TOP > 国内特許検索 > ゼオライト-ナノカーボン複合発光体及びその製造方法 > 明細書

明細書 :ゼオライト-ナノカーボン複合発光体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-036380 (P2017-036380A)
公開日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 ゼオライト-ナノカーボン複合発光体及びその製造方法
国際特許分類 C09K  11/65        (2006.01)
FI C09K 11/65 CQD
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2015-157630 (P2015-157630)
出願日 平成27年8月7日(2015.8.7)
発明者または考案者 【氏名】山根 康之
【氏名】田中 秀樹
【氏名】宮原 稔
出願人 【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H001
Fターム 4H001CA02
4H001CF01
4H001XA06
4H001XA08
4H001XA11
4H001XA13
4H001XA14
4H001YA06
要約 【課題】優れた発光特性を有する製造操作の簡単な、新規なゼオライト-ナノカーボン発光複合体及びその製造方法の提供。
【解決手段】ゼオライト骨格及びナノカーボンを含むゼオライト-ナノカーボン複合発光体であって、ゼオライト-ナノカーボン複合発光体全体に対する炭素含有量が10重量%以下で、ナノカーボンが酸素原子を含むゼオライト-ナノカーボン複合発光体。ゼオライトに有機物を化学気相蒸着させる簡便な製造方法により製造するゼオライト-ナノカーボン複合発光体の製造方法。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
ゼオライト骨格及びナノカーボンを含むゼオライト-ナノカーボン複合発光体。
【請求項2】
前記ゼオライト-ナノカーボン複合発光体全体に対する炭素含有量が10重量%以下である、請求項1に記載のゼオライト-ナノカーボン複合発光体。
【請求項3】
前記ナノカーボンが酸素原子を含むナノカーボンである、請求項1又は2に記載のゼオライト-ナノカーボン複合発光体。
【請求項4】
ゼオライトに有機物を化学気相蒸着する工程を含む、請求項1~3のいずれかに記載のゼオライト-ナノカーボン複合発光体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト-ナノカーボン複合発光体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ、コロネン程度のサイズのグラフェン等のナノカーボンは、紫外光を照射することで蛍光を発することが知られており、近年、ナノカーボンを利用した発光体に関する研究が盛んに行われている。しかし、網面サイズが過度に成長したものや網面同士が凝集したものでは、十分な蛍光を得ることができない。ナノカーボンは、サイズの制御が困難であり、また、極めて凝集しやすいため、十分な蛍光を発するナノカーボンを得ることは極めて難しい。
【0003】
これに対して、活性炭を過酸化水素等の薬品により酸化してナノカーボンを得る方法、及び得られたナノカーボンをポリビニルアルコール(PVA)又は樹脂等に分散して凝集を防ぐ方法が提案されている。これらの方法では、薬品による処理を必要とするため、製造における操作が煩雑となることを避けることができない。
【0004】
また、メソポーラスシリカ-炭素複合体を同様に酸化処理して、シリカ壁面にナノカーボンを固定し、分散する方法も提案されている(特許文献1)。この方法でも、製造において多くの工程が必要である。加えて、この方法により得られた発光体は発光スペクトル幅が広くなるため、発光スペクトル幅を狭くすることにより単色光を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許公報第5557090号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規なゼオライト-ナノカーボン発光複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らは、鋭意検討した結果、ゼオライトに有機物を化学気相蒸着させる方法により、ゼオライト-ナノカーボン複合発光体が簡便に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0009】
項1. ゼオライト骨格及びナノカーボンを含むゼオライト-ナノカーボン複合発光体。
【0010】
項2. 前記ゼオライト-ナノカーボン複合発光体全体に対する炭素含有量が10重量%以下である、前記項1に記載のゼオライト-ナノカーボン複合発光体。
【0011】
項3. 前記ナノカーボンが酸素原子を含むナノカーボンである、前記項1又は2に記載のゼオライト-ナノカーボン複合発光体。
【0012】
項4. ゼオライトに有機物を化学気相蒸着する工程を含む、前記項1~3のいずれかに記載のゼオライト-ナノカーボン複合発光体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゼオライト-ナノカーボン複合発光体は、優れた発光特性を有するため、種々の発光材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は化学気相蒸着に用いた装置の概略図である。
【図2】図2は試験例1における写真を示す図である。
【図3】図3は試験例2における蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】図4は試験例2における差スペクトルを示す図である。
【図5】図5は試験例3における3Dスペクトルを示す図である。
【図6】図6は試験例4で用いた熱重量測定の昇温プログラムを示す図である。
【図7】図7は試験例4の加熱減量曲線を示す図(生データ)である。
【図8】図8は図7を30分間窒素雰囲気で300℃に保持した時点の重量で補正した加熱減量曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ゼオライト-ナノカーボン複合発光体
本発明のゼオライト-ナノカーボン複合発光体(以下、単に「複合発光体」ということもある)は、ゼオライト骨格及びナノカーボンを含む。ゼオライト-ナノカーボン複合発光体全体に対する炭素含有量が10重量%以下であることが好ましい。また、好ましくは、本発明の複合発光体はゼオライト骨格及びナノカーボンからなり、ゼオライト-ナノカーボン複合発光体全体に対する炭素含有量が5重量%以下である。本発明のゼオライト-ナノカーボン複合発光体は、ゼオライト骨格が有する細孔内部にナノカーボンが分散された構造を有しているため、ナノカーボンの凝集によってバンドギャップが狭まることを防ぎ、優れた発光特性を発揮することができると考えられる。

【0016】
本発明のゼオライト-ナノカーボン複合発光体は、製造が簡便な点で、化学気相蒸着によりゼオライト骨格にナノカーボンを分散させることで得られた複合発光体であることが好ましい。

【0017】
本発明において、ナノカーボンとは、1辺又は2辺が数ナノメートル程度の大きさであるグラフェン様炭素のことである。当該ナノカーボンは、必ずしも六員環構造のみからなる必要はなく、五員環、七員環構造等を含んでいてもよい。また、構造も平面に限らない。本発明のナノカーボンとして、具体的には、ピレン、コロネン、コラニュレン程度のグラフェン様分子等を挙げることができる。

【0018】
本発明のナノカーボンは、酸素、窒素等の元素を含むことができる。これらの元素を導入することにより、発光強度が上昇することが期待される。また、ナノカーボンに酸素、窒素等の元素を含ませることで、酸素、窒素等の元素を含まないナノカーボンと比べて、複合発光体が発する光の色調を変化させることができる。

【0019】
本発明のゼオライト-ナノカーボン複合発光体全体に対する炭素含有量は、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが特に好ましい。また、例えば、炭素含有量は2重量%以下又は1重量%以下とすることもできる。炭素含有量を少なく抑えることにより、網面サイズの大きいナノカーボンの割合を減少させ、かつ複合発光体中でナノカーボン同士が凝集することを防ぐことができ、より優れた発光特性を発揮することができると考えられる。炭素含有量の下限は、ナノカーボンが含まれ、十分な発光が得られる限り、特に限定されず、例えば、ゼオライト-ナノカーボン複合発光体全体に対して0.01重量%以上である。複合発光体における炭素含有量は、熱重量測定により、空気雰囲気下において加熱することにより測定した重量減少量から求めることができる。具体的には、下記実施例における条件で測定した重量減少量より求められる。

【0020】
本発明で用いるゼオライトは、細孔内にナノカーボンを形成することができれば、特に限定されない。化学気相蒸着法によりナノカーボンを形成する場合、炭素が蒸着された箇所で新たな炭素源が細孔内に侵入できれば、ナノカーボンをゼオライト粒子内部に効率的に導入することができる。そのため、細孔入口が酸素12員環以上で構成されるゼオライト(具体的には、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、A型ゼオライト、β型ゼオライト、L型ゼオライト、モルデナイト、EMT等)を使用することが好ましい。

【0021】
ゼオライトの結晶構造中におけるSi/Al比は、ゼオライトの固体酸としての強酸性に影響する。化学気相蒸着法では、強酸性が強い程、炭素源の堆積分解が促進されると考えられる。ゼオライトの内部まで均一に分散してナノカーボンを堆積させる点で、ゼオライトのSi/Al比は20以下が好ましい。

【0022】
また、ゼオライトのAlと結合する交換カチオンにより触媒活性が依存することが知られている。ゼオライトの内部まで均一に分散してナノカーボンを堆積させる点で、ゼオライトの交換カチオンとしては、ナトリウムイオン(Na)が好ましい。

【0023】
2.ゼオライト-ナノカーボン複合発光体の製造
本発明のゼオライト-ナノカーボン複合発光体は、ゼオライトに化学気相蒸着法により、ナノカーボンを堆積させることで製造することができる。化学気相蒸着法を用いることにより、簡便な手法で複合発光体を製造することができ、また、ナノカーボンの導入量(複合発光体の炭素含有量)の調整も比較的容易である。

【0024】
化学気相蒸着に用いる炭素源としては、ゼオライトの細孔径よりも小さく、分解後にsp炭素として堆積する化合物であれば、特に限定されない。具体的には、炭素源として、アルカン、アルケン、アルキン、分岐のある炭化水素、芳香族等を用いることができる。

【0025】
化学気相蒸着における反応温度、時間及び炭素源の濃度は、適宜設定することができる。ゼオライトの内部まで均一に分散してナノカーボンを堆積させる点で、反応速度を適度に押さえることが好ましい。そのため、反応温度及び炭素源の濃度は高すぎないことが好ましい。具体的には、反応温度は1000℃以下、炭素源の濃度はベンゼンを使用する場合で25vol%以下であることが好ましく、炭素源とする分子中の炭素数や反応性にも依存する。

【0026】
化学気相蒸着に用いる不活性ガスは、ゼオライト及び炭素源と反応しないものであれば、特に限定されない。具体的には、窒素、アルゴン、ヘリウム等を用いることができる。

【0027】
本発明の複合発光体は、化学気相蒸着によりナノカーボンを形成した後、酸化処理を行い、ナノカーボンに酸素原子等を導入することで、複合発光体が発する光の色調を変更する(特に蛍光の色を白色へと変更する)ことができる。酸化処理の方法としては、上記化学気相蒸着により得られた複合発光体を空気条件下、150~1000℃、好ましくは200~800℃、さらに好ましくは250~600℃に加熱する方法を挙げることができる。加熱時間は例えば300℃で処理する場合、30分~3日間である。

【0028】
3.ゼオライト-ナノカーボン複合発光体の発光
本発明の複合発光体は、励起光として紫外光及び可視光を照射することにより、蛍光を発する。紫外光としては、例えば、波長200~400 nmの光を挙げることができる。

【0029】
本発明の複合発光体が発する蛍光の色はナノカーボンのサイズに依存すると考えられ、小さいナノカーボンの割合が高いと短い波長の光(例えば、紫等)、比較的大きめのナノカーボンの割合が高いと長い波長の光(例えば、赤等)になると推測される。一方で、ナノカーボンの大きさにばらつきを持たせることにより、得られる蛍光もスペクトル幅が広くなり、白色に近い色になると推測される。また、上述の通り、複合発光体を空気酸化することにより、ナノカーボンに酸素原子等を導入することで、容易に白色蛍光を発する発光体を製造することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
製造例1
複合発光体の製造
鋳型とするゼオライトとして、交換カチオンがNaイオンである、Y型ゼオライト(東ソー株式会社製; HSZ-320NAA; Si/Al=5.5)を用いた(以下、単にゼオライトと記す)。下記表1に記載の条件により、ゼオライト 1gに対して、ベンゼン(和光純薬株式会社製; 特級)を炭素源として、化学気相蒸着処理を行った。不活性ガスには、窒素を用い、流量は200mL/minとした。化学気相蒸着に用いた装置の概略を図1に示す。
【実施例】
【0032】
【表1】
JP2017036380A_000003t.gif
【実施例】
【0033】
試験例1
目視による蛍光の評価
まず、製造例1で得られた複合体に紫外光に蛍光灯の光を当て、蛍光灯下での試料の色を確認した。同じく、紫外光(波長:365nm)下での発光の有無及びその色を確認した。結果を表2に示す。
【実施例】
【0034】
また、それぞれ熱重量測定用のアルミパンに充填した状態で、処理前のゼオライト、実施例2の複合体、実施例3の複合体、及び液体ベンゼンを加え濡らした処理前のゼオライトについて、蛍光灯下及び紫外光下での発光を確認した。結果を図2に示す。図2より、ゼオライトのみ及びゼオライトと液体ベンゼンでは可視光領域の発光は殆どないことが分かった。
【実施例】
【0035】
【表2】
JP2017036380A_000004t.gif
【実施例】
【0036】
試験例2
蛍光分光光度計を用いたフォトルミネッセンス評価
得られた試料のうち、目視で最も発光強度が強かった実施例2の複合体と化学気相蒸着処理前のゼオライトの発光を比較するため、分光蛍光光度計(株式会社JASCO製; FP-8500)を用いて、発光スペクトル(励起光 340nm)を測定した。得られた結果を図3に示す。試料として用いた実施例2の複合体及びゼオライトは粉体であるため、励起光が散乱されることより、2つの試料間で発光強度の単純な比較はできない。そこで、ゼオライトにおいて極大値を示した420nm付近の発光強度が共にゼオライト由来であり、同程度の発光強度であると仮定し、両者のスペクトルを420nm付近で規格化し、求めた差スペクトルを図4に示す。得られた差スペクトルは550nm付近に極大値を持ち、化学気相蒸着処理前のゼオライトとはピークが明らかに異なることから、細孔内で生成されたナノカーボンに由来する発光と考えられる。
【実施例】
【0037】
試験例3
3Dスペクトルの測定
実施例2の複合体において、励起光の波長を変化させ、3Dスペクトルを得た。結果を図5に示す。3Dスペクトルは、Ex=340nm、Em=550nmを中心とする同心円状の等高線を示した。このことから、発光強度の極大値が励起波長に依存しないことが分かり、得られた発光が蛍光に起因することを示していると考えられる。
【実施例】
【0038】
試験例4
炭素含有量の測定
処理前のゼオライト、比較例1の複合体及び実施例2の複合体のそれぞれについて、炭素含有量を測定した。炭素含有量の測定には、熱重量測定を用い、重量減少量から求めた。なお、ゼオライトおよびナノカーボン-ゼオライト複合発光体は、大気中の水分を容易に吸着するため、正確な炭素量を見積もるためには吸着している水分を予め脱着させる必要がある。そこで、本測定では、室温から300℃まで窒素雰囲気で昇温し、さらに30分間窒素雰囲気で保持した後、雰囲気を空気に切替えることとした。具体的な熱重量測定の条件及び炭素含有量の算出式は、
装置:株式会社リガク社製 熱分析装置 ThermoplusEVO II
昇温プログラム:図6に記載のプログラム
炭素含有量(R[重量%]):
【実施例】
【0039】
【数1】
JP2017036380A_000005t.gif
【実施例】
【0040】
(式中、C800は30分間800℃に保持した後の試料重量、C300は窒素雰囲気中で30分間300℃保持時点の試料重量、Z800は30分間800℃に保持した後のゼオライト重量、Z300は窒素雰囲気中で30分間300℃保持時点のゼオライト重量を示す。)
を用いた。
【実施例】
【0041】
結果を表3並びに図7及び8に示す。
【実施例】
【0042】
【表3】
JP2017036380A_000006t.gif

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の複合発光体は、紫外線を照射することで蛍光を発するため、照明装置、太陽電池の補助剤(紫外可視光変換)、洗剤用蛍光剤等の用途への応用が期待される。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図8】
4
【図1】
5
【図2】
6
【図5】
7