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明細書 :伝搬路推定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6632364号 (P6632364)
公開番号 特開2017-112491 (P2017-112491A)
登録日 令和元年12月20日(2019.12.20)
発行日 令和2年1月22日(2020.1.22)
公開日 平成29年6月22日(2017.6.22)
発明の名称または考案の名称 伝搬路推定方法
国際特許分類 H04L  27/26        (2006.01)
H04B   1/10        (2006.01)
H04B  17/309       (2015.01)
FI H04L 27/26 420
H04B 1/10 L
H04B 17/309
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2015-245290 (P2015-245290)
出願日 平成27年12月16日(2015.12.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成27年6月17日発行 電子情報通信学会技術研究報告 Vol.115 No.113 pp.287-298(RCS2015-95)にて発表
審査請求日 平成30年12月10日(2018.12.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】原田 博司
【氏名】水谷 圭一
【氏名】牧野 仁宣
個別代理人の代理人 【識別番号】100082762、【弁理士】、【氏名又は名称】杉浦 正知
【識別番号】100123973、【弁理士】、【氏名又は名称】杉浦 拓真
審査官 【審査官】太田 龍一
参考文献・文献 特開2011-19057(JP,A)
特開2012-28922(JP,A)
特開2009-88771(JP,A)
特開2015-136026(JP,A)
You-Seok Lee;Hyoung-Nam Kim;Sung Ik Park;Soo In Lee,Noise Reduction for Channel Estimation Based on Pilot-Block Averaging in DVB-T Receivers,IEEE Transactions on Consumer Electronics,2006年 3月13日,Volume:52,Issue:1,pp.51-58
調査した分野 H04L 27/26
H04B 1/10
H04B 17/309
特許請求の範囲 【請求項1】
OFDM信号に挿入されたパイロットサブキャリアを使用する伝搬路推定方法において、
各パイロットサブキャリアにおける伝搬路推定値の同相成分及び直交成分を振幅成分と位相成分に分離し、各パイロットサブキャリア間に存在するデータサブキャリア部分の伝搬路を、この分離された振幅成分及び位相成分それぞれで位相・振幅分離線形補間することによって推定し、
各パイロットサブキャリア間を複素平面上で線形補間を行うことによって、各パイロットサブキャリア間のデータサブキャリア部分の伝搬路推定を補助するための参照パラメータを生成し、
上記位相・振幅分離線形補間によって補間された位相成分推定値と上記参照パラメータの複素平面上での象限が異なっているかどうかを判定し、
象限が異なっていると判定される場合に、上記位相・振幅分離線形補間によって補間された位相成分推定値に対して位相の不連続を解消する位相接続の処理を行い、
象限が異なっていないと判定される場合、又は上記位相接続処理の後に、各パイロットサブキャリア間の補間されたデータサブキャリア部分の伝搬路推定値の位相成分と振幅成分から当該データサブキャリア部分の複素伝搬路推定値を計算する
伝搬路推定方法。
【請求項2】
上記パイロットサブキャリアは、OFDM信号のシンボル方向及びサブキャリア方向でそれぞれ所定の間隔で、もしくは所定の位置に配置される請求項1に記載の伝搬路推定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、伝搬路推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に過酷なフェージング伝搬路においてパイロット信号による伝搬路推定誤差が大きくなり受信品質が劣化する問題があった。無線通信において送信された電波は様々な伝搬環境により反射、散乱、回折して受信される。フェージングとは様々な伝搬路を通った電波が干渉する事で受信電力が変動する現象であり、伝搬路の変化により変動するため特に高速に移動した場合等では激しい時間変動を持つこととなる。
【0003】
また、広帯域で長い遅延をもつ伝搬環境において通信を行う際には、周波数により遅延分の位相が異なるため強め合い弱め合いの差が生じる。これをフェージングの周波数選択性と言い、各遅延波の遅延時間とその相対電力に依存した強弱差となる。長距離の通信を行う際には遅延波の最大遅延時間が長くなるため、特に周波数選択性は強くなる。
【0004】
こうした環境でも比較的高能率に通信を行うことが可能となる方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex) 変調方式が知られている。この方式では、直交していて互いが干渉することのない複数の周波数サブキャリアに複素数で表される情報シンボルを搭載し、各サブキャリ信号を時間軸で足し合わせることで一つのOFDMシンボルが作られる。この動作は一般的に一つのOFDMシンボルに含まれる周波数サブキャリアの複素数情報シンボルに対して逆フーリエ変換操作を行うことで実現することができる。
【0005】
上述したように、受信機側ではフェージングの影響を受けた信号が到達するため、正しく復調を行うためには適切にこのフェージング伝搬路の影響を各サブキャリアにおいて推定を行い補償(等化)する必要がある。一般にそれぞれのサブキャリアの帯域幅は、サブキャリア内の周波数選択性を無視できるほど小さく設定されているため、サブキャリア間の周波数選択性のみを考慮することにより上記補償を行うことが可能となる。
【0006】
OFDMを採用している代表的な通信システムであるWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)やLTE(Long Term Evolution)などのシステムでは、一部のサブキャリアを送受信機両方において既知信号であるパイロットサブキャリアとし、残りのサブキャリアを用いてデータ伝送を行う方式が採用されている。
【0007】
これらのシステムでは一般的にパイロットサブキャリアの伝搬路推定を行い、その推定値を基にデータサブキャリアの伝搬路推定を行い、等化が行われる。パイロットサブキャリアの推定値から伝搬路推定を行う際、従来は複素平面上で線形補間を行う方式が一般的に用いられてきた。例えば非特許文献1には、一般的なOFDMの伝搬路推定方式について記載されている。非特許文献2には、WiMAXのULにおける線形補間による伝搬路推定方式について記載されている。
【0008】
さらに、最近では、アナログ放送からデジタル放送へと移行したため、VHF帯の一部である170MHz~202.5MHz(以下200MHz帯と表す)が2007年6月の情報通信審議会答申によりブロードバンド自営通信へと割り当てられるととなり、その技術基準が策定されている。この技術基準に対応した送信機の標準規格として、ARIBによりSTD-T103が策定完了している。このSTD-T103には二つの動作モードがあり、その一つがWiMAXで知られるIEEE 802.16-2009〔3〕の
基本パラメータをそのままVHF帯に適用したMode1であり、その受信機構成の提案やVHF帯移動通信環境における特性評価がこれまでに行われている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】S.Coleri,M.Ergen,A.Puri,and A.Bahai, "Channel estimation techniques based on pilot arrangement in OFDM system. "IEEE Trans.,vol.48,no.3,Sep 2002
【非特許文献2】K.Ho and A.Kwasinski,"Uplink Channel Estimation in WiMAX," Proc.WCNC 2009,pp.1-6,Apr.2009.
【非特許文献3】牧野仁宣,水谷圭一,原田博司,”VHF帯ブロードバンド移動通信システムの受信機設定に関する検討”信学技報,RCS2014-333, pp.189-194,2015年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先に提案されている伝搬路推定方法では、周波数選択性もしくは時間的変動の強いフェージング伝搬路において、振幅変動量を過小に推定してしまいその推定誤差が大きくなるという問題があった。これは実際のフェージングによる振幅変動量は複素平面上では線形的な遷移ではないためである。
【0011】
さらに、推定された伝搬路の複素変動量の逆数を受信信号に乗ずることによって等化を行うが、従来の伝搬路推定方法では、上述したように過小に振幅変動量を推定した場合に、本来補償すべき値より極端に大きい値に補償してしまい、受信品質が劣化する。推定誤差が大きい場合、その他の誤り訂正技術等を用いても良好な受信品質を達成するのは困難であるという問題があった。
【0012】
したがって、この発明の目的は、伝搬路の推定誤差を抑圧し受信品質を改善することができる伝搬路推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、この発明は、OFDM信号に挿入されたパイロットサブキャリアを使用する伝搬路推定方法において、
各パイロットサブキャリアにおける伝搬路推定値の同相成分及び直交成分を振幅成分と位相成分に分離し、各パイロットサブキャリア間に存在するデータサブキャリア部分の伝搬路を、この分離された振幅成分及び位相成分それぞれで位相・振幅分離線形補間することによって推定し、
各パイロットサブキャリア間を複素平面上で線形補間を行うことによって、各パイロットサブキャリア間のデータサブキャリア部分の伝搬路推定を補助するための参照パラメータを生成し、
上記位相・振幅分離線形補間によって補間された位相成分推定値と上記参照パラメータの複素平面上での象限が異なっているかどうかを判定し、
象限が異なっていると判定される場合に、上記位相・振幅分離線形補間によって補間された位相成分推定値に対して位相の不連続を解消する位相接続の処理を行い、
象限が異なっていないと判定される場合、又は位相接続処理の後に、各パイロットサブキャリア間の補間されたデータサブキャリア部分の伝搬路推定値の位相成分と振幅成分から当該データサブキャリア部分の複素伝搬路推定値を計算する
伝搬路推定方法である。
【発明の効果】
【0014】
少なくとも一つの実施形態によれば、激しいフェージング伝搬路の推定誤差を抑圧し受信品質を改善することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、この発明中に記載されたいずれの効果であってもよい。また、以下の説明における例示された効果によりこの発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】補間方法の説明に使用する略線図である。
【図2】補間方法の説明に使用するフローチャートである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を実施の形態について説明する。なお、以下に説明する一実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0017】
本発明の実施に際しての受信機構成は、上述した非特許文献3に記載のものと同様のものを使用する。受信機において受信信号を復調するために、パイロット信号が挿入される。例えばIEEE 802.16-2009〔3〕Mode1のパイロット配置はDLで
は一部のデータサブキャリアが四つのパイロット信号に挟まれる構造であり、ULでは全てのデータサブキャリアが四つのパイロット信号に挟まれるタイル構造のパイロット配置となる。Mode2のパイロット配置はDLでは4シンボル4サブキャリアでタイルを構成し、その四隅にパイロットサブキャリアが入る形となる。ULでは、7シンボル4サブキャリアのタイル四隅にパイロットサブキャリアが入る形となる。受信側では、既知である各パイロットサブキャリアの伝搬路推定値を求めることで、各パイロットサブキャリアに挟まれるデータ部分の伝搬路を補間推定する。
【0018】
パイロットサブキャリアは、上述した例のように信号の中にばらまかれているので、補間を行うことによって、パイロットサブキャリアの入っていないデータサブキャリアの伝搬路変動の推定を行う。その後、受信信号に対してこの推定した伝搬路変動の逆数を各サブキャリア毎に掛け合わせることによって等化を行う。実際の補間の方法としてはそれぞれタイル毎に補間を行う。補間の順序はサブキャリア方向、OFDMシンボル方向のどちらでもよく、本発明を限定するものではない。
【0019】
パイロットサブキャリアにより行う補間法のイメージを図1に示す。図1において星マークがパイロットサブキャリアを示す。破線は、従来の複素平面上線形補間法を表している。実線は本発明である位相・振幅分離線形補間法を表している。なお、伝搬路推定値を同相成分(Ich)と直交成分(Qch)に分けた形の表示と、以下に述べるように、Ichに対してQchにjを掛け合わせたものを足し合わせる複素数表示との何れの表示も使用できる。
【0020】
前提について説明する。i番目のOFDMシンボルのj番目サブキャリアにおける伝搬路変動値をhi,j とし、送信信号をsi,j とし、雑音をni,j とした場合には、受信信号ri,j は式(1)で示される。
【0021】
【数1】
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【0022】
パイロットサブキャリアの入っているシンボルの番号をpとし、そのシンボル中の入っているサブキャリアの番号をqp とした場合、受信機側が手に入れられる情報は、パイロットサブキャリアにおける受信信号rp,qp、送信信号sp,qp、データサブキャリアにおける受信信号ri,j である。のパイロットサブキャリアにおける送受信号を基にデータサブキャリアにおける伝搬路変動値を推定する。この推定の後に、データサブキャリアにおける送信信号へと等化を行うために後述する一連の推定を行う。
【0023】
図2のフローチャートを参照して本発明の補間方法の一実施の形態について説明する。 ステップST1:パイロットサブキャリアにおける受信信号rp,qp、送信信号sp,qpからパイロットサブキャリアにおける伝搬路推定値は次の式2で表される。
【0024】
【数2】
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【0025】
ステップST2:パイロットサブキャリアにおける伝搬路推定値を振幅変動量推定値Rp,qpと位相変動量推定値θp,qpに分離する。それぞれは式3で示すものとなる。
【0026】
【数3】
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【0027】
ステップST3:パイロットサブキャリアにおける振幅変動量推定値及び位相変動量推定値を補間することにより、データサブキャリアにおける振幅変動量推定値及び位相変動量推定値を推定する。タイル構造がlシンボルmサブキャリアの時、im =imodl,if floor(i/l)×l,jm =jmodm,jf floor(j/m)×mとする。一つのタイルに着目すると、(p,qp )=(1+if ,1+jf ),(l+if ,m+jf ),(l+if ,l+jf ),(1+if ,m+jf )の四種類に分離されるため、振幅変動量推定値及び位相変動量推定値は式4式5で表される。
【0028】
【数4】
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【0029】
ステップST4:データサブキャリアにおける位相変動量推定値により、データサブキャリアにおける位相・振幅分離線形補間伝搬路推定値の方向ベクトルを計算する。
【0030】
【数5】
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【0031】
ステップST5:次の式6のように、パイロットサブキャリアにおける伝搬路推定値を複素平面上の線形補間(従来方法)することにより、データサブキャリアにおける伝搬路推定値を求め、これを参照パラメータとする。
【0032】
【数6】
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【0033】
ステップST6:複素平面上の線形補間によるデータサブキャリア伝搬路推定値(参照パラメータ)のIch成分Qch成分と、位相・振幅分離形線形補間によりデータサブキャリア伝搬路推定値の方向ベクトルを比較することにより、象限が一致しているかどうか(位相接続が必要かどうか)を判定する(式7)。
【0034】
【数7】
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【0035】
ステップST7:ステップST6において象限が異なっていると判定されると、次式に示すようにどちらか小さいほうの値に2πを足し合わせることにより位相接続を解消する

【0036】
【数8】
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【0037】
ステップST8:次のように、位相・振幅分離線形補間法のうち位相補間のみを再度行う。ステップST8に続いてステップST9の補間処理(式9)がなされる。
【0038】
【数9】
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【0039】
ステップST9:最終的な位相・振幅分離線形補間によるデータサブキャリア伝搬路推定値は、式10で示すように、振幅変動量推定値と位相接続後の位相変動量推定値により計算される。ステップST6において象限が異なっていないと判定された場合にも、ステップST9の処理がなされる。
【0040】
【数10】
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【0041】
実際の伝搬路変動は複素平面上で直線的に変動せず、位相および振幅それぞれにおいて変動が起きるため、上述した処理の結果、本発明である位相・振幅分離線形補間法を用いて等化を行うことにより、従来法である複素平面上での線形補間のみを用いた場合と比べて、より現実的な伝搬路変動を補間追従することが可能となり、その結果、より伝搬路推定誤差を抑圧することが可能となり、上述するような激しいフェージング伝搬路においても良好な受信品質を達成することが可能となる。
【0042】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
ST1~ST9・・・伝搬路推定方法の各ステップ
図面
【図1】
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【図2】
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