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明細書 :蛍光体、及び蛍光体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月23日(2017.3.23)
発明の名称または考案の名称 蛍光体、及び蛍光体の製造方法
国際特許分類 C09K  11/64        (2006.01)
C09K  11/62        (2006.01)
C09K  11/59        (2006.01)
C09K  11/66        (2006.01)
C09K  11/79        (2006.01)
C09K  11/80        (2006.01)
C09K  11/78        (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
C09D   7/12        (2006.01)
C01G  15/00        (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
FI C09K 11/64 CPM
C09K 11/62 CPT
C09K 11/59 CPR
C09K 11/66 CPN
C09K 11/79 CPP
C09K 11/80 CQE
C09K 11/78
C09K 11/08 B
C09D 7/12
C01G 15/00 J
A61K 49/00 Z
国際予備審査の請求
全頁数 31
出願番号 特願2015-555055 (P2015-555055)
国際出願番号 PCT/JP2014/084590
国際公開番号 WO2015/099145
国際出願日 平成26年12月26日(2014.12.26)
国際公開日 平成27年7月2日(2015.7.2)
優先権出願番号 2013273573
2014079558
優先日 平成25年12月27日(2013.12.27)
平成26年4月8日(2014.4.8)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】上田 純平
【氏名】黒石 景友
【氏名】田部 勢津久
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C085
4H001
4J038
Fターム 4C085HH11
4C085KA27
4C085KB07
4C085KB08
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB15
4C085KB28
4H001CA02
4H001CF02
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA20
4H001XA21
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4H001XA71
4H001YA14
4H001YA22
4H001YA23
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4H001YA25
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4H001YA27
4H001YA28
4H001YA29
4H001YA30
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4H001YA58
4H001YA59
4H001YA63
4H001YA65
4H001YA70
4H001YA72
4J038HA166
4J038HA196
4J038HA206
4J038HA216
4J038HA436
4J038KA07
4J038KA08
4J038KA12
4J038NA01
要約 本発明の課題は、紫外線励起による長残光特性に優れ、且つ、青色光励起による長残光特性に優れた蛍光体及びその製造方法を提供することである。本発明は、下記組成式 (1):
12 (1)
(式中、
Aは、(i) Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceであり、
BはAl、Ga、Sc、In、Mg、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
CはSi、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)で表される化合物に、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされていることを特徴とする蛍光体に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
下記組成式 (1):
12 (1)
(式中、
Aは、(i) Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceであり、
BはAl、Ga、Sc、In、Mg、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
CはSi、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)で表される化合物に、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされていることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記金属元素のドープ量が、前記式(1)で表される化合物に対して0.001~5モル%である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記(i)の元素と前記(ii)Ceとのモル比が、0.9999:0.0001~0.95:0.05である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
蓄光蛍光体、白色LED、蓄光セラミックス、蓄光樹脂、蓄光塗料、蓄光式避難誘導システム、又はバイオイメージング用マーカーに用いられる、請求項1~3のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項5】
下記組成式 (1):
12 (1)
(式中、
Aは、(i) Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceであり、
BはAl、Ga、Sc、In、Mg、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
CはSi、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)で表される化合物に、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされている蛍光体の製造方法であって、
(1) 前記(i)の元素含有化合物、B元素含有化合物、C元素含有化合物、Ce含有化合物及び前記金属元素含有化合物を含む組成物を用意する工程1、及び
(2) 前記組成物を1200~1800℃で加熱する工程2
を順に含む、蛍光体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、及び蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光型長残光蛍光体は、外部からのエネルギー(例:紫外線、紫光等)によって生成した電子・ホール等のキャリアを一時的に結晶内欠陥にトラップ(trap)し、当該トラップされたキャリアが気温の熱エネルギーによって徐々に解放し、発光中心で再結合することにより長時間持続する発光を示すものである。この長残光蛍光体は、日中の太陽光エネルギー、室内照明の光エネルギー等を蓄えて、夜間時や消灯後に光るため、視認性夜光塗料として使用できる。そのため、当該長残光蛍光体は、安全標識や避難誘導システムに使用されている。
【0003】
現在までに報告されている長残光蛍光体(例:SrAl:Eu2+-Dy3+等)は、一般的に、紫外光(紫外線)や紫光等の短波長の光に対して励起効率が高い。このような長残光蛍光体を太陽光や蛍光灯の下で使用する場合、当該太陽光や蛍光灯からの光には紫外線等が含まれているので、上記長残光蛍光体を問題なく使用することができる。
【0004】
しかしながら、近年、上記蛍光灯に代わって、長期安定性、省エネルギー、高い発光量子効率等の特徴を有する白色LED(Light Emitting Diode)が固体照明デバイスとして多く使用されてきている。一般的に普及している白色LEDは、青色LEDと黄色蛍光体との組み合わせ、又は青色LEDと赤色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせで構成されている。つまり、上記白色LEDからの光には最も短い波長の光として青色光が含まれているだけであり、紫外線が含まれていない。そのため、近年の室内照明が白色LEDに移行されていくことに起因して、長残光蛍光体に求められる特性として蛍光灯からの蓄光だけでなく白色LEDからの光から蓄光も可能かどうか(言い換えれば、紫外線等による蓄光だけでなく、青色光による蓄光も可能かどうか)が求められている。
【0005】
青色領域での光を吸収する蛍光体としては、Ce3+添加A12ガーネット蛍光体(例えば、Ce3+:YAlAl12、以後Ce3+:YAG蛍光体ともいう)が知られている。当該Ce3+:YAG蛍光体は、青色領域での光を吸収し、高い量子効率を有する黄色発光を示すため、白色LEDを構成する蛍光体(即ち、青色LEDと組み合わせて使用する上記黄色蛍光体)として実用化されている。しかしながら、Ce3+:YAGは、青色光励起による残光特性を示さない。
【0006】
また、青色領域での光を吸収する別の組成のCe3+添加ガーネット蛍光体として、Ce3+添加YAl5-xGa12(以下、Ce3+:YAGGともいう)(x=3、3.5)が知られている(非特許文献1)。この非特許文献1には、Ce3+:YAGG(x=3、3.5)が、紫外光励起において残光を示すという記述がある。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】J. W. W. Holloway, and M. Kestigian, “Optical Properties of Cerium-Activated Garnet Crystals,” J. Opt. Soc. Am. 59, 60-63 (1969).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、当該Ce3+:YAGGの青色光励起による長残光特性については報告がほとんどない。
【0009】
そこで、本発明者らは、上記Ce3+:YAGGの青色光励起による長残光特性について検討した。その結果、Ce3+:YAGGは、青色光で励起した後に当該青色光を遮断すると残光特性を示すものの、その残光強度(残光輝度)が非常に低いことを突き止めた。
【0010】
従って、本発明は、紫外線励起による長残光特性に優れ、且つ、青色光励起による長残光特性に優れた蛍光体及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の組成で表される蛍光体によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の蛍光体(ガーネット結晶蛍光体)及びその製造方法に関する。1. 下記組成式 (1):
12 (1)
(式中、
Aは、(i) Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceであり、
BはAl、Ga、Sc、In、Mg、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
CはSi、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)で表される化合物に、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされていることを特徴とする蛍光体。
2. 前記金属元素のドープ量が、前記式(1)で表される化合物に対して0.001~5モル%である、上記項1に記載の蛍光体。
3. 前記(i)の元素と前記(ii)Ceとのモル比が、0.9999:0.0001~0.95:0.05である、上記項1又は2に記載の蛍光体。
4. 蓄光蛍光体、白色LED、蓄光セラミックス、蓄光樹脂、蓄光塗料、蓄光式避難誘導システム、又はバイオイメージング用マーカーに用いられる、上記項1~3のいずれかに記載の蛍光体。
5. 下記組成式 (1):
12 (1)
(式中、
Aは、(i) Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceであり、
BはAl、Ga、Sc、In、Mg、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
CはSi、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)で表される化合物に、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされている蛍光体の製造方法であって、
(1) 前記(i)の元素含有化合物、B元素含有化合物、C元素含有化合物、Ce含有化合物及び前記金属元素含有化合物を含む組成物を用意する工程1、及び
(2) 前記組成物を1200~1800℃で加熱する工程2
を順に含む、蛍光体の製造方法。
【0013】
用語の説明
本明細書において、「長残光」とは、励起光(例:紫外線、紫光、青色光等)を照射した後に当該励起光を遮断(停止)しても長時間(例:数分~数十時間以上)発光し続けることをいい、原子の電子遷移が示す発光の時間スケール(ns~ms)と明確に区別できる。本明細書において、当該長残光機能を有する蛍光体を「長残光蛍光体」ともいい、本発明の蛍光体は長残光蛍光体である。なお、本発明における残光の中心波長(発光ピーク)は480~700nm程度(緑~赤)である。
【0014】
本明細書において、「蓄光」とは、光を蓄える(溜める)ように電子・ホール等のキャリアを蓄える(溜める、又はトラップ(trap)する)ことを意味する。ここで、上記キャリアは、紫外線や紫光、青色光等の外部からのエネルギーによって生成しトラップに捕獲され、外気の熱エネルギーによって解放することにより発光する。
【0015】
本明細書において、「青色光」とは、特に説明がない限り、波長400~460nmの可視光をいう。
【0016】
本明細書において、「紫外線(紫外光)」とは、特に説明がない限り、波長200~380nmの紫外線をいう。
【0017】
本明細書において、「室温」とは、特に説明がない限り、気温が10~30℃であることをいう。
【0018】
≪1.本発明の蛍光体≫
本発明の蛍光体は、下記組成式 (1):
12 (1)
(式中、
Aは、(i) Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceであり、
BはAl、Ga、Sc、In、Mg、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
CはSi、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)で表される化合物に、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされていることを特徴とする。
【0019】
上記特徴を有する本発明の蛍光体は、特に、Ce元素を含む特定のガーネット結晶蛍光体に特定の金属元素(当該特定の金属元素をM元素ともいう。)をドープすることにより、紫外線励起による長残光特性に優れ、且つ、青色光励起による長残光特性に優れる。また、本発明の蛍光体は、耐水性にも優れる。
【0020】
本発明の蛍光体は、Ce及び特定金属元素共添加ガーネット結晶蛍光体ともいう。ここで、ガーネット結晶構造及び占有カチオンの模式図を図1に示す。一般的なガーネット結晶構造(ガーネット型構造)の組成は、前記組成式(1):A12で表される。上記式(1)中のAで示される元素(A元素)のカチオンは12面体サイトを占有し、上記式(1)中のBで示される元素(B元素)のカチオンは8面体サイトを占有し、上記式(1)中のCで示される元素(C元素)のカチオンは4面体サイトを占有する。本発明の蛍光体は、母体結晶である上記ガーネット結晶において、Ce及びM元素を共添加して得られた蛍光体である。ここで、上記式(1)中のAの(ii)Ceは発光中心となるCe3+を含むことを意味するものであり、当該Ce3+は12面体サイトを占有する。また、上記M元素のカチオンは主に、8面体サイトを占有する場合が多い。
【0021】
本発明の蛍光体におけるガーネット型構造は、固溶体領域を有する場合がある。この場合、結晶内で格子欠陥やアンチサイト欠陥が生じ、上記式(1)に対して若干の組成比のズレが生じることがある(即ち、本発明の蛍光体は、上記式(1)に対して不定比(非化学)量論組成を有する場合がある)が、上記不定比量論組成を有する場合も本発明の範囲内である。
【0022】
本発明の蛍光体の結晶構造は、X線回折法等によって確認することができる。
【0023】
A元素
Aは、(i)Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceである。Aのカチオン(上記(i)の元素のカチオン及び(ii)Ceのカチオン)は8配位位置にあり、12面体サイトを占有する(当該サイトをAサイトともいう)。
【0024】
<(i)で表される元素>
Aの内の上記(i)で表される元素(Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種)は、1種又は2種以上の元素を使用することができる。なお、(i)で表される元素として、Mg、Ca及びSrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素(当該元素のカチオンは2価のカチオン)を使用する場合は、電気的中性の観点から、Cとして4価のカチオンとなる元素を使用する必要がある。
【0025】
上記(i)の元素の中でも、Lu、Gd及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素が好ましく、Yがより好ましい。
【0026】
<(ii)Ce元素>
CeのカチオンCe3+は発光中心であって、Aサイト(12面体サイト)を占有する。
【0027】
Ce3+は4f-5d許容遷移による強くブロードな吸収と高い発光効率をもつ。また、Ce3+の5d準位は、電子雲膨張効果によるセントロイドシフトにより低エネルギー化し、結晶場の影響によりホスト構造中で複数の準位に分裂する。ここで、ガーネット結晶構造の組成によるバンド構造変化を図2に示す。本発明の蛍光体は、ガーネット結晶構造をホストとするため、Ce3+の5d軌道は5本に分裂し、その分裂幅はガーネット結晶組成に依存する。よって、上述の通り、ガーネット結晶組成を変化させることでCe3+の光学特性(発光色)を変化させることが可能である。
【0028】
上記Aの内、(i)の元素と(ii)Ce元素との割合(モル比)は、(i)の元素:(ii)Ce元素=0.9999:0.0001~0.95:0.05(99.99:0.01~95:5(モル比(%)))であることが好ましく、0.9995:0.0005~0.99:0.01(99.95:0.05~99:1(モル比(%)))であることがより好ましい。(i)の元素と(ii)Ce元素とのモル比が上記範囲内であることにより、濃度が薄くなることによる励起光の吸収強度の低下や濃度が濃くなることによって起こる濃度消光の欠点が生じることなく、紫外線励起及び青色光励起による長残光特性にさらに優れる。なお、Ce3+を起源とする残光の中心波長はガーネット結晶組成により異なり、主に500nm~550nmの範囲内に存在する。
【0029】
B元素
Bは、Al、Ga、Sc、In、Mg、Lu及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である。Bのカチオンは6配位8面体サイトを占有する(当該サイトをBサイトともいう)。Bは、1種又は2種以上の元素を使用することができる。
【0030】
Bの中でも、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素が好ましい。
【0031】
C元素
Cは、Si、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である。Cのカチオンは4配位位置にあり、4面体サイトを占有する(当該サイトをCサイトともいう)。Cは、1種又は2種以上の元素を使用することができる。なお、CとしてSi及びGeからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素(当該元素のカチオンは4価のカチオン)を使用する場合は、電気的中性の観点から、Aの(i)で表される元素として2価のカチオンとなる元素を使用する必要がある。
【0032】
Cの中でも、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素が好ましく、Gaがより好ましい。
【0033】
ここで、B及びCのいずれもAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である場合(即ち、本発明の蛍光体が、下記組成式(2):
(Al,Ga)(Al,Ga)12 (2)
[前記Aは上記に同じ。]
で表される化合物に、前記M元素がドープされている蛍光体である場合)における、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)と青色光励起による残光特性との関係について説明する。本発明の蛍光体に励起光を照射すると、発光中心となるCe3+が持つ電子が励起準位に励起されて、当該励起された電子が当該励起準位よりも低い準位に戻る。この当該励起された電子が上記準位に戻る時にエネルギーを光として放出する現象が、発光である。一方、Ce3+が持つ電子が電子トラップ(electron trap:一時的に電子を溜めることができるところ)に捕捉された後、当該電子が気温の熱エネルギーを受けることによって電子トラップから飛び出して元のCe3+に戻ってきたときに発光する現象が、残光である。よって、Ce3+が持つ電子を効率良く電子トラップに輸送することが長時間の残光特性に繋がる。
【0034】
そこで、(a)B及びC中のGaの組成比(存在比)を大きくすると、Ce3+の励起5d準位とガーネット母体結晶の伝導帯とのエネルギー差が小さくなるので、より効率的に上記電子を電子トラップに輸送することが可能となる。一方、(b)Gaの組成比を小さくすると、電子トラップと伝導帯とのエネルギー差が大きくなることになり、最も残光特性を強く示す温度が高温側にシフトする。従って、上記(a)及び(b)を考慮して、本発明の蛍光体におけるGa組成比は、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.5~0.8となるように設定することが好ましい。なお、上記Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.6である場合、Bサイト(8面体サイト)をAlが占有し、Cサイト(4面体サイト)をGaが占有する。上記Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.6未満である場合、BサイトをAlが占有し、CサイトをGaとAlが占有する。上記Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.6を超える場合、BサイトをGaとAlが占有し、CサイトをGaが占有する。
【0035】
金属元素M
本願発明の蛍光体は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされている。当該金属元素Mは、共添加イオンとして、上述の電子トラップを新たに形成する。当該M元素は、1種又は2種以上の上記金属元素を使用することができる。
【0036】
M元素の中でも、Cr、Ni、Fe、V、Yb及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、Cr、Ni、Yb及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1種がより好ましく、Cr及びYbからなる群から選ばれた少なくとも1種がさらに好ましく、Crが特に好ましい。
【0037】
M元素のドープ量は、上記式(1)で表される化合物に対して0.001~5モル%であることが好ましく、0.01~1モル%がより好ましく、0.05~0.5モル%がさらに好ましい。M元素のドープ量が上記範囲内であることにより、残光強度の低下が生じることなく、紫外線励起及び青色光励起による長残光特性にさらに優れる。
【0038】
ここで、本発明の蛍光体の好ましい態様の例を述べる。本発明の蛍光体を室温下で使用する場合、
組成式(1):A12 (1)
[式中、AがY及びCe(YとCeとのモル比がY:Ce=0.9999:0.0001~0.95:0.05)、BがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、CがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.5~0.8である]
で表される化合物に、前記化合物に対して0.001~5モル%のCrがドープされている蛍光体(Cr共ドープ蛍光体ともいう)が好ましい。このCr共ドープ蛍光体における残光の中心波長は、該蛍光体のガーネット結晶組成から、Ce3+を起源とする残光の中心波長に相当する510nmであり、人間の目に見えやすい。また、700nm付近においてもCr3+が残光するため、バイオイメージング用の残光蛍光体としても有用である。
【0039】
また、本発明の蛍光体を高温下(例:50~80℃)で使用する場合は、
組成式(1):A12 (1)
[式中、AがY及びCe(YとCeとのモル比がY:Ce=0.9999:0.0001~0.95:0.05)、BがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、CがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.5~0.8である]
で表される化合物に、前記化合物に対して0.001~5モル%のNiがドープされている蛍光体(Ni共ドープ蛍光体ともいう)が好ましい。このNi共ドープ蛍光体における残光の中心波長も、該蛍光体のガーネット結晶組成から、Ce3+を起源とする残光の中心波長に相当する510nmであり、人間の目に見えやすい。
【0040】
また、本発明の蛍光体を低温下(例:-60~-30℃)で使用する場合は、
組成式(1):A12 (1)
[式中、AがY及びCe(YとCeとのモル比がY:Ce=0.9999:0.0001~0.95:0.05)、BがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、CがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.5~0.8である]
で表される化合物に、前記化合物に対して0.001~5モル%のFeがドープされている蛍光体(Fe共ドープ蛍光体ともいう)が好ましい。このFe共ドープ蛍光体における残光の中心波長も、該蛍光体のガーネット結晶組成から、Ce3+を起源とする残光の中心波長に相当する510nmであり、人間の目に見えやすい。
【0041】
また、本発明において、
組成式(1):A12 (1)
[式中、AがY及びCe(YとCeとのモル比がY:Ce=0.9999:0.0001~0.95:0.05)、BがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、CがAl及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.5~0.8である]
で表される化合物に、前記化合物に対して0.001~5モル%のMnがドープされている蛍光体(Mn共ドープ蛍光体ともいう)が好ましい。このMn共ドープ蛍光体は、700nmにMnイオンを起源とした残光の中心波長を有するので、後述するバイオイメージングへの適用に有効である。
【0042】
材料形態
本発明の蛍光体の状態、形状、大きさ等は特に限定されず、使用目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、状態としては、単結晶、多結晶(透光性セラミックス)等が、形状としては、粉末、ペレット等が挙げられる。
【0043】
本発明の蛍光体が粉末である場合、当該粉末の平均粒径は0.5~50μm程度が好ましい。平均粒径の測定方法としては、公知の方法を採用すればよく、例えば光散乱法を用いた装置による測定方法が挙げられる。
【0044】
本発明の蛍光体の結晶構造は、上述の通り、単結晶、多結晶のいずれであってもよい。
【0045】
≪2.本発明の蛍光体の製造方法≫
本発明の蛍光体の製造方法は、特に限定されない。例えば、
下記組成式 (1):
12 (1)
(式中、
Aは、(i) Mg、Ca、Sr、La、Gd、Tb、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、並びに、(ii)Ceであり、
BはAl、Ga、Sc、In、Mg、Lu、及びYからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
CはSi、Ge、Al及びGaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である)で表される化合物に、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Hf、Si、Yb、Eu、Pr及びTbからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素がドープされている蛍光体の製造方法であって、
(1) 前記(i)の元素含有化合物、B元素含有化合物、C元素含有化合物、Ce含有化合物及び前記金属元素含有化合物を含む組成物を用意する工程1、及び
(2) 前記組成物を1200~1800℃で加熱する工程2
を順に含む製造方法、
が挙げられる。
【0046】
以下、上記製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0047】
工程1
工程1では、本発明の蛍光体の原料として、前記(i)の元素含有化合物、B元素含有化合物、C元素含有化合物、Ce含有化合物及び前記金属元素(M元素)含有化合物を含む組成物(化合物含有組成物)を用意する。化合物としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物、フッ化物等)、硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩などがある。当該組成物中のM元素含有化合物以外の各化合物の使用量は、最終的に得られる蛍光体の組成が上記組成式(1)を満たすように、適宜決定すればよい。M元素含有化合物の使用量は、使用用途等に応じて適宜決定すればよい(なお、M元素含有化合物の使用量は、当該M元素のドープ量が上記式(1)で表される化合物に対して0.001~5モル%となるように使用することが好ましく、0.01~1モル%がより好ましく、0.05~0.5モル%がさらに好ましい)。
【0048】
具体的には、上記A12 (1)で示される化合物にM元素がドープされた本発明のガーネット型構造の蛍光体を得るために、上記式(1)で示される化学量論組成となるように(上記式(1)で示される化学量論組成に従って)、(i)の元素含有化合物、B元素含有化合物、C元素含有化合物及びCe含有化合物の使用量を決定し、さらにM元素含有化合物の使用量を決定する。当該各化合物を含む組成物を用意した後、次の工程2で前記組成物を加熱(焼成)することで、本発明の蛍光体が得られる。なお、当該得られた本発明の蛍光体におけるガーネット型構造は、固溶体領域を有する場合がある。この場合、結晶内で格子欠陥やアンチサイト欠陥が生じ、上記式(1)に対して若干の組成比のズレが生じることがある(即ち、本発明の蛍光体は、上記式(1)に対して不定比量論組成を有する場合がある)が、上記不定比量論組成を有する場合も本発明の範囲内である。
【0049】
前記(i)の元素含有化合物としては、(i)の元素を含有する酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。前記(i)の元素含有化合物は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
前記(i)の元素を含有する酸化物としては、MgO、CaO、SrO、La、Gd、Tb、Lu、Y等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0051】
前記(i)の元素を含有する水酸化物としては、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、La(OH)、Gd(OH)、Tb(OH)、Lu(OH)、Y(OH)等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0052】
前記(i)の元素を含有するハロゲン化物のうち、塩化物としては、MgCl、CaCl、SrCl、LaCl、GdCl、TbCl、LuCl、YCl等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0053】
前記(i)の元素を含有する硝酸塩としては、Mg(NO、Ca(NO、Sr(NO、La(NO、Gd(NO、Tb(NO、Lu(NO、Y(NO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0054】
前記(i)の元素を含有するシュウ酸塩としては、MgC、CaC、SrC、La(C、Gd(C、Tb(C、Lu(C、Y(C等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0055】
前記(i)の元素を含有する炭酸塩としては、MgCO、CaCO、SrCO、La(CO、Gd(CO、Tb(CO、Lu(CO、Y(CO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。また、当該炭酸塩としては、Ca(HCO等のような炭酸水素塩も包含する。
【0056】
前記(i)の元素を含有する硫酸塩としては、MgSO、CaSO、SrSO、La(SO、Gd(SO、Tb(SO、Lu(SO、Y(SO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0057】
B元素含有化合物としては、B元素を含有する酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。前記B元素含有化合物は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
B元素を含有する酸化物としては、Al、Ga、Sc、In、MgO、Lu、Y等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0059】
B元素を含有する水酸化物としては、Al(OH)、Ga(OH)、Sc(OH)、In(OH)、Mg(OH)、Lu(OH)、Y(OH)等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0060】
B元素を含有するハロゲン化物のうち、塩化物としては、AlCl、GaCl、ScCl、InCl、MgCl、LuCl、YCl等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0061】
B元素を含有する硝酸塩としては、Al(NO、Ga(NO、Sc(NO、In(NO、Mg(NO、Lu(NO、Y(NO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0062】
B元素を含有するシュウ酸塩としては、Al(C、Ga(C、Sc(C、In(C、MgC、Lu(C、Y(C等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0063】
B元素を含有する炭酸塩としては、Al(CO、Ga(CO、Sc(CO、In(CO、MgCO、Lu(CO、Y(CO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0064】
B元素を含有する硫酸塩としては、Al(SO、Ga(SO、Sc(SO、In(SO、MgSO、Lu(SO、Y(SO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0065】
C元素含有化合物としては、C元素を含有する酸化物、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物、フッ化物等)、硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。前記C元素含有化合物は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
C元素を含有する酸化物としては、SiO、GeO、Al、Ga等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0067】
C元素を含有する水酸化物としては、Si(OH)、Ge(OH)、Al(OH)、Ga(OH)等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0068】
C元素を含有するハロゲン化物のうち、塩化物としては、SiCl、GeCl、AlCl、GaCl等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0069】
C元素を含有する硝酸塩としては、Si(NO、Ge(NO、Al(NO、Ga(NO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0070】
C元素を含有するシュウ酸塩としては、Si(C、Ge(C、Al(C、Ga(C等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0071】
Ce含有化合物としては、Ceを含有する酸化物、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物、フッ化物等)、硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。具体的には、CeO、Ce、Ce(OH)、CeCl、Ce(NO、Ce(C、Ce(CO、Ce(SO、Ce(SO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。Ce含有化合物は、1種で又は2種以上を使用することができる。
【0072】
金属元素(M元素)含有化合物としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属硝酸塩、金属シュウ酸塩、金属炭酸塩、金属硫酸塩等のMを金属成分として含有する化合物が挙げられる。金属元素含有化合物(M元素含有化合物)は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
金属酸化物としては、TiO、VO、V、VO、V、CrO、Cr、CrO、MnO、M、MnO、FeO、Fe、Fe、CoO、Co、Co、NiO、CuO、CuO、ZnO、ZrO、HfO、SiO、Yb、Eu、Pr11、Tb等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0074】
金属水酸化物としては、TiO(OH)、V(OH)、Cr(OH)、Cr(OH)、Mn(OH)、Fe(OH)、FeO(OH)、Co(OH)、Ni(OH)、Cu(OH)、Cu(OH)、Zn(OH)、Zr(OH)、Zr(OH)、Hf(OH)、Si(OH)、Yb(OH)、Eu(OH)、Eu(OH)、Pr(OH)、Tb(OH)等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0075】
金属ハロゲン化物としては、TiCl、TiCl、VCl、VCl、VCl、VCl、CrCl、CrCl、MnCl、FeCl、FeCl、CoCl、NiCl、CuCl、CuCl、ZnCl、ZrCl、ZrCl、HfCl、SiCl、SiCl、SiCl10、SiCl12、SiCl12、YbCl、EuCl、PrCl、TbCl等の金属塩化物;TiF、TiF、VF、VF、VF、CrF、CrF、MnF、MnF、FeF、FeF、CoF、CoF、NiF、CuF、CuF、ZnF、ZrF、HfF、SiF、YbF、EuF、PrF、TbF等の金属フッ化物;などが挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0076】
金属硝酸塩としては、Ti(NO、V(NO、Cr(NO、Mn(NO、Fe(NO、Fe(NO、Co(NO、Ni(NO、Cu(NO、Zn(NO、Zr(NO、Zr(NO、Hf(NO、Yb(NO、Eu(NO、Pr(NO、Tb(NO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0077】
金属シュウ酸塩としては、Ti(C、V(C、Cr(C、Mn(C)、Fe(C)、Fe(C、Fe(C、Co(C)、Co(C、Co(C、Ni(C)、Cu(C)、Cu(C)、Zn(C)、Zr(C、Hf(C、Yb(C、Eu(C、Pr(C、Tb(C等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0078】
金属炭酸塩としては、CrCO、MnCO、FeCO、CoCO、NiCO、CuCO、ZnCO、ZrCO、Yb(CO、Eu(CO、Pr(CO、Tb(CO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0079】
金属硫酸塩としては、Ti(SO、V(SO、CrSO、MnSO、FeSO、CoSO、NiSO、CuSO、ZnSO、ZrSO、Zr(SO、Yb(SO、Eu(SO、Pr(SO、Tb(SO等が挙げられ、これらの水和物も使用することができる。
【0080】
化合物含有組成物は、必要に応じて粉砕してもよい。粉砕方法としては、媒体撹拌ミル、コロイドミル、湿式ボールミル等の湿式粉砕方法;ジェットミル、乾式ボールミル、ロールクラッシャー等の乾式粉砕方法;などが挙げられる。なお、湿式粉砕方法では、水、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)などを前記化合物含有組成物と混合した後、前記化合物含有組成物中の各化合物を粉砕することができる。粉砕方法は、複数の粉砕方法を組み合せて用いてもよい。
【0081】
また、化合物含有組成物は、必要に応じて、分級、化学処理、乾燥等を行ってもよい。
【0082】
化合物含有組成物には、焼結助剤を含有させてもよい。焼結助剤としては、ホウ酸、酸化ホウ素、コロイダルシリカ、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)等が挙げられる。
【0083】
工程2
工程2では、工程1で用意した化合物含有組成物を1200~1800℃で加熱(焼成)する。
【0084】
工程2における焼成は、前記化合物含有組成物を、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等のるつぼに投入し、加熱する。加熱の温度は、1500~1600℃が好ましい。加熱時間は、3時間~24時間が好ましい。加熱を行う際の雰囲気は、大気雰囲気下、還元雰囲気下、真空雰囲気下のいずれでもよいが、真空雰囲気下で加熱を行うことが好ましい。真空雰囲気下で、前記化合物含有組成物を加熱することにより、Ce4+がCe3+に還元されやすく、また、酸素欠陥が生じ、結果として長残光特性に特に優れた蛍光体が得られる。
【0085】
工程2における加熱を行う前に、必要に応じて、仮焼成をしてもよい。仮焼成を行うことにより、Gaの蒸発を防ぐことができる。仮焼成する際の温度は、1000~1400℃が好ましい。
【0086】
その他の工程
本発明では、工程2の後で、さらにフローティングゾーン法による単結晶化、粉砕、耐水性処理等を行ってもよい。
【0087】
フローティングゾーン法では、多結晶の試料棒を原料として使用する。フローティングゾーン法とは、当該試料棒の一部を加熱して、種結晶となる下部の単結晶と試料棒との間に溶融部を作り、その(溶融部中の)融液部を表面張力によって支えながら全体を下方に移動させて、融液部を冷却する方法である。加熱方法は特に限定されず、ハロゲンランプによる加熱等が挙げられる。
【0088】
粉砕としては、上記工程1における粉砕方法と同様の方法が挙げられる。
【0089】
耐水性処理としては、有機材料や無機材料による表面コーティングという方法が挙げられる。
【0090】
≪3.本発明の蛍光体の適用≫
本発明の蛍光体は、蓄光蛍光体、白色LED、蓄光セラミックス、蓄光樹脂、蓄光塗料、蓄光式避難誘導システム、バイオイメージング等に適用することが可能である。
【0091】
蓄光蛍光体への適用としては、白色LED用照明下において、緑色残光蛍光体、黄色残光蛍光体等として使用することができる。具体的には、警告灯;時計の文字盤;施設の照明や誘導灯等が停電等で使用できなくなったときの避難誘導用照明;などが挙げられる。
【0092】
白色LEDへの適用としては、白色LEDデバイスに本発明の蛍光体を実装して、消灯後もかすかに光る照明デバイスを得ることが挙げられる。
【0093】
蓄光塗料への適用としては、視認性夜光塗料として、文字盤や避難用標識に使用することが挙げられる。
【0094】
バイオイメージングへの適用では、本発明の蛍光体における金属Mイオン(Cr3+、Mn2+、Mn4+等)を適宜選択して近赤外での残光をも示すようにして、蛍光マーカーとしての近赤外長残光蛍光体を得る。当該近赤外長残光蛍光体は、人体の細胞がよく透過する波長を有し、さらに、イメージのための励起光は、人体注入前に照射できるので、自家蛍光や励起光の散乱を防げ、結果としてノイズの少ないイメージング像を得ることができる。
【発明の効果】
【0095】
本発明の蛍光体は、Ce元素を含む特定のガーネット結晶蛍光体に特定の金属元素がドープされていることにより、紫外線励起による長残光特性に優れ、且つ、青色光励起による長残光特性に優れる。また、本発明の蛍光体は、上記紫外線、青色光等の励起光の照射による励起によって、緑色~赤色(中心波長が480~700nm程度)の発光を示し、特に緑色~黄色(中心波長が480~560nm程度)の発光が顕著であるので、人間の目に見えやすい。そのため、本発明の蛍光体は、各種用途(蓄光蛍光体、白色LED、蓄光セラミックス、蓄光樹脂、蓄光塗料、蓄光式避難誘導システム、バイオイメージング等)に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】ガーネット結晶構造を示す組成式(1):A12 において、A=Y、B=Al、C=Gaであるときの上記構造及び占有カチオンを示す。
【図2】ガーネット結晶構造を示す組成式(1):A12 において、A=Y、B=Al、C=Gaであるときの組成によるバンド構造変化を示す。
【図3】実施例2及び3の蛍光体におけるX線回折パターン(CuKα線使用)を示す。また、比較例1の(Y0.995Ce0.005AlGa12のX線回折パターン(CuKα線使用)を示す。なお、▼はYAlGa12の文献データである。
【図4】実施例1における蛍光励起スペクトルを示す。励起スペクトルは、株式会社島津製作所製の蛍光分光光度計(RF5300)を用いて、測定した。上のスペクトルは、Ce3+の520nm発光をモニターした励起スペクトルで、下のスペクトルは、Cr3+の690nm発光をモニターした励起スペクトルである。Ce3+の発光もCr3+の発光も紫外、青色光によって、効率的に励起出来るのが分かる。
【図5】実施例1における蛍光スペクトル及び残光スペクトル(5分後)を示す。本スペクトルは、朝日分光株式会社製キセノンランプ光源(MAX302)をバンドパスフィルターで分光した460nmを励起光源に用い、発光・残光スペクトルはコニカミノルタ社製 輝度測定システムを用いて、測定した。発光・残光スペクトルともCe3+(520nm)とCr3+(700nm)の強い発光が観測されている。
【図6】実施例17における紫外蓄光による残光スペクトルを示す。Ce3+の残光はほとんど観測されず、Mnイオンの700nmの強い残光だけが観測された。
【図7】比較例1の蛍光体における蛍光励起スペクトル(λem=505nm)及び発光スペクトル(λex=350nm)を示す。比較例1においては、500nmのCe3+からの発光のみが観測された。
【図8】実施例1、4及び5及び比較例1の蛍光体における熱ルミネッセンス測定結果を示す。
【図9】実施例1及び3の蛍光体における熱ルミネッセンス測定結果を示す。
【図10】実施例6~16の蛍光体の、(a)白色LED照明下、(b)紫外線ランプ遮断直後(室温)による残光特性、(c)白色LED照明遮断直後(室温)による残光特性及び(d) 白色LED照明遮断直後(150℃)による残光特性を示す写真を示す。実施例6~16のいずれの蛍光体も、紫外線励起後及びLED照明による青色光励起後において、残光を示している。
【図11】実施例18の蛍光体における熱ルミネッセンス測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。

【0098】
実施例1
以下の各原料粉末及びエタノール30mlを、ボールミル(製品名premium line P-7、フリッチュ製、フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて混合し、混合物を得た。次いで、当該混合物を、電気炉(製品名KBF314N1、光洋サーモシステム株式会社製)を用いて1200℃で6時間仮焼きした後、さらに電気炉(製品名KBF314N1、光洋サーモシステム株式会社製)を用いて1600℃で24時間本焼成した。なお、本焼成は、大気雰囲気中で行った。これにより、組成が、
(Y0.995Ce0.005AlGa12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl、CがGa、Gaのモル数/(B(Al)とC(Ga)の合計モル数)が0.6]で表される化合物に、Crがドープされた実施例1の蛍光体を得た。なお、Crのドープ量は、前記化合物に対して、0.1モル%であった。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.0357g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.6633g
・Al (三津和化学薬品株式会社製):1.4107g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):3.8902g
・Cr(NO)・9HO (STREM CHEMICALS製):0.0028g。

【0099】
実施例1の蛍光体の励起スペクトルを、株式会社島津製作所製の蛍光分光光度計(RF5300)を用いて測定した。図4に実施例1における蛍光励起スペクトルを示す。図4より、Ce3+の発光もCr3+の発光も紫外、青色光によって、効率的に励起出来るのが分かる。

【0100】
また、実施例1の蛍光体について、蛍光スペクトル及び残光スペクトルを測定した。朝日分光株式会社製キセノンランプ光源(MAX302)をバンドパスフィルターで分光した460nmを励起光源に用い、発光・残光スペクトルはコニカミノルタ社製 輝度測定システムを用いて、測定した。図5に実施例1における蛍光スペクトル及び残光スペクトル(5分後)を示す。発光・残光スペクトルともCe3+(520nm)とCr3+(700nm)の強い発光が観測されている。

【0101】
実施例2
本焼成を、真空電気炉(製品名VF-1800、クリスタルシステムズ株式会社製)を用いて、真空雰囲気中で行う以外は実施例1と同様にして、組成が、
(Y0.995Ce0.005AlGa12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl、CがGa、Gaのモル数/(B(Al)とC(Ga)の合計モル数)が0.6]で表される化合物に、Crがドープされた実施例2の蛍光体を得た。

【0102】
実施例2の蛍光体におけるX線回折パターン(CuKα線使用)を図3に示す。

【0103】
実施例3
以下の各原料粉末及びエタノール30mlを、ボールミル(製品名premium line P-7、フリッチュ製、フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて混合し、混合物を得た。次いで、当該混合物を、電気炉(製品名KBF314N1、光洋サーモシステム株式会社製)を用いて1200℃で6時間仮焼きした後、さらに真空管状電気炉(製品名VF-1800、クリスタルシステムズ株式会社製)を用いて1600℃で24時間本焼成した。なお、本焼成は、真空雰囲気中で行った。これにより、組成が、
(Y0.995Ce0.005Al(Al1/6Ga5/612
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl、CがAl及びGa(AlとGaとのモル比が、Al:Ga=(1/6):(5/6)]で表される化合物に、Crがドープされた実施例3の蛍光体を得た。なお、Crのドープ量は、前記化合物に対して、0.1モル%であった。なお、当該蛍光体は、組成が、
(Y0.995Ce0.005Al2.5Ga2.512
[Gaのモル数/(B(Al)とC(Al及びGa)の合計モル数)が0.5]
で表される化合物に、Crが0.1モル%ドープされた蛍光体ともいえる。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.0368g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.8054g
・Al (三津和化学薬品株式会社製):1.8172g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):3.3406g
・Cr(NO)・9HO (三津和化学薬品株式会社製):0.0055g。

【0104】
実施例3の蛍光体におけるX線回折パターン(CuKα線使用)を図3に示す。

【0105】
実施例4
以下の各原料粉末を使用し、本焼成を1600℃で12時間で行う以外は、実施例1と同様にして、組成が、
(Y0.995Ce0.005AlGa12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl、CがGa、Gaのモル数/(B(Al)とC(Ga)の合計モル数)が0.6]である化合物に、Niがドープされた実施例4の蛍光体を得た。なお、Niのドープ量は、前記化合物に対して、0.3モル%であった。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.03572g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.6633g
・Al (三津和化学薬品株式会社製):1.4107g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):3.8902g
・Ni(NO・6HO(和光純薬工業株式会社製):0.0121g。

【0106】
実施例5
以下の各原料粉末を使用する以外は、実施例4と同様にして、組成が、
(Y0.995Ce0.005AlGa12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl、CがGa、Gaのモル数/(B(Al)とC(Ga)の合計モル数)が0.6]である化合物に、Feがドープされた実施例5の蛍光体を得た。なお、Feのドープ量は、前記化合物に対して、0.3モル%であった。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.03572g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.6633g
・Al (三津和化学薬品株式会社製):1.4107g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):3.8902g
・Fe(SO・nHO (n=6~9)(和光純薬工業株式会社製):0.0113g。

【0107】
実施例6~16
以下の各原料粉末を使用し、本焼成を1600℃で6時間で行う以外は、実施例1と同様にして、組成が、
(Y0.995Ce0.005AlGa12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl、CがGa、Gaのモル数/(B(Al)とC(Ga)の合計モル数)が0.6]である化合物に、金属元素MとしてTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr又はHfがドープされた実施例6~16の各蛍光体を得た。なお、実施例6~16における各金属元素Mのドープ量は、前記化合物に対して、0.1モル%であった。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.03572g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.6633g
・Al (三津和化学薬品株式会社製):1.4107g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):3.8902g
・TiCl (和光純薬工業株式会社製):0.0021g(実施例6で使用した)。
・V (Aldrich株式会社製):0.0010g(実施例7で使用した)。
・Cr(NO)・9HO (STREM CHEMICALS株式会社製):0.0055g(実施例8で使用した)。
・MnCO (和光純薬工業株式会社製):0.0016g(実施例9で使用した)。
・Fe(SO・nHO (n=6~9) (和光純薬工業株式会社製):0.0038g(実施例10で使用した)。
・CoCl (三津和化学薬品株式会社製):0.0018g(実施例11で使用した)。
・Ni(NO・6HO (和光純薬工業株式会社製):0.0040g(実施例12で使用した)。
・CuCl (三津和化学薬品株式会社製):0.0035g(実施例13で使用した)。
・Zn(NO・6HO (和光純薬工業株式会社製):0.0050g(実施例14で使用した)。
・ZrF (Aldrich社製):0.0023g(実施例15で使用した)。
・HfCl (和光純薬工業株式会社製):0.0044g(実施例16で使用した)。

【0108】
実施例17
以下の各原料粉末及びエタノール30mlを、ボールミル(製品名premium line P-7、フリッチュ製、フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて混合し、混合物を得た。次いで、当該混合物を、N2-H2(5%)雰囲気で管状電気炉(製品名VF-1800、クリスタルシステムズ株式会社製)で24時間本焼成した。これにより、組成が、
(Y0.995Ce0.005ScGa12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがSc、CがGa、Gaのモル数/(B(Sc)とC(Ga)の合計モル数)が0.6]で表される化合物に、Mnがドープされた実施例17の蛍光体を得た。なお、Mnのドープ量は、前記化合物に対して、0.5モル%であった。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.0340g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.4422g
・Sc (三津和化学薬品株式会社製):1.8177g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):3.7059g
・MnCO (和光純薬工業株式会社製):0.0080g。

【0109】
図6に、実施例17における紫外蓄光による残光スペクトルを示す。Ce3+の残光はほとんど観測されず、Mnイオンの700nmの強い残光だけが観測された。

【0110】
実施例18
以下の各原料粉末及びエタノール30mlを、ボールミル(製品名premium line P-7、フリッチュ製、フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて混合し、混合物を得た。次いで、当該混合物を、電気炉(製品名KBF314N1、光洋サーモシステム株式会社製)を用いて1600℃で12時間焼成した。なお、焼成は、真空雰囲気中で行った。これにより、組成が、
(Y0.995Ce0.005(Al3/4Ga1/4Ga12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl及びGa(AlとGaとのモル比が、Al:Ga=(3/4):(1/4))、CがGa]で表される化合物に、Ybがドープされた実施例18の蛍光体を得た。なお、Ybのドープ量は、前記化合物に対して、0.15モル%であった。なお、当該蛍光体は、組成が、
(Y0.995Ce0.005Al1.5Ga3.512
[Gaのモル数/(B(Al及びGa)とC(Ga)の合計モル数)が0.7]
で表される化合物に、Ybが0.15モル%ドープされた蛍光体ともいえる。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.035g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.5294g
・Al (三津和化学薬品株式会社製):1.0277g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):4.4082g
・Yb (三津和化学薬品株式会社製):0.004g。

【0111】
比較例1
以下の各原料粉末を使用する以外は、実施例1と同様にして、組成が、
(Y0.995Ce0.005AlGa12
[上記式(1)中、AがY及びCe(YとCeとのモル比が、Y:Ce=0.995:0.005)、BがAl、CがGa、Gaのモル数/(B(Al)とC(Ga)の合計モル数)が0.6]である比較例1の蛍光体を得た。
<使用した各原料粉末>
・CeO (フルウチ化学株式会社製):0.03572g
・Y (三津和化学薬品株式会社製):4.6633g
・Al (三津和化学薬品株式会社製):1.4107g
・Ga (三津和化学薬品株式会社製):3.8902g。

【0112】
比較例1の蛍光体におけるX線回折パターン(CuKα線使用)を図3に示す。

【0113】
また、比較例1の蛍光体における蛍光励起スペクトル(λem=505nm)及び発光スペクトル(λex=350nm)を図7に示す。比較例1においては、500nmのCe3+からの発光のみが観測された。

【0114】
参考例1
SrAl:Eu2+-Dy3+(GLL-300FFS、根本特殊化学株式会社製)の蛍光体を用意した。

【0115】
試験例1(熱ルミネッセンス測定)
実施例1、3~5及び18、並びに比較例1で得られた蛍光体をペレット成型した。具体的には、上記各蛍光体を、ペレット成型機(製品名NT-50H、三庄インダストリー株式会社製)を用いて50MPaで圧縮成型することにより、直径10mm、厚さ2mmのペレット状にした。

【0116】
次いで、当該各蛍光体に対して、熱ルミネッセンス測定を行った。具体的には、当該各サンプルに対して励起光(紫外光250nmから400nm)を照射し、当該照射を遮断した後に当該各サンプルを100Kから昇温させながら発光輝度を測定した。なお、この測定により、各サンプルがどの温度で最も残光特性に優れているかを観測することができる。
<試験例1の各条件>
・クライオスタット装置:製品名Helitran、Advanced Research Systems株式会社製
・励起光源:製品名MAX302 朝日分光株式会社製
・PMT検出器:製品名 R3896 浜松ホトニクス株式会社製
・励起光の照射時間:10分間
・昇温速度:10℃/min
結果を以下の図8、9及び11に示す。

【0117】
(考察)
図8から明らかなように、実施例1の蛍光体(ドープされたM元素:Cr)は、300K付近に大きなピークが観測された。また、実施例4の蛍光体(ドープされたM元素:Ni)は、300~450Kの範囲にブロードなピークが観測された。また、実施例5の蛍光体(ドープされたM元素:Fe)は、200K付近と300K付近にピークが観測された。また、図11から明らかなように、実施例18の蛍光体(ドープされたM元素:Yb)は、300K付近に大きなピークが観測された。よって、実施例1、4、5及び18のいずれも300K付近(即ち、室温付近)で解放可能な電子トラップを有しており、長残光特性に有利に働くことが明らかとなった。

【0118】
また、図9から明らかなように、実施例1の蛍光体(ドープされたM元素:Cr、上記式(1)中のBがAl、上記式(1)中のCがGa、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.6)は、300K付近に大きなピークが観測されたのに対して、実施例3の蛍光体(ドープされたM元素:Cr、上記式(1)中のBがAl、上記式(1)中のCがAl及びGa、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)が0.5)は、330K付近に大きなピークが観測された。よって、Gaのモル数/(BとCの合計モル数)(BとCの合計モル数に対するGaのモル比)を小さくすることにより、グローピークを高温側にシフトさせることができ、結果として室温における初期強度及び残光持続時間を適宜設定することが可能であることが明らかとなった。なお、図9におけるグローピークから、実施例1の蛍光体の電子トラップ深さは0.59eV、実施例3の蛍光体の電子トラップ深さは0.65eVと見積もられた。

【0119】
試験例2(紫外光照射後の残光輝度測定)
上記実施例1~3、比較例1及び参考例1で得られた蛍光体を、試験例1と同様の方法により、直径10mm、厚さ2mmのペレット状にした。次いで、上記各ペレット状蛍光体に対して励起光(紫外光360nm)を照射し、照射を遮断してから5分後、20分後及び1時間後の残光輝度を測定した。また、ベースライン測定のためにシャッターを検出器の前に配置し、120分後にシャッターを閉じた。
<試験例2の各条件>
・励起光源:製品名MAX302 朝日分光株式会社製 +360nmバンドパスフィルター
・残光輝度測定装置:製品名 輝度測定システム、コニカミノルタ株式会社製
・励起光の照射時間:5分間
・ベースライン測定:120分後
・気温:25℃

【0120】
試験例3(青色光照射後の残光輝度測定)
励起光として、紫外光(360nm)に代えて青色光(460nm)を照射する以外は、試験例2と同様にして、上記各ペレット状蛍光体の残光輝度(青色光の照射を遮断してから5分後、20分後及び1時間後の残光輝度)を測定した。

【0121】
試験例2及び3の結果を以下の表1に示す。

【0122】
【表1】
JP2015099145A1_000003t.gif

【0123】
(考察)
上記結果からも明らかなように、実施例1~3の蛍光体は、紫外光励起による長残光特性に優れ、且つ、青色光励起による長残光特性にも優れる。特に、実施例1~3の蛍光体は、青色光による励起を遮断してから1時間後の残光輝度が、参考例1と比較しても非常に高いことが分かる。これは、共添加イオン(M)による電子トラップの生成とサンプルの半透明性のためである。青色光(460nm)は、汎用的なInGaN青色LEDの発光波長であり、青色LED+黄色蛍光体で実現される白色LEDに一般的に用いられるため、青色光の励起波長として最適である。

【0124】
試験例4(青色光照射後の残光減衰曲線評価)
上記実施例1~3で得られた蛍光体を、試験例1と同様の方法によりペレット状にした。次いで、上記各ペレット状蛍光体に対して、励起光(青色光460nm)を照射し、照射を遮断した後の上記各ペレット状蛍光体の残光減衰曲線を測定した。当該残光減衰曲線から、残光輝度が2 mcd/m2を下回る時の時間(残光時間)を得た。
<試験例4の各条件>
・励起光源:製品名MAX302 朝日分光株式会社製 +460nmバンドパスフィルター
・残光輝度測定装置:製品名 輝度測定システム、コニカミノルタ株式会社製
・励起光の照射時間:5分間
・ベースライン測定:120分後
・気温:25℃
その結果、実施例1における残光時間は265分、実施例2における残光時間は485分、実施例3における残光時間は792分であり、いずれも青色光励起による長残光特性に優れていることが示された。

【0125】
試験例5(紫外光照射後の残光特性評価)
上記実施例6~16及び比較例1で得られた蛍光体を、試験例1と同様の方法により、直径10mm、厚さ2mmのペレット状にした。次いで、上記各ペレット状蛍光体に対して励起光(紫外光360nm)を照射し、照射を遮断してから直後の各蛍光体の残光特性(蓄光特性)を目視により評価した。評価基準は、以下の通りである。なお、上記実施例6~16で得られた蛍光体の紫外線励起よる残光特性を以下の図10に示す。
<評価基準>
◎:比較例1の蛍光体よりも残光輝度に特に優れている。
○:比較例1の蛍光体よりも残光輝度に優れている。
△:比較例1の蛍光体と残光輝度が同等。
×:比較例1の蛍光体よりも残光輝度が劣る。
<試験例5の各条件>
・紫外光照射装置(紫外線ランプ):製品名 FL10BLB 東芝社製
・励起光の照射時間:5分間
・気温:室温(25℃)
図10より、実施例6~16のいずれの蛍光体も、紫外線励起後及びLED照明による青色光励起後において、残光を示していることがわかる。

【0126】
試験例6(青色光照射後の残光特性評価)
励起光として、紫外光(360nm)に代えて、青色光(460nm)を含む白色LEDを照射する以外は、試験例5と同様にして、上記各ペレット状蛍光体の残光特性(蓄光特性)を目視により評価した。評価基準は、試験例5と同じである。

【0127】
試験例5及び6の結果を以下の表2に示す。
<試験例6の各条件>
・励起光の照射時間:5分
・気温:室温(25℃)及び150℃

【0128】
【表2】
JP2015099145A1_000004t.gif

【0129】
(考察)
上記結果からも明らかなように、実施例6~16の蛍光体は、紫外光励起による長残光特性に優れ、且つ、青色光励起による長残光特性にも優れる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10