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明細書 :無線通信システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-108333 (P2017-108333A)
公開日 平成29年6月15日(2017.6.15)
発明の名称または考案の名称 無線通信システム
国際特許分類 H04W  84/18        (2009.01)
H04W   4/04        (2009.01)
H04W  52/02        (2009.01)
FI H04W 84/18
H04W 4/04 190
H04W 52/02 111
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2015-242046 (P2015-242046)
出願日 平成27年12月11日(2015.12.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成27年10月21日に電子情報通信学会技術研究報告:信学技報,vol.115,No.275,SRW2015-54,pp.19-24にて発明を公開 「刊行物等」 平成27年10月21日に電子情報通信学会 研究会発表申込システム講演論文詳細(http://www.ieice.org/ken/paper/20151028JbDA/)にて発明を公開 「刊行物等」 平成27年10月28日に第28回短距離無線通信研究会にて発明を公開
発明者または考案者 【氏名】藤原 純
【氏名】川田 拓也
【氏名】坂元 賢太郎
【氏名】土屋 創太
【氏名】原田 博司
【氏名】水谷 圭一
出願人 【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000936、【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5K067
Fターム 5K067AA21
5K067EE02
5K067EE25
要約 【課題】消費電力を抑制するとともにキャリアセンスを行うために他システムからの干渉に強くする。
【解決手段】無線通信システム100は、RIT方式の通信を行い、受信機Cは、送信機に対してRIT Data Request Frame(フレームRFc)を送信した後、期間WD、受信待受状態となり、送信機は、送信対象の対象データTDFがあれば受信待受状態となり、受信待受状態において受信機CからフレームRFcを受信すると、対象データTDFを受信機Cに送信する。受信機Cは、フレームRFcの送信前に、受信電波強度を測定するキャリアセンスCSを行い、受信電波強度が閾値を超えていると、受信待受状態を継続せずに受信待受状態を解除し、今回のフレームRFcの送信を中止し、次回のフレームRFcの送信タイミングまで、キャリアセンスCSを休止する。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
受信機が送信機に向けて周期的にRIT Data Request Frameの送信を試みるRIT方式の通信を行う無線通信システムであって、
前記受信機は、
前記送信機に対して前記RIT Data Request Frameを送信した後、所定期間、受信待受状態となる受信側制御部を備え、
前記送信機は、
送信対象となるデータである対象データがあれば受信待受状態となり、受信待受状態において前記受信機から前記RIT Data Request Frameを受信すると、該対象データを該受信機に送信する送信側制御部を備え、
前記受信側制御部は、
前記RIT Data Request Frameの送信前に、送信に利用する周波数帯域の受信待受状態に移行することで該周波数帯域の受信電波強度を測定するキャリアセンスを行い、該周波数帯域の受信電波強度が閾値を超えていると、該受信待受状態を継続せずに該受信待受状態を解除し、今回のRIT Data Request Frameの送信を中止し、次回のRIT Data Request Frameの送信タイミングまで、該キャリアセンスを休止することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記受信側制御部は、
アドレス情報として前記受信機のアドレス情報のみが含まれる前記RIT Data Request Frameを前記送信機に対して送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信側制御部は、
前記RIT Data Request Frameを受信した後、前記対象データを送信する前に、該RIT Data Request Frameに示される前記受信機のアドレス情報を該受信機に送信し、
前記受信側制御部は、
受信待受状態において自機のアドレス情報を受信した場合にのみ、続いて送信された前記対象データを受信することを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線機がRIT方式の通信を行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス事業者は、需要者が消費したガスの使用量を積算するため、需要箇所にガスメータを配置している。また、近年では、ガスメータに無線機を設け、ガス事業者との間で双方向にデータ通信を行い、ガスの使用量を自動的に遠隔検針することが可能なスマートメータが脚光を浴びている。かかるスマートメータは、例えば、水道メータにも利用でき、ガスや水道などのインフラ網の安全性や利用効率を高めるための情報源としても利用できる。
【0003】
また、上述したスマートメータとガス事業者とのデータ通信を実現すべく様々な手段が提案されている。例えば、スマートメータに近距離の無線機を設け、無線機同士によるマルチホップ通信を行うネットワークを構築することが考えられている。このようなマルチホップ通信に関し、例えば、RIT(Receiver Initiated Transmission)を利用した方式が検討されている(例えば、特許文献1)。このRIT方式は、受信側から送信側にRIT Data Request Frameを間欠送信し、送信側は、このFrameに同期してデータを送信する方式である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-53593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RIT方式では、受信側から送信側にRIT Data Request Frameを間欠送信することで、送信側がWakeup Sequenceを一定期間送信し続けなければならない従来のCSL方式に比べて、消費電力の削減が可能となっている。この低消費電力というRIT方式の利点を一層向上させる技術の開発が希求されている。加えて、近隣の同一周波数を用いた他システムからの干渉に耐性の高いシステムの開発が必要となる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、消費電力を抑制し、他システムからの干渉に強い無線通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信システムは、受信機が送信機に向けて周期的にRIT Data Request Frameの送信を試みるRIT方式の通信を行う無線通信システムであって、受信機は、送信機に対してRIT Data Request Frameを送信した後、所定期間、受信待受状態となる受信側制御部を備え、送信機は、送信対象となるデータである対象データがあれば受信待受状態となり、受信待受状態において受信機からRIT Data Request Frameを受信すると、対象データを受信機に送信する送信側制御部を備え、受信側制御部は、RIT Data Request Frameの送信前に、送信に利用する周波数帯域の受信待受状態に移行することで周波数帯域の受信電波強度を測定するキャリアセンスを行い、周波数帯域の受信電波強度が閾値を超えていると、受信待受状態を継続せずに受信待受状態を解除し、今回のRIT Data Request Frameの送信を中止し、次回のRIT Data Request Frameの送信タイミングまで、キャリアセンスを休止することを特徴とする。
【0008】
受信側制御部は、アドレス情報として受信機のアドレス情報のみが含まれるRIT Data Request Frameを送信機に対して送信してもよい。
【0009】
送信側制御部は、RIT Data Request Frameを受信した後、対象データを送信する前に、RIT Data Request Frameに示される受信機のアドレス情報を受信機に送信し、受信側制御部は、受信待受状態において自機のアドレス情報を受信した場合にのみ、続いて送信された対象データを受信してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消費電力を抑制するとともにキャリアセンスを行うために他システムからの干渉に強くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】無線通信システムの概略的な構成を示した説明図である。
【図2】無線機の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【図3】比較例のRIT方式について説明するための第1の図である。
【図4】比較例のRIT方式について説明するための第2の図である。
【図5】F-RIT方式について説明するための第1の図である。
【図6】比較例のRIT方式について説明するための第3の図である。
【図7】比較例のRIT方式について説明するための第4の図である。
【図8】本実施形態のF-RIT方式について説明するための第2の図である。
【図9】無線通信による電力消費の理論モデルである。
【図10】消費電力計算に関する変数および定数をまとめた図である。
【図11】間欠動作間隔と消費電力性能の評価指標との関係を示す第1のグラフである。
【図12】間欠動作間隔と消費電力性能の評価指標との関係を示す第2のグラフである。
【図13】一対の無線機の通信エリアに、他の複数の無線機が存在する評価モデルを示す。
【図14】CSLベース方式のモデルシーケンスを示す図である。
【図15】F-RIT方式のモデルシーケンスを示す図である。
【図16】F-RIT方式とCSLベース方式の通信リンク確立の成功率を比較評価したグラフである。
【図17】計算機シミュレーションの処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図18】計算機シミュレーションの各パラメータの設定値を示す図である。
【図19】Pre-CSを導入しない場合における、通信リンク確立の成功率の計算機シミュレーション結果を説明するための第1の説明図である。
【図20】Pre-CSを導入しない場合における、通信リンク確立の成功率の計算機シミュレーション結果を説明するための第2の説明図である。
【図21】利用が想定される上位層のデータパケット長を説明するための説明図である。
【図22】Pre-CSを導入した場合における、通信リンク確立の成功率の計算機シミュレーション結果を説明するための第1の説明図である。
【図23】Pre-CSを導入した場合における、通信リンク確立の成功率の計算機シミュレーション結果を説明するための第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。

【0013】
(無線通信システム100)
図1は、無線通信システム100の概略的な構成を示した説明図である。図1に示すように、無線通信システム100は、無線機110と、ゲートウェイ機器112を含んで構成される。例えば、無線通信システム100は、スマートメータに対応付けられる。スマートメータは、例えば、ガス事業者から需要者にガスを供給する場合に用いられ、ガスの使用量を自動検針する装置である。

【0014】
無線機110は、スマートメータそれぞれに設けられ、少なくともスマートメータで利用されるデータの送受信を行う。ゲートウェイ機器112は、スマートメータに対応付けて設置され、1または複数の無線機110のデータを収集し、また、1または複数の無線機110に対してデータを配信する。センター装置114は、コンピュータ等で構成され、ガス事業者や電力事業者といった無線通信システム100の管理者側に属する機器で、ゲートウェイ機器112のデータを収集し、また、ゲートウェイ機器112に対してデータを配信する。なお、ゲートウェイ機器112およびゲートウェイ機器112を介してセンター装置114と通信する無線機110のグループGは、複数設けられる。

【0015】
ここで、ゲートウェイ機器112とセンター装置114との間は、例えば、基地局116を含む携帯電話網やPHS(Personal Handyphone System)網等の通信網を利用した無線通信が実行される。また、無線機110同士および無線機110とゲートウェイ機器112との間は、例えば、後述するF-RIT(Feather-Receiver Initiated Transmission)方式を通じた無線通信が実行される。

【0016】
本実施形態では、複数の需要者それぞれに対してスマートメータが配置されている。また、スマートメータにはそれぞれ無線機110もしくはゲートウェイ機器112が対応付けられ、センター装置114は、その無線機110もしくはゲートウェイ機器112を通じてスマートメータの情報を収集、または、スマートメータを制御する。したがって、無線機110やゲートウェイ機器112が、需要者が存在する複数の位置に配置されることとなる。

【0017】
スマートメータ用の無線通信システム100においては、複数の無線機110の間でRIT方式を元としたマルチホップ通信が行われている。RIT方式は、端末(ノード)間においてリレー方式でデータを送受信し、電波状況に応じて経由する端末の経路を変更可能なマルチホップ通信に用いられ、通信規格IEEE802.15.4/4eに準拠し低消費電力を実現する通信方式である。本実施形態では、RIT方式をさらに低消費電力化したF-RIT方式を採用している。以下、無線機110の構成について説明した後、F-RIT方式について詳述する。

【0018】
(無線機110)
図2は、無線機110の概略的な構成を示した機能ブロック図である。無線機110は、通信部150と、記憶部152と、中央制御部154とを含んで構成される。通信部150は、ゲートウェイ機器112や他の無線機110と無線通信を確立する。記憶部152は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、無線機110に用いられるプログラムや各種データを記憶する。

【0019】
中央制御部154は、CPUやDSPで構成され、記憶部152に格納されたプログラムを用い、無線機110全体を制御する。また、中央制御部154は、通信制御部160、記憶制御部162として機能する。

【0020】
通信制御部160は、通信部150を制御し、ゲートウェイ機器112や他の無線機110とF-RIT方式のマルチホップ通信を遂行する。

【0021】
記憶制御部162は、自機が設けられたスマートメータからガスの使用量などのデータを取得し、記憶部152に記憶させる。また、記憶制御部162は、ゲートウェイ機器112や他の無線機110から送信されたデータを記憶部152に記憶させる。

【0022】
このように、無線機110は、スマートメータのデータや他の無線機110やゲートウェイ機器112から受信したデータを記憶するとともに、記憶部152に記憶されたデータを、必要に応じて他の無線機110やゲートウェイ機器112に送信する。以下、このような送信対象となるデータを対象データと称する。

【0023】
図3は、比較例のRIT方式について説明するための第1の図である。ここでは、従来方式を含む比較例のRIT方式のマルチホップ通信を行う無線機10について、送信側と受信側を区別するとき、対象データの送信側の無線機10を送信機A’、対象データの受信側の無線機10を受信機B’という。

【0024】
図3に示すように、受信機B’は、予め設定された間欠動作間隔(MAC RIT Period)おきにRIT Data Request Frame(図中、フレームRFa’、フレームRFb’で示す)を送信する。RIT Data Request Frameは、通信規格IEEE802.15.4のMAC部と同様のフレーム構成である。

【0025】
具体的には、受信機B’が送信するRIT Data Request Frame(フレームRFb’)には、受信機B’のネットワークID(PANID:Personal Area Network ID、無線機10が加わっているPANを識別する情報)とアドレス情報(無線通信システム100に含まれる個々の無線機10を識別する識別情報)が含まれる。また、受信機B’は、自機に対して対象データを送信する送信機A’に関するネットワークIDとアドレス情報を記憶部152に記憶しており、RIT Data Request Frame(フレームRFb’)には、このネットワークIDとアドレス情報についても含まれている。

【0026】
同様に、送信機A’が送信するRIT Data Request Frame(フレームRFa’)には、送信機A’のネットワークIDとアドレス情報に加え、送信機A’に対して対象データを送信する不図示の無線機10のネットワークIDとアドレス情報が含まれている。

【0027】
また、無線機10は、RIT Data Request Frameの送信前には、キャリアセンス(CS)を行う。キャリアセンス(CS)は、送信に利用する周波数帯域のデータの受信待受状態に移行することで受信電波強度(受信電力レベル、受信信号強度、RSSI(Received Signal Strength Indication))を測定し、周波数帯域が他の機器によって占有されていないかを確認する処理である。キャリアセンスCSの結果、周波数帯域における受信電波強度が閾値以下であれば、無線機10は、RIT Data Request Frameを送信する。このように、RIT方式では、受信機B’が送信機A’に向けて周期的にRIT Data Request Frameの送信を試みる。

【0028】
そして、無線機10は、RIT Data Request Frameの送信後、予め設定された所定期間(RIT Data Wait Duration、図中、期間WDで示す)、受信待受状態となる。無線機10の中央制御部154は、受信待受状態の間、受信に必要な機能が有効となるように通信部150を制御する。

【0029】
図4は、比較例のRIT方式について説明するための第2の図である。送信機A’において、対象データTDFを取得したり、対象データTDFが内部で生じたりすると、送信機A’は、図4中、ハッチングで示すように受信待受状態となる。

【0030】
そして、送信機A’は、受信機B’が送信したRIT Data Request Frameを受信する。そして、RIT Data Request Frameに含まれるネットワークIDとアドレス情報が自機を示すものであれば、送信機A’は、対象データTDFを受信機B’に送信する。

【0031】
受信機B’は、RIT Data Request Frameを送信した後、受信待受状態となっていることから、送信機A’が送信した対象データTDFを受信することが可能となる。

【0032】
このように、RIT方式は、受信機B’がRIT Data Request Frameを間欠送信することで、対象データTDFの受信を可能としている。そのため、例えば、送信機がWakeup Sequenceと呼ばれるWakeup Frameの連続送信を行って受信機の受信を促すCSL(Coordinated Sampled Listening)方式に比べ、消費電力を大幅に削減することができる。

【0033】
図5は、F-RIT方式について説明するための第1の図である。ここでは、F-RIT方式のマルチホップ通信を行う無線機110について、送信側と受信側を区別するとき、対象データTDFの送信側の無線機110を送信機A、対象データTDFの受信側の無線機110を受信機Bという。

【0034】
比較例のRIT方式と同様、受信機Bは、予め設定された間欠動作間隔おきにRIT Data Request Frame(図中、フレームRFa、フレームRFbで示す)を送信する。

【0035】
ここで、F-RIT方式では、受信機Bが送信するRIT Data Request Frame(フレームRFb)には、アドレス情報に関して、受信機Bのアドレス情報のみが含まれており、RIT方式と異なり、受信機BのネットワークID、送信機AのネットワークIDとアドレス情報が含まれていない。送信機Aが送信するRIT Data Request Frame(フレームRFa)についても同様である。

【0036】
送信機Aにおいて、対象データTDFを取得したり対象データTDFが生じたりすると、送信機Aは、図5中、ハッチングで示すように受信待受状態となる。そして、送信機Aの通信制御部160(以下、送信側制御部という)は、受信機Bが送信したRIT Data Request Frameを受信すると、RIT Data Request Frameに示されるアドレス情報AD(受信機Bのアドレス情報)に拘わらず、そのアドレス情報ADを受信機Bに送信する。ここで、例えば、送信機Aには、送信対象として適切な受信機Bのアドレス情報ADが登録されており、送信側制御部は、登録されたアドレス情報ADと受信したRIT Data Request Frameに示されるアドレス情報ADとを照らし合わせて、アドレス情報ADが登録されていなければ、受信機Bから送信されたRIT Data Request Frameに対して返送しないといった制御を行ってもよい。

【0037】
受信機Bの通信制御部160(以下、受信側制御部という)は、RIT Data Request Frameを送信した後、受信待受状態となっていることから、送信機Aが送信したアドレス情報ADを受信できる。アドレス情報ADを受信すると、受信側制御部は、アドレス情報ADが自機(受信機B)のアドレス情報であることを確認する。

【0038】
そして、送信側制御部は、アドレス情報ADの後、受信機Bに対象データTDFを送信し、受信側制御部は、引き続き受信待受状態となっていることから対象データTDFを受信可能となる。

【0039】
また、例えば、受信側制御部は、送信機Aが送信したアドレス情報ADが自機のアドレス情報でない場合には、続いて受信されるデータは、自機宛てのものではないと判断して受信処理を行わない、もしくは、受信したとしても有効なデータとして扱わない。

【0040】
このように、F-RIT方式では、送信側制御部がRIT Data Request Frameを受信した後、対象データTDFを送信する前に、RIT Data Request Frameに示される受信機のアドレス情報ADを受信機Bに送信する。

【0041】
そして、受信側制御部は、受信待受状態において自機のアドレス情報を受信すると、続いて送信された対象データTDFを受信する。そのため、受信機Bが、送信機A以外の機器から送信されたデータを誤受信する事態を回避することが可能となる。

【0042】
また、上述したように、F-RIT方式においては、RIT Data Request Frameに、受信機Bのアドレス情報のみが含まれており、受信機BのネットワークID、送信機AのネットワークIDとアドレス情報が含まれていない。RIT Data Request Frameは、定常的に間欠送信されていることから、RIT Data Request Frameの情報量を減らすことで、消費電力の大幅な削減が可能となるとともに、電波利用効率の向上を図ることが可能となる。

【0043】
図6は、比較例のRIT方式について説明するための第3の図である。図6では、RIT方式において、送信機A’から受信機B’へ対象データTDFが送信されている間に、受信機C’がRIT Data Request Frameの送信を試みる場合を示している。

【0044】
上記のように、RIT Data Request Frame(フレームRFc’)の送信前には、キャリアセンスCSが遂行される。受信機C’は、キャリアセンスCSの結果、周波数帯域が他の無線機10(送信機A’)によって占有され、その周波数帯域での送信が不可能と判断すると、延期期間の待機後、再度、キャリアセンスCSを行う。このとき、まだ、対象データTDFの送信が完了していなければ、受信機C’は、さらに、延期期間の待機後、再度、キャリアセンスCSを行う。

【0045】
そして、対象データTDFの送信が完了した後のキャリアセンスCSで、周波数帯域における受信電波強度が閾値以下となると、受信機C’は、RIT Data Request Frameを送信する。

【0046】
このように、RIT方式においては、RIT Data Request Frameを送信できるまでキャリアセンスCSを繰り返すCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)が適用される。ここで、延期期間は、ランダムかつキャリアセンスCSを繰り返すごとに短く設定される。

【0047】
図7は、比較例のRIT方式について説明するための第4の図である。図7に示すように、CSMA/CAには、例えば、キャリアセンスCSを繰り返すのではなく、継続する処理も含まれる。

【0048】
具体的には、受信機D’は、キャリアセンスCSの結果、周波数帯域が他の無線機10(送信機A’)によって占有され、その周波数帯域での送信が不可能と判断すると、周波数帯域が空くまでキャリアセンスCSを継続する。すなわち、受信機D’は、受信電波強度が閾値以下となるまで、受信待受状態を維持して受信電波強度を測定し続ける。

【0049】
そして、対象データTDFの送信が完了し、測定された受信電波強度が閾値以下となると、受信機D’は、RIT Data Request Frameを送信する。

【0050】
図8は、本実施形態のF-RIT方式について説明するための第2の図である。図8に示すように、F-RIT方式では、RIT方式と同様、送信機Aから受信機Bへ対象データTDFが送信されている間に、受信機Cの受信側制御部がキャリアセンスCSを行う。

【0051】
しかし、周波数帯域が他の無線機110(送信機A)によって占有され、その周波数帯域の受信電波強度が閾値を超えていると、受信機Cの受信側制御部は、受信待受状態を継続することなく、即座に受信待受状態を解除してキャリアセンスCSを終了する。その後、再度のキャリアセンスCSを行わず、そのキャリアセンスCSに基づく今回のRIT Data Request Frameの送信を中止して、次回のRIT Data Request Frameの送信タイミングまでキャリアセンスCSを休止する。

【0052】
上記のように、F-RIT方式においては、繰り返しのキャリアセンスCSを行わない。このようなキャリアセンスCSの処理方式をPre-CSと称する。

【0053】
RIT Data Request Frameは、定期的に必ず送信しなければならないものではなく、次回のRIT Data Request Frameの送信タイミングまで延期しても、ネットワーク性能に大きな影響はない。むしろ、対象データTDFの優先度を高めることで通信頻度を抑え、無線機110が増加しても通信成功率の低下を抑制することが可能となる。

【0054】
また、図6に示す比較例では、キャリアセンスCSを繰り返すため、キャリアセンスCSに費やされる消費電力が大きくなる。さらに、図7に示す比較例では、キャリアセンスCSを継続的に実行することから、受信待受状態が長くなって消費電力が一層増大してしまう。Pre-CSでは、キャリアセンスCSの回数が少なくその継続時間が短いため、消費電力を大幅に抑制することができる。

【0055】
また、ここでは、RIT Data Request FrameについてはPre-CSとするが、対象データTDFについては、送信前にPre-CSを行ってもよいが、送信前にCSMA/CAを行うとすれば、通信成功率をさらに向上することが可能となる。

【0056】
(1.消費電力性能評価)
続いて、上述したF-RIT方式の性能について、CSL方式のうち、非同期式である非同期CSLをベースとしたMAC方式(以下、CSLベース方式)を比較対象とする消費電力の性能評価の結果を詳述する。CSLベース方式では、Wakeup Sequenceの送信前に、F-RIT方式と同様の上記Pre-CSを行うこととする。

【0057】
(1-1.モデル化)
図9は、無線通信による電力消費の理論モデルである。図9に示すように、一対の無線機(Sender、Receiver)の電波の届く通信エリアに一対の無線機のみが存在する環境を想定する。また、通信エリア外にも、他の無線機が存在しないものとし、Senderに通信リンク確立要求が発生する頻度を頻度λLinkとする。

【0058】
図10は、消費電力計算に関する変数および定数をまとめた表であり、図10(a)には、電力消費計算の変数をまとめた表を示し、図10(b)には、アプリケーションごとのIDの長さをまとめた表を示し、図10(c)には、各変数の値をまとめた表を示す。

【0059】
F-RIT方式とCSLベース方式における間欠動作間隔(MAC RIT Period、MAC CSL Period)は同じ長さTCSL=TRIT=Tと設定する。なお、本モデル化においては、Pre-CSにかかる消費電力は計算に含めないこととする。

【0060】
提案手法であるF-RIT方式と、比較手法であるCSLベース方式におけるSenderの消費電力をそれぞれPS:RIT、PS:CSLとする。Senderの消費電力は、間欠送受信動作に係る消費電力P Int(RIT)、P Int(CSL)、通信相手の間欠送受信動作をとらえるためのリンク動作に係るSender側の消費電力P S:Link(RIT)、P S:Link(CSL)、そしてデータ伝送動作に係るSender側の消費電力PS:Dataから構成される。このうち通信リンク確立の要求は頻度λLinkで発生する。消費電力PS:RIT、PS:CSLは数式1で表現できる。
【数1】
JP2017108333A_000003t.gif
…(数式1)
ここで数式(1)の右辺はそれぞれ数式2となる。
【数2】
JP2017108333A_000004t.gif
…(数式2)
ただし、期間TIDは単一IDフレームの送信期間であり、F-RIT方式ではRIT Data Request Frameの送信期間、比較手法CSLベース方式ではWakeup Sequence Frameの送信期間に相当する。また、PtおよびPはそれぞれ送信および受信動作に係る単位時間あたりの消費電力である。

【0061】
次にReceiverの消費電力PR:RITおよびPR:CSLを同様にモデル化すると数式3となる。
【数3】
JP2017108333A_000005t.gif
…(数式3)
ただしP R:Link(RIT)およびP R:Link(CSL)はそれぞれアクセス動作に係るReceiver側の消費電力であり、PR:Dataはデータ伝送動作に係るReceiver側の消費電力であり、それぞれ数式4の様に表すことができる。
【数4】
JP2017108333A_000006t.gif
…(数式4)

【0062】
これらの消費電力PS:RIT、PS:CSL、PR:RIT、および、PR:CSLを用いてF-RIT方式とCSLベース方式それぞれの消費電力性能を比較評価するための評価指標ηPを数式5に定義する。
【数5】
JP2017108333A_000007t.gif
…(数式5)
評価指標ηP<1であればF-RIT方式に比べてCSLベース方式の消費電力が大きく、評価指標η>1であればその逆となる。

【0063】
(1-2.計算結果)
上記の評価指標ηPを用いてF-RIT方式の消費電力性能を評価する。評価にあたっては、通信規格IEEE802.15.4gで標準化され、U-Bus Airで採用されている伝送速度100kbpsを前提とし、図10(b)に示す、実用上想定される各種アプリケーション(上位層)のID長に合わせて設定した、単一IDフレームの送信に要する期間TIDのうち、0.08ms、0.32ms、1.28msの場合について評価する。その他の評価パラメータを図10(c)に示す。なお、Pre-CS動作期間は現行の無線機の実力値を参考にT CS =0.01msとした。また、F-RITとCSLベース方式で消費電力に差のない、データ伝送に要する期間TDataに関してはいずれの計算でも0msとした。

【0064】
図11、図12は、間欠動作間隔Tと消費電力性能の評価指標ηPとの関係を示すグラフであり、図11(a)には、期間TIDの異なる凡例を示す。期間TID=0.08msでは間欠動作間隔Tが約0.1s以上の場合、期間TID=0.32msでは間欠動作間隔Tが約0.6s以上の場合において、F-RIT方式の方がCSLベース方式に比べて消費電力性能が優れていることがわかる。また期間TIDを短く設定するほどF-RIT方式の消費電力性能は向上することがわかる。これは期間TIDが短くなると、F-RIT方式の消費電力のうち支配的な間欠動作に要する消費電力が低減されるためである。

【0065】
また、図11(b)には、頻度λLinkの異なる凡例を示す。図11(b)に示すように、頻度λLink=0.1では間欠動作間隔Tが約0.1s以上の場合、頻度λLink=0.001では間欠動作間隔Tが約1.0s以上の場合においてF-RIT方式の方がCSLベース方式に比べて消費電力性能が優れていることがわかる。またアクセス発生の頻度λLinkが高いほどF-RIT方式の消費電力性能は向上することがわかる。これはアクセス発生の頻度λLinkが高い領域ではCSLベース方式のWakeup Sequenceによる送信電力が消費電力の中で支配的になるためである。

【0066】
図12には、送信動作に係る単位時間あたりの消費電力Ptと受信動作に係る単位時間あたりの消費電力Pとの比であるPt/Pが異なる凡例を示す。すべてのPt/Pについて間欠動作間隔Tが約0.3s以上の場合においてF-RIT方式の方がCSLベース方式に比べて消費電力性能が優れていることがわかる。またTが約0.3s以上となる領域においては、Pt/Pが大きくなるほどF-RIT方式の消費電力性能は向上することがわかる。これは間欠動作間隔Tが広くなる領域では、アクセス発生頻度が高い領域と同様にCSLベース方式のWakeup Sequenceによる送信電力が消費電力の中で支配的になるためである。

【0067】
上記のように、図11、図12で示したいずれの条件においても、間欠動作間隔Tが約1.0s以上の場合はF-RIT方式の方がCSLベース方式に比べて消費電力性能が優れていることが示された。

【0068】
(1-3.考察)
F-RIT方式がCSLベース方式に比べて有利になる条件は数式6のようにηP≦1となるときである。
【数6】
JP2017108333A_000008t.gif
…(数式6)

【0069】
したがって、数式6に数式2および数式4を代入し、さらに数式7で示す送受信動作に係る消費電力の比DPを代入すると条件式として数式8が算出できる。
【数7】
JP2017108333A_000009t.gif
…(数式7)
【数8】
JP2017108333A_000010t.gif
…(数式8)

【0070】
つまり数式8を満たすような条件においては、常にF-RIT方式がCSLベース方式に比べて消費電力性能の観点で有利になる。数式8は、期間TIDを短くするほどF-RIT方式の消費電力性能が有利になることを示している。すなわちID長自体を短くするか、伝送速度を上げて期間TIDを短くするほどF-RIT方式の消費電力性能が向上することを意味している。したがって将来、より高速通信が可能な伝送帯域が利用可能になればF-RIT方式の消費電力性能はさらに向上する。

【0071】
(2.干渉環境における通信リンク確立の成功率評価)
続いて、通信エリア内に複数の無線機が存在して干渉する場合における通信リンク確立の成功率(伝送成功率)を、F-RIT方式とCSLベース方式とで比較評価する。

【0072】
(2-1.モデル化)
図13は、一対の無線機の通信エリアに、他の複数の無線機が存在する評価モデルを示す。一対の無線機の通信エリアには、N個の無線機が存在するものとし、すべての無線機には固有の通信相手が存在(すなわちN/2個の通信ペアが存在)し、すべての無線機にはデータ伝送イベントが頻度λLinkで発生しSenderとなるものとする。また、本モデル化では理論計算の複雑化を避けるため、F-RIT方式およびCSLベース方式のPre-CSを省略する。

【0073】
(2-2.通信リンク確立の成功率の定式化)
図14は、CSLベース方式のモデルシーケンスを示す図であり、図14(a)には、通信リンク確立が成功する場合を、図14(b)には、干渉によって通信リンク確立が失敗する場合を示す。

【0074】
初めにCSLベース方式の場合の通信リンク確立の成功率S(CSL)を導出する。与干渉となる区間T Link(CSL)は、干渉源となる通信ペアにおけるSender(干渉源Sender)のWakeup Sequence間欠動作間隔Tと、干渉源となる通信ペアにおけるReceiver(干渉源Receiver)のID返送に要する期間TID、および、干渉源Senderのデータ伝送に要する期間TDataとの合計値としてT Link(CSL)=T+TID+TDataで表される。また、図14(b)に示すように、所望通信ペアにおける被干渉区間は最大T Link(CSL)となる。各無線機における呼発生が頻度λLinkの確率でポアソン分布に従って発生するものとすると、ピュアアロハ方式の理論式と同様の考え方で通信が衝突しない確率、すなわち通信リンク確立の成功率S(CSL)を数式9のように表すことができる。
【数9】
JP2017108333A_000011t.gif
…(数式9)

【0075】
次にF-RIT方式の場合の通信リンク確立の成功率S(RIT)を導出する。図15は、F-RIT方式のモデルシーケンスを示す図であり、図15(a)には、通信リンク確立が成功する場合を、図15(b)には、干渉によって通信リンク確立が失敗する場合を示す。

【0076】
F-RIT方式の場合、与干渉の原因は2種類存在する。まず一つ目は、干渉源となるN-1個の無線機による定期的な期間TIDの間欠送信である。またCSLベース方式の場合と同様に各無線機から頻度λLinkで発生する時間長であるTID+TData区間のデータ送信も与干渉区間になる。これに対し被干渉区間は、図15に示すように、所望通信ペアにおけるSenderとReceiverとのリンク確立に係る区間T Link(RIT)であり、T Link(RIT)=2・TID+TDataになる。CSLベース方式と同様に、各無線機における呼発生が頻度λLinkの確率でポアソン分布に従って発生するものとすると、ピュアアロハ方式の理論式と同様の考え方で通信リンク確立の成功率S(RIT)を導出すると数式10となる。
【数10】
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…(数式10)

【0077】
(2-3.計算結果と考察)
図16は、F-RIT方式とCSLベース方式の通信リンク確立の成功率S(RIT)、S(CSL)を比較評価したグラフである。なお、図16では、IDフレームの送信に要する期間TID=0.32ms、頻度λLink=0.001とし、Sender端末数N=10、100、1000とした各凡例を示す。図16において、縦軸は通信リンク確立の成功率S(RIT)、S(CSL)、横軸は間欠動作間隔Tである。

【0078】
本評価では通信リンクを確立する事だけに着目し、データ伝送に要する期間TData=0とした。図16に示すように、間欠動作間隔Tが0.7s以上になるとSender端末数Nに関わらずF-RIT方式が有利になる。これはCSLベース方式の場合、間欠動作間隔Tが大きくなるとWakeup Sequenceが長くなり、与干渉となる無線機あたりの電波占有時間が増大することに起因する。

【0079】
これらの結果より、頻度λLinkが高い環境で、消費電力性能を向上させるために間欠動作間隔Tを大きく設定する場合、CSLベース方式に比べてF-RIT方式の通信リンク確立の成功率S(RIT)は高く、プロトコルの電波利用効率が優れていることが示された。さらに、数式9および数式10によって頻度λLinkがさらに高頻度になれば、F-RIT方式の優位性がより向上することがわかる。よってF-RIT方式はアドホックなネットワークプロトコルに好適であるといえる。

【0080】
(3.Pre-CSの効果の計算機シミュレーション)
続いて、Pre-CSの効用を定量的に示すために、データ長(データ伝送に要する期間TData)を変化させた場合におけるF-RIT方式およびCSLベース方式の通信リンク確立の成功率を計算機シミュレーションによって評価する。

【0081】
(3—1.条件設定)
図17は、計算機シミュレーションの処理の流れを説明するためのフローチャートであり、図18は、計算機シミュレーションの各パラメータの設定値を示す図である。ここでは、図17に示す処理について、図18に示すような設定値を各パラメータに設定してシミュレーションを行った。

【0082】
次に、無線機の間欠送受信動作タイミングの初期値と送信データ発生タイミングをランダムで割り付ける。その後、それぞれの端末毎に所望通信ペアのSenderにおける通信リンク確立のための区間T Link(CSL)および区間T Link(RIT)と、干渉源となる無線機が発生させる与干渉区間との衝突を10μsの精度で検出し、衝突回数をカウントすることで通信リンク確立の成功率を算出する。

【0083】
まず、本計算機シミュレーションの妥当性を示すために、Pre-CSを行わない場合の頻度λLinkと通信リンク確立の成功率の関係性を計算機シミュレーションにより評価し、上記の数値計算結果との比較評価を行った。Sender端末数N=100、T=5.0s、IDフレームの送信に要する期間TID=0.32msとした。また、計算機シミュレーションの試行回数はいずれも5000回とした。

【0084】
(3-2.計算機シミュレーション結果)
図19、図20は、Pre-CSを導入しない場合における、通信リンク確立の成功率の計算機シミュレーション結果を説明するための説明図であり、図19(a)には、データ伝送に要する期間TDataを0msとした場合を示し、図19(b)には、期間TDataを20msとした場合を示し、図20(a)には、期間TDataを50msとした場合を示し、図20(b)には、期間TDataを100msとした場合を示す。

【0085】
また、図21は、利用が想定される上位層のデータパケット長を説明するための説明図であり、100kbpsで各アプリケーションにおける1パケットを伝送するために要する期間TDataを示す。

【0086】
図19、図20のいずれに示す結果も、計算機シミュレーション結果と理論計算結果がほぼ一致している。これにより理論計算に用いた干渉モデルおよび計算機シミュレーションの妥当性が示された。

【0087】
また、図19、図20に示すように、データ伝送に要する期間TDataが長くなるにつれてF-RIT方式の相対的な通信リンク確立の成功率が全体的に劣化することがわかる。これはデータ長に比例してF-RIT方式の間欠送受信動作とデータ伝送動作との衝突頻度が増加するためである。一方、頻度λLinkが高い場合は、間欠動作間隔Tが長いため上述の衝突頻度増加は抑制され、CSLベース方式に対するF-RIT方式の優位性は維持されている。

【0088】
この間欠送受信動作とデータ伝送動作との衝突頻度を抑圧するために、上記のPre-CSを導入する。図19、図20と同一のシミュレーション条件において、Pre-CSを導入した場合の通信リンク確立の成功率の計算機シミュレーションを行った。

【0089】
図22、図23は、Pre-CSを導入した場合における、通信リンク確立の成功率の計算機シミュレーション結果を説明するための説明図であり、図22(a)には、データ伝送に要する期間TDataを0msとした場合を示し、図22(b)には、期間TDataを20msとした場合を示し、図23(a)には、期間TDataを50msとした場合を示し、図23(b)には、期間TDataを100msとした場合を示す。

【0090】
図22、図23のいずれに示す結果も、Pre-CSによって間欠送受信動作とデータ伝送動作との衝突頻度が抑圧され、F-RIT方式の通信リンク確立の成功率がPre-CSを導入しない場合に比べて大幅に改善されていることがわかる。その結果λLink=0.1s-1、TData=100msという条件において、通信リンク確立の成功率が最大約20倍程度改善し、ほぼ100%に近い通信リンク確立の成功率を達成できることがわかる。

【0091】
一方、CSLベース方式にPre-CSを導入した場合は、Pre-CSを導入しない場合に比べて通信リンク確立の成功率が若干改善するが、F-RIT方式ほど顕著な効果はみられない。CSLベース方式の通信リンク確立成功率をさらに改善するためには、再送シーケンスを追加する必要があると考えられるが、再送によって電波利用効率は劣化する問題が発生する。

【0092】
上記のように、F-RIT方式は、RIT方式をベースにした実装性の高いMACプロトコルであり、本実施形態の無線通信システム100によれば、F-RIT方式の通信を利用しているため、CSLベース方式を利用するシステムに対して下記の優位性を持っている。

【0093】
すなわち、消費電力性能については、図11(a)に示すように、間欠動作間隔Tが所定値以上の場合において、単一IDフレームの送信に要する期間TIDが短いほど優位となる。言い換えれば、期間TIDの短縮による消費電力削減効果が、CSLベース方式より大きい。無線通信システム100では、上記のように、RIT Data Request Frameに、受信機Bのアドレス情報のみが含まれており、受信機BのネットワークID、送信機AのネットワークIDとアドレス情報が含まれていない。そのため、期間TIDの短縮が可能となり、この構成をCSLベース方式に適用する場合に比べて、好適に消費電力削減を図ることが可能となる。

【0094】
また、Pre-CSを導入した場合の通信リンク確立の成功率については、無線通信システム100では、図22、図23に示すように、間欠送受信動作とデータ伝送動作との衝突頻度が抑圧され、通信リンク確立の成功率が大幅に改善する。一方、CSLベース方式を利用するシステムでは、通信リンク確立の成功率の改善幅は小さい。

【0095】
これは、以下の理由による。すなわち、CSLベース方式の場合、Wakeup Sequenceの送信前にキャリアセンスCSを行うことで成功率が改善するものの、Pre-CSでは、Wakeup Sequenceを送信できなかった場合には、通信リンク確立が失敗となってしまう。そのため、CSLベース方式では、Pre-CSによる改善幅は小さく、むしろ、繰り返しキャリアセンスCSを行うCSMA/CAを採用する方が、成功率は改善する。

【0096】
一方、F-RIT方式の場合、RIT Data Request Frameに対してキャリアセンスCSを繰り返さずとも、図22、図23のように、ほとんど100%近い成功率を実現できる。むしろ、RIT Data Request Frameに対して繰り返しキャリアセンスCSを行うCSMA/CAを採用すると、必ずRIT Data Request Frameが送信されて電波帯域を占有することから、他の通信リンク確立の成功率を低下させる要因となってしまう。

【0097】
すなわち、従来のCSL-ベース方式であれば、Pre-CSよりもCSMA/CAを採用する方が成功率の改善が見込まれるが、無線通信システム100で利用するFーRIT方式では、従来とは逆に、CSMA/CAよりもPre-CSの方が通信リンク確立の成功率の改善に好適となり、電波利用効率を向上することが可能となる。また、Pre-CSの結果、RIT Data Request Frameが送信されない場合があることから、消費電力のさらなる抑制を図ることが可能となる。

【0098】
また、Pre-CSでは、上記の図6~図8に示したように、CSMA/CAに比べてキャリアセンスCSの回数や継続時間を抑制することができるため、RIT Data Request Frameの送信回数の削減と併せて、一層の消費電力抑制を実現することが可能となる。

【0099】
また、図11(b)、図12に示すように、消費電力性能について、間欠動作間隔Tが所定値以上の場合において、Senderに通信リンク確立要求が発生する頻度λLinkが高いほど優位となり、消費電力Ptと受信動作に係る単位時間あたりの消費電力Pとの比が大きいほど優位となる。

【0100】
Pre-CSを導入しない場合の通信リンク確立の成功率については、図16に示すように、間欠動作間隔Tを大きく設定する場合に優位性が高くなる。また、数式9、数式10、図19、図20からわかるように、頻度λLinkが高いほど、優位性が高くなる。

【0101】
このように、データ伝送の頻度λLinkが高く、消費電力性能を向上させるために間欠動作間隔Tを大きく設定する場合、CSLベース方式に比べてF-RIT方式の伝送成功率は高く、プロトコルの電波利用効率が優れていることが示された。さらに計算機シミュレーションにより、F-RIT方式の伝送成功率を評価し、Pre-CS機能を導入することで、通信リンク確立成功率を最大約20倍程度改善し、通信の頻度λLinkが0.1s-1、TData=100msという実用的な条件においても、ほぼ100%近い伝送成功率を達成できる。

【0102】
また、F-RIT方式は高端末密度、高アクセス頻度という条件下においても、ID時間長、間欠動作間隔を適切に設定することにより、優れた消費電力性能と高い伝送成功率および電波利用効率を両立可能であり、ガス事業者や水道事業者におけるSUN(Smart Utility Network)の実現に必要となる、低消費電力で柔軟性の高いマルチホップ無線ネットワークを実現可能とする極めて実用性の高いMACプロトコルである。

【0103】
そのため、将来、無線ICの受信電力の低消費電力化が進み、送受信電力比が大きい高効率な送受信機が実現されると、F-RIT方式の有効性はより顕著に表れる。高密度端末環境、高アクセス頻度条件で高い電波利用効率、低消費電力性能を実現するF-RIT方式に最適化したIP上位層と組み合わせることでSUNをIPネットワーク上で展開することが可能となる。そのため、これまでにない超高密度なセンサ配置や、エネルギーハーベスティングセンサ等、定常的な通信相手特定が困難なセンサのネットワーク化を実現できると考えられ、今後の本格的なIoT社会の実現にF-RIT方式が大きく貢献できると考えられる。

【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【0105】
例えば、上述した実施形態では、マルチホップ通信にF-RIT方式を適用する場合について説明したが、マルチホップ通信に限らず、例えば、ゲートウェイ機器112などの中継器に対して複数の無線機が個々に通信する通信形態にも利用できる。具体的には、ホームセキュリティのための各種センサを家屋などに複数配置し、各センサに設けられた無線機が中継器と個々に通信するような適用例が挙げられる。

【0106】
また、コンピュータを上記無線機110として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、複数の無線機がRIT方式の通信を行う無線通信システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
A 送信機
B、C 受信機
CS キャリアセンス
TDF 対象データ
RFc フレーム(RIT Data Request Frame)
100 無線通信システム
160 通信制御部(送信側制御部、受信側制御部)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22