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明細書 :多孔性配位高分子、及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月30日(2017.3.30)
発明の名称または考案の名称 多孔性配位高分子、及びその用途
国際特許分類 C08G  79/00        (2006.01)
C09D 185/00        (2006.01)
C09D   5/00        (2006.01)
C09K   3/18        (2006.01)
C09D 201/00        (2006.01)
B01J  20/26        (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
FI C08G 79/00
C09D 185/00
C09D 5/00 Z
C09K 3/18 101
C09D 201/00
B01J 20/26 J
B01J 20/28 Z
国際予備審査の請求
全頁数 21
出願番号 特願2016-505229 (P2016-505229)
国際出願番号 PCT/JP2015/055228
国際公開番号 WO2015/129685
国際出願日 平成27年2月24日(2015.2.24)
国際公開日 平成27年9月3日(2015.9.3)
優先権出願番号 2014035914
優先日 平成26年2月26日(2014.2.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】北川 進
【氏名】樋口 雅一
【氏名】コヤ プラハカラ ラオ
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G066
4H020
4J030
4J038
Fターム 4G066AA50A
4G066AB05A
4G066AB06A
4G066AB15A
4G066AB16A
4G066AB19A
4G066AB21A
4G066AB24A
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066AC31B
4G066BA22
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA05
4G066CA35
4G066CA43
4G066CA51
4G066DA07
4H020BA02
4J030CA03
4J030CB02
4J030CB04
4J030CB14
4J030CC01
4J030CC02
4J030CC04
4J030CC05
4J030CC12
4J030CC29
4J030CC30
4J030CG10
4J030CG20
4J030CG21
4J030CG29
4J038CD091
4J038CG001
4J038DB001
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4J038DG001
4J038DM021
4J038DM022
4J038HA156
4J038JA02
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4J038JA09
4J038JA17
4J038JA32
4J038JA56
4J038JB12
4J038KA06
4J038MA09
4J038NA02
4J038NA07
4J038PA18
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
要約 本発明は、超撥水性を有する新しい多孔性配位高分子を提供することを課題とする。本発明は、2価又は3価の金属イオン及び下記一般式(1):
JP2015129685A1_000007t.gif
(式中、X、X及びXは同一又は異なって、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、又はTeOを示す。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。)で表される有機配位子を含み、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
2価又は3価の金属イオン及び下記一般式(1):
【化1】
JP2015129685A1_000006t.gif
(式中、X、X及びXは同一又は異なって、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、又はTeOを示す。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。)
で表される有機配位子を含み、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子。
【請求項2】
前記有機配位子が、一般式(1)において、X、X及びXがいずれもCOであり、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12がいずれも水素原子である化合物である、請求項1に記載の多孔性配位高分子。
【請求項3】
前記金属イオンが、遷移金属イオンである請求項1に記載の多孔性配位高分子。
【請求項4】
前記金属イオンが、亜鉛イオン、ニッケルイオン及びコバルトイオンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の多孔性配位高分子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔性配位高分子を含む撥水コーティング剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔性配位高分子を含む有機溶媒又は油の吸着剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性配位高分子、及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超撥水表面に科学的な定義はないが、一般的には、超撥水表面とは、水接触角が150°以上の、きわめて水に濡れにくい表面のことをいう。一般に、固体表面をフッ素等を主成分とする低い表面エネルギーの物質で形成することにより、優れた撥水性を付与できることが知られており、かつその表面に適切な粗さ(乱雑さ)が付与されることによって、撥水性がより強調されることが知られている。
【0003】
一方、固体の構造内部に細孔を有する化合物を多孔性(ポーラス)化合物という。多孔性材料は有機物、無機物等様々なものが知られており、代表的なものとして、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、モレキュラーシーブ等が挙げられる。近年、新しい多孔性材料として、多孔性配位高分子(porous coordination polymer、PCP)が注目されている。多孔性配位高分子は、金属イオンと有機配位子との配位結合を利用して多孔性構造を形成する材料であり、ガスの貯蔵又は分離、触媒等への応用が期待されている。しかしながら、従来より公知の多孔性配位高分子は、水に対する安定性が低く、水にさらすと分解する傾向があるため、実用化には制限があった。
【0004】
そこで、多孔性配位高分子の水中での安定性を向上させるために、多孔性配位高分子の表面を(超)撥水性にすることが試みられてきた。非特許文献1には、フッ素化芳香環を有機配位子とするPCPが、接触角151±1°を達成することが記載されている。非特許文献2及び3には、末端にかさ高いアルキル鎖を有する化合物を有機配位子とするPCPが、150°を超える接触角を達成することが記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】T.-H.Chen,I.Popov,O.Zenasni,O.Daugulis,O.S.Miljanic,Chem.Commun.2013,49,6846-6848
【非特許文献2】J.G.Nguyen,S.M.Cohen,J Am Chem Soc 2010, 132, 4560-4561
【非特許文献3】S.Aguado,J.Canivet,D.Farrusseng,J Mater Chem 2011, 21, 7582-7588
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、超撥水性を有する新しい多孔性配位高分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが超撥水性を有する新しい多孔性配位高分子を開発すべく鋭意検討した結果、有機配位子として特定の構造を有する芳香環を用いることにより、超撥水性を有する多孔性配位高分子を製造することができ、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記項1~項6に示す多孔性配位高分子、撥水コーティング剤及び吸着剤に係る。
【0009】
項1. 2価又は3価の金属イオン及び下記一般式(1):
【0010】
【化1】
JP2015129685A1_000003t.gif

【0011】
(式中、X、X及びXは同一又は異なって、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、又はTeOを示す。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。)
で表される有機配位子を含み、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子。
項2. 前記有機配位子が、一般式(1)において、X、X及びXがいずれもCOであり、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12がいずれも水素原子である化合物である、上記項1に記載の多孔性配位高分子。
項3. 前記金属イオンが、遷移金属イオンである上記項1に記載の多孔性配位高分子
項4. 前記金属イオンが、亜鉛イオン、ニッケルイオン及びコバルトイオンからなる群から選択される少なくとも1種である上記項1に記載の多孔性配位高分子。
項5. 上記項1~4のいずれか1項に記載の多孔性配位高分子を含む撥水コーティング剤。
項6. 上記項1~4のいずれか1項に記載の多孔性配位高分子を含む有機溶媒又は油の吸着剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多孔性配位高分子は、水接触角が150°以上であり、超撥水性を有しているので、撥水コーティング剤として有用である。また、本発明の多孔性配位高分子は、ベンゼン、トルエン等の芳香族系有機溶媒を選択的に吸着することができるので、水から有機溶媒を選択的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られた多孔性配位高分子(1)のORTEP図である。
【図2】実施例1で得られた多孔性配位高分子(1)の構造の一部を示す模式図である。a)はHBTMBの単結晶X線構造を示しており、b)は[Zn43-OH)2]クラスター周辺の配位環境を示しており、c)は2D層構造を示しており、d)は2D層の3D積み重ね構造を示しており、e)は010表面構造を示している。
【図3】脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)のORTEP図である。
【図4】脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)の実測の粉末X線回折パターン(上)及び単結晶から得られる粉末X線回折シミュレーションパターンを示す。
【図5】脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)及び合成直後の多孔性配位高分子(1)について熱重量分析(TGA)を行った結果を示す。
【図6】実施例1で合成した多孔性配位高分子(1)の単結晶(a)、多孔性配位高分子(1)の単結晶を細かく粉砕した粉末(b)、粉末を脱ガス処理したもの(c)、及び脱ガス処理した粉末を5MPaでプレスしたペレット(d)の形態を示す模式図、及び各固体表面上の水滴の写真を示す。
【図7】脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)の298Kにおける水吸着等温線を示す。
【図8】脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)のCO(195K)及びN(77K)に対する吸着等温線を示す。
【図9】100℃で活性化した多孔性配位高分子(アセトン内包)の195Kにおけるメタン(CH)、エタン(C)、エチレン(C)及びCOに対する吸着等温線を示す。
【図10】脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)の298Kにおけるベンゼン、トルエン、及びシクロヘキサンに対する吸着等温線を示す。
【図11】脱ガス化処理後の多孔性配位高分子粉末のペレットディスク及びオリーブ油を吸着したペレットディスクのTGA結果である。
【図12】水表面から取り除いたトルエン、ベンゼン及びシクロヘキサンのTGA結果である。
【図13】脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)粉末(下)、Oil Blue 35で色付けしたトルエンを吸着した粉末(真ん中)及びn-ヘキサンでOil Blue 35で色付けしたトルエンを洗浄し、脱ガス処理した粉末(上)のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多孔性配位高分子は、2価又は3価の金属イオン及び下記一般式(1):

【0015】
【化2】
JP2015129685A1_000004t.gif

【0016】
(式中、X、X及びXは同一又は異なって、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、又はTeOを示す。
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。)
で表される有機配位子を含み、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子である。

【0017】
多孔性配位高分子を構成する2価又は3価の金属イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、スカンジウムイオン、ランタノイドイオン、チタンイオン、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン及びアルミニウムイオン等を使用することができる。上記金属イオンの中でも、スカンジウムイオン、ランタノイドイオン、チタンイオン、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン等の遷移金属イオンが好ましく、コバルトイオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンがより好ましい。金属イオンは、単一の金属イオンであることが好ましいが、2種以上の金属イオンを含んでいてもよい。また、本発明に用いられる多孔性配位高分子は、1種類単独で使用することも、2種類以上混合して使用することもできる。

【0018】
前記多孔性配位高分子は、上記一般式(1)で表される有機配位子を含む。一般式(1)において、X、X及びXは、非共有電子対で前記金属イオンに対して配位する部分であり、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOから選択することができる。X、X及びXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。X、X及びXとして、COが好ましい。

【0019】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基である。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。

【0020】
炭素数1~20のアルキル基として、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、イコシル等の炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、炭素数1~4の直鎖アルキル基が好ましい。

【0021】
有機配位子として、上記一般式(1)において、X、X及びXがいずれもCOであり、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12がいずれも水素原子である化合物が好ましい。具体的には、1,3,5-トリス(3-カルボキシフェニル)ベンゼン(HBTMB)由来の陰イオン(BTMB3-)を挙げることができる。

【0022】
本発明の多孔性配位高分子は、有機配位子として一般式(1)で示す構造を有する化合物を使用することが最大の特徴である。本発明で使用する有機配位子は、ベンゼンの1、3及び5位に結合したベンゼン環が、いずれもメタ位に金属イオンに対して配位する基を有している。このような構造の有機配位子を用いることで、固体表面に微細な凹凸構造(周期的な乱雑さ)を形成することができ、その結果、150°を超える水接触角を達成することができる。本発明は、従来より公知の低い表面エネルギーの物質(フッ素化芳香族化合物、末端にかさ高いアルキル鎖を有する化合物等)を使用することなく、一般式(1)のような芳香族炭化水素で構成される有機配位子を用いて超撥水性を初めて達成できたのである。

【0023】
本発明に使用される多孔性配位高分子は、一般式(1)で表される有機配位子と、2価又は3価の金属塩から選択される少なくとも1種の金属塩とを、気相、液相または固相のいずれかで反応させることで製造することができる。中でも、常圧下、溶媒中で数時間から数日間反応させ、析出させて製造することが好ましい。このとき、超音波またはマイクロウェーブ照射下で反応を行ってもよい。

【0024】
多孔性配位高分子の製造に用いる2価又は3価の金属の塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、スカンジウム塩、ランタノイド塩、チタン塩、ジルコニウム塩、バナジウム塩、クロム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩及びアルミニウム塩などを使用することができ、上記金属塩の中でも、スカンジウム塩、ランタノイド塩、チタン塩、ジルコニウム塩、バナジウム塩、クロム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩及びカドミウム塩が好ましく、コバルト塩、ニッケル塩及び亜鉛塩がより好ましい。金属塩は、単一の金属塩を使用することが好ましいが、2種以上の金属塩を混合して用いてもよい。また、これらの金属塩としては、酢酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩を使用することができる。

【0025】
多孔性配位高分子を製造するときの金属塩と有機配位子の混合比率は、金属塩:有機配位子=1:5~5:1のモル比の範囲内が好ましく、1:2~2:1の範囲内がより好ましい。

【0026】
多孔性配位高分子の製造を溶媒中で行う場合、溶媒における金属塩のモル濃度は、0.005~5mol/Lが好ましく、0.01~2mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする多孔性配位高分子は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では未反応の金属塩が残留し、得られた多孔性配位高分子の精製が困難になる。

【0027】
多孔性配位高分子の製造を溶媒中で行う場合、溶媒における有機配位子のモル濃度は、0.001~5mol/Lが好ましく、0.005~2mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする多孔性配位高分子は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では溶解性が低下し、反応が円滑に進行しない。

【0028】
多孔性配位高分子の製造に用いる溶媒としては、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒を使用することができる。有機溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール化合物;ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。有機溶媒又は水は1種単独で使用することもできるし、これらの混合溶媒を使用することもできる。

【0029】
多孔性配位高分子を製造する際の反応温度としては、室温~200℃程度が好ましい。

【0030】
多孔性配位高分子を製造する反応が終了したことはガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより原料の残存量を定量することにより確認することができるが、これらに限定されるものではない。反応終了後、得られた混合液を吸引濾過に付して沈殿物を集め、有機溶媒による洗浄後、多孔性配位高分子が分解しない程度の温度(例えば25~250℃)程度で数時間真空乾燥することにより、本発明に用いられる多孔性配位高分子を得ることができる。有機溶媒による洗浄、真空乾燥操作は、超臨界二酸化炭素による洗浄によっても代えることができ、より効果的である。

【0031】
多孔性配位高分子を構成する各成分の組成比は、例えば、単結晶X線構造解析、粉末X線結晶構造解析又は元素分析などにより確認できるが、これらに限定されるものではない。

【0032】
多孔性配位高分子の細孔内にガス等を吸着させる前には、多孔性配位高分子に吸着された水分や溶媒を除去するため、真空で予備乾燥を行うことが好ましい。

【0033】
本発明の多孔性配位高分子は、水との接触角が150°以上であり、超撥水性を有するため、撥水コーティング剤として有用である。

【0034】
撥水コーティング剤は、例えば、本発明の多孔性配位高分子を含む塗料組成物とすることができる。塗料組成物として、例えば、本発明の多孔性配位高分子をバインダー樹脂に分散させたものを使用することができる。

【0035】
塗料中の多孔性配位高分子とバインダー樹脂とは、十分な撥水性が得られるとともに塗膜の強度又は密着性が担保されるような割合で混合すればよい。例えば、多孔性配位高分子100重量部に対して、バインダー樹脂5~900重量部程度の割合で混合することができる。

【0036】
バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の公知のものを広く使用することができる。これらの樹脂は1種単独で使用することもできるし、2種以上の混合物を使用することもできる。

【0037】
また、塗料組成物には、コーティングすべき基材に撥水性コーティング層を形成する際に、塗工性又は密着性を高めるために有機溶剤が添加されてもよい。有機溶剤として、例えば、アルコール化合物、ケトン化合物、エステル化合物、アルコールエステル化合物、ケトンエステル化合物、エーテル化合物、ケトンアルコール化合物、エーテルアルコール化合物、ケトンエーテル化合物、及びエステルエーテル化合物から選ばれる1種以上を含有する有機溶剤が挙げられる。

【0038】
塗料組成物には、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で、レベリング剤、カップリング剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤等を添加してもよい。これらの添加剤は、公知のものを広く使用することができる。

【0039】
本発明の撥水コーティング剤を調製するには、多孔性配位高分子をバインダー樹脂によく分散するため、塗料の分散又は混合に用いられる装置、例えば、ビーズミル、高速回転攪拌装置等が使用される。

【0040】
本発明の撥水コーティング剤は、例えば、塗布又は吹き付けることにより基材にコーティングすることができる。コーティングする方法は特に限定されず、例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の従来公知の塗布方法を使用することができる。密着性を向上させるために、基材に撥水コーティング剤をコーティングする前に、中間層をコーティングしてもよい。

【0041】
本発明の撥水コーティング剤をコーティングすることにより形成される塗膜の膜厚は、100nm以上2μm以下程度であればよく、好ましくは200nm以上1.5μm以下程度である。膜厚が薄すぎると所望の撥水性を実現させることができず、厚すぎると塗膜の強度が低下する。

【0042】
本発明の撥水コーティング剤を用いてコーティングできる基材としては、その材質として、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、及びそれらの組合せ、それらの積層体、それらの塗装体等が挙げられる。

【0043】
本発明の撥水コーティング剤は、表面の防滴性、防錆製、水切れ性、水系汚れ付着防止製、流水洗浄性、着氷雪防止性等が要求されるあらゆる部材に適用することができる。具体的には、外壁、屋根等の建築外装;窓枠;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイ等の乗物の外装及び塗装;防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝又は人工噴水用石材、タイル、橋、温室、外壁材、壁間又は碍子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、防塵カバー及びと装、機械装置又は物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材及びそれら物品に粘着可能なフィルム、ワッペン等を挙げることができる。

【0044】
また、看板、標識、方向指示板、銅像、彫刻、各種の意匠材、透明なプラスチックフィルム、建築物、乗物、各種計器類の窓材、眼鏡、サングラス、車両用バックミラー、浴室用又は洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡、光学レンズ、内視鏡レンズ、ゴーグル、シールド等の透明な塗膜が要求される部材に対しても適用可能である。

【0045】
本発明の多孔性配位高分子は、細孔内に水蒸気;二酸化炭素;ベンゼン、トルエン等の芳香族系有機溶媒、及びオリーブ油等の油を選択的に吸着することができる。

【0046】
本発明の多孔性配位高分子は、外表面が超撥水性を有しており、その細孔内に芳香族系有機溶媒又は油を選択的に吸着することができるので、芳香族系有機溶媒又は油を水から分離する吸着剤として使用することが可能である。吸着剤は、本発明の多孔性配位高分子のみで形成することが好ましく、吸着効果に悪影響を与えない範囲内でその他の成分を含ませることも可能である。
【実施例】
【0047】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例における分析および評価は、以下の方法によって実施した。
【実施例】
【0048】
実施例では、以下の試薬を精製せずにそのまま用いた。
Zn(NO・4HO(メルク株式会社製)
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(ナカライテスク株式会社製)
メタノール(MeOH)(ナカライテスク株式会社製)
ベンゼン(ナカライテスク株式会社製)
トルエン(ナカライテスク株式会社製)
シクロヘキサン(ナカライテスク株式会社製)
Oil Blue 35(ナカライテスク株式会社製)
【実施例】
【0049】
実施例における分析及び評価は、以下の方法によって実施した。
(1)熱重量分析(TGA)
熱重量分析は、株式会社リガク製TG8120を使用し、10Kmin-1の昇温速度で窒素を流しながら測定した。
(2)粉末X線回折
粉末X線回折は、株式会社リガク製RINT粉末回折装置を用い、CuKαアノードを使用して得た。
(3)単結晶X線回折
単結晶X線回折の測定は、共焦点単色MoKα放射をもつMicroMax-007 HF / VariMax回転アノードX線発生器を備えた株式会社リガク製Saturn Kappa CCD系の Rigaku AFC10回折装置を用い、223Kで行った。データは、Crystal Clear TM-SM(Version 1.4.0)を用いて処理した。結晶構造は、SHELXS-971又はSHELXL-972を用いてWinGXプログラム一式を用いて解明及び精密化した。
(4)気体吸着等温線
気体吸着等温線は、日本ベル株式会社製のBelsorp Mini、Belsorp Max 及びBelsorp HP(高圧)体積吸着装置を用いて得た。なお、吸着等温線において、「●」等の塗り潰した符号は吸着を示し、「○」等の白抜きの符号は脱着を示す。
(5)水の吸着等温線
水の吸着等温線は、日本ベル株式会社製のBelsorp Max体積吸着装置を用いて得た。
(6)接触角
接触角の測定は、パナソニック株式会社製のモデルナンバー:WV-CP480SD IIIを用いて行った。約5~10mgの粉末をガラススライド上にスパチュラで押し付けた。水1滴をマイクロシリンジでサンプル上にゆっくり滴下し、接触角をCAM 100ソフトウェアパッケージを用いて評価した。
【実施例】
【0050】
製造例1(1,3,5-トリス(3-カルボキシフェニル)ベンゼン(HBTMB)の合成)
Tetrahedron 66(2010)3553-3563に記載の方法に従い、HBTMBを合成した。具体的には、窒素雰囲気下、1,4-ジオキサン(50mL)中に1,3,5-トリブロモベンゼン(0.500g)、m-メトキシカルボニルフェニルボロン酸(1.0560g)、KPO(2.3586g)及びPd(PPh(0.0550g)を含む混合物を90℃で3日間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させた。残渣をCHClに溶解し、水で洗浄し、MgSOで乾燥させた。生成物をCHCl:n-ヘキサン=(2:1→1:0)を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3番目の主産物を採取した。得られた生成物をCHCl/n-ヘキサンで再結晶した。再結晶した生成物を45mLのMeOHに溶解し、反応混合物に25mLの6N NaOH水溶液を添加し、95℃で一晩還流した。反応混合物を室温まで冷却し、20mLの濃HClを添加し、1時間攪拌した。白色沈殿を濾過して真空乾燥させることにより、HBTMBを88%の収率で得た。得られたHBTMBの単結晶X線構造を図1a)に示す。なお、以下の実施例において、HBTMB由来の陰イオンをBTMB又はBTMB3-と表記する。
【実施例】
【0051】
実施例1
2mLのガラス製薬瓶中で、HBTMB(11mg、0.025mmol)及びZn(NO・4HO(13mg、0.05mmol)の固体混合物をDMF/MeOH/HO(0.5mL/0.25mL/0.25mL)の混合液に溶解させた。反応混合物に、20μLのNaOH(0.01M)を脱プロトン化剤として加えた。最初のpHは6.0であった。全反応混合物を温度制御可能なオーブンで室温から100℃まで4時間かけて加熱し、その後100℃で48時間加熱した。オーブンを100℃から30℃まで6時間かけて冷却した。生成物は均一の無色のフレーク型結晶を含み、それをMeOHで洗浄して単離し、風乾した。収量は15mgであり、HBTMB1molを基準にした収率は74%であった。この合成直後のPCP(1)の単結晶は、下記の単結晶X線回折等により、[Zn43-OH)2(BTMB)2(DMF)3(MeOH)]・(DMF)2(H2O)2(MeOH)の構造を有することがわかった(図1及び図2)。なお、図1はORTEP図であり、明確にするために水素原子は省略した。
【実施例】
【0052】
PCP(1)の単結晶は、b軸に沿って2タイプの1Dチャンネルを持つ2次元層状構造であることが明らかとなった(図2c))。それぞれの層はBTMB3-配位子により互いに連結して(8,6)ネットを形成する菱形の[Zn43-OH)2]6+四核クラスターを含有する。また、図2b)に示すように、[Zn43-OH)2]6+クラスターはそれぞれ2つの8面体及び2つの4面体のZn2+イオン、及び金属中心により形成された3原子平均平面内に位置する2つのμ-ヒドロキシル部分(OH)を含有する。8面体のZn2+中心は3つの異なるカルボン酸基の酸素ドナー、両方のOHフラグメント、及び溶媒分子に結合する一方、4面体のZn2+中心は、3つのカルボン酸基由来の酸素原子及びOH基のちょうど1つに配位される。また、PCP(1)の単結晶のフェイスインデックス測定の結果、結晶表面の最も支配的な表面は(010)表面であると同定された(図2e))。(010)表面は、BTMB3-配位子の芳香族部分により生じるナノスケールの波形を有しており、ac平面に1.2nm×1.1nmの周期性を持っている(図2c)及び2e))。
【実施例】
【0053】
Elemental microanalysis for [Zn43-OH)2(BTMB)2(DMF)3(MeOH)]・(DMF)2(H2O)2(MeOH) ≡ C71H79N5O23Zn4
calculated (%): C, 52.25; H, 4.88; N, 4.29. Found (%): C, 52.04; H, 4.95; N, 4.03.
FT-IR (4000-525 cm-1): 3615 (s, w), 3381 (br, w), 3061 (s, w), 2931 (s, w), 1648(vs), 1611 (vs), 1590 (s), 1567 (vs), 1491 (w), 1441 (m), 1414 (m), 1371 (vs), 1267 (m), 1252 (m), 1160 (w), 1107 (m), 1077 (m), 1056 (w), 1032 (m), 874 (m), 802 (s), 763 (vs), 715 (m), 695 (s), 680 (vs), 652 (m), 618 (m).
【実施例】
【0054】
合成直後のPCP(1)を250℃で2時間加熱して脱ガス処理することにより、[Zn44-O)2(BTMB)2]の構造を有するPCP(1a)が得られた。脱ガス処理後のPCP(1a)の単結晶X線回折結果を図3に示す。図3はORTEP図であり、明確にするために水素原子は省略した。また、図4に、脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)の実測の粉末X線回折パターン(上)及び単結晶から得られる粉末X線回折シミュレーションパターンを示す。図4より、脱ガス処理後の多孔性配位高分子(1a)の粉末X線回折パターンは、単結晶の結晶構造ファイルから得られるシミュレーションパターンとよい一致を示しており、[Zn44-O)2(BTMB)2]の構造を有するPCP(1a)粉末が合成及び単離できていることがわかる。
【実施例】
【0055】
【数1】
JP2015129685A1_000005t.gif
【実施例】
【0056】
脱ガス処理後のPCP(1a)及び合成直後のPCP(1)について熱重量分析(TGA)を行った結果を図5に示す。合成直後のPCP(1)の重量から約29%重量が減少した。これは、合成直後のPCP(1)の化学式ユニットから除去される5つのDMF、2つのMeOH、及び3つのHO分子(Zn(OH)クラスターから除かれた1つの水分子を含む)に相当する30%に近い値である。また、図5から、脱ガス処理後のPCP(1a)及び合成直後のPCP(1)の分解開始温度が約410℃であることがわかる。これより、本発明の多孔性配位高分子は、従来の亜鉛イオン及びCOを有する有機配位子からなる多孔性配位高分子(分解開始温度:約350℃)と比較して良好な熱安定性を有することがわかる。
【実施例】
【0057】
実施例2(接触角の測定)
実施例1で合成したPCP(1)の単結晶(a)、PCP(1)の単結晶を細かく粉砕した粉末(b)、粉末を脱ガス処理したもの(c)、及び脱ガス処理した粉末を5MPaでプレスしたペレット(d)について接触角を測定した。図6に、実施例1で合成したPCP(1)の4つの形態を示す模式図、及び各固体表面上の水滴の写真を示す。単結晶(a)の接触角は150°より大きく(152°)、ロールオフ角は10°未満であり、これは超撥水性固体の特徴である。この結果は、実施例1で合成したPCP(1)が、(010)表面を有することによって超撥水性を達成したことを示している。また、単結晶を粉砕した粉末(b)及び脱ガス処理した粉末(c)についても、いずれも150°を超える接触角を示し、超撥水性を有することがわかった。これより、実施例1で合成したPCP(1)の超撥水性は、細孔内の溶媒の存在に影響されないことがわかる。一方、プレスしたペレット(d)の接触角は、約110°であった。これは、5MPaで圧縮したために表面が滑らかになり、乱雑さが減少したことが原因と考えられる。これらの結果から、粉末における階層的な構造が超撥水性に多く寄与しており、圧力を加えることで表面の乱雑さが減少することにより撥水性が低くなることがわかる。
【実施例】
【0058】
実施例3(吸着等温線の測定)
脱ガス処理後のPCP(1a)の水に対する吸着能を明らかにするために、吸着等温線実験を298Kで行った。その結果を、図7に示す。PCP(1a)は、吸着等温線において0.27及び2.3kPa圧で2つのステップを有し、脱着等温線においてはステップが0であるという、普通ではない吸着行動を示した。この現象は、他の超撥水性PCPとは全く異なる。このPCP(1a)の水吸着等温線の結果から、内側の細孔表面は疎水性ではなく親水性であり、結晶の外表面だけが超撥水性を示すことがわかる。この現象は、PCP(1a)の超撥水性が、表面の化学特性というよりもむしろ表面の構造上の乱雑さに由来していることを示した。バルク水とは異なり、気体状の水は、容易にPCP(1a)の細孔に吸着された。
【実施例】
【0059】
図8に、CO及びNに対する吸着等温線を示す。なお、COは195Kで、Nは77Kで測定を行った。図8の結果から、PCP(1a)にCOは吸着されるが、Nは吸着されないことがわかった。また、このCO吸着等温線は、永久的な多孔性をもつ微細孔の特徴であるタイプI等温線である。
【実施例】
【0060】
195Kにおけるメタン(CH)、エタン(C)、エチレン(C)及びCOに対する吸着等温線を図9に示す。なお、ここでは、実施例1で得られたPCPの細孔中に含まれる溶媒をアセトンに変換し、100℃で脱ガス処理したものを用いた。その結果、CH、C、及びCはPCP(1a)に吸着されないことがわかった。
【実施例】
【0061】
さらに、6員環の有機溶媒に対するPCP(1a)の吸着能を観察するために、298Kでベンゼン、トルエン、及びシクロヘキサンについて吸着等温線を測定した。その結果を図10に示す。ベンゼン及びトルエンに対する吸着等温線はゲート開放プロファイルを示したが、シクロヘキサンに対する吸着等温線は、いかなる吸収も示さなかった。これらの結果から、PCP(1a)がサイズ又は芳香族性/脂肪族性の選択性を表すことがわかった。
【実施例】
【0062】
実施例4(有機溶媒等の吸着実験)
超撥水性及び多孔性を有する脱ガス処理後のPCP(1a)を用いて水表面から有機溶媒又は油を取り除く実験を行った。操作を簡単にするために、脱ガス処理後のPCP(1a)粉末に4~6MPa圧をかけてペレットディスク(約2.2cm面積)を作製した。有機溶媒又は油として、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、及びオリーブ油を用い、無色の水と区別するためにOil Blue 35で青く色付けした。色付けしたトルエンを水表面上に滴下し、ペレットディスクを、水表面上のトルエンの真ん中に落とすと、ペレットディスクがトルエンを吸着した。そして、トルエンを吸着したペレットディスクを取り出すことにより、トルエンを水から分離することができた。トルエンの代わりにベンゼン、オリーブ油を使用してもトルエンと同様の結果が得られた。これより、PCP(1a)のペレットディスクは、トルエン、ベンゼン等の水に混ざらない有機溶媒及びオリーブ油を水から除去することができることがわかった。
【実施例】
【0063】
同様に、脱ガス処理後のPCP(1a)粉末を用いて、水表面から有機溶媒又は油を分離する実験を行った。ガラス製薬瓶に水を入れ、激しく攪拌しながらOil Blue 35で青く色付けしたトルエンを添加した。PCP(1a)粉末を、同時に攪拌しながら水表面上に落とした。粉末粒子は水の表面上にとどまった。トルエンを吸着した粉末を濾別したところ、色付けしたトルエンを吸着したPCP(1a)粉末は、青色に変わっていた。ベンゼン及びオリーブ油についてもトルエンと同様の結果であった。
【実施例】
【0064】
水表面からの有機溶媒又は油の吸着を、TGAにより定量的に分析した。PCP(1a)粉末のペレットディスク及びオリーブ油を吸着したペレットディスクの結果を図11に示す。図11より、オリーブ油を吸着した粉末のTGAでは、230~330℃の間に吸着された油に対応する特徴的な重量損失が観測された。より定量的には、約2.2cmの表面積をもつ200mgのPCP(1a)ペレットディスクは、約420wt%のオリーブ油を吸収することができる。図11はまた、溶媒又は油を吸着した粉末の骨格は、脱ガス処理後の粉末と同じくらい熱的に安定であることを示した。
【実施例】
【0065】
水表面から取り除いたトルエン、ベンゼン及びシクロヘキサンのTGAを測定した。その結果を図12に示す。なお、図12の丸で囲った部分は、Oil Blue 35の重量損失に対応する。図12から、トルエン及びベンゼンは表面上の通常の毛細管現象に従い、PCP(1a)の細孔中に吸着されるが、シクロヘキサンは細孔中に吸着されないことがわかる。この結果は、図10のトルエン、ベンゼン及びシクロヘキサンの吸着等温線の結果と一致した。脂肪族のシクロヘキサンよりも、トルエン及びベンゼン等の芳香族溶媒を選択的に吸着するのは、芳香族BTMB配位子との相互作用するためである。さらに、脱ガス処理後のPCP(1a)粉末、Oil Blue 35で色付けしたトルエンを吸着した粉末及びn-ヘキサンでOil Blue 35で色付けしたトルエンを洗浄し、脱ガス処理した粉末のX線回折パターンを図13に示す。Oil Blue 35で色付けしたトルエンを吸着した粉末(真ん中)及びn-ヘキサンでOil Blue 35で色付けしたトルエンを洗浄した粉末(上)は、いずれもガス処理後のPCP(1a)粉末(下)と同じ結晶構造であった。これらの結果から、PCP(1a)の構造は、油のクリーンアップ実験を行った後でも安定であり、再利用可能であることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12