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明細書 :データステッチング装置、データステッチング方法、及びコンピュータプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6508723号 (P6508723)
登録日 平成31年4月12日(2019.4.12)
発行日 令和元年5月8日(2019.5.8)
発明の名称または考案の名称 データステッチング装置、データステッチング方法、及びコンピュータプログラム
国際特許分類 G01B  21/20        (2006.01)
G01B  11/16        (2006.01)
G01B  11/24        (2006.01)
FI G01B 21/20 C
G01B 11/16 H
G01B 11/24 K
請求項の数または発明の数 19
全頁数 27
出願番号 特願2015-549192 (P2015-549192)
出願日 平成26年11月20日(2014.11.20)
国際出願番号 PCT/JP2014/080802
国際公開番号 WO2015/076343
国際公開日 平成27年5月28日(2015.5.28)
優先権出願番号 2013241001
優先日 平成25年11月21日(2013.11.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年10月10日(2017.10.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】栗田 光樹夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100111567、【弁理士】、【氏名又は名称】坂本 寛
【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査官 【審査官】八木 智規
参考文献・文献 特開平02-138665(JP,A)
特開2012-112852(JP,A)
国際公開第2012/008031(WO,A1)
米国特許出願公開第2003/0042135(US,A1)
滑らかで高精度なデータ接続(スティッチング)方法,栗田 光樹夫,2014年 5月27日,URL,http://web.archive.org/web/20150209054711/http://www.jstshingi.jp/abst/p/14/1403/kyoto05.pdf
調査した分野 G01B 9/00 - 9/10
G01B 11/00 -11/30
G01B 21/00 -21/32
G06F 17/50
H04N 5/222- 5/257
特許請求の範囲 【請求項1】
それぞれが複数のデータ要素を有する複数のデータをステッチするためのデータステッチング装置であって、
前記複数のデータそれぞれを弾性体の形状のデータとみなし、前記複数のデータに対応する複数の弾性体それぞれに生じる弾性変形を求める処理部を備え、
前記データ要素は、サンプリングポイントを示す座標と、前記座標においてサンプリングされた値と、を含み、
前記弾性体の前記形状は、複数次元の空間において、前記データが有する複数のデータ要素が示す値を結ぶ形状であり、
前記複数次元の空間は、前記座標の座標軸方向と、サンプリングされた前記値の大きさに対応するステッチング方向と、を有し、
前記弾性変形は、前記複数のデータにおいてサンプリングされた前記値を含むデータ要素の値が一致すべきデータ要素に対応した弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を前記ステッチング方向に変位させて互いに接続することで前記複数の弾性体それぞれに波及して前記ステッチング方向へ生じる弾性変形を含み、
前記処理部は、前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の形状を示すデータを、前記複数のデータをステッチしたステッチングデータとして出力する
データステッチング装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記複数の弾性体それぞれの弾性率を設定するよう構成されている
請求項1記載のデータステッチング装置。
【請求項3】
前記処理部は、複数の弾性体それぞれに異なる弾性率を設定可能である
請求項2記載のデータステッチング装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記複数のデータそれぞれの信頼度に基づいて、前記複数の弾性体それぞれの弾性率を決定するよう構成されている
請求項2又は3に記載のデータステッチング装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記複数のデータのうちの少なくとも一つのデータに、前記複数のデータ要素を補間する補間データ要素を加える処理を行うよう構成され、
前記複数のデータにおいてデータ要素の値が一致すべきデータ要素は、前記補間データ要素を含む
請求項1~4のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の内部応力を求め、前記内部応力に基づいて、前記複数のデータのうち不適切なデータを検出するよう構成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の内部応力を求め、前記内部応力に基づいて、前記複数の弾性体の不適切な接続を検出する
請求項1~6のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記複数のデータに基づいて生成された複数の弾性体変形モデルを用いた変形解析によって、前記弾性変形を求める
請求項1~7のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項9】
前記複数の弾性体変形モデルそれぞれは、少なくとも曲げ変形可能な複数の要素を有して構成されている
請求項8に記載のデータステッチング装置。
【請求項10】
前記要素は、梁要素を含む
請求項9記載のデータステッチング装置。
【請求項11】
前記要素は、シェル要素を含む
請求項9記載のデータステッチング装置。
【請求項12】
前記変形解析は、有限要素法によって行われる
請求項8~11のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項13】
前記弾性変形は、少なくとも曲げ変形を含む
請求項1~12のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項14】
前記複数のデータは、計測対象物の表面を複数の計測パスに沿って計測して得られた複数の形状計測データであり、
前記複数のデータ要素それぞれは、前記計測パス上の計測値を示すデータ要素であり、
前記複数の計測パスそれぞれは、前記複数の計測パスに含まれる他の計測パスとの交点を有し、
前記弾性体の前記形状は、前記形状計測データが有する複数のデータ要素が示す前記計測値を結ぶ線の形状であり、
前記弾性変形は、前記交点の計測値を示すデータ要素に対応した前記弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を接続することで生じる弾性変形である
請求項1~13のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項15】
前記複数のデータは、画像データであり、
前記複数のデータ要素それぞれは、画素であり、
前記複数の画像データの撮影範囲それぞれは、前記複数の画像データに含まれる他の画像データの撮影範囲との重複領域を有し、
前記弾性体の前記形状は、前記画像データが有する複数の画素が示す画素値を結ぶ面の形状であり、
前記弾性変形は、前記重複領域に含まれる画素に対応した前記弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を接続することで生じる弾性変形である
請求項1~13のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項16】
前記複数のデータは、観測装置によって観測対象物を観測して得られた複数の観測データであり、
前記複数の観測データの観測範囲それぞれは、前記複数の観測データに含まれる他の観測データの観測範囲との重複領域を有する
請求項1~13のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項17】
前記処理部は、前記観測対象物の観測の仕方を評価する処理を行うよう構成され、
前記評価する処理は、前記複数の弾性体全体に対する固有値解析の結果に基づいて行われる
請求項1~16のいずれか1項に記載のデータステッチング装置。
【請求項18】
それぞれが複数のデータ要素を有する複数のデータをステッチする処理をコンピュータが行う方法であって、
前記複数のデータそれぞれを弾性体の形状のデータとみなし、前記複数のデータに対応する複数の弾性体それぞれに生じる弾性変形を求める処理を前記コンピュータが実行すること、
前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の形状を示すデータを、前記複数のデータをステッチしたステッチングデータとして、前記コンピュータが出力すること、
を含み、
前記データ要素は、サンプリングポイントを示す座標と、前記座標においてサンプリングされた値と、を含み、
前記弾性体の前記形状は、複数次元の空間において、前記データが有する複数のデータ要素が示す値を結ぶ形状であり、
前記複数次元の空間は、前記座標の座標軸方向と、サンプリングされた前記値の大きさに対応するステッチング方向と、を有し、
前記弾性変形は、前記複数のデータにおいてサンプリングされた前記値を含むデータ要素の値が一致すべきデータ要素に対応した弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を前記ステッチング方向に変位させて互いに接続することで前記複数の弾性体それぞれに波及して前記ステッチング方向へ生じる弾性変形を含む
方法。
【請求項19】
それぞれが複数のデータ要素を有する複数のデータをステッチする処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記処理は、
前記複数のデータそれぞれを弾性体の形状のデータとみなし、前記複数のデータに対応する複数の弾性体それぞれに生じる弾性変形を求めることと、
前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の形状を示すデータを、前記複数のデータをステッチしたステッチングデータとして出力することと、
を含み、
前記データ要素は、サンプリングポイントを示す座標と、前記座標においてサンプリングされた値と、を含み、
前記弾性体の前記形状は、複数次元の空間において、前記データが有する複数のデータ要素が示す値を結ぶ形状であり、
前記複数次元の空間は、前記座標の座標軸方向と、サンプリングされた前記値の大きさに対応するステッチング方向と、を有し、
前記弾性変形は、前記複数のデータにおいてサンプリングされた前記値を含むデータ要素の値が一致すべきデータ要素に対応した弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を前記ステッチング方向に変位させて互いに接続することで前記複数の弾性体それぞれに波及して前記ステッチング方向へ生じる弾性変形を含む
コンピュータプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデータをステッチング(stitching)するための装置、方法、及びコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
計測装置の測定範囲を超える対象を計測する場合、独立した計測データをステッチング(接続)することが必要となる。
例えば、特許文献1,2は、被検面を部分的に測定した形状データをつなぎ合わせて、被検面全体の形状データを計算する方法を開示している。
また、データステッチング(データ接続)は、形状の計測データのステッチングに限らず、複数の画像データのステッチングなど、様々なデータを対象に行われる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2011/061843号
【特許文献2】国際公開第2012/008031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステッチングされる個々の計測データは、独立して誤差を有しているため、データステッチングの際には、尤もらしい値(最尤度な値)が得られるようにする必要がある。
一般的に、従来のデータステッチングに際しては、各データにおける接続領域の値が尤もらしくなるような中間点の値の生成が行われる。そして、その中間点を橋渡しとして、2つの異なるデータの接続が行われる。
【0005】
中間点の算出には、単純平均等が用いられる。また、比較的高度な方法として、各データ群の全データに対して回転やオフセット値(並進に関する3つのパラメータと回転に関する3つのパラメータの合計6つのパラメータ)を加える方法がある。これらのパラメータの決定方法として、最小二乗法がしばしば用いられる。
【0006】
しかしながら、上記のパラメータだけで3次元データなどのステッチング(接続)を行っても、データの接続領域における値の不連続さが解消されることはない。しかも、データの接続領域のみに接続誤差を配分することになり、尤もらしい値(最尤度な値)から懸け離れた値になりやすい。
【0007】
そこで、本発明は、データステッチングにおいて、接続領域の不整合を抑制するための新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ある観点からみた本発明は、それぞれが複数のデータ要素を有する複数のデータをステッチするためのデータステッチング装置であって、
前記複数のデータそれぞれを弾性体の形状のデータとみなし、前記複数のデータに対応する複数の弾性体それぞれに生じる弾性変形を求める処理部を備え、
前記弾性体の前記形状は、前記データが有する複数のデータ要素が示す値を結ぶ形状であり、
前記弾性変形は、前記複数のデータにおいてデータ要素の値が一致すべきデータ要素に対応した弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を互いに接続することで生じる弾性変形であり、
前記処理部は、前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の形状を示すデータを、前記複数のデータをステッチしたステッチングデータとして出力するデータステッチング装置である。接続される弾性体の部分同士の相対距離が完全にゼロになる場合のほか、相対距離がほぼゼロになる場合、すなわち、実質的にゼロとみなせる程度の相対距離にする場合を含む。
【0009】
本発明は、弾性変形の解析を、データステッチングというデータ解析に適用するという、従来のデータステッチングとは全く異なるアプローチで、データステッチングを行うものである。
【0010】
(2)前記処理部は、前記複数の弾性体それぞれの弾性率を設定するよう構成されているのが好ましい。
【0011】
(3)前記処理部は、複数の弾性体それぞれに異なる弾性率を設定可能であるのが好ましい。
【0012】
(4)前記処理部は、前記複数のデータそれぞれの信頼度に基づいて、前記複数の弾性体それぞれの弾性率を決定するよう構成されているのが好ましい。
【0013】
(5)前記処理部は、前記複数のデータのうちの少なくとも一つのデータに、前記複数のデータ要素を補間する補間データ要素を加える処理を行うよう構成され、前記複数のデータにおいてデータ要素の値が一致すべきデータ要素は、前記補間データ要素を含むのが好ましい。
【0014】
(6)前記処理部は、前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の内部応力を求め、前記内部応力に基づいて、前記複数のデータのうち不適切なデータを検出するよう構成されているのが好ましい。
【0015】
(7)前記処理部は、前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の内部応力を求め、前記内部応力に基づいて、複数の弾性体の不適切な接続を検出するのが好ましい。
【0016】
(8)前記処理部は、前記複数のデータに基づいて生成された複数の弾性体変形モデルを用いた変形解析によって、前記弾性変形を求めるのが好ましい。
【0017】
(9)前記複数の弾性体変形モデルそれぞれは、少なくとも曲げ変形可能な複数の要素を有して構成されているのが好ましい。
【0018】
(10)前記要素は、梁要素を含むのが好ましい。
【0019】
(11)前記要素は、シェル要素を含むのが好ましい。
【0020】
(12)前記変形解析は、有限要素法によって行われるのが好ましい。
【0021】
(13)前記弾性変形は、少なくとも曲げ変形を含むのが好ましい。
【0022】
(14)前記複数のデータは、計測対象物の表面を複数の計測パスに沿って計測して得られた複数の形状計測データであり、
前記複数のデータ要素それぞれは、前記計測パス上の計測値を示すデータ要素であり、
前記複数の計測パスそれぞれは、前記複数の計測パスに含まれる他の計測パスとの交点を有し、
前記弾性体の前記形状は、前記形状計測データが有する複数のデータ要素が示す前記計測値を結ぶ線の形状であり、
前記弾性変形は、前記交点の計測値を示すデータ要素に対応した前記弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を接続することで生じる弾性変形であるのが好ましい。
【0023】
(15)前記複数のデータは、画像データであり、
前記複数のデータ要素それぞれは、画素であり、
前記複数の画像データの撮影範囲それぞれは、前記複数の画像データに含まれる他の画像データの撮影範囲との重複領域を有し、
前記弾性体の前記形状は、前記画像データが有する複数の画素が示す画素値を結ぶ面の形状であり、
前記弾性変形は、前記重複領域に含まれる画素に対応した前記弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を接続することで生じる弾性変形であるのが好ましい。
【0024】
(16)前記複数のデータは、観測装置によって観測対象物を観測して得られた複数の観測データであり、
前記複数の観測データの観測範囲それぞれは、前記複数の観測データに含まれる他の観測データの観測範囲との重複領域を有するのが好ましい。
【0025】
(17)前記処理部は、前記観測対象物の観測の仕方を評価する処理を行うよう構成され、
前記評価する処理は、前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体全体に対する固有値解析の結果に基づいて行われるのが好ましい。
【0026】
(18)他の観点からみた本発明は、それぞれが複数のデータ要素を有する複数のデータをステッチする処理をコンピュータが行う方法であって、
前記複数のデータそれぞれを弾性体の形状のデータとみなし、前記複数のデータに対応する複数の弾性体それぞれに生じる弾性変形を求める処理を前記コンピュータが実行すること、
前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の形状を示すデータを、前記複数のデータをステッチしたステッチングデータとして、前記コンピュータが出力すること、
を含み
前記弾性体の前記形状は、前記データが有する複数のデータ要素が示す値を結ぶ形状であり、
前記弾性変形は、前記複数のデータにおいてデータ要素の値が一致すべきデータ要素に対応した弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を互いに接続することで生じる弾性変形である。
【0027】
(19)他の観点からみた本発明は、
それぞれが複数のデータ要素を有する複数のデータをステッチする処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記処理は、
前記複数のデータそれぞれを弾性体の形状のデータとみなし、前記複数のデータに対応する複数の弾性体それぞれに生じる弾性変形を求めることと、
前記弾性変形が生じた前記複数の弾性体の形状を示すデータを、前記複数のデータをステッチしたステッチングデータとして出力することと、
を含み、
前記弾性体の前記形状は、前記データが有する複数のデータ要素が示す値を結ぶ形状であり、
前記弾性変形は、前記複数のデータにおいてデータ要素の値が一致すべきデータ要素に対応した弾性体の位置において、前記位置が一致するように前記複数の弾性体を互いに接続することで生じる弾性変形である。
さらに他の観点からみた本発明は、前記コンピュータプログラムを記録した記録媒体である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、データステッチングにおいて、接続領域の不整合を抑制し、より真値に近い結果を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】データステッチング装置の構成図である。
【図2】計測対象における計測パスを示す平面図である。
【図3】計測データの説明図である。
【図4】ステッチング処理前の計測データである。
【図5A】ステッチング処理のフローチャートである。
【図5B】線状弾性体の要素分割の説明図である。
【図5C】面状弾性体の弾性体変形モデルを示す図である。
【図6】データポイント設定の説明図である。
【図7】ステッチング処理後の計測データである。
【図8】ステッチング処理前の計測データである。
【図9】ステッチング処理後の計測データである。
【図10】評価処理のフローチャートである。
【図11】計測パス固有値の説明図である。
【図12】計測パスと固有値の説明図である。
【図13】撮影範囲と固有値の説明図である。
【図14】データと弾性体形状の説明図である。
【図15】弾性体接続の説明図である。
【図16】弾性体接続と弾性変形の説明図である。
【図17】変位関数の説明図である。
【図18】ステッチング前後のデータ説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。

【0031】
図1は、実施形態に係るステッチング装置1を示している。以下に説明するステッチング処理装置1は、複数のデータ(被ステッチングデータ)をステッチ(接続)して、ステッチングデータを得るために用いられる。実施形態に係るステッチング装置1は、計測装置2から出力された複数の計測データを、複数の被ステッチングデータとして扱う。データステッチングを行うことで、広範囲な計測データを得ることができる。

【0032】
「被ステッチングデータ」は、そのデータの種類が、計測データに限定されるものではなく、例えば、特定の対象(例えば、計測対象又は撮影対象)の一部分について得られたデータ(例えば、計測データ又は画像データなど)でもよい。

【0033】
本実施形態のステッチング装置1は、データ取得部2と、処理装置3と、を有して構成されている。本実施形態におけるデータ取得部2は、(計測)対象物の表面形状を測定し、計測データを処理装置3へ出力する計測装置として構成されている。ただし、データ取得部2は、計測装置に限定されるものではなく、例えば、被ステッチングデータとなる画像データを出力するカメラであってもよい。つまり、データ取得部2は、特定の対象についてのデータを取得できるものであればよい。換言すると、データ取得部2は、観測装置(例えば、計測装置又はカメラ)によって観測対象(例えば、計測対象又は撮影対象)を観測し、観測対象の観測データを取得できるものであればよい。計測装置及びカメラなどの観測装置には、限られた観測範囲(例えば、計測範囲、撮影範囲)がある。観測範囲の重複領域を有する複数の観測データを、重複領域においてデータ接続(データステッチング)することで、限られた観測範囲を拡張することができる。
また、データ取得部2は、設けられていなくてもよく、処理装置3が、処理装置3内の記憶部12又は外部の記憶装置に記憶された被ステッチングデータを取得して処理を行っても良い。

【0034】
処理装置3は、コンピュータによって構成されており、処理部11と、記憶部12と、キーボード・マウスなどの入力部13と、ディスプレイなどの出力部14と、を備えている。
処理部11は、記憶部12に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、処理装置3の有する機能を発揮する。具体的には、図1に示すように、処理部11は、データ取得処理部11a、弾性率設定部(変形モデル生成部)11b、一致データポイント設定部11c、変形演算部11d、検出部11e、出力処理部11f、評価部11gとしての機能を発揮する。各機能部の詳細については後述する。

【0035】
本実施形態の計測装置(データ取得部)2は、計測対象の表面の微細な凹凸形状を測定するために、計測対象の表面(xy平面)に対して計測パスに沿った1次元スキャンを行って、計測対象の厚さ方向位置(高さ;z方向位置)を求める。
図2は、円形平板を計測装置2が測定する場合の複数の計測パスを示している。

【0036】
図2に示す計測パスは、60本の直線状の計測パス(直線パス)と、1本の円環状の計測パス(円環パス)と、から構成されている。各計測パスは、他の計測パスとの交点を有する。計測パスの交点は、複数の計測パスに沿った計測範囲の重複範囲(重複点)である。交点(重複範囲)がデータ接続される位置となる。
直線パスは、円形平板上において6°おきに配置されており、個々の直線パスは、他の多数の直線パスと交わっている。円環パスは、円形平板の外周側に配置されており、全直線パスの径方向外側の先端部を繋ぐような円環状のパスとなっている。
なお、円形平板の中央部は測定範囲外とされているため、計測範囲は、ドーナツ状の領域となる。

【0037】
計測装置2は、それぞれの計測パスに沿って計測対象の表面形状を測定した計測データ(被ステッチングデータ)を出力する。例えば、図3(a)に示す第1計測パス(直線パス)と第2計測パス(直線パス)についての計測データは、図3(b)及び図3(c)に示すようなデータ構造を有する。

【0038】
図3(a)に示す第1計測パスは、計測対象である円形平板の表面に対して平行であるxy平面上の座標(x11,y11)から座標(x1n,y1n)を結ぶ直線パスである。第1計測パスについての計測データは、図3(b)に示すように、座標(x11,y11)から座標(x1n,y1n)における複数(n個)の計測ポイント(サンプリングポイント)それぞれにおける計測対象厚さ方向位置(高さ;z方向位置)の測定結果をデータ要素として有するデータ列として構成される。
図3(a)に示す第2計測パスは、前記xy平面上の座標(x21,y21)から座標(x2n,y2n)を結ぶ直線パスである。第2計測パスについての計測データは、図3(c)に示すように、座標(x21,y21)から座標(x2n,y2n)における複数(n個)の計測ポイント(サンプリングポイント)それぞれにおける計測対象厚さ方向位置(高さ;z方向位置)の測定結果をデータ要素として有するデータ列として構成される。
このように、計測データは、各データ要素がx,y,zという3次元の値を持つ3次元データのデータ列である。

【0039】
個々の計測データは、計測対象である円形平板からみると、計測パスという一部分における計測範囲についての測定結果に過ぎないため、計測対象全体の測定結果を得るには、複数の計測パスに沿って測定して得られた複数の計測データを、計測パスの交点(重複範囲)においてステッチング(接続)する必要がある。

【0040】
しかし、個々の計測データは、それぞれ独立した誤差を有しており、データを接続すべきポイント(交点)においても、接続対象の複数のデータの値が一致しているとは限らない。例えば、図3において第1計測パスと第2計測パスの交点(座標(x,y))においては、計測対象の同一位置が測定されるので、当然に真値は同一である。しかし、それぞれの計測データが、独立して、測定誤差等の誤差を持つ。このため、第1計測パス及び第2計測パスの重複範囲である交点(座標(x,y)においても、第1計測パス及び第2計測パスの計測データの値(z方向位置)は一致していないのが通常である。

【0041】
図4は、図2に示す全計測パスに沿って計測装置2で計測した計測データ(処理装置3による処理前のデータ)を、x,y,z座標上に図示したものである。図4に示すように、個々の計測データに含まれる誤差のため、直線パスの計測データは、交点となるべき位置においても、他の直線パスの計測データと一致しているとは限らない。また、円環パスの計測データも、直線パスの計測データの径方向外側の先端部と一致しているとは限らない。
このように、複数の計測データそれぞれは、誤差のために、相互に矛盾したデータとなっている。

【0042】
したがって、データステッチングの際には、本来の交点における値の不一致を解消し、尤もらしいデータにする必要がある。一般的には、交点の真値が共通しているということを利用して、各交点に対応する複数のデータ要素の値の平均点を求め、各平均点を多角形平面で内挿するなどの方法をとることが考えられる。
しかし、この場合、交点近傍のみで値の不一致が解消されるにすぎず、全体的には交点付近を境界としてデータ値の不整合が残ることになる。つまり、データ接続領域における不整合が残ることになる。

【0043】
そこで、本実施形態の処理装置3は、計測データ群を、弾性体のデータ群とみなす。つまり、それぞれの計測データ(被ステッチングデータ)は、計測データの値で規定される形状を有する物体(弾性体)のモデルとして扱われる。計測データの場合、弾性体の形状は、3次元座標において、計測データを構成する各データ要素が示す値を結ぶ線形状となる。被ステッチングデータを構成する各データ要素が示す値を結ぶ形状が面になれば、弾性体の形状は面形状となる。被ステッチングデータを構成する各データ要素を示す値を結ぶ形状が立体になれば、弾性体の形状は立体形状となる。
計測データを弾性体とみなすことで、データステッチング(データ接続)問題は、弾性体接続問題に置き換わる。本実施形態では、弾性体接続問題を解くことにより、データ接続領域の不整合を解消する。

【0044】
図5Aは、弾性体接続問題を解くことによりデータステッチングを行うステッチング処理の手順を示している。
まず、処理装置11の処理部11のデータ取得処理部11aは、データ取得部2の計測を制御するデータ取得処理を行う。データ取得処理部11aは、計測装置2から同一の計測対象における複数の計測パスに対応した複数の計測データ(被ステッチングデータ)を受け付ける。

【0045】
そして、処理装置3の処理部11の弾性率設定部(物性値設定部)11bは、複数の計測データそれぞれに弾性率(ヤング率等)を設定する弾性率設定処理(物性値設定処理;ステップS1)を行う。ステップS1での設定処理では、必要に応じて弾性率以外の物性値を設定してもよい。弾性率及びその他の物性値は、後述の変形演算処理S3に用いられる。計測データに弾性率などの物性値を設定すると、計測データによって形状が示される弾性体に弾性率を設定することになる。計測データそれぞれに弾性率を設定することで、計測データを、設定された弾性率を有する弾性体の形状データとして取り扱うことができる。
計測データは、前述のように3次元データであるため、弾性率が設定されることにより3次元の弾性体形状のデータとして取り扱うことができる。具体的には、複数の計測データが、多数の線状弾性体からなる弾性体集合として取り扱われる。弾性体集合に含まれる多数の線状弾性体それぞれは、xyz空間において、図4に示す形態で、個別に存在する。
なお、線状弾性体の太さは、数値上は与えても、データをステッチするために仮想的にはゼロとみなすことができる。
また、弾性率設定処理は、後述の変形演算処理(ステップS3)の開始前までに行われていればよく、後述の一致データポイント設定処理(ステップS2)の後に行われてもよい。

【0046】
弾性率設定部11aは、複数の計測データ(被ステッチングデータ)に対して、複数の計測データに対して全て共通の弾性率を設定することもできるし、複数の計測データそれぞれに異なる弾性率を設定することもできる。
なお、本実施形態において、弾性率の絶対値の大きさは問題とならないため、弾性率の大きさは適宜設定すればよい。複数の計測データそれぞれに異なる弾性率を設定する場合、計測データの精度(データ信頼度;含まれる誤差の大きさ)に応じて、複数の計測データそれぞれに設定される弾性率を決定する(詳細は後述する)。

【0047】
処理部11の一致データポイント設定部(一致データ要素設定部)11cは、複数の計測データ同士でデータ値(x値,y値,z値)が一致すべきデータ要素(データポイント)を、一致データポイントとして、設定する一致データポイント設定処理(ステップS2)を行う。本実施形態の一致データポイント設定部11cは、複数の計測パスの交点(重複領域)を一致データポイントとして設定する。図2に示すような計測パスの場合、計測パスの交点となる位置(xy座標)は、予めわかっているため、図3に示すように第1及び第2計測パスの交点座標が(x,y)であれば、それぞれの計測パスの計測データのxy座標が(x,y)であるデータ要素((x,y,z1a)と(x,y,z2a))を一致データポイントとして、それぞれの計測パスの計測データについて設定される。各計測データには、複数の一致データポイント(一致データ要素)が設定されるのが好ましい。
一致データポイントは、図2に示す計測パスにおける全ての交点に対応して設定される。
なお、一致データポイントは、一致データポイント設定部11cが自動的に設定してもよいし、ユーザ入力による一致データポイントの指定に基づいて、一致データポイント設定部11cが設定してもよい。

【0048】
弾性率が設定され、かつ一致データポイントが設定された複数の計測データは、変形演算部11dに与えられる。変形演算部11dは、弾性率が設定された計測データそれぞれを、その計測データの値で示される形状(外力が加わっていない場合の形状)の弾性体のデータであるとして取り扱う。つまり、計測データは弾性体形状データとして取り扱われる。
本実施形態の変形演算部11dでは、有限要素法によって、弾性体の変形を求める。有限要素法は、一般に、構造解析などで用いられる数値解析手法であり、本実施形態では、弾性変形解析を行うために有限要素法を用いる。

【0049】
変形演算部(有限要素変形解析部)11dは、変形解析のために、計測データの値で示される形状を持つ弾性体を要素分割した弾性体変形モデル(有限要素モデル)を生成する。要素分割は、複数の計測データに対応する複数の弾性体それぞれについて行われる。変形モデルを構成する要素は、例えば、梁要素(1次元要素)又はシェル要素(2次元要素)である。弾性体変形モデルを構成するそれぞれの要素は、少なくとも曲げ変形可能であり、断面二次モーメントを持つ弾性体要素である。したがって、弾性変形モデルは、曲げ変形及びその他の弾性変形が可能である。弾性体変形モデル(弾性体)の任意のポイントに加わった力によるひずみは、弾性体変形モデル(弾性体)全体に波及可能である。
梁要素及びシェル要素は有限要素法で用いられる要素である。したがって、要素分割は、有限要素法のソフトウェアに搭載された機能を用いて行うことができる。
本実施形態では、弾性体は線状であるため、図5Bに示すように、梁要素によって要素分割された弾性体変形モデルが生成される。弾性体変形モデルは、例えば、計測データの各データ要素間を、1又は複数の梁要素によって接続することによって構成することができる。

【0050】
なお、被ステッチングデータは、画像データでもよい。画像データは、2次元位置及び輝度情報からなる3次元データであり、3次元データである計測データと同様に取り扱うことができる。各画素の2次元位置及び各画素の輝度値からなる画像データは、輝度値の大小に応じた凹凸を有する面状弾性体の形状(曲面形状)を示す弾性体形状データとみなすことができる。面状弾性体の変形モデルを生成するには、シェル要素を用いた要素分割をするのが好ましい。画像データの場合においても、データ要素を梁要素で結合してもよい。この場合、有限要素モデルは網目状の面形状となる。

【0051】
図5C(a)は、シェル要素からなる曲面形状の弾性体変形モデルM1,M2を示している。
各画像データは、重複した撮影範囲(重複領域)を有する。重複領域に含まれる画素は、一致データポイント(一致データ要素)として設定される。重複領域において複数の弾性体変形モデルM1,M2が接続される。

【0052】
なお、ステップS1の設定処理で設定された物性値(弾性率等)は、弾性体変形モデルを構成する各有限要素のための要素情報として設定される。したがって、弾性体変形モデルは、設定された物性値(弾性率等)に応じた変形が可能である。

【0053】
変形演算部11dは、一致データポイントにおいても互いに値が一致しないことがある計測データ(弾性体形状データ;弾性体)同士を、設定された全ての一致データポイントにおいてデータ要素の値が一致(接続)するように設定する。一致データポイントである複数のデータ要素の値が一致すると、一致データポイントである複数のデータ要素の相対値(相対距離)はゼロになる。これにより、一致すべきデータ要素の値が一致することができる。
この設定によって、弾性変形モデルによって示される複数の弾性体同士が一致データポイントの位置において接続される。一致データポイントに対応した位置(変位位置)において複数の弾性体を接続すると、各弾性体における一致データポイントに対応した位置(変位位置)が強制変位される。この強制変位によって、弾性変形モデルによって示される各弾性体が弾性変形する。
一致データポイントに対応した弾性体の位置(変位位置)の強制変位によって、弾性体変形モデルを構成する各有限要素(梁要素)それぞれに曲げが生じ、強制変位による弾性変形は弾性体全体に波及する。この結果、強制変位による弾性変形は、接続された弾性体集合体全体に波及する。変形演算部11dは、このような弾性変形の結果、弾性体集合体が自然にとる形状(弾性体の内部応力によるエネルギーの総和が最小になる形状)を、有限要素法による変形解析により求める。
変形解析の境界条件は、全データポイントに対して過拘束とならないように行う。すなわち、拘束点を任意に選択し、6自由度(本実施形態では、並進3自由度と回転3自由度)を拘束する。また誤差がゼロのデータポイントがあればそれらを拘束することも可能である。この場合は、過拘束でも構わない。

【0054】
変形演算部11dは、データ値が一致すべき一致データポイント同士のデータ値が一致するという制約(複数の弾性体において一致データポイントに対応した変位位置同士の相対値(相対距離)がゼロになるという制約)を、変形演算の制約として与える。この制約は、物理的には、弾性体が、計測パスの交点に対応する変位位置同士において接続されて離れなくなるようにすることと等価である。かかる制約の下、変形演算部11では、接続された弾性体集合体全体が自然にとる形状を求める。
なお、複数の弾性体の任意のポイント同士を接続するように弾性変形させる設定の機能は、一般的な有限要素法のソフトウェアに搭載されており、当該設定は、かかる機能を利用することで行える。

【0055】
ここで、様々な形の竹ひごを編んで得られる竹籠の形は、竹ひごの内部応力によるエネルギーの総和が最小の状態である。竹ひごを編んで得られる竹籠の形を求めることは、相互に矛盾するデータ(本実施形態の計測データ)を交点(一致データポイント)で接続した時に最尤な結果を求めることと等価である。
そして、竹ひごを編んで得られた竹籠の形は、個々の竹ひご(弾性体)の形と弾性率がわかれば、有限要素法で求めることができる。
したがって、竹籠の形を求めるのと同様に、一致データポイントで接続した弾性体集合の形状を、弾性体形状データとして取り扱われる計測データとその弾性率に基づいて、有限要素法で求めることができる。

【0056】
一致データポイントで接続した弾性体集合の形状を示すデータ(変形後の弾性体形状データ)は、計測データとしての最尤度の解であり、真値に近い値であることが期待できる。
つまり、データのもつ全自由度における最小二乗法を実現し、より真値に近い結果を出力することができる。そして、計測データを弾性体とみなすことで、誤差による矛盾を有するデータを接続した場合であっても、その誤差による矛盾を、弾性変形によって、弾性体としての計測データ全体に配分することができ、接続領域における不整合を抑制することができる。

【0057】
さて、変形演算部11dが、複数の弾性体(計測データ)が、一致データポイントにおいて相対値がゼロとなるように設定する場合の設定例を説明する。
図3に示すように、第1計測パスの計測データ(図3(b))の一致データポイントのデータ値が(x,y,z1a)であり、第2計測パスの計測データ(図3(c))の一致データポイントのデータ値(x,y,z2a)である場合、各一致データポイント(各一致データ要素)のデータ値それぞれが、例えば、各一致データポイントのデータ値の中間値(x,y,(z1a+z2a)/2)になるように設定される。
この場合、第1計測パスの計測データ(図3(b))の一致データポイント(一致データ要素)のデータ値(x,y,z1a)が、中間値(x,y,(z1a+z2a)/2)の位置へ変位するように、弾性体とみなされた第1計測パス計測データが弾性変形し、第2計測パスの計測データ(図3(c))の一致データポイント(一致データ要素)のデータ値(x,y,z2a)が、中間値(x,y,(z1a+z2a)/2)の位置へ変位するように、弾性体とみなされた第2計測バス計測データが弾性変形する。
以上の処理により、データ値が一致すべき各一致データポイント(一致データ要素)のデータ値が一致(相対値がゼロ)し、各一致データポイントが接続されたことになる。
なお、演算の簡単化のため、データ値が一致すべき各一致データポイント(x,y,z1a),(x,y,z2a)のデータ値x,y,zのうち、ステッチングすべき方向(ステッチング方向(ここではz方向)の値z1a,z2aだけを変更する(z1a,z2aを(z1a+z2a)/2にする)ことで、データ値を一致させてもよい。この場合、元々一致している値x,yは、変更されないため、xy座標の演算を省略できる。
ただし、厳密には、ステッチング方向の値z1a,z2aが一致するように、それぞれの弾性体を弾性変形させると、それぞれの弾性体の各一致データポイントのxy座標値も元の値(x,y)からわずかにずれた値(xa’,ya’)になる。したがって、厳密な演算を行う場合には、各一致データポイントのデータ値を一致させた場合のxyz座標値は、(xa’,ya’,(z1a+z2a)/2)となるべきである。
しかし、xy座標におけるずれは、大変小さく、演算結果にほとんど影響を与えないため、xy座標値の演算を省略してもよい。すなわち、弾性体のxy座標値は、一致データポイントの接続前の値を使用し、z座標値についてのみ一致データポイントの接続後の値を使用してもよい。

【0058】
ここで、各弾性体のxy座標におけるずれは、予め各弾性体をxy方向に十分に拡大した上で、一致データポイントの接続を行って弾性体を弾性変形させ、その後に、各弾性体の大きさをもとの大きさに縮小することで、抑制することができる。xy方向への拡大は、一致データポイントの接続に伴う弾性体の変位位置のz方向の変位量よりも十分に大きくする。弾性体をxy方向に十分に拡大することで、拡大された弾性体からみて、一致データポイントの接続によって生じるz方向の変位は相対的に微小になるため、接続に伴うxy方向のずれも微小になる。このような手法により、弾性体内に働く圧縮力と引張力の影響をおさえることができ、より適切な演算が可能になる。

【0059】
また、前述の説明では、計測データに、計測パスの交点に対応するデータ要素(例えば、図3(b)の(x,y,z1a)及び図3(c)の(x,y,z2a))が存在していることを前提としていた。
ただし、計測データ(被ステッチングデータ)は、離散的なデータであるため、実際の計測対象の計測パス交点位置に完全に一致したデータ要素が存在しているとは限らない。高精度のデータステッチングが必要ない場合には、計測データに含まれるデータ要素のうち実際の計測パス交点位置の近傍のデータ要素を一致データポイントとして選択すればよいが、高精度のデータステッチングが求められる場合、より正確に一致データポイントを設定することが望まれる。

【0060】
本実施形態の一致データポイント設定部11cは、計測データが実際の計測パス交点位置に一致するデータ要素を含んでいない場合に、より正確に一致データポイントを設定する機能も有している。
図6は、より正確な一致データポイント設定の仕方を示している。ここでは、図6(a)に示すように、第1計測パスの計測データの第1データ要素(x1i,y1i,z1i)と第2データ要素(x1(i+1),y1(i+1),z1(i+1))との間、及び第2計測パスの計測データの第3データ要素(x2j,y2j,z2j)と第4データ要素(x2(j+1),y2(j+1),z2(j+1))との間に、実際の計測パス交点(一致データポイント)が存在するものとする。

【0061】
この場合、一致データポイント設定部11cは、第1計測パスの計測データ(離散データ)に基づいて、第1計測パスの計測データの第1データ要素(x1i,y1i,z1i)と第2データ要素(x1(i+1),y1(i+1),z1(i+1))との間の区間を補間する補間関数(ここでは1次補間関数を採用)を求めるとともに、第2計測パスの計測データの第3データ要素(x2j,y2j,z2j)と第4データ要素(x2(j+1),y2(j+1),z2(j+1))との間の区間を補間する補間関数(ここでは1次補間関数を最小)を求める。
そして、一致データポイント設定部11cは、2つの補間関数が、図6(a)のxy平面において交差するxy座標の位置(x,y)を、xy座標における交点として決定する。

【0062】
さらに、一致データポイント設定部11cは、第1計測パスの補間関数を用いて、交点xy座標(x,y)におけるzの値(=z1a)を求める。これにより、第1計測パスの補間関数上において、交点に対応する補間データ要素のxyz座標値=(x,y,z1a)が得られる。得られた補間データ要素(x,y,z1a)は、第1計測パスの計測データに加えられ、第1計測パスの計測データおける一致データポイントとして設定される。
同様に、一致データポイント設定部11cは、第2計測パスの補間関数を用いて、交点xy座標(x,y)におけるzの値(=z2a)を求める。これにより、第2計測パスの補間関数上において、交点に対応する補間データ要素のxyz座標値=(x,y,z2a)が得られる。得られた補間データ要素(x,y,z2a)は、第2計測パスの計測データに加えられ、第2計測パスの計測データおける一致データポイントとして設定される。
以上の処理によって、より正確な一致データポイントの設定が行える。

【0063】
このように、計測データ(被ステッチングデータ)を構成するデータ要素間で補間された補間データ要素を一致データポイントとして設定することで、計測データのサンプリング頻度にかかわらず、一致データポイントのより正確な設定が可能となる。

【0064】
そして、変形演算部11dが、設定された一致データポイント同士の相対値をゼロにする場合、図6(b)に示すように、一致データポイントとして設定された補間データ要素のデータ値が、各一致データポイントのデータ値の中間値(x,y,z3a)の位置へ変位するように、弾性体とみなされた第1計測パス計測データ及び第2計測パス計測データを弾性変形させる。

【0065】
図5Aに戻り、有限要素法による変形演算処理(ステップS3)が終了すると、変形演算部11dは、弾性変形後の弾性体集合体の弾性体形状データを、ステッチングデータとして得る。変形演算部11dは、有限要素法による変形解析の結果として、変形後の弾性体集合体の弾性体形状データのほか、変形後の弾性体集合体の内部応力を示すデータも出力する。
処理部11の検出部11eは、変形後の弾性体の内部応力データに基づいて、誤差が相対的に大きいなどの不適切な計測データ(被ステッチングデータ)又は不適切に設定された一致データポイント(弾性体の不適切な接続)を検出する検出処理を実行する(ステップS4)。

【0066】
例えば、複数の計測データのうち、ある一つの計測データに含まれる誤差が、何らかの原因により、他の計測データに含まれる誤差よりも非常に大きい場合、その誤差の大きい計測データは、他の計測データに対して大きな矛盾を内包していることになる。誤差の大きい計測データを、他の計測データと接続して、弾性変形を行わせると、誤差の大きい計測データによって無理な弾性変形が生じ、誤差の大きい計測データ(弾性体)及びその付近の内部応力が非常に大きくなる。つまり、複数の計測データ間の矛盾が大きいと、そのような計測データ同士が接続されている箇所では、内部応力が大きくなる。

【0067】
そこで、検出部11eは、内部応力データを利用し、内部応力が大きい範囲に属する計測データ又は一致データポイント(弾性体の接続位置)を検出する。これにより、不適切な計測データを除外したり、一致データポイント(弾性体の接続)の設定を外したりして、再度、変形解析を行うことで、より適切な変形解析結果を得ることができる。

【0068】
検出部11eが、内部応力の大きい範囲を検出するには、例えば、内部応力を、所定の閾値と比較し、内部応力が閾値を超えている範囲を内部応力の大きい範囲として検出できる。閾値は、例えば、弾性体集合体全体の内部応力の平均値に基づいて設定(例えば、閾値を内部応力の平均値の2倍に設定)することができる。

【0069】
処理部11の出力処理部11fは、変形後の弾性体形状データを、複数の被ステッチングデータをステッチングしたステッチングデータとして、出力部(例えば、ディスプレイなどの表示部)14に出力する。出力部14は、記憶部12にステッチングデータを出力してもよい。図7は、出力されたステッチングデータを示している。

【0070】
処理部11による処理前の計測データのRMS(Root Mean Square)は54nmであり、P-V(Peak-to-valley)は510nmである(図4参照)のに対し、本実施形態11によるステッチング処理後のステッチングデータ(変形後の弾性体形状データ)でのRMSは15.8nmであり、P-Vは100nmとなった。したがって、ステッチングデータの測定精度は、処理部11による処理前の計測データよりも大幅に向上しており、精度のよい結果が得られていることがわかる。
したがって、測定装置2の測定精度が低い場合であっても、ステッチングによって精度の高い測定結果を得ることができる。

【0071】
さらに、本実施形態では、変形演算部11dによる変形演算処理において、変形解析に一般的に用いられる有限要素法を用いたため、ステッチング装置の構築が容易である。また、有限要素法は、高速で変形解析を行うため、ステッチング処理を高速に行うことができる。例えば、処理装置3として家庭用コンピュータを用いた場合、数秒でステッチング処理における変形演算処理(ステップS3)を行うことができる。

【0072】
また、図7に示す測定結果(ステッチングデータ)は、表面が滑らかな鏡面である円形円板を計測した場合のものであるが、図8,9は、表面の一部に凸部が存在する円形円板を測定した場合の結果を示している。
図8は、図4と同様に、処理部3による処理前の計測データである。処理前の計測データでは、図8の太い黒線で示す「存在するはずの凸部」の位置に凸部が存在していることを把握するのは困難である。
一方、処理部3による処理後のステッチングデータでは、図9に示すように、凸部に対応した形状が現われており、精度の良い測定結果が得られていることがわかる。
この図9からも、本実施形態のステッチング処理によって、高精度の測定結果が得られていることが確認できる。

【0073】
また、弾性率設定部11bが、個々の計測データの精度に応じて、複数の計測データそれぞれに設定される弾性率を異ならせることで、より精度の高い測定結果を得ることができる。例えば、弾性率設定部11bは、計測データの精度が高ければ、相対的に大きい弾性率をその計測データに設定して変形し難くし、計測データの精度が低ければ、相対的に小さい弾性率をその計測データに設定して変形し易くする。つまり、信頼性の高い(精度の高い)計測データは変形し難くする一方、信頼性の低い(精度の低い)計測データは変形し易くすることで、信頼性の高い計測データが信頼性の高い計測データに沿うように変形するため、ステッチングデータの精度を高めることができる。

【0074】
例えば、図2の測定パスのうち、円環パスについては、n回繰り返し測定を行って、誤差が少なく精度(信頼度)の高い計測データが得られている一方、多数の直線パスについては、1回しか測定を行わず、相対的に精度の低い計測データしか得られていないものとする。この場合、精度の高い円環パスの計測データに設定される弾性率を、精度の低い直線パスの計測データに設定される弾性率よりもn倍大きくして、円環パスの計測データ(弾性体形状データ)を変形し難くする。
これにより、精度の低い直線パスの計測データが、精度の高い円環パスの計測データに合せて変形するため、精度の高いステッチングデータが得られる。しかも、直線パスについては測定回数を少なくできるため、測定の高速化も図られる。

【0075】
なお、計測データの精度(信頼度)については、弾性率設定部11bが、ユーザから入力部13を介して、個々の計測データの測定回数などを、精度に関するデータとして受け付けてもよいし、計測装置2から、個々の計測データの測定回数などのデータを取得してもよい。

【0076】
図10は、評価部11gによる評価処理を示している。評価処理は、計測及び撮影などの観測の仕方を評価するものである。本実施形態の評価部11gは、計測パス(計測範囲)及び撮影範囲などの観測範囲の決め方の適切さを評価する。
観測範囲の決め方の適切さを評価する処理は、互いに接続された複数の弾性体の集合に対する固有値解析によって行われる(ステップS11)。固有値の解析の結果得られた固有値(固有振動数など)が高いほど、観測範囲の決め方についてより高い評価が出力される(ステップS12)。

【0077】
互いに接続された複数の弾性体の集合は、固有値が高いと、全体的に剛性が高く、変形し難いものとなり、固有値が低ければ、全体的に剛性が低く変形し易い。弾性体の集合が固いほどデータ同士が効率よく連結され、より補正力の高い優れたデータステッチであると評価できる。したがって、データの観測範囲とその重複領域の良否の評価は、固有値解析によって観測前に事前に行える。

【0078】
図11及び図12は、線状の計測パス(観測範囲)の決め方によって、複数の計測データに対応する複数の線状弾性体を計測パスの交点で接続した弾性体集合の固有値が異なることを示している。図11(a)に示す計測パスは、図2に示した計測パスと同じものであり、多数の直線パスと直線パスの外周側の円環パスとを有している。図11(b)は、図11(a)の計測パスから円環パスを除いたものである。図11(b)の計測パスに対応した弾性体集合は、円環パスに相当する弾性体を有していないため、固有値が低く、剛性が低い。

【0079】
図12(a)~(c)も計測パスを示している。図12(a),(b),(c)の順で固有値が小さくなる。したがって、図12(a)の計測パスのデータ補正力が最も高く、図12(b),(c)の順でデータ補正力が小さくなる。

【0080】
図13は、画像データの撮影範囲(観測範囲)の決め方で、複数の画像データに対応する複数の面状弾性体を撮影範囲の重複領域で接続した弾性体集合の固有値が異なることを示している。図13(a)(b)は、それぞれ16枚の画像データを撮影範囲の重複領域において重ねた状態を示している。図13(a)(b)において、重複領域はハッチングで示している。図13(b)に示す撮影範囲の重複領域は、図13(a)における重複領域よりも大きい。したがって、図13(b)の方が固有値が高く、図13(b)に示すように設定された撮影範囲に従って得られた画像データの方が、データステッチングによるデータ補正力が高い。

【0081】
ただし、図13(b)は重複領域が大きいため、図13(b)では、16個の画像データでカバーできる範囲が、小さくなる。図13(b)では、図13(a)の16個の画像でカバーできる範囲を「A」で示した。図13(b)において、範囲Aと同様の大きさの範囲を確保しようとすれば、画像データの必要数が大きくなり、データ量が増加する。データ量の増加は、データ取得コストの増大につながる。
したがって、撮影範囲(観測範囲)の決め方の評価の際には、固有値に基づくデータ補正力だけでなく、必要となるデータ量も考慮した評価値を求めても良い。
また、計測パス(観察範囲)の設定の仕方によって、計測対象(観測対象)全体からみたデータ要素の密度が変化するため、評価値には、データ要素の密度も考慮してもよい。例えば、図12(a)(b)では、図12(a)は計測パスの数が多く、データ密度が高いのに対し、図12(b)(c)の順でデータ密度が低くなり、計測対象において計測されていない部分が増加することになる。したがって、データ重複の密度が高くなるほど、より高精度のデータとして評価することができる。

【0082】
なお、評価処理の際には、弾性体とみなされるデータは、実際の観測データであってもよいし、観測範囲に合せて作成された評価用のデータであってもよい。例えば図3(b)(c)に示すデータ構造を有する計測データについての評価用のデータは、高さ(z座標値)を全て一定値にしたものとすることができる。また、画像データについての評価用のデータは、画素値を全て一定値にしたものとすることができる。

【0083】
以下、実施形態に係るデータステッチングについて、数学的観点からの説明も加えてさらに詳細に説明する。図14は、ステッチングされる複数のデータ(第1データ及び第2データ)を示している。ここでは、説明の簡略化のため、各データ要素は、xm_nとf(xm_n)という2次元の値(離散値)を持つものとする。図14(a)に示す複数のデータは、図3に示すデータのx座標値をxm_nで表し、図3に示すデータのy座標値を省略し、図3に示すデータのz座標値をf(xm_n)で表したものに相当する。
図14(a)において、
n=1~N
N:ステッチングされるデータ(被ステッチングデータ)の数
m_n=1~M_n
M_n:n番目のデータを構成するデータ要素の数
である。

【0084】
n=1である第1データの各データ要素のx値は、xm_1で示され、第1データの各データ要素のf値は、f(xm_1)で示される。n=2である第2データの各データ要素のx値は、xm_2で示され、第2データの各データ要素のf値は、f(xm_2)で示される。

【0085】
図14(a)に示すように、第1データ及び第2データは、離散データである。これらの離散的な第1データ及び第2データは、ステッチングされる際には、各データ毎に、連続的な形状の弾性体とみなされる。各弾性体の形状は、各データを構成するデータ要素を示す値(xm_n,f(xm_n))を結ぶ連続的な形状となる。
図14(b)は、データ毎に、データ要素を線で結んだ線形状を示している。離散的な第1データに対応した弾性体の形状は、関数f(x)によって表される。離散的な第2データに対応した弾性体の線形状は、関数f(x)によって表される。以下、関数f(x)は、n番目のデータを弾性体の形状とみなした場合における当該弾性体の形状を示す。

【0086】
ここで、図14(b)は、各データ要素を滑らかに曲がった線で結んだ曲線形状を示す。一方、図14(c)は、各データ要素を直線で結んだ折れ線形状を示す。ステッチングされるデータを弾性体形状データとしてみなす場合、弾性体の形状としては、図14(b)を観念してもよいし、図14(c)を観念してもよい。後述のように、弾性変形を利用したデータステッチングでは、各データ要素の変位u(x)を扱えれば十分であるため、弾性体の形状は、図14(b)であっても、図14(c)であっても等価である。なお、弾性体変形モデルが梁要素からなる有限要素モデルである場合、データ要素間は直線形状の梁要素によって接続されるため、弾性体変形モデルの形状は、図14(c)のようになる。
ただし、ここでは、数学的観点からの説明の便宜上、弾性体の形状は、図14(b)に示されるように滑らかな曲線でデータ要素を結んだ形状とする。

【0087】
図15は、一般化のため、第1データに対応する形状関数をf(x)で示し(i=1)、第2データに対応する形状関数をf(x)で示している(j=2)。なお、i≠jである。
ここで、第1データの一致データポイントは、f(x2_i)に設定され、第2データの一致データポイントは、f(x2_j)に設定されるものとする。一致データポイントに対応する変位位置での2つの弾性体の接続は、数学的には、f’(x2_i)=f’(x2_j)となるように、f(x2_i)とf(x2_j)とを変位させることである。なお、f’(x2_i)及びf’(x2_j)は、それぞれ、f(x2_i)及びf(x2_j)の変位後の値を示す。
すなわち、一般化したステッチング条件は、次の式(1)のとおりである。
【数1】
JP0006508723B2_000002t.gif

【0088】
(x2_i)からf’(x2_i)への変位量をu(x2_i)と表し、f(x2_j)からf’(x2_j)への変位量をu(x2_j)と表した場合、式(1)に示すステッチング条件は、次のように表される。
【数2】
JP0006508723B2_000003t.gif

【0089】
式(1)及び式(2)に示すステッチング条件が、変位位置(一致データポイント)において、複数の弾性体を互いに接続することに相当する。

【0090】
(x2_i)とf(x2_j)を弾性体とみなす場合、f’(x2_i)=f’(x2_j)となるように、f(x2_i)とf(x2_j)とを変位させると、関数f(x),f(x)によって示される形状は全体的に、変化する。
図16は、変形後の弾性体の形状に対応する関数f’(x),f’(x)を示している。関数f’(x)は、2つの弾性体の接続に伴って変形した関数f(x)を示している。関数f’(x)は、2つの弾性体の接続に伴って変形した関数f(x)を示している。
つまり、以下の式(3)(4)のとおりである。
【数3】
JP0006508723B2_000004t.gif

【数4】
JP0006508723B2_000005t.gif

【0091】
図17に示すように、u(x)は、f(x)からf’(x)への変位量を示す関数(変位関数)であり、u(x)は、f(x)からf’(x)への変位量を示す関数(変位関数)である。
ここで、上記ステッチング条件を満たすような関数f(x),f(x)の変形の仕方は、無数に存在する。したがって、変位関数u(x),u(x)も、無数に存在する。したがって、変位関数u(x),u(x)の最適化が必要である。
変位関数の最適化のため、本実施形態では、関数f(x),f(x)から関数f’(x),f’(x)への変形は、関数f(x),f(x)によって示される形状を持つ弾性体の弾性変形であると考える。互いに接続された複数の弾性体からな弾性体集合は、曲げによる弾性エネルギーが最小となる形状をとる。関数の変形が弾性変形であると考えることで、弾性変形を解析する手法によって、変位関数u(x),u(x)を最適化することができる。
曲げによる弾性エネルギーの最小化は、数学的に表すと、変位関数u(x),u(x)の曲率の積分値を最小化することと等価である。したがって、弾性変形の概念を導入した場合における変位関数の最適化は、例えば、以下の式(5)のように定式化される。
【数5】
JP0006508723B2_000006t.gif

【0092】
式(5)では、変位関数u(x)(n=1~N)それぞれの二階微分値(曲率)を二乗したものの積分値の総和を、最小化している。本実施形態において、「弾性変形を求める」という処理は、式(5)に従った概念によって変位関数を最適化することによって行うことができる。先に説明した有限要素法も、式(5)に従った概念に基づく処理の一つである。有限要素法は、曲げによる弾性エネルギーが最小となる弾性体形状を求める手法として優れている。したがって、有限要素法は、弾性変形を求める手法として非常に好適である。

【0093】
複数の弾性体毎に異なる弾性率が設定される場合の最適化は式(6)のように定式化される。
【数6】
JP0006508723B2_000007t.gif

式(6)では、変位関数u(x)(n=1~N)それぞれの二階微分値(曲率)に重みwを乗じている。データの精度(信頼度)が高いほど、弾性率、すなわち重みwを大きくする。これにより、高い精度を持つデータに対応した弾性体に対応する変位関数の曲率がより大きく評価される(弾性体が変形しにくい)ことになる。

【0094】
最適化された(弾性変形した)変位関数u(x)(n=1~N)が求まると、式(7)に基づき、元のデータf(xm_n)と最適化された変位関数u(x)とから、fn’(xm_n)が得られる。図18に示すように、fn’(x)は、弾性変形した弾性体の形状を示している。
【数7】
JP0006508723B2_000008t.gif

【0095】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ステッチング処理の対象となる被ステッチングデータは、計測データに限定されるものではなく、画像データ(衛星写真データ、パノラマ写真データなど)など、任意のデータであってもよい。なお、画像がカラー画像である場合、RGBの色ごとにデータステッチングを行えばよい。
また、有限要素法は、2次元以下のデータにも適用可能であるから、当然に、被ステッチングデータは2次元以下のデータであってもよい。
さらに、被ステッチングデータは、4次元以上のデータであってもよい。被ステッチングデータが4次元以上のデータである場合、被ステッチングデータを4次元以上の弾性体形状データとみなすとともに、有限要素法をデータの次元数に応じた次元に拡張したものを用いればよい。
つまり、被ステッチングデータは、任意のn次元(nは1以上の整数)のデータでよい。

【0096】
また、被ステッチングデータに設定される弾性率は、次元毎に異なるものであってもよい。例えば、3次元座標と時間からなる4次元データの場合、座標と時間とは性質が異なるため、座標の変形と時間の変形が異なるように、座標に関する弾性率と時間に関する弾性率とを異ならせても良い。

【0097】
被ステッチングデータが画像データである場合、一致データポイントは、ユーザ入力による指定で設定されてもよいし、複数の画像中の共通する物体を画像処理により抽出し、抽出された箇所を、一致データポイントとして設定してもよい。

【0098】
変形解析の手法は、有限要素法に限定されるものではなく、変形を数値解析によって求めることができる他の手法であってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 ステッチング装置
2 データ取得部
3 処理装置
11 処理部
11a データ取得処理部
11b 弾性率設定部
11c 一致データポイント設定部
11d 変形演算部
11e 検出部
11f 出力処理部
11g 評価部
12 記憶部
13 入力部
14 出力部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5A】
4
【図5B】
5
【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
9
【図9】
10
【図10】
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【図11】
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【図12】
13
【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
19