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明細書 :ガス分離システム及びガス分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-089577 (P2018-089577A)
公開日 平成30年6月14日(2018.6.14)
発明の名称または考案の名称 ガス分離システム及びガス分離方法
国際特許分類 B01D  53/047       (2006.01)
B01J  20/22        (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
B01J  20/34        (2006.01)
C07C   7/13        (2006.01)
C07C  11/04        (2006.01)
FI B01D 53/047
B01J 20/22 A
B01J 20/28 Z
B01J 20/34 E
C07C 7/13
C07C 11/04
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2016-235111 (P2016-235111)
出願日 平成28年12月2日(2016.12.2)
発明者または考案者 【氏名】クリストフ ラヴェン
【氏名】パトリック ジネ
【氏名】北川 進
【氏名】松田 亮太郎
出願人 【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000729、【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4D012
4G066
4H006
Fターム 4D012BA01
4D012CA20
4D012CB05
4D012CD07
4D012CE01
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF10
4D012CG01
4D012CJ04
4G066AB03B
4G066AB05B
4G066AB06B
4G066AB07B
4G066AB09B
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066AB19B
4G066AB21B
4G066AB24B
4G066BA12
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA36
4G066CA51
4G066DA05
4G066FA37
4G066GA14
4H006AA02
4H006AD17
4H006BC52
要約 【課題】 複数種の炭化水素ガスを高い選択性でもって分離可能なガス分離システム及びガス分離方法を提供すること。
【解決手段】 2種以上の炭化水素ガスの混合ガスから1種以上の炭化水素ガスを分離するガス分離システムであって、対向する金属イオン含有平面配位子と、該平面配位子間に配位する柱状配位子とによって規定される細孔を有する多孔質有機金属錯体と、少なくとも前記混合ガスの圧力を制御する制御部とを備え、前記圧力の制御により前記炭化水素ガスの前記多孔質有機金属錯体への吸着又は脱着を制御するガス分離システム。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
2種以上の炭化水素ガスの混合ガスから1種以上の炭化水素ガスを分離するガス分離システムであって、
対向する金属イオン含有平面配位子と、該平面配位子間に配位する柱状配位子とによって規定される細孔を有する多孔質有機金属錯体と、
少なくとも前記混合ガスの圧力を制御する制御部と
を備え、
前記圧力の制御により前記炭化水素ガスの前記多孔質有機金属錯体への吸着又は脱着を制御するガス分離システム。
【請求項2】
前記平面配位子は、非共有電子対を有する極性構造を含む請求項1に記載のガス分離システム。
【請求項3】
前記極性構造は、-CO-、-NH-、-N=、-O-及び-CNの少なくとも1つである請求項2に記載のガス分離システム。
【請求項4】
対向する前記極性構造間の距離が、6~15Åである請求項2又は3に記載のガス分離システム。
【請求項5】
前記柱状配位子が下記式(1)~(4)のいずれかで表される請求項1~4のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【化1】
JP2018089577A_000016t.gif
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、フェノキシ、ベンジル、フェネチル、カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基である。R、R、R及びRがそれぞれ複数ある場合、それらは互いに同一又は異なっていてもよい。
、R及びRは、それぞれ独立して単結合であるか、又は不飽和結合を含む2価の連結基を示す。
pは1~4、qは1~4,rは1~4,sは1~3である。
Xは、N、P、N→O又はP→Oを示す。)
【請求項6】
前記混合ガスは、互いにpKaが10以上異なる炭化水素ガスを含む請求項1~5のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【請求項7】
前記炭化水素ガスは、メタン、エタン、エチレン及びアセチレンの少なくとも2種である請求項1~6のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記圧力を、分離される炭化水素ガス以外の炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体に吸着されるように加圧する吸着プロセスと、
前記圧力を、前記吸着された炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体から段階的に脱着されるように減圧する脱着プロセスとを実行する請求項1~7のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【請求項9】
2種以上の炭化水素ガスの混合ガスから1種以上の炭化水素ガスを分離するガス分離方法であって、
対向する金属イオン含有平面配位子と、該平面配位子間に配位する柱状配位子とによって規定される細孔を有する多孔質有機金属錯体を準備する工程と、
前記混合ガスの圧力を、分離される炭化水素ガス以外の炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体に吸着されるように加圧する吸着工程と
を含むガス分離方法。
【請求項10】
前記吸着工程後、前記混合ガスの圧力を、前記吸着された炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体から段階的に脱着されるように減圧する脱着工程をさらに含む請求項9に記載のガス分離方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離システム及びガス分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンは工業的に水蒸気分解又は熱分解によって副産物としてのアセチレン(約1%の濃度)とともに生成される。エチレンは、ポリマーの製造(チーグラー・ナッタ反応型)および他の有用な化学物質の主要な化学物質である。アセチレンはエチレンの重合に用いられるチーグラー・ナッタ触媒にとって主な触媒毒として作用する。また、アセチレンの存在があるため、重合触媒との爆発性の金属アセチリドの形成の理由により、安全性の問題が増大する。したがって、高品位のエチレンの生産は、化学産業にとって高度に有意な関心事である。通常、重合プロセスにおいてアセチレンの有意な影響を受けないようにするためには、アセチレン濃度が数ppm未満でなければならないことが認められている。
【0003】
アセチレン不純物からのエチレン精製のために、4,4’-ビピリジン銅(II)正方格子がこれらの間の無機イオン([SiF2-)によって接続された有機金属フレームワーク材料が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Cui, X.; Chen, K.; Xing, H.; Yang, Q.; Krishna, R.; Bao, Z.; Wu, H.; Zhou, W.; Dong, X.; Han, Y.; Li, B.; Ren, Q.; Zaworotko, M. J.; Chen, B. Science2016, 353, p141-4.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記材料では、実験的条件で約40という選択性が得られているものの、選択性に改善の余地がある。また、工業的な応用を考慮すると、上記2成分ガスを含めた常温で気体の低級炭化水素ガスの分離精製までの展開が望まれるものの、これらへの展開は試みられていない。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、複数種の炭化水素ガスを高い選択性でもって分離可能なガス分離システム及びガス分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは鋭意検討したところ、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、2種以上の炭化水素ガスの混合ガスから1種以上の炭化水素ガスを分離するガス分離システムであって、
対向する金属イオン含有平面配位子と、該平面配位子間に配位する柱状配位子とによって規定される細孔を有する多孔質有機金属錯体と、
少なくとも前記混合ガスの圧力を制御する制御部と
を備え、
前記圧力の制御により前記炭化水素ガスの前記多孔質有機金属錯体への吸着又は脱着を制御する。
【0009】
当該ガス分離システムでは、ガス分離(吸着)剤として、対向する金属イオン含有平面配位子と、該平面配位子間に配位する柱状配位子とによって規定される細孔を有する多孔質有機金属錯体を用いている。細孔のサイズは、平面配位子間に配位する柱状配位子のサイズ(特に、長さ)に応じて変更することができる。これにより、分離対象とする炭化水素ガスの種類(すなわち、サイズ)に応じて適切な細孔サイズを準備することができ、いわゆる分子ふるい効果による選択的な分離吸着が可能となる。また、金属イオンを含む平面配位子では、特に金属イオンへの配位を惹起するために比較的電子リッチとなっており、分極が相対的に強く生じている。平面配位子は、柱状配位子挟むように対向して配位しているので、分極部位も対向することになる。比較的強く分極している炭化水素ガス(例えば、アセチレンやエチレン等)の場合には、対向する分極部位間にてファンデアワールス力に基づく相互作用がもたらされ、その結果、分極した炭化水素ガスの細孔内への取り込みが促進される。このように、上記多孔質有機金属錯体では、炭化水素ガスの分極の度合いによる選択性、すなわち化学ふるい効果も発揮される。当該ガス分離システムでは、分子ふるい効果及び化学ふるい効果の両方を発揮する多孔質有機金属錯体を利用して、混合ガスの圧力の制御により炭化水素ガスの多孔質有機金属錯体への吸着又は脱着を制御及び促進することにより、比較的低圧にて高い選択性でもってガス分離を行うことができる。また、炭化水素ガスの種類に応じて細孔サイズ及び平面配位子の分極度を変更することができるので、分離対象としてアセチレンやエチレンにとどまらず、メタン、エタン、プロパン等の炭化水素ガスにまで適用範囲を広げることができ、工業的な応用を図ることができる。
【0010】
前記平面配位子は、非共有電子対を有する極性構造を含むことが好ましい。これにより平面配位子と炭化水素ガスとの相互作用(ファンデアワールス力)を高めることができ、細孔内への炭化水素ガスの取り込みをより効率的に促進させることができる。
【0011】
前記極性構造は、平面配位子と分離対象ガスとの相互作用の向上や分子設計容易性の点で、-CO-、-NH-、-N=、-O-及び-CNの少なくとも1つであることが好ましい。
【0012】
対向する前記極性構造間の距離が、6~15Åであることが好ましい。この範囲で極性構造間距離(細孔サイズに相関する。)を与えることにより、分離対象の炭化水素ガスに応じた分離システム設計を行うことができ、ガス分離の選択性を向上させることができる。
【0013】
前記柱状配位子が下記式(1)~(4)のいずれかで表されることが好ましい。
【化1】
JP2018089577A_000003t.gif
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、フェノキシ、ベンジル、フェネチル、カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基である。R、R、R及びRがそれぞれ複数ある場合、それらは互いに同一又は異なっていてもよい。
、R及びRは、それぞれ独立して単結合であるか、又は不飽和結合を含む2価の連結基を示す。
pは1~4、qは1~4,rは1~4,sは1~3である。
Xは、N、P、N→O又はP→Oを示す。)
【0014】
上記構造を有する柱状配位子を用いることで、多孔質有機金属錯体の細孔サイズを所望の値に制御しやすくなるとともに、炭化水素ガスとの相互作用を高めることができ、炭化水素ガスの細孔への取り込みをさらに促進することができる。
【0015】
前記混合ガスは、互いにpKaが10以上異なる炭化水素ガスを含むことが好ましい。炭化水素ガス分子中の水素原子のpKaが互いに10以上異なれば、炭化水素ガスにおける分極度合いが大きく相違することになり、これにより各炭化水素ガスと多孔質有機金属錯体との相互作用にも差が生じ、より効率的かつ選択的なガス分離を行うことができる。
【0016】
前記炭化水素ガスは、メタン、エタン、エチレン及びアセチレンの少なくとも2種であることが好ましい。当該ガス分離システムによれば、工業的に高純度での分離精製が望まれるこれらの炭化水素ガスを好適に分離対象とすることができる。
【0017】
前記制御部は、前記圧力を、分離される炭化水素ガス以外の炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体に吸着されるように加圧する吸着プロセスと、前記圧力を、前記吸着された炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体から段階的に脱着されるように減圧する脱着プロセスとを実行することが好ましい。吸着プロセスでは、主に分子ふるい効果により、相対的に小さいサイズ(細孔サイズに適合するサイズ)の炭化水素ガスを多孔質有機金属錯体に取り込ませつつ、相対的に大きいサイズの炭化水素ガスを分離回収することができる。あるいは、混合ガスが、相対的にサイズの小さい炭化水素ガスのみを含む場合であっても、化学ふるい効果により、多孔質有機金属錯体との相互作用の強い炭化水素ガスを細孔内に取り込みつつ、相互作用の弱い炭化水素ガスを分離回収することができる。続く脱着プロセスでは、主に化学ふるい効果により、多孔質有機金属錯体との相互作用(ファンデアワールス力)が小さい炭化水素ガスから順に脱着を進行させることができ、複数種の炭化水素ガスの段階的かつ選択的な分離回収が可能となる。このような制御により、従来では異なる分離設備で行っていた複数種の炭化水素ガスの分離回収を同一系内にて行うことができ、さらなる生産性の向上を図ることができる。
【0018】
本発明はまた、2種以上の炭化水素ガスの混合ガスから1種以上の炭化水素ガスを分離するガス分離方法であって、
対向する金属イオン含有平面配位子と、該平面配位子間に配位する柱状配位子とによって規定される細孔を有する多孔質有機金属錯体を準備する工程と、
前記混合ガスの圧力を、分離される炭化水素ガス以外の炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体に吸着されるように加圧する吸着工程と
を含むガス分離方法に関する。
【0019】
当該ガス分離方法では、吸着工程において分子ふるい効果及び化学ふるい効果を備える所定の多孔質有機金属錯体を用いているので、圧力に応じて、相対的に小さいサイズ(細孔サイズに適合するサイズ)の炭化水素ガスを多孔質有機金属錯体に取り込ませつつ、相対的に大きいサイズの炭化水素ガスを分子ふるい効果にて分離回収することができる。また、混合ガスが、相対的にサイズの小さい炭化水素ガスのみを含む場合であっても、化学ふるい効果により、多孔質有機金属錯体との相互作用の強い炭化水素ガスを細孔内に取り込みつつ、相互作用の弱い炭化水素ガスを分離回収することができる。
【0020】
当該ガス分離方法は、前記吸着工程後、前記混合ガスの圧力を、前記吸着された炭化水素ガスが前記多孔質有機金属錯体から段階的に脱着されるように減圧する脱着工程をさらに含むことが好ましい。脱着工程では、主に化学ふるい効果により、多孔質有機金属錯体との相互作用(ファンデアワールス力)が小さい炭化水素ガスから順に脱着を進行させることができ、複数種の炭化水素ガスの段階的かつ選択的な分離回収が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス分離システムの概略を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)は、高圧でのアセチレン(黒塗り三角)、エチレン(灰色逆三角)、エタン(薄灰色三角)のガス吸着(中塗り印)及び脱着(中抜き印)等温線であり、(b)は、1%アセチレンC・C混合物についての算出した対応する選択性(IAST理論)である。
【図3】T=298KでのC・C混合物を用いた際のCPL-1吸着剤に吸着された全ガス吸着量(黒丸)、エチレン(菱形)及びエタン(黒三角)の吸着量、並びにGCによって決定された組成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。なお、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。

【0023】
<ガス分離システム及びガス分離方法>
本実施形態のガス分離システムは、ガス分離(吸着)剤としての多孔質有機金属錯体と、混合ガスの少なくとも圧力を制御する制御部とを備える。

【0024】
(多孔質有機金属錯体)
多孔質有機金属錯体は、対向する金属イオン含有平面配位子と、該平面配位子間に配位する柱状配位子とによって規定される細孔を有する。平面配位子としては、含窒素芳香族多価カルボン酸配位子が好ましく、柱状配位子としては、含窒素又は含リン芳香族二価配位子が好ましい。前記含窒素芳香族多価カルボン酸配位子の窒素原子と2つのカルボン酸基は、前記金属イオンに平面的に配位する。また、前記含窒素又は含リン芳香族二価配位子は、前記金属イオンにアキシャル方向(前記平面に垂直な方向)から配位し、平面配位子間で橋掛けするように配位する。

【0025】
(金属イオン)
平面配位子に含まれる(配位する)金属イオンとしては、銅、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、鉛、マンガンが挙げられ、好ましくは銅、カドミウムであり、より好ましくは銅である。

【0026】
(柱状配位子)
柱状配位子を形成する含窒素又は含リン芳香族二価配位子としては、芳香環内の2個の窒素原子が分子内で実質的に点対照の位置にある含窒素又は含リン芳香環を有する配位子が好適に挙げられ、例えば4,4’-ビピリジル、3,3’-ビピリジル、ピラジンなどが挙げられる。含窒素又は含リン芳香族二価配位子は、配位する芳香環の2個の窒素原子の向きが互いに実質的に点対照の位置をとる限り、2つの基の間に任意のスペーサー基を挿入したものであってもよい。柱状配位子としては、含窒素芳香族二価配位子が好ましい。

【0027】
好ましい含窒素または含リン芳香族二価配位子を、以下の式(1)~(4)に示す。

【0028】
【化2】
JP2018089577A_000004t.gif

【0029】
上記式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、フェノキシ、ベンジル、フェネチル、カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基である。R、R、R及びRがそれぞれ複数ある場合、それらは互いに同一又は異なっていてもよい。

【0030】
、R及びRは、それぞれ独立して単結合であるか、又は不飽和結合を含む2価の連結基を示す。不飽和結合を含む2価の連結基としては、-N=N-(トランス型が好ましい。)、-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-または-CH=CH-CH=CH-CH=CH-(但し、二重結合はトランス型であることが好ましい。)等の二重結合を有する基、-C≡C-、-C≡C-C≡C-、-C≡C-C≡C-C≡C-などの三重結合を有する基、下記式(11)、(12)で表される基などが挙げられる。

【0031】
【化3】
JP2018089577A_000005t.gif
(式中、ZはCRまたはNを表す。Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基、フェネチル基、カルボキシル基,シアノ基またはニトロ基である。)

【0032】
pは1~4、qは1~4,rは1~4,sは1~3である。

【0033】
Xは、N、P、N→O又はP→Oを示す。XはN(窒素原子)が好ましい。

【0034】
中でも、柱状配位子は、下記式(1-1)、(2-1)~(2-3)で表されることが特に好ましい。なお、「CPL-1」等は、平面配位子としてのピラジン-2,3-ジカルボン酸と、各柱状配位子とで形成される多孔質有機金属錯体の略号であり、本明細書全体を通じて用いられる。
【化4】
JP2018089577A_000006t.gif

【0035】
(平面配位子)
平面配位子は、非共有電子対を有する極性構造を含むことが好ましい。これにより平面配位子と炭化水素ガスとの相互作用(ファンデアワールス力)を高めることができ、細孔内への炭化水素ガスの取り込みをより効率的に促進させることができる。

【0036】
前記極性構造は、平面配位子と分離対象ガスとの相互作用の向上や分子設計容易性の点で、-CO-、-NH-、-N=、-O-及び-CNの少なくとも1つであることが好ましく、-CO-がより好ましい。

【0037】
極性構造は、化学的条件に基づいて特定のガスの選択的吸着を可能にする機能を有する。代表的な吸着部位(すなわち極性構造)は、金属イオンに配位しないカルボニル基である。細孔の内部を修飾するこれらのフリーのルイス塩基の存在は、相対的に強いルイス酸化合物にとっての優先的な吸着サイトを付与する。例えばアセチレンプロトンは、他の低級炭化水素ガスよりも有意により酸性であり(部分的に正に帯電しており)、このことがアセチレン分子についての選択性を誘起する。

【0038】
平面配位子を形成する含窒素芳香族多価カルボン酸配位子は、好ましくは芳香環に2個以上、好ましくは2個のCOOH基が隣接する位置(オルト位)に結合した化合物である。また、芳香環は、5員環又は6員環の単環、二環また三環系の骨格を有する。具体的には、ピラジン、ピリジン、ピロ-ル、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、インドール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、ナフチリジンなどのように窒素原子を1~3個有する単環、二環また三環系の骨格が例示される。2つのカルボキシル基は、含窒素芳香環基の隣接位置に、かつ、芳香環内の窒素原子に隣接する位置(窒素原子からみてオルト位とメタ位)に有するのが好ましい。好ましい芳香環はピラジン、ピリジン、キノキサリンが挙げられ、これら2以上の芳香環はCO、O、CHなどの基で連結されてもよい。

【0039】
芳香環に対する2個のCOOH基の結合位置は、相互にオルト位(相互に隣接する位置)が好ましい。例えば、芳香環がピラジンの場合には、2,3-ピラジンジカルボン酸であり、キノキサリンの場合には、2,3-キノキサリンジカルボン酸である。

【0040】
含窒素芳香族多価カルボン酸配位子のCOOH基は、芳香環に直接結合してもよく、-CH-、-CO-、-CH(OH)-、-CHCH-などの適当なリンカー(スペーサー)を介して結合してもよい。好ましい含窒素芳香族多価カルボン酸配位子は、COOH基が芳香環に直接結合している。

【0041】
好ましい含窒素芳香族多価カルボン酸配位子を、以下の式(5)~(9)に示す。

【0042】
【化5】
JP2018089577A_000007t.gif

【0043】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基、フェネチル基、カルボキシル基,シアノ基またはニトロ基である。Rが複数ある場合、それらは互いに同一又は異なっていてもよい。
n1は1~2、n2は1~3、n3は1~4の整数を示す。)

【0044】
なお、本明細書において、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのC1~C4の直鎖又は分枝を有するアルキル基が挙げられる。

【0045】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。

【0046】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などのC1~C4の直鎖又は分枝を有するアルコキシ基が挙げられる。

【0047】
ヒドロキシアルキル基は、アルキル基の1~3個、好ましくは1~2個、特に1個の水
素原子がOH基で置換された基を示す。

【0048】
アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基などのC1~C5の直鎖又は分枝を有するアルカノイル基が挙げられる。

【0049】
多孔質有機金属錯体において、対向する極性構造間の距離は、6~15Åであることが好ましい。この範囲で極性構造間距離(細孔サイズに相関する。)を与えることにより、分離対象の炭化水素ガスに応じた分離システム設計を行うことができ、ガス分離の選択性を向上させることができる。

【0050】
低級炭化水素ガスの相違点は、沸点や酸性度以外では、それらの動的直径で表されるサイズである。表1に示すように、低級炭化水素ガスの動的直径は互いに近似する。

【0051】
【表1】
JP2018089577A_000008t.gif

【0052】
本発明の実施形態では、表2に示すように、細孔のサイズおよび細孔内の2つの遊離のカルボニル酸素との間の距離が調整されることが好ましい。

【0053】
【表2】
JP2018089577A_000009t.gif

【0054】
多孔質有機金属錯体の断面でのO-O距離は、アセチレンの長さと比較される。例えば、柱状配位子であるCPL-1のO-O距離は、水素結合相互作用を考慮すると2つのC分子を有するには短すぎる。より大きい細孔を有する材料については、O-O距離は、2つの分子を有するのに十分である。細孔のサイズは、直接、ガスの吸着量に影響を与えまる。例えば、CPL-1では、1つのアセチレンの分子が2つの水素結合(各プロトンについて1つの水素結合)を介して材料内に格納されていることが確認され、単位細孔当たりアセチレンを最大で一分子(1mol・mol-1)吸着する。より大きな細孔を有するCPLの場合、アセチレン容量は298Kにおいて2mol・mol-1であり、より大きな炭化水素も、選択性が減少するものの、細孔内に吸着させることができる。

【0055】
(多孔質有機金属錯体の合成方法)
本実施形態の多孔質有機金属錯体は、例えば、Kitagawa, S.; Matsuda, R. Coord. Chem. Rev. 2007, 251, 2490.に記載の方法と同様にして、含窒素芳香族多価カルボン酸配位子またはその塩、金属イオンの無機塩及び含窒素又は含リン芳香族二価配位子を溶液中で反応させることにより合成できる。

【0056】
平面配位子として、ピラジン-2,3-ジカルボン酸(Hpzdc)、金属イオンとして銅を用いた際の多孔質有機金属錯体の合成スキームを下記に模式的に示す。

【0057】
【化6】
JP2018089577A_000010t.gif

【0058】
本実施形態の多孔性有機金属錯体の製造に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の飽和炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン等の有機溶媒、水等が挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を混合して使用することができる。

【0059】
反応温度は、通常-20~180℃程度であり、好ましくは0℃~150℃である。

【0060】
(制御部)
図示しない制御部は、少なくとも混合ガスの圧力を制御する。制御部は、混合ガスの圧力以外に、温度、流量等を制御することが好ましい。制御部としては、公知のCPUやMPU等の電算機器を用いることができる。

【0061】
本実施形態のガス分離システムでは、圧力の制御により炭化水素ガスの多孔質有機金属錯体への吸着又は脱着を制御する。分子ふるい効果及び化学ふるい効果の両方を発揮する多孔質有機金属錯体を利用して、混合ガスの圧力の制御により炭化水素ガスの多孔質有機金属錯体への吸着又は脱着を制御及び促進することにより、比較的低圧にて高い選択性でもってガス分離を行うことができる。

【0062】
図1は、本実施形態に係るガス分離システムの概略を模式的に示す説明図である。以下、図1に示されたシステムにおける代表的なガス分離の手順を説明するが、これに限定されるものではない。

【0063】
(前処理)
使用される多孔質有機金属錯体の粉末試料をクライオスタットシステムにセットし、排気して(<10-2Pa)、373Kで12時間加熱する。加熱の12時間後、温度を自動的に298Kに移行させる。
(1)V10、V4、V5、V7を開放する。
(2)制御部をオンにしポンプと温度とを制御する。
(3)12時間後、V4、V5、V7を閉じる。

【0064】
(ガス混合)
ターゲット組成のガス混合物を、マスフローコントローラ(MFC)1,2を制御することにより調製する。面積比率をガスクロマトグラフィーによって追跡する。
(4)MFC1,2はオフで、V2、V6、V7、V8、V9を開放し、ポンプをオンにする。
(5)一旦、<10-2Paとし、ポンプをオフにしてV7を閉じる。
(6)ガス混合物については、V2を閉じ、MFC1,2をオンにして所望のガス流量とし、最大1atmまでエリア1に混合物を充填する。
(7)V1を開放し(ベント)、GC注入によってガス組成を制御する。
(8)安定組成が得られると、V6、V8、V9を閉じ、V2、V1を閉じ、MFC1,2をオフにする。

【0065】
(吸着プロセス)
ガス混合物の調製後、サンプルエリアおよびガス混合エリアを接続し、吸着平衡を1時間保持する。
(9)V4、V5を開放する。
(10)1時間後、V4、V5を閉じる。

【0066】
(非吸着相(分離ガス)の特徴付け)
平衡時間(1時間)後、非吸着相をガスクロマトグラフィーによって特徴付ける。
(11)平衡準備として、V2、V6、V7、V8、V9を開放し、ポンプをオンにする。
(12)一旦、<10-2Paとし、ポンプをオフにしてV2、V6、V7、V8、V9を閉じる。
(13)V3を開放してから閉じ、GCによるガス分析を行う。

【0067】
<ガス分離方法>
本実施形態に係るガス分離方法は、多孔質有機金属錯体を準備する工程と、吸着工程とを含む。多孔質有機金属錯体については上述のとおりであるので、以下は吸着工程について説明する。

【0068】
(吸着工程)
吸着工程では、混合ガスの圧力を、分離される炭化水素ガス以外の炭化水素ガスが多孔質有機金属錯体に吸着されるように加圧する。

【0069】
本実施形態のガス分離方法では、吸着工程において分子ふるい効果及び化学ふるい効果を備える所定の多孔質有機金属錯体を用いているので、圧力に応じて、相対的に小さいサイズ(細孔サイズに適合するサイズ)の炭化水素ガスを多孔質有機金属錯体に取り込ませつつ、相対的に大きいサイズの炭化水素ガスを分子ふるい効果にて分離回収することができる。また、混合ガスが、相対的にサイズの小さい炭化水素ガスのみを含む場合であっても、化学ふるい効果により、多孔質有機金属錯体との相互作用の強い炭化水素ガスを細孔内に取り込みつつ、相互作用の弱い炭化水素ガスを分離回収することができる。

【0070】
加圧した混合ガスの圧力は、分離対象とする炭化水素ガスの種類に応じて設定することができ、好ましくは0.05~5MPaであり、より好ましくは0.1~3MPaであり、さらに好ましくは0.2~2MPaであり、なおさらに好ましくは0.3~1MPaであり、特に好ましくは0.3~0.8MPaである。

【0071】
吸着工程における混合ガスの温度は特に限定されず、室温(23℃)で十分な分離選択性が得られる。

【0072】
(脱着工程)
本実施形態では、吸着工程後、混合ガスの圧力を、吸着された炭化水素ガスが多孔質有機金属錯体から段階的に脱着されるように減圧する脱着工程をさらに含むことが好ましい。脱着工程では、主に化学ふるい効果により、多孔質有機金属錯体との相互作用(ファンデアワールス力)が小さい炭化水素ガスから順に脱着を進行させることができ、複数種の炭化水素ガスの段階的かつ選択的な分離回収が可能となる。

【0073】
減圧後の混合ガスの圧力は、脱着対象である炭化水素ガスの種類に応じて設定することができる。例えば、脱着対象がアセチレンである場合、その分圧が、好ましくは0.1~20kPaであり、より好ましくは、0.5~18kPaであり、さらに好ましくは1~16kPaであるように混合ガスの圧力を調整すればよい。

【0074】
混合ガスとしては、互いにpKaが10以上異なる炭化水素ガスを含むことが好ましい。炭化水素ガス分子中の水素原子のpKaが互いに10以上異なれば、炭化水素ガスにおける分極度合いが大きく相違することになり、これにより各炭化水素ガスと多孔質有機金属錯体との相互作用にも差が生じ、より効率的かつ選択的なガス分離を行うことができる。

【0075】
炭化水素ガスは、メタン、エタン、エチレン及びアセチレンの少なくとも2種であることが好ましい。本実施形態のガス分離システムによれば、工業的に高純度での分離精製が望まれるこれらの炭化水素ガスを好適に分離対象とすることができる。

【0076】
本実施形態では、全ての炭化水素ガスを脱着させた後、多孔質有機金属錯体のリサイクルのために活性化処理を行うことが好ましい。活性化処理としては加熱、真空引き又はこれらの組み合わせが好ましい。活性化処理の温度は、50~150℃が好ましく、60~120℃がより好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0078】
(多孔質有機金属錯体の合成)
多孔質有機金属錯体の合成に、以下の化合物を用いた。全ての化学物質および溶媒は、商業的品質のもので購入し、そしてさらに精製することなく用いた。
【化7】
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【実施例】
【0079】
略号)
pzdc:ピラジン-2,3-ジカルボン酸
pzdc:ピラジン-2,3-ジカルボン酸イオン
bpy:4,4’-ビピリジン
azpy:4,4’-アゾビスピリジン
bptz:3,6-ビス(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン
【実施例】
【0080】
(CPL-1の合成)
Napzdc溶液を水-エタノール混合物(50:50、総容量100ml)中Hpzdc(1当量、2mmol)とNaOH(2当量、4mmol)を混合することによって調製した。次いで、この溶液を、銅(II)過塩素酸塩(1当量、2mmol)およびピラジン(12.5当量、25mmol)を含有する水溶液(総容量100ml)に滴下した。添加(合計20分間)後、反応物を室温で1日間撹拌した。この後、沈殿物を遠心分離により回収し、未反応の化学種を除去するために水で3回、メタノールで4回洗浄した。粉末を数時間減圧下で乾燥させることでCPL-1を合成した。
【実施例】
【0081】
(CPL-2の合成)
Napzdc溶液を水-エタノール混合物(50:50、総体積50ml)中、Hpzdc(1当量、1mmol)とNaOH(2当量、2mmol)とを混合することによって調製し、この溶液にbpy(0.5当量、0.5mmol)を混合した。混合物(Napzdc+bpy)を銅(II)過塩素酸(1当量、1mmol)の水溶液(全容量50ml)中に滴下した。添加(合計10分間)後、反応物を室温で1日間撹拌した。この後、沈殿物を遠心分離により回収し、未反応の化学種を除去するために水で3回、メタノールで3回洗浄した。粉末を数時間減圧下で乾燥させることでCPL-2を合成した。
【実施例】
【0082】
(CPL-4の合成)
Napzdc溶液を水(100ml)中、Hpzdc(1当量、2mmol)とNaOH(2当量、4mmol)とを混合することによって調製した。次いで、この溶液を銅(II)過塩素酸(1当量、2mmol)およびazpy(12.5当量、25mmol)を含有する水-エタノール溶液(水50ml、エタノール80ml)に滴下した。添加(合計15分間)後、反応物を室温で1日間撹拌した。この後、沈殿物を遠心分離により回収し、未反応の化学種を除去するために水で5回およびメタノールで4回洗浄した。粉末を数時間減圧下で乾燥させることでCPL-4を合成した。
【実施例】
【0083】
(CPL-11の合成)
[Napzdc+bptz]溶液をHpzdc(1当量、1mmol)とNaOH(2当量、2mmol)とbptz(0.7当量)とを水-エタノール混合物(50:50)100ml中で混合することにより調製した。次いで、この溶液を、銅(II)過塩素酸(1当量、1mmol)の水溶液(100ml)に滴下した。添加(合計10分間)後、反応物を室温で1日間撹拌した。この後、沈殿物を遠心分離により回収し、未反応の化学種を除去するために水で3回、メタノールで3回洗浄した。粉末を数時間減圧下で乾燥させることでCPL-11を合成した。
【実施例】
【0084】
(化学種の特徴付け)
すべての種は、粉末X線回折(pXRD)、熱重量分析(TGA)、及び195Kでの二酸化炭素ガス吸着によって特徴付けた。すべての結果は、理論上の予測(pXRD/ガス吸着)、または公開された結果と一致した。
【実施例】
【0085】
TGAはリガクTG8120を用いて行った。約5mg~10mgのサンプルを窒素気流下25℃から500℃まで10℃・min-1の速度で加熱した。pXRDは、CuKα線を用いリガクSmartLab X線回折(40kV、40mA)で行った。pXRDデータは、5°min-1の走査速度、0.01°のステップで30°~60°(2θ)まで記録した。
【実施例】
【0086】
(ガス等温吸着)
ガス等温吸着は、温度制御のためクライオスタット(BELSORP-MAX)や微小冷却器(BELSORP-miniII)を装備したBELSORP-MAXとBELSORP-miniII装置体積吸着装置(日本ベル社)で行った。高圧測定はBELSORP-HP吸着装置で行った。すべてのサンプルを真空吸着測定の前に393Kで少なくとも6時間脱気しゲスト分子(溶媒)を除去した。二元混合ガスのガス等温共吸着は、ガスクロマトグラフ(日本ベル社)と組み合わせた混合ガス体積吸着によるBELSORP-VCで行った。この共吸着特性評価では、二つのガスを別々に導入し、循環ポンプを用いて混合した。ガス組成をガスの非理想性をREFPROPを用いて補正した導入圧力から決定した。ガス混合物を平衡化(30分)まで、試料室に導入した。総ガス吸着量を圧力変化から算出し、ガス吸着量をGCを用いて残りの気相の組成から決定した。GC測定は、各データポイントについて7回の注入の平均に相当する。
【実施例】
【0087】
使用したガス分離装置では、2つ導入されたガスをガスセレクタによって制御した。機器のすべての使用のために、圧力ゲージをオン(V10開放)にした。ガス組成は、Porapack Nカラム(50/80メッシュ、直径3mmのSUSチューブDVB-EVBエチレングリコールジメタクリレートに充填された材料)を備えたガスクロマトグラフィー装置(GC-2014、島津製作所)で測定した。測定中は90℃に保った。
【実施例】
【0088】
(単一成分等温ガス吸着及び脱着)
アセチレン、エチレン、エタンおよびメタンについて、単成分等温線ガス吸着及び脱着を298KでCPLのファミリーの代表的な材料について行った。298Kでの全体アセチレン容量、C/C容量比及び下記式で表されるIAST選択性について比較を行った。結果を表3及び表4に示す。
【実施例】
【0089】
(IAST選択性)
ads=(q/q)/(p/p
(式中、qは、所定圧力pでのガス吸着量である。)
【実施例】
【0090】
【表3】
JP2018089577A_000012t.gif
【実施例】
【0091】
【表4】
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【実施例】
【0092】
(単一成分の高圧等温ガス吸着と脱着)
CPL-1材料および単一成分の高圧等温ガス吸着と脱着の評価を、298Kにて、エチレン(Pmax=3.7MPa)、エタン(Pmax=1.0MPa)について行い、アセチレン吸着脱着等温線(Pmax=101.3kPa)と比較した。図2(a)は、高圧でのアセチレン(黒塗り三角)、エチレン(灰色逆三角)、エタン(薄灰色三角)のガス吸着(中塗り印)及び脱着(中抜き印)等温線であり、図2(b)は、1%アセチレンC・C混合物についての算出した対応する選択性(IAST理論)である。CPL-1について、選択された圧力での吸着ガス容量および対応する算出した選択性を表5に示す。
【実施例】
【0093】
【表5】
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【実施例】
【0094】
以上で実証された応用は、アセチレンからのエチレンの精製に関するものである。用いた多孔質有機金属錯体(吸着剤)は、特別に設計された吸着材料のサイズ選択性(分子ふるい効果)および化学的選択性(化学ふるい効果)の両方の組み合わせに起因して効率的であることが分かった。化学的選択性(化学ふるい効果)は、吸着剤との水素結合を形成し得ることから、主に炭化水素プロトンの酸性度の差に起因する。
【実施例】
【0095】
(エチレンとエタンとの共吸着試験)
エチレン-アセチレン混合物からのアセチレンの特異的な捕捉に加えて、エチレンとエタンとの分離が重要な関心事となっている。エチレンとエタンとの共吸着試験をCPL-1サンプルについて行った。結果を図3及び表6に示す。図3は、T=298KでのC・C混合物を用いた際のCPL-1吸着剤に吸着された全ガス吸着量(黒丸)、エチレン(菱形)及びエタン(黒三角)の吸着量、並びにGCによって決定された組成を示す。表6は、CPL-1での混合ガス(80:20)吸着を行った際の異なる圧力でのエチレン及びエタン吸着量、並びに対応する算出した選択性を示す。
【実施例】
【0096】
【表6】
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【実施例】
【0097】
これらの実験により、吸着剤は、高圧でのエチレンの吸着が可能であり、エチレンが吸着されてもエタンは吸着されないことが実証された。また、CPL-1吸着剤を用いることで、Cに対する細孔開口後に吸着相組成の90%超となっており、エチレンを効率的に捕捉可能であることが実証された。結論的には、T=298KにおいてCの分圧が0.5MPa超となるように混合物を加圧することで、エチレンを高純度で捕捉し得る。高純度のエチレンは吸着剤の減圧にて回収可能であり、一旦、被吸着物質が単離されれば、非吸着相となる。脱着圧力は、精製ガス高圧測定によれば0.3MPa未満(Cの分圧)であるべきである。
【実施例】
【0098】
さらに、ここで示された多孔質有金属錯体と圧力制御技術を応用することで、3成分系でのガス分離を効率的に行うことができることが示されている。CLP-1を用いることにより、C:C混合物からのCの分離をCの分圧0.5MPa超とすることで効率的に行い、C不純物からのCの精製が可能となる。本材料は、C:C:Cの3元系混合物からのエチレン及びアセチレンの共吸着させるのに用いることができる。CとCは異なる解放圧力を有する。Cでは15kPa程度、Cでは0.4~0.5MPa程度である。これらの差により、仮に2つのガスが高圧にて共吸着されたとしても、アセチレン分圧が15kPa未満にならない限り、精製されたエチレンを回収することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2