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明細書 :含フッ素有機酸の選択的分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-144800 (P2016-144800A)
公開日 平成28年8月12日(2016.8.12)
発明の名称または考案の名称 含フッ素有機酸の選択的分離方法
国際特許分類 B01D  61/02        (2006.01)
C02F   1/44        (2006.01)
B01D  69/02        (2006.01)
FI B01D 61/02 500
C02F 1/44 D
B01D 69/02
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-010018 (P2016-010018)
出願日 平成28年1月21日(2016.1.21)
優先権出願番号 2015017005
優先日 平成27年1月30日(2015.1.30)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】徳野 敏
【氏名】倉光 正起
【氏名】柴田 典明
【氏名】田中 周平
【氏名】林 益啓
【氏名】石川 一真
出願人 【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100158、【弁理士】、【氏名又は名称】鮫島 睦
【識別番号】100132252、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 環
審査請求 未請求
テーマコード 4D006
Fターム 4D006GA03
4D006MA11
4D006MB05
4D006MC33
4D006MC54
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB08
4D006PB12
4D006PB13
4D006PB15
4D006PB70
要約 【課題】必要なエネルギーおよび時間が少なく、さらに炭素数2~7の含フッ素有機酸を選択的に除去することができる処理方法を提供すること。
【解決手段】半透膜を用いる逆浸透を利用して、炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液中のパーフルオロヘキサン酸を分離する方法であって、半透膜が、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位を有することを特徴とする方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
濾過により炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液中の炭素数2~7の含フッ素有機酸を分離する方法であって、濾過膜が、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
濾過が逆浸透により行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
濾過膜の分画分子量が、5000Da以上50000Da以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
濾過膜の分画分子量が、8000Da以上30000Da以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
濾過膜の分画分子量が、15000Da以上25000Da以下であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
濾過膜の表面ゼータ電位が、-30mV以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
濾過膜の表面ゼータ電位が、-50mV以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
濾過膜の表面ゼータ電位が、-80mV以下であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
濾過膜の分画分子量が5000Da以上50000Da以下であり、表面ゼータ電位が-30mV以下であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
炭素数2~7の含フッ素有機酸が、炭素数2~7の含フッ素カルボン酸またはその塩であることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
炭素数2~7の含フッ素カルボン酸が、式(i):
-Rf-COOH (i)
[式中、Xは、H、FまたはClであり、Rfは、炭素数1~6の直鎖または分枝状のフルオロアルキレン基、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基、または、ポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基である。]
で表される含フッ素カルボン酸、または式(i-a):
-Rf-COOH (i-a)
[式中、Xは、HまたはFであり、Rfは、式(a):
(CF-(CFOCF-(CFOCF(CF)) (a)
(式(a)中、lは0または1~4の整数であり、mは0または1~3の整数であり、nは0、1または2であり、ただし、l+2m+3nは6を超えないこと、mおよびnの両方が0である場合は除かれること、および上記括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。)
で示される基である。]
で示されるパーフルオロカルボン酸であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炭素数2~7の含フッ素有機酸において、炭素数が5~7であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
炭素数2~7の含フッ素有機酸が、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFCFOCFCFOCFCOOH、
CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、
CFCFOCFCFOCFCOOH、
CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、
CF(CFCOOH、
CFCFCFOCF(CF)COOH、
F(CFCHCFCOOH
H(CFCOOH、
H(CFCOOH、または
CH=CFCFOCF(CF)COOH
であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
濾過膜を備える炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液の濾過システムであって、半透膜が、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位を有することを特徴とする濾過システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素有機酸の選択的分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フロオロカルボン酸などの含フッ素有機酸は、撥水作用、界面活性作用等に優れており、撥水スプレー、表面コーティング剤、消化剤、ワックス等に使用されてきた。従来、代表的なフルオロカルボン酸としてパーフルオロオクタンスルホン酸(以下、「PFOS」ともいう)およびパーフルオロオクタンカルボン酸(以下、「PFOA」ともいう)が広く用いられてきた。しかしながら、PFOSおよびPFOAは、環境負荷が大きく、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約等の規制により、その製造および使用が制限されており、その使用量は減りつつある。
【0003】
上記の理由から、現在、PFOSおよびPFOAに代わる含フッ素有機酸として、パーフルオロヘキサン酸(以下、「PFHxA」ともいう)やエーテル結合を有するフルオロカルボン酸が利用されており、その製造および使用量が増加している。それに伴い、産業排水として排出される含フッ素有機酸を多く含んだ廃液の量が増加している。この廃液を処理する方法として、現在、逆浸透膜を利用して廃液を濃縮し、その後焼却する処理が行われている。例えば、特許文献1には、フッ素ポリマーを製造するプロセスにおいて生じる、フルオロアルカン酸である含フッ素界面活性剤を含む水溶液を、逆浸透膜を用いて濾過処理する方法が記載されている。また、非特許文献1には、NaCl除去率が97.0%の逆浸透膜で、PFHxAを95.5~98.5%除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第5055652号公報
【0005】
<nplcit num="1"> <text>Steinle-Darling, E., Reinhard, M., 2008. Nanofiltration for trace organic contaminant removal: structure, solution, and membrane fouling effects on the rejection of perfluorochemicals. Environmental science & technology 42, 5292-7</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような逆浸透膜を利用するフロオロカルボン酸を含む廃液の処理方法は、用いる逆浸透膜の孔が非常に小さいので、大きな膜間圧力を負荷する必要がある。従って、従来の処理方法は、高エネルギーを必要とする。さらに処理に時間を要するので処理効率が低く、大量の廃液を処理することが困難であるという問題がある。
【0007】
別の問題として、逆浸透膜は、孔の径が非常に小さい(0.2nm~1nm)(水循環システムのしくみ,ナツメ社,2010参照)ことから、ファウリング(目詰まり)が起こりやすく、膜のメンテナンスの頻度が多くなるという問題がある。これは処理コストを増大させ、メンテナンスの間、処理を停止する必要があることから効率も低下する。
【0008】
処理能力を向上させ、ファウリングを防止するためには、逆浸透膜(半透膜)の孔の径を大きくする必要がある。しかしながら、孔の径を大きくすると、界面活性剤等に使用されるフルオロカルボン酸自体が比較的小さな分子であることから、フルオロカルボン酸分子が膜を通り抜け、フルオロカルボン酸の阻止率が低下してしまう。
【0009】
さらに、逆浸透膜は、孔の径が非常に小さいことから、過剰な分離が生じる。即ち、分離を意図しない分子量の小さな物質、例えばNaClなども孔を通り抜けることができず、フルオロカルボン酸と一緒に分離され、濃縮される。このようにフルオロカルボン酸濃縮液に他の物質が多く存在すると、フルオロカルボン酸を回収し、再利用することが困難となる。その結果、このフルオロカルボン酸濃縮液は、焼却処分されているのが現状である。さらに、この焼却処分の際に、フッ化水素(HF)が発生するため焼却用の炉は特殊な構造を必要とし、維持費用も高額となる。
【0010】
フルオロカルボン酸を選択的に阻止することができれば、上記の問題を解消できるが、そのような方法は知られていない。
【0011】
従って、本発明は、低エネルギーおよび短時間で炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液を処理することができ、さらに炭素数2~7の含フッ素有機酸を選択的に分離することができる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、濾過膜(半透膜)として、分画分子量が大きく、かつ、表面に負の電荷を有する膜を用いることにより、炭素数2~7の含フッ素有機酸の負電荷と反発する事により選択的に分離することが可能になり、さらに処理効率を高めることができることを見出した。
【0013】
本発明の一の要旨によれば、濾過により炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む溶液中の含フッ素有機酸を分離する方法であって、濾過膜が、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位を有することを特徴とする方法が提供される。
【0014】
本発明の一の要旨によれば、濾過膜を備える炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液の濾過システムであって、半透膜が、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位を有することを特徴とする濾過システムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位(即ち、負の電荷)を有する濾過膜を用いることにより、膜にかかる圧力が比較的小さい場合であっても高処理量を達成することができ、さらに、炭素数2~7の含フッ素有機酸の負電荷と反発する事により選択的に分離することができる。即ち、本発明によれば、低エネルギーで短時間に炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液を処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例におけるPFHxAの阻止率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法は、炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液中の炭素数2~7の含フッ素有機酸を、濾過膜を用いて分離する。

【0018】
好ましい態様において、濾過は逆浸透により行われる。

【0019】
炭素数2~7の含フッ素有機酸
本発明の方法により処理される溶液に含まれる炭素数2~7の含フッ素有機酸において、炭素数は3~7であるのが好ましく、5~7であるのがより好ましく、6~7であるのが特に好ましい。

【0020】
本発明の方法により処理される溶液に含まれる、炭素数2~7の含フッ素有機酸としては、炭素数2~7の含フッ素カルボン酸およびその塩が挙げられる。

【0021】
炭素数2~7の含フッ素カルボン酸として、式(i):
-Rf-COOH (i)
[式中、Xは、H、FまたはClであり、Rfは、炭素数1~6の直鎖または分枝状のフルオロアルキレン基、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基、または、ポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基である。]
で表される化合物が挙げられる。

【0022】
上記Rf基における、炭素数1~6の直鎖または分枝状のフルオロアルキレン基として、例えば、CF、C、C、C、C10、C12、CHF、CH、C、CFH、CH、C、C、C、CFH、CH、C、C、C、C、C、CFH、CH、C、C、C、C、C、C、C、CFH、C11H、C10、C、C、C、C、C、C、C、C10、CFH11が挙げられる。

【0023】
炭素数2~7の含フッ素カルボン酸は、式(i-a):
-Rf-COOH (i-a)
[式中、Xは、HまたはFであり、Rfは、式(a):
(CF-(CFOCF-(CFOCF(CF)) (a)
で示される基であって、
上記式(a)中、lは0または1~4の整数であり、mは0または1~3の整数であり、nは0、1または2であり、ただし、l+2m+3nは6を超えないこと、mおよびnの両方が0である場合は除かれること、および上記括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であること、を条件とする。]
で示されるパーフルオロカルボン酸であるのが、さらに好ましい。

【0024】
上記含フッ素カルボン酸において、炭素数は3~7であるのが好ましく、5~7であるのがより好ましく、6~7であるのが特に好ましい。

【0025】
好ましい態様である、炭素数5~7の含フッ素カルボン酸として、例えば、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、
CFCFOCFCFOCFCOOH、
CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、
CFCFOCFCFOCFCOOH、
CFOCFCFCFOCHFCFCOOH、
CF(CFCOOH、
CFCFCFOCF(CF)COOH、
F(CFCHCFCOOH
H(CFCOOH、
H(CFCOOH、
CH=CFCFOCF(CF)COOH
などを例示することができる。

【0026】
本発明において、「炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液」とは、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む液体であれば特に限定されず、炭素数2~7の含フッ素有機酸が溶解した溶液に限定されず、炭素数2~7の含フッ素有機酸が分散した懸濁液または乳濁液であってもよい。好ましい態様において、炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液は、炭素数2~7の含フッ素有機酸が溶解した溶液である。

【0027】
炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液において、炭素数2~7の含フッ素有機酸は、単独、または2種以上で存在してもよい。

【0028】
炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液において、炭素数2~7の含フッ素有機酸は、電離形態、非電離形態または塩の形態であってもよく、あるいはこれらの2つまたは3つの形態が共存していてもよい。好ましくは、炭素数2~7の含フッ素有機酸は、少なくとも一部が電離した形態であり得る。

【0029】
炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液における溶媒は、特に限定されず、水または有機溶媒、あるいは2種以上の溶媒の混合物であってもよい。上記有機溶媒は、特に限定されず、水性であっても非水性であってもよく、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、酢酸メチル等のエステル、エーテル類(ジエチルエーテル等)、脂肪族炭化水素(ヘキサン、オクタン等)、ケトン類(アセトンなど)、アセトニトリル等が挙げられる。溶媒は、水性溶媒が好ましく、水がより好ましい。

【0030】
炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液には、不純物、即ち他の溶質が存在していてもよい。他の溶質としては、例えば、金属塩(NaCl、KCl、NaSO等)、有機塩類等が挙げられる。

【0031】
炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液のpHは、特に限定されないが、pH4以上、好ましくはpH7以上であることが好ましい。pHを7以上とすることにより、より炭素数2~7の含フッ素有機酸の阻止率を高めることができる。pHの調整は、特に限定されないが、塩酸溶液または水酸化ナトリウム溶液を添加することにより行うことができる。

【0032】
炭素数2~7の含フッ素有機酸の溶液は、例えば産業排水として排出される溶液または実験室などで排出される溶液であり得る。

【0033】
濾過膜
本発明の方法で用いられる濾過膜(半透膜を含む)は、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位を有する。

【0034】
「分画分子量」とは、膜の孔径を表す指標として当業者に周知であり、指標物質を用いて膜ろ過を行い、それぞれの阻止率を求めて、阻止率が90%に相当する分子量を分画分子量(molecular weight cut off)とする(膜ろ過技術,p.54,工業調査会,2006参照)。

【0035】
「表面ゼータ電位」とは、膜の帯電性を表す指標として当業者に周知であり、電解質溶液を流動させた時に膜表面に発生する電位差を測定し、下記Helmholtz-Smoluchowskiの式により算出される。
ζ=(ηε)×(1/ρ)×(E/P)
ζ:表面ゼータ電位
η:電解質の粘度(poise)
ε:電解質の導電率(S/cm)
ρ:溶液の比抵抗(Ω・cm)
E:測定した電位
P:膜間圧力

【0036】
本発明に用いられる濾過膜(半透膜)の分画分子量は、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きければよいが、好ましくは5000Da以上50000Da以下であり、より好ましくは8000Da以上30000Da以下であり、さらに好ましくは15000Da以上25000Da以下である。分画分子量を炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きくすることにより、膜の処理能力が向上する。即ち、膜の単位面積あたりの溶媒透過量が大きくなる。処理能力は、分画分子量が大きい程向上する。また、濾過(代表的には、逆浸透)に必要とされる圧力も小さくなる。さらに、分離を望まない他の不純物が、炭素数2~7の含フッ素有機酸と一緒に分離されることを抑制することができる。また、分画分子量を20000Da以下とすることにより、炭素数2~7の含フッ素有機酸の阻止率をより高くすることができる。

【0037】
本発明に用いられる濾過膜(半透膜)の表面ゼータ電位は、負の値を有し、好ましくは-10mV以下、より好ましくは-30mV以下、さらに好ましくは-50mV以下、さらにより好ましくは-80mV以下である。表面ゼータ電位の下限は、特に限定されないが、好ましくは-300mV以上、例えば-200mV以上または-150mV以上である。濾過膜が負の表面ゼータ電位を有することにより、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有する膜を用いた場合であっても、炭素数2~7の含フッ素有機酸の負電荷と膜の負表面電荷が反発する事により高い阻止率で分離することができる。負の表面ゼータ電位がより大きいほど(即ち、膜表面のマイナス電荷が大きいほど)、より高い分画分子量の膜を用いることが可能になる。

【0038】
膜の表面ゼータ電位は、膜を形成する材料を選択することにより、適宜変更することができる。また、膜の表面ゼータ電位は、溶液のpHを調整することによっても、調整し得る。

【0039】
好ましい態様において、本発明に用いられる濾過膜は、5000Da以上50000以下、好ましくは8000Da以上30000Da以下、より好ましくは15000Da以上25000Da以下の分画分子量を有し、-30mV以下、好ましくは-50mV以下、より好ましくは-80mV以下の表面ゼータ電位を有する。

【0040】
本発明に用いられる濾過膜を構成する材料は、負の表面ゼータ電位を有し得るものであれば特に限定されないが、例えば全芳香族ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ピペラジンアミド系樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン等が挙げられる。

【0041】
本発明に用いられる濾過膜は、例えば、日東電工株式会社から、NTR7450およびNTR7410として入手することができる。

【0042】
本発明の方法における条件(膜間圧力、温度など)は、当業者であれば、処理する溶液の組成、用いる膜の種類等の種々の因子に応じて適宜設定することができる。

【0043】
本発明の方法によれば、濾過膜が炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有するにも拘わらず、良好に炭素数2~7の含フッ素有機酸を選択的に分離することができる。

【0044】
従って、本発明は、また、濾過膜を備える炭素数2~7の含フッ素有機酸溶液の濾過システムであって、半透膜が、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有し、負の表面ゼータ電位を有することを特徴とする濾過システムをも提供する。

【0045】
本発明は、いかなる理論にも拘束されないが、炭素数2~7の含フッ素有機酸の分子量よりも大きな分画分子量を有する膜を用いるにも拘わらず、炭素数2~7の含フッ素有機酸を分離することができる理由は、以下のように考えられる。本発明で用いられる濾過膜は表面に負電荷を有している。一方、炭素数2~7の含フッ素有機酸も負電荷を有している。その結果、お互いの負電荷が反発し、この電気的反発力により、炭素数2~7の含フッ素有機酸が膜に近づくことが難しくなるためと考えられる。
【実施例】
【0046】
パーフルオロヘキサン酸(以下、PFHxAともいう)水溶液(初期濃度100 ng/L)を、クロスフロー型の平膜試験装置を用いて膜ろ過試験を行った。膜として、日東電工製のNTR7450(分画分子量:10000Da、表面ゼータ電位-33mV;公称NaCl阻止率:50%)およびNTR7410(分画分子量:20000Da、表面ゼータ電位-99mV;公称NaCl阻止率:10%)を用いた。処理条件は、以下の通りである。pHは初期値から調整を行わなかった。
膜間圧力:0.700MPa
循環流量:1.0±0.1L/分
水温 :20±2℃
【実施例】
【0047】
0、6、12、24、48および72時間後に、透過液を500mL、透過液採取開始時と終了時に原液を50mLずつ採取し、PFHxA濃度を分析した。濃度は、試料を固相抽出法により濃縮した後、HPLC/MS/MSを用いて測定した。得られた結果に基づいて、各試験におけるPFHxAの阻止率を以下の式(1)により算出した。
【数1】
JP2016144800A_000003t.gif
Cp:透過液濃度(ng/L)
Cs:透過液採取開始時濃縮液濃度(ng/L)
Cs:透過液採取終了時濃縮液濃度(ng/L)
【実施例】
【0048】
各膜のPFHxA阻止率の推移を図1に示す。72時間後の阻止率は、それぞれ、99.0%(NTR7450)と98.3%(NTR7410)であり、低いNaCl阻止率(それぞれ、50%および10%)にもかかわらず、高いPFHxA阻止率が得られることが確認された。これらの膜はスルホン化ポリエーテルスルホン膜であり、膜表面に負電荷を有するため、PFHxAの負電荷と反発して、PFHxAが阻止されたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の方法は、処理能力が高く、選択的に炭素数2~7の含フッ素有機酸を分離することができるので、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む廃液の処理等に用いることができる。
図面
【図1】
0