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明細書 :テラヘルツ帯電磁波発振装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-112274 (P2017-112274A)
公開日 平成29年6月22日(2017.6.22)
発明の名称または考案の名称 テラヘルツ帯電磁波発振装置
国際特許分類 H01L  39/22        (2006.01)
H03B  15/00        (2006.01)
FI H01L 39/22 D
H03B 15/00
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2015-246505 (P2015-246505)
出願日 平成27年12月17日(2015.12.17)
発明者または考案者 【氏名】辻本 学
【氏名】掛谷 一弘
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100112911、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 晴夫
審査請求 未請求
テーマコード 4M113
Fターム 4M113AA60
4M113AC13
4M113AD36
4M113CA35
要約 【課題】安定したテラヘルツ波の放射が可能であり、かつ発振周波数の制御も可能な、テラヘルツ素子を備えたテラヘルツ帯電磁波発振装置を提供する。
【解決手段】テラヘルツ帯電磁波発振装置が、超伝導体のテラヘルツ素子と、テラヘルツ素子を搭載するパッケージであって、金属製の熱浴部と、熱浴部に設けられ、テラヘルツ素子を載置する平面を備えた収容部と、収容部の平面内に設けられた開口部と、開口部に設けられ、テラヘルツ素子から放射されるテラヘルツ光を透過するレンズとを含むパッケージと、収容部の中に、テラヘルツ素子を覆うように設けられた封止樹脂とを含み、テラヘルツ素子は、収容部に設けられた固定具により、収容部の平面と直接接触した状態で固定される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
テラヘルツ帯電磁波発振装置であって、
超伝導体のテラヘルツ素子と、
該テラヘルツ素子を搭載するパッケージであって、
金属製の熱浴部と、
該熱浴部に設けられ、該テラヘルツ素子を載置する平面を備えた収容部と、
該収容部の平面内に設けられた開口部と、
該開口部に設けられ、該テラヘルツ素子から放射されるテラヘルツ光を透過するレンズと、を含むパッケージと、
該収容部の中に、該テラヘルツ素子を覆うように設けられた封止樹脂と、を含み、
該テラヘルツ素子は、該収容部に設けられた固定具により、該収容部の平面と直接接触した状態で固定されることを特徴とするテラヘルツ帯電磁波発振装置。
【請求項2】
上記固定具は、板状のクランプと、該クランプに設けられた孔を通って、上記熱浴部に固定されたねじまたはビスであることを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ帯電磁波発振装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超伝導体のテラヘルツ素子を用いたテラヘルツ帯域の電磁波を発振するテラヘルツ帯電磁波発信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波(0.1~10THz程度の周波数を有する電磁波)には、様々な物質を透過するとともに、水や水蒸気によく吸収されるという特徴があり、多くの物質はテラヘルツ波帯に特徴的な吸収スペクトルを有する。このような性質から、テラヘルツ波は、非破壊検査・化学分析・医療診断といった分野での応用が期待されており、テラヘルツ波を利用した情報通信技術の開発も行われている。
【0003】
このように、テラヘルツ波は非常に有用な電磁波であるが、従来から電波あるいは光の領域で用いられてきた発振源の出力は、テラヘルツ帯域に近づくにつれて急激に低下する傾向があった。そして、テラヘルツ帯域に簡便な発振器や高感度の検出器が存在しない状況は「テラヘルツギャップ」と呼ばれ、これを解消するために様々な側面から技術開発が進められた。従来のテラヘルツ波の発振方法としては、量子カスケードレーザー、後進波管、自由電子レーザー、シンクロトロン放射、フォトミキシング等を利用した発振方法が公知である。しかし、これらの発振方法には、発振効率が悪く低出力である上に、大掛かりな付帯装置が必要であるといった実用上の問題があった。
【0004】
一方で、高温超伝導体は50meVにおよぶ超伝導ギャップを有しているため、超伝導状態でテラヘルツ波の励起が可能であり、その結晶構造に含まれる固有ジョセフソン接合を用いたテラヘルツ素子は、コンパクトかつ高効率・大出力の新たなテラヘルツ波源として期待されている。高温超伝導体として、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物(以下、「BSCCO」と呼ぶ)を使用したテラヘルツ素子は、例えば以下の特許文献1~4に提案されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-43787号公報
【特許文献2】特開2009-224481号公報
【特許文献3】特開2009-224482号公報
【特許文献4】特願2013-247472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のテラヘルツ素子は、BSCCO単結晶基板上に作製した台形状のメサ構造部に電流を印加することにより、テラヘルツ波を放射させるものであるが、この電流による発熱のためにテラヘルツ素子の温度が上昇し、発振中に超伝導領域が減少して発振強度が減少するという問題があった。
【0007】
また、従来のテラヘルツ素子では、発振特性が温度に強く依存するため、テラヘルツ素子の発振特性の再現性が悪い、つまりテラヘルツ素子毎に発振特性が異なるという問題があった。
【0008】
さらに、テラヘルツ素子の形状が平板であるため、どの方向にテラヘルツ波が発振しているかわかりにくいという問題もあった。以上のような理由により、テラヘルツ光源の普及は著しく遅れている。
【0009】
そこで、本発明は、従来のテラヘルツ素子が有する上記課題を解決するものであり、安定したテラヘルツ波の放射が可能であり、かつ発振周波数の制御も可能な、テラヘルツ素子を備えたテラヘルツ帯電磁波発振装置の提供を目的とする。また、本発明は、テラヘルツ素子の温度を正確に制御できるパッケージの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者らは鋭意研究の結果、テラヘルツ素子とパッケージとの接続状態がテラヘルツ素子の放熱特性に影響し、テラヘルツ素子毎に放熱特性が異なったり、テラヘルツ素子の発振中に、発光強度が減少していたことを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の一つの態様は、テラヘルツ帯電磁波発振装置であって、
超伝導体のテラヘルツ素子と、
テラヘルツ素子を搭載するパッケージであって、
金属製の熱浴部と、
熱浴部に設けられ、テラヘルツ素子を載置する平面を備えた収容部と、
収容部の平面内に設けられた開口部と、
開口部に設けられ、テラヘルツ素子から放射されるテラヘルツ光を透過するレンズと、を含むパッケージと、
収容部の中に、テラヘルツ素子を覆うように設けられた封止樹脂と、を含み、
テラヘルツ素子は、収容部に設けられた固定具により、収容部の平面と直接接触した状態で固定されることを特徴とするテラヘルツ帯電磁波発振装置である。
【発明の効果】
【0012】
以上で述べたように、本発明の一つの態様にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置では、テラヘルツ素子と熱浴部が直接接触するため、テラヘルツ素子のメサ構造部で発生した熱を効率よく放出でき、高性能かつ安定したテラヘルツ帯電磁波発振装置を得ることができる。
【0013】
また、テラヘルツ帯電磁波発振装置毎の放熱特性のばらつきを防止し、所定の性能のテラヘルツ帯電磁波発振装置を再現性良く得ることができる。
【0014】
また、平行光の放射が可能なテラヘルツ帯電磁波発振装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置の斜視図であり、(a)は上面斜視図、(b)は底面斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置の部分断面図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ素子の一部の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ素子の一部の拡大斜視図である。
【図5】テラヘルツ素子の発振特性の比較を示すグラフであり、(a)はパッケージ無しの場合、(b)は本発明の実施の形態にかかるパッケージを用いた場合である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、全体が100で表される、本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置の斜視図であり、(a)が上面側から見た場合、(b)が底面側から見た場合の斜視図を示す。

【0017】
テラヘルツ帯電磁波発振装置100は、パッケージ50と、パッケージ50に搭載されたテラヘルツ素子20と、パッケージ50を低温装置等に固定するねじ10を含む。

【0018】
パッケージ50は、熱浴部1を含む。熱浴部1は、熱伝導性の高い金属、例えば銅、特に無酸素銅、アルミニウムからなる。熱浴部1は、例えば長辺の長さが約20~30mm、短辺の長さが約15~20mm、最大厚さが約4~5mmである。図1(b)に示すように、熱浴部1はその一部が窪み、収容部2が設けられている。収容部2は、例えば一辺が約12mmの正方形で、深さが約3mmの窪みからなる。

【0019】
収容部2の底面は平坦で、さらにテラヘルツ素子20を配置する領域に凹部3が設けられている。凹部3の中央には、テラヘルツ素子20から放射されるテラヘルツ波を通す開口部が設けられている。

【0020】
凹部3の周囲には、固定具として、板状のクランプ4と、クランプ4を固定するねじ5が設けられている。ねじ5は、クランプ4に設けられた穴を通って、熱浴部1に設けられたねじ穴に固定される。クランプ4は、バネ性と熱伝導性に優れた材料、例えばりん青銅からなり、例えば、一辺の長さが約3.0~4.0mmの長方形で、厚さが0.5mm以下の板材からなる。また、ねじ5には、例えばM2サイズのねじが用いられる。

【0021】
テラヘルツ素子20は、凹部3の中に配置され、ねじ5を締めることで、テラヘルツ素子20のサファイア基板がクランプ4で熱浴部1に押しつけられて固定される。ここでは、クランプ4およびねじ5を4組としたが、これに限るものではない。また、1つのクランプ4を複数のねじ5で固定しても良い。

【0022】
なお、固定具は、ねじ5とクランプ4の他に、ビスとクランプ、ビスやねじとクランプが一体となったものなど、テラヘルツ素子20を熱浴部1に直接接触した状態で固定できるものであれば他の構造であっても良い。

【0023】
ここで、テラヘルツ素子20から熱浴部1への熱伝導は、両者の接触面積と接触面のインピーダンスで決まる。本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置100では、テラヘルツ素子20を直接、熱浴部1に接触させて、クランプ4で固定するため、極めて高い熱伝導性が得られる。これにより、テラヘルツ素子20の温度を、熱浴部1の温度とほぼ同一にできる。

【0024】
なお、従来は、銀ペーストを用いてテラヘルツ素子を直接熱浴部に固定していたが、テラヘルツ素子毎に銀ペーストの厚さが異なり、放熱特性の再現性が低かった。また、銀ペーストが経時変化するため、放熱特性もそれに伴い変化した。これに対して、本発明の実施の形態にかかる構造では、テラヘルツ素子20を直接、熱浴部1に接触させて固定するため、再現性があり、かつ安定した放熱特性を得ることができる。

【0025】
熱浴部1には、周囲が絶縁されたフィードスルー11が設けられている。テラヘルツ素子20の金属電極とフィードスルー11をリード線で接続し、外側からフィードスルー11に電圧を印加することにより、テラヘルツ帯電磁波発振装置100の外部からテラヘルツ素子20に電圧を印加できる。

【0026】
図1には示さないが、テラヘルツ素子20を固定した後に、熱浴部1の収容部2の中には、例えば熱伝導率の高いエポキシ樹脂(図示せず)が注入され、テラヘルツ素子20は樹脂封止される。エポキシ樹脂は、例えば収容部2を埋めるように充填されることが好ましい。このようにテラヘルツ素子20を樹脂封止することで、テラヘルツ素子20で発生した熱は、収容部2の底面方向(熱浴部1の方向)だけでなく、樹脂方向からも放出され、放熱効果が向上する。

【0027】
また、テラヘルツ素子20を樹脂で封止することにより、酸化物であるBSCCO単結晶と外部雰囲気との接触を防止できる。これにより、BSCCOの経時変化に起因するテラヘルツ素子20の発振特性の経時変化を防止し、安定した発振を得ることができる。

【0028】
図1(a)に示すように、テラヘルツ帯電磁波発振装置100の上面では、熱浴部1の凹部3の中央に設けられた開口部を覆うようにレンズ7が設けられ、その上に、レンズを押さえて固定するレンズサポート8が取り付けられる。レンズサポート8は、ねじ9により熱浴部1に取り付けられる。

【0029】
図2は、テラヘルツ帯電磁波発振装置100の部分断面図であり、図2中、図1と同一符合は、同一または相当箇所を示す。図2では、収容部2に設けられた開口部6を覆うように、レンズ7が配置され、レンズサポート8で周囲が覆われて固定されている。レンズ7には、例えばシリコンの半球レンズが用いられる。また、レンズサポート8には、例えばテフロン(登録商標)が用いられる。図2には示さないが、レンズサポート8は、例えば熱浴部1にねじで固定される。

【0030】
例えばレンズ7に用いられる半球レンズの半径は約4mm、開口部6の直径は約8mmである。半球レンズの平面と、テラヘルツ素子20に含まれるサファイア基板21の底面との間の距離は、例えば約0.2mmである。

【0031】
図3は、パッケージ50に固定されるテラヘルツ素子20の一部の斜視図であり、図4は、テラヘルツ素子20の一部(1本のメサ構造部23周辺)の拡大斜視図である。テラヘルツ素子20は、固有ジョセフソン接合を有する高温超伝導体BSCCOの単結晶とサファイア基板で構成され、ファブリペロー共振が励起される高温超伝導テラヘルツ素子である。

【0032】
すなわち、テラヘルツ素子20は、サファイア基板21を含む。サファイア基板21は、例えば一辺の長さが約6~7mm、厚さが約0.3~0.5mmである。サファイア基板21の上には、BSCCO単結晶基板22が、接着剤で固定されている。接着剤は、例えばスタイキャスト1266(登録商標)のような粘度の低いエポキシ樹脂が好ましい。接着剤の厚さを小さくして、サファイア基板21への放熱効率を向上させるためである。

【0033】
また、BSCCO単結晶基板22の厚さは、約10μm以下が好ましい。BSCCOは、比較的熱伝導率の低い材料であるため、厚さを薄くして、その下にあるサファイア基板21への放熱効率を向上させるためである。

【0034】
BSCCO単結晶基板22の上には、BSCCO単結晶基板22の一部がエッチングされて、矩形のメサ構造部23が設けられている。メサ構造部23を構成するBSCCO単結晶と、BSCCO単結晶基板22を構成するBSCCO単結晶は連続している。ここでは、メサ構造部23を2つ設けたが、1つまたは3つ以上でも構わない。

【0035】
BSCCO単結晶基板22の表面は、BSCCO単結晶のab面と平行である。このため、メサ構造部23には、ab面内に拡がる、超伝導性のCuO層と絶縁性のBiO層との接合からなるジョセフソン接合(固有ジョセフソン接合)が多数含まれる。

【0036】
メサ構造部23は、ファブリペロー共振が励起されるような寸法で形成される。例えば、BSCCO単結晶基板22の表面に平行なab面内では、短辺の長さは約50~100μm、長辺の長さは短辺の長さの3倍以上であることが好ましい。また、BSCCO単結晶基板22の表面に垂直なc軸方向の高さは、約0.5~2.0μm程度が好ましい。

【0037】
図4に示すように、メサ構造部23の上には、金属電極27が設けられている。金属電極27は、サファイア基板21の上の金属電極24に接続されている(図3参照)。一方、BSCCO単結晶基板22の表面上には、金属電極26が設けられている。金属電極26は、サファイア基板21の上まで延びている(図3参照)。

【0038】
金属電極24や金属電極26には、フィードスルー11を介して外部から電圧が印加される。そして、金属電極24(すなわち金属電極27)と金属電極26との間に電圧を印加することにより、メサ構造部23に、c軸方向に電流が流れ、テラヘルツ素子20が発振する。なお、メサ構造部23の上の金属電極27は、メサ構造部23に電圧を印加するとともに、メサ構造部23からの放熱にも寄与する。

【0039】
メサ構造部23やBSCCO単結晶基板22の一部は、エポキシ樹脂等の絶縁膜25により被覆されている。

【0040】
金属電極27と金属電極26との間に電圧を印加することにより、テラヘルツ素子20が発振して、図4に示すように、メサ構造部23からテラヘルツ波30が、全方向に放射される。メサ構造部23から放射されたテラヘルツ波30の一部は、BSCCO単結晶基板22、サファイア基板21を透過した後、図2に示すように、レンズ7で集光されて平行光として空間に放射される。

【0041】
テラヘルツ帯電磁波発振装置100から放射されるテラヘルツ波30を平行光にするには、点光源であるテラヘルツ素子20のメサ構造部23とレンズ7との距離や、レンズ7の焦点距離の調整が必要であるが、本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置100では、メサ構造部23とレンズ7との距離や、レンズ7の焦点距離を予め設定しておけるので、平行光を放射するテラヘルツ帯電磁波発振装置100を再現性良く作製できる。

【0042】
このように、本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置100では、熱浴部1にレンズ7を取り付けることにより、LEDのように、指向性のあるテラヘルツ波30を得ることが可能となる。

【0043】
テラヘルツ帯電磁波発振装置100は、ねじ10を用いて、クライオスタット等の冷却装置(図示せず)に固定される。テラヘルツ帯電磁波発振装置100と冷却装置の間も、熱浴部1が冷却装置に直接接触するように固定されるため、高い放熱特性を得ることができる。

【0044】
図5は、テラヘルツ素子の発振特性の比較、すなわち、パッケージ無しのテラヘルツ素子と、本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置100のテラヘルツ素子20との、発振特性の比較である。(a)はパッケージ無し、(b)はパッケージ有り(テラヘルツ帯電磁波発振装置)の場合を示す。また、図5では、横軸が電極間に印加される電圧(メサ構造部23の上下に印加される電圧)、縦軸が電極間に流れる電流、およびテラヘルツ素子の温度に対応するボロメータ出力を示す。

【0045】
(a)は、テラヘルツ素子が直接、低温装置(例えばクライオスタット)に銀ペーストで接続され、低温装置の温度を20Kに設定した場合の測定結果である。一方、(b)は、テラヘルツ素子を含むテラヘルツ帯電磁波発振装置100が低温装置にねじ10を用いて固定され、低温装置の温度を、同じく20Kに設定した場合の測定結果である。なお、(a)および(b)に使用したテラヘルツ素子は、同一特性のものである。

【0046】
図5から分かるように、(a)パッケージ無しの場合、メサ構造部に印加可能な最大電圧は約1.0Vであったが、(b)パッケージ有り(テラヘルツ帯電磁波発振装置100)の場合は、最大電圧は約2.5Vに増大している。

【0047】
一般に、テラヘルツ素子のメサ構造部に印加できる最大電圧は、テラヘルツ素子からの発熱を無視した場合は、超伝導ギャップの大きさに依存し、また低温装置の設定温度が高くなるほど最大電圧は小さくなる。

【0048】
多重に積層した固有ジョセフソン接合を含むメサ構造部23に電圧が印加された場合、発生するジュール熱のために、メサ構造部23の温度は、一般に、低温装置の設定温度(図5では20K)より高くなる。(a)パッケージ無しの場合は、銀ペーストを用いてテラヘルツ素子が低温装置に接続されているため、放熱効果が不十分となり、発熱によりメサ構造部23の温度が上昇し、最大電圧は1.0Vに留まる。

【0049】
これに対して、(b)パッケージ有りの場合は、テラヘルツ素子を搭載したテラヘルツ帯電磁波発振装置100を、冷却装置にねじ止めし、テラヘルツ帯電磁波発振装置100の熱浴部1と冷却装置を直接接続する。このため、メサ構造部23で発生した熱は、テラヘルツ素子20から熱浴部1を介して低温装置に、接着剤を介さずに直接伝わり、放熱効果が高くなり、最大電圧も2.5Vと大きくなる。

【0050】
メサ構造部23に印加できる最大電圧が大きくなると、発振する電磁波の周波数範囲が広がる。なぜならば、発振する電磁波の周波数は、ジョセフソン接合に加わる電圧に比例するからである。図5(b)では、連続的な電圧の変化(-2.5V~+2.5V)に対して、強度の差はあるが連続的な発振が検出されている。つまり、周波数の連続するテラヘルツ波(電磁波)30が放射されていることを示している。

【0051】
また、本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置100において、低温装置の温度を20Kから上昇させると、温度の上昇に伴って最大発振強度を与えるための電圧は減少するが、20K~40Kの範囲ではテラヘルツ素子が安定して発振することが分かった。このことは、低温装置の温度、すなわちテラヘルツ帯電磁波発振装置100の熱浴部1の温度を変化させることで、発信周波数を、連続的に変化させることができることを示している。

【0052】
特に、発振が観察される冷却装置の設定温度の上限は、(a)従来のパッケージ無しの場合は50Kであるのに対して、(b)本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置100では、70Kとなり、テラヘルツ帯電磁波発振装置100を用いることにより、放熱効率が向上していることがわかる。

【0053】
以上で述べたように、本発明の実施の形態にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置100では、テラヘルツ素子20と熱浴部1が直接接触するため、テラヘルツ素子20のメサ構造部23で発生した熱を、熱浴部1を介して効率よく放出できる。また、テラヘルツ素子20と熱浴部1が直接接触させるため、この放熱特性は、テラヘルツ帯電磁波発振装置毎にばらつかず、所定の放熱特性を有するテラヘルツ帯電磁波発振装置を、高い再現性で作製できる。更に、レンズを用いることより、指向性のあるテラヘルツ光を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかるテラヘルツ帯電磁波発振装置は、テラヘルツ波の高い透過性を活かした非破壊検査・化学分析・医療診断等の分野での応用が可能であり、さらにテラヘルツ高速無線通信、宇宙観測用の局部発振器としても応用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 熱浴部
2 収容部
3 凹部
4 クランプ
5 ねじ
6 開口部
7 レンズ
8 レンズサポート
9 ねじ
10 ねじ
11 フィードスルー
20 テラヘルツ素子
30 テラヘルツ光
50 パッケージ
100 テラヘルツ帯電磁波発振装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4