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明細書 :メッキ成形体の製造方法及びメッキ成形体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-104725 (P2018-104725A)
公開日 平成30年7月5日(2018.7.5)
発明の名称または考案の名称 メッキ成形体の製造方法及びメッキ成形体
国際特許分類 C23C  18/30        (2006.01)
B29B   9/06        (2006.01)
B29B   9/14        (2006.01)
B29B   9/00        (2006.01)
B29B   7/42        (2006.01)
B29B   7/48        (2006.01)
B29B   7/94        (2006.01)
FI C23C 18/30
B29B 9/06
B29B 9/14
B29B 9/00
B29B 7/42
B29B 7/48
B29B 7/94
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2016-248781 (P2016-248781)
出願日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発明者または考案者 【氏名】遊佐 敦
【氏名】山本 智史
【氏名】水戸 孝一
【氏名】山口 靖雄
【氏名】大嶋 正裕
出願人 【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099793、【弁理士】、【氏名又は名称】川北 喜十郎
【識別番号】100154586、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 正広
【識別番号】100139941、【弁理士】、【氏名又は名称】川津 幸恵
審査請求 未請求
テーマコード 4F201
4K022
Fターム 4F201AA11
4F201AA13
4F201AA29
4F201AB25
4F201BA02
4F201BC33
4F201BD04
4F201BK02
4F201BK36
4F201BK73
4F201BK74
4F201BK75
4F201BL05
4F201BL42
4F201BL43
4F201BL44
4K022AA12
4K022AA14
4K022AA15
4K022AA19
4K022AA37
4K022BA08
4K022BA14
4K022BA16
4K022BA21
4K022CA02
4K022CA06
4K022DA01
要約 【課題】メッキ反応性の高い成形体に、環境負荷及びコストの低い方法で無電解メッキ膜を形成するメッキ成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】
メッキ成形体の製造方法であって、セルロースナノファイバーを含む熱可塑性樹脂を成形して、成形体を得ることと、前記成形体に金属塩を含む無電解メッキ触媒液を接触させることと、前記無電解メッキ触媒液を接触させた前記成形体に、無電解メッキ液を接触させて、前記成形体の表面に無電解メッキ膜を形成することとを含む。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
メッキ成形体の製造方法であって、
セルロースナノファイバーを含む熱可塑性樹脂を成形して、成形体を得ることと、
前記成形体に金属塩を含む無電解メッキ触媒液を接触させることと、
前記無電解メッキ触媒液を接触させた前記成形体に、無電解メッキ液を接触させて、前記成形体の表面に無電解メッキ膜を形成することとを含む製造方法。
【請求項2】
前記成形体を前記無電解メッキ触媒液に接触させる前に、前記成形体に膨潤処理、又はエッチング処理を施すことを更に含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記無電解メッキ触媒液に含まれる金属塩が、塩化パラジウム、塩化銀、塩化銅、及び硝酸銀からなる群から選択される1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリプロピレン、又はABS樹脂を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記成形体を成形することが、
前記熱可塑性樹脂と、前記セルロースナノファイバーとを含む樹脂ペレットを用意することと、
前記樹脂ペレットを成形して、前記成形体を得ることとを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂ペレットを用意することが、
前記熱可塑性樹脂を可塑化溶融した溶融樹脂と、前記セルロースナノファイバーが溶媒に分散したスラリーとの混合物を得ることと、
前記混合物から、前記溶媒を除去することと、
前記溶媒を除去した前記混合物を押出成形して、押出成形体を得ることと、
前記押出成形体を粉砕して、前記樹脂ペレットを得ることとを含む請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂ペレットを用意することが、
前記溶融樹脂と前記スラリーとの前記混合物に、水を加えることを更に含む請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
メッキ成形体であって、
熱可塑性樹脂と、セルロースナノファイバーとを含む成形体と、
前記成形体の表面に形成された無電解メッキ膜とを含むメッキ成形体。
【請求項9】
前記成形体が、内部に発泡セルを有する発泡成形体であることを特徴とする請求項8に記載のメッキ成形体。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリプロピレン、又はABS樹脂を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載のメッキ成形体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ成形体及びメッキ成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形体に安価に金属膜を形成する方法として、無電解メッキが知られている。無電解メッキでは、金属膜の成形体への密着強度確保のため、六価クロム酸や過マンガン酸等の酸化剤を含むエッチング液を用いて成形体表面を粗化する前処理を行う。そのため、無電解メッキには、エッチング液により侵食されるABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)が主に用いられてきた。ABS樹脂は、ブタジエンゴム成分がエッチング液に選択的に侵食され、表面に凹凸が形成される。一方、ABS樹脂以外の樹脂、例えば、ポリカーボネート等では、無電解メッキを可能にするため、ABS樹脂やエラストマー等、エッチング液に選択的に酸化される成分を混合したメッキグレードが市販されている。しかし、このような無電解メッキの前処理は、六価クロム酸等を使用することから、環境負荷が高いという問題があった。
【0003】
粗化された成形体の表面には、無電解メッキ触媒が付与され、その後、無電解メッキが行なわれる。プラスチック基材に対する無電解メッキ触媒付与としては、主には2種類の手法が用いられる。スズコロイドを基材に吸着させた後(センシタイザー)、塩化パラジウム溶液に浸漬して(アクチベータ)、塩化第一スズで塩化パラジウムを還元および析出させるセンシタイザー・アクチベータ法と、パラジウムスズコロイドを基材に吸着させた後(キャタリスト)、濃硫酸等で還元する(アクセレータ)キャタリスト・アクセレータ法である。センシタイザー・アクチベータ法は、センシタイザーに用いるスズコロイドの浴寿命が短いことから、量産性が低いという課題がある。このため、工業的な無電解メッキ触媒付与方法としては、主に、キャタリスト・アクセレータ法が採用されている。
【0004】
一方で、改良された無電解メッキの前処理方法も提案されている。例えば、特許文献1では、メッキ前処理における工程数を削減するため、塩酸等の無機酸含有の腐食剤と、パラジウムイオン等のイオノゲン活性剤と、酢酸等の有機酸とを含む一溶液で成形体を処理する方法が提案されている。特許文献1によれば、上述の一溶液でポリアミド基板の前処理を行うことで、環境負荷が高い六価クロム酸等を使用する必要がなく、良好なメッキ膜が得られる。また、特許文献2では、センシタイザー・アクチベータ法で用いる、パラジウム-スズコロイドを含むセンシタイザー液の代替として、パラジウムイオンと2-アミノエチルピリジンの錯体を含有する無電解メッキ触媒液が提案されている。従来のセンシタイザー液は、環境負荷の高いスズを含み、また、パラジウム-スズコロイドが凝集し易いという課題を有していた。特許文献2によれば、提案する無電解メッキ触媒液は、環境負荷が高いスズを含まず、更に、従来のセンシタイザー液と比較して長時間安定である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第4109615号
【特許文献2】特開2015-48529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1において提案されている方法は、ポリアミドからなる成形体を主な処理対象としている。したがって、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂からなる成形体に対しては、高い密着強度を有する無電解メッキ膜を形成できない虞もある。また、特許文献2において提案されている方法は、新たなパラジウム錯体を形成するため、無電解メッキ触媒のコストが上昇する虞がある。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、メッキ反応性の高い成形体に、環境負荷及びコストの低い方法で無電解メッキ膜を形成するメッキ成形体の製造方法を提供する。また、密着強度の高いメッキ膜を有し、ヒートサイクル耐性の高いメッキ成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、メッキ成形体の製造方法であって、セルロースナノファイバーを含む熱可塑性樹脂を成形して、成形体を得ることと、前記成形体に金属塩を含む無電解メッキ触媒液を接触させることと、前記無電解メッキ触媒液を接触させた前記成形体に、無電解メッキ液を接触させて、前記成形体の表面に無電解メッキ膜を形成することとを含む製造方法が提供される。
【0009】
前記成形体を前記無電解メッキ触媒液に接触させる前に、前記成形体に膨潤処理、又はエッチング処理を施してもよい。前記無電解メッキ触媒液に含まれる金属塩が、塩化パラジウム、塩化銀、塩化銅、及び硝酸銀からなる群から選択される1つであってもよい。また、前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリプロピレン、又はABS樹脂を含んでもよい。
【0010】
前記成形体を成形することが、前記熱可塑性樹脂と、前記セルロースナノファイバーとを含む樹脂ペレットを用意することと、前記樹脂ペレットを成形して、前記成形体を得ることとを含んでもよい。また、前記樹脂ペレットを用意することが、前記熱可塑性樹脂を可塑化溶融した溶融樹脂と、前記セルロースナノファイバーが溶媒に分散したスラリーとの混合物を得ることと、前記混合物から、前記溶媒を除去することと、前記溶媒を除去した前記混合物を押出成形して、押出成形体を得ることと、前記押出成形体を粉砕して、前記樹脂ペレットを得ることとを含でもよい。前記樹脂ペレットを用意することが、前記溶融樹脂と前記スラリーとの前記混合物に、水を加えることを更に含んでもよい。
【0011】
本発明の第2の態様に従えば、メッキ成形体であって、熱可塑性樹脂と、セルロースナノファイバーとを含む成形体と、前記成形体の表面に形成された無電解メッキ膜とを含むメッキ成形体が提供される。
【0012】
前記成形体が、内部に発泡セルを有する発泡成形体であってもよい。また、前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリプロピレン、又はABS樹脂を含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、セルロースナノファイバーを含むメッキ反応性の高い成形体に、環境負荷及びコストの低い方法で無電解メッキ膜を形成できる。また、本発明で得られるメッキ成形体は、密着強度の高いメッキ膜を有し、高いヒートサイクル耐性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態で製造するメッキ成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施例1で用いた樹脂ペレットの製造装置の概略図である。
【図3】図3は、図2に示す製造装置の一部拡大図である。
【図4】図4は、実施例3で用いた発泡成形体を製造する製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に従い、本実施形態におけるメッキ成形体(メッキ膜を有する成形体)の製造方法について説明する。

【0016】
(1)成形体の成形
まず、セルロースナノファイバーを含む熱可塑性樹脂を成形して、成形体を得る(図1のステップS1)。熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等を用いることできる。中でも、ポリアミド、ポリプロピレン、ABS樹脂は、本実施形態で用いる熱可塑性樹脂として好ましい。ポリアミドは、親水性が比較的高いため、無電解メッキ膜の形成に適している。ポリプロピレンは安価な上、軽量で耐薬品に優れており、自動車等のメッキ部品として好ましい。一方で、ポリプロピレンは、メッキ液が浸透し難いが、抽出剤を混合すること等によりメッキ可能である。ABS樹脂は、従来からメッキ部品として最も多く使われており、応用範囲が広い。従来のABS樹脂へのメッキは、メッキ前処理として、クロム酸等を用いたエッチングが必要であったが、後述するように、クロム酸に代えて有機溶媒を用いたエッチングも可能である。これらの熱可塑性樹脂は、1種類の樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。

【0017】
本実施形態において、セルロースナノファイバー(以下、適宜、「CNF」と記載する)とは、植物繊維を含む材料(例えば、木材パルプ等)の繊維をナノサイズレベルまで解きほぐしたものである。CNFは、直径4~100nm、長さ1μm以上のアスペクト比の大きい繊維である。本明細書では、針状結晶であるセルロースナノクリスタル(CNC)も、CNFに包含する。本発明者らは、成形体にCNFを含有させることにより、後工程の無電解メッキ触媒付与工程(図1のステップS2)において、無電解メッキ触媒として機能する金属イオンが成形体表面に吸着し易くなり、結果として、成形体の無電解メッキ反応性が向上することを見出した。即ち、本実施形態の第1の効果として、CNFは、金属イオンの吸着剤として作用する。

【0018】
CNFを成形体中に含有させることは、上述した1)金属イオンを吸着することにより、無電解メッキの反応性が向上すること以外に、更に以下の利点をもたらす。2)CNFは親水性であるため、CNFを含有する成形体の内部に触媒液やメッキ液が浸透し易くなる。そして、成形体中に埋没したCNFを基点にして成形体内部よりメッキ膜が成長し、繊維状のCNFがメッキ膜の剥離を抑制する。これにより、メッキ膜の密着強度が向上する。3)CNFは、比重及び熱膨張係数が低く、且つ弾性率が高い。成形体がCNFを含有することで、成形体の熱膨張係数が低減し、弾性率が向上する。これにより、ヒートショック試験等の熱衝撃試験においても成形体とメッキ膜との高い密着性が維持され(ヒートサイクル耐性向上)、メッキ成形体の信頼性が高まる。尚、成形体中に、ガラス繊維等を含有させることによっても、同様の効果を得られるが、ガラス繊維は比重が大きいため、メッキ成形体の表面性を悪化させる虞がある。これに対して、CNFは比重が小さいため、メッキ成形体の信頼性と表面性を共に向上させることができる。4)CNFは、直径が細いナノファイバーであるため、これを含有する成形体表面の外観に影響を与え難い。このため、意匠性の高いメッキ成形体を製造できる。5)CNFは、フィラー配向の異方性が小さい。このため、成形体表面において、金属イオンの吸着量のムラができ難い。そして、6)CNFは、人体に対する悪影響が小さい。

【0019】
CNFの比表面積としては、70~300m/gが好ましく、70~250m/gがより好ましく、100~200m/gが更に好ましい。CNFの比表面積が大きいと、金属イオンの吸着性や成形体の強度が向上するが、極端に大きすぎると、樹脂中で凝集し易くなる。そのため、CNFの比表面積は、上記範囲が好ましい。CNFがナノレベルに解繊されている場合、X線CT等を用いて、その繊維径や長さを測定することは困難なため、樹脂中におけるCNFの分散状態を分析することは難しい。しかし、ナノレベルに解繊されたCNFを用いることは、CNFの比表面積をある程度大きくし、上記範囲内とする観点から好ましい。

【0020】
CNFの製造方法は特に限定されず、任意の製造方法によって製造してもよいし、市販品を用いてもよい。また、熱可塑性樹脂への分散性を高めるために、公知の方法により、CNFの表面修飾を行ってもよいし、行わなくてもよい。CNFの表面修飾は、CNFを分散させる樹脂の種類によっては、成形体の熱膨張係数を低下させ、弾性率を高める等の成形体の機械特性を向上させる利点がある。一方で、メッキ触媒となる金属イオンの吸着能力の観点からは、CNFの表面修飾は、特に必要な処理ではなく、むしろ、CNFの凝集を抑制できるならば、CNFの表面修飾は行なわない方が好ましい。CNFの表面修飾を行わない場合、製造コストの低減及び製造時間の短縮という利点がある。また、表面修飾によりCNFの表面状態が変化するが、金属イオンの吸着能力は変わらないか、又は低下する虞があるからである。

【0021】
CNFは、熱可塑性樹脂に対して、例えば、0.1重量%~50重量%含まれ、0.5重量%~20重量%含まれることが好ましく、1重量%~10重量%含まれることがより好ましい。CNFは、成形体のメッキ反応性を高め、メッキ膜の密着強度を向上させるが、熱可塑性樹脂に対する割合が高すぎると、高粘度化により成形性が著しく低下する虞がある。そのため、熱可塑性樹脂に対するCNFの割合は、上記範囲が好ましい。

【0022】
本実施形態では、熱可塑性樹脂に、更に、親水性セグメントを含むブロック共重合体(以下、適宜「ブロック共重合体」と記載する)を混合して成形し、成形体を得てもよい。本実施形態で用いるブロック共重合体は、親水性セグメントを有し、更に、親水性セグメントとは異なる他のセグメント(以下、適宜「他のセグメント」と記載する)を有する。成形体がブロック共重合体を含有することで、成形体の表面が親水化され、成形体に触媒液やメッキ液が浸透し易くなり、メッキ膜の成長が促進される。熱可塑性樹脂として、ABS樹脂等の疎水性の材料を用いる場合、ブロック共重合体の混合は、特に有効である。

【0023】
ブロック共重合体の親水性セグメントとしては、アニオン性セグメント、カチオン性セグメント、ノニオン性セグメントを用いることができる。アニオン性セグメントとしては、ポリスチレンスルホン酸系、カチオン性セグメントとしては、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系、ノニオン性セグメントとしては、ポリエーテルエステルアミド系、ポリエチレンオキシド-エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系が挙げられる。本実施形態で用いるブロック共重合体としては、成形体の耐熱性を確保しやすいことから、親水性セグメントがポリエーテル構造を有するノニオン性セグメントであることが好ましい。ポリエーテル構造としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等の炭素数が2~4のオキシアルキレン基、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物、並びにポリエーテル含有親水性ポリマーが含まれ、特にポリエチレンオキシドが好ましい。

【0024】
本実施形態において、ブロック共重合体の他のセグメントは、親水性セグメントよりも疎水性であれば任意であるが、例えば、ナイロン、ポリオレフィン等を用いることができる。

【0025】
熱可塑性樹脂にブロック共重合体を混合する場合、ブロック共重合体は、熱可塑性樹脂に対して、例えば0.5重量%~10重量%含まれ、1重量%~5重量%含まれることがより好ましい。ブロック共重合体は、メッキ膜の成長を促進するが、成形体中の含有量が多すぎると、成形体の機械的強度が低下する虞がある。そのため、成熱可塑性樹脂に対するブロック共重合体の割合は、上記範囲が好ましい。

【0026】
本実施形態では、熱可塑性樹脂に、更に、ガラス繊維、タルク、カーボン繊維等、各種無機フィラー等を混合して成形し、成形体を得てもよい。熱可塑性樹脂にフィラーを混合する場合、熱可塑性樹脂として、予め無機フィラーが混合されている市販品の樹脂、所謂、無機フィラー強化樹脂を用いてもよい。その他、必要に応じて、汎用の添加剤を熱可塑性樹脂に加えて成形体を成形してもよい。

【0027】
<樹脂ペレットの製造方法>
成形体の成形方法は、特に限定されず、汎用の方法を用いることができる。例えば、まず、熱可塑性樹脂及びCNFを含む樹脂ペレットを用意し、その樹脂ペレットを汎用の方法により成形して成形体を得てもよい。熱可塑性樹脂中に均一にCNFが分散している樹脂ペレットを用いて成形体を製造することで、成形体中においてもCNFの良好な分散状態を維持することができる。樹脂ペレットの組成は、製造する成形体の組成に基づいて適宜決定できる。

【0028】
樹脂ペレットは、自家製造してもよいし、市販品を用いてもよい。樹脂ペレットの製造方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、特開2013‐79334号公報に開示されるように、熱可塑性樹脂(ポリアミド)を構成するモノマーと、CNFとの水分散液(CNF水スラリー)とを混合して重合反応を行い、得られた樹脂組成物を取り出して、粉砕してペレットを製造してもよい。または、同様の方法により製造された市販品を用いてもよい。または、二軸押出機中にて、表面修飾されたセルロースをCNFに解繊しながら、溶融樹脂中に分散させる所謂、京都プロセス(例えば、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、News Release、2016年3月23日「高性能ナノ繊維で強化した樹脂複合材料と高効率製造プロセスを開発—京都大学内で一貫製造用テストプラントが稼働開始—」参照)により樹脂ペレットを製造してもよい。

【0029】
その他の樹脂ペレットの製造方法としては、例えば、CNF、更に必要に応じて、ブロック共重合体等を含む熱可塑性樹脂(以下、適宜、「樹脂ペレット材料」と記載する)を押出成形した後、押出成形体を裁断して樹脂ペレットを製造してもよい。CNF及び熱可塑性樹脂等は、混合(ドライブレンド)してから、押出成形機の可塑化シリンダ内に導入してもよいし、先に可塑化シリンダ内で、熱可塑性樹脂を可塑化溶融しておき、後からCNFを可塑化シリンダ内に導入して溶融樹脂に混合してもよい。熱可塑性樹脂に混合するCNFの形態は、特に限定されず、例えば、乾燥状態の粉末状のCNFでもよいし、水等の溶媒に分散されたスラリー状のCNF(CNFスラリー)でもよい。

【0030】
樹脂ペレットの製造に水に分散したCNFスラリーを用いる場合、可塑化シリンダ内において、熱可塑性樹脂を可塑化溶融した溶融樹脂と、CNFスラリーとの混合物が得られる。このとき、CNFスラリーが液相を維持したまま、溶融樹脂に十分に分散することが好ましい。このため、押出成形機の可塑化シリンダ内の圧力は、熱可塑性樹脂が溶融する高温状態であっても、CNFスラリーの溶媒が液体状体を維持できる高圧力に保つことが好ましい。液体は高温になると密度が急激に低下し、溶質を溶解又は分散させる溶媒としての機能を失うが、圧力を高くすることで、溶媒の溶媒密度の低下を防ぎ、CNFの析出及び凝集を抑制できる。したがって、樹脂ペレットの製造に用いる押出成形機の可塑化シリンダは、溶融樹脂とCNFスラリーを高温及び高圧力で混合可能な高圧混練ゾーンを有することか好ましい。溶融樹脂とCNFスラリーとを混合する高圧混練ゾーンの温度及び圧力は、熱可塑性樹脂の種類と、CNFスラリーの溶媒の種類によって決定できるが、例えば、150℃~280℃、3MPa~20MPaであり、好ましくは、180℃~230℃、7MPa~15MPaである。

【0031】
また、高圧混練ゾーンにおいて、溶融樹脂とCNFスラリーの混合物に、更に水を混合することが好ましい。導入された水は、高圧混練ゾーンにおいて、CNFスラリーの乾燥を防止し、溶融樹脂内のCNFの凝集を更に抑制する。水は、高温加圧状態の溶融樹脂とCNFスラリーとの混合物に導入するため、加圧状態であることが好ましい。

【0032】
溶融樹脂及びCNFスラリーを十分に混合した後、溶融樹脂とスラリーとの混合物は、押出成形される前に減圧され、混合物からスラリーの溶媒及び水が除去されることが好ましい。したがって、樹脂ペレットの製造に用いる押出成形機の可塑化シリンダは、溶融樹脂の樹脂内圧を低下させて、溶融樹脂からスラリーの溶媒等を除去する減圧ゾーンを有することが好ましい。除去した溶媒は、減圧ゾーンに設けられたベントから、可塑化シリンダの外部へ排出される。また、溶媒を多く含む溶融樹脂を急減圧すると樹脂が大きく膨張し、所謂、ベントアップを生じ易くなる。溶融樹脂の急減圧を防止してベントアップを抑制するために、減圧ゾーンのベントの上流側には、溶融樹脂とスラリーとの混合物を徐減圧する徐減圧部を設けることが好ましい。

【0033】
溶融樹脂とCNFスラリーとの混合物を紐状に押出成形し、冷却後、ストランドカット装置等の汎用の裁断装置を用いて裁断して樹脂ペレットを得る。押出成形、冷却及び裁断は、連続して行うことが樹脂ペレットの生産性の観点から好ましい。

【0034】
<成形体の成形方法>
成形体の成形方法は、特に限定されない。射出成形、押出成形等の汎用の成形により、製造した樹脂ペレットを成形して所望の形状の成形体を得てもよい。また、製造した樹脂ペレットを発泡成形して、内部に発泡セルを有する発泡成形体を得てもよい。発泡成形体は、一般に、機械的強度が低下する傾向にあるが、発泡成形体がCNFを含有することで、CNFの補強効果により、発泡による機械的強度の低下を一部相殺できる。発泡成形は、化学発泡剤を用いる化学発泡法と、物理発泡剤を用いる物理発泡法とに大別されるが、発泡剤が安価で、且つ発泡剤の残渣の悪影響が無い物理発泡法が好ましい。特に、物理発泡剤として、二酸化炭素や窒素を用いた発泡成形は、CNFの発泡核剤効果や増粘効果により、発泡セルが微細化するため好ましい。また、二酸化炭素や窒素の物理発泡剤の圧力は、超臨界圧力以下であることが好ましい。超臨界圧力以下とすることで、成形体を射出成形する場合に発生するスワールマークと呼ばれる成形体の外観不良の発生を抑制できる。

【0035】
以上、熱可塑性樹脂及びCNFを含む樹脂ペレットを用意し、その樹脂ペレットを汎用の方法により成形して成形体を得る方法について説明したが、本実施形態は、これに限定されない。例えば、CNFを含有する樹脂ペレットは用いずに、熱可塑性樹脂に、CNF、更に必要に応じて、無機フィラー等を混合し、汎用の射出成形、押出成形等により成形して、直接、所望の形状の成形体を得てもよい。

【0036】
(2)メッキ前処理
本実施形態では、メッキ前処理として、まず、成形体をエッチング処理又は、膨潤処理することが好ましい。そして、その後、成形体に金属塩を含む無電解メッキ触媒液を接触させる(図1のステップS2)。これにより、無電解メッキ触媒として機能する金属塩由来の金属イオンを成形体表面に付与できる。

【0037】
<成形体のエッチング処理又は膨潤処理>
成形体に触媒液を接触させる前に、成形体をエッチング処理又は膨潤処理することが好ましい。成形体をエッチング処理すると、成形体の最表面に露出するCNFの量が増加し、無電解メッキ触媒として機能する金属イオンが成形体表面により吸着し易くなる。また、成形体を膨潤処理すると、成形体内に触媒液と共に金属イオンが浸透し易くなり、成形体内部(表面近傍)のCNFによって吸着される。このように、成形体をエッチング処理又は膨潤処理すると、成形体に吸着する金属イオンが増加し、成形体の無電解メッキ反応性がより向上する。

【0038】
成形体のエッチング処理方法及び膨潤処理方法は、成形体に用いられる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択できる。但し、クロム酸等の環境負荷の大きな試薬は用いないことが好ましい。

【0039】
例えば、熱可塑性樹脂として、ABS樹脂のようなゴム成分を配合する共重合体やポリマーアロイを用いた成形体に対しては、表面張力36mN/m以下で、且つ溶解度パラメータ(SP値)が12以下である溶剤を含むエッチング液を成形体に接触させることにより、成形体の表面をエッチングしてもよい。表面張力が36mN/m以下であれば、成形体表面を十分に濡らすことができ、また、SP値が12以下であれば、エッチング液のSP値とABS樹脂のブタジエン成分等とのSP値とが近い値となる。このような溶剤を含むエッチング液を接触させることにより、成形体の表面に微細孔を形成できる。尚、本願明細書における溶剤の表面張力の値は、室温における表面張力の値を意味する。具体的な溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルのグリコールエーテルが挙げられる。中でも、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。

【0040】
熱可塑性樹脂として、化学的に安定なポリロピレン等の材料を用いた成形体に対しては、予め酸や水で抽出可能な抽出材料を成形体中に含有させ、酸や水をエッチング液として成形体に接触させることにより、抽出材料を抽出して成形体表面をエッチングしてもよい。抽出材料としては、次亜燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機粒子やペンタエリスリトール等の高融点の有機化合物等を用いることができる。酸としては、例えば、塩酸や硫酸、硝酸が挙げられ、抽出材料に応じて適宜選択できる。

【0041】
また、熱可塑性樹脂として、ポリアミド6(PA6)やポリアミド66(PA66)のような脂肪族ポリアミドを用いた成形体に対しては、酸を接触させた後に、温水(湯)を接触させることにより、成形体表面を膨潤させてもよい。酸としては、例えば、塩酸が挙げられる。温水の温度は、成形体の膨潤効果を高めるために、成形体中の脂肪族ポリアミドのガラス転移点以上の温度が好ましく、例えば、50~90℃、好ましくは60~75℃である。

【0042】
<無電解メッキ触媒の付与>
成形体をエッチング処理又は膨潤処理した後、成形体に金属塩を含む無電解メッキ触媒液を接触させる(図1のステップS2)。これにより、無電解メッキ触媒として機能する金属塩由来の金属イオンを成形体表面に付与できる。

【0043】
無電解メッキ触媒液が含有する金属塩は、無電解触媒能を有する金属の塩であり、水に溶解して金属イオンを生成する金属塩であれば任意のものを用いることができる。例えば、Pd、Pt、Cu、Ni、Ag等の塩が挙げられ、特にPd、Ag、Cuが好ましい。金属塩としては、これら金属の塩化物、硫化物、ヨウ化物、フッ化物、臭化物等を用いることができるが、安定性、汎用性、コストの面から、塩化物が好ましく、塩化銅、塩化銀、塩化パラジウムが特に好ましい。

【0044】
無電解メッキ触媒液中の金属塩の濃度は、無電解メッキ触媒液の温度、無電解メッキ触媒液と成形体との接触時間等の条件に基づき、適宜調整できるが、例えば、0.05~500mg/L、好ましくは、1~250mg/L、より好ましくは、5~150mg/Lである。金属塩の濃度が上記範囲より低いと、成形体への金属イオンの吸着量にムラができ、メッキ膜の欠陥ができる虞がある。また、金属塩の濃度が上記範囲を超えると、成形体表面への金属イオンの吸着量が多くなり、成形体の最表面でのメッキ反応が支配的となり、メッキ膜の密着強度が低下する虞がある。

【0045】
金属塩を溶解させる無電解メッキ触媒液の溶媒としては、特に限定されず、金属塩の種類に応じて選択でき、例えば、水;エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトン、エチルメチルケトン等の有機溶媒;これらの混合溶媒が挙げられる。更に、金属塩の溶解度を上げるために、塩酸、硝酸、アンモニア、水酸化ナトリウムなどを加えて、液体のpHを調整していてもよい。本実施形態の無電解メッキ触媒液としては、塩化パラジウムの塩酸水溶液が好ましい。無電解メッキ触媒液が塩酸を含む場合、無電解メッキ触媒液中の塩酸の濃度は、例えば、0.1~12Nであり、0.1~5Nが好ましく、1.0~4.0Nがより好ましい。特に、塩化パラジウムは、塩酸の濃度が低下すると析出する虞があるため、塩酸濃度を0.1N以上とすることでパラジウムイオンの状態を安定に維持できる。一方、塩酸の濃度が12Nを超えると、成形体の溶解等により、メッキ膜の外観特性や成形体の機械的強度に影響を与える虞がある。

【0046】
無電解メッキ触媒液は、金属塩及び溶媒のみから構成されても良いし、必要に応じて、汎用の添加剤を含んでもよい。無電解メッキ触媒液は、例えば、界面活性剤を含んでも良い。界面活性剤を含有することで無電解メッキ触媒液の表面張力が低下し、成形体表面への濡れ性が向上して、金属塩が成形体表面に吸着し易くなる。界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤等、汎用の界面活性剤を使用できる。

【0047】
無電解メッキ触媒液は、金属塩と、溶媒と、更に必要に応じて汎用の添加剤等を混合して調製してもよいし、市販品を用いてもよい。例えば、無電解メッキ触媒液として、塩化パラジウムの塩酸水溶液を用いる場合には、塩化パラジウムを塩酸(塩酸水溶液)に添加し、塩化パラジウムが溶解するまで撹拌することによって調製できる。また、市販品としては、例えば、センシタイザー・アクチベータ法に用いる触媒化処理剤(アクチベータ)を用いることができる。通常のセンシタイザー・アクチベータ法では、Pd2+を含む触媒化処理剤(アクチベータ)を用いるアクチベータ処理の前に、Sn2+を含む感応性付与剤(センシタイザー)を用いたセンシタイザー処理が必要であるが、本実施形態ではセンシタイザー処理は不要である。このため、本実施形態の無電解メッキ触媒付与方法は、センシタイザー・アクチベータ法よりも製造コストを削減でき、スループットを向上できる。

【0048】
成形体に無電解メッキ触媒液を接触させる方法は任意であり、目的に応じて種々の方法を用いることができる。例えば、無電解メッキ触媒液に成形体全体を浸漬させてもよいし、成形体の一部分のみを無電解メッキ触媒液と接触させてもよい。

【0049】
成形体に無電解メッキ触媒液を接触させる時間は、例えば、5秒~15分が好ましい。5秒未満であると、成形体への金属塩の吸着量にムラができる虞がある。また、15分を超えると、成形体へ浸透した無電解メッキ触媒液による成形体の劣化の虞がある。

【0050】
また、成形体に接触させる無電解メッキ触媒液の温度は、熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜決定でき、例えば、10℃~50℃である。10℃未満であると、成形体表面への金属イオンの吸着量にムラができる虞がある。また、無電解メッキ触媒液の温度が50℃を超えると、成形体表面への金属イオンの吸着量が多くなり、成形体の最表面でのメッキ反応が支配的となる虞がある。また、無電解メッキ触媒液が塩酸を含む場合、塩酸からのガスの発生や水の蒸発により、塩酸濃度を安定化することが難しくなる虞もある。

【0051】
本実施形態では、成形体に無電解メッキ触媒液を接触させることにより、成形体に金属塩由来の金属イオンが吸着する。そして、その金属イオンは、後工程の無電解メッキ工程(図1のステップS3)において、無電解メッキ触媒として機能する。このメカニズムは、以下のように推測される。

【0052】
一般に、無電解メッキ触媒となるパラジウム等の金属イオンは、そのままでは成形体に吸着し難い。そのため、汎用の無電解メッキ触媒付与方法であるセンシタイザー・アクチベータ法やキャタリスト・アクセレータ法では、まず、成形体表面を粗化し、更に、パラジウムイオンを還元して酸化数0(ゼロ)の金属パラジウムとして成形体に吸着させている。したがって、従来は、金属状態でないパラジウム等の金属イオンを含む液体を成形体に接触させても、金属イオンは成形体表面に吸着し難く、更に、成形体表面に吸着したとしても、金属イオンの状態では触媒活性を発現しないため、無電解メッキ触媒として使用することは困難であった。

【0053】
本実施形態では、成形体がCNFを含有するため、成形体表面に金属イオンが吸着し易くなる。CNFがこの様な特性を有する理由は定かではないが、高い比表面積を有することが一因であると推測される。更に、本実施形態では、成形体に吸着する金属イオンは、別途、還元工程を用いなくとも、後工程の無電解メッキ工程(図1のステップS3)において、無電解メッキ触媒として機能する。これは、成形体に吸着した金属イオンが、無電解メッキ工程において、無電解メッキ液中に含まれる、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ホルマリン等の還元剤により還元され、無電解メッキ触媒能を発揮するためと推測される。

【0054】
このように、本実施形態では、無電解メッキ触媒液として、安価な金属塩溶液を用いることが可能であり、且つ無電解メッキ触媒(金属イオン)の還元処理を省略できる。これにより、製造コストを削減でき、スループットを向上できる。

【0055】
(3)無電解メッキ
次に、メッキ前処理を行った成形体に無電解メッキ液を接触させて、メッキ膜を形成し(図1のステップS3)、本実施形態のメッキ成形体(メッキ膜を有する成形体)を得る。無電解メッキ液としては、目的に応じて任意の汎用の無電解メッキ液を使用しでき、例えば、無電解ニッケルリンメッキ液、無電解銅メッキ液、無電解錫メッキ液を用いることができ、中でも、触媒活性が高く液が安定であるという点から、無電解ニッケルリンメッキ液が好ましい。

【0056】
無電解メッキ温度及び無電解メッキ時間は、熱可塑性樹脂の種類、無電解メッキ液の種類等に応じて、適宜、設定できる。無電解メッキ温度(無電解メッキ液の温度)は、例えば、50℃~80℃であり、好ましくは、50℃~70℃である。また、無電解メッキ時間(成形体に無電解メッキ液を接触させる時間)は、例えば、30秒~30分である。

【0057】
無電解メッキ膜を形成した成形体上には、成形体の用途及び意匠性向上等の目的から、更に異なる種類の無電解メッキ膜を複数層形成してもよいし、電解メッキにより電解メッキ膜を形成してもよい。また、無電解メッキ膜が形成された成形体は、無電解メッキ後にアニール処理を施してもよいし、室温で放置して自然乾燥してもよい。また、アニール処理や自然乾燥を行わず、連続して電解メッキ膜を形成する等の次の工程を行ってもよい。

【0058】
本実施形態で得られるメッキ成形体は、成形体中にCNFを含有するため、密着強度の高いメッキ膜を有し、高いヒートサイクル耐性を有する。また、CNFを含有する成形体は、メッキ膜が形成されない状態では、吸水性が高いため、用途によっては、吸水による膨潤等が問題となる。本実施形態のメッキ成形体は、成形体表面に形成したメッキ膜により、成形体の吸水を抑制できるため、様々な用途に使用可能である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
本実施例では、まず、熱可塑性樹脂と、CNFと、更にブロック共重合体を含有する樹脂ペレットを製造し、製造した樹脂ペレットを成形して成形体を得た。そして、得られた成形体に、エッチング、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキをこの順を行い、本実施例のメッキ部品を得た。
【実施例】
【0061】
熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂(東レ製、トヨラック125‐X82)を用い、CNFとしては、水中対向衝突法により作製されたCNF(中越パルプ製、竹漂白パルプB解繊、CNF10重量%含有のCNF水スラリー)を用いた。また、ブロック共重合体としては、ナイロンとポリエチレンオキシドのブロック共重合体(三洋化成工業製、ペレスタットNC6321)を用いた。
【実施例】
【0062】
(1)樹脂ペレットの製造装置
まず、本実施例で樹脂ペレットの製造に用いた製造装置1000について説明する。図2に示すように、製造装置1000は、可塑化シリンダ210を有する押出成形機200と、水(液体A)を可塑化シリンダ210に供給する供給機構100と、制御装置(不図示)を備える。制御装置は、押出成形機200と、供給機構100の動作を制御する。
【実施例】
【0063】
(a)押出成形機
本実施例では、熱可塑性樹脂が可塑化溶融する高温下においても、CNFの分散した高粘度スラリー及び溶融樹脂に添加した水を液体の状態で溶融樹脂に混練可能な押出成形機200を用いる。図2に示す押出成形機200は、可塑化シリンダ210と、可塑化シリンダ210の先端に設けられるダイ29と、可塑化シリンダ210内に回転自在に配設されたスクリュ20と、スクリュ20を駆動させるスクリュ駆動機構(不図示)と、可塑化シリンダ210内に配置される上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2と、可塑化シリンダ210に接続する真空ポンプPを備える。本実施例では、可塑化シリンダ210内において、可塑化溶融された溶融樹脂は、図2における右手から左手に向かって流動する。したがって、本実施例の可塑化シリンダ210の内部においては、図2における右手を「上流」又は「後方」、左手を「下流」又は「前方」と定義する。尚、本実施例の押出成形機200は、従来公知の押出成形機の構成と同様に、可塑化シリンダ210の後方側から見た場合に、スクリュ20を反時計回りに回転させると溶融樹脂を前方(ノズル部側)に送る正回転をし、時計回りに回転させると逆回転するように構成されている。
【実施例】
【0064】
可塑化シリンダ210の上部側面には、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化シリンダ210に供給するための樹脂供給口201、液体Aを可塑化シリンダ210内に導入するための導入口202、及び可塑化シリンダ210内からガス化したCNFスラリーの溶媒及び液体Aを排気するためのベント203が形成されている。樹脂供給口201には、フィーダースクリュ121を介して樹脂供給用ホッパ211が、導入口202には逆流防止弁を内蔵する導入バルブ212が、それぞれ、配設されており、ベント203には、ベント容器213を介して、真空ポンプPが接続されている。また導入バルブ212は、押出成形機200の外に設けられる供給機構100と接続される。可塑化シリンダ210の外壁面には、バンドヒータ(不図示)が配設されており、これにより可塑化シリンダ210が加熱されて、熱可塑性樹脂が可塑化される。
【実施例】
【0065】
このような構造の押出成形機200では、樹脂供給口201から可塑化シリンダ210内に熱可塑性樹脂及びCNFスラリーが供給され、熱可塑性樹脂がバンドヒータによって可塑化されて溶融樹脂となり、スクリュ20が正回転することにより下流に送られる。そして、導入口202近傍まで送られた溶融樹脂は、導入された液体Aと高圧下、接触混練される。次いで、液体Aと接触混練された溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、ガス化したスラリーの溶媒、及び液体Aが溶融樹脂から分離し、ベント203から排気される。そして、さらに前方に送られた溶融樹脂は、ダイ29から押し出される。
【実施例】
【0066】
これにより、可塑化シリンダ210内では、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21、溶融樹脂と導入口202から導入される液体Aを高圧下、接触混練する高圧混練ゾーン22、及び溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、溶融樹脂から分離されたスラリーの溶媒及び液体Aをベント203から排気する減圧ゾーン23が形成される。更に、減圧ゾーン23の下流には、再圧縮ゾーン24が設けられる。
【実施例】
【0067】
以下に各ゾーンについて、更に説明する。可塑化ゾーン21には、上流側から、フィード部21Aと、圧縮部21Bが設けられる。フィード部21Aには、樹脂ペレット材料が供給される樹脂供給口201が設けられており、そこから供給される樹脂ペレット材料に余熱を与える。圧縮部21Bでは、余熱が与えられた樹脂ペレット材料が可塑化溶融される。圧縮部21Bに位置するスクリュ20は、下流に向かうに伴ってスクリュフライト深さが浅くなる構造を有する。このスクリュ20の構造により、圧縮部21Bでは、溶融樹脂は、下流に流動するに伴い加圧される。
【実施例】
【0068】
高圧混練ゾーン22の上流側及び下流側には、それぞれ、上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2が配設されている。上流側シール機構S1は、樹脂の上流側への逆流を抑制できれば任意のシール機構を用いることができ、本実施例では、従来の発泡成形等に用いるシールリングを採用した。下流側シール機構S2は、上流側の高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力をほぼ一定に調整した状態で、下流側の減圧ゾーン23へ溶融樹脂を流動させることができる。下流側シール機構S2の詳細な構造及び機能については後述する。
【実施例】
【0069】
減圧ゾーン23には、上流側から、徐減圧部23Aと、飢餓減圧部23Bとが設けられる。徐減圧部23Aに位置するスクリュ20は、スクリュフライト深さが浅い部分と、深い部分とが交互に配置され、徐減圧部23Aの下流側に続く飢餓減圧部23Bでは、そこに位置するスクリュ20のスクリュフライトの深さが深い。徐減圧部23A及び飢餓減圧部23Bのスクリュ20の形状により、徐減圧部23Aから飢餓減圧部23Bへ流動する溶融樹脂は、徐減圧部23Aにおいて、徐々に圧力が低下する。これにより、溶融樹脂の急減圧を防ぎ、飢餓減圧部23Bに設けられたベント203からのベントアップを抑制できる。また、スクリュフライトの深さが深い飢餓減圧部23Bでは、溶融樹脂の飢餓状態が促進され、これによってもベントアップが抑制される。ここで、「飢餓状態」とは、溶融樹脂が飢餓減圧部23B内に充満せずに未充満となる状態を意味する。
【実施例】
【0070】
(b)液体Aの供給機構
次に、図2に示す液体Aの供給機構100について説明する。供給機構100は、押出成形機200の導入バルブ212に接続しており、液体Aを成形機200に供給する。供給機構100は、液体Aの収容容器(液相タンク)10と、収容容器10から液体Aを吸引後、所定の圧力に昇圧し、更に流量一定で液送可能なダブルプランジャーポンプ11と、ダブルプランジャーポンプ11から送られる液体Aを成形機200に供給する前に圧力調整する背圧弁12とから構成される。更に、背圧弁12の上流側(ダブルプランジャーポンプ11側)と下流側(押出成形機200側)には、それぞれ、圧力計13及び14が設けられている。圧力計13は、背圧弁12によって調整される、背圧弁12より上流側の溶液Aの圧力(ダブルプランジャーポンプ11側の圧力、1次圧力)を示し、圧力計14は、背圧弁12により下流側の溶液Aの圧力(成形機200側の圧力、2次圧力)を示す。
【実施例】
【0071】
(c)下流側シール機構
押出成形機200に備えられる下流側シール機構S2について説明する。下流側シール機構S2は、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23(徐減圧部23A)との境界領域に設けられる。下流側シール機構S2は、高圧混練ゾーン22の溶融樹脂の圧力をほぼ一定に調整した状態で、高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ溶融樹脂を流動させることができる圧力保持機構である。本実施例では、溶融樹脂に液体(CNFスラリーの溶媒及び液体A)が混合されるため、溶融樹脂の粘度が低下する。このように低粘度化した溶融樹脂の圧力を高めるためには、以下に説明するような機械的なシール機構が有効である。一方で、例えば、スクリュフライトの形状設計によって溶融樹脂の圧力を制御する等の手法では、低粘度化した溶融樹脂の圧力制御は難しいと考える。
【実施例】
【0072】
図3に示すように、スクリュ20は、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との境界領域において、内部に溶融樹脂が流動可能なスクリュ内流路30が形成された圧力保持部20Aを有する。下流側シール機構S2は、この圧力保持部20Aと、圧力保持部20Aの外周に設けられた半割シールリング31と、スクリュ20内部に設けられ、スクリュ内流路30を流動する溶融樹脂の流動抵抗となるポペット弁33と、スクリュ20内部に設けられ、ポベット弁33を上流側に付勢する皿バネ34とから主に構成される。
【実施例】
【0073】
スクリュ内流路30は、高圧混練ゾーン22と、減圧ゾーン23とを連通している。一方、半割シールリング31によって、圧力保持部20A(スクリュ20)の外側を通って、高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ溶融樹脂が流動することが妨げられている。したがって、下流側シール機構S2においては、溶融樹脂は、圧力保持部20A内に形成されるスクリュ内流路30を通過して、高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ流動しようとする。
【実施例】
【0074】
このとき、溶融樹脂の圧力(高圧混練ゾーン22の圧力)が所定圧力未満であると、スクリュ内流路30はポベット弁33により遮断され、溶融樹脂は減圧ゾーン23へ流動することができない。そして、スクリュ内流路30がポベット弁33によって遮断された状態のまま、スクリュ20が正回転し、溶融樹脂が可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ流動し続けると、高圧混練ゾーン22の圧力が上昇する。そして、高圧混練ゾーン22の圧力が所定の圧力以上になると、溶融樹脂が皿バネ34のバネ力以上の圧力でポペット弁33を下流方向(図3の左方向)に加圧し、スクリュ内流路30が開放される。これにより、溶融樹脂が、高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ流動することができる。
【実施例】
【0075】
下流側シール機構S2は、高圧混練ゾーン22が一定圧力に達したときにのみ、スクリュ内流路30を開放し、溶融樹脂を高圧混練ソーン22から減圧ゾーン23で流動させる。そして、高圧混練ゾーン22が一定圧力未満となると、再び、ポベット弁33によりスクリュ内流路30が遮断される。このように、下流側シール機構S2は、高圧混練ゾーン22における溶融樹脂の圧力を圧力変動の少ない高圧力に維持できる。この結果、高圧混練ゾーン22では、CNFスラリーは、その液相を維持したまま、溶融樹脂に十分に混練、分散される。本実施例では、高圧混練ゾーン22を8~10MPaに維持できるように、下流側シール機構S2を設計した。
【実施例】
【0076】
(2)樹脂ペレットの製造
以上説明した図2に示す製造装置1000を用いて、熱可塑性樹脂と、CNFと、ブロック共重合体とを含む樹脂ペレットを製造した。
【実施例】
【0077】
水(液体A)を収容容器10に収容した。そして、液体Aをダブルプランジャーポンプ11により吸引、昇圧、液送し、導入バルブ212までの系を加圧した。背圧弁12により、1次圧力(背圧弁12より上流側の液体A圧力)を12MPaに設定し、これにより、2次圧力(背圧弁12より下流側の液体A圧力)を8~11MPaの範囲に調整した。
【実施例】
【0078】
押出成形機200において、バンドヒータ(不図示)により、フィード部21Aを220℃、圧縮部21Bを240℃、高圧混練ゾーン22を190℃、減圧ゾーン23を220℃、再圧縮ゾーン24を220℃に調整した。高圧混練ゾーン22は、液体Aが導入されて溶融樹脂の粘度が急激に低下する。溶融樹脂温度を低温にして、樹脂密度及び樹脂内圧を高く維持するため、高圧混練ゾーン22の温度は他のゾーンよりも低い温度に設定した。
【実施例】
【0079】
まず、ABS樹脂、ブロック共重合体、CNFスラリー(CNF濃度:10重量%)を100重量部、3重量部、40重量部(CNF:4重量部)の割合で混合し、次に、水(CNFスラリーの溶媒)を一部乾燥させた。その後、樹脂供給用ホッパ211から、上記混合物(樹脂ペレット材料)を押出成形機200に供給した。樹脂ペレット材料の押出成形機200への供給は、フィーダースクリュ121により供給量を抑制しながら行った。供給量を抑制することで、フィード部21Aにおいて、樹脂ペレット材料が未充満の状態(飢餓状態)を維持した。
【実施例】
【0080】
スクリュ20を正回転させながら、フィード部21Aで余熱を与え、圧縮部21Bにて、熱可塑性樹脂及びブロック共重合体を可塑化溶融した。更に、スクリュ20を正回転することにより、CNFスラリーを含む溶融樹脂を可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22に流動させた。
【実施例】
【0081】
次に、導入バルブ212を開放して、高圧混練ゾーン22に液体A(水)を8~11MPa(約10MPa)の導入圧力で導入した。液体Aの導入量は、樹脂ペレット材料に対して液体Aが約10重量%となるように調整した。
【実施例】
【0082】
高圧混練ゾーン22内の圧力は、下流側シール機構S2により所定の圧力に調整し、導入口202に対向する位置に設けられた圧力センサー(不図示)によって、8~10MPaの範囲で維持されていることを確認した。190℃に調整された高圧混練ゾーンにおいて、液相(水)を安定に維持する圧力は、約3~5MPaである。したがって、8~10MPaに調整された高圧混練ゾーンでは、CNFスラリーをその液相を維持した状態で溶融樹脂に混合できた。また、更に、溶融樹脂に液体A(水)を混合することで、CNFの凝集を抑制した。
【実施例】
【0083】
スクリュ20を更に正回転させることにより、高圧混練ゾーン22を所定の圧力(8~10MPa)に保持した状態で、溶融樹脂を高圧混練ゾーン22から、下流側シール機構S2を通過させて、減圧ゾーン23へ流動させた。減圧ゾーン23において、徐減圧部23Aから飢餓減圧部23Bへ溶融樹脂を流動させながら徐々に減圧し、飢餓減圧部23Bにおいて溶融樹脂に含まれるスラリーの溶媒(水)及び液体A(水)をガス化して分離した。ガス化した水(水蒸気)は、真空ポンプPにより吸引されて、ベント203からベント容器213を介して可塑化シリンダ210の外部へ排出され、真空ポンプPに接続する回収容器(不図示)に回収された。
【実施例】
【0084】
スクリュ20を更に回転することにより、溶融樹脂を更に下流の再圧縮ゾーン24へ流動させ、その後、可塑化シリンダ210の先端に設けられたダイ29から紐状に押し出し、紐状の成形体を得た。得られた紐状の押出成形体を図示しないペレタイザにてペレット化し、樹脂ペレットを得た。
【実施例】
【0085】
(3)成形体の成形
次に、得られた樹脂ペレットを汎用の射出成形機を用いて射出成形し、60mm×80mm×2mmの平板状の成形体を得た。樹脂温度は230℃、金型温度は70℃とした。得られた成形体の表面には黒点が観察された。この観察結果から、成形体中のCNFの少なくとも一部は凝集したと推測される。
【実施例】
【0086】
(4)エッチング
次に、得られた成形体を40℃のジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGM)に、10分間浸漬し、その後、水洗した。成形体表面には、微細孔が形成された。これは、成形体に含まれるABS樹脂のブタンジエン成分が溶出したためと推測される。
【実施例】
【0087】
(5)無電解メッキ触媒の付与
まず、無電解メッキ触媒液として、50mg/Lの塩化パラジウムを含む、2.0Nの塩酸(塩酸水溶液)を調製した。無電解メッキ触媒液を30℃に調整し、成形体を5分間浸漬した。その後、無電解メッキ触媒液から、成形体を取り出して水洗した。
【実施例】
【0088】
(6)無電解メッキ
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を0.2重量%溶解した無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンHMB)を70℃に調整し、成形体を10分間浸漬し(無電解メッキ時間10分)、膜厚1μmの無電解ニッケルリンメッキ膜を形成した。無電解メッキ膜は、成形体表面の全面に形成された。次に、無電解ニッケルリン膜を形成した成形体を置換銅メッキ液(奥野製薬液工業製、ANCアクチ)に常温で1分間浸漬し、更に、汎用の電解銅メッキ法により、40μmの銅メッキ膜を形成し、本実施例のメッキ成形体を得た。
【実施例】
【0089】
得られたメッキ成形体のメッキ膜の密着強度を引っ張り試験機を用いて測定した。メッキ膜の密着強度は、8N/cmであった。この結果は、成形体上に形成されたメッキ膜の密着強度の目標値である10N/cmに近い値であった。
【実施例】
【0090】
[比較例1]
本比較例では、ABS樹脂とブロック共重合体をドライブレントしたものを射出成形し、得られた成形体に、実施例1と同様の方法により、エッチング、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキをこの順を行いメッキ部品を得た。ABS樹脂とブロック共重合体は、実施例1と同様のものを同様に比率で用いた。即ち、本比較例は、成形体中にCNFを含まない以外は実施例1と同様の組成の成形体を成形し、実施例1と同様の方法により、メッキ部品を製造した。
【実施例】
【0091】
本比較例では、無電解メッキ膜は成形体表面の60%~80%程度しか形成されなかった。また、実施例1と同様の方法により、メッキ膜の密着強度を測定した。その結果、メッキ膜の密着強度は3N/cmであった。
【実施例】
【0092】
実施例1と比較例1との比較から、CNFを成形体中に含有することによって、メッキ反応性及びメッキ膜の密着強度が向上することが確認できた。また、実施例1のメッキ成形体のように、成形体中でCNFが多少凝集している場合も、メッキ反応性及びメッキ膜の密着強度が向上することがわかった。
【実施例】
【0093】
[実施例2]
本実施例では、CNFを含有した樹脂ペレット(ユニチカ製)を成形し、得られた成形体に無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキをこの順を行い、メッキ部品を得た。本実施例では、実施例1異なり、ブロック共重合体は用いず、また、成形体のエッチングは行なわなかった。
【実施例】
【0094】
本実施例で用いたCNF含有樹脂ペレットは、特開2013‐79334号公報に開示される方法により、ポリアミド6(PA6)のモノマー重合反応過程で、CNFを分散させて製造した樹脂ペレットであり、CNFを約2重量%含む。熱可塑性樹脂であるPA6は、表面修飾していないCNFを分散可能であり、本実施例の樹脂ペレット中に含まれるCNFは表面修飾をしていない。
【実施例】
【0095】
(1)成形体の成形
CNF含有樹脂ペレットを汎用の射出成形機を用いて射出成形し、60mm×80mm×2mmの平板状の成形体を得た。樹脂温度は270℃、金型温度は100℃とした。得られた成形体の表面は、平滑であり、CNFの浮きは殆ど目立たなかった。
【実施例】
【0096】
(2)無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
本実施例では、無電解メッキ時間を実施例1よりも短い5分とした以外は、実施例1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与、無電解メッキ、置換銅メッキ及び電解銅メッキを行い、メッキ成形体を得た。無電解メッキ膜は、成形体表面の全面に形成された。
【実施例】
【0097】
実施例1と同様の方法により、メッキ膜の密着強度を測定した。その結果、メッキ膜の密着強度は、15N/cmであった。この結果は、成形体上に形成されたメッキ膜の密着強度の目標値である10N/cmを大幅に超える高い値であった。
【実施例】
【0098】
更に、成形体を高温90℃に30分保持と、低温-35℃に30分保持とを交互に100回繰り返す(100サイクル)ヒートショック試験を行った。ヒートショック試験の結果、メッキ膜の膨れ及び割れは発生しなかった。
【実施例】
【0099】
[比較例2]
本比較例では、CNFを分散しない汎用非強化PA6ペレット(ユニチカ製、ユニチカナイロンA1030BRF-BA)を成形し、得られた成形体に、実施例2と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキをこの順を行い、メッキ部品を得た。即ち、本比較例は、成形体中にCNFを含まない以外は実施例2と同様の組成の成形体を用いて、実施例2と同様の方法により、メッキ部品を製造した。
【実施例】
【0100】
本比較例では、無電解メッキ膜は成形体表面の全面に形成されず、成形体端部に一部、メッキ膜が成形されない箇所が発生した。また、実施例1と同様の方法により、メッキ膜の密着強度を測定した。その結果、メッキ膜の密着強度は7N/cmであった。更に、実施例2と同様の方法により、ヒートショック試験を行った。その結果、本比較例のメッキ成形体は、ヒートショック試験の5サイクル目で、メッキ膜に膨れが生じた。
【実施例】
【0101】
実施例2と比較例2との比較から、CNFを成形体中に含有することによって、メッキ反応性及びメッキ膜の密着強度と共に、ヒートサイクル耐性が向上することが確認できた。
【実施例】
【0102】
[実施例3]
本実施例では、物理発泡剤として加圧窒素を用いて、実施例2で用いた樹脂ペレット(ユニチカ製)を発泡成形した。得られた発泡成形体に無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキをこの順を行い、本実施例のメッキ部品を得た。
【実施例】
【0103】
(1)発泡成形体の製造装置
まず、本実施例で用いる発泡成形体を製造する製造装置について説明する。本実施例では、図4に示す製造装置(射出成形装置)2000を用いて発泡成形体を製造する。製造装置2000は、主に、スクリュ(可塑化スクリュ)40が回転及び進退自在に内設された可塑化シリンダ410と、物理発泡剤を可塑化シリンダ410に供給する物理発泡剤供給機構であるボンベ400と、金型が設けられた型締めユニット(不図示)と、可塑化シリンダ410及び型締めユニットを動作制御するための制御装置(不図示)を備える。可塑化シリンダ410内において可塑化溶融された溶融樹脂は、図4における右手から左手に向かって流動する。したがって本実施例の可塑化シリンダ410内部においては図4における右手を「上流」または「後方」、左手を「下流」または「前方」と定義する。
【実施例】
【0104】
可塑化シリンダ410の上部側面には、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化シリンダ410に供給するための樹脂供給口401及び物理発泡剤を可塑化シリンダ410内に導入するための物理発泡剤導入口402が形成される。これらの樹脂供給口401及び物理発泡剤導入口402にはそれぞれ、樹脂供給用ホッパ411、容器412が配設される。容器412には、ボンベ400が、減圧弁451及び圧力計452を介して接続する。可塑化シリンダ410のノズル先端49には、エアシリンダの駆動により開閉するシャットオフバルブ48が設けられ、可塑化シリンダ410の内部を高圧に保持できる。ノズル先端49には金型(不図示)が密着し、金型が形成するキャビティ内にノズル先端49から溶融樹脂が射出充填される。
【実施例】
【0105】
可塑化シリンダ410内では、上流側から順に、フィード部41、圧縮部42、流動速度調整部43、飢餓部44、再圧縮部45が形成され、圧縮部42と流動速度調整部43の間には、溶融樹脂及び発泡剤の逆流を防止するシールリングS3が設けられる。フィード部41には樹脂供給口401か形成され、樹脂供給口401からフィード部41に供給された樹脂ペレットは、圧縮部42において、可塑化溶融され、加圧される。圧縮部42に位置するスクリュ40は、下流に向かうに伴ってスクリュフライト深さが浅くなる構造を有する。このスクリュ40の構造により、圧縮部42では、溶融樹脂が流動しながら加圧され、そして、下流へ供給される樹脂量が制限される。圧縮部42において溶融樹脂の下流への供給量を制限することで、下流の飢餓部44において溶融樹脂は飢餓状態となる。飢餓部44に設けられた物理発泡剤導入口402からは、常時一定圧力の物理発泡剤(加圧窒素)が可塑化シリンダ410内に導入され、流動速度調整部43及び飢餓部44において溶融樹脂と接触し、溶融樹脂内に浸透する。物理発泡剤が浸透した溶融樹脂は、再圧縮部45で再加圧された後、金型内に射出充填され発泡成形体が得られる。
【実施例】
【0106】
飢餓部44では、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)であるため、溶融樹脂が存在しない空間に常時、一定圧力の物理発泡剤(加圧窒素)が物理発泡剤導入口402から供給され溶融樹脂と接触する。物理発泡剤は、一定圧力で溶融樹脂を加圧しながら、溶融樹脂に溶解する。このように、本実施例の成形装置2000では、高剪断力により物理発泡剤と樹脂を混錬するのではなく、低密度の溶融樹脂に物理発泡剤を接触させることにより、低圧の溶融樹脂に対する飽和溶解度まで物理発泡剤を溶解させることができる。飢餓部44のスクリュフライトの深さは他の部分より深く設定し、溶融樹脂の飢餓状態を促進した。
【実施例】
【0107】
また、飢餓部44では、溶融樹脂を飢餓状態とするため、圧縮部42等と比較して速い流速で溶融樹脂を下流に送ることが好ましい。このため、飢餓部44では、溶融樹脂と物理発泡剤との接触面積は増大するが、接触時間が短縮する。この溶融樹脂と物理発泡剤との接触時間を補い、十分に物理発泡剤を溶融樹脂に溶解させるため、本実施例の成形装置2000では、飢餓部44の上流に流動速度調整部43を設けた。流動速度調整部43では、そこに位置するスクリュ40に、スクリュフライトの深さが浅い部分と、深い部分とを交互に設けた。このスクリュ構造が溶融樹脂の流動抵抗となり、流動速度調整部43では溶融樹脂の流動速度が低下し、溶融樹脂と物理発泡剤との接触時間を長くすることができる。
【実施例】
【0108】
(2)発泡成形体の成形
本実施例では、ボンベ400として、窒素が15MPaで充填された窒素ボンベを用いた。まず、ボンベ400を開放し、圧力計452の示す圧力が2MPaとなるように減圧弁451により窒素の圧力を調整し、容器412を介して飢餓部44へ加圧窒素を供給した。図4において、成形装置2000中に供給した加圧窒素(物理発泡剤)をPFAとして示す(図4中、ドット模様の領域)。成形体の製造中、ボンベ400は常時、開放した状態とした。
【実施例】
【0109】
本実施例の発泡成形は、スクリュ回転数50rpm、樹脂温度250~280℃、背圧5MPaの条件で、樹脂ペレットの可塑化溶融及び計量を行った。まず、可塑化シリンダ410の樹脂供給口401からフィード部41に樹脂ペレットを供給し、圧縮部42にて可塑化溶融して加圧した。その後、スクリュ40の回転により、溶融樹脂を流動速度調整部43及び飢餓部44へ流動させた。流動速度調整部43及び飢餓部44において、一定圧力(2MPa)の物理発泡剤を溶融樹脂に接触させることで、溶融樹脂内に物理発泡剤を浸透させた。図4において、成形装置2000中の溶融樹脂をRとして示す(図4中、可塑化シリンダ410内の斜線領域)。
【実施例】
【0110】
物理発泡剤が浸透した溶融樹脂を再圧縮部45に送り再圧縮し、可塑化シリンダ410の先端部において1ショット分の溶融樹脂を計量した。その後、シャットオブバルブ48を開放して、金型のキャビティ内に、キャビティ内容積の90%の充填率となるように溶融樹脂を射出充填し、保圧をかけず、60mm×80mm×2mmの平板状の発泡成形体を成形した(ショートショット法)。
【実施例】
【0111】
得られた発泡成形体の表面に確認されたスワールマークは小さいものであり、発泡成形が成形体の外観に与える悪影響は小さいことが確認できた。また、成形体の断面をSEMにて観察した。その結果、平均セル径は約30μmと微細であった。
【実施例】
【0112】
(3)無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
本実施例では、無電解メッキ時間を実施例1よりも短い3分とした以外は、実施例1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与、無電解メッキ、置換銅メッキ及び電解銅メッキを行い、メッキ成形体を得た。無電解メッキ膜は、成形体全面に形成された。
【実施例】
【0113】
メッキ膜の密着強度を実施例1と同様の方法により測定した。その結果、メッキ膜の密着強度は、10N/cmであった。この結果は、実施例2よりも低い値であるが、実用的には十分な強度である。本発明者らの検討によれば、CNFの含有の有無に関わらず、発泡成形体は無発泡成形体と比較して、その表面に形成されるメッキ膜の密着強度が低下する傾向にある。この原因は定かでないが、次のように推測される。密着強度測定後(引張試験後)のメッキ成形体を観察すると、メッキ膜の剥離界面は、発泡成形体(樹脂)とメッキ膜の界面ではなく、発泡成形体内部に存在している。この結果から、発泡成形体では、成形体のスキン層が脆弱化し、このため、メッキ膜の密着強度が低下すると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のメッキ成形体の製造方法は、高いメッキ反応性を有する成形体を提供できるため、環境負荷及びコストの低い方法で無電解メッキ膜を形成できる。更に、得られるメッキ成形体は、密着強度の高いメッキ膜を有し、高いヒートサイクル耐性を有する。したがって、本発明により製造されるメッキ成形体は、高い耐久性が要求される用途に広く対応可能である。
【符号の説明】
【0115】
11 ダブルプランジャーポンプ
12 背圧弁
13,14 圧力計
20 スクリュ
20A 圧力保持部
21 可塑化ゾーン
21A フィード部
21B 圧縮部
22 高圧混練ゾーン
23 減圧ゾーン
23A 徐減圧部
23B 飢餓減圧部
24 再圧縮ゾーン
29 ダイ
31 半割シールリング
33 ポペット弁
34 皿バネ
100 供給機構
200 押出成形機
201 樹脂供給口、
202 導入口
203 ベント
210 可塑化シリンダ
211 樹脂供給用ホッパ
212 導入バルブ
213 ベント容器
1000 製造装置
A 液体
P 真空ポンプ
S1 上流側シール機構
S2 下流側シール機構

40 スクリュ(可塑化スクリュ)
41 フィード部
42 圧縮部
43 流動速度調整部
44 飢餓部
45 再圧縮部
48 シャットオフバルブ
49 ノズル先端
400 ボンベ
401 樹脂供給口
402 物理発泡剤導入口
410 可塑化シリンダ
411 樹脂供給用ホッパ
412 容器
451 減圧弁
452 圧力計
2000 製造装置(射出成形装置)
PFA 物理発泡剤
R 溶融樹脂
S3 シールリング
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3