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明細書 :内胚葉系細胞の製造方法、肝臓細胞の製造方法、膵臓細胞の製造方法、内胚葉系細胞の誘導促進剤、肝臓細胞の誘導促進キット、膵臓細胞の誘導促進キット、およびマイクロ流体デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 内胚葉系細胞の製造方法、肝臓細胞の製造方法、膵臓細胞の製造方法、内胚葉系細胞の誘導促進剤、肝臓細胞の誘導促進キット、膵臓細胞の誘導促進キット、およびマイクロ流体デバイス
国際特許分類 C12N   5/0735      (2010.01)
C12M   3/00        (2006.01)
FI C12N 5/0735 ZNA
C12M 3/00 A
国際予備審査の請求
全頁数 55
出願番号 特願2016-566412 (P2016-566412)
国際出願番号 PCT/JP2015/085894
国際公開番号 WO2016/104541
国際出願日 平成27年12月22日(2015.12.22)
国際公開日 平成28年6月30日(2016.6.30)
優先権出願番号 2014261088
優先日 平成26年12月24日(2014.12.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】亀井 謙一郎
【氏名】本田 桃子
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
【識別番号】100194515、【弁理士】、【氏名又は名称】南野 研人
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4B065
Fターム 4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG06
4B065AA90X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BB34
4B065BC41
4B065BD50
4B065CA44
要約 分散された多能性細胞からも内胚葉系細胞を誘導でき、且つ内胚葉系細胞の作製効率が向上した内胚葉系細胞の製造方法を提供する。
本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、多能性細胞から内胚葉系細胞を誘導することにより前記内胚葉系細胞を製造する方法であって、内胚葉系細胞誘導因子の存在下、前記多能性細胞を前記内胚葉系細胞へ誘導する誘導工程を含み、また、前記誘導工程において、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度が、0.5×10~2×10細胞/cmであることが好ましい。
特許請求の範囲 【請求項1】
多能性細胞から内胚葉系細胞を誘導することにより前記内胚葉系細胞を製造する方法であって、
内胚葉系細胞誘導因子の存在下、前記多能性細胞を前記内胚葉系細胞へ誘導する誘導工程を含み、
前記誘導工程において、ROCKタンパク質の活性を抑制することを特徴とする、内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項2】
前記誘導工程において、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度が、0.5×10~2×10細胞/cmである、請求項1記載の内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項3】
前記多能性細胞が、分散された多能性細胞である、請求項1または2記載の内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項4】
前記内胚葉系細胞誘導因子が、TGF-βファミリータンパク質、bFGF、PIKタンパク質の活性抑制物質、GSK-3βタンパク質の活性抑制物質、およびmTORタンパク質の活性抑制物質からなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項5】
前記TGF-βファミリータンパク質が、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項4記載の内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項6】
前記誘導工程が、前記内胚葉系細胞誘導因子を含む多能性細胞用の培養液の存在下、前記多能性細胞を前記内胚葉系細胞へ誘導する誘導工程である、請求項1から5のいずれか一項に記載の内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項7】
前記培養液が、TGF-βファミリータンパク質、bFGF、およびインスリンを含む培養液である、請求項6記載の内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項8】
前記誘導工程において、前記ROCKタンパク質の活性抑制化合物により前記ROCKタンパク質の活性を抑制する、請求項1から7のいずれか一項に記載の内胚葉系細胞の製造方法。
【請求項9】
肝臓細胞分化因子の存在下、内胚葉系細胞を肝臓細胞へ分化させる分化工程を含み、
前記内胚葉系細胞が、請求項1から8のいずれか一項に記載の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることを特徴とする、肝臓細胞の製造方法。
【請求項10】
前記肝臓細胞分化因子が、TGF-βファミリータンパク質、FGF10、およびWNTからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項9記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項11】
前記TGF-βファミリータンパク質が、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項10記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項12】
さらに、肝臓細胞成熟因子の存在下、前記肝臓細胞を成熟させる成熟工程を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項13】
前記成熟工程において、足場上で前記肝臓細胞を成熟させる、請求項12記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項14】
前記足場が、細胞外基質タンパク質を含むコーティングである、請求項13記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項15】
前記足場が、血液成分を含むコーティングである、請求項13記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項16】
前記足場が、組み換えタンパク質を含むコーティングである、請求項13記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項17】
前記肝臓細胞成熟因子が、OSM、HGF、デキサメタゾン、ニコチンアミド、ジメチルスルホキシド、および酪酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の肝臓細胞の製造方法。
【請求項18】
膵臓細胞分化因子の存在下、内胚葉系細胞を膵臓細胞へ分化させる分化工程を含み、
前記内胚葉系細胞が、請求項1から8のいずれか一項に記載の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることを特徴とする、膵臓細胞の製造方法。
【請求項19】
多能性細胞から内胚葉系細胞の誘導に用いる誘導促進剤であって、
ROCKタンパク質の活性抑制物質を含むことを特徴とする、内胚葉系細胞の誘導促進剤。
【請求項20】
前記ROCKタンパク質の活性抑制物質が、前記ROCKタンパク質の活性抑制化合物である、請求項19記載の内胚葉系細胞の誘導促進剤。
【請求項21】
さらに、内胚葉系細胞誘導因子を含む、請求項19または20記載の内胚葉系細胞の誘導促進剤。
【請求項22】
前記内胚葉系細胞誘導因子が、TGF-βファミリータンパク質、bFGF、PIKタンパク質の活性抑制物質、GSK-3βタンパク質の活性抑制物質、およびmTORタンパク質の活性抑制物質からなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項21記載の内胚葉系細胞の誘導促進剤。
【請求項23】
前記TGF-βファミリータンパク質が、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項22記載の内胚葉系細胞の誘導促進剤。
【請求項24】
請求項19から23のいずれか一項に記載の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことを特徴とする、肝臓細胞の誘導促進キット。
【請求項25】
さらに、肝臓細胞分化因子を含む、請求項24記載の肝臓細胞の誘導促進キット。
【請求項26】
前記肝臓細胞分化因子が、TGF-βファミリータンパク質、FGF10、およびWNTからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項25記載の肝臓細胞の誘導促進キット。
【請求項27】
前記TGF-βファミリータンパク質が、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項26記載の肝臓細胞の誘導促進キット。
【請求項28】
さらに、肝臓細胞成熟因子を含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の肝臓細胞の誘導促進キット。
【請求項29】
前記肝臓細胞成熟因子が、OSM、HGF、デキサメタゾン、ニコチンアミド、ジメチルスルホキシド、および酪酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項28記載の肝臓細胞の誘導促進キット。
【請求項30】
さらに、マイクロ流体デバイスを含み、
前記マイクロ流体デバイスが、少なくとも2つの開口部と細胞培養チャンバーとを含み、
前記開口部は、前記細胞培養チャンバーと接続され、
前記細胞培養チャンバー内に前記肝臓細胞と足場とを導入して培養したときに、少なくとも1つの前記開口部から前記細胞培養チャンバーへの前記肝臓細胞成熟因子の供給を前記細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成しながら行うことができるマイクロ流体デバイスである、請求項28または29記載の肝臓細胞の誘導促進キット。
【請求項31】
請求項19から23のいずれか一項に記載の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことを特徴とする、膵臓細胞の誘導促進キット。
【請求項32】
少なくとも2つの開口部と細胞培養チャンバーとを含み、
前記開口部は、前記細胞培養チャンバーと接続され、
前記細胞培養チャンバー内に肝臓細胞と足場とを導入して培養したときに、少なくとも1つの前記開口部から前記細胞培養チャンバーへの肝臓細胞成熟因子の供給を前記細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成しながら行うことができ、
請求項9から17の肝臓細胞の製造方法に使用することを特徴とする、マイクロ流体デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、内胚葉系細胞の製造方法、肝臓細胞の製造方法、膵臓細胞の製造方法、内胚葉系細胞の誘導促進剤、肝臓細胞の誘導促進キット、膵臓細胞の誘導促進キット、およびマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の機能評価等を行うために、ES細胞(胚性幹細胞、embryonic stem cells)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells、iPS細胞)等の多能性細胞から肝臓様細胞(以下、「肝臓細胞」ともいう。)を分化させることが試みられている。前記多能性細胞から前記肝臓細胞を誘導する方法として、肝臓細胞分化に関与する遺伝子を前記多能性細胞に導入する方法が知られている。また、非特許文献1には、細胞塊を形成した前記多能性細胞から前記肝臓細胞を誘導する方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、遺伝子導入では、例えば、導入後の細胞のがん化等の可能性が懸念される。また、前記非特許文献1の方法では、分化の初期段階で大半の細胞が死ぬという問題や、前記肝臓細胞の誘導に適した均一な細胞塊を作製するのが困難という問題があった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Hannan, N.R.F. et.al, “Production of hepatocyte like cells from human pluripotent stem cells”, Nature Protocols, volume 8, number 2, pages 430-437
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、分散された多能性細胞からも内胚葉系細胞を誘導でき、且つ内胚葉系細胞の作製効率が向上した内胚葉系細胞の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、多能性細胞から内胚葉系細胞を誘導することにより前記内胚葉系細胞を製造する方法であって、
内胚葉系細胞誘導因子の存在下、前記多能性細胞を前記内胚葉系細胞へ誘導する誘導工程を含み、
前記誘導工程において、ROCKタンパク質の活性を抑制することを特徴とする。
【0007】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、肝臓細胞分化因子の存在下、内胚葉系細胞を肝臓細胞へ分化させる分化工程を含み、
前記内胚葉系細胞が、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることを特徴とする。
【0008】
本発明の膵臓細胞の製造方法は、膵臓細胞分化因子の存在下、内胚葉系細胞を膵臓細胞へ分化させる分化工程を含み、
前記内胚葉系細胞が、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることを特徴とする。
【0009】
本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、ROCKタンパク質の活性抑制物質を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のマイクロ流体デバイスは、少なくとも2つの開口部と細胞培養チャンバーとを含み、
前記開口部は、前記細胞培養チャンバーと接続され、
前記細胞培養チャンバー内に肝臓細胞と足場とを導入して培養したときに、少なくとも1つの前記開口部から前記細胞培養チャンバーへの肝臓細胞成熟因子の供給を前記細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成しながら行うことができ、
前記本発明の肝臓細胞の製造方法に使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、分散された多能性細胞からも内胚葉系細胞を誘導でき、且つ内胚葉系細胞の作製効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(A)は、実施形態のデバイスの構成を示す斜視図であり、(B)は、図1(A)のI-I’方向からみた模式断面図である。
【図2】図2は、実施例1におけるCXCR4の発現量を示すヒストグラムである。
【図3】図3は、実施例2におけるCXCR4の発現量を示すヒストグラムである。
【図4】図4は、実施例2における細胞数を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2におけるSOX17遺伝子の発現量を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3におけるAFP遺伝子、HNF4α遺伝子およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。
【図7】図7は、実施例4におけるA1ATの発現を示す写真である。
【図8】図8は、実施例4におけるA1ATの発現量を示すヒストグラムである。
【図9】図9は、実施例5におけるインドシアニングリーン(ICG)の取り込みおよび排出を示す写真である。
【図10】図10は、実施例6におけるCYP1A1遺伝子、CYP2C9遺伝子、CYP2C19遺伝子、MRP2遺伝子、MDR/TAP遺伝子、UGT1A1遺伝子、A1AT遺伝子、TDO2遺伝子、HNF4α遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。
【図11】図11は、実施例7におけるA1ATの発現を示す写真である。
【図12】図12は、実施例7におけるICGの取り込みおよび排出を示す写真である。
【図13】図13は、実施例9におけるALB遺伝子、CYP2C19遺伝子、A1AT遺伝子、MDR/TAP遺伝子およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。
【図14】図14は、実施例10におけるNKX6.1およびインスリンの発現を示す写真である。
【図15】図15は、実施例10におけるPTF1α遺伝子、NKX6.1遺伝子、PDX1遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、前記誘導工程において、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度が、0.5×10~2×10細胞/cmであることが好ましい。

【0016】
本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、前記多能性細胞が、分散された多能性細胞であることが好ましい。

【0017】
本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、例えば、前記内胚葉系細胞誘導因子が、TGF-βファミリータンパク質、bFGF、PIKタンパク質の活性抑制物質、GSK-3βタンパク質の活性抑制物質、およびmTORタンパク質の活性抑制物質からなる群から選択された少なくとも1つを含む。前記TGF-βファミリータンパク質は、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含むことが好ましい。

【0018】
本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、例えば、前記誘導工程が、前記内胚葉系細胞誘導因子を含む多能性細胞用の培養液の存在下、前記多能性細胞を前記内胚葉系細胞へ誘導する誘導工程である。また、前記培養液が、TGF-βファミリータンパク質およびbFGFを含む培養液であることが好ましく、TGF-βファミリータンパク質、bFGF、およびインスリンを含む培養液であることがより好ましい。

【0019】
本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、例えば、前記誘導工程において、前記ROCKタンパク質の活性抑制化合物により前記ROCKタンパク質の活性を抑制することが好ましい。

【0020】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、例えば、前記肝臓細胞分化因子が、TGF-βファミリータンパク質、FGF10、およびWNTからなる群から選択された少なくとも1つを含む。前記TGF-βファミリータンパク質は、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含むことが好ましい。

【0021】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、例えば、さらに、肝臓細胞成熟因子の存在下、前記肝臓細胞を成熟させる成熟工程を含む。

【0022】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、前記成熟工程において、足場上で前記肝臓細胞を成熟させることが好ましい。また、前記足場が、細胞外基質タンパク質、血液成分および組み換えタンパク質を含むコーティングからなる群から選択された少なくとも1つであることがより好ましく、前記細胞外基質タンパク質であることがさらに好ましい。

【0023】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、例えば、前記肝臓細胞成熟因子が、OSM、HGF、デキサメタゾン、ニコチンアミド、ジメチルスルホキシド、および酪酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1つを含む。

【0024】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、前記成熟工程において、前記肝臓細胞をマイクロ流体デバイス(以下、「デバイス」ともいう、)内で成熟させ、
前記マイクロ流体デバイスが、少なくとも2つの開口部と細胞培養チャンバーとを含み、
前記開口部は、前記細胞培養チャンバーと接続され、
前記細胞培養チャンバー内に前記肝臓細胞と足場とを導入して培養したときに、少なくとも1つの前記開口部から前記細胞培養チャンバーへの前記肝臓細胞成熟因子の供給を前記細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成しながら行うことができるマイクロ流体デバイスであることが好ましい。また、前記成熟工程において、前記成熟開始時の前記肝臓細胞の細胞密度が、1×10~5×10細胞/cmであることがより好ましい。

【0025】
本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、例えば、前記ROCKタンパク質の活性抑制物質が、前記ROCKタンパク質の活性抑制化合物である。

【0026】
本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、例えば、さらに、内胚葉系細胞誘導因子を含む。前記内胚葉系細胞誘導因子が、TGF-βファミリータンパク質、bFGF、PIKタンパク質の活性抑制物質、GSK-3βタンパク質の活性抑制物質、およびmTORタンパク質の活性抑制物質からなる群から選択された少なくとも1つを含む。前記TGF-βファミリータンパク質は、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含むことが好ましい。

【0027】
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、例えば、さらに、肝臓細胞分化因子を含む。前記肝臓細胞分化因子が、TGF-βファミリータンパク質、FGF10、およびWNTからなる群から選択された少なくとも1つを含む。前記TGF-βファミリータンパク質は、アクチビン、BMP-4、およびNODALからなる群から選択された少なくとも1つを含むことが好ましい。

【0028】
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、例えば、さらに、肝臓細胞成熟因子を含む。前記肝臓細胞成熟因子が、OSM、HGF、デキサメタゾン、ニコチンアミド、ジメチルスルホキシド、および酪酸ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1つを含む。

【0029】
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、さらに、マイクロ流体デバイスを含み、
前記マイクロ流体デバイスが、少なくとも2つの開口部と細胞培養チャンバーとを含み、
前記開口部は、前記細胞培養チャンバーと接続され、
前記細胞培養チャンバー内に前記肝臓細胞と足場とを導入して培養したときに、少なくとも1つの前記開口部から前記細胞培養チャンバーへの前記肝臓細胞成熟因子の供給を前記細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成しながら行うことができるマイクロ流体デバイスであることが好ましい。

【0030】
本発明の膵臓細胞の製造方法および膵臓細胞の誘導促進キットは、例えば、前記膵臓細胞分化因子が、KGF、EGF、FGF2、FGF7、FGF10、ヘッジホッグシグナル阻害剤、レチノイン酸受容体の活性化物質、Noggin、およびALK阻害剤からなる群から選択された少なくとも1つである。

【0031】
本発明において「ROCKタンパク質」は、Rho結合キナーゼ(Rho-associated coiled-coil forming kinase)を意味する。

【0032】
本発明において、「多能性」は、例えば、内胚葉、中胚葉および外胚葉を含む三胚葉への分化能を有することを意味する。また、本発明において、「多能性」は、例えば、全ての細胞への分化能、すなわち全能性を有することも含む。

【0033】
本発明において、「タンパク質の活性抑制」は、例えば、タンパク質の活性を抑制することを意味する。前記抑制のメカニズムは、特に制限されず、例えば、前記タンパク質の活性自体の抑制でもよいし、前記タンパク質の発現抑制でもよい。後者の場合、前記発現抑制は、例えば、ダウンレギュレーションでもよいし、サイレンシングでもよい。前記タンパク質の発現抑制は、例えば、前記標的遺伝子からの転写産物の生成量の減少、前記転写産物の活性の減少、前記標的遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、または前記翻訳産物の活性の減少等によって確認できる。

【0034】
<内胚葉系細胞の製造方法>
本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、前述のように、多能性細胞から内胚葉系細胞を誘導することにより前記内胚葉系細胞を製造する方法であって、内胚葉系細胞誘導因子の存在下、前記多能性細胞を前記内胚葉系細胞へ誘導する誘導工程を含み、前記誘導工程において、ROCKタンパク質(以下、「ROCK」ともいう。)の活性を抑制することを特徴とする。本発明の内胚葉系細胞の製造方法は、前記誘導工程において、ROCKタンパク質の活性を抑制することを特徴とし、その他の工程および条件は、特に制限されない。

【0035】
本発明者らは、鋭意研究の結果、前記多能性細胞から前記内胚葉系細胞の誘導において、前記ROCKの活性を抑制することにより、例えば、誘導中の細胞死を抑制でき、且つ細胞増殖を促進できることを見出した。このため、本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、内胚葉系細胞の作製効率が向上できる。前記多能性細胞から他の細胞を誘導する際に前記ROCKの活性を抑制するということは、例えば、前記先行技術文献の方法等では行われていない方法であり、本発明者らが初めて実施した新規な方法である。また、本発明者らは、鋭意研究の結果、前記ROCKの活性を抑制することにより、分散された前記多能性細胞から前記内胚葉系細胞を誘導できることを確認し、本発明を確立するに至った。このため、本発明では、前記分散された多能性細胞からも前記内胚葉系細胞を誘導できるため、前記先行技術文献のように、細胞塊を形成した前記多能性細胞から前記内胚葉系細胞を誘導する必要がない。このため、本発明によれば、例えば、均一な多能性細胞の細胞塊を作製する必要が無いため、より簡便な操作で、前記内胚葉系細胞を誘導できる。さらに、本発明者らは、メカニズムは不明であるが、本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞を使用することにより、例えば、前記先行技術文献の方法に対して、肝臓細胞および膵臓細胞の誘導および成熟に要する日数を短縮できることを見出した。このため、本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、例えば、より短い期間で成熟肝臓細胞および膵臓細胞を分化可能な内胚葉系細胞を誘導できる。

【0036】
前記多能性細胞は、特に制限されず、例えば、ES細胞、iPS細胞、核移植ES細胞(ntES細胞)、生殖性幹細胞、体性幹細胞、胚性腫瘍細胞等があげられる。前記多能性細胞の由来は、特に制限されず、例えば、ヒトおよびヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、サル、ゴリラ、チンパンジー、マーモセット等の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ヒツジ、ウマ、モルモット等があげられる。

【0037】
前記内胚葉系細胞誘導因子は、例えば、TGF-βファミリータンパク質、bFGF(Basic fibroblast growth factor)、PIKタンパク質(以下、「PIK」ともいう。)の活性抑制物質、GSK-3βタンパク質(以下、「GSK-3β」ともいう。)の活性抑制物質、mTORタンパク質(以下、「mTOR」ともいう。)の活性抑制物質等があげられる。前記TGF-βファミリータンパク質は、特に制限されず、例えば、アクチビンA、BMP-4(bone morphogenetic protein 4)、NODAL等があげられる。前記PIKの活性抑制物質は、特に制限されず、例えば、前記PIKの活性を抑制する化合物、核酸等があげられる。前者の場合、前記PIKの活性抑制化合物は、例えば、公知のPIKの活性抑制化合物が使用でき、例えば、LY294002、Wortmannin、PI828、TG100713、PF05212384等があげられる。後者の場合、前記PIKの活性抑制核酸は、例えば、前記PIKをコードするmRNAを標的とするsiRNA、miRNA等の発現抑制核酸等があげられる。前記GSK-3βの活性抑制物質は、特に制限されず、例えば、前記GSK-3βの活性を抑制する化合物、核酸等があげられる。前者の場合、前記GSK-3βの活性抑制化合物は、例えば、公知のGSK-3βの活性抑制化合物が使用でき、CHIR99021、BIO、MeBIO、SB216763、TWS119、3F8、TC-G24等があげられる。後者の場合、前記GSK-3βの活性抑制核酸は、例えば、前記GSK-3βをコードするmRNAを標的とするsiRNA、miRNA等の発現抑制核酸等があげられる。前記mTORの活性抑制物質は、特に制限されず、例えば、前記mTORの活性を抑制する化合物、核酸等があげられる。前者の場合、前記mTORの活性抑制化合物は、例えば、公知のmTORの活性抑制化合物が使用でき、Rapamycin、KU0063794、PP242、Torin1、Torin2、WYE687 dihydrochloride、XL388等があげられる。後者の場合、前記mTORの活性抑制核酸は、例えば、前記mTORをコードするmRNAを標的とするsiRNA、miRNA等の発現抑制核酸等があげられる。前記内胚葉系細胞誘導因子がタンパク質である場合、前記内胚葉系細胞誘導因子の由来は、前記多能性細胞の由来と同じでもよいし、異なってもよい。前記内胚葉系細胞誘導因子は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。後者の場合、前記内胚葉系細胞誘導因子の組合せは、特に制限されず、例えば、アクチビンA、BMP-4および前記PIKの活性抑制物質の組合せ、アクチビンA、BMP-4、前記PIKの活性抑制物質およびGSK-3βの活性抑制物質の組合せ、アクチビンAおよびGSK-3βの活性抑制物質の組合せ等があげられる。前記内胚葉系細胞誘導因子は、前記多能性細胞から前記内胚葉細胞への誘導において、全期間にわたり同じ前記内胚葉系細胞誘導因子を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記内胚葉系細胞誘導因子を使用してもよい。前記所定期間は、例えば、後述する実施例等を参照できる。

【0038】
前記内胚葉系細胞は、特に制限されず、前記内胚葉由来の細胞に分化できる細胞があげられる。前記内胚葉由来の細胞は、例えば、消化器官系の細胞、肝臓細胞、膵臓細胞等があげられる。前記内胚葉系細胞は、例えば、1種類の前記内胚葉由来の細胞に分化可能でもよいし、2種類以上の前記内胚葉由来の細胞に分化可能でもよい。前記内胚葉系細胞は、例えば、内胚葉系細胞マーカーの発現により確認することができる。前記内胚葉系細胞マーカーは、例えば、SOX17、CXCR4、HNF-3β(FoxA2、hepatocyte nuclear factors-3β)、GSC(goosecoid)等があげられる。ヒト由来SOX17は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_022454で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来CXCR4は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_003467で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来HNF-3βは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_021784またはNM_153675で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来GSCは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_173849で登録されている塩基配列があげられる。本発明の内胚葉系細胞の製造方法において、例えば、1種類の前記内胚葉系細胞マーカーが発現している細胞を前記内胚葉系細胞としてもよいし、2種類以上の前記内胚葉系細胞マーカーが発現している細胞を前記内胚葉系細胞としてもよく、より生体の内胚葉系細胞と性質が近いことから、全ての前記内胚葉系細胞マーカーが発現している細胞を前記内胚葉系細胞とすることが好ましい。

【0039】
前記誘導工程において、前記多能性細胞から前記内胚葉系細胞への誘導は、例えば、培養液(以下、「誘導用培養液」ともいう。)の存在下で培養することにより行うことができる。前記誘導用培養液の存在下で前記多能性細胞の誘導を行う場合、前記誘導用培養液が、例えば、前記内胚葉系細胞誘導因子を含む。前記誘導用培養液は、特に制限されず、例えば、多能性細胞用の培養液、RPMI1640、DMEM、DMEM/F12、Iscove(IMEM)、αMEM等があげられる。前記多能性細胞用の培養液は、例えば、mTeSR-1(STEMCELL Technologies社製)、TeSR-E8(STEMCELL Technologies社製)、CDM-PVA、StemPRO hESC SFM(Life Technologies社製)、E8(Life Technologies社製)等があげられ、好ましくは、mTeSR-1、TeSR-E8、E8である。前記CDM-PVAの組成は、例えば、前記非特許文献1を参照できる。前記誘導用培養液は、例えば、前記内胚葉系細胞への分化効率がより向上することから、TGF-βファミリータンパク質およびbFGFを含む培養液であることが好ましく、TGF-βファミリータンパク質、bFGF、およびインスリンを含む培養液であることがより好ましい。具体例として、これら2または3種類の因子を含む誘導用培養液は、例えば、mTeSR-1、E8等があげられる。前記誘導用培養液は、前記多能性細胞から前記内胚葉細胞への誘導において、全期間にわたり同じ誘導用培養液を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記誘導用培養液を使用してもよい。前記所定期間は、例えば、後述する実施例等を参照できる。

【0040】
前記誘導用培養液は、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、培養補助剤、血清、抗生物質等があげられる。前記培養補助剤は、例えば、GlutaMAX(商標)サプリメント(GIBCO社製)、B-27(登録商標)サプリメント、非必須アミノ酸(NEAA)サプリメント等があげられる。前記抗生物質は、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン等があげられる。

【0041】
前記誘導工程において、前記多能性細胞から前記内胚葉系細胞への誘導は、例えば、フィーダー細胞を使用して行ってもよいし、フィーダー細胞を使用せずに行ってもよい。前記フィーダー細胞は、例えば、マウス胚繊維芽細胞等の公知のフィーダー細胞が使用できる。前記フィーダー細胞を使用しない場合、足場上で前記多能性細胞を成熟させることが好ましい。前記足場は、特に制限されず、例えば、細胞外基質タンパク質を含むコーティング、血液成分を含むコーティング、コーティング剤を含むコーティング、組み換えタンパク質を含むコーティング等があげられ、好ましくは、細胞外基質タンパク質を含むコーティングである。前記細胞外基質タンパク質は、例えば、ラミニン111等のラミニン、コラーゲンI、コラーゲンIV等のコラーゲン、エンタクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン等があげられる。前記細胞外基質タンパク質を含むコーティングは、1種類の前記細胞外基質タンパク質を含んでもよいし、2種類以上の前記細胞外基質タンパク質を含んでもよい。前記細胞外基質タンパク質を含むコーティングは、例えば、マトリゲル(商標)(BD Biosciences社製)、コラーゲン、ラミニン等によるコーティング等があげられる。前記血液成分を含むコーティングは、特に制限されず、例えば、全血、血清、血漿等の血液試料、フィブロネクチン等の血液タンパク質によるコーティングがあげられる。前記コーティング剤は、例えば、Synthemax(登録商標)(Corning社製)等があげられる。前記組み換えタンパク質は、例えば、前述の細胞外基質タンパク質の改変タンパク質および融合タンパク質等があげられる。前記足場は、例えば、前記血清、前記細胞外基質タンパク質等を前記培養容器上でインキュベートすることで作製できる。前記足場は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0042】
前記誘導工程において、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度は、例えば、前記多能性細胞を前記培養容器に播種した際の密度と対応するため、前記多能性細胞の播種密度ということもできる。前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度は、特に制限されず、例えば、0.5×10~2×10細胞/cmであり、前記内胚葉系細胞の分化効率がより向上することから、好ましくは、1×10~7×10細胞/cmであり、より好ましくは、2×10~6×10細胞/cmである。また、前記誘導開始時の前記多能性細胞は、例えば、分散された多能性細胞でもよいし、細胞塊を形成した多能性細胞でもよく、前記内胚葉系細胞の分化効率がより向上することから、好ましくは、分散された多能性細胞である。前記分散された多能性細胞は、例えば、前記細胞塊を形成した多能性細胞をプロテアーゼ処理することにより取得できる。前記プロテアーゼ処理の条件は、特に制限されず、例えば、細胞を分離する一般的な条件があげられる。前記プロテアーゼは、特に制限されず、例えば、細胞培養等に使用されている公知のプロテアーゼがあげられ、具体的には、トリプシン、TrypLE(商標)express(Life Technologies社製)等のトリプシン誘導体、アキュターゼ、コラゲナーゼ、ディスパーゼ等があげられる。前記プロテアーゼ処理は、例えば、EDTA等の公知のカルシウムキレート剤存在下で行ってもよい。前記細胞塊を形成した多能性細胞を使用する場合、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度は、例えば、1×10~2×10細胞/cmであり、前記内胚葉系細胞の分化効率がより向上することから、好ましくは、2.5×10~2×10細胞/cmであり、より好ましくは、5×10~1×10細胞/cmである。また、前記分散された多能性細胞を使用する場合、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度は、例えば、0.5×10~2×10細胞/cmであり、前記内胚葉系細胞の分化効率がより向上することから、好ましくは、1×10~7×10細胞/cmであり、より好ましくは、2×10~6×10細胞/cmである。前記細胞密度は、例えば、前記誘導時に使用する培養容器の培養可能な面積と細胞数とから算出できる。

【0043】
前記誘導工程において、前記多能性細胞から前記内胚葉細胞への誘導を行う日数(以下、「誘導期間」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、3~8日であり、好ましくは、4~5日である。

【0044】
前記誘導工程において、前記ROCKの活性を抑制する方法は、特に制限されず、例えば、前記ROCKの活性抑制物質を使用する方法等があげられる。前記ROCKの活性抑制物質を使用する場合、前記多能性細胞から前記内胚葉系細胞への誘導は、例えば、前記ROCKの活性抑制物質存在下で培養することにより行うことができる。前記ROCKの活性抑制物質は、特に制限されず、例えば、前記ROCKの活性を抑制する化合物、核酸等があげられる。前者の場合、前記ROCK活性抑制化合物は、例えば、公知のROCK活性抑制化合物が使用でき、Y27632、Fasudil(HA1077)等があげられる。後者の場合、前記ROCKの活性抑制核酸は、例えば、前記ROCKをコードするmRNAを標的とするsiRNA、miRNA等の発現抑制核酸等があげられる。前記ROCKの活性抑制物質は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記ROCKの活性抑制物質を使用する場合、前記ROCKの活性抑制物質の濃度は、特に制限されず、例えば、1×10-6~1×10-4mol/Lであり、好ましくは、2×10-6~2×10-5mol/Lである。前記ROCKの活性抑制物質の濃度は、例えば、1種類の前記ROCKの活性抑制物質の濃度でもよいし、2種類以上の前記ROCKの活性抑制物質の濃度の合計の濃度でもよい(以下、同様)。前記ROCK活性抑制化合物は、例えば、前記ROCKにより重合および脱重合が制御されているミオシンの活性を制御してもよいし、前記ROCKを活性化するタンパク質の活性を制御してもよい。前者の場合、前記ROCK活性抑制化合物は、例えば、ミオシンの脱重合剤があげられる。前記ミオシンの脱重合剤は、例えば、公知のミオシンの脱重合剤が使用でき、Blebbistatin等があげられる。

【0045】
前記誘導工程において、前記ROCKの活性を抑制する日数は、特に制限されず、例えば、前述の誘導期間の全期間でもよいし、一部の期間でもよい。後者の場合、前記誘導期間における前記ROCKの活性の抑制の開始日と終了日とは、特に制限されない。前記誘導工程において、例えば、前記内胚葉系細胞の誘導の初期に前記ROCKの活性を抑制することで、前記内胚葉系細胞の分化効率をより向上できることから、前記開始日は、前記誘導期間の開始日が好ましい。前記終了日は、特に制限されず、例えば、前記誘導中の前記多能性細胞が、培養容器への接着性を獲得する日があげられる。前記誘導期間において、前記ROCKの活性を抑制する日数は、特に制限されず、例えば、前記ROCKの活性を抑制する日数(S)と前記誘導期間の日数(I)との比(S:I)が、1:2~7、1:2~6、1:3~4である。具体的に、前記ROCKの活性を抑制する日数は、例えば、1~7日、2~6日、3~4日である。

【0046】
前記誘導工程において、前記内胚葉系細胞誘導因子の濃度は、特に制限されず、例えば、1×10-12~1×10-6mol/Lがあげられる。前記内胚葉系細胞誘導因子の濃度は、例えば、1種類の前記内胚葉系細胞誘導因子の濃度でもよいし、2種類以上の前記内胚葉系細胞誘導因子の濃度の合計の濃度でもよい(以下、同様)。前記内胚葉系細胞誘導因子がTGF-βファミリータンパク質を含む場合、前記TGF-βファミリータンパク質の濃度は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L、1×10-9~5×10-9mol/Lである。前記内胚葉系細胞誘導因子がアクチビンAを含む場合、前記アクチビンAの濃度は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L、1×10-9~5×10-9mol/Lである。前記内胚葉系細胞誘導因子がBMP-4を含む場合、前記BMP-4の濃度は、例えば、1×10-11~1×10-9mol/L、1×10-10~5×10-10mol/Lである。前記内胚葉系細胞誘導因子がbFGFを含む場合、前記bFGFの濃度は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/Lで、1×10-9~5×10-9mol/Lである。前記内胚葉系細胞誘導因子がPIKの活性抑制物質を含む場合、前記PIKの活性抑制物質の濃度は、例えば、1×10-6~1×10-4mol/L、5×10-6~2×10-5mol/Lである。前記内胚葉系細胞誘導因子がGSK-3βの活性抑制物質を含む場合、前記GSK-3βの活性抑制物質の濃度は、例えば、1×10-6~1×10-4mol/L、1×10-6~5×10-6mol/Lである。

【0047】
前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度、前記ROCKの活性抑制物質の濃度および前記内胚葉系細胞誘導因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度が0.5×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記ROCKの活性抑制物質の濃度は、1×10-6~1×10-4mol/Lであり、前記内胚葉系細胞誘導因子の濃度は、1×10-12~1×10-6mol/Lである。なお、3者の組合せについて、例示したが、前記3者のうち、2者を組合せて使用してもよい。

【0048】
前記誘導工程において、培養条件は、特に制限されず、例えば、前記多能性細胞を培養する一般的な培養条件を使用できる。前記誘導工程において、O分圧は、例えば、1~21%であり、CO分圧は、例えば、5~6%である。培養温度は、例えば、36~37℃である。

【0049】
以下に、前記誘導工程について、前記内胚葉系細胞誘導因子が、アクチビンA、BMP-4、bFGF、PIKの活性抑制化合物、およびGSK-3βの活性抑制化合物であり、前記ROCKの活性を、ROCK活性抑制化合物により抑制する例について、説明する。これらは一例であり、本発明を制限するものではない。

【0050】
まず、第1培養液に懸濁した多能性細胞を培養容器に播種する。前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度は、例えば、0.5×10~2×10細胞/cmである。前記第1培養液は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L アクチビンAおよび1×10-6~1×10-4mol/L 前記ROCK活性抑制化合物を含む誘導用培養液である。培養条件は、特に制限されず、O分圧は、例えば、1~21%であり、CO分圧は、例えば、5~6%である。培養温度は、例えば、36~37℃である。そして、前記培養条件下で、例えば、12~48時間培養する。

【0051】
つぎに、前記第1培養液を除去し、第2培養液を添加する。前記第2培養液は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L アクチビンA、1×10-11~1×10-9mol/L BMP-4、1×10-6~1×10-4mol/L PIKの活性抑制化合物、1×10-6~1×10-4mol/L GSK-3βの活性抑制化合物、および1×10-6~1×10-4mol/L 前記ROCK活性抑制化合物を含む誘導用培養液である。そして、前記培養条件で、例えば、12~36時間培養する。

【0052】
つぎに、前記第2培養液を除去し、第3培養液を添加する。前記第3培養液は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L アクチビンA、1×10-11~1×10-9mol/L BMP-4、1×10-6~1×10-4mol/L PIKの活性抑制化合物、および1×10-6~1×10-4mol/L 前記ROCK活性抑制化合物を含む誘導用培養液である。そして、前記培養条件で、例えば、12~36時間培養する。

【0053】
そして、前記培養後の細胞を回収することで、前記内胚葉系細胞を取得できる。前記誘導工程は、さらに、下記の第4培養液を用いた培養を含んでもよい。

【0054】
前記誘導工程が前記第4培養液を用いた培養を含む場合、つぎに、前記第3培養液を除去し、前記第4培養液を添加する。前記第4培養液は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L アクチビンAおよび1×10-10~1×10-7mol/L bFGFを含む誘導用培養液である。そして、前記培養条件で、例えば、12~36時間培養する。

【0055】
そして、前記培養後の細胞を回収することで、前記内胚葉系細胞を取得できる。

【0056】
<肝臓細胞の製造方法>
本発明の肝臓細胞の製造方法は、前述のように、肝臓細胞分化因子の存在下、内胚葉系細胞を肝臓細胞へ分化させる分化工程を含み、前記内胚葉系細胞が、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることを特徴とする。本発明の肝臓細胞の製造方法は、前記内胚葉系細胞が、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の肝臓細胞の製造方法によれば、分散された前記多能性細胞からも前記肝臓細胞を誘導でき、且つ肝臓細胞の作製効率を向上できる。本発明の肝臓細胞の製造方法は、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法の説明を援用できる。

【0057】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、前記分化工程に先立ち、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により、前記内胚葉系細胞を誘導する誘導工程を含んでもよい。前記誘導工程は、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法における誘導工程と同様に実施できる。

【0058】
前記肝臓細胞分化因子は、例えば、TGF-βファミリータンパク質、FGF10(fibroblast growth factor 10)、WNT等があげられる。前記TGF-βファミリータンパク質は、特に制限されず、例えば、アクチビンA、BMP-4、NODAL等があげられる。前記肝臓細胞分化因子がタンパク質である場合、前記肝臓細胞分化因子の由来は、前記内胚葉系細胞の由来、すなわち前述の多能性細胞の由来と同じでもよいし、異なってもよい。前記肝臓細胞分化因子は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。後者の場合、前記肝臓細胞分化因子の組合せは、特に制限されず、例えば、BMP-4およびFGF10の組合せ、BMP-4およびWNTの組合せ等があげられる。前記肝臓細胞分化因子は、前記内胚葉系細胞から前記肝臓細胞への分化において、全期間にわたり同じ前記肝臓細胞分化因子を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記肝臓細胞分化因子を使用してもよい。前記所定期間は、例えば、後述する実施例等を参照できる。

【0059】
前記肝臓細胞は、例えば、肝臓細胞マーカーの発現により確認することができる。前記肝臓細胞マーカーは、例えば、AFP(α-fetoprotein)、HNF4α(hepatocyte nuclear factor 4 alpha)、TAT(tyrosine aminotransferase)、TTR(transthyretin)、ApoF(apolipoprotein F)、CAR(constitutive androstane receptor)、TDO2(tryptophan 2,3-dioxygenase、TO)等があげられる。ヒト由来AFPは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001134で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来HNF4αは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000457で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来TATは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000353で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来TTRは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000371で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来ApoFは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001638で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来CARは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001077469で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来TDO2は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_005651で登録されている塩基配列があげられる。本発明の肝臓細胞の製造方法において、例えば、1種類の前記肝臓細胞マーカーが発現している細胞を前記肝臓細胞としてもよいし、2種類以上の前記肝臓細胞マーカーが発現している細胞を前記肝臓細胞としてもよく、より生体の肝臓細胞と性質が近いことから、全ての前記肝臓細胞マーカーが発現している細胞を前記肝臓細胞とすることが好ましい。

【0060】
前記分化工程において、前記内胚葉系細胞から前記肝臓細胞への分化は、例えば、培養液(以下、「分化用培養液」ともいう。)の存在下で培養することにより行うことができる。前記分化用培養液の存在下で前記肝臓細胞の分化を行う場合、前記分化用培養液が、例えば、前記肝臓細胞分化因子を含む。前記分化用培養液は、特に制限されず、例えば、RPMI1640培地、DMEM、DMEM/F12、Iscove(IMEM)、αMEM等があげられる。前記分化用培養液は、前記内胚葉系細胞から前記肝臓細胞への分化において、全期間にわたり同じ分化用培養液を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記分化用培養液を使用してもよい。前記所定期間は、例えば、後述する実施例等を参照できる。

【0061】
前記分化用培養液は、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、例えば、前述の説明を援用できる。

【0062】
前記分化工程において、前記内胚葉系細胞から前記肝臓細胞への分化は、例えば、フィーダー細胞を使用して行ってもよいし、フィーダー細胞を使用せずに行ってもよい。前記フィーダー細胞は、例えば、前述の説明を援用できる。また、前記フィーダー細胞を使用しない場合、足場上で前記内胚葉系細胞を成熟させることが好ましい。前記足場は、例えば、前述の説明を援用できる。

【0063】
前記分化工程において、前記内胚葉系細胞は、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法で得られた内胚葉系細胞であればよい。本発明の肝臓細胞の製造方法が前記誘導工程を含む場合、前記内胚葉系細胞は、例えば、前記誘導工程において得られた前記内胚葉系細胞をそのまま使用してもよいし、前記誘導工程において得られた前記内胚葉系細胞を回収し、回収した前記内胚葉系細胞を播種して使用してもよい。前記内胚葉系細胞を播種する場合、前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度は、特に制限されず、例えば、1×10~2×10細胞/cmであり、前記肝臓細胞の分化効率がより向上することから、好ましくは、2.5×10~2×10細胞/cmであり、より好ましくは、5×10~1×10細胞/cmである。前記細胞密度は、例えば、前記分化時に使用する培養容器の培養可能な面積と細胞数とから算出できる。

【0064】
前記分化工程において、前記内胚葉系細胞から前記肝臓細胞への分化を行う日数(以下、「分化期間」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、3~14日であり、好ましくは、5~8日である。

【0065】
前記分化工程において、前記肝臓細胞分化因子の濃度は、特に制限されず、例えば、1×10-12~1×10-6mol/Lがあげられる。前記肝臓細胞分化因子の濃度は、例えば、1種類の前記肝臓細胞分化因子の濃度でもよいし、2種類以上の前記肝臓細胞分化因子の濃度の合計の濃度でもよい(以下、同様)。前記肝臓細胞分化因子がTGF-βファミリータンパク質を含む場合、前記TGF-βファミリータンパク質の濃度は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L、1×10-9~5×10-9mol/Lである。前記肝臓細胞分化因子がアクチビンAを含む場合、前記アクチビンAの濃度は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L、1×10-9~5×10-9mol/Lである。前記肝臓細胞分化因子がBMP-4を含む場合、前記BMP-4の濃度は、例えば、1×10-11~1×10-9mol/L、1×10-10~5×10-10mol/Lである。前記肝臓細胞分化因子がFGF10を含む場合、前記FGF10の濃度は、例えば、1×10-13~1×10-11mol/L、1×10-12~1×10-11mol/Lである。前記肝臓細胞分化因子がWNTを含む場合、前記WNTの濃度は、例えば、1×10-14~1×10-11mol/L、2×10-13~1×10-12mol/Lである。

【0066】
前記誘導工程を含む場合、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度および前記肝臓細胞分化因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度が0.5×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記肝臓細胞分化因子の濃度は、1×10-12~1×10-6mol/Lである。

【0067】
前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度および前記肝臓細胞分化因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度が1×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記肝臓細胞分化因子の濃度は、10-12~1×10-6mol/Lである。

【0068】
前記分化工程において、培養条件は、特に制限されず、例えば、前述の誘導工程における培養条件の説明を援用できる。

【0069】
本発明の肝臓細胞の製造方法は、さらに、肝臓細胞成熟因子の存在下、前記肝臓細胞を成熟させる成熟工程を含んでもよい。

【0070】
前記肝臓細胞成熟因子は、例えば、OSM(oncostatin M)、HGF(hepatocyte growth factor/scatter factor)、デキサメタゾン、ニコチンアミド、ジメチルスルホキシド、および酪酸ナトリウム等があげられる。前記肝臓細胞成熟因子がタンパク質である場合、前記肝臓細胞成熟因子の由来は、前記肝臓細胞の由来、すなわち前述の多能性細胞の由来と同じでもよいし、異なってもよい。前記肝臓細胞成熟因子は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。後者の場合、前記肝臓細胞成熟因子の組合せは、特に制限されず、例えば、OSMおよびHGFの組合せ、OSMおよびデキサメタゾンの組合せ等があげられる。前記肝臓細胞成熟因子は、前記肝臓細胞の成熟において、全期間にわたり同じ前記肝臓細胞成熟因子を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記肝臓細胞成熟因子を使用してもよい。前記所定期間は、例えば、後述する実施例を参照できる。

【0071】
成熟した前記肝臓細胞(以下、「成熟肝臓細胞」ともいう。)は、例えば、薬剤代謝マーカー、トランスポーターマーカー、成熟肝臓細胞マーカー等の成熟肝臓細胞マーカーの発現により確認することができる。前記薬剤代謝マーカーは、例えば、CYP1A1(cytochrome P450, family 1, subfamily A, polypeptide 1)、CYP2C9(cytochrome P450 2C9)、CYP2C19(cytochrome P450 2C19)、CYP3A4(cytochrome P450 3A4)等があげられる。ヒト由来CYP1A1は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000499で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来CYP2C9は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000771で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来CYP2C19は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000769で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来CYP3A4は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001202855で登録されている塩基配列があげられる。前記トランスポーターマーカーは、例えば、MRP2(multidrug resistance-associated protein 2)、MDR/TAP(ABCB1、ATP-binding cassette, sub-family B (MDR/TAP), member 1)、UGT1A1(UDP-glucuronosyltransferase 1-1)等があげられる。ヒト由来MRP2は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000392で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来MDR/TAPは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000927で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来UGT1A1は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000463で登録されている塩基配列があげられる。前記成熟肝臓細胞マーカーは、例えば、A1AT(alpha-1 Antitrypsin)、TDO2(tryptophan 2,3-dioxygenase、TO)、ALB(albumin)等があげられる。ヒト由来A1AT1は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001127707、NM_001127706、NM_001127705、NM_001127704、NM_001127703、NM_001127702、NM_001127701、NM_001127700、NM_001002236、NM_001002235、NM_000295等で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来ALBは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000477で登録されている塩基配列があげられる。本発明の肝臓細胞の製造方法において、例えば、1種類の前記成熟肝臓細胞マーカーが発現している細胞を前記成熟肝臓細胞としてもよいし、2種類以上の前記成熟肝臓細胞マーカーが発現している細胞を前記成熟肝臓細胞としてもよく、より生体の成熟肝臓細胞と性質が近いことから、全ての前記成熟肝臓細胞マーカーが発現している細胞を前記成熟肝臓細胞とすることが好ましい。また、前記成熟肝臓細胞マーカーとして、TDO2を使用する場合、他の成熟肝臓細胞マーカーと併用することが好ましい。

【0072】
前記成熟工程において、前記肝臓細胞の成熟は、例えば、培養液(以下、「成熟用培養液」ともいう。)の存在下で培養することにより行うことができる。前記成熟用培養液の存在下で前記肝臓細胞の成熟を行う場合、前記成熟用培養液が、例えば、前記肝臓細胞成熟因子を含む。前記成熟用培養液は、特に制限されず、例えば、前記肝臓細胞用の培養液、RPMI1640、DMEM、DMEM/F12、Iscove(IMEM)、αMEM等があげられる。前記肝臓細胞用培養液は、例えば、Hepatocyte basal medium BulletKit(LONZA社製)等があげられる。前記成熟用培養液は、前記肝臓細胞の成熟において、全期間にわたり同じ成熟用培養液を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記成熟用培養液を使用してもよい。

【0073】
前記成熟用培養液は、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、例えば、前述の説明を援用できる。

【0074】
前記成熟工程において、前記肝臓細胞の成熟は、例えば、フィーダー細胞を使用して行ってもよいし、フィーダー細胞を使用せずに行ってもよい。前記フィーダー細胞は、例えば、前述の説明を援用できる。また、前記フィーダー細胞を使用しない場合、前記成熟工程において、より生体の成熟肝臓細胞に近い性質となることから、足場上で前記肝臓細胞を成熟させることが好ましい。前記足場は、例えば、前述の説明を援用できる。前記成熟工程において、生体の成熟肝臓細胞により近い性質の成熟肝臓細胞を得られることから、前記肝臓細胞の成熟は、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング上で行うことが好ましい。

【0075】
前記成熟工程において、前記肝臓細胞は、例えば、前記分化工程において得られた前記肝臓細胞をそのまま使用してもよいし、前記分化工程において得られた前記肝臓細胞を回収し、回収した前記肝臓細胞を播種してもよい。前記肝臓細胞を播種する場合、前記成熟開始時の前記肝臓細胞の細胞密度は、特に制限されず、例えば、1×10~2×10細胞/cmであり、好ましくは、2.5×10~2×10細胞/cmであり、より好ましくは、5×10~1×10細胞/cmである。前記細胞密度は、例えば、前記成熟時に使用する培養容器の培養可能な面積と細胞数とから算出できる。

【0076】
前記成熟工程において、前記肝臓細胞の成熟を行う日数(以下、「成熟期間」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、5~30日であり、好ましくは、7~18日である。

【0077】
前記成熟工程において、前記肝臓細胞成熟因子の濃度は、特に制限されず、例えば、1×10-11~1×10-7mol/Lがあげられる。前記肝臓細胞成熟因子の濃度は、例えば、1種類の前記肝臓細胞成熟因子の濃度でもよいし、2種類以上の前記肝臓細胞成熟因子の濃度の合計の濃度でもよい(以下、同様)。前記肝臓細胞成熟因子がOSMを含む場合、前記OSMの濃度は、例えば、5×10-10~1×10-8mol/L、1×10-9~5×10-9mol/Lである。前記肝臓細胞成熟因子がHGFを含む場合、前記HGFの濃度は、例えば、5×10-10~1×10-8mol/L、2×10-9~1×10-8mol/Lである。前記肝臓細胞成熟因子がデキサメタゾンを含む場合、前記デキサメタゾンの濃度は、例えば、5×10-9~1×10-7mol/L、1×10-8~1×10-7mol/Lである。前記肝臓細胞成熟因子がニコチンアミドを含む場合、前記ニコチンアミドの濃度は、例えば、1×10-4~1×10-2mol/L、5×10-3~2×10-2mol/Lである。前記肝臓細胞成熟因子がジメチルスルホキシドを含む場合、前記ジメチルスルホキシドの濃度は、例えば、0.001~1%(v/v)、0.01~0.1%(v/v)である。

【0078】
前記誘導工程を含む場合、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度および前記肝臓細胞成熟因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度が0.5×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記肝臓細胞成熟因子の濃度は、1×10-11~1×10-7mol/Lである。

【0079】
前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度および前記肝臓細胞分化因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度が1×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記肝臓細胞分化因子の濃度は、1×10-11~1×10-7mol/Lである。

【0080】
前記成熟開始時の前記肝臓細胞の細胞密度および前記肝臓細胞成熟因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記成熟開始時の前記肝臓細胞の細胞密度が1×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記肝臓細胞成熟因子の濃度は、1×10-11~1×10-7mol/Lである。

【0081】
前記成熟工程において、培養条件は、特に制限されず、例えば、前述の誘導工程における培養条件の説明を援用できる。

【0082】
前記成熟工程において、前記肝臓細胞をマイクロ流体デバイス内で成熟させ、前記マイクロ流体デバイスが、少なくとも2つの開口部と細胞培養チャンバーとを含み、前記開口部は、前記細胞培養チャンバーと接続され、前記細胞培養チャンバー内に前記肝臓細胞と足場とを導入し、培養したときに、少なくとも1つの前記開口部から前記細胞培養チャンバーへの前記肝臓細胞成熟因子の供給を前記細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成しながら行うことができるマイクロ流体デバイスであることが好ましい。

【0083】
前記デバイスは、例えば、3Dプリンタ等を用いて鋳型を形成した後、原料を鋳型に流し込み、重合等により固化させることで得ることができる。前記原料は、特に制限されず、例えば、ジメチルポリシロキサン(PDMS)、ジフェニルシロキサン等のポリシロキサン系ポリマー、シリコーン樹脂/シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、フッ素化ポリマー(PTFE、PVdF等)、ポリ塩化ビニル、ポリメチルハイドロゲンシロキサン、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサン単位のコポリマー等のホモポリマーもしくはコポリマー、およびこれらの混合物があげられ、好ましくは、ポリシロキサン系ポリマーであり、より好ましくは、PDMSである。三次元細胞培養の評価を行いやすいことから、前記デバイスは、透明性は高いことが好ましい。また、前記デバイスは、酸素、二酸化炭素等の気体透過性に優れていることが好ましい。

【0084】
図1に、前記デバイスの一例を示す。図1(A)は、本実施形態のデバイス100の構成を示す斜視図であり、(B)は、図1(A)のI-I’方向からみた模式断面図である。図1に示すように、本実施形態のデバイス100は、2つの細胞培養チャンバー1および、4つの開口部2を含む。デバイス100における細胞培養チャンバー1の個数は、これに限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。前記デバイスをハイスループット用デバイスとする場合、前記細胞培養チャンバーの個数は、例えば、10~400個、より具体的には、16個、48個、96個、384個等があげられる。

【0085】
細胞培養チャンバー1の大きさは、特に制限されず、その一方の開口部から他方の開口部への方向(長さ方向)の長さが、例えば、1000~10000μmであり、その幅が、例えば、100~1000μmであり、その高さが、例えば、100~1000μmである。細胞培養チャンバー1の容積は、特に制限されず、例えば、100~2000μLである。

【0086】
本実施形態のデバイス100において、細胞培養チャンバー1は、例えば、細胞や培養液等を供給可能な2つの開口部2と接続している。これにより、細胞培養チャンバー1において前記肝臓細胞の培養を行いながら、例えば、前記培養液の交換、前記肝臓細胞成熟因子の濃度勾配を有する供給を行うことができる。具体的には、細胞培養チャンバー1の一方の開口部から新しい培養液を供給すれば細胞培養チャンバー1を経由して他方の開口部から古い培養液が排出され、それにより培養液の交換が可能である。本実施形態において、デバイス100は、1つの細胞培養チャンバー1に対して、2つの開口部2を有しているが、デバイス100は、これに限定されず、1つの細胞培養チャンバー1に対して、3つ以上の開口部2を有していてもよい。

【0087】
デバイス100において、開口部2の形状は、円筒形状であるが、デバイス100は、これに限定されず、任意の形状とできる。開口部2が円筒形状の場合、開口部2の大きさは、特に制限されず、その径が、例えば、100~3000μmであり、その高さが、例えば、2000~10000μmである。

【0088】
前記デバイスは、上部に蓋を重ね合わせて培養液の蒸発を防止することが好ましい。

【0089】
開口部2に導入された前記肝臓細胞成熟因子は、例えば、前記足場中を拡散することにより濃度勾配を形成する。前記拡散は、例えば、前記肝臓細胞成熟因子の分子量により変化する。

【0090】
前記デバイスは、例えば、前記肝臓細胞成熟因子の濃度勾配の形成の効率が向上することから、前記細胞培養チャンバー内に狭小部を含むことが好ましい。前記狭小部の形状は、特に制限されず、任意の形状とでき、例えば、円筒形状等があげられる。前記狭小部が円筒状の場合、前記狭小部の大きさは、特に制限されず、その径が、例えば、100~1000μmであり、その長さが、例えば、1000~10000μmである。前記狭小部の径は、例えば、前記肝臓細胞成熟因子の濃度勾配の形成の効率が向上することから、前記開口部の径より小さいことが好ましい。前記細胞培養チャンバー内における前記狭小部の位置は、特に制限されず、例えば、前記細胞培養チャンバーの中央部でもよいし、前記細胞培養チャンバーと前記開口部との接続部でもよいし、その他の位置でもよい。

【0091】
前記デバイスが3つ以上の開口部を有する場合、2つ以上の前記開口部が、例えば、前記狭小部と接続してもよい。2つ以上の前記開口部が前記狭小部と接続することにより、例えば、複数の前記肝臓細胞成熟因子を任意のタイミングで三次元培養細胞に供給することができる。

【0092】
前記肝臓細胞を前記マイクロ流体デバイス内で成熟させる場合、前記成熟開始時の前記肝臓細胞の細胞密度が、1×10~5×10細胞/cmであり、前記成熟工程後に成熟肝臓細胞が3次元構造体を形成することから、好ましくは、1×10~1×10細胞/cmであり、より好ましくは、1×10~5×10細胞/cmである。前記細胞密度は、例えば、前記細胞培養用チャンバーの底面の面積と細胞数とから算出できる。

【0093】
以下に、前記分化工程および前記成熟工程について、前記肝臓細胞分化因子が、アクチビンA、BMP-4、およびbFGFであり、前記肝臓細胞成熟因子が、OSMおよびHGFである例について、説明する。これらは一例であり、本発明を制限するものではない。

【0094】
まず、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により、前記内胚葉系細胞を取得する。つぎに、第5培養液に懸濁した前記内胚葉系細胞を前記培養容器に播種する。前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度は、例えば、1×10~2×10細胞/cmである。前記第5培養液は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L アクチビンAを含む分化用培養液である。培養条件は、特に制限されず、O分圧は、例えば、1~21%であり、CO分圧は、例えば、5~6%である。培養温度は、例えば、36~37℃である。そして、前記培養条件下で、例えば、1~5日培養する。

【0095】
つぎに、前記第5培養液を除去し、第6培養液を添加する。前記第6培養液は、例えば、1×10-11~1×10-9mol/L BMP-4および1×10-13~1×10-11mol/L FGF10を含む分化用培養液である。そして、前記培養条件で、例えば、2~5日培養する。

【0096】
つぎに、前記第6培養液を除去し、第7培養液を添加する。前記第7培養液は、例えば、5×10-10~1×10-8mol/L OSMおよび5×10-10~1×10-8mol/L HGFを含む成熟用培養液である。そして、前記培養条件で、例えば、2~25日培養する。

【0097】
そして、前記培養後の細胞を回収することで、前記成熟肝臓細胞を取得できる。なお、前記肝臓細胞を取得する場合、前記第6培養液での培養後に、前記培養後の細胞を回収することで取得できる。

【0098】
<膵臓細胞の製造方法>
本発明の膵臓細胞の製造方法は、前述のように、膵臓細胞分化因子の存在下、内胚葉系細胞を膵臓細胞へ分化させる分化工程(膵臓分化工程)を含み、前記内胚葉系細胞が、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることを特徴とする。本発明の膵臓細胞の製造方法は、前記内胚葉系細胞が、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られた内胚葉系細胞であることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の膵臓細胞の製造方法によれば、分散された前記多能性細胞からも前記膵臓細胞を誘導でき、且つ膵臓細胞の作製効率を向上できる。本発明の膵臓細胞の製造方法は、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法の説明を援用できる。

【0099】
本発明の膵臓細胞の製造方法は、前記膵臓分化工程に先立ち、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により、前記内胚葉系細胞を誘導する誘導工程を含んでもよい。前記誘導工程は、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法における誘導工程と同様に実施できる。

【0100】
前記膵臓細胞分化因子は、例えば、KGF(keratinocyte growth factor)、EGF(Epidermal Growth Factor)、FGF2、FGF7、FGF10、ヘッジホッグシグナル阻害剤、レチノイン酸受容体(RAR)の活性化物質、Noggin、ALK阻害剤等があげられる。前記RARの活性化物質は、特に制限されず、例えば、RARの活性化させる化合物等があげられる。前記RARの活性化化合物は、例えば、レチノイド、TTNPB(4-[(E)-2-(5,6,7,8-Tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthalenyl)-1-propenyl] benzoic acid)、Tazarotene、Isotretinoin、Adapalene、AM 580、EC 23等があげられる。前記RARの活性化物質は、例えば、RARα、RARβ、およびRARγのいずれか1つを活性化してもよいし、2つ以上を活性化してもよいし、全てを活性化してもよい。前記ヘッジホッグシグナル阻害剤は、特に制限されず、例えば、シクロパミンまたはその誘導体、AY 9944 dihydrochloride、AZ 12080282 dihydrochloride、GANT 58、GANT 61、HPI 1等があげられる。前記シクロパミン誘導体は、例えば、KAAD-CYC(3-Keto-N-aminoethyl-N’-aminocaproyldihydrocinnamoyl cyclopamine)等があげられる。前記ALK(anaplastic lymphoma receptor tyrosine kinase)阻害剤は、特に制限されず、例えば、SB432541等があげられる。前記膵臓細胞分化因子がタンパク質である場合、前記膵臓細胞分化因子の由来は、前記内胚葉系細胞の由来、すなわち前述の多能性細胞の由来と同じでもよいし、異なってもよい。前記膵臓細胞分化因子は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。後者の場合、前記膵臓細胞分化因子の組合せは、特に制限されず、例えば、前記ヘッジホッグシグナル阻害剤、前記RARの活性化物質、およびNogginの組合せ、KGF、Noggin、およびEGFの組合せ等があげられる。前記膵臓細胞分化因子は、前記内胚葉系細胞から前記膵臓細胞への分化において、全期間にわたり同じ前記膵臓細胞分化因子を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記膵臓細胞分化因子を使用してもよい。前記所定期間は、例えば、後述する実施例等を参照できる。

【0101】
前記膵臓細胞は、例えば、膵臓細胞マーカーの発現により確認することができる。前記膵臓細胞マーカーは、例えば、インスリン、PTF1α(Pancreas Specific Transcription Factor 1a)、NKX6.1(Homeobox protein Nkx-6.1)、PDX1(Pancreatic and duodenal homeobox 1)、MAFA(Musculoaponeurotic fibrosarcoma oncogene family A)、MAFB(Musculoaponeurotic fibrosarcoma oncogene family B)、GLUT2(Glucose transporter 2)、SLC2A2(Solute carrier family 2 (facilitated glucose transporter), member 2 )、SLC30A8(Solute carrier family 30 (zinc transporter), member 8)等があげられる。ヒト由来インスリンは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000207で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来PTF1αは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_178161で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来NKX6.1は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_006168で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来PDX1は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000209で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来MAFAは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_201589.3で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来MAFBは、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_005461.4で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来GLUT2は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000340で登録されている塩基配列があげられる。ヒト由来SLC30A8は、cDNAとして、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001172811で登録されている塩基配列があげられる。本発明の膵臓細胞の製造方法において、例えば、1種類の前記膵臓細胞マーカーが発現している細胞を前記膵臓細胞としてもよいし、2種類以上の前記膵臓細胞マーカーが発現している細胞を前記膵臓細胞としてもよく、より生体の膵臓細胞と性質が近いことから、全ての前記膵臓細胞マーカーが発現している細胞を前記膵臓細胞とすることが好ましい。

【0102】
前記膵臓分化工程において、前記内胚葉系細胞から前記膵臓細胞への分化は、例えば、培養液(以下、「膵臓分化用培養液」ともいう。)の存在下で培養することにより行うことができる。前記膵臓分化用培養液の存在下で前記膵臓細胞の分化を行う場合、前記膵臓分化用培養液が、例えば、前記膵臓細胞分化因子を含む。前記膵臓分化用培養液は、特に制限されず、例えば、RPMI1640培地、DMEM、DMEM/F12、Iscove(IMEM)、αMEM等があげられる。前記膵臓分化用培養液は、前記内胚葉系細胞から前記膵臓細胞への分化において、全期間にわたり同じ膵臓分化用培養液を使用してもよいし、所定期間毎に異なる前記膵臓分化用培養液を使用してもよい。前記所定期間は、例えば、後述する実施例等を参照できる。

【0103】
前記膵臓分化用培養液は、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、例えば、前述の説明を援用できる。

【0104】
前記膵臓分化工程において、前記内胚葉系細胞から前記膵臓細胞への分化は、例えば、フィーダー細胞を使用して行ってもよいし、フィーダー細胞を使用せずに行ってもよい。前記フィーダー細胞は、例えば、前述の説明を援用できる。また、前記フィーダー細胞を使用しない場合、足場上で前記内胚葉系細胞を成熟させることが好ましい。前記足場は、例えば、前述の説明を援用できる。

【0105】
前記膵臓分化工程において、前記内胚葉系細胞は、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法で得られた内胚葉系細胞であればよい。本発明の膵臓細胞の製造方法が前記誘導工程を含む場合、前記内胚葉系細胞は、例えば、前記誘導工程において得られた前記内胚葉系細胞をそのまま使用してもよいし、前記誘導工程において得られた前記内胚葉系細胞を回収し、回収した前記内胚葉系細胞を播種して使用してもよい。前記内胚葉系細胞を播種する場合、前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度は、特に制限されず、例えば、1×10~2×10細胞/cm、2.5×10~2×10細胞/cm、5×10~1×10細胞/cmである。前記細胞密度は、例えば、前記分化時に使用する培養容器の培養可能な面積と細胞数とから算出できる。

【0106】
前記膵臓分化工程において、前記内胚葉系細胞から前記膵臓細胞への分化を行う日数(以下、「膵臓分化期間」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、7~21日であり、好ましくは、9~14日である。

【0107】
前記膵臓分化工程において、前記膵臓細胞分化因子の濃度は、特に制限されず、例えば、1×10-4~5×10-5mol/Lがあげられる。前記膵臓細胞分化因子の濃度は、例えば、1種類の前記膵臓細胞分化因子の濃度でもよいし、2種類以上の前記膵臓細胞分化因子の濃度の合計の濃度でもよい(以下、同様)。前記膵臓細胞分化因子がKGFを含む場合、前記KGFの濃度は、例えば、1×10-10~5×10-7mol/L、1×10-9~5×10-8mol/Lである。前記膵臓細胞分化因子がEGFを含む場合、前記EGFの濃度は、例えば、1×10-8~5×10-4mol/L、1×10-7~5×10-5mol/Lである。前記膵臓細胞分化因子がヘッジホッグシグナル阻害物質を含む場合、前記ヘッジホッグシグナル阻害物質の濃度は、例えば、1×10-11~1×10-7mol/L、1×10-10~1×10-8mol/Lである。前記膵臓細胞分化因子がRARの活性化物質を含む場合、前記RARの活性化物質の濃度は、例えば、1×10-7~1×10-4mol/L、5×10-7~1×10-5mol/Lである。前記膵臓細胞分化因子がNogginを含む場合、前記Nogginの濃度は、例えば、1×10-10~1×10-7mol/L、1×10-9~1×10-8mol/Lである。

【0108】
前記誘導工程を含む場合、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度および前記膵臓細胞分化因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度が0.5×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記膵臓細胞分化因子の濃度は、1×10-4~5×10-5mol/Lである。

【0109】
前記膵臓分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度および前記膵臓細胞分化因子の濃度の組合せは、特に制限されず、前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度が1×10~2×10細胞/cmである場合、例えば、前記膵臓細胞分化因子の濃度は1×10-4~5×10-5mol/Lである。

【0110】
前記膵臓分化工程において、培養条件は、特に制限されず、例えば、前述の誘導工程における培養条件の説明を援用できる。

【0111】
以下に、前記膵臓分化工程について、前記膵臓細胞分化因子が、KGF、ヘッジホッグシグナル阻害物質、RARの活性化物質、Noggin、およびEGFである例について、説明する。これらは一例であり、本発明を制限するものではない。

【0112】
まず、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により、前記内胚葉系細胞を取得する。つぎに、第8培養液に懸濁した前記内胚葉系細胞を前記培養容器に播種する。前記分化開始時の前記内胚葉系細胞の細胞密度は、例えば、1×10~2×10細胞/cmである。前記第7培養液は、例えば、1×10-10~5×10-7mol/L KGFを含む膵臓分化用培養液である。培養条件は、特に制限されず、O分圧は、例えば、1~21%であり、CO分圧は、例えば、5~6%である。培養温度は、例えば、36~37℃である。そして、前記培養条件下で、例えば、2~5日培養する。

【0113】
つぎに、前記第8培養液を除去し、第9培養液を添加する。前記第9培養液は、例えば、1×10-11~1×10-7mol/L ヘッジホッグシグナル阻害物質、1×10-7~1×10-4mol/L RARの活性化物質、および1×10-10~1×10-7mol/L Nogginを含む膵臓分化用培養液である。そして、前記培養条件で、例えば、3~9日培養する。

【0114】
つぎに、前記第9培養液を除去し、第10培養液を添加する。前記第10培養液は、例えば、1×10-10~5×10-7mol/L KGF、1×10-10~1×10-7mol/L Noggin、および1×10-8~5×10-4mol/L EGFを含む膵臓分化用培養液である。そして、前記培養条件で、例えば、3~9日培養する。

【0115】
そして、前記培養後の細胞を回収することで、前記膵臓細胞を取得できる。なお、前記第9培養液での培養後、前記培養容器から分化中の前記内胚葉系細胞を回収し、別の培養容器に再播種してもよい。前記再播種時の内胚葉系細胞の細胞密度は、例えば、6×10~4.8×10細胞/cmである。また、この場合、前記第10培養液による培養において、前記ROCKの活性を抑制することが好ましく、具体的には、前記第10培養液が、例えば、前記ROCK活性抑制物質を含む。前記第10培養液における前記ROCK活性抑制物質の濃度は、例えば、1×10-6~1×10-4mol/Lである。

【0116】
<製造方法により得られる細胞>
本発明の内胚葉系細胞は、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法により得られることを特徴とする。本発明の肝臓細胞は、前記本発明の肝臓細胞の製造方法により得られることを特徴とする。本発明の膵臓細胞は、本発明の膵臓細胞の製造方法により得られることを特徴する。本発明の内胚葉系細胞、肝臓細胞、および膵臓細胞の説明は、それぞれ、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法、肝臓細胞の製造方法、および肝臓細胞の製造方法の説明を援用できる。

【0117】
<内胚葉系細胞の誘導促進剤>
本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、前述のように、ROCKタンパク質の活性抑制物質を含むことを特徴とする。本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、前記ROCKの活性抑制物質を含むことを特徴とし、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤によれば、分散された多能性細胞からも内胚葉系細胞を誘導でき、且つ内胚葉系細胞の作製効率を向上できる。本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法等の説明を援用できる。

【0118】
本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、さらに、前述の内胚葉系細胞誘導因子を含んでもよい。

【0119】
本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、各構成要素がそれぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記各構成要素が別個の容器に収納されている場合、本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、内胚葉系細胞の誘導促進キットということもできる。

【0120】
本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤は、前記ROCKの活性抑制物質の他に、その他の構成を含んでもよい。前記構成は、例えば、培養容器、使用説明書等があげられる。前記培養容器は、特に制限されず、例えば、公知の細胞培養用の容器等があげられる。

【0121】
<肝臓細胞の誘導促進キット>
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、前述のように、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことを特徴とする。本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の肝臓細胞の誘導促進キットによれば、分散された多能性細胞からも肝臓細胞を誘導でき、且つ肝臓細胞の作製効率を向上できる。本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法、肝臓細胞の製造方法、および内胚葉系細胞の誘導促進剤等の説明を援用できる。

【0122】
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、さらに、前述の肝臓細胞分化因子を含んでもよい。本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、さらに、前述の肝臓細胞成熟因子を含んでもよい。

【0123】
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、各構成要素がそれぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記各構成要素が同一の容器に混合または未混同で収納されている場合、本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、肝臓細胞の誘導促進剤ということもできる。

【0124】
本発明の肝臓細胞の誘導促進キットは、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤の他に、その他の構成を含んでもよい。前記構成は、例えば、前記培養容器、前述のマイクロ流体デバイス、使用説明書等があげられる。

【0125】
<膵臓細胞の誘導促進キット>
本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、前述のように、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことを特徴とする。本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の膵臓細胞の誘導促進キットによれば、分散された多能性細胞からも膵臓細胞を誘導でき、且つ膵臓細胞の作製効率を向上できる。本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法、膵臓細胞の製造方法、内胚葉系細胞の誘導促進剤、および肝臓細胞の誘導促進キット等の説明を援用できる。

【0126】
本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、さらに、前述の膵臓細胞分化因子を含んでもよい。

【0127】
本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、各構成要素がそれぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記各構成要素が同一の容器に混合または未混同で収納されている場合、本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、膵臓細胞の誘導促進剤ということもできる。

【0128】
本発明の膵臓細胞の誘導促進キットは、前記本発明の内胚葉系細胞の誘導促進剤の他に、その他の構成を含んでもよい。前記構成は、例えば、培養容器、使用説明書等があげられる。前記培養容器は、特に制限されず、例えば、公知の細胞培養用の容器等があげられる。

【0129】
<マイクロ流体デバイス>
本発明のマイクロ流体デバイスは、少なくとも2つの開口部と細胞培養チャンバーとを含み、前記開口部は、前記細胞培養チャンバーと接続され、前記細胞培養チャンバー内に肝臓細胞と足場とを導入して培養したときに、少なくとも1つの前記開口部から前記細胞培養チャンバーへの肝臓細胞成熟因子の供給を前記細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成しながら行うことができ、前記本発明の肝臓細胞の製造方法に使用することを特徴とする。本発明のマイクロ流体デバイスは、前記本発明の肝臓の製造方法に使用することが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明のマイクロ流体デバイスは、例えば、前記本発明の内胚葉系細胞の製造方法等の説明を援用できる。本発明のマイクロ流体デバイスによれば、例えば、三次元構造を有する肝臓細胞が製造できる。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0131】
[実施例1]
異なる培養液を使用し、ROCKの活性を抑制することで、分散された多能性細胞および細胞塊を形成した多能性細胞から、内胚葉系細胞が作製できること、および高い分化効率で前記内胚葉系細胞を作製できることを確認した。
【実施例】
【0132】
(1)内胚葉系細胞の作製
(培養1日目)
24ウェルディッシュ(培養可能な面積:1.9cm/well、BD Falcon(商標)社製)に、ヒトES細胞であるH9細胞株(WiCellから入手)を、分散状態で、1×10細胞/wellとなるように播種し、24時間培養した。培養条件は、37℃、5%COとした。また、培養液は、10μmol/L Y27632(ROCK活性抑制化合物、Wako社製)、および100ng/mL アクチビンA(R&D Systems社製)を含むmTeSR-1(STEMCELL社製)を使用した。mTeSR-1には、100U/mL ペニシリンおよび100U/mL ストレプトマイシンとなるように、ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Wako社製)を予め添加したものを使用した。
【実施例】
【0133】
(培養2日目)
前記培養後、培養1日目の前記培養液を除去し、さらに、同じ組成の前記培養液を各ウェルに添加し、さらに、前記培養条件で1日培養した。
【実施例】
【0134】
(培養3日目)
培養2日目の前記培養液を除去し、10μmol/L Y27632、100ng/mL アクチビンA、10ng/mL BMP-4(R&D Systems社製)、10μmol/L LY294002(PIKの活性抑制化合物、CAYMAN CHEMICAL COMPANY社製)、および3μmol/L CHIR99021(GSK-3βの活性抑制化合物、STEMGENT社製)を含むmTeSR-1を添加した。そして、前記培養条件で24時間培養した。
【実施例】
【0135】
(培養4日目)
培養3日目の前記培養液を除去し、10μmol/L Y27632、100ng/mL アクチビンA、10ng/mL BMP-4および10μmol/L LY294002を含むmTeSR-1を添加した。そして、前記培養条件で24時間培養した。
【実施例】
【0136】
(培養5日目)
培養4日目の前記培養液を除去し、100ng/mL アクチビンA、および10ng/mL BMP-4を含むRPMI/B-27培養液を添加した。そして、前記培養条件で24時間培養した。前記RPMI/B-27培養液は、下記表1の組成の培養液を使用した。
【実施例】
【0137】
【表1】
JP2016104541A1_000003t.gif
【実施例】
【0138】
(2)CXCR4の発現
前記5日目の培養後、各ウェルから細胞を回収した。そして、APC標識抗ヒトCXCR4抗体(クローン名:12G5、BD Pharmigen社製)を用いて、染色した。前記染色後の細胞を、フローサイトメトリー(BD FACSCanto(商標)II、BD Biosciences社製)を用いて、CXCR4の発現を測定した。また、前記培養1~4日目において、mTeSR-1に代えて、TeSR-E8またはCDM-PVAを用いた以外は同様にして、CXCR4の発現を測定した。さらに、前記培養1日目において、分散状態のH9細胞株に代えて、細胞塊を形成しているH9細胞株を播種した以外は同様にして、CXCR4の発現を測定した。コントロールは、前記抗ヒトCXCR4抗体に代えて、APC標識コントロール抗体(クローン名:G155-178、BD Pharmigen社製)を用いた以外は同様にして、CXCR4の発現を測定した。
【実施例】
【0139】
この結果を図2に示す。図2は、CXCR4の発現量を示すヒストグラムである。図2において、横軸は、CXCR4の発現量を示し、縦軸は、細胞数の相対値を示し、各ヒストグラム中の数字は、内胚葉系細胞の割合を示す。また、図2において、上段のヒストグラムは、前記分散された多能性細胞から誘導した結果を示し、下段のヒストグラムは、前記細胞塊を形成した多能性細胞から誘導した結果を示し、網掛けのヒストグラムは、実施例の結果を示し、白抜きのヒストグラムは、コントロールの結果を示す。図2において、各ヒストグラムは、左から、mTeSR-1、TeSR-E8およびCDM-PVAを、それぞれ使用した結果を示す。図2に示すように、いずれの条件においても、内胚葉細胞マーカーであるCXCR4陽性の細胞の割合が80.5%以上であった。また、各培養液を比較した場合、CXCR4強陽性の内胚葉系細胞の割合が、mTeSR-1、TesR-E8およびCDM-PVAの順に高かった。これらの結果から、前記ROCKの活性を抑制することで、分散された多能性細胞および細胞塊を形成した多能性細胞から、高い分化効率で前記内胚葉系細胞を作製できることがわかった。また、本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、前記分散された多能性細胞からも前記内胚葉細胞を誘導できることがわかった。さらに、mTeSR-1およびTeSR-E8が、CDM-PVAに対して高い分化効率を示したことから、TGF-βファミリータンパク質およびbFGFを含む培地を使用することで、前記内胚葉系細胞の作製効率をより向上できることがわかった。
【実施例】
【0140】
[実施例2]
前記誘導開始時に、異なる細胞密度の多能性細胞を播種し、高い分化効率で前記内胚葉系細胞を作製できること、および誘導された細胞において、内胚葉系細胞マーカーであるSOX17が発現していることを確認した。
【実施例】
【0141】
(1)内胚葉系細胞の作製
前記H9細胞株を、5×10細胞/well、1×10細胞/well、または2×10細胞/wellとなるように播種した以外は、前記実施例1と同様にして内胚葉系細胞の誘導を行った。また、分散状態のH9細胞株に代えて、細胞塊を形成しているH9細胞株を播種した以外は同様にして、内胚葉系細胞の誘導を行った。そして、前記誘導後の内胚葉系細胞を回収した。
【実施例】
【0142】
(2)CXCR4の発現
得られた前記内胚葉系細胞について、前記実施例1(2)と同様にして、CXCR4の発現を測定した。コントロールは、前記抗ヒトCXCR4抗体に代えて、前記APC標識コントロール抗体を用いた以外は同様にして、CXCR4の発現を測定した。
【実施例】
【0143】
この結果を図3に示す。図3は、CXCR4の発現量を示すヒストグラムである。図3において、横軸は、CXCR4の発現量を示し、縦軸は、細胞数の相対値を示し、各ヒストグラム中の数字は、内胚葉系細胞の割合を示す。また、図3において、上段のヒストグラムは、前記分散された多能性細胞から誘導した結果を示し、下段のヒストグラムは、前記細胞塊を形成した多能性細胞から誘導した結果を示し、網掛けのヒストグラムは、実施例の結果を示し、白抜きのヒストグラムは、コントロールの結果を示す。図3において、各ヒストグラムは、左から、5×10細胞/well、1×10細胞/well、および2×10細胞/wellの前記H9細胞株を、それぞれ播種した結果を示す。図3に示すように、いずれの条件においても、内胚葉細胞マーカーであるCXCR4陽性の細胞の割合が83.7%以上であった。また、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度を比較した場合、5×10細胞/wellの細胞密度および1×10細胞/wellの細胞密度は、2×10細胞/wellの細胞密度と比較して、CXCR4陽性の内胚葉系細胞の割合が高かった。さらに、CXCR4強陽性の内胚葉系細胞の割合は、5×10細胞/well、1×10細胞/well、および2×10細胞/wellの細胞密度の順に高かった。これらの結果から、前記誘導開始時の前記多能性細胞の細胞密度を低くすること、具体的には、1×10~7×10細胞/cm、より好ましくは、2×10~6×10細胞/cmとすることで、前記内胚葉系細胞の作製効率をより向上できることがわかった。
【実施例】
【0144】
(3)作製後の細胞数
前記(1)で得られた内胚葉系細胞について、細胞数のカウントを行った。
【実施例】
【0145】
この結果を図4に示す。図4は、細胞数を示すグラフである。図4において、横軸は、前記誘導開始時の前記H9細胞株の細胞数を示し、縦軸は、前記誘導後の内胚葉系細胞の細胞数を示す。また、図4において、菱形(◇)は、前記分散された多能性細胞から誘導した結果を示し、四角(□)は、前記細胞塊を形成した多能性細胞から誘導した結果を示す。図4に示すように、いずれの条件においても、前記誘導後の前記内胚葉系細胞の細胞数が、前記誘導開始時の前記H9細胞株の細胞数に対して、6倍以上の細胞数となった。また、前記誘導開始時の分散状態で比較した場合、前記分散された多能性細胞は、前記細胞塊を形成した多能性細胞に対して、前記誘導後の前記内胚葉系細胞の細胞数が多かった。これらの結果から、本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、前記誘導開始時の分散状態によらず、高い作製効率で前記内胚葉系細胞を作製できることがわかった。また、分散された多能性細胞を播種することで、前記内胚葉系細胞の作製効率をより向上できることがわかった。
【実施例】
【0146】
(4)SOX17遺伝子の発現
前記(1)で得られた内胚葉系細胞から、常法により、RNAを抽出した。そして、逆転写酵素およびランダムプライマーを用い、常法により、前記RNAからcDNAを合成した。得られた前記cDNAを鋳型として、PCR試薬(TaKaRa Taq(商標)(Mg2+free Buffer添付)、Takara Bio社製)、リアルタイム(RT)-PCR試薬(Power SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix、ABI社製)およびApplied Biosystems(登録商標)7500リアルタイムPCRシステム(Life Technologies社製)を用い、添付のプロトコルに従って定量的RT-PCRを行い、前記RNA中のSOX17遺伝子のmRNA発現量および内部標準であるGAPDH遺伝子のmRNA発現量を測定した。SOX17遺伝子のmRNA発現量は、前記GAPDH遺伝子のmRNA発現量に対する比として算出した。前記qRT-PCRにおいて、SOX17遺伝子および前記GAPDH遺伝子の増幅には、それぞれ以下のプライマーセットを使用した。
【実施例】
【0147】
SOX17遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号1)5’-CGCACGGAATTTGAACAGTA-3’
(配列番号2)5’-GGATCAGGGACCTGTCACAC-3’
GAPDH遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号3)5’-ACCACAGTCCATGCCATCAC-3’
(配列番号4)5’-TCCACCACCCTGTTGCTGTA-3’
【実施例】
【0148】
この結果を図5に示す。図5は、SOX17遺伝子の発現量を示すグラフである。図5において、横軸は、前記誘導開始時の多能性細胞の細胞密度および分散状態の条件を示し、縦軸は、SOX17遺伝子の発現量を示す。図5に示すように、いずれの条件においても、SOX17遺伝子の発現が確認された。また、前記誘導開始時の分散状態で比較した場合、前記細胞塊を形成した多能性細胞は、前記分散された多能性細胞に対して、SOX17遺伝子の発現量が高かった。これらの結果から、本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、前記内胚葉細胞を誘導できることがわかった。
【実施例】
【0149】
[実施例3]
ROCKの活性を抑制することで、分散された多能性細胞および細胞塊を形成した多能性細胞から、肝臓細胞が作製できることを確認した。
【実施例】
【0150】
(1)内胚葉系細胞の作製
前記H9細胞株を、5×10細胞/well、1×10細胞/well、または2×10細胞/wellとなるように播種した以外は、前記実施例1と同様にして内胚葉系細胞の誘導を行った。また、分散されたH9細胞株に代えて、細胞塊を形成しているH9細胞株を播種した以外は同様にして、内胚葉系細胞の誘導を行った。
【実施例】
【0151】
(2)肝臓細胞の作製
(培養6~8日目)
培養5日目の前記培養液を除去し、50ng/mL アクチビンAを含むRPMI/B-27培養液を添加した。そして、前記培養条件で3日培養した。前記3日の培養中、毎日、前記ウェルの前記培養液を除去し、同じ組成の培養液を添加し、培養した。
【実施例】
【0152】
(培養9~12日目)
培養8日目の前記培養液を除去し、20ng/mL BMP-4、および10ng/mL ヒトFGF10(R&D Systems社製)を含むRPMI/B-27培養液を添加した。そして、前記培養条件で、4日培養した。前記4日の培養中、毎日、前記ウェルの前記培養液を除去し、同じ組成の培養液を添加し、培養した。
【実施例】
【0153】
(3)肝臓細胞マーカーの発現
前記12日目の培養後、各ウェルから細胞を回収した。つぎに、前記内胚葉系細胞に代えて、回収した前記細胞を用いた以外は、前記実施例2(4)と同様にして、cDNAを合成した。そして、得られた前記cDNAを鋳型として、前記PCR試薬、およびサーマルサイクラー(Mastercycler(登録商標) pro、Eppendorf AG社製)を用い、添付のプロトコルに従ってPCRを行い、前記RNA中のAFP遺伝子、HNF4α遺伝子およびGAPDH遺伝子を増幅した。そして、増幅後のPCR液について、1.8%アガロースゲルで泳動した。前記泳動後、前記ゲルは、Gel Red(商標)(Biotium社製)により染色し、AFP遺伝子、HNF4α遺伝子およびGAPDH遺伝子の発現を確認した。前記PCRにおいて、AFP遺伝子およびHNF4α遺伝子の増幅には、それぞれ以下のプライマーセットを使用した。ポジティブコントロールは、前記回収した細胞に代えて、AFP遺伝子およびHNF4α遺伝子を発現しているヒト肝臓がん由来の細胞株であるHepG2細胞(ATCCより入手)を用いた以外は、ネガティブコントロールは、前記cDNAを添加しなかった以外は同様にして、AFP遺伝子、HNF4α遺伝子およびGAPDH遺伝子の発現を確認した。
【実施例】
【0154】
AFP遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号5)5’-AAATGCGTTTCTCGTTGCTT-3’
(配列番号6)5’-GCCACAGGCCAATAGTTTGT-3’
HNF4α遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号7)5’-CCACGGGCAAACACTACGG-3’
(配列番号8)5’-GGCAGGCTGCTGTCCTCAT-3’
【実施例】
【0155】
この結果を図6に示す。図6は、AFP遺伝子、HNF4α遺伝子およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。図6において、写真の上は、サンプルの種類を示し、写真の左は、遺伝子の種類を示し、各レーンは、左から、分散されたH9細胞株を5×10細胞/well、1×10細胞/well、または2×10細胞/well播種した場合、細胞塊のH9細胞株を1×10細胞/well、または2×10細胞/well播種した場合、ポジティブコントロール、およびネガティブコントロールの結果を示す。図6に示すように、ポジティブコントロールは、AFP遺伝子およびHNF4α遺伝子を発現しており、ネガティブコントロールは、AFP遺伝子およびHNF4α遺伝子を発現していなかった。また、実施例のサンプルはいずれも、AFP遺伝子およびHNF4α遺伝子を発現していた。これらの結果から、前記ROCKの活性を抑制することで、分散された多能性細胞および細胞塊を形成した多能性細胞から、高い分化効率で前記肝臓細胞を作製できることがわかった。
【実施例】
【0156】
[実施例4]
ROCKの活性を抑制し、多能性細胞から成熟肝臓細胞が作製できること、および細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用することで、より生体の成熟肝臓細胞と性質が近い成熟肝臓細胞を誘導できることを確認した。
【実施例】
【0157】
(1)足場コートプレートの作製
血液成分を含むコーティング処理をしたプレートは、以下の手順で作製した。まず、前記24ウェルプレートに、0.1%(体積%)ゼラチン溶液を添加し、37℃で30分間静置した。前記ゼラチン溶液を除去し、血清含有培養液を添加し、37℃で24時間以上インキュベートした。前記血清含有培養液は、下記表2の組成とした。また、細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートは、以下の手順で作製した。まず、80μLのマトリゲル(商標)(BD Biosciences社製)と、6mLのDMEM/F12(SIGMA-Ardrich社製)とを混合し、マトリゲル液を作製した。前記24ウェルプレートに、前記マトリゲル液を添加し、4℃で24時間以上インキュベートした。
【実施例】
【0158】
【表2】
JP2016104541A1_000004t.gif
【実施例】
【0159】
(2)肝臓細胞の作製
前記24ウェルプレートに代えて、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートおよび前記胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを用いた以外は、前記実施例1(1)および前記実施例3(2)と同様にして、肝臓細胞を分化させた。
【実施例】
【0160】
(3)成熟肝臓細胞の作製
(培養13日目~)
培養12日目の前記培養液を除去し、30ng/mL OSM(R&D Systems社製)および50ng/mL ヒトHGF(PEPROTECH社製)を含む肝臓細胞用培養液(肝臓細胞成熟用培養液、hepatocyte basal medium、LONZA社製)を添加した。そして、前記培養条件で21日培養した。前記21日の培養中、2日毎に、前記ウェルの前記培養液を除去し、同じ組成の培養液を添加し、培養した。
【実施例】
【0161】
(4)成熟肝臓細胞マーカーの発現
培養33日目の培養液を除去後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で前記ウェルを洗浄した。つぎに、4%ホルムアルデヒドを添加し、24℃で5分間固定した。再度、PBSで前記ウェルを洗浄し、細胞透過液を添加し、細胞膜透過処理を4℃で24時間以上行った。前記細胞透過液は、0.5%(体積%)Triton X-100(Sigma-Aldrich社製)含有PBSを使用した。前記細胞透過処理後、ウサギ抗ヒトA1ATポリクローナル抗体(DAKO社製)と反応させた。さらに、Alexa Fluor(登録商標)488標識抗ウサギIgG抗体を添加し、染色した。そして、DAPI(Life Technologies社製)で核染色を行った。前記染色後のウェルについて、蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse Ti-E、ニコン社製)を用いて観察した。
【実施例】
【0162】
この結果を図7に示す。図7は、A1ATの発現を示す写真である。図7において、上段は、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートを使用した結果を示し、下段は、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用した結果を示す。また、図7において、写真は、左から、位相差像、DAPI染色像、A1AT染色像を示す。図7の位相差像に示すように、いずれの足場でコーティング処理したプレートを使用した場合も、細胞が大型化し、またコロニーも盛り上がるようになり、成熟肝臓細胞であることがわかった。また、いずれの足場でコーティング処理したプレートを使用した場合も、A1ATが強く発現していた。これらの結果から、ROCKの活性を抑制し、多能性細胞から成熟肝臓細胞が作製できることがわかった。
【実施例】
【0163】
(5)成熟肝臓細胞マーカーの発現
図7のA1AT染色像について、ソフトウェア(CellProfiler、Broad Institute製)を使用し、A1ATの染色強度を測定した。
【実施例】
【0164】
この結果を図8に示す。図8は、A1ATの発現量を示すヒストグラムである。図8において、横軸は、A1ATの発現量を示し、縦軸は、細胞数を示す。また、図8において、斜線のバーは、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートを使用した結果を示し、白色のバーは、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用した結果を示す。図8に示すように、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートは、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートに対して、A1ATの発現量が高かった。これらの結果から、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用することで、より生体の成熟肝臓細胞と性質が近い成熟肝臓細胞を誘導できることがわかった。
【実施例】
【0165】
[実施例5]
ROCKの活性を抑制し、多能性細胞から作製した成熟肝臓細胞が成熟肝臓細胞の機能を有することを確認した。
【実施例】
【0166】
(1)成熟肝臓細胞の作製
前記実施例4(3)において、28日培養した以外は、前記実施例4(1)~(3)と同様にして、成熟肝臓細胞を作製した。また、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートに加えて、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを用いた以外は同様にして、成熟肝臓細胞を作製した。
【実施例】
【0167】
(2)成熟肝臓細胞機能の確認
前記ウェルに、1mg/mLとなるようにインドシアニングリーン(ICG)溶液(Sigma-Aldrich社製)を添加した。そして、前記培養条件下で1時間培養し、前記ICGを作製した前記成熟肝臓細胞に取り込ませた。つぎに、前記12日目の培養液で洗浄後、前記培養液を添加した。そして、前記培養条件下で12時間培養することで、ICGを排出させた。
【実施例】
【0168】
この結果を図9に示す。図9は、ICGの取り込みおよび排出を示す写真である。図9において、上段は、ICG取り込み後の結果を示し、下段は、ICG排出後の結果を示す。また、図9において、左側の写真が、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートを使用した結果を示し、右側の写真が、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用した結果を示す。図9の上段において矢印Xで示すように、いずれの足場でコーティング処理したプレートを使用した場合も、ICGの取り込みが観察された。また、図9の下段に示すように、いずれの足場でコーティング処理したプレートを使用した場合も、ICGの排出が観察された。また、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートは、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートに対して、ICGの取り込み効率が高かった。これらの結果から、ROCKの活性を抑制し、多能性細胞から作製した成熟肝臓細胞が成熟肝臓細胞の機能を有することがわかった。また、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用することで、より生体の成熟肝臓細胞と性質が近い成熟肝臓細胞を誘導できることがわかった。
【実施例】
【0169】
[実施例6]
ROCKの活性を抑制することで、多能性細胞から成熟肝臓細胞が作製できることを確認した。
【実施例】
【0170】
(1)成熟肝臓細胞の作製
前記実施例4(3)において、20日培養した以外は、前記実施例4(1)~(3)と同様にして、成熟肝臓細胞を作製した。
【実施例】
【0171】
(2)成熟肝臓細胞マーカーの発現
32日目の培養後、各ウェルから細胞を回収した。つぎに、前記内胚葉系細胞に代えて、回収した前記細胞を用いた以外は、前記実施例2(4)と同様にして、cDNAを合成した。そして、前記実施例3(2)と同様にして、PCRを行い、前記RNA中のCYP1A1遺伝子、CYP2C9遺伝子、CYP2C19遺伝子、MRP2遺伝子、MDR/TAP遺伝子、UGT1A1遺伝子、A1AT遺伝子、TDO2遺伝子、HNF4α遺伝子、およびGAPDH遺伝子を増幅した。そして、増幅後のPCR液について、1.8%アガロースゲルで泳動した。前記泳動後、前記ゲルは、Gel Red(商標)により染色し、CYP1A1遺伝子、CYP2C9遺伝子、CYP2C19遺伝子、MRP2遺伝子、MDR/TAP遺伝子、UGT1A1遺伝子、A1AT遺伝子、TDO2遺伝子、HNF4α遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を確認した。前記PCRにおいて、CYP1A1遺伝子、CYP2C9遺伝子、CYP2C19遺伝子、MRP2遺伝子、MDR/TAP遺伝子、UGT1A1遺伝子、A1AT遺伝子、およびTDO2遺伝子の増幅には、それぞれ以下のプライマーセットを使用し、HNF4α遺伝子およびGAPDH遺伝子の増幅には、それぞれ、前記実施例3(3)および2(4)のプライマーセットを使用した。ポジティブコントロールは、前記回収した細胞に代えて、ヒト肝臓粉砕液(Clontechより入手)を用いた以外は、ネガティブコントロールは、前記cDNAを添加しなかった以外は、コントロール1は、前記回収した細胞に代えて、H9細胞株を用いた以外は、コントロール2は、前記回収した細胞に代えて、HepG2細胞を用いた以外は、同様にして、CYP1A1遺伝子、CYP2C9遺伝子、CYP2C19遺伝子、MRP2遺伝子、MDR/TAP遺伝子、UGT1A1遺伝子、A1AT遺伝子、TDO2遺伝子、HNF4α遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を確認した。
【実施例】
【0172】
CYP1A1遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号9)5’-ACCTGAATGAGAAGTTCTACAGC-3’
(配列番号10)5’-CTGGGGTTCATCACCAAATACA-3’
CYP2C9遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号11)5’-CCCTGGATCCAGATCTGCAA-3’
(配列番号12)5’-TGCTTGTCGTCTCTGTCCCA-3’
CYP2C19遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号13)5’-GGTGCTGCATGGATATGAAGTG-3’
(配列番号14)5’-TGGATCCAGGGGGTGCTTAC-3’
MRP2遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号15)5’-ACCTCCAACAGGTGGCTTGCA-3’
(配列番号16)5’-ACACCAATCTTCTCCATGCTACC-3’
MDR/TAP遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号17)5’-GTGCTGAGTAAGATTCAGCATGGG-3’
(配列番号18)5’-AGCATGTCATCTTCAGTTGCATCCT-3’
UGT1A1遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号19)5’-GTGCCTTTATCACCCATGCT-3’
(配列番号20)5’-TCTTGGATTTGTGGGCTTTC-3’
A1AT遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号21)5’-ACATTTACCCAAACTGTCCATT-3’
(配列番号22)5’-GCTTCAGTCCCTTTCTCGTC-3’
TDO2遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号23)5’-GACGGCTGTCATACAGAGCA-3’
(配列番号24)5’-CGCAGGTAGTGATAGCCTGA-3’
【実施例】
【0173】
この結果を図10に示す。図10は、CYP1A1遺伝子、CYP2C9遺伝子、CYP2C19遺伝子、MRP2遺伝子、MDR/TAP遺伝子、UGT1A1遺伝子、A1AT遺伝子、TDO2遺伝子、HNF4α遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。図10において、写真の上は、レーン番号を示し、写真の左は、遺伝子の種類を示し、各レーンは、左から、作製した成熟肝臓細胞、コントロール1、コントロール2、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールの結果を示す。図10に示すように、ポジティブコントロールは、全ての遺伝子を発現しており、ネガティブコントロールは、全ての遺伝子を発現していなかった。また、作製した成熟肝臓細胞はいずれも、全ての遺伝子を発現していた。これらの結果から、前記ROCKの活性を抑制することで、生体の成熟肝臓細胞と性質が近い成熟肝臓細胞を誘導できることがわかった。
【実施例】
【0174】
[実施例7]
マイクロ流体デバイス内で、ROCKの活性を抑制し、多能性細胞から作製した肝臓細胞を成熟させることで成熟肝臓細胞が得られること、および得られた前記成熟肝臓細胞が、成熟肝臓細胞の機能を有することを確認した。
【実施例】
【0175】
(1)デバイスの作製
3次元画像描画ソフトウェア(3D-CAD、AutoCAD、Blender)により、図1のマイクロ流路デバイスの構造の型となる鋳型デザインを有するマスクを作製した。前記デバイスの細胞培養チャンバーの長さは、9000μm、幅は、1500μm、高さは200μmとした。また、前記デバイスの開口部の径は、1000μm、高さは、5000μmとした。前記デバイスは、使用するまでデシケーター内で保存した。つぎに、鋳型デザインをstlファイルに変換し、変換後のstlファイルを3Dプリンタ(AGILISTA、Keyence社製)に転送し、鋳型を印刷した。
【実施例】
【0176】
Silicone Elastomer BaseとCuring agent(SYLGARD(登録商標)184 Silicone Elastomer kit (base, curing agent)、Dow corning社製)とを10:1の重量比で撹拌ミキサーを用いて混合し、PDMS混合液を作製した。前記PDMS混合液を、前記鋳型に流し込んだ後、前記鋳型をデシケーター内で30分間脱気した。前記脱気後、65℃のオーブンでオーバーナイト加熱した。そして、前記鋳型内で形成されたPDMSを回収した。
【実施例】
【0177】
オムニトレイ(Nuncオムニトレイ、Thermo scientific社製)またはガラスボトムディッシュ(岩城硝子社製)を、コロナフィットCFG-500(信光電気計装株式会社製)を用いてコロナ処理した。また、前記PDMSについても同様に表面をコロナ処理した。つぎに、コロナ処理後の前記オムニトレイまたは前記ガラスボトムディッシュと前記PDMSとを貼り合わせた。そして、65℃のオーブンでオーバーナイト加熱し、図1のデバイスを作製した。
【実施例】
【0178】
(2)肝臓細胞の作製
前記H9細胞株を、1×10細胞/wellとなるように播種した以外は、前記実施例3(1)および(2)と同様にして、肝臓細胞を調製した。得られた前記肝臓細胞は、TrypLE(商標)express含有PBSを使用し、回収した。
【実施例】
【0179】
(3)成熟肝臓細胞の作製
前記デバイスに、10μLの前記血清含有培養液または前記マトリゲル液を導入し、4℃で24時間以上インキュベートした。つぎに、前記デバイスに、前記肝臓細胞成熟用培養液を導入し、前記デバイスの流路を洗浄した。さらに、前記デバイスに、回収した前記肝臓細胞を5×10細胞/デバイス、または1×10細胞/デバイスとなるように導入後、3時間培養し、導入した前記肝臓細胞を接着させた。培養条件は、37℃、5%COとした。また、培養液は、前記肝臓細胞成熟用培養液を使用した。前記培養後、前記肝臓細胞成熟用培養液を導入し、接着していない前記肝臓細胞を除去した。そして、前記肝臓細胞成熟用培養液を毎日交換した以外は、前記実施例4(3)と同様にして、成熟肝臓細胞を作製した。
【実施例】
【0180】
(4)成熟肝臓細胞マーカーの発現
培養33日目の培養液を除去後、前記実施例4(4)と同様にして、成熟肝臓細胞マーカーの発現を、蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【実施例】
【0181】
この結果を図11に示す。図11は、A1ATの発現を示す写真である。図11において、1段目は、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートを使用し、前記肝臓細胞を5×10細胞/デバイスで播種した結果を示し、2段目は、前記血液成分を含むコーティング処理をしたプレートを使用し、前記肝臓細胞を1×10細胞/デバイスで播種した結果を示し、3段目は、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用し、前記肝臓細胞を5×10細胞/デバイスで播種した結果を示し、4段目は、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用し、前記肝臓細胞を1×10細胞/デバイスで播種した結果を示す。また、図11において、写真は、左から、位相差像、DAPI染色像、A1AT染色像を示す。図11の位相差像に示すように、いずれの足場でコーティング処理したプレートを使用した場合も、細胞が大型化し、またコロニーも盛り上がるようになり、成熟肝臓細胞であることがわかった。また、図11の4段目に示すように、前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用し、前記肝臓細胞を1×10細胞/デバイスで播種した場合、成熟肝臓細胞が3次元構造を形成していることがわかった。これらの結果から、前記マイクロ流体デバイス内で、ROCKの活性を抑制し、多能性細胞から作製した肝臓細胞を成熟させることで成熟肝臓細胞が得られることがわかった。また、前記マイクロ流体デバイスを使用し、前記成熟開始時の前記肝臓細胞の細胞密度を高くすること、具体的には、1×10~1×10細胞/cm、より好ましくは、1×10~5×10細胞/cmとすることで、3次元構造を有する成熟肝臓細胞が得られることがわかった。
【実施例】
【0182】
(5)成熟肝臓細胞機能の確認
前記実施例7(4)の前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを使用し、前記肝臓細胞を1×10細胞/デバイスで播種した以外は、前記実施例7(1)~(3)と同様にして、成熟肝臓細胞を作製した。つぎに、前記デバイスに、1mg/mLとなるように前記ICG溶液を添加した。そして、前記培養条件下で1時間培養し、前記ICGを作製した前記成熟肝臓細胞に取り込ませた。さらに、前記肝臓細胞成熟用培養液で洗浄後、前記肝臓細胞成熟用培養液を再度添加した。そして、前記培養条件下で12時間培養することで、ICGを排出させた。
【実施例】
【0183】
この結果を図12に示す。図12は、ICGの取り込みおよび排出を示す写真である。図12において、左側の写真は、ICG取り込み後の結果を示し、右側の写真は、ICG排出後の結果を示す。図12の左側の写真において矢印Xで示すように、ICGの取り込みが観察された。また、図12の右側の写真に示すように、ICGの排出が観察された。これらの結果から、マイクロ流体デバイス内で成熟させた成熟肝臓細胞が成熟肝臓細胞の機能を有することがわかった。
【実施例】
【0184】
[実施例8]
ROCKの活性を抑制することで、多能性細胞から極めた優れた分化効率で前記内胚葉系細胞を作製できることを確認した。
【実施例】
【0185】
全20回、前記実施例1(1)と同様にして、内胚葉系細胞の誘導を行った。そして、5日目において、内胚葉系細胞が誘導されているか否かを確認した。コントロールは、全25回、前記ROCK活性抑制化合物を添加しなかった以外は同様にして、内胚葉系細胞の誘導を行った。そして、5日目において、内胚葉系細胞が誘導されているか否かを確認した。
【実施例】
【0186】
この結果を表3に示す。前記表3に示すように、実施例の内胚葉系細胞の誘導確率は、100%であった。これに対して、コントロールの内胚葉系細胞の誘導確率は、8%であった。これらの結果から、ROCKの活性を抑制することで、多能性細胞から極めた優れた分化効率で前記内胚葉系細胞を作製できることがわかった。
【実施例】
【0187】
【表3】
JP2016104541A1_000005t.gif
【実施例】
【0188】
[実施例9]
ROCKの活性を抑制することで、多能性細胞から、より短い期間で成熟肝臓細胞を作製できることを確認した。
【実施例】
【0189】
(1)肝臓細胞および成熟肝臓細胞の作製
前記細胞外基質タンパク質を含むコーティング処理をしたプレートを用いた以外は、前記実施例4(1)~(3)と同様にして、肝臓細胞および成熟肝臓細胞を作製した。そして、培養20、25、30、および35日目の細胞を回収した。そして、前記内胚葉系細胞に代えて、回収した前記細胞を用いた以外は、前記実施例2(4)と同様にして、cDNAを合成した。そして、得られた前記cDNAを鋳型として、前記PCR試薬、およびサーマルサイクラーを用い、添付のプロトコルに従ってPCRを行い、前記RNA中のALB遺伝子、CYP2C19遺伝子、A1AT遺伝子、MDR/TAP遺伝子、およびGAPDH遺伝子を増幅した。そして、増幅後のPCR液について、1.8%アガロースゲルで泳動した。前記泳動後、前記ゲルは、Gel Red(商標)により染色し、ALB遺伝子、CYP2C19遺伝子、A1AT遺伝子、MDR/TAP遺伝子およびGAPDH遺伝子の発現を確認した。前記PCRにおいて、ALB遺伝子の増幅には、以下のプライマーセットを使用し、GAPDH遺伝子の増幅には、前記実施例2(4)のプライマーセットを使用し、CYP2C19遺伝子、A1AT遺伝子、およびMDR/TAP遺伝子の増幅には、前記実施例6(2)のプライマーセットを使用した。ポジティブコントロールは、前記回収した細胞に代えて、前記ヒト肝臓粉砕液を用いた以外は、ネガティブコントロールは、前記cDNAを添加しなかった以外は、コントロール1は、前記回収した細胞に代えて、H9細胞株を用いた以外は、コントロール2は、前記回収した細胞に代えて、HepG2細胞を用いた以外は、同様にして、ALB遺伝子、CYP2C19遺伝子、A1AT遺伝子、MDR/TAP遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を確認した。
【実施例】
【0190】
ALB遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号25)5’-TTGGCACAATGAAGTGGGTA-3’
(配列番号26)5’-AAAGGCAATCAACACCAAGG-3’
【実施例】
【0191】
この結果を図13に示す。図13は、ALB遺伝子、CYP2C19遺伝子、A1AT遺伝子、MDR/TAP遺伝子およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。図13において、写真の上は、サンプルの種類を示し、写真の左は、遺伝子の種類を示し、各レーンは、左から、コントロール1、コントロール2、ポジティブコントロール、ネガティブコントロール、培養20日目のサンプル、培養25日目のサンプル、培養30日目のサンプル、培養35日目のサンプルの結果を示す。図13に示すように、ポジティブコントロールは、全ての遺伝子を発現しており、ネガティブコントロールは、全ての遺伝子を発現していなかった。また、培養20~35日目のサンプルは、全ての遺伝子を発現していた。これらの結果から、前記ROCKの活性を抑制することで、培養20日目においても、生体の成熟肝臓細胞と性質が近い成熟肝臓細胞を誘導できることがわかった。すなわち、本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、35日の培養期間を要する非特許文献1の方法に対して、より短い期間で成熟肝臓細胞を分化可能な内胚葉系細胞を誘導できることがわかった。
【実施例】
【0192】
[実施例10]
ROCKの活性を抑制することで、分散された多能性細胞から、膵臓細胞が作製できることを確認した。
【実施例】
【0193】
(1)内胚葉系細胞の作製
前記24ウェルディッシュに代えて、Nunc(商標)4ウェルディッシュ(Thermo Scientific社製)を用い、前記H9細胞株に代えて、人工多能性幹細胞(253G1 hiPSCs、京都大学iPS細胞研究所山中研究室より分与)を用いた以外は、前記実施例1(1)の培養1~4日目と同様にして、内胚葉系細胞を作製した。なお、前記4ウェルディッシュは、10(v/v)%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12培養液を添加し、37℃で24時間以上静置することにより、コーティング処理を行ったディッシュを用いた。
【実施例】
【0194】
(2)膵臓細胞の作製
(培養5~7日目)
前記4日目の培養液を除去し、100μg/mL KGF(R&D systems社製)を含むiMEM/B-27培養液を添加した。そして、前記培養条件で3日培養した。前記iMEM/B-27培養液は、下記表4の組成の培養液を使用した。前記3日の培養中、毎日、前記ウェルの前記培養液を除去し、同じ組成の培養液を添加し、培養した。
【実施例】
【0195】
【表4】
JP2016104541A1_000006t.gif
【実施例】
【0196】
(培養8~10日目)
前記7日目の培養液を除去し、1mmol/L KAAD-CYC(Toronto Research Chemicals Inc.社製)、10μmol/L TTNPB(Tocris社製)および100μg/mL Nogginを含むiMEM/B-27培養液を添加した。そして、前記培養条件で3日培養した。前記3日の培養中、毎日、前記ウェルの前記培養液を除去し、同じ組成の培養液を添加し、培養した。
【実施例】
【0197】
(培養11~16日目)
前記10日目の培養液を除去後、0.25% トリプシンおよび0.48mmol/L EDTAを含むPBSを添加し、3分間処理した。前記処理後、細胞を回収し、遠心後上清を除去した。さらに、10μmol/L Y27632、100μg/mL KGF、100μg/mL Nogginおよび500μg/mL EGF(R&D systems社製)を含むiMEM/B-27培養液を添加し、細胞を懸濁後、前記4ウェルディッシュに、2×10細胞/wellとなるように播種し、前記培養条件で6日培養した。前記6日の培養中、毎日、前記ウェルの前記培養液を除去し、同じ組成の培養液を添加し、培養した。
【実施例】
【0198】
(3)膵臓細胞マーカータンパク質の発現
培養16日目の培養液を除去後、PBSで前記ウェルを洗浄した。つぎに、4%ホルムアルデヒドを添加し、24℃で5分間固定した。再度、PBSで前記ウェルを洗浄し、細胞透過液を添加し、細胞膜透過処理を4℃で24時間以上行った。前記細胞透過液は、0.5%(体積%)Triton X-100含有PBSを使用した。前記細胞透過処理後、ウサギ抗ヒトNKX6.1ポリクローナル抗体(R&D systems社製)またはウサギ抗ヒトインスリンポリクローナル抗体(Abcam社製)と反応させた。さらに、Alexa Fluor(登録商標)488標識抗ウサギIgG抗体を添加し、染色した。そして、DAPIで核染色を行った。前記染色後のウェルについて、前記蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【実施例】
【0199】
この結果を図14に示す。図14において、(A)は、NKX6.1の発現を示す写真であり、(B)は、インスリンの発現を示す写真である。図14(A)において、写真は、左から、位相差像、DAPI染色像、NKX6.1染色像を示し、(B)において、写真は、左から、位相差像、DAPI染色像、インスリン染色像を示す。図14(A)および(B)に示すように、培養16日目の膵臓細胞は、膵臓細胞マーカーであるNKX6.1およびインスリンを発現していた。これらの結果から、前記ROCKの活性を抑制することで、分散された多能性細胞から前記膵臓細胞を作製できることがわかった。
【実施例】
【0200】
(4)膵臓細胞マーカー遺伝子の発現
前記16日目の培養後、各ウェルから細胞を回収した。つぎに、前記内胚葉系細胞に代えて、回収した前記細胞を用いた以外は、前記実施例2(4)と同様にして、cDNAを合成した。そして、PTF1α遺伝子、NKX6.1遺伝子、およびPDX1遺伝子のプライマーセットとして、以下のプライマーセットを用いた以外は、前記実施例3(3)と同様にして、PTF1α遺伝子、NKX6.1遺伝子、PDX1遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を確認した。
【実施例】
【0201】
PTF1α遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号27)5’-CCCCAGCGACCCTGATTA-3’
(配列番号28)5’-GGACACAAACTCAAATGGTGG-3’
NKX6.1遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号29)5’-ATTCGTTGGGGATGACAGAG-3’
(配列番号30)5’-TGGGATCCAGAGGCTTATTG-3’
PDX1遺伝子増幅用プライマーセット
(配列番号31)5’-AGCAGTGCAAGAGTCCCTGT-3’
(配列番号32)5’-CACAGCCTCTACCTCGGAAC-3’
【実施例】
【0202】
この結果を図15に示す。図15は、PTF1α遺伝子、NKX6.1遺伝子、PDX1遺伝子、およびGAPDH遺伝子の発現を示す写真である。図15において、写真の左は、遺伝子の種類を示す。図15に示すように、培養16日目の膵臓細胞は、膵臓細胞マーカーであるPTF1α遺伝子、NKX6.1遺伝子、およびPDX1遺伝子を発現していた。これらの結果から、前記ROCKの活性を抑制することで、分散された多能性細胞から前記膵臓細胞を作製できることがわかった。
【実施例】
【0203】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【実施例】
【0204】
この出願は、2014年12月24日に出願された日本出願特願2014-261088を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0205】
以上のように、本発明の内胚葉系細胞の製造方法によれば、分散された多能性細胞からも内胚葉系細胞を誘導でき、且つ内胚葉系細胞の作製効率を向上できる。このため、本発明は、再生医療等の臨床分野、医療分野、生命科学分野等において極めて有用である。
【符号の説明】
【0206】
1 細胞培養チャンバー
2 開口部
100 デバイス

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14