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明細書 :静電駆動可変ミラー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6339381号 (P6339381)
公開番号 特開2015-161765 (P2015-161765A)
登録日 平成30年5月18日(2018.5.18)
発行日 平成30年6月6日(2018.6.6)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明の名称または考案の名称 静電駆動可変ミラー
国際特許分類 G02B  26/06        (2006.01)
B81B   3/00        (2006.01)
G02B   7/188       (2006.01)
FI G02B 26/06
B81B 3/00
G02B 7/188
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2014-036315 (P2014-036315)
出願日 平成26年2月27日(2014.2.27)
審査請求日 平成28年12月8日(2016.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】土屋 智由
個別代理人の代理人 【識別番号】100114502、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 俊則
審査官 【審査官】堀部 修平
参考文献・文献 米国特許第05867302(US,A)
米国特許第07929195(US,B1)
米国特許出願公開第2002/0109894(US,A1)
国際公開第2009/060906(WO,A1)
調査した分野 G02B 26/06 - 26/08
B81B 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
反射面と前記反射面とは反対側の裏面とを有するミラーと、
前記ミラーの前記裏面との間に間隔を設けて前記裏面に対向し、前記裏面に対向する電極を有する可動部と、
前記可動部を、前記ミラーに対して接離する方向に移動可能に保持する固定部と、
前記ミラーと前記可動部との間に配置され、前記ミラーと前記可動部との少なくとも一方に固定され、前記ミラーと前記可動部の間隔を保つ接続部と、
を備え
前記電極と前記ミラーとの間の電位差によって静電力が生じ、前記静電力によって前記ミラーが前記可動部に対して傾き、前記ミラーの傾きに伴って前記可動部が移動するように構成されたことを特徴とする、静電駆動可変ミラー。
【請求項2】
前記固定部は、前記可動部との間に間隔を設けて前記可動部を収容し、
記可動部が前記ミラーに対して接離する前記方向に互いに間隔を設けて配置され、前記可動部と前記固定部とに接続された第1及び第2の梁部をさらに備えたことを特徴とする、請求項に記載の静電駆動可変ミラー。
【請求項3】
前記接続部が、前記ミラーと前記可動部との両方に固定されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の静電駆動可変ミラー。
【請求項4】
前記接続部は、前記ミラーと前記可動部とのうち一方のみに固定され、
前記可動部と前記固定部とを接続し、前記可動部を前記ミラー側に付勢し、前記ミラーと前記可動部とのうち他方と前記接続部との接触を保持する支持部をさらに備えたことを特徴とする、請求項1または2に記載の静電駆動可変ミラー。
【請求項5】
一つの前記ミラーと、
複数の前記可動部と、
複数の前記接続部と、
を備えたことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の静電駆動可変ミラー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静電駆動可変ミラーに関し、詳しくは、静電力で反射面の形状を変化させる静電駆動可変ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
眼底観察や天体観測などにおいて高精細な画像を得るために、波面補償ミラーが用いられている。波面補償ミラーは、反射面の形状を変形させることによって、入射光の持つ波面のずれを反射時に補正する。
【0003】
例えば図19の断面図に示す静電駆動可変ミラーは、反射膜115とは反対側に複数個の電極116a~116eが配置され、電極116a~116eに印加する電圧を電圧制御回路120によって制御することによって、反射膜115を変形させる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、撮影装置における像振れ補正を行うための手段として、例えば図20の説明図に示す可変ミラー111が提案されている。この可変ミラー111は、反射部204を有する上部基板201が、下部基板201のピボット261によって一点で支持され、バネ251~254を介して連結されている。上部基板201に形成された上部電極202と下部基板201に形成された複数の下部電極222~225との間の電位差を調整し、上部電極203と下部電極222~225との間の静電力によって上部基板201の傾斜方向と傾斜角を変えることができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-221579号公報
【特許文献2】国際公開第2004/109359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
波面補償ミラーを、半導体微細加工技術によって微小な機械構造体を作製するMEMSで実現する場合、電磁,圧電,静電などの駆動方式のうち、特許文献1のような静電駆動方式を用いると、デバイス構造が比較的単純になる。
【0007】
しかしながら、静電駆動方式では、駆動に用いる静電力が、電極間隔の二乗に反比例し、電極間に印加する駆動電圧の二乗に比例する。そのため、波面補償に大きな変形が必要となる場合には、ストロークを確保するために電極間隔が大きくなり、その結果、駆動電圧は、例えば100V以上と高くなる。
【0008】
特許文献2のようにミラーを一点で支持して静電駆動する場合、ミラーの傾きが変化するだけであり、アレイ化しただけではミラーに大変位を与えられない。また、電極面積を大きくして駆動力を大きくすると、ミラーを傾ける角度が小さくなりかえって変形量が小さくなる。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み、低い駆動電圧でも反射面の変形量を大きくすることができる静電駆動可変ミラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した静電駆動可変ミラーを提供する。
【0011】
静電駆動可変ミラーは、(a)反射面と前記反射面とは反対側の裏面とを有するミラーと、(b)前記ミラーの前記裏面との間に間隔を設けて前記裏面に対向し、前記裏面に対向する電極を有する可動部と、(c)前記可動部を、前記ミラーに対して接離する方向に移動可能に保持する固定部と、(d)前記ミラーと前記可動部との間に配置され、前記ミラーと前記可動部との少なくとも一方に固定され、前記ミラーと前記可動部の間隔を保つ接続部と、を備えている。前記電極と前記ミラーとの間の電位差によって静電力が生じ、前記静電力によって前記ミラーが前記可動部に対して傾き、前記ミラーの傾きに伴って前記可動部が移動するように構成されている。
【0012】
上記構成において、可動部の電極に電圧を印加すると、可動部とミラーの間に静電力が作用する。このとき、接続部においてミラーと可動部の間隔が保たれているため、静電力によってミラーが可動部に対して傾き、ミラーが変形する。可動部は、ミラーに対して接離する方向に移動可能に保持されている。そのため、可動部は、ミラーの変形に伴い、ミラーに対して接離する方向に移動する。なお、接続部は、ミラーと可動部とのいずれか一方又は両方と一体に形成されても構わないし、弾性変形しても構わない。
【0013】
上記構成によれば、接続部によって、電極とミラーとの間隔は所定範囲内に保たれる。そのため、電極に印加する電圧を低くしてもミラーが変形するように構成できる。ミラーが変形したときに可動部が移動可能であるため、ミラーの移動が接続部で制限されずにミラーと電極との間隔に制約されることなく、ミラーの変形量を大きくすることができる。したがって、低い駆動電圧でも反射面の変形量を大きくすることができる。
【0014】
好ましい一態様において、前記接続部が、前記ミラーと前記可動部との両方に固定されている。
【0015】
好ましい他の態様において、前記接続部は、前記ミラーと前記可動部とのうち一方のみに固定される。前記可動部と前記固定部とを接続し、前記可動部を前記ミラー側に付勢し、前記ミラーと前記可動部とのうち他方と前記接続部との接触を保持する支持部をさらに備える。
【0016】
好ましくは、前記固定部は、前記可動部との間に間隔を設けて前記可動部を収容する。前記可動部が前記ミラーに対して接離する前記方向に互いに間隔を設けて配置され、前記可動部と前記固定部とに接続された第1及び第2の梁部をさらに備える
【0017】
この場合、第1及び第2の梁部によって、可動部がミラーに対して接離する方向に対する可動部の傾きを抑制することができる。また、MEMS構造の静電駆動可変ミラーを容易に作製することができる。
【0018】
好ましくは、一つの前記ミラーと、複数の前記可動部と、複数の前記接続部とを備える。
【0019】
この場合、任意の電圧を分割された可動部上の電極に印加することで隣接する可動部によるミラーの変形を拘束することなく大きく変形し、その時も可動部がミラーと狭い間隔を維持することができるのでミラーの複雑な変形が低い電圧で可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低い駆動電圧でも反射面の変形量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】静電駆動可変ミラーの基本的な構成を示す説明図である。(第1のタイプ)
【図2】静電駆動可変ミラーの基本的な構成を示す説明図である。(第1のタイプの変形例1)
【図3】静電駆動可変ミラーの基本構成を示す説明図である。(第1のタイプの変形例2)
【図4】静電駆動可変ミラーの基本的な構成を示す説明図である。(第2のタイプ)
【図5】静電駆動可変ミラーの基本的な構成を示す説明図である。(第3のタイプ)
【図6】静電駆動可変ミラーをアレイ化した場合の説明図である。(第3のタイプ)
【図7】静電駆動可変ミラーの平面図である。(実施例1)
【図8】下部基板の要部拡大平面図である。(実施例1)
【図9】上部基板の製造プロセスを示す断面図である。(実施例1)
【図10】下部基板の製造プロセスを示す断面図である。(実施例1)
【図11】下部基板の製造プロセスを示す断面図である。(実施例1)
【図12】静電駆動可変ミラーの(a)分解断面図、(b)組立断面図である。(実施例1)
【図13】シミュレーションモデルのイメージ図である。(実施例1)
【図14】シミュレーションモデルのイメージ図である。(実施例1)
【図15】アクチュエータのイメージ図である。(実施例1)
【図16】シミュレーション結果を示すイメージ図である。(実施例1)
【図17】シミュレーション結果を示すイメージ図である。(実施例1)
【図18】シミュレーション結果を示すグラフである。(実施例1)
【図19】静電駆動可変ミラーの構成を示す断面図である。(従来例1)
【図20】可変ミラーの構成を示す説明図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。

【0023】
まず、本発明の静電駆動可変ミラーの基本的な構成について、図1~図6を参照しながら説明する。

【0024】
<第1のタイプ> 図1(a)及び(b)は、第1のタイプの静電駆動可変ミラー10aの基本的な構成を示す説明図である。図1(a)は分解状態を示し、図1(b)は組立状態を示す。図1(a)及び(b)に示すように、ミラー12は反射面12aと、反射面12aとは反対側の裏面12bとを有し、ミラー12の裏面12bに可動部24が対向するように配置されている。ミラー12の周囲は枠部36で拘束されている場合を例示しているが、ミラー12の周囲を拘束しないようにすることも可能である。

【0025】
可動部24は、ミラー12に対して接近したり離れたりするミラー接離方向(例えば、変形前のミラー12の裏面12bの法線方向)に移動可能に固定部22に保持されている。可動部24には接続部28aが固定され、接続部28aのまわりに少なくとも一つの電極25が形成されている。接続部28aは、可動部24からミラー12側に突出している。可動部24は、支持部26によってミラー12側に付勢される。

【0026】
すなわち、第1のタイプの静電駆動可変ミラー10aは、図1(a)に示した分解状態から、ミラー12が、固定部22、可動部24及び支持部26に相対的に接近し、図1(b)に示したように、ミラー12の裏面12bに接続部28aが当接するように構成され、支持部26によって、ミラー12の裏面12bに接続部28aが当接する状態が保持される。例えば、支持部26が可動部24をミラー12側に弾力的に引張り、ミラー12の裏面12bに接続部28aが当接する状態が保持されるように構成する。

【0027】
支持部は、適宜に形成することができる。例えば、可動部24のミラー12とは反対側の面24bを、ばねやスポンジ等の弾性部材で押圧してもよいし、後述する実施例1のように、梁部を介して可動部を支持してもよい。

【0028】
可動部24の電極25に電圧を印加すると、ミラー12側の電極(例えば、ミラー12を形成するシリコン)と電極25との間の電位差によって静電力が生じる。このとき、接続部28aにおいてミラー12と可動部24の間隔が保たれているため、静電力によって、ミラー12が可動部24に対して傾き、ミラー12が変形する。接続部28aのまわりに複数の電極25を形成し、電極25に選択的に電圧を印加すると、ミラー12は、電圧が印加された電極25に応じた方向に傾く。支持部26は、ミラーが変形しても、接続部28aがミラー12から離れないように保持するとともに、ミラー12の変形に応じた可動部24の移動を許容する。接続部28aとミラー12の裏面12bとの間で滑りが生じやすくすると、ミラー12の反射面12aの変形は滑らかになる。接続部28aは、弾性変形することによって伸縮したり屈曲したりしても構わない。

【0029】
図2は、第1のタイプの変形例1の静電駆動可変ミラー10dの基本的な構成を示す説明図である。図2に示すように、接続部28dは、可動部24ではなく、ミラー12の裏面12bに固定されても構わない。また、ミラー12側に複数の電極25sを形成し、可動部24側に一つの電極25tを形成しても構わない。この場合、ミラー12側の複数の電極25sは接続部28dの周りに形成し、ミラー12側の電極25sに選択的に電圧を印加する。また、支持部26が可動部24をミラー12側に引張るのではなく、支持部26が可動部24をミラー12側に弾力的に押圧し、接続部28dと可動部24との接触が保持されるように構成しても構わない。

【0030】
図3は、第1のタイプの変形例2の静電駆動可変ミラー10eの基本的な構成を示す説明図である。図3に示すように、接続部28eは、可動部24eと一体に形成されても構わない。あるいは、図示していないが、接続部がミラーと一体に形成されても構わない。また、可動部24e側の電極25eとミラー12側の電極とが互いに平行ではない構成としても構わない。

【0031】
<第2のタイプ> 図4は、第2のタイプの静電駆動可変ミラー10bの基本的な構成を示す説明図である。図4に示すように、第2のタイプの静電駆動可変ミラー10bは、接続部28bがミラー12と可動部24の両方に固定され、ミラー12と可動部24とは一体に移動する。そのため、可動部24をミラー12側に押し当てる必要はない。

【0032】
可動部24は、固定部22によってミラー接離方向(例えば、変形前のミラー12の裏面12bの法線方向)に移動可能に、かつ、ミラー接離方向に対して垂直方向(例えば、変形前のミラー12の裏面12bと平行な方向)の移動を規制するように、保持されている。可動部24と固定部22とは、ミラー接離方向に相対移動可能に接触してもよいし、ミラー接離方向に対して垂直方向の可動部24の移動を規制する程度の隙間を設けて、互いに離れていてもよい。

【0033】
接続部28bにおいてミラー12と可動部24の間隔が保たれているため、可動部24の電極25に電圧を印加すると、静電力によってミラー12が可動部24に対して傾き、ミラー12が変形し、可動部24は、ミラー12の変形に応じて、矢印24xで示すように、ミラー接離方向に移動する。接続部28bは、弾性変形することによって伸縮したり屈曲したりしても構わない。

【0034】
<第3のタイプ> 図5は、第3のタイプの静電駆動可変ミラー10cの基本的な構成を示す説明図である。図5に示すように、第3のタイプの静電駆動可変ミラー10cは、接続部28cがミラー12と可動部24の両方に固定され、ミラー12と可動部24とは一体に移動する。可動部24と固定部22とは、支持部26を介して接続されている。支持部26は、ミラー12が変形したときに、矢印24xで示すミラー接離方向の可動部24の移動を許容する。すなわち、接続部28cにおいてミラー12と可動部24の間隔が保たれているため、可動部24の電極25に電圧を印加すると、静電力によってミラー12が可動部24に対して傾き、ミラー12が変形し、可動部24は、ミラー12の変形に応じて、矢印24xで示すように、ミラー接離方向に移動する。接続部28cは、弾性変形することによって、伸縮したり屈曲したりしても構わない。

【0035】
図6(a)~(c)は、第3のタイプの静電駆動可変ミラー10cをアレイ化した場合の説明図である。図6(a)に示すように、接続部28cの両端にミラー12と可動部24が固定された第3のタイプの基本構成10kを並べ、ミラー12と固定部22を、それぞれ一体化する。図6(b)及び(c)に示すように、電極25a,25bのうち一方の電極25aのみに電圧を印加すると、ミラー12が傾くと同時に、一体化されたミラー全体12aの周辺の境界条件によって、ミラー全体12aを上下に変位させようとする力が働く。これによって、ミラー全体12aが上下に動く。

【0036】
なお、第1及び第2のタイプの静電駆動可変ミラー10a,10bについても、同様にアレイ化することが可能である。また、第1ないし第3のタイプの静電駆動可変ミラー10a,10b,10cの基本構成を適宜に組み合わせてアレイ化することも可能である。また、第2及び第3のタイプの静電駆動可変ミラー10b,10cは、第1のタイプの静電駆動可変ミラー10aの変形例1、2と同様に構成することも可能である。

【0037】
<実施例1> 実施例1の静電駆動可変ミラー10について、図7~図12を参照しながら説明する。実施例1の静電駆動可変ミラー10は、第3のタイプの静電駆動可変ミラーをアレイ化したものである。

【0038】
図7は静電駆動可変ミラー10の平面図である。図8は、下部基板20の要部拡大平面図である。図12(a)は、静電駆動可変ミラー10の分解断面図である。図12(b)は、静電駆動可変ミラー10の組立断面図である。

【0039】
図7及び図12に示すように、静電駆動可変ミラー10は、可動部24が形成された下部基板20と、反射面34sを有する上部基板30とが接続されている。

【0040】
上部基板30は、下部基板20とは反対側に凹部32が形成され、凹部32の底面に反射膜34が形成されており、反射膜34の表面34sが反射面34sとなる。上部基板30のうち、上部基板30の下部基板20側の裏面30xと反射面34sとの間がミラー12となり、ミラー12の周囲の枠部36はミラー12の外周を拘束している。

【0041】
図8及び図12に示すように、可動部24は、下部基板20に形成された開口部23内に、第1及び第2の梁部26a,26bを介して支持され、開口部23の内周面23sと可動部24の外周面24sとの間に隙間が形成されている。下部基板20のうち、可動部24と、第1及び第2の梁部26a,26bとを除く部分が、固定部22となる。

【0042】
可動部24は、柱状の形状を有する。可動部24の上部基板30側の主面24aは、接続部28が中央に形成され、接続部28の周囲に、図8において斜線を付された4つの電極25が形成されている。

【0043】
第1及び第2の梁部26a,26bは、下部基板20の上部基板30側と、その反対側とに、対になるように形成されている。第1及び第2の梁部26a,26bは、可動部24の上部基板30側の主面24aと反対側の主面の各辺に沿って延在する相対的に長い第1直線部26pと、相対的に短い第2直線部26qとが直角に接続されたL字状の形状を有し、第1直線部26pの一端が下部基板20の固定部22に接続され、第2直線部26qの一端が可動部24に接続されている。

【0044】
可動部24は、接続部28を介してミラー12の裏面30xに接続され、4対の第1及び第2の梁部26a,26bによって、ミラー12に対して接離する方向(以下、「ミラー接離方向」という。)に対する傾きが抑制されながら、ミラー接離方向に移動自在に支持されている。

【0045】
固定部22と第1の梁部26aには、図8において斜線が付された配線パターン27が形成されている。配線パターン27は電極25に接続されており、外部から配線パターン27を介して電極25に電圧を印加することができる。

【0046】
次に、静電駆動可変ミラー10の動作について説明する。可動部24の電極25に電圧を印加すると、上部基板30のミラー12と電極25との間の電位差によって静電力が生じ、ミラー12が傾き、ミラー12が変形する。ミラー12に接続されている可動部24は、ミラー12の変形に伴い、ミラー接離方向に移動する。

【0047】
電極が固定され、電極が移動しない場合には、電極とミラーの間隔によってミラーの変形量が制限される。これに対し、静電駆動可変ミラー10は、電極25を有する可動部24がミラー12に接続されているので、電極25とミラー12との間隔は所定範囲内に保たれる。そのため、電極25に印加する電圧を低くしてもミラー12が変形するように構成できる。ミラー12が変形したときに可動部24が移動するため、ミラー12と電極25との間隔に制約されることなく、ミラー12の変形量を大きくすることができる。したがって、低い駆動電圧でも反射面34sの変形量を大きくすることができる。

【0048】
次に、静電駆動可変ミラー10の製造工程の一例について、図9~図12を参照しながら説明する。静電駆動可変ミラー10は、上部基板30と下部基板20とをそれぞれ作製した後に、接続する

【0049】
図9は、上部基板30の製造プロセスを示す断面図である。

【0050】
まず、図9(a)に示すように、活性層31aとハンドル層31cの間にSiOのBOX層31bが挟まれたSOIウエハ31を準備し、SOIウエハ31のハンドル層31c側に、フォトレスジストを塗布・露光・現像して、枠部36に対応するマスクパターン38を形成する。

【0051】
次いで、図9(b)に示すように、DRIE(Deep Reactive Ion Etching、深掘りRIE)加工によって、マスクパターン38を介してハンドル層31cを除去し、凹部32を形成し、BOX層31bを露出させる。

【0052】
次いで、図9(c)に示すように、BOX層31bの露出部分とマスクパターン38を除去し、凹部32内に活性層31aを露出させる。

【0053】
次いで、図9(d)に示すように、ハンドル層31c側から、金属の蒸着等によって、反射膜34を形成する。このとき、枠部36にも、金属膜35が形成される。なお、反射膜34を形成せずに、凹部32内に露出した活性層31aの表面を反射面として用いることも可能である。

【0054】
例えば、活性層31aの厚みが2~5μm、BOX層31bの厚みが2μm、ハンドル層の厚みが400μmのSOIウエハ31を用いて、厚み0.2μmのAlの反射膜34を形成する。

【0055】
図10及び図11は、下部基板20の製造プロセスを示す断面図である。

【0056】
まず、図10(a)に示すように、シリコンウエハ21の両面に、LPCVD(low pressure Chemical Vapor Deposition、減圧CVD)法を用いて、厚み0.3μmの低応力SiN膜21a,21bを成膜する。

【0057】
次いで、裏面側のSiN膜21bに、フォトレスジストを塗布・露光・現像して、第2の梁部26bと固定部22及び可動部24とに対応するマスクパターンを形成し、CFガスを用いるRIE(Reactive Ion Etching)加工によって、マスクパターンを介してSiN膜21bを除去することによって、図10(b)に示すように、第2の梁部26bを形成する。

【0058】
次いで、図10(c)に示すように、DRIE加工によって、第2の梁部26bに沿って、シリコンウエハ21の厚みの半分程度の深さのトレンチ21xを形成する。

【0059】
次いで、表面側のSiN膜21aについて、裏面側の第2の梁部26bと同様に加工し、図10(d)に示すように、第1の梁部21aを形成する。

【0060】
次いで、メタルマスクを介して蒸着する等によって、厚み0.2μmのAl膜を成膜し、図11(e)に示すように、SiN膜21a上に電極25及び配線パターン27を形成する。

【0061】
次いで、エポキシ系ネガ型フォトレジストであるSU-8を塗布・露光・現像することによって、図11(f)に示すように、厚み5μmの接続部28,29を形成する。

【0062】
次いで、DRIE加工によって、図11(g)に示すように、第1の梁部26aに沿って、シリコンウエハ21の厚みの半分程度の深さのトレンチ21yを形成する。

【0063】
次いで、XeFガスを利用した等方性ドライエッチングによって、図11(h)に示すように、第1及び第2の梁部26a,26bの間と、上下のトレンチ21x,21yの間を除去し、第1及び第2の梁部26a,26bをリリースする。例えば、厚み525μmのシリコンウエハ21を用い、両面から、それぞれ200μm程度の深さのトレンチ21x,21yを形成し、トレンチ21x,21y間に残っている約100μmを、両側から50μm程度エッチングする。

【0064】
作製した上部基板30と下部基板20は、図12(a)に示すように、上部基板30の裏面30xと、下部基板20の接続部28,29とを対向させ、図12(b)に示すように、接続部28を介してミラー12と可動部24とを接続し、接続部29を介して枠部36と固定部22とを接続する。例えば、16mm×16mmの大きさの下部基板20に、内径が8mmの凹部32が形成され、枠部36の幅が2mmの上部基板30を接続する。

【0065】
以上の工程によって、MEMS構造の静電駆動可変ミラー10を容易に作製することができる。接続部28をSU-8を用いて形成することによって、ミラーと可動部24とが接続された構成を容易に作製することができる。また、接続部28の弾性変形によって、反射面34sの変形が滑らかになる。

【0066】
次に、実施例1のシミュレーションについて、図13~図18を参照しながら説明する。

【0067】
図13及び図14は、シミュレーションモデルのイメージ図である。図13に示すように、14個のアクチュエータ14a,14b,14cを用いる第1のモデルと、図14に示すように、7個のアクチュエータ14a,14b,14cを用いる第2のモデルとについて、ミラー12xの変形をシミュレーションした。ミラー12xの外周は拘束されている。ミラー12xが矩形である点以外は、実施例1と同様に構成されている。

【0068】
図15は、1個分のアクチュエータ14のイメージ図である。図15に示すように、アクチュエータ14は、実施例1と同様に、柱状の可動部24が、幅10μm、長さ340μmの4つのL字状の第1及び第2の梁部26a,26bを介して、不図示の固定部に支持されている。ミラーに対向する可動部の主面24aは、320μm×320μmの正方形であり、この主面24aに、100μm×120μmの長方形で近似した4つの電極25xが配置されている。なお、シミュレーションソフトの仕様上、長方形の電極としているが、4つの電極25xは電気的には独立し個別に静電力を発生するものとして計算した。接続部28の高さ、すなわち、接続部28でのミラー12xと可動部24(電極25x)の初期の間隔は、5μmとした。

【0069】
図16~図18に、図13及び図14に示したアクチュエータ14a,14b,14cのうち、外側に配置されるアクチュエータ14a,14bの外側の電極のみに電圧を印加する場合のシミュレーション結果を示す。すなわち、図13及び図14において、アクチュエータ14aは、4つの電極25x(図15参照)のうち、ミラー中心から最も遠い1つの電極のみに電圧が印加され、アクチュエータ14bは、4つの電極25xのうち、ミラー中心から遠い外側の隣り合う2つの電極のみに電圧が印加され、中心に近い内側のアクチュエータ14cはすべての電極に電圧が印加されない。

【0070】
図16は、アクチュエータが14個の場合の第1のモデルについてのシミュレーション結果を示すイメージ図である。図17は、アクチュエータが7個の場合の第2のモデルについてのシミュレーション結果を示すイメージ図である。図16及び図17から、ミラー12xが略同心に凸状に変形することが分かる。

【0071】
図18は、シミュレーション結果を示すグラフである。図18において、横軸は、電極に印加する電圧であり、縦軸はミラー12xの中央の変位であり、変位の方向は、変形前のミラー面(X-Y方向)に対して垂直方向(Z方向)である。図18において、■の記号は、アクチュエータが14個の第1のモデルを示し、◆の記号は、アクチュエータが7個の第2のモデルを示す。図18から、電極に印加する電圧の大きさに応じてミラーの変形量が大きくなり、電極に印加する電圧が16~20V程度で、ミラー12xの最大変位が、接続部28でのミラー12xと可動部24(電極25x)の初期の間隔である5μmを超えることが分かる。

【0072】
<まとめ> 以上に説明したように、ミラーに対して接離する方向に移動可能に可動部を保持し、可動部に電極を設け、静電力でミラーを傾ける本発明の静電駆動可変ミラーは、低い駆動電圧でも反射面の変形量を大きくすることができる。

【0073】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。

【0074】
例えば可動部の内部に電極が形成されてもよい。また、可動部の電極と対向し、可動部の電極との間に電位差を生じるミラー側電極を、ミラーの内部や裏面に形成してもよい。

【0075】
また、本発明は、光の位相の制御に限らず、光の強度の制御や、光の方向の制御にも利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
10,10a~10e 静電駆動可変ミラー
12,12x ミラー
12a 反射面
12b 裏面
20 下部基板
22 固定部
24,24e 可動部
25,25a,25b,25e,25s,25t,25x 電極
26 支持部
26a,26b 梁部(支持部)
28,28a~28e,29 接続部
30 上部基板
30x 裏面
34s 反射面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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