングデータを少なくとも1つ含むデータの組であって、前記γ線のエネルギー情報、前記現在位置情報、前記現在時刻情報の少なくとも1つでソート可能であり、且つ、前記現在位置情報、前記現在時刻情報の少なくとも1つでソートすることにより、前記測定期間内の所望の時間、又は、前記所定地域内の所望の地域に対応する前記エネルギースペクトルマッピングデータを抽出して、前記所望の時間、又は、前記所定地域内の前記所望の地域におけるエネルギースペクトルを作成可能であるデータの組を生成して記憶することと、
を備えるγ線エネルギースペクトル測定方法が提供される。
【0010】
本発明のγ線エネルギースペクトル測定方法によれば、例えば、γ線検出器を移動体に搭載することにより、移動しつつ、所望の測定区画におけるγ線のエネルギースペクトルを測定することができる。そして、測定後又は測定中に、所望の地点及び/又は所望の時間に関するγ線のエネルギースペクトルを再構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車などの移動体に搭載して、所望の速度で移動しながら、複数の測定区画にわたって、面的にγ線のエネルギー測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はKURAMAシステム1の概略図である。
【図2】図2はNaIシンチレーション検出器10の概略図である。
【図3】図3は3次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカーを表示した空間線量率マップの一例である。
【図4】図4は、2次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカが表示された空間線量率マップの一例である。
【図5】図5はKURAMA-IIシステムの概略図である。
【図6】図6はCsIシンチレーション検出器の概略図である。
【図7】図7はパルス波高スペクトルの一例である。
【図8】図8は実証実験において、福島市内に適用したメッシュを示す図である。
【図9】図9は再構成した福島駅前(図8中のバルーンの示すメッシュ)のエネルギースペクトルである。
【図10】図10は40Kの崩壊図式である。
【図11】図11は134Csの崩壊図式である。
【図12】図12は137Csの崩壊図式である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述のように、本発明者は、本実施形態に係るγ線エネルギースペクトル測定システムの開発に先がけて、KURAMAシステム及びその改良版であるKURAMA-IIシステムと呼ばれる放射線量率マップデータ収集システムを開発した。ここで、KURAMAとは、「Kyoto University RAdiation MApping」の略であり、本発明者を中心にして京都大学において開発された空間線量率マップを作製するためのシステムである。

【0014】
本実施形態に係るγ線エネルギースペクトル測定システムは、KURAMA-IIシステムを改良したものである。そこで、本実施形態に係るγ線エネルギースペクトル測定システムについて説明する前に、先ず、本発明者が中心となって開発されたKURAMAシステム1(放射線量率マップデータ収集システム)及びその改良版であるKURAMA-IIシステム100について説明する。
<KURAMAシステム1の概略>

【0015】
図1に示されるように、KURAMAシステム1は空間線量率を測定する放射線測定器としてのNaIシンチレーション検出器10と、全地球測位システム(GPSシステム)を利用して現在位置の情報を取得するGPSユニット20(位置情報取得機構)と、NaIシンチレーション検出器10及びGPSユニット20により取得されたデータ(線量率データ及び位置データ)を処理するデータ処理システム30と、NaIシンチレーション検出器10からのアナログ出力をA/D変換してデータ処理システム30に取り込むためのインターフェースユニット40と、データ処理システム30により処理されたデータを後述のサーバ90に送信するデータ送信ユニット50とを主に備える。

【0016】
図2に示されるように、NaIシンチレーション検出器10は、発光中心としてのタリウム(Tl)がドープされたNaI結晶11及びNaI結晶11に光学的に接続された光電子増倍管(不図示)が内部に配置された円筒形状の測定部12と、光電子増倍管に所定の電圧を印加する高圧電源や光電子増倍管からの出力信号を成形し波高分別するための電子回路が配置された本体部13と、測定部12及び本体部13を電気的に接続するケーブル14とを主に備える。本体部13には、測定された、単位時間あたりの放射線(γ線又はX線)の線量(以下、空間線量率という)を表示するメータ13a、NaIシンチレーション検出器10の測定レンジを切り替えるレンジスイッチ13b、測定された空間線量率に対応したアナログ電圧信号を出力する出力部13c等が設けられている。

【0017】
ここで、NaI結晶11の内部にγ線、X線などの放射線が入射した場合、NaI結晶11を構成する原子と放射線との相互作用により、高エネルギーの電子が放出されることがある。放出された高エネルギーの電子は、周りの原子を励起させつつエネルギーを失うが、励起された周りの原子からはシンチレーション光が発せられる。言い換えると、放出された高エネルギーの電子の運動エネルギーがシンチレーション光に変換される。このシンチレーション光の光量は、放出された電子の運動エネルギーの大きさに依存し、放出された電子の運動エネルギーの大きさは、NaI結晶11を構成する原子と放射線との相互作用の大きさに依存する。このことから、NaI結晶11から発せられるシンチレーション光の光量を測定することにより、γ線、X線などの放射線がNaI結晶11を構成する原子との相互作用によって結晶内部で失ったエネルギーの大きさを求めることができる。具体的には、NaI結晶11から発せられたシンチレーション光の光量を、NaI結晶11に光学的に接続された不図示の光電子増倍管により測定する。光電子増倍管からの出力信号は、本体部13に配置された電子回路により信号処理され、空間線量率が求められる。測定された空間線量率がメータ13aに表示されるとともに出力部13cから空間線量率の大きさに応じたアナログ電圧信号(例えば、0~10mV)が出力される。

【0018】
インターフェースユニット40は、出力部13cから出力されるアナログ電圧信号を増幅するオペアンプ41と、オペアンプ41により増幅されたアナログ電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換器42とを主に備える。なおオペアンプ41は、例えば0~10mVの低電圧のアナログ電圧信号を0-10Vのアナログ電圧信号に増幅する。

【0019】
インターフェースユニット40のAD変換器42によりAD変換された、空間線量率に関する情報を含むデジタル信号(以下、空間線量率信号と呼ぶ)と、現在位置の情報を含むGPSユニット20からの出力信号(以下、GPS出力信号と呼ぶ)とがデータ処理システム30に入力される。データ処理システム30は、空間線量率信号とGPS出力信号から、現在位置に関する情報(測定位置データ)を抽出するとともに、その位置での空間線量率データを抽出する。そして、測定位置データ(例えば、緯度情報及び経度情報)と空間線量率データとを関連付けて空間線量率マップデータ(放射線量率マップデータ)を作成し、これをテキストファイルに記録する。このテキストファイルには、1~10秒間隔で、空間線量率マップデータ(すなわち、測定位置データ及びその位置における空間線量率データ)が追加更新される。

【0020】
空間線量率マップデータが順次記載されたテキストファイルは、データ送信ユニット50によりサーバ90に送信される。サーバ90上に置かれたファイルは、他のユーザとの間で共有することも可能である。

【0021】
上述のように、テキストファイルには、測定位置データと、それに関連付けられた空間線量率データとが記載されているので、これを用いて空間線量率マップを作製することができる。具体的には、例えば白地図を用意して、白地図上の測定位置に対応する箇所に、空間線量率の大きさによって色分けされたマーカー(例えばドットなど)を表示してもよい。あるいは、等高線マップを作製してもよい。

【0022】
また、測定位置データ及び空間線量率データを、電子地図データ(例えば、Google社のGoogle Earth(登録商標)等)と組み合わせることも可能である。この場合には、上述のようなGoogle社のGoogle Earth(登録商標)を用いて、3次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカが表示された空間線量率マップ(図3参照)や、2次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカが表示された空間線量率マップ(図4参照)などの、視覚的に分かり易い空間線量率マップを形成することができる。
<KURAMA-IIシステム100の概略>

【0023】
さらに、本発明者が中心となって、上記KURAMAシステム1を、単に空間線量率のデータを収集するだけでなく、γ線のエネルギー測定も同時に行えるように改良し、以下のようなKURAMA-IIシステム100を開発した。

【0024】
以下、図5を参照しつつ、KURAMA-IIシステム100について説明する。なお、上述のKURAMAシステム1と相違する点について説明することとし、共通する構成要素については同一の参照符号を付してその説明を省略する。

【0025】
図5に示すように、KURAMA-IIシステム100は、CsIシンチレーション検出器110と、GPSユニット20と、データ処理システム30と、インターフェースユニット140と、データ送信ユニット50と、コントローラ160とを有する。後述のように、インターフェースユニット140は、National Instrument社のCompact RIOシステムにより実現されている。また、前述のKURAMAシステム1においては、データ処理システム30はネットブックと呼ばれる軽量、小型のノート型パソコンにおいて起動するプログラムにより実現されていた。KURAMA-IIシステム100においては、インターフェースユニット140を構成するCompact RIOシステムに搭載される小型のPCモジュールにおいて起動するプログラムにより実現されている。また、GPSユニット20及びデータ送信ユニット50も、PCモジュールに対して、USBなどを介して取り付けられる小型モジュールである。また、コントローラ160も、同じPCモジュールにより実現されている。つまり、KURAMA-IIシステム100は、実質的には、インターフェースユニット140、データ処理システム30、コントローラ160等を構成するCompact RIOシステムと、CsIシンチレーション検出器110と、GPSユニット20及びデータ送信ユニット50等の小型モジュールとによって構成されている。そして、これらの各装置(ユニット)は同一の筐体の中に配置することも可能である。そのため、KURAMAシステム1に比べて、格段に携帯性に優れているとともに、ユーザーが各ユニットの接続作業を行う必要がほとんどないため、誤接続などのトラブルの発生を抑えることができる。

【0026】
また、KURAMA-IIシステム100においては、NaIシンチレーション検出器10に代えて、CsIシンチレーション検出器110を採用している。その理由は以下の通りである。一般に、物質とγ線との相互作用は、物質を構成する元素の原子番号が大きくなるほど大きくなることが知られている。ここで、Naの原子番号は11であるのに対して、Csの原子番号は55であることから、NaIシンチレーション検出器とCsIシンチレーション検出器とを比べると、CsIシンチレーション検出器の方がγ線に対する感度が高いと言える。そのため、KURAMA-IIシステム100においては、NaIシンチレーション検出器10に代えてCsIシンチレーション検出器110を採用することにより、γ線に対する感度を維持しつつ、システム全体をKURAMAシステム1と比べてさらに小型軽量化することができた。

【0027】
また、図6に示すように、CsIシンチレーション検出器110は、CsI結晶111と、CsI結晶111に光学的に接続された光電子増倍管、MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)等の受光素子112と、受光素子112からの出力されるパルス信号を出力するパルス信号出力部113とを有する。なお、KURAMA-IIシステム100においては、受光素子112としてMMPCを採用している。MMPCは複数のガイガーモードAPD(アバランシェ フォトダイオード)のピクセルを含む、常温で使用できる小型の光半導体素子であり、光電子増倍管と比較して低電圧で動作可能であるとともに、磁場の影響を受けにくいという優れた特性を有している。

【0028】
インターフェースユニット140は、パルス信号出力部113から出力されるパルス信号を増幅するアンプ(パルスシェーピングアンプ)141と、アンプ141の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号(デジタル値)に変換するAD変換器142と、FPGA143と、CPU144とを有する。なお、FPGA143とはField Programmable Gate Arrayの略であり、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路である。KURAMA-IIシステム100においては、インターフェースユニット140として、National Instrument社製のCompact RIOシステムを採用している。上述のアンプ141、AD変換器142、FPGA143、CPU144は、Compact RIOシステムに搭載されるモジュールとして実装されている。なお、前述のように、CPU144は、Compact RIOシステムに搭載されるPCモジュールにより実現されており、このPCモジュールはデータ処理システム30及びコントローラ160を兼ねている。ここで、Compact RIOシステムは、再構成可能な組込制御、集録システムであり、上述のLabVIEW(登録商標)を用いて各モジュールを直接制御するプログラムを容易に作製することができる。また、KURAMA-IIシステム100においては、FPGA143を用いることにより、AD変換器142から出力されるデジタル信号に基づいて、パルスのピーク高さの波高弁別、及びノイズレベルのディスクリミネーションをソフトウェア的に実現している。FPGA143により得られたパルスのピーク高さに関する情報はCPU144へ送られ、CPU144は、図7に示されるようなパルス波高スペクトルを作製する。

【0029】
図7に示されるパルス波高スペクトルの横軸のチャンネル(CH)はパルス波高を表し、縦軸は各CHのカウント数を表す。ここで、パルス信号出力部113から出力されるパルス信号の波高はCsI結晶111内で失われたγ線のエネルギーに比例する。つまり、図7に示されるパルス波高スペクトルは、γ線のエネルギースペクトルに対応する。図7に示されるパルス波高スペクトルは、137Csの標準線源を用いて測定されたものであり、約80CHの位置に見られるピークが、661.7keVのγ線(図12参照)の光電ピークに対応する。なお、光電ピークとは、光電効果によって発生した高エネルギーの電子がCsI結晶111中で全エネルギーを失うことによって発生したパルスに対応するピークである。ここで、光電効果とは、CsI結晶111を構成する原子とγ線との相互作用を通じてγ線の全エネルギーが原子に与えられてγ線が消滅する代わりに、当該原子から、消滅したγ線のエネルギーとほぼ同じ運動エネルギーを持った高エネルギーの電子が放出される現象をいう。つまり、図7の約80CHの位置に見られるピークは、137Csの標準線源から放出された661.7keVのγ線の全エネルギーがCsI結晶111内で失われた場合に発生するパルスに起因するピークである。

【0030】
このように、KURAMA-IIシステム100は、単に空間線量率の測定を行うだけでなく、CsIシンチレーション検出器110からの出力パルス信号のパルス波高スペクトルを測定できるように構成されているため、γ線のエネルギー測定も同時に行うことができる。
<KURAMA-IIシステム100の改良について>

【0031】
上述のように、KURAMA-IIシステム100においては、γ線のエネルギー測定を行うことができたが、得られるエネルギースペクトルは、測定時間全体にわたって測定されたエネルギースペクトルであり、複数の所望の測定区画(以下、メッシュともいう)について、各メッシュ毎のエネルギースペクトルを得ることはできなかった。そこで、本発明者は、KURAMA-IIシステム100を、所望の速度で移動しながら複数の測定区画にわたって面的にγ線のエネルギー測定を行うことができるようにするために、以下に述べるような改良を行い、KURAMA-IIシステム100Aを開発した。

【0032】
ここで、改良前のKURAMA-IIシステム100においては、CsIシンチレーション検出器110のパルス信号出力部113から出力されるパルス信号は、アンプ141で増幅及び成形され、AD変換器142でデジタル信号に変換される。これにより、AD変換器142から、パルスのピーク高さの波高データ(以下、パルス波高データという)が出力される。ここで、パルス信号出力部113から出力されるパルス信号の波高はCsI結晶111内で失われたγ線のエネルギーに比例する。つまり、パルス波高データは、CsIシンチレーション検出器110に入射したγ線のエネルギー情報を含んでおり、パルス信号出力部113から出力されるパルス信号の波高と、CsI結晶111内で失われたγ線のエネルギーとの校正曲線を用意することにより、パルス波高データからγ線のエネルギー情報を得ることが可能である。そのことを利用して、KURAMA-IIシステム100においては、AD変換器142から出力されるデジタル信号に基づいて、FPGA143によりパルスのピーク高さの波高弁別、及びノイズレベルのディスクリミネーションをソフトウェア的に行い、得られたパルスのピーク高さに関する情報をCPU144へ送り、図7に示されるようなパルス波高スペクトルを作製していた。

【0033】
これに対して、本実施形態に係る、改良されたKURAMA-IIシステム(以下、KURAMA-IIシステム100Aと記載する)においては、上述のようなパルス波高スペクトルを作製するだけではなく、AD変換器142からパルス波高データが出力されるたびに、当該パルス波高データと、その時点におけるGPS出力信号から抽出された測定位置データと、時刻データとを関連付けて、エネルギースペクトルマッピングデータを作製している。ここで、KURAMA-IIシステム100Aは、KURAMA-IIシステム100のデータ処理システム30を修正し、おおむね3~5秒の測定間隔でまとめたパルス波高データに、測定位置データと時刻データを付加できるようにしている。そして、このように改良されたKURAMA-IIシステム100Aにおいては、得られたエネルギースペクトルマッピングデータを、所定の時間間隔で、ネットワークを介して所定のサーバに送信するように構成されている。そして、測定後(又は測定中)に、サーバに蓄積されたエネルギースペクトルマッピングデータを測定位置データ及び/又は時刻データでソートすることにより、所望の位置及び/又は時刻におけるエネルギースペクトルを構築することが可能となった。

【0034】
このように改良されたKURAMA-IIシステム100Aを、福島市内中心部を走行する路線バスに搭載し、2013年4月20日~4月30日の11日間にわたって、エネルギースペクトルマッピングデータの取得を行う実証実験を行った。そして、取得したエネルギースペクトルマッピングデータから、福島市内中心部を1kmメッシュで区切った各メッシュごと(図8参照)にエネルギースペクトルを再構成した。なお本実証実験においては、KURAMA-IIシステム100Aにより取得されたエネルギースペクトルマッピングデータは、ネットワークを介して、SQLデータベースであるsqliteに地理情報処理の機能拡張を施すspatialiteを追加したものに蓄積した。蓄積されたデータについて総務省第3次地域区画(約1kmの区画に相当)ごとに抽出し、エネルギースペクトルを構築した。

【0035】
ここで、KURAMA-IIシステム100Aの、路線バス内での設置位置は車内後部座席後方センターライン側と決められている。複数の路線バスに搭載された複数のKURAMA-IIシステム100Aを用いて実証実験が行われたが、いずれのKURAMA-IIシステム100Aも路線バス内のほぼ同じ位置に設置されているため、上記測定期間内にわたって、ほぼ同一の測定条件が維持されていると言える。これにより、複数のKURAMA-IIシステム100Aから得られたエネルギースペクトルマッピングデータを積算することが可能となる。

【0036】
福島市中心部のあるメッシュ(図8参照)において、2013年4月20日~4月30日の間に、約11時間の積算データが得られ、図9のようなエネルギースペクトルを再構成することができた。図9に示されるエネルギースペクトルでは、137Cs、134Cs、40Kのγ線に由来するピークが弁別できており、この地域における天然核種と事故由来核種の存在比等の推定が可能になることがわかった。なお、図10に示されるように、40Kからは100崩壊あたり10.7回の確率で1460.8keVのエネルギーのγ線が放出される。また、図11に示されるように、134Csからは795.8keVのエネルギーのγ線が100崩壊あたり85.4回の確率で放出され、604.7keVのエネルギーのγ線が100崩壊あたり97.6回の確率で放出され、1365.2keVのエネルギーのγ線が100崩壊あたり3.04回の確率で放出される。また、図12に示されるように、137Csからは661.7keVのエネルギーのγ線が100崩壊あたり85.1回の確率で放出される。

【0037】
このように、上記実証実験においては、得られたエネルギースペクトルマッピングデータから、特定のメッシュに対応するデータを抽出することにより、当該メッシュにおけるエネルギースペクトルの再構成を行えることがわかった。さらに、エネルギースペクトルマッピングデータには、測定位置データだけではなく、時刻データも含まれている。そのため、時刻データを用いてソートすることにより、特定の時間において測定されたエネルギースペクトルを再構成することも可能である。あるいは、時刻データと測定位置データの両方を用いてソートすることによって、特定の時間において特定のメッシュで測定されたエネルギースペクトルを再構成することも可能となる。例えば、特定のメッシュにおけるエネルギースペクトルを、1日ごとに作製することもできる。この場合には、当該メッシュにおけるエネルギースペクトルの1日ごとの変動を調べることができる。

【0038】
このように、エネルギースペクトルマッピングデータとして、パルス波高データに測定位置データと時刻データを付加することにより、所望の時間及び/又は場所におけるエネルギースペクトルを再構成することができるようになった。これにより、例えば路線バスにKURAMA-IIシステム100Aを搭載する場合のように、定期的に所定のルートを巡回する移動体にKURAMA-IIシステム100Aを搭載した場合において、目的に応じて種々の時間、測定区画におけるエネルギースペクトルを自由に再構築できるようになった。

【0039】
なお、従来の方法のように、メッシュごとの測定地点でエネルギースペクトルの測定を行い、エネルギースペクトルを取得した後に次の測定地点へ移動して測定することを繰り返す場合には、専門の測定員や機材を占有して実施する必要があった。そして、この場合には、メッシュ内の代表点での測定に限定されてしまうため、その代表点の選定を間違えた場合、メッシュの範囲の代表値としてふさわしくないデータとなる恐れがあった。これに対して、本実施形態に係るKURAMA-IIシステム100Aを用いる場合においては、メッシュ内を移動しながら測定を行うことができる。そのため、そのメッシュ内の複数の地点における測定データを用いることが可能となり、そのメッシュ内の平均的な特性に近いデータを得ることができると考えられる。

【0040】
また、例えば、KURAMA-IIシステム100Aを路線バスに搭載して、路線バスの走行ルートに沿った測定を行う場合において、ある地点において急激にγ線量が変動することがありうる。例えば、実際にあった例として、陽電子放射断層撮影(PET診断)を行うために放射性薬剤を投与された患者が、路線バスを利用して帰宅することが挙げられる。この場合には、放射性薬剤を投与された患者が、KURAMA-IIシステム100Aを搭載した路線バスに乗ったときから、路線バスを降りるまでの間、路線バス内部におけるγ線量が急激に増えることになる。

【0041】
このような場合においても、本実施形態に係るKURAMA-IIシステム100Aを用いた場合には、所望の時間ごとのエネルギースペクトルの変化を追うことができる。これにより、γ線量が急激に増加している区間のデータを取り除くことができ、放射性薬剤を投与された患者から発せられたγ線の影響を取り除くことが可能となる。このように、本実施形態に係るKURAMA-IIシステム100Aを用いた場合には、エネルギースペクトルに何か異変が生じた場合には、所望の時間ごと、あるいは、所望の測定区画ごとのエネルギースペクトルを構成して、エネルギースペクトルの変化を追うことが可能である。それによって、異変の原因を突き止めることが容易になるとともに、必要であれば、異変が発生している期間(あるいは測定区画)のデータを取り除くことができ、測定データを無駄にすることなく有効に利用することができる。あるいは、除染作業を行った場合に、除染作業を行った区画における、除染作業の前後でのエネルギースペクトルを比較することが容易となり、除染の効果を容易に検証することができる。また、新たにホットスポット(空間線量率が高くなっている地点)が発生してしまった場合、そのホットスポットがいつどこに発生したのかを突き止めることも容易となる。

【0042】
以上の説明において、空間線量率を計測する放射線計測器として、NaIシンチレーション検出器10又はCsIシンチレーション検出器110を例に挙げて説明してきた。しかしながら本発明はこのような構成には限られず、γ線のエネルギースペクトルを測定しうる限りにおいて、任意の放射線計測器を用いることができる。例えば、NaIシンチレーション検出器、CsIシンチレーション検出器のような固体シンチレーション検出器に限らず、Ge検出器のような半導体検出器を用いることができる。ここで、Ge検出器などの半導体検出器は、γ線に対する感度がある程度高く、エネルギー分解能も高いという利点を有している。しかしながら、測定中は液体窒素などで冷却し続ける必要があることや、検出器からの信号を取り出して処理するために非常に複雑な電子回路が必要となるなど、その取り扱いが困難である。これに対して、固体シンチレーション検出器は取り扱いが容易であり、本発明に用いられる放射線計測器として好ましい。

【0043】
上述の説明においては、インターフェースユニット140が、パルス信号出力部113から出力されるパルス信号を増幅するアンプ(パルスシェーピングアンプ)141と、アンプ141の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号(デジタル値)に変換するAD変換器142と、FPGA143と、CPU144とを有しており、これらのアンプ141、AD変換器142、FPGA143、CPU144は、Compact RIOシステムに搭載されるモジュールとして実装されていたが、本発明はこれには限られず、必要に応じて任意の構成にすることができる。例えば、CsIシンチレーション検出器に、アンプ及びADCが組み込まれている場合には、CsIシンチレーション検出器からADCにより変換されたデジタル信号が出力される。このような構成においては、インターフェースユニット140はCsIシンチレーション検出器から出力されるデジタル信号に基づいてエネルギースペクトルマッピングデータを作製するように構成されていてもよい。例えば、浜松ホトエレクトロニクス社製のC12137は、CsIシンチレーション検出器にアンプ、ADCが組み込まれており、ADCの出力信号がUSB出力されるように構成されている。このような検出器を採用することも可能である。

【0044】
また、上述の説明においては、データ処理システム30としてCompact RIOシステムに搭載される組み込み型のPCモジュールを用い、データ処理システム30とその他の機器(例えばデータ送信ユニット50やGPSユニット20等)はデータ処理システム30とは独立の機器として設けられていた。しかしながら本発明はこれには限られず、KURAMA-IIシステム100Aのさらなる小型軽量化を実現するために、KURAMA-IIシステム100Aを構成する各構成部分の一部又は全部を、一体に形成してもよい。例えば、GPSユニット20とデータ送信ユニット50とを組み込んだモジュールを作製し、インターフェースユニット140等を構成するCompact RIOシステムに組み込んでもよい。また、上述の説明において、データ処理システム30、CPU144及びコントローラ160は、Compact RIOシステムに実装される1個のPCモジュールにより実現されていたが、本発明は必ずしもこのような構成には限られない。例えば、コントローラ160、CPU144、データ処理システム30がそれぞれ独立のPCモジュールによって実現されていてもよい。また、Compact RIOシステムの、モジュールが挿抜されるシャーシにもCPUを含む小型コンピュータが搭載されており、必ずしもPCモジュールを使用しなくても、シャーシに含まれる小型コンピュータにより各モジュールの制御を行うことが可能である。そして、上述のコントローラ160、CPU144、データ処理システム30の一部又は全部をシャーシに含まれる小型コンピュータにより実現することも可能である。また、上述の説明においては、測定されたエネルギースペクトルマッピングデータは、ネットワークを介してSQLデータベース等の所定のサーバに送信されていた。しかしながら、本発明はこのような構成には限られない。例えば、測定されたエネルギースペクトルマッピングデータは、コントローラ160を構成するコンピュータに含まれるメモリ手段(半導体メモリやHDD等)に保存されてもよく、コントローラ160を構成するコンピュータとは別のコンピュータに含まれるメモリ手段に保存されてもよい。

【0045】
また、上述の説明においては、インターフェースユニット140とCsIシンチレーション検出器110とは、1つの筐体の内部に配置されていたが、本発明は必ずしもこのような構成には限られず、これらが独立に設けられていてもよい。また、本発明のインターフェースユニット140、データ処理システム30、コントローラ160は、必ずしもNational Instrument社製のCompact RIOシステムを採用する必要はなく、必要に応じて任意のシステムを採用しうる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本実施形態に係るKURAMA-IIシステム100Aの別の用途として、農業への応用が考えられる。福島第1原子力発電所で発生した放射性物質の漏洩事故に伴い、しばしば放射性物質による汚染の基準値超えにより農作物の出荷停止処分が取られている。これは、土壌中の放射性セシウムが作物の可食部に移行するためであり、この移行を抑制することが安全な食品の提供のためにきわめて重要な課題である。作物の可食部に移行する放射性セシウムの量は、土壌中のセシウムの量だけに依存するとは限らないことがわかっている。例えば、米などにおいては、可食部に移行する放射性セシウムの量は、土壌中のセシウム濃度だけではなく、カリウム濃度にも依存することが知られており、土壌中の放射性セシウム濃度、及び、カリウム濃度の両方を精度よく測定することが求められている。しかしながら、従来は土壌のサンプルを取得して、土壌中に含まれる放射性セシウムの濃度や土壌中のカリウムの濃度を調べる必要があったため、検査に手間と時間がかかり、広い農地を網羅的に測定することは困難であった。
【0047】
これに対して、本実施形態に係るKURAMA-IIシステム100Aは、徒歩用の構成として、バッテリーで駆動するように構成でき、且つ、GPSとして高精度のDGPS(ディファレンシャルGPS)を利用することもできる。徒歩用に構成されたKURAMA-IIシステム100Aは軽量で可搬性に優れており、人が背負って農地内を徒歩で移動しつつ測定することができる。あるいは、耕耘機などの農業機械に搭載することも可能である。この際、DGPSを用いることにより、徒歩のような低速での移動に伴う位置の変化も、十分な分解能で測定することが可能である。このような、徒歩用に構成されたKURAMA-IIシステム100Aを用いることにより、容易に農地内の放射性セシウムの分布状況を把握することが可能となる。ここで、カリウムは1gあたり約30Bqの天然放射性同位体カリウム40Kを含んでいる。40Kは、100崩壊あたり10.7回の確率で、軌道電子を捕獲して40Arに崩壊することが知られている(図10参照)。40Kが40Arへ崩壊する際に、1460.9keVのγ線が放出されるため、このγ線の量から土壌中の40Kの濃度(ひいては、土壌中のカリウム濃度)を測定することができる。そのため、カリウムを散布した農地において、上述のような徒歩用に構成されたKURAMA-IIシステム100Aを用いたγ線のエネルギースペクトル測定を行うことにより、農地内の放射性セシウムの分布状況だけでなく、カリウムの分布状況も同時に把握することができる。つまり、農地内のカリウムとセシウムの比の状況をつぶさに把握する事が出来る。これらをもとに除染やカリウムの追加施肥を行えば、農作物への放射性セシウムの移行を低減させるために大きく貢献することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 KURAMAシステム
10 NaIシンチレーション検出器
20 GPSユニット
30 データ処理システム
40 インターフェースユニット
100 KURAMA-IIシステム
100A 改良したKURAMA-IIシステム
110 CsIシンチレーション検出器
140 インターフェースユニット
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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