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明細書 :自閉症スペクトラム障害のバイオマーカー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-064470 (P2018-064470A)
公開日 平成30年4月26日(2018.4.26)
発明の名称または考案の名称 自閉症スペクトラム障害のバイオマーカー
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
C12M   1/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/00 G
C12Q 1/68 A
C12M 1/00 A
A61K 31/7088
A61K 48/00
A61P 25/00
G01N 33/50 P
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-203605 (P2016-203605)
出願日 平成28年10月17日(2016.10.17)
発明者または考案者 【氏名】萩原 正敏
【氏名】木村 亮
【氏名】中田 昌利
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B029
4B063
4C084
4C086
Fターム 2G045AA01
2G045AA24
2G045AA25
2G045BA13
2G045BB03
2G045CA25
2G045CB01
2G045DA14
2G045FB01
2G045FB02
2G045JA01
4B029AA07
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QQ57
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA011
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086NA14
4C086ZA01
要約 【課題】自閉症スペクトラム(ASD)のバイオマーカーの提供
【解決手段】miR-6126、miR-1227-5p、miR-3156-5p、miR-6780a-5p、miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの、ASDのバイオマーカーとしての使用。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、hsa-miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの、自閉症スペクトラム障害(ASD)のバイオマーカーとしての使用。
【請求項2】
血液試料の判定方法であって、
血液試料におけるhsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現量と基準値とを比較すること、並びに、
前記発現量が前記基準値よりも低い場合に、自閉症スペクトラム障害(ASD)が陽性と判定することを含む、方法。
【請求項3】
血液試料の判定方法であって、
血液試料におけるhsa-miR-328-3pの発現量と基準値とを比較すること、及び、
前記発現量が前記基準値よりも高い場合に、自閉症スペクトラム障害(ASD)が陽性と判定することを含む、方法。
【請求項4】
前記基準値は、健常者の発現量に基づき設定された値である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の使用、又は、請求項2から4のいずれかに記載の方法のためのキットであって、
hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、hsa-miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現量を測定可能なデバイス又は試薬を含む、キット。
【請求項6】
マイクロRNA又は細胞内でマイクロRNAを発現可能な発現系を含む医薬組成物であって、前記マイクロRNAが、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、自閉症スペクトラム障害(ASD)の予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療のための医薬組成物。
【請求項7】
マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物であって、前記マイクロRNAが、hsa-miR-328-3pである、自閉症スペクトラム障害(ASD)の予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療のための医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、自閉症スペクトラム障害のバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
自閉症スペクトラム障害(ASD)をはじめとする発達障害は、近年その患者数が急増しており、大きな社会問題になっている。
【0003】
自閉症の診断やバイオマーカーについては、酵素、タンパク質、及びペプチドなどに着目した方法が開示されている(特許文献1から3)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-224759号公報
【特許文献2】特開2014-506244号公報
【特許文献3】特開2015-180897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自閉症スペクトラム障害(ASD)をはじめとする発達障害は、成長過程において、心理・精神面での不適応につながりやすいことから、医療や教育の場においても早急な対応が必要である。上記特許文献1から3の開示はあるものの、現時点でのASD診断のゴールデンスタンダードはDSM-5であり、診断バイオマーカーは実用化に至っていない。
DSM-5に基づく診断は時間がかかるため、少しでも早急な患者サポートができる診断マーカーが必要とされている。
【0006】
そこで、本開示は、ASDのバイオマーカーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、hsa-miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの、ASDのバイオマーカーとしての使用に関する。
【0008】
本開示は、その他の態様において、血液試料におけるhsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現量と基準値とを比較すること、並びに、前記発現量が前記基準値よりも低い場合にASDが陽性と判定することを含む、血液試料の判定方法に関する。
【0009】
本開示は、その他の態様において、血液試料におけるhsa-miR-328-3pの発現量と、基準値とを比較すること、及び、前記発現量が前記基準値よりも高い場合に、ASDが陽性と判定することを含む、血液試料の判定方法に関する。
【0010】
本開示は、その他の態様において、本開示に係る使用、又は、本開示に係る方法のための、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、hsa-miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現量を測定可能なデバイス又は試薬を含むキットに関する。
【0011】
本開示は、その他の態様において、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNA又は細胞内で該マイクロRNAを発現可能な発現系を含む医薬組成物、あるいは、hsa-miR-328-3pのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物であって、ASDの予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療のための医薬組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、ASDに関する判定や診断を提供できるという効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、網羅的マイクロRNA発現解析を行った結果の一例である。統計的に有意な5つのマイクロRNAの名前(ID)を示す。
【図2】図2は、リアルタイムRT-PCR法を用いて3つのマイクロRNA(hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p及びhsa-miR-3156-5p)の発現変動を確認した結果の一例である。
【図3】図3は、リアルタイムRT-PCRを用いていて3つのマイクロRNA(hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、及びhsa-miR-3156-5p)についてROC曲線(受信者動作特性曲線)を描出した結果の一例である。
【図4】図4は、3つのマイクロRNA(hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、及びhsa-miR-3156-5p)の発現を、血液及び脳組織で確認した結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示において、「マイクロRNA(miRNA)」とは、低分子non-codingRNAの一種をいい、当該技術分野において使用される通常の意味を示す。本開示においてID(名称)を用いて言及するマイクロRNAは、miRBase (http://www.miRbase.org/)のRelease 21(2014年6月)のデータに登録されるマイクロRNAである。本開示においてマイクロRNAは、特に言及がない場合、ヒトのマイクロRNAである。また、本開示においてマイクロRNAは、特に言及がない場合、成熟型の17~25塩基からなるマイクロRNAを意味しうる。

【0015】
本開示において自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、発達障害の1つで、社会的コミュニケーション及び相互関係における持続的障害は、限定された反復する様式の行動、興味、活動がみられる障害をいう。DSM-5などの診断基準で診断されている。

【0016】
[バイオマーカー]
本開示は、5つのマイクロRNA(表1、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、及びhsa-miR-328-3p)が、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断バイオマーカーとして利用できるという知見に基づく。

【0017】
【表1】
JP2018064470A_000003t.gif

【0018】
したがって、本開示は、一態様として、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、hsa-miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの、自閉症スペクトラム障害(ASD)のバイオマーカーとしての使用に関する。

【0019】
本開示において、「自閉症スペクトラム障害(ASD)のバイオマーカーとしての使用」とは、一又は複数の実施形態において、マイクロRNAの発現変動を、ASDの診断又はASDの判定における指標若しくは指標の1つとすることが挙げられる。
本開示においてASDの判定とは、一又は複数の実施形態において、予め定められた基準と比較して、対象試料若しくは対象者に対して機械的又は客観的にASDに関する評価をすることをいい、医師による診断を含まない。本開示においてASDに関する評価とは、一又は複数の実施形態において、ASDが陽性か陰性か、ASD陽性である可能性、及びASD陰性である可能性が挙げられ、さらなる詳細な評価区分や、その他の評価があってもよい。

【0020】
マイクロRNAの発現変動とは、一又は複数の実施形態において、対象者のマイクロRNAの発現量が、健常者のそれと比較して高い、又は低いことが挙げられる。
hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、及びhsa-miR-6780a-5pは、ASD患者では健常者よりも発現量が低くなる発現変動を示し、hsa-miR-328-3pは、ASD患者で健常者よりも発現量が高くなる発現変動を示す。

【0021】
マイクロRNAの発現量の測定方法は特に限定されず、従来公知の方法や今後開発される方法が採用でき、一又は複数の実施形態において、マイクロアレイ法、リアルタイムRT-PCR法などが採用できる。

【0022】
ASDのバイオマーカーとして使用するマイクロRNAは、ASDの診断又は判定の信頼性向上の点からhsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。組み合わせは、これら3つのなかから選ばれる2つ、又は3つの組み合わせが挙げられる。

【0023】
対象者のマイクロRNAは、対象者の組織試料又は体液試料から抽出されうる。対象者への負担軽減の点から、試料としては、一又は複数の実施形態において、体液試料が好ましく、血液試料がより好ましい。血液試料は、血液そのものであってもよく、マイクロRNAが含まれる範囲でさらに前処理されてもよい。

【0024】
[判定方法]
本開示に係るバイオマーカーとしての使用は、一態様として、血液試料の判定方法であって、血液試料におけるhsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現量と基準値とを比較すること、並びに、前記発現量が前記基準値よりも低い場合に、ASDが陽性と判定することを含む方法に関する。
本開示に係るバイオマーカーとしての使用のその他の態様は、血液試料の判定方法であって、血液試料におけるhsa-miR-328-3pの発現量と基準値とを比較すること、及び、前記発現量が前記基準値よりも高い場合に、ASDが陽性と判定することを含む方法に関する。

【0025】
本開示に係る判定方法における基準値は、一又は複数の実施形態において、健常者における対応マイクロRNAの発現量に基づき設定することができる。該基準値は、血液試料を提供した対象者と同世代の複数の健常者の発現量を統計処理して設定することが好ましく、対象者と同世代かつ同性の複数の健常者の発現量を統計処理して設定することがより好ましい。該基準値は、偽陽性・偽陰性を抑制する等の目的に応じて適宜高低して調節してもよい。

【0026】
[診断方法]
本開示に係るバイオマーカーとしての使用は、その他の態様として、ASDの診断方法に関する。本開示に係るASDの診断方法は、一又は複数の実施形態において、上述したマイクロRNAの発現変動を指標の1つとすることを含む。本開示に係るASDの診断方法は、一又は複数の実施形態において、本開示に係る判定方法の結果を利用すること含む。
さらには、本開示に係るASDの診断方法は、一又は複数の実施形態において、従来の診断基準(DSM-5等)と本開示に係る判定方法の結果とを組み合わせて診断することを含む。

【0027】
[キット]
本開示は、その他の態様において、本開示に係る使用、又は、本開示に係る判定方法のためのキットであって、前記表1の全部又は一部のマイクロRNAの発現量を測定可能なデバイス又は試薬を含むキットに関する。
本開示のキットの一実施形態として、本開示の判定方法に使用する定量PCRキットであって、血液試料中の1又は複数のマイクロRNAの発現量を測定できるプライマー及び試薬を含むキットが挙げられる。前記1又は複数のマイクロRNAは、一又は複数の実施形態において、前記表1に記載の全部又は一部が挙げられる。前記プライマーは、適宜選択できる。本実施形態のキットには、さらに、健常者の発現量を測定するためのコントロール試料が含まれていてもよい。
本開示のキットの一実施形態として、本開示の判定方法に使用するキットであって、前記表1の全部又は一部のマイクロRNAの発現量を測定可能なプローブが固定されたマイクロアレイに関する。

【0028】
[医薬組成物(第1の形態)]
本開示は、その他の態様において、マイクロRNA又は細胞内でマイクロRNAを発現可能な発現系を含む医薬組成物であって、前記マイクロRNAが、miR-6126、miR-1227-5p、miR-3156-5p、miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、ASDの予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療のための医薬組成物に関する。
本形態の医薬組成物は、ASD患者において発現が低下するマイクロRNAを供給することで、ASDの予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療を達成するものである。

【0029】
本開示において「マイクロRNA又は細胞内でマイクロRNAを発現可能な発現系を含む組成物」とは、所期のマイクロRNAを細胞内に導入し得る形態の組成物をいう。「マイクロRNAを含む組成物」としては、一実施形態として、1本鎖又は2本鎖の成熟マイクロRNAを直接細胞に導入するための組成物が挙げられ、「細胞内でマイクロRNAを発現可能な発現系を含む組成物」としては、一実施形態として、マイクロRNA前駆体をコードするポリヌクレオチドが発現可能に連結されたベクターを含む組成物が挙げられる。マイクロRNA又はベクターを細胞内に導入する方法は、公知の方法を採用し得る。

【0030】
本形態の医薬組成物が、「マイクロRNAを含む組成物」である場合、一実施形態として、上記表1のRNAで表わされる成熟マイクロRNAが1本鎖又は2本鎖の状態で含まれる。成熟マイクロRNAが2本鎖の場合、頭頸部がん細胞の細胞生育抑制の点からは、前駆体がDicerに切断された後の状態を想定した2本鎖RNA(すなわち、相補鎖との間にミスマッチを保ったよりネイティブ又はネイティブに近い2本鎖RNA)とすることが好ましい。これらのマイクロRNAは合成したものを使用できる。

【0031】
本形態の医薬組成物が、「細胞内でマイクロRNAを発現可能な発現系を含む組成物」の形態である場合、「細胞内でマイクロRNAを発現可能な発現系」の一実施形態として、RNA前駆体又はその類似配列であって上記表1の成熟マイクロRNAを発現するものを発現可能にコードするベクターを含む組成物があげられる。前記RNA前駆体又はその類似配列を連結する発現ベクターは、公知のマイクロRNA発現用ベクターを使用してもよい。

【0032】
[医薬組成物(第2の形態)]
本開示は、その他の態様において、マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物であって、前記マイクロRNAが、miR-328-3pである、自閉症スペクトラム障害(ASD)の予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療のための医薬組成物に関する。
本形態の医薬組成物は、ASD患者において発現が亢進するマイクロRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを供給することで、ASDの予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療を達成するものである。

【0033】
本開示において「マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、標的とするマイクロRNAと相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをいい、好ましい形態は、一本鎖のオリゴヌクレオチドである。本発明の一実施形態として、マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的とする成熟型マイクロRNA(miR-328-3p)の塩基配列の全部又は一部と相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであり、より好ましくは、標的とする成熟型マイクロRNAの塩基配列の全部又は一部と相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。

【0034】
医薬組成物に含まれる「マイクロRNA」及び「マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチド」における塩基は、標的マイクロRNAの機能を阻害できる範囲であれば、DNA及びRNAの塩基以外の非DNA/RNA塩基であってもよく、DNA及びRNAがフッ素などで置換された形態であってもよい。また、本開示における「マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチド」において、ヌクレオシド間の結合は、リン酸エステル結合の以外の結合であってもよく、安定性の点からは、硫黄(S)含有結合が好ましい。なお、本開示における「マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチド」は、公知のもの、及び、市販のものを利用できる。

【0035】
本開示に係る医薬組成物は、第1の形態と第2の形態とが1つとなった組成物であってもよい。

【0036】
本開示は、その他の態様において、ASD又はASDの恐れのある対象者において、miR-6126、miR-1227-5p、miR-3156-5p、miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを発現させること、及び/又は、miR-328-3pの発現を抑制することを含む、ASDの予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療の方法に関する。
該方法は、一又は複数の実施形態において、本開示に係る医薬組成物を該対象者に有効量投与することを含む方法である。該医薬組成物の投与方法は特に制限されないが、例えば、静脈投与又は皮下投与が挙げられる。

【0037】
本開示は、以下の実施形態にも関しうる。
[1] hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、hsa-miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの、自閉症スペクトラム障害(ASD)のバイオマーカーとしての使用。
[2] 血液試料の判定方法であって、血液試料におけるhsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現量と基準値とを比較すること、並びに、前記発現量が前記基準値よりも低い場合に、自閉症スペクトラム障害(ASD)が陽性と判定することを含む、方法。
[3] 血液試料の判定方法であって、血液試料におけるhsa-miR-328-3pの発現量と、基準値とを比較すること、及び、前記発現量が前記基準値よりも高い場合に、自閉症スペクトラム障害(ASD)が陽性と判定することを含む、方法。
[4] 前記基準値は、健常者の発現量に基づき設定された値である、[2]又は[3]に記載の方法。
[5] [1]に記載の使用、又は、[2]から[4]のいずれかに記載の方法のためのキットであって、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p、hsa-miR-328-3p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現量を測定可能なデバイス又は試薬を含む、キット。
[6] マイクロRNA又は細胞内でマイクロRNAを発現可能な発現系を含む医薬組成物であって、前記マイクロRNAが、hsa-miR-6126、hsa-miR-1227-5p、hsa-miR-3156-5p、hsa-miR-6780a-5p及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、自閉症スペクトラム障害(ASD)の予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療のための医薬組成物。
[7] マイクロRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物であって、前記マイクロRNAが、hsa-miR-328-3pである、自閉症スペクトラム障害(ASD)の予防、改善、進行抑制及び/若しくは治療のための医薬組成物。
【実施例】
【0038】
[対象者]
研究参加に同意を得たASD患者・健常者を対象とした(表2)。Discovery群は、年齢性別を一致させたASD患者30名と健常者30名で構成した。また、Replication群は、Discovery群から独立したASD患者17名と健常者22名で構成した。DSM-5を用いて自閉症の診断を行い、さらに診断結果はADOS(自閉症診断観察法)、ASSQ-R(自閉症スクリーニング質問紙)を用いて確認した。
対象者から採取した血液検体から、マイクロRNAを含むRNAを抽出した。PAXgene Blood RNA Tubeに採取した2.5mlの対象者の血液検体から、PAXgene Blood miRNA Kitを用いて、マイクロRNAを含むRNAを抽出した。抽出したRNAは、Agilent RNA 6000 Nano KitをRIN値が8以上であることを確認し、Agilent Small RNA Kitを用いてマイクロRNAが含まれることを確認した。
【実施例】
【0039】
【表2】
JP2018064470A_000004t.gif
【実施例】
【0040】
[マイクロアレイを使用した網羅的マイクロRNA解析]
Discovery群(ASD患者=30名,健常群=30名)のサンプルを用いて、高解像度のマイクロアレイを用いて網羅的なマイクロRNA解析を行った。その結果、5個のマイクロRNAが有意な発現変動(p値<0.001)を示した(図1)。すなわち、miR-6126、miR-1227-5p、miR-3156-5p、miR-6780a-5p、及びmiR-328-3pである。miR-6126、miR-1227-5p、miR-3156-5p、及びmiR-6780a-5pは、ASD患者で発現量が減少する傾向を示し、miR-328-3pは、ASD患者で発現量が増加する傾向を示した。【0041】
[リアルタイムPCR法による発現変動の確認]
Discovery群とは独立したReplication群(ASD患者=17名, 健常群=22名)に対して、リアルタイムRT-PCR法を用いて、上記5個のうち3個のマイクロRNA(miR-6126、miR-1227-5p、及びmiR-3156-5p)の発現変動を確認した。その結果、有意な発現変動を示した(図2)。すなわち、これらのマイクロRNAは、異なる方法かつ2つの異なる独立したサンプル集団においても、有意な変動を示した。
【実施例】
【0042】
[バイオマーカーとしての有用性の確認]
次に、3個のマイクロRNA(miR-6126、miR-1227-5p、及びmiR-3156-5p)について、ASD診断バイオマーカーとして有用かどうかを検討した。全集団(ASD患者=47名, 健常群=52名)に対して、リアルタイムRT-PCRを用いて、ROC曲線(受信者動作特性曲線)を描出した(図3)。3個のマイクロRNAはいずれもAUC(曲線下面積)が0.6-0.7以上であり、バイオマーカーとして有用性が認められた。
【実施例】
【0043】
[脳組織における発現の確認]
3個のマイクロRNA(miR-6126、miR-1227-5p、及びmiR-3156-5p)が脳組織で発現しているかどうかをリアルタイムRT-PCR法で調べた。ASD患者脳組織は入手困難なため、脳サンプルは、市販されている健常脳組織(28名のドナー由来)を用いた。血液サンプルはDiscovery群の健常者サンプル(30名)を用いた(図4)。では、血液データを左側に示し、これを基準(=1)として、脳組織データを右側に示した。3個のマイクロRNAはともに、脳組織で発現を認めた。3個のマイクロRNAはともに、脳組織で発現を認めた。
【実施例】
【0044】
マイクロRNAは複数のターゲット遺伝子をコントロールすることで、多様な機能を持つことが知られている。3個のマイクロRNA(miR-6126、miR-1227-5p、及びmiR-3156-5p)がコントロールしている遺伝子を、データベースを用いて探索した。さらに、Ontology解析(GO biological process)、Pathway解析(KEGG)を施行した。その結果、いずれのマイクロRNAでもシナプスとの関連が示唆された。
【配列表フリ-テキスト】
【0045】
配列番号1~5:miRBaseに登録されているマイクロRNAの配列
Seq ID No.1: hsa-miR-6126 MIMAT0024599
Seq ID No.2: hsa-miR-1227-5p MIMAT0022941
Seq ID No.3: hsa-miR-3156-5p MIMAT0015030
Seq ID No.4: hsa-miR-6780a-5p MIMAT0027460
Seq ID No.5: hsa-miR-328-3p MIMAT0000752
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3