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明細書 :フッ素ガス発生用電解ユニット、フッ素ガス発生装置及びフッ素ガスの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-082274 (P2017-082274A)
公開日 平成29年5月18日(2017.5.18)
発明の名称または考案の名称 フッ素ガス発生用電解ユニット、フッ素ガス発生装置及びフッ素ガスの製造方法
国際特許分類 C25B   9/00        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
C25B  11/12        (2006.01)
C25B   1/24        (2006.01)
C25B  15/08        (2006.01)
C01B   7/20        (2006.01)
FI C25B 9/00 F
C25B 11/06 A
C25B 11/12
C25B 1/24 A
C25B 15/08 302
C01B 7/20
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2015-210503 (P2015-210503)
出願日 平成27年10月27日(2015.10.27)
発明者または考案者 【氏名】萩原 理加
【氏名】松本 一彦
【氏名】田和 慎也
【氏名】井上 貴弘
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4K011
4K021
Fターム 4K011AA16
4K011AA69
4K011DA09
4K021AA04
4K021BA04
4K021BA17
4K021BC01
4K021CA09
4K021DB05
4K021DB18
4K021DB19
4K021DB40
4K021DC15
要約 【課題】研究室や小規模な工業レベルで用いることができるフッ素ガスを安全にオンサイトで製造する技術を提供する。
【解決手段】密閉可能な耐フッ素材料製容器の内部空間にフッ素ガス発生室、第1電極及び第2電極を備え、前記容器がフッ素ガス供給口を備え、前記第1電極がフッ化物を電極活物質とする電極であり、前記第2電極がフッ素耐性材料から構成された電極であり、前記フッ素ガス発生室に液状電解質を存在させたときに前記第1電極と第2電極の一部が前記液状電解質に浸ることができる、フッ素ガス発生用電解ユニット。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
密閉可能な耐フッ素材料製容器の内部空間にフッ素ガス発生室、第1電極及び第2電極を備え、前記容器がフッ素ガス供給口を備え、前記第1電極がフッ化物を電極活物質とする電極であり、前記第2電極がフッ素耐性材料から構成された電極であり、前記フッ素ガス発生室に液状電解質を存在させたときに前記第1電極と第2電極の一部が前記液状電解質に浸ることができる、フッ素ガス発生用電解ユニット。
【請求項2】
前記フッ素ガス発生用電解ユニットがフッ化水素(HF)供給路に接続可能なフッ化水素(HF)供給口を備え、前記フッ素ガス発生室にアルカリ金属フッ化物を配置した状態で前記HF供給口からHFを供給することで、密閉状態で前記フッ素ガス発生室にアルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体から構成される電解質を生じさせ得る、請求項1に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット。
【請求項3】
さらに少なくとも1つの参照電極を備えてなる、請求項1又は2に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット、第1電極と第2電極に接続した電流供給手段、フッ素ガスをフッ素ガス供給口からフッ素処理室に供給するフッ素ガス供給路を備え、前記液状電解質がアルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体から構成され、前記液状電解質をフッ素ガス発生室に存在させて前記電流供給装置により前記第1電極と第2電極に電流を流して電解反応を行ったときに、フッ素ガスが選択的に発生し、前記フッ素ガス供給路からフッ素処理室にフッ素ガスを供給するように構成してなる、フッ素ガス発生装置。
【請求項5】
フッ素ガス発生用電解ユニットが少なくとも1つの参照電極を備え、前記参照電極が前記電流供給手段に接続されてなる、請求項4に記載のフッ素ガス発生装置。
【請求項6】
前記フッ素ガス発生室を加熱するヒーターをさらに備える、請求項4又は5に記載のフッ素ガス発生装置。
【請求項7】
前記第1電極が、CuF、SnF、SnF、BiF、BiF、GeF、PbF、PbF、ZnF、AlF、SbF、CrF、AgF、FeF、FeF、TiF、MnF、MnF、GaF、CoF、NiF、LaF、ScF、YF、CeF、PrF、NdF、SmF、SmF、EuF、EuF、GdF、TbF、DyF、HoF、ErF、TmF、YbF、YbF、LuF、フッ化黒鉛(フッ化グラファイト)、フッ素化炭素からなる群から選ばれるフッ化物とバインダーと導電助剤を含む電極である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは請求項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
【請求項8】
前記第2電極がガラス状カーボン電極、カーボン電極、グラファイト電極、金電極、白金電極、銀電極、鉄電極、銅電極、カーボンペースト電極、ニッケル電極からなる群から選ばれる、請求項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは請求項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
【請求項9】
前記電解質が、HFとCsFを含む複合体である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは請求項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
【請求項10】
前記電解質が、HFとCsFを含み、さらにLiF、NaF及びKFからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは請求項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニットのフッ素ガス発生室にアルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体から構成される電解質を配置する工程、液状の前記電解質に浸された第1電極と第2電極に接続した電流供給手段により電流を流して電解反応を行うことで前記フッ素ガス発生室内でフッ素ガスを発生させて、前記フッ素ガス供給口からフッ素ガス供給路を通ってフッ素処理室にフッ素ガスを供給する電解工程を含むことを特徴とする、フッ素ガスの製造方法。
【請求項12】
前記電解質が、CsFとHFを含む複合体である、請求項11に記載のフッ素ガスの製造方法。
【請求項13】
前記電解質が、HFとCsFを含み、さらにLiF、NaF及びKFからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項12に記載のフッ素ガスの製造方法。
【請求項14】
モル比でCsF:HF=1:2~1:5である、請求項12又は13に記載のフッ素ガスの製造方法。
【請求項15】
前記電解質が室温で固体である場合に加熱融解する工程を電解工程の前にさらに含む、請求項11~14のいずれか1項に記載のフッ素ガスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ガス発生用電解ユニット、フッ素ガス発生装置及びフッ素ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フッ素ガスは、工業的にはKF・2HF電解浴を90℃において電解することで製造されているが、装置が大がかりで、エネルギー効率も低くなるという問題点がある。また、陰極で発生する水素ガスが陽極で発生するフッ素ガスと接触すると爆発を起こすという安全上の問題点もある。そのため、陰極室と陽極室のガス圧のバランスをとるように圧力をモニタし、調整する複雑な機構が必要となる。
【0003】
近年、高圧ガス取扱に関する法改正と企業の法令遵守により、ボンベによるフッ素ガス供給が停止し、フッ素ガスの入手自体が困難であるため、フッ素ガスを用いる実験室あるいは小規模な製造工場などではオンサイトフッ素ガス発生装置が必要となったが、上記のような問題点から、電解浴の数倍ものサイズにわたる複雑な周辺装置が必要となっており、価格面やメンテナンス経費からも導入が困難である。また学術研究の面でもフッ素ガスの使用がきわめて困難な危機的状況に陥っており、我が国のフッ素化学の基盤研究がその根底から揺らいでいるといっても過言ではない。この問題を解決するためには研究室あるいは小規模な工業レベルで用いることができるフッ素ガスを安全にオンサイトで製造する装置が必要である。
【0004】
KF-HF系塩の凝固点は、非特許文献1に記載され、CsF-HF系塩の融点は非特許文献2に記載されている。
【0005】
非特許文献3は、フッ素ガス製造に使用されるCsF-HF複合体などを用いたフッ素ガス製造について記載されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 1934, 56 (7), pp 1431-1434
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 1948, 70 (4), pp 1500-1502
【非特許文献3】Trans. Am. Electrochem. Soc., 66, 1934, 245-252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、高圧ガス取扱に関する法改正と企業の法令遵守により、ボンベによる純フッ素ガス(純度100%)供給が停止し、フッ素ガスの入手自体が困難であるため、フッ素ガスを用いる実験室あるいは小規模な製造工場などではオンサイトフッ素ガス発生装置が必要となったが、上記のような問題点から、電解浴の数倍ものサイズにわたる複雑な周辺装置が必要となっており、価格面やメンテナンス経費からも導入が困難である。また学術研究の面でもフッ素ガスの使用がきわめて困難な危機的状況に陥っており、我が国のフッ素化学の基盤研究がその根底から揺らいでいるといっても過言ではない。この問題を解決するためには研究室あるいは小規模な工業レベルで用いることができるフッ素ガスを安全にオンサイトで製造する装置が必要である。
【0008】
本発明は、研究室や小規模な工業レベルで用いることができるフッ素ガスを安全にオンサイトで製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フッ素ガス発生用電解ユニット、フッ素ガス発生装置及びフッ素ガスの製造方法を提供するものである。
項1. 密閉可能な耐フッ素材料製容器の内部空間にフッ素ガス発生室、第1電極及び第2電極を備え、前記容器がフッ素ガス供給口を備え、前記第1電極がフッ化物を電極活物質とする電極であり、前記第2電極がフッ素耐性材料から構成された電極であり、前記フッ素ガス発生室に液状電解質を存在させたときに前記第1電極と第2電極の一部が前記液状電解質に浸ることができる、フッ素ガス発生用電解ユニット。
項2. 前記フッ素ガス発生用電解ユニットがフッ化水素(HF)供給路に接続可能なフッ化水素(HF)供給口を備え、前記フッ素ガス発生室にアルカリ金属フッ化物を配置した状態で前記HF供給口からHFを供給することで、密閉状態で前記フッ素ガス発生室にアルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体から構成される電解質を生じさせ得る、項1に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット。
項3. さらに少なくとも1つの参照電極を備えてなる、項1又は2に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット。
項4. 項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット、第1電極と第2電極に接続した電流供給手段、フッ素ガスをフッ素ガス供給口からフッ素処理室に供給するフッ素ガス供給路を備え、前記液状電解質がアルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体から構成され、前記液状電解質をフッ素ガス発生室に存在させて前記電流供給装置により前記第1電極と第2電極に電流を流して電解反応を行ったときに、フッ素ガスが選択的に発生し、前記フッ素ガス供給路からフッ素処理室にフッ素ガスを供給するように構成してなる、フッ素ガス発生装置。
項5. フッ素ガス発生用電解ユニットが少なくとも1つの参照電極を備え、前記参照電極が前記電流供給手段に接続されてなる、項4に記載のフッ素ガス発生装置。
項6. 前記フッ素ガス発生室を加熱するヒーターをさらに備える、項4又は5に記載のフッ素ガス発生装置。
項7. 前記第1電極が、CuF、SnF、SnF、BiF、BiF、GeF、PbF、PbF、ZnF、AlF、SbF、CrF、AgF、FeF、FeF、TiF、MnF、MnF、GaF、CoF、NiF、LaF、ScF、YF、CeF、PrF、NdF、SmF、SmF、EuF、EuF、GdF、TbF、DyF、HoF、ErF、TmF、YbF、YbF、LuF、フッ化黒鉛(フッ化グラファイト)、フッ素化炭素からなる群から選ばれるフッ化物とバインダーと導電助剤を含む電極である、項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
項8. 前記第2電極がガラス状カーボン電極、カーボン電極、グラファイト電極、金電極、白金電極、銀電極、鉄電極、銅電極、カーボンペースト電極、ニッケル電極からなる群から選ばれる、項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
項9. 前記電解質が、HFとCsFを含む複合体である、項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
項10. 前記電解質が、HFとCsFを含み、さらにLiF、NaF及びKFからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニット或いは項4~6のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生装置。
項11. 項1~3のいずれか1項に記載のフッ素ガス発生用電解ユニットのフッ素ガス発生室にアルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体から構成される電解質を配置する工程、液状の前記電解質に浸された第1電極と第2電極に接続した電流供給手段により電流を流して電解反応を行うことで前記フッ素ガス発生室内でフッ素ガスを発生させて、前記フッ素ガス供給口からフッ素ガス供給路を通ってフッ素処理室にフッ素ガスを供給する電解工程を含むことを特徴とする、フッ素ガスの製造方法。
項12. 前記電解質が、CsFとHFを含む複合体である、項11に記載のフッ素ガスの製造方法。
項13. 前記電解質が、HFとCsFを含み、さらにLiF、NaF及びKFからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項12に記載のフッ素ガスの製造方法。
項14. モル比でCsF:HF=1:2~1:5である、項12又は13に記載のフッ素ガスの製造方法。
項15. 前記電解質が室温で固体である場合に加熱融解する工程を電解工程の前にさらに含む、項11~14のいずれか1項に記載のフッ素ガスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
創薬、半導体材料などの製品開発や小規模な製造プロセスなどにオンサイトで安全にフッ素ガスを必要量だけ供給することができ、ボンベなどに貯蔵する必要がないので安全性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフッ素ガス発生用電解ユニットの1つの実施形態
【図2】カソード極の電解反応における時間と電圧の関係
【図3】アノード極の電解反応における時間と電圧の関係
【図4】時間と電解セルに流れる電流の関係
【図5】X線回折測定によるカソードでのCu析出の確認
【発明を実施するための形態】
【0012】
HFの電解によりフッ素ガスを製造する場合、フッ素ガスと水素ガスが同時に発生し、これらのガスが混合すると爆発性を有するため、防爆装置などの安全装置が必要となり、装置の大型化は避けられなかった。本発明では、電解質としてアルカリ金属フッ化物とフッ化水素(HF)の複合体を使用し、第1電極(カソード極)としてフッ化物を電極活物質として含む電極を使用することで、フッ素ガスを選択的に発生させ、水素ガスの発生を抑制することができるようになった。

【0013】
本発明では、電解質としてアルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体を使用する。

【0014】
アルカリ金属フッ化物としては、LiF、NaF、KF、RbF、CsFが挙げられ、好ましくはLiF、NaF、KF、CsF、より好ましくはNaF、KF、CsF、さらに好ましくはKF、CsF、最も好ましくはCsFである。特に好ましい実施形態において、CsFが主成分(好ましくは50モル%以上)として含まれていれば、他のアルカリ金属フッ化物が共存していてもよい。アルカリ金属フッ化物は、HFと複合体を形成して電解質として使用されるので、複合体の融点は低い方がよい。複合体の融点はCsFが最も低く、RbFからKF、NaF、LiFになるに従ってHFとの複合体の融点が上昇する。アルカリ金属フッ化物が2種以上の混合物、特にCsFと他のアルカリ金属フッ化物の混合物であるHFとの複合体は、2種以上の混合物による融点降下が期待できるために好ましい。

【0015】
複合体におけるアルカリ金属フッ化物とフッ化水素(HF)とのモル比は、1:1~1:10程度、好ましくは1:2~1:5程度、より好ましくは1:2~1:4程度、さらに好ましくは1:2~1:3程度、特に好ましくは1:2.2~1:2.7程度である。HFの割合が高すぎると、生成フッ素ガスに混入するHFが多くなるため、引き続く反応においてHFを除く必要がある場合にはHFを除去して次の反応にフッ素ガスを供給する。HFの割合が少なすぎると複合体の融点が上昇し、電解質を溶融するためにヒーターによる加熱を行うことになる。

【0016】
本発明のフッ素ガス発生用電解ユニットの1つの好ましい実施形態を図1に示す。2つの陰極(第1電極、カソード)と陽極(第2電極、アノード)を電流供給装置と接続し、電解を行うことで陽極からフッ素ガスが発生する。発生したフッ素ガスは上部のフッ素ガス供給口からフッ素ガス供給路を通ってフッ素処理室に供給される。図1には示されていないが、さらに少なくとも1つの参照電極を電流供給装置と接続することで、電解条件を精密に制御することができる。フッ素ガス発生用電解ユニットの形状は特に限定されないが、円筒状、角筒状などの筒状のセルが好ましい。陽極と陰極の間は壁で仕切られ、陽極で発生したフッ素ガスがフッ素ガス供給口に導かれる。

【0017】
第一電極は、活物質、結着剤、導電助剤などを含む活物質層を集電体の上に設けることで得られる。

【0018】
第1電極(カソード極、陰極)は、フッ化物を電極活物質とし、これとバインダーを含む活物質層を集電体上に設けることで得られる。フッ化物としては、CuF、SnF、SnF、BiF、BiF、GeF、PbF、PbF、ZnF、AlF、InF、AsF、SbF、CrF、AgF、AgF、FeF、FeF、CdF、TiF、TiF、MnF,MnF、GaF、CoF、NiF、LaF、ScF、YF、CeF、PrF、NdF、SmF、SmF、EuF、EuF、GdF、TbF、DyF、HoF、ErF、TmF、YbF、YbF、LuF、NbF、TaF、MoF、WF、VF、フッ化黒鉛(フッ化グラファイト)、フッ素化炭素等が挙げられる。好ましいフッ化物はCuF、SnF、SnF、BiF、BiF、GeF、PbF、PbF、ZnF、AlF、SbF、CrF、AgF、FeF、FeF、TiF、MnF、MnF、GaF、CoF、NiF、LaF、ScF、YF、CeF、PrF、NdF、SmF、SmF、EuF、EuF、GdF、TbF、DyF、HoF、ErF、TmF、YbF、YbF、LuF、フッ化黒鉛(フッ化グラファイト)、フッ素化炭素であり、より好ましいフッ化物は、CuF、SnF、SnF、BiF、PbF、PbF、ZnF、SbF、AgF、フッ化黒鉛(フッ化グラファイト)、フッ素化炭素、特に好ましいフッ化物は、CuF、AgF、フッ化黒鉛(フッ化グラファイト)、フッ素化炭素である。

【0019】
バインダーとしては、電極の作製に使用されるものが広く使用でき、特に限定されないが、例えばポリイミド、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ジアセチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルフェノール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート、スチレン-マレイン酸共重合体等の水溶性ポリマー、ポリビニルクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフロロエチレン-ヘキサフロロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド-テトラフロロエチレン-ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、ポリビニルアセタール樹脂、メチルメタアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、ビニルアセテート等のビニルエステルを含有するポリビニルエステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ネオプレンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のエマルジョン(ラテックス)などが挙げられ、ポリイミドが好ましい。

【0020】
集電体としては、銅、亜鉛、スズ、ビスマス、アンチモン、ヒ素、鉛、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの金属板や金属メッシュなどが挙げられる。

【0021】
導電助剤としては、気相法炭素繊維、ケッチェンブラック、カーボンブラック、アセチレンブラック、ポリフェニレン誘導体などが挙げられる。

【0022】
フッ化物がCuFの場合、第1電極では、以下の電解反応が行われる:

【0023】
【数1】
JP2017082274A_000003t.gif

【0024】
CuFと同様に、他の金属フッ化物の場合は金属が析出すると同時にFが生成し、フッ化黒鉛、フッ素化炭素などの炭素のフッ化物の場合には、炭素単体が生成すると同時にFが生成する。金属フッ化物、炭素フッ化物以外のフッ化物の場合にも酸化還元電位が十分に高いために第1電極での水素発生は抑制される。

【0025】
本発明では、第1電極の電極活物質としてフッ化物を使用することで、第1電極での水素の発生を抑制できる。

【0026】
第2電極(アノード極)は、フッ素ガスが発生するので、フッ素に耐性の材料からなる電極が使用可能である。このような電極としては、ガラス状カーボン電極、カーボン電極、グラファイト電極、金電極、白金電極、銀電極、鉄電極、銅電極、カーボンペースト電極、ニッケル電極などが挙げられる。

【0027】
アノード極では、以下の電解反応が行われる:

【0028】
【数2】
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【0029】
本発明では、電解反応において液状電解質(例えばHFとCsFを含む複合体)は維持され、第1電極の電極活物質であるフッ化物(例えばCuF)が消費され、第2電極でフッ素を発生し、第1電極でフッ素以外の成分(例えばCu)を析出する。このフッ化物は、液状電解質に対する溶解度の低いものが多く、例えばHFとCsFの複合体(液体電解質)にCuFを溶解した場合、CuF濃度は0.1モル/L以下の低濃度であり、必要量のフッ素ガスを発生させるために長い電解時間がかかる。一方、CuFなどのフッ化物を第1電極に用いた場合、短時間で多量のフッ素ガスを発生させることができるので、好ましい。なお、フッ化物が液状電解質(例えばHFとCsFを含む複合体)にわずかでも溶ける場合には、液状電解質にフッ化物、特に金属フッ化物を添加してもよいが、この場合でも第1電極の電極活物質としてのフッ化物が主に消費されることによりフッ素ガスが発生する。

【0030】
本発明の反応は、水をできるだけ排除する必要がある。本発明で用いる電解質は吸湿性であるため、電解反応は、空気中の水蒸気が入らないように密閉系で行われる。

【0031】
本発明で使用する電解質は、予め調製してフッ素ガス発生用電解ユニットのフッ素ガス発生室に導入してもよいが、フッ素ガス発生室にアルカリ金属フッ化物を入れておき、そこにフッ化水素ガスをフッ素ガス供給口から導入して、フッ素ガス発生室内で電解質(アルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体)を密閉系で調製するのが好ましい。電解質中のアルカリ金属フッ化物とHFのモル比は、アルカリ金属フッ化物を入れたフッ素ガス発生用電解ユニットの重量を予め測定しておき、HF導入後の重量を測定し、その重量差をHF量として計算することができる。無水HFは、市販の無水フッ化水素酸ボンベから取り出すことができる。ボンベ等から供給されたHFは、密閉系でフッ化水素供給路を経てフッ化水素供給口からフッ素ガス発生室に供給される。フッ化水素供給口は、フッ素ガス供給口と共用してもよく、フッ素ガス発生用電解ユニットにおいて、フッ化水素供給口とフッ素ガス供給口を2つも受けてもよい。これら2つの供給口は、必要のない場合には栓などで閉じることができる。フッ素ガス発生室に供給されるHFはアルカリ金属フッ化物と速やかに反応する。

【0032】
本発明において、アルカリ金属フッ化物とフッ化水素の複合体から構成される電解質が室温で固体の場合には、ヒーターで加熱することにより融解し、電解によりフッ素ガスを発生させることができる。本発明で使用する電解質の融点は、100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは40℃以下、特に30℃以下である。

【0033】
電解質を含むフッ素ガス発生用電解ユニットは、フッ素ガスの発生後に装置から取り外し、空気中の水蒸気が入らないようにフッ素ガス供給口を閉じて密閉系で保存すれば、カソード極のフッ化物がなくなるまで繰り返し使用することができる。カソード極のフッ化物がなくなった場合には、カソード極を交換することで、さらに繰り返し使用することができる。

【0034】
耐フッ素材料製容器の材質としては、ステンレス、ニッケル、ニッケル系合金、銅、マグネシウム、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP),テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE),ポリビニリデンフルオライド(PVDF)など、或いはこれらの共重合体)などが挙げられる。

【0035】
本発明のフッ素ガス発生用電解ユニットは、第1電極と第2電極を容器内部に含むが、さらに少なくとも1つ、好ましくは1つ又は2つの参照電極を含んでいてもよい。参照電極の材質は、第2電極 (アノード、陽極)と同様である。

【0036】
電流供給装置により供給される電流は、直流であっても交流であってもよいが、直流が好ましい。

【0037】
フッ素ガス発生用電解ユニットにおいてフッ素ガスを発生させるときの好ましい電流密度は10~100mA cm-2程度であり、好ましい電圧は1~10V程度である。十分量フッ素ガスがフッ素処理室に供給された場合、電流供給装置のスイッチをオフにすることで、フッ素ガスの発生を止めることができる。

【0038】
電圧、電流密度などの電解の条件は、陰極からのHガスの発生を抑制できる条件であればよい。陰極の電位が可逆水素電極基準の0Vより大きく卑な電位にならない範囲で電解を行うことが好ましく、より好ましくは0V又はより貴な電位で電解を行う。理論上は、水素発生を抑制するために陰極の電位は可逆水素電極基準で0V以上である必要があるが、過電圧があるため実際には0Vより少し卑な電位でも水素は発生しない。

【0039】
フッ素ガスがオンサイトで供給されるフッ素処理室において、化学物質を溶媒中に溶解した反応物にフッ素ガスを導入して、化学物質のフッ素化反応を行ってもよく、高分子材料(PE、PP、PS、 PVC、ABS、PMMA、 PET、PEN、NY、LCP、PEEK、PI、PPS、PVC等のプラスチック、NR、CR、NBR、EPDM、各種エラストマーなどのゴム材料)、無機材料(各種金属 DLC、SICなどの無機系表面コート層 ナノチューブ、フラーレン、各種分散材料)等の素材からなる基材の表面処理を行ってもよい。フッ素ガスは、非常に反応性が高いので、常温、常圧、乾式での反応及び表面処理が可能である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に従いより詳細に説明する。
実施例1
室温で液体であるCsF:HF=1:2.45(モル比)の電解液は計量しておいたCsFに当該化学量論比になるように計量しておいたHFを加えることで作製した。電極活物質としてCuFを用いた第1電極(カソード)、ガラス状カーボン電極からなる第2電極(アノード)をフッ素樹脂製の容器内部に備えたフッ素ガス発生用電解ユニットのフッ素ガス発生室に、上記の電解液約10gが導入された。フッ素ガス発生用電解ユニットのフッ素ガス供給口とフッ素樹脂製のフッ素処理室をフッ素樹脂製のチューブで接続し、フッ素処理室にフッ素ガスを導入した。
【実施例】
【0041】
フッ素ガスを発生させたときのカソード極の電解反応及び時間と電位の関係を図2に示し、アノード極の電解反応と電位の関係を図3に示す。時間とセル全体に流れた電流の関係を図4に示す。さらに、カソードを容器から取り出して粉末X線回折装置(リガク社製、商品名SmartLab)を用いCuKα線(波長:1.54Å)を照射してX線回折測定を行い、Cu析出を確認した(図5)。
【実施例】
【0042】
フッ素処理室として、フッ素ガス供給側から(PTFE filter)-(KF層)-(PTFE filter)-(KI層)-(PTFE filter)-(ソーダライム層)の構成を有するカラムを用いてフッ素ガスを供給したところ、KI層においてヨウ素の発生が確認された(2KI + F2 → 2KF + I2)。この結果から、フッ素ガスの発生が確認できた。なお、(KF層)は、フッ素ガスが含む可能性のあるHFをトラップするための層である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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