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明細書 :マイクロ流体デバイス及び細胞の微小3次元培養法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6486898号 (P6486898)
登録日 平成31年3月1日(2019.3.1)
発行日 平成31年3月20日(2019.3.20)
発明の名称または考案の名称 マイクロ流体デバイス及び細胞の微小3次元培養法
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
C12M   3/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
C12N   5/071       (2010.01)
C12N  11/04        (2006.01)
FI C12M 1/00 A
C12M 3/00 A
G01N 37/00 101
C12N 5/071
C12N 11/04
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2016-505223 (P2016-505223)
出願日 平成27年2月24日(2015.2.24)
国際出願番号 PCT/JP2015/055178
国際公開番号 WO2015/129673
国際公開日 平成27年9月3日(2015.9.3)
優先権出願番号 2014034166
優先日 平成26年2月25日(2014.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年1月9日(2018.1.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】亀井 謙一郎
【氏名】陳 勇
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 国際公開第2010/056186(WO,A1)
特許第3190145(JP,B1)
国際公開第2014/027693(WO,A1)
米国特許出願公開第2007/0015137(US,A1)
国際公開第2013/151616(WO,A1)
CELLDIRECTOR 3D. PRODUCT NOTE. Gradientech AB, 2013
μ-Slide VI0.1, Instructions, ibidi GmbH, 2009
調査した分野 C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
BIOSIS/MEDLINE(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも2つの開口部と接続した細胞培養チャンバーを有し、前記細胞培養チャンバー内に細胞とヒドロゲルを導入して三次元ゲル培地で培養したときに、少なくとも1つの開口部から細胞培養チャンバーへの生理活性物質の供給を前記チャンバー内での濃度勾配を形成しながら行うことができるマイクロ流体デバイスであって、
前記開口部の大きさが、細胞培養チャンバーの径よりも大きく、
前記少なくとも1つの開口部と細胞培養チャンバーとを接続する流路の流れが、前記勾配が形成される方向及び細胞が導入される方向と一致する、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
2つの開口部と細胞培養チャンバーを有する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記ヒドロゲルは細胞培養チャンバー内で形成される、請求項1または2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
チャンバーを10~400個有し、ハイスループット用である、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスの細胞培養チャンバーに細胞と流動状ヒドロゲルを導入する工程、前記ヒドロゲルをゲル状に変換する工程、少なくとも1つの開口部から生理活性物質を細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成するように供給して前記生理活性物質の存在下に細胞を培養する工程を含む、細胞の微小3次元培養法。
【請求項6】
前記細胞が多能性幹細胞である、請求項5に記載の細胞の微小3次元培養法。
【請求項7】
前記細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項5に記載の細胞の微小3次元培養法。
【請求項8】
複数の生理活性物質を濃度勾配を形成するように細胞培養チャンバーに供給することを特徴とする、請求項5~7のいずれかに記載の微小3次元培養法。
【請求項9】
少なくとも2つの開口部と接続した細胞培養チャンバーを有し、前記細胞培養チャンバー内に細胞とヒドロゲルを導入して三次元ゲル培地で培養したときに、少なくとも1つの開口部から細胞培養チャンバーへの生理活性物質の供給を前記チャンバー内での濃度勾配を形成しながら行うことができるマイクロ流体デバイスであって、
前記開口部の大きさが、細胞培養チャンバーの径よりも大きく、
前記少なくとも1つの開口部と細胞培養チャンバーとを接続する流路の流れが、前記勾配が形成される方向及と一致し、
前記少なくとも1つの開口部と細胞培養チャンバーとを接続する流路が前記チャンバーの径と比較して細い、マイクロ流体デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイス及び細胞の微小3次元培養法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は、生体内において細胞外微小環境下においてその機能制御が行われている。細胞外微小環境とは、主に(i)成長因子・ビタミン・ガス分子などの可溶性因子、(ii)細胞外マトリックスタンパク・固さなどの不可溶性因子、(iii)細胞間相互作用、から構成されている。これらの因子が複雑に、且つ厳密に制御されながら、細胞機能の制御を行なっている。つまり、ヒトES 細胞およびヒトiPS 細胞などの目的細胞の機能を自在に制御するためには、この細胞外微小環境を自在に制御することが必須となる。
【0003】
しかし、これらの制御はマイクロメータースケールと非常に小さい環境下で行われており、従来の細胞の培養・実験法は、培養ディッシュやプレートを用いた2 次元環境では、再現することができない。そこで、従来法では困難であった、3 次元細胞培養・実験環境を作製する事ができる手法が望まれてきた。
【0004】
従来のヒトES/iPS 細胞の培養・実験法は、培養ディッシュなどの2 次元環境下で行われていた(非特許文献1,2)。
【0005】
しかし、本来、細胞は3 次元環境下に置かれており、2 次元環境下では本来の機能を発現することはできない。ヒトES/iPS 細胞を用いた組織工学においても、3 次元環境を整えることは非常に重要である。
【0006】
大きさも非常に重要な因子となる。細胞は生体内において、マイクロメータースケールの微小環境において制御されている。例えば、可溶性因子の濃度勾配や、細胞外基質の固さなどが挙げられる。従来法ではこれらの因子を制御することは困難であった。もちろん、これらの因子を網羅的に解析することは、ほぼ不可能であった。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】K. Kamei et al. Lab Chip, 9(4), 555-563 (2009)
【非特許文献2】K. Kamei et al. Lab Chip, 10(9), 1113-1119 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、細胞を三次元環境下に培養するのに適したマイクロ流体デバイス及び細胞、特に多能性幹細胞の機能制御及び解析を可能にする微小3 次元培養法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、マイクロ流体デバイスを用いてヒトES 細胞およびヒトiPS 細胞の新規微小3次元細胞培養デバイスを開発した。このマイクロ流体デバイスは非常に微量で細胞培養を行うことができ、また簡便に3次元培養を確立することができる。
【0010】
従来のヒトES 細胞およびヒトiPS 細胞の培養・実験法は、培養ディッシュやプレートを用いた2次元環境で行われている。しかし、細胞は生体内において3次元微小環境下でその制御が行われており、2次元環境下では細胞が持つ本来の機能が発揮されない。そこで、従来法では行うことができない、3次元細胞培養・実験環境を作製する事ができる手法が望まれてきた。
【0011】
本発明者はこれまでにマイクロ流体デバイスを用いた細胞培養・アッセイ法の開発を行って来た。本発明では、マイクロ流体デバイスを用いて3次元的な微小環境を作製し、且つ生体適合性の高いヒドロゲルを細胞支持担体として使用することによって、3次元培養を可能にした。
【0012】
本発明は、これらの既知方法・技術の問題点を解決する新規技術であり、好ましい実施形態における本発明の特徴は以下の点である。
(1)マイクロ流体デバイスによる細胞、特にヒトES/iPS細胞等の多能性幹細胞の三次元培養法の開発
(2)ヒドロゲルを用いたヒトES/iPS細胞培養法の三次元化
(3)相転移ヒドロゲルを用いることによる、マイクロ流体デバイスへの細胞の導入・摘出の簡便化、細胞への低ダメージ化
具体的には、本発明は、以下のマイクロ流体デバイス及び微小3 次元培養法を提供するものである。
項1. 少なくとも2つの開口部と接続した細胞培養チャンバーを有し、前記細胞培養チャンバー内に細胞とヒドロゲルを導入して三次元ゲル培地で培養したときに、少なくとも1つの開口部から細胞培養チャンバーへの生理活性物質の供給を前記チャンバー内での濃度勾配を形成しながら行うことができる、マイクロ流体デバイス。
項2. 前記ヒドロゲルは細胞培養チャンバー内で形成される、項1に記載のマイクロ流体デバイス。
項3. 少なくとも1つの開口部と細胞培養チャンバーとを接続する流路が前記チャンバーの径と比較して細いことを特徴とする、項1又は2に記載のマイクロ流体デバイス。
項4. 項1~3のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスの細胞培養チャンバーに細胞と流動状ヒドロゲルを導入する工程、前記ヒドロゲルをゲル状に変換する工程、少なくとも1つの開口部から生理活性物質を細胞培養チャンバー内で濃度勾配を形成するように供給して前記生理活性物質の存在下に細胞を培養する工程を含む、細胞の微小3次元培養法。
項5. 前記細胞が多能性幹細胞である、項4に記載の細胞の微小3次元培養法。
項6. 前記細胞がヒト多能性幹細胞である、項4に記載の細胞の微小3次元培養法。
項7. 複数の生理活性物質を濃度勾配を形成するように細胞培養チャンバーに供給することを特徴とする、項4~6のいずれかに記載の微小3次元培養法。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、マイクロ流体デバイスを用いてES 細胞およびiPS 細胞などの多能性幹細胞を含む細胞の微小3次元細胞培養を行うことができる。このマイクロ流体デバイスは非常に微量で細胞培養を行うことができ、また簡便に3次元培養を確立することができる。
【0014】
本発明のマイクロ流体デバイスは、多種類の生理活性物質を濃度勾配をかけながら三次元ゲルに供給できるため、細胞、特に多能性幹細胞の分化、機能制御における各種生理活性物質の作用を網羅的にスクリーニングすることが可能になった。
【0015】
本発明はこれまで生体外に作製することができなかった細胞外微小環境を、マイクロ流体デバイスを用いることで創出し、それに対する細胞応答を評価することができるデバイスを開発したことを特徴とする。ヒト多能性幹細胞を始めとする哺乳類細胞は、生体内において細胞外微小環境によってその機能を厳密に制御されており、その制御機構を知ることが、組織工学、細胞移植治療や再生医療の発展には欠かせなかった。本開発は、この問題点を克服し、ヒトを含む哺乳類の多能性幹細胞の実用化へ大きく貢献できるものである。
【0016】
更に、本発明で開発したデバイスや創薬スクリーニングにも応用することが可能である。これまでの細胞を用いた創薬スクリーニングはプレート上に2 次元培養した細胞を使用するものであった。しかし、細胞の機能発現には三次元組織化が必要であり、つまり薬剤に対する細胞の応答も当然異なる。本発明では、3 次元培養のハイスループット化にも成功しており、よってヒト多能性幹細胞を始めとする細胞を3 次元培養化、それを用いた創薬スクリーニングを可能にする。
この細胞外微小環境は、ヒト多能性幹細胞だけでなく、がん幹細胞においても非常に重要である。
【0017】
近年、細胞外微小環境はがん幹細胞形成に作用していることが示唆されているが、生体外においてがん幹細胞の研究を行うことは困難であった。本発明で提示する3 次元培養法は、がん幹細胞研究にも応用可能であり、がんの根本治療法の開発にも大きく貢献できるものである。
【0018】
また、マイクロ流体デバイスを使用しているので、サンプル一つの量・コストを抑えられることも、利点である。
【0019】
本発明のマイクロ流体デバイスを用いることによって、細胞への物理的・化学的な刺激を同時に行い、それらに対する細胞応答を評価することが可能になる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、ヒト多能性幹細胞の3 次元培養のハイスループット化しているという点で、既に他の研究より優位にたっている。また、このハイスループット化はデバイスへの挿入口が従来の96 穴プレートと同じ場所になっており、従来から使用されているオートインジェクターなどの装置がそのまま使用することが出来るのも利点である。マイクロ流体デバイスを用いることによって、サンプル一つの量・コストを軽減できるのも本発明の特徴である。従来の96 穴プレートを用いる場合、サンプル一つにつき100~200μL のサンプルが必要であるが、本発明では10 μL と1/10 に抑えることができ、実用化のレベルに達している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるヒト多能性幹細胞の三次元微小環境培養の概念図。マイクロ流体デバイス中に流動状態のヒドロゲルとヒト多能性幹細胞の混合液を導入し、三次元培養を行うことができる。培養に必要な成長因子などの生理活性物質はヒドロゲル中を拡散することで、細胞に供給することが可能。必要に応じて分化に必要な因子も導入可能である。
【図2】本発明で使用した温度感受性相転移ヒドロゲル(Mebiol(登録商標))。温度を変えることで、細胞をゲル中に導入・採取することが可能になる。
【図3】本発明のおける実験操作手順。1.マイクロ流体デバイス(μFD)を作製。2.通常のヒト多能性幹細胞の二次元培養。3.ヒト多能性幹細胞を酵素処理、または物理的処理により回収し、ヒドロゲルと混ぜる。4.ヒト多能性幹細胞・ヒドロゲル混合溶液をμFDに導入し、温度を変えることによりヒドロゲルを固まらせる。5.三次元培養。必要に応じて培地交換を行う。
【図4】マイクロ流体デバイスの作製工程。3D-CADにより目的のデザインを作製し、3Dプリンタにより構造の鋳型を印刷した。通常のフォトリソグラフィによる鋳型の作成や、大量生産用の射出成形などにも用いられる金型による作成も可能である。鋳型には、PDMS原料液(塩基と硬化剤の混合液)を流し込み、μFD構造を有するPDMS製のデバイスを作製した。
【図5】本発明の三次元培養用マイクロ流体デバイスの例を示す。(左)細胞導入・培地交換用に大きな開口部が1つ、小さい開口部の出口が1つあり、大小2つの開口部を細胞培養チャンバーで接続してある。大きい開口部から培地、成長因子等を導入することにより濃度勾配を作製することができる。(右)2つの大きな開口部を細胞培養チャンバーと接続してある。細胞培養チャンバー中で均一な細胞培養が可能である。
【図6】ハイスループットスクリーニング(HTS)マイクロ流体デバイス(μFD)。本発明の三次元培養は、HTS-μFDにも適用可能である。
【図7】オートインジェクタによる送液。96穴(左図)及び384穴(右図)フォーマットにおいて、チップとHTS-μFDとの対応関係を確認した。
【図8】μFD中で三次元培養したヒト多能性幹細胞の写真と、他の手法で培養したヒト多能性幹細胞形成コロニーの形状。μFDや浮遊培養した場合には、ヒト多能性幹細胞は球状の細胞塊になる。従来の二次元培養では単層のコロニーになる。
【図9】免疫蛍光染色法によるヒト多能性幹細胞マーカー(OCT4とNANOG)の発現確認。共にμFD中で培養したヒト多能性幹細胞で強く発現していることが確認できた。
【図10】フローサイトメトリーによるヒト多能性幹細胞マーカー(SSEA4とTRA-1-60)、及び分化マーカー(SSEA1)の発現確認。三種類の固さの違うゲル(Soft-HG、Mid-HG、Hard-HG)を用いて三次元培養を行ったが、どの環境においても強く幹細胞マーカーが発現し、分化マーカーの発現は確認できなかった。
【図11】定量PCR法によるヒト多能性幹細胞マーカー(SOX2、NANOG、POU5F1(OCT4))の発現確認。三次元培養中(HG)においても通常の二次元培養(マトリゲルMG)と同様に強く幹細胞マーカーが発現していることが確認できた。
【図12】μFD中における三次元培養環境の「固さ」をゲル濃度によって変えることができる。本図は、異なる固さのゲル中でのヒト多能性幹細胞sphereの大きさを示している。Too soft(45 mg mL-1), Soft(61 mg mL-1), Medium(75 mg mL-1), Hard(91 mg mL-1)である。Too softヒドロゲル中のsphereは大きくなることができるが、ゲルがあまりにも柔らかすぎ、細胞を保持することができない。
【図13】ハイスループットスクリーニング(HTS)マイクロ流体デバイス(μFD)。写真に示すように三次元培養のスクリーニングも可能。細胞周期解析。浮遊培養している細胞に比べて、G2/M期の細胞が少ないことが確認できた。
【図14】ホタルルシフェラーゼを用いた細胞活性(ATP)評価。どの条件においてもほぼ同等のATP活性を示しており、細胞にダメージがないことが確認できた。
【図15】μFD/ヒドロゲル中における成長因子の拡散測定。bFGF(分子量17kDa)とトランスフェリン(分子量80kDa)の異なる固さのゲル中での拡散を評価した。各因子は蛍光標識してある。分子量の小さい因子が速やかに拡散していることが確認できた。
【図16】μFD+ヒドロゲル(Soft-HG 61 mg mL-1)中における蛍光標識デキストランの拡散。分子量の異なる蛍光標識デキストランを準備し、それらが拡散していく様子を、蛍光顕微鏡で観察した。大きい分子ほどヒドロゲル中を拡散しづらいことが確認できる。
【図17】μFD+ヒドロゲル(Soft-HG 61 mg mL-1)中における蛍光標識デキストランの拡散。分子量の異なる蛍光標識デキストランを準備し、それらが拡散していく様子を、蛍光顕微鏡で観察した。蛍光強度を測定しながら、分子の拡散を定量した。分子量の大きさに応じて、拡散が減少することが確認できる。
【図18】μFD+ヒドロゲル(Soft-HG 61 mg mL-1)中における蛍光標識デキストランの拡散。分子量の小さいデキストラン(3~5kDa)はゲルの固さ(濃度)の影響を受け、柔らかいゲル中では速やかに拡散することが確認できた。しかし、分子量が大きい(10kDa以上)と、ゲルの固さにはほぼ影響を受けないことが確認できた。
【図19】μFD/ヒドロゲル中の成長因子濃度勾配によるヒト多能性幹細胞のコロニー形成効率。成長因子の濃度が高い入口付近ではコロニー形成が効率よく起きていることが確認できた。
【図20】ハイスループットスクリーニング(HTS)マイクロ流体デバイス(μFD)とそのマイクロ流体部分の概念図。細胞培養チャンバーにヒドロゲルに混入した細胞を導入する。細胞維持用の培地タンクと、細胞刺激溶液用タンクを1つの細胞培養チャンバーに接続し、細胞刺激物の濃度勾配を作製することが可能。
【図21】マイクロ流体デバイス中の細胞培養チャンバーのデザイン図。単一細胞培養チャンバーの中で、複数の濃度勾配を作製することができる。マイクロ流体デバイスのデザインに応じて様々な刺激を与えることが可能。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明で使用する細胞は、動物細胞、好ましくは脊椎動物細胞であり、特に哺乳類細胞である。哺乳類としては、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、猫などが挙げられ、ヒトが好ましく例示される。細胞は、多能性幹細胞であることが好ましい。多能性幹細胞としては、ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞、脂肪幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、筋幹細胞等の幹細胞が挙げられ、好ましくはES細胞、iPS細胞等の多数の器官、組織に分化することができる幹細胞である。このような幹細胞は、分化の過程で1又は複数の生理活性物質の濃度勾配が必要と考えられており、本発明のデバイス及びハイスループットシステムを用いることで、幹細胞の分化に重要な物質をアッセイすることができる。

【0023】
濃度勾配と共に供給される生理活性物質(刺激物)としては、カルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、塩素イオン等のイオン類、肝細胞成長因子(HGF)、線維芽細胞増殖因子(bFGF)/FGF-2、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン結合EGF、ガストリン、TGF-β、インスリン様成長因子(IGF-1)、パラサイロイド・ホルモン関連蛋白(PTHrP)、成長ホルモン、プロラクチン、プラセンタル・ラクトジェン、グルカゴン様ペプチド1(Glucagon like peptide-1)、Exendin-4およびKGF(karatinocyte growth factor)等のサイトカイン類、アミノ酸(Ala,Gly,His,Arg,Lys,Asp,Glu,Asn,Gln,Leu,Ile,Val,Phe,Tyr,Trp,Ser,Cys,Met,Pro,Thr、βアラニン、タウリン、オルニチンなど)、神経伝達物質、糖類(グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ショ糖など)、カルボン酸(酢酸、ピルビン酸、酪酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、αケトグルタル酸など)、脂質(トリグリセライド、ジグリセライド、ステロイド、モノテルペン、ジテルペン、セスキテルペン、リン脂質、ガングリオシド)、ポリアミン(スペルミジン、スペルミンなど)、ムコ多糖、グルクロン酸、ガラクツロン酸、pH調整剤などが挙げられる。pH調整剤としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウムなどの塩基、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などの緩衝液が挙げられる。

【0024】
三次元培養に用いるヒドロゲル材料は、細胞をチャンバー内に導入するときには、流動性を有し、チャンバー内で他の物質の添加或いは加温(例えば37℃)するなどの手段によりゲル化可能な材料が広く使用できる。

【0025】
本発明で使用するヒドロゲルとしては、キトサンゲル、コラーゲンゲル、ゼラチンゲル、ペプチドゲル、フィブリンゲル、デンプン、ペクチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、アルギン酸塩、フィブロインなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

【0026】
好ましい1つの実施形態において、ヒドロゲルは、温度に応じて相転移を起こす材料が好ましく、例えば15℃以下では液状であるが、細胞培養条件(37℃)ではゲル状になるようなゲルである。このような材料は、細胞をマイクロ流体デバイスに導入するときは、低温下で細胞操作を行い、培養時には37℃にしてゲル化し、培養後に細胞を取り出す際には、またデバイスを低温下に置くことによって、ゲルが液状になり、取り出すことが可能になる。

【0027】
ゲルの濃度を増加することにより、ゲルを固くすることができ、ゲルの濃度を下げることでより柔らかいゲルを形成できる。ゲル強度とゲル濃度の関係は各々のヒドロゲル材料において公知であり、当業者は容易に必要とする濃度を選択できる。

【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態において、三次元培養のためのゲルは、温度感受性のゲル材料である。このようなゲル材料は公知であり、例えばMebiol(登録商標)を使用することができる。

【0029】
本発明の1つの好ましい実施形態において、アルギン酸ナトリウムなどのカルシウムイオンを加えることでゲル化可能なゲル材料を使用することができる。例えばアルギン酸ナトリウムと細胞培養液と細胞を含む混合液を細胞培養チャンバーに導入し、その後カルシウムイオンの溶液を開口部から細胞培養チャンバーに浸透させることにより、細胞培養チャンバー内をゲル化させることができる。また、キレート剤によりカルシウムイオンを除去することで、ゲルを流動化させることができる。

【0030】
本発明の1つの好ましい実施形態において、例えば新田ゼラチン製のコラーゲンゲルのように37℃で30分加温することでゲル化するようなヒドロゲルを使用することができる。コラーゲンゲルは、コラゲナーゼを作用させることによりゲルを分解し、細胞を取り出すことができる。コラーゲン以外にもゼラチン、ヒアルロン酸、ペプチド、フィブリン、キトサンなど、酵素の作用により分解可能なヒドロゲルを好ましく使用することができる。

【0031】
本発明では、細胞環境の固さによる細胞挙動の検討も行うことができる。ゲル中における生理活性物質の拡散は溶液中のそれとは異なり分子量の大きさによって劇的に変化する。この現象は生体内においても起きている現象であり、本発明のマイクロ流体デバイスはこの生体内の条件を再現できるものである。

【0032】
本発明は、ES 細胞、iPS 細胞などの多能性幹細胞の3次元培養法として特に有用である。この方法を用いることによって、従来法では行うことができなかったヒトを含む哺乳類の多能性幹細胞(例えばヒトES 細胞、ヒトiPS 細胞)の機能制御・解析を行うことができる。

【0033】
本発明のマイクロ流体デバイスを用いて細胞を3次元培養する方法は、模式的に図1,3に示され、温度感受性相転移ゲルの1例を図2に示す。

【0034】
本発明のマイクロ流体デバイスは、例えば図4に記載のように3Dプリンターなどを用いて鋳型を形成した後、原料を鋳型に流し込み、重合などにより固化させることで得ることができる。図4ではPDMS製のマイクロ流体デバイスが示されているが、他の材料からなるマイクロ流体デバイスも図4及び公知の方法に基づき当業者であれば容易に作製できる。

【0035】
マイクロ流体デバイスは、多数の細胞培養チャンバーを有し、該デバイスは好ましくはハイスループット用デバイスであるので、チャンバーは1つのデバイスに、10~400個程度、例えば16個、48個、96個、384個などの個数で有し得る。

【0036】
本発明のマイクロ流体デバイスは、細胞培養チャンバーに細胞や培養液などを供給可能な2以上の開口部を接続しており(図5,21)、細胞培養チャンバーにおいて細胞を三次元培養できるとともに培養液の交換、生理活性物質の濃度勾配を有する供給を行うことができる。細胞培養チャンバーは1つのデバイスに多数形成されているのがよく、1つのデバイスに96個或いは384個形成することでハイスループットデバイスとして使用可能である(図4,6、7)。

【0037】
マイクロ流体デバイスは上部に蓋を重ね合わせて培養液の蒸発を防止することが好ましい。

【0038】
ヒドロゲル中における生理活性物質の拡散の様子は、図15に示され、開口部に導入された生理活性物質はヒドロゲル中を拡散すること、拡散は生理活性物質の分子量により影響されることが示されている。拡散速度はゲル強度によっても影響される(図18)。ヒドロゲルの濃度によりゲル強度を変化させ得ることが図12に示され、図13は本発明のハイスループットスクリーニング(HTS)マイクロ流体デバイス(μFD)により、細胞周期解析が行えることを示す。図14は、本発明の三次元培養で培養された細胞がダメージを受けていないことがATP活性に基づき示されている。図16,17は、大きい生理活性物質は拡散速度が遅いことを示す。

【0039】
本発明の好ましい実施形態では、多数の細胞培養チャンバーを有するマイクロ流体デバイスを形成し、該チャンバーで細胞を培養する。培養された多能性幹細胞はマーカーを発現し(図9~11)、多能性幹細胞のコロニー形成効率などの生理活性物質による作用は、濃度勾配により影響される(図19)。図20は、生理活性物質を供給する刺激用溶液タンクと細胞培養チャンバーの間の流路が細く、生理活性物質が少しずつ供給されるために濃度勾配が形成されること、培地用タンク(開口部)は細胞培養チャンバーと直結され、効率よく培地を供給、交換できる実施形態を示す。図21に示すように生理活性物質(刺激物)を供給する開口部は1つでも2以上であってもよく、複数の物質を任意のタイミングで三次元培養細胞に供給することができる。

【0040】
細胞培養チャンバーの高さは100~1000μm程度、幅は100~1000μm程度、奥行きは1000~10000μm程度である。細胞培養チャンバーと開口部を接続するマイクロ流路の長さは1000~10000μm程度、マイクロ流路の径は100~1000μm程度である。

【0041】
開口部の大きさは、マイクロ流路の径よりも大きい。開口部の大きさが細胞培養チャンバーの径と近ければ細胞をチャンバー内に導入するに効果的である。一方、開口部と細胞培養チャンバーを両者の径よりも細いマイクロ流路で接続した場合、生理活性物質の拡散が制限されるため、生理活性物質の濃度勾配を作りやすい。

【0042】
チャンバーは複数の(通常2個の)開口部を有し、チャンバーの一方の開口部から新しい培養液を供給すればマイクロ流路を経由して他方の開口部から古い培養液が排出され、それにより培養液の交換が可能である。

【0043】
マイクロ流体デバイスの材質は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ジフェニルシロキサンなどのポリシロキサン系ポリマー、シリコーン樹脂/シリコーンゴム、天然ゴムないし合成ゴム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、フッ素化ポリマー(PTFE、PVdFなど)、ポリ塩化ビニル、ポリメチルハイドロゲンシロキサン、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサン単位のコポリマーなどのホモポリマー或いはコポリマー、さらにはこれらのブレンドが挙げられるが、ポリシロキサン系ポリマーが好ましく、PDMSがより好ましい。マイクロ流体デバイスは透明性が高いことが、三次元細胞培養の評価を行いやすいので好ましい。また、マイクロ流体デバイスは酸素、二酸化炭素などの気体透過性に優れているのが好ましい。

【0044】
マイクロ流体デバイスは、対応する鋳型を製造し、その鋳型に上記の高分子或いはその原料を流し込んで製造することができる。鋳型の作製法は特に限定されないが、3Dプリンタを用いるのが好ましい。

【0045】
マイクロ流体デバイスは、多数の細胞培養チャンバーを有し、該デバイスは好ましくはハイスループット用デバイスであるので、チャンバーは1つのデバイスに、10~400個程度、例えば16個、48個、96個、384個などの個数で有し得る。

【0046】
チャンバーは、培養液及び細胞数が少なくなるのが好ましい。1つのチャンバー内の空間には、例えば100~2000μlの液体/ゲルを保持することができる。この空間に細胞と培養液を供給することにより細胞培養を行うことができる。

【0047】
1つのチャンバー内で培養される細胞数は、通常5×10~0.5×10個/cm2程度である。チャンバーの培養空間の形状は、三次元培養が可能であれば特に限定されないが、例えば円筒状、角筒状、楕円筒状などの形状が挙げられる。

【0048】
特に好ましい実施形態において、本発明は、以下の(a)~(d)の開発により支えられている。
(a)新規3 次元培養用マイクロ流体デバイスの開発
生体内で細胞機能制御に重要な役割を果たしている「細胞外微小環境」は、従来の実験系ではその生体外での再現が非常に困難であった。これは、従来の細胞培養ディッシュなどが大きな(mm~cm 程度)の空間しか扱えないためであり、細胞外微小環境の再現に必要なμm レベルの実験系では無かった。反面マイクロ流体デバイスは、μm レベルの微小空間を作製することが可能になり、細胞外微小環境の再現に一歩近づく。

【0049】
しかし、これまでのマイクロ流体デバイスでの細胞実験系は、細胞をマイクロ流体デバイス内の培養基材(ガラスやプラスチックなど)上に平面上に培養しているだけであったので、本当の意味での3次元培養ではなかった。そこで、本発明では本当の3 次元培養を可能にするために、細胞外基質としてハイドロゲルを使用した。ハイドロゲルはポリマーが水を内包することによって形成されるゲルであり、培養液とポリマーを混ぜることによって、ゲル中での細胞を可能にする。また、ポリマー濃度を変えることによって、ゲルの固さも調節することができ、これまで試験することが難しかった「環境の固さが細胞に与える影響」など行うことが可能になった。また、ゲル中の物質の拡散は分子量の大きさに依存し、ゲル内における物質拡散と、それに対する細胞応答の評価を行うことも可能である。
(b)相転移ハイドロゲルを用いたヒトES/iPS細胞3次元培養法の開発
ハイドロゲルを用いた細胞培養法では、細胞にダメージを与えること無く、細胞を回収することは非常に困難であった。そこで、本発明の好ましい実施形態ではこの問題を解決するために、可逆的に相転移することができるハイドロゲルを使用した。このハイドロゲルは細胞接着性は低いものの、細胞毒性は無く、3次元培養の際の支持担体として用いることが可能である。また、細胞場用環境下(37℃)ではゲル化し、低温度(20℃)以下では液状になるので、細胞に影響を与えること無く、マイクロ流体デバイスへの導入、摘出が可能になる。

【0050】
(c) 3Dプリンタを用いたマイクロ流体デバイス鋳型作成技術の開発
μFDは細胞生物学において様々な利点を持つ反面、作製過程において、鋳型準備に時間がかかることが問題点であった。

【0051】
本発明では、鋳型作製のために 3Dプリンタを使用することを発明した。 3Dプリンタは複雑な 3次元構造をプリントすることが可能であり、近年では家庭用の 3Dプリンタも市販されるようになった。本発明で使用した 3Dプリンタは XY解像度が 50 μm、 Z解像度が 15 μmであり、細胞培養用のマイクロ流体デバイス作製には十分な性能である。鋳型として使用する材料はプラスチック製樹脂であり、熱耐性が 70℃と比較的低温であるため、マイクロ流体デバイスの材料である polydimetylsiloxane (PDMS)に転写する際には、温度を 65℃に保って行った。
(d) マイクロ流体デバイスと組み合わせたハイスループットスクリーニングシステムの開発
多能性幹細胞の機能を維持し、分化を行うために適切な生理活性物質(刺激物)を効率よく同定するために、本発明では、マイクロ流体デバイスと組み合わせたハイスループットスクリーニングシステムを開発した。生理活性物質は、三次元培養において濃度勾配のもとに供給することができ、発生・分化にどのような生理活性物質がどのような濃度勾配で供給されることが適切であるのかについて、本発明のデバイスを用いてハイスループットスクリーニングシステムで決定することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1:3D プリンタを用いたマイクロ流体デバイス作製方法
(1)材料
SYLGARD(登録商標)184 Silicone Elastomer kit (base, curing agent)(Dow corning)
Nunc オムニトレイ(Thermo scientific 165218)
ガラスボトムディッシュ(岩城硝子)

3D プリンタ AGILISTA(Keyence)
デシケーター
コロナフィット CFG-500(信光電気計装株式会社)
3D-CAD(AutoCAD、Blender 等)

(2)操作手順
鋳型の作製
1. 3 次元画像描画ソフトウェア(3D-CAD)により、マイクロ流路構造の型となる鋳型デザインを有するマスクを作製する。
【実施例】
【0053】
2. 鋳型デザインを.stf ファイルに変換する。
【実施例】
【0054】
3. .stf ファイルを3D プリンタに転送し、印刷する。
【実施例】
【0055】
マイクロ流路構造を有するPDMS の作製
1. Silicone Elastomer Base とCuring agent を10:1 の重量比で撹拌ミキサーを用いて混合する(PDMS混合液)。
【実施例】
【0056】
2. PDMS 混合液を、3D プリンタにより印刷された鋳型に流し込む。
【実施例】
【0057】
3. デシケーターで30 分間脱気を行う。
【実施例】
【0058】
4. 65℃のオーブンで加熱、オーバーナイト。
【実施例】
【0059】
5. 鋳型からPDMS を回収する。
【実施例】
【0060】
マイクロ流体デバイス(HTS-μFD、HTNS-μFD)の作製
1. オムニトレイまたはガラスボトムディッシュをコロナ処理する(コロナフィット CFG-500 等を用いる)。
【実施例】
【0061】
2. PDMS の表面をコロナ処理する。
【実施例】
【0062】
3. オムニトレイまたはガラスボトムディッシュとPDMS を貼り合わせる。
【実施例】
【0063】
4. 65℃のオーブンで加熱、オーバーナイト。
【実施例】
【0064】
5. 使用するまでデシケーター内で保存する。
【実施例】
【0065】
実施例2:Mebiol gel(相転移ゲル)を用いたヒト多能性幹細胞の3次元培養法
(1)材料
Mebiol gel メビオール株式会社PMW20-1001 (10ml 希釈用)
mTeSR1
株式会社ベリタス ST-05850
Y-27632
和光純薬株式会社
250-00513 (5mg)
TrypLE Express (1x), Phenol Red Life technologies 12605028 (500ml)
(2)操作手順
Mebiol gel の溶解
Mebiol gel は乾燥状態で重さを計測し、10ml 希釈用に対して6~10ml のmTeSR1 を加え、4°C で一晩静置して溶解させる。実験の際のMebiol gel 濃度は以下の通り。
【実施例】
【0066】
Soft 61mg/ml
Medium 75mg/ml
Hard 91mg/ml

ヒト多能性幹細胞の3次元培養化
1. 流体デバイスはUV 照射15 分間で殺菌
2. Y-27632 を最終濃度10μM で含むmTeSR1 培地を調製
3. MEF 上、またはMatrigel 上の細胞をD-PBS(-)で2 回リンス
4. TrypLE Express を加え37℃で3~5 分間静置
5. TrypLE Express を吸引除去
6. MEF 上の細胞を用いる場合は、剥離したMEF を除去するため培地で細胞層をリンス
7. mTeSR1+Y-27632 培地で細胞を回収
8. シングルセルにするため、細胞懸濁液をピペッティング
9. 1000rpmで3 分間遠心
10. 上清を吸引除去
11. 細胞ペレットをmTeSR1+Y-27632 培地に再懸濁
12. 細胞数を計測
13. 4×105 cells を新しいチューブに分注
14. 1000rpm 3 分間遠心
15. 上清を吸引除去
(ゲルの凝固防止のため以降の操作は氷上で行い、チップも氷上で冷却した物を用いる)
16. 細胞ペレットを100~200μl のMebiol gel(mTeSR1 で溶解)に懸濁 (4×105 cells/100~200μl)
17. この時、最終濃度10μM でY-27632 をMebiol gel に添加
18. 氷上で冷却した流体デバイス内に細胞-Mebiol gel 懸濁液を導入(2~4×104 cells /10μl)
19. 37℃で5 分間静置してゲル化
20. デバイス上のmedium supplier にmTeSR1+Y-27632 培地を添加
21. 乾燥防止のため、dish に滅菌蒸留水を加える
22. 翌日の培地交換はmTeSR1+Y-27632 培地で行い、それ以降はmTeSR1 培地で毎日1回培地交換を行う。
【実施例】
【0067】
Mebiol gel からの細胞の回収
1. medium supplier 内の古い培地を除去
2. デバイスを氷上に5 分間静置
3. 流体内に新しい培地を加え、ゲルを希釈
4. 流体内から細胞を回収
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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