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明細書 :移動手段判定装置、移動手段判定方法及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6644362号 (P6644362)
公開番号 特開2018-055461 (P2018-055461A)
登録日 令和2年1月10日(2020.1.10)
発行日 令和2年2月12日(2020.2.12)
公開日 平成30年4月5日(2018.4.5)
発明の名称または考案の名称 移動手段判定装置、移動手段判定方法及びプログラム
国際特許分類 G06F  16/909       (2019.01)
G01C  21/26        (2006.01)
FI G06F 16/909
G01C 21/26 P
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2016-191562 (P2016-191562)
出願日 平成28年9月29日(2016.9.29)
審査請求日 平成30年7月19日(2018.7.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】玉城 幹介
【氏名】木村 篤信
【氏名】本田 新九郎
【氏名】松中 亮治
【氏名】大庭 哲治
【氏名】中川 大
【氏名】鈴木 義康
個別代理人の代理人 【識別番号】100107766、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠重
【識別番号】100070150、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠彦
【識別番号】100124844、【弁理士】、【氏名又は名称】石原 隆治
審査官 【審査官】西村 直史
参考文献・文献 特開2012-014357(JP,A)
特開2015-084164(JP,A)
特開2012-070133(JP,A)
特開2004-132922(JP,A)
特開2012-098997(JP,A)
特開2011-171908(JP,A)
調査した分野 G06F16/00-16/958
特許請求の範囲 【請求項1】
行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定装置であって、
前記行動調査対象者の端末により測位された位置座標及び測位時刻を含む測位点の集合である移動軌跡を蓄積する測位点情報蓄積部と、
移動手段の路線ルートを蓄積する路線地理情報蓄積部と、
移動手段の時刻表情報を蓄積する路線時刻表情報蓄積部と、
前記測位点情報蓄積部から前記行動調査対象者の移動軌跡を取得し、前記路線地理情報蓄積部の路線ルートの中で、予め定めた範囲に前記取得した移動軌跡が存在する場合、候補路線ルートと判断する近傍路線探索部と、
予め算出された移動手段を判定するための閾値と、前記取得した移動軌跡から算出される移動速度に基づいて、前記行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定部と、
を有し、
前記候補路線ルートにバスの路線ルートが含まれる場合、
前記移動手段判定部は、前記路線時刻表情報蓄積部から前記候補路線ルートの時刻表を取得し、前記候補路線ルートにおいて前記行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より遅い場合、前記移動手段を判定するための閾値に係数を乗算し、前記行動調査対象者の移動手段がバスであるか徒歩であるかを判定する、移動手段判定装置。
【請求項2】
前記候補路線ルートに鉄道及びバスの路線ルートが含まれる場合、
前記移動手段判定部は、前記取得した移動軌跡から候補路線ルートまでの距離に基づいて、前記行動調査対象者の移動手段を判定する、請求項に記載の移動手段判定装置。
【請求項3】
前記移動手段判定部は、前記行動調査対象者の端末に備えられた加速度計のデータから、移動手段が徒歩である可能性を推定し、前記行動調査対象者の移動手段が前記候補路線ルートの移動手段であるか徒歩であるかを判定する、請求項1又は2に記載の移動手段判定装置。
【請求項4】
行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定装置における移動手段判定方法であって、
前記行動調査対象者の端末により測位された位置座標及び測位時刻を含む測位点の集合である移動軌跡を測位点情報蓄積部に蓄積するステップと、
移動手段の路線ルートを路線地理情報蓄積部に蓄積するステップと、
移動手段の時刻表情報を路線時刻表情報蓄積部に蓄積するステップと、
前記測位点情報蓄積部から前記行動調査対象者の移動軌跡を取得し、前記路線地理情報蓄積部の路線ルートの中で、予め定めた範囲に前記取得した移動軌跡が存在する場合、候補路線ルートと判断するステップと、
予め算出された移動手段を判定するための閾値と、前記取得した移動軌跡から算出される移動速度に基づいて、前記行動調査対象者の移動手段を判定するステップと、
を有し、
前記候補路線ルートにバスの路線ルートが含まれる場合、
前記判定するステップにおいて、前記路線時刻表情報蓄積部から前記候補路線ルートの時刻表を取得し、前記候補路線ルートにおいて前記行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より遅い場合、前記移動手段を判定するための閾値に係数を乗算し、前記行動調査対象者の移動手段がバスであるか徒歩であるかを判定する、移動手段判定方法。
【請求項5】
行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該コンピュータを、
前記行動調査対象者の端末により測位された位置座標及び測位時刻を含む測位点の集合である移動軌跡を蓄積する測位点情報蓄積手段、
移動手段の路線ルートを蓄積する路線地理情報蓄積手段、
移動手段の時刻表情報を蓄積する路線時刻表情報蓄積手段、
前記測位点情報蓄積手段から前記行動調査対象者の移動軌跡を取得し、前記路線地理情報蓄積手段の路線ルートの中で、予め定めた範囲に前記取得した移動軌跡が存在する場合、候補路線ルートと判断する近傍路線探索手段、及び
予め算出された移動手段を判定するための閾値と、前記取得した移動軌跡から算出される移動速度に基づいて、前記行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定手段、
として機能させ
前記候補路線ルートにバスの路線ルートが含まれる場合、
前記移動手段判定手段は、前記路線時刻表情報蓄積手段から前記候補路線ルートの時刻表を取得し、前記候補路線ルートにおいて前記行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より遅い場合、前記移動手段を判定するための閾値に係数を乗算し、前記行動調査対象者の移動手段がバスであるか徒歩であるかを判定する、プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、移動手段判定装置、移動手段判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの携帯端末にGPS(Global Positioning System)機能が備えられている。このGPS機能を用いて得られたデータを用いて、行動分析を行うことが検討されている(特許文献1参照)。GPS機能を用いることにより、従来のアンケート調査と比較して精度の高い行動分析が可能になる。例えば、観光客の滞在地の推定や観光客が移動に利用した移動手段を判定することが可能になる。
【0003】
特許文献1では、GPS等で記録された移動軌跡において、測定値間の速度を予め定めた閾値と比較して移動手段を判定している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2003-242169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、測定値間の速度を予め定めた閾値を比較しているため、実際には電車又はバスに乗車している場合であっても、電車又はバスが駅又は停留所に停止して速度が低下したために閾値を下回って移動手段が徒歩であると誤判定される可能性がある。
【0006】
また、GPS衛星の位置、調査対象地の環境等によって測位データに誤差が生じ、判定基準である速度が正確に算出できない可能性がある。
【0007】
本発明は、行動調査対象者の移動軌跡から移動手段を判定するときの判定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る移動手段判定装置は、
行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定装置であって、
前記行動調査対象者の端末により測位された位置座標及び測位時刻を含む測位点の集合である移動軌跡を蓄積する測位点情報蓄積部と、
移動手段の路線ルートを蓄積する路線地理情報蓄積部と、
移動手段の時刻表情報を蓄積する路線時刻表情報蓄積部と、
前記測位点情報蓄積部から前記行動調査対象者の移動軌跡を取得し、前記路線地理情報蓄積部の路線ルートの中で、予め定めた範囲に前記取得した移動軌跡が存在する場合、候補路線ルートと判断する近傍路線探索部と、
予め算出された移動手段を判定するための閾値と、前記取得した移動軌跡から算出される移動速度に基づいて、前記行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定部と、
を有し、
前記候補路線ルートにバスの路線ルートが含まれる場合、
前記移動手段判定部は、前記路線時刻表情報蓄積部から前記候補路線ルートの時刻表を取得し、前記候補路線ルートにおいて前記行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より遅い場合、前記移動手段を判定するための閾値に係数を乗算し、前記行動調査対象者の移動手段がバスであるか徒歩であるかを判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一形態に係る移動手段判定方法は、
行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定装置における移動手段判定方法であって、
前記行動調査対象者の端末により測位された位置座標及び測位時刻を含む測位点の集合である移動軌跡を測位点情報蓄積部に蓄積するステップと、
移動手段の路線ルートを路線地理情報蓄積部に蓄積するステップと、
移動手段の時刻表情報を路線時刻表情報蓄積部に蓄積するステップと、
前記測位点情報蓄積部から前記行動調査対象者の移動軌跡を取得し、前記路線地理情報蓄積部の路線ルートの中で、予め定めた範囲に前記取得した移動軌跡が存在する場合、候補路線ルートと判断するステップと、
予め算出された移動手段を判定するための閾値と、前記取得した移動軌跡から算出される移動速度に基づいて、前記行動調査対象者の移動手段を判定するステップと、
を有し、
前記候補路線ルートにバスの路線ルートが含まれる場合、
前記判定するステップにおいて、前記路線時刻表情報蓄積部から前記候補路線ルートの時刻表を取得し、前記候補路線ルートにおいて前記行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より遅い場合、前記移動手段を判定するための閾値に係数を乗算し、前記行動調査対象者の移動手段がバスであるか徒歩であるかを判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一形態に係るプログラムは、
行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該コンピュータを、
前記行動調査対象者の端末により測位された位置座標及び測位時刻を含む測位点の集合である移動軌跡を蓄積する測位点情報蓄積手段、
移動手段の路線ルートを蓄積する路線地理情報蓄積手段、
移動手段の時刻表情報を蓄積する路線時刻表情報蓄積手段、
前記測位点情報蓄積手段から前記行動調査対象者の移動軌跡を取得し、前記路線地理情報蓄積手段の路線ルートの中で、予め定めた範囲に前記取得した移動軌跡が存在する場合、候補路線ルートと判断する近傍路線探索手段、及び
予め算出された移動手段を判定するための閾値と、前記取得した移動軌跡から算出される移動速度に基づいて、前記行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定手段、
として機能させ
前記候補路線ルートにバスの路線ルートが含まれる場合、
前記移動手段判定手段は、前記路線時刻表情報蓄積手段から前記候補路線ルートの時刻表を取得し、前記候補路線ルートにおいて前記行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より遅い場合、前記移動手段を判定するための閾値に係数を乗算し、前記行動調査対象者の移動手段がバスであるか徒歩であるかを判定することを特徴とする。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、行動調査対象者の移動軌跡から移動手段を判定するときの判定精度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る移動手段判定装置の機能ブロック図
【図2】測位点情報蓄積部において蓄積される情報の例を示す図
【図3】路線地理情報蓄積部において蓄積される情報の例を示す図
【図4】移動手段判定基準表蓄積部において蓄積される情報の例を示す図
【図5】近傍路線探索部において候補路線ルートとして判断される例(その1)
【図6】測位点から路線ルートまでの距離を示す図
【図7】近傍路線探索部において候補路線ルートとして判断されない例(その1)
【図8】近傍路線探索部において候補路線ルートとして判断される例(その2)
【図9】近傍路線探索部において候補路線ルートとして判断される例(その3)
【図10】近傍路線探索部において候補路線ルートとして判断されない例(その2)
【図11】近傍路線探索部において候補路線ルートとして判断されない例(その3)
【図12】移動手段判定部における移動手段判定アルゴリズムを示す図(その1)
【図13】移動手段判定部における移動手段判定アルゴリズムを示す図(その2)
【図14】移動手段判定部における移動手段判定アルゴリズムを示す図(その3)
【図15】移動手段判定部における移動手段判定アルゴリズムを示す図(その4)
【図16】本発明の実施例に係る移動手段判定装置のハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。

【0014】
本発明の実施例では、行動調査対象者の移動手段を判定する移動手段判定装置について説明する。移動手段判定装置は、GPS、ビーコン、Wi-Fi(Wireless Fidelity)等で行動調査対象者の移動軌跡を測位・記録し、移動軌跡から行動調査対象者の移動手段を判定する装置である。移動手段判定装置は、行動調査対象者の移動軌跡中の移動経路や移動速度と、対象となる地域の交通機関の時刻表の時間的制約と、路線地図の空間的制約を用いて、測位誤差に対してロバストに移動手段を判定する。

【0015】
本発明の実施例において用いられる用語を以下の通り定義する。

【0016】
測位点とは、行動調査対象者が所持する端末により、GPS、ビーコン、Wi-Fi等により測位された行動調査対象者の位置座標と測位時刻を含むデータである。

【0017】
移動軌跡とは、行動調査対象者ごとに指定した期間で抽出した測位点の集合である。

【0018】
停留場とは、鉄道駅、バス停留所等の乗客が乗降する場所である。

【0019】
路線とは、鉄道、バス等の予め定まった運行経路である。

【0020】
セグメントとは、同じ路線上の時系列で連続する測位点の集合である。

【0021】
路線タイプとは、移動手段判定装置により判定される移動手段であり、本発明の実施例では、鉄道、バス又は徒歩が移動手段であるものと仮定する。

【0022】
図1は、本発明の実施例に係る移動手段判定装置100の機能ブロック図である。移動手段判定装置100は、データベース等の情報を記憶することができる記憶部としての測位点情報蓄積部101と、路線地理情報蓄積部103と、移動手段判定基準表蓄積部105と、路線時刻表情報蓄積部107とを有する。また、移動手段判定装置100は、情報処理を行うことができる機能部としての近傍路線探索部111と、移動手段判定部113と、判定結果出力部115とを有する。

【0023】
図2は、測位点情報蓄積部101において蓄積される情報の例を示す図である。測位点情報蓄積部101は、行動調査対象者の端末により測位された位置座標及び測位時刻を含む測位点の集合である移動軌跡を蓄積する。例えば、測位点情報蓄積部101は、行動調査対象者のID、測位座標(緯度経度)、測位時刻を蓄積する。なお、以下に説明する通り、移動軌跡である測位点の集合と路線との空間的制約との関係から、行動調査対象者の近傍にある候補路線ルートが決定され、候補路線ルートが測位点情報蓄積部101に蓄積される。行動調査対象者の近傍に候補路線ルートが存在しない場合、路線外又は徒歩という情報が測位点情報蓄積部101に蓄積される。

【0024】
図3は、路線地理情報蓄積部103において蓄積される情報の例を示す図である。路線地理情報蓄積部103は、バス及び鉄道などの移動手段の路線ルートを位置座標の集合として蓄積する。例えば、路線地理情報蓄積部103は、路線上のある位置における路線名、路線タイプ(鉄道又はバス)、位置タイプ(区間又は停留場)、緯度経度を蓄積する。

【0025】
図4は、移動手段判定基準表蓄積部105において蓄積される情報の例を示す図である。移動手段判定基準表蓄積部105は、移動手段を判定するための基準となる値を蓄積する。例えば、移動手段判定基準表蓄積部105は、路線タイプ毎に判定速度上限値及び判定速度下限値を蓄積する。図4に示す例では、判定速度下限値である10km/hから判定速度上限値である120km/hの間の移動速度で移動している場合には、鉄道を利用している可能性が高いことを示す。判定速度上限値及び判定速度下限値は、例えば、路線タイプごとの平均速度の分布を測定することによって取得されてもよく、路線時刻表情報蓄積部107に蓄積された路線タイプごとの表定平均速度から取得されてもよい。その結果、以下の実施例において、徒歩とそれ以外の鉄道又はバスを分類する閾値を10km/hと設定する。また、鉄道とバスを分類する閾値を20km/hと設定する。このように設定された閾値(10km/h及び20km/h)も移動手段判定基準表蓄積部105に蓄積されてもよい。

【0026】
路線時刻表情報蓄積部107は、路線毎の時刻表を蓄積する(図示せず)。例えば、路線時刻表情報蓄積部107は、通常の時刻表に含まれる情報である、路線名、停留場、出発時刻を蓄積する。

【0027】
近傍路線探索部111は、測位点情報蓄積部101から行動調査対象者の移動軌跡を取得し、路線地理情報蓄積部103の路線ルートの中で、予め定めた範囲に取得した移動軌跡が存在する場合、候補路線ルートと判断する。候補路線ルートの路線タイプ及び路線名は、測位点情報蓄積部101において移動軌跡と関連付けられる。なお、複数の候補路線ルートが存在する場合、複数の候補路線ルートの路線タイプ及び路線名が、測位点情報蓄積部101において移動軌跡と関連付けられる。近傍に路線ルートが存在しない場合、路線外又は徒歩という路線タイプが測位点情報蓄積部101において移動軌跡と関連付けられる。

【0028】
図5は、近傍路線探索部111において候補路線ルートとして判断される例である。ここで、停留場から50m圏内の範囲を停留場内(鉄道駅内又はバス停留所内)と定義し、路線ルートから50m圏内の範囲を停留場間(鉄道駅間又はバス停留所間)と定義する。近傍路線探索部111は、行動調査対象者の移動軌跡が停留場内に存在するか、停留場間に存在するかを判断することができる。移動軌跡が停留場間を移動する場合、その路線ルートが候補路線ルートと判断される。このとき、測位誤差を考慮してもよい。測位誤差の例については以下で説明する。

【0029】
候補路線ルートまでの距離を判断するために、近傍路線探索部111は、測位点情報蓄積部101に蓄積された測位点の緯度経度と、路線地理情報蓄積部103に蓄積された路線ルートの緯度経度から、停留場又は路線ルートと測位点間の距離Dを以下の通り算出する。

【0030】
=(d+di+1)/2
ここで、Dは任意の測位点間iと停留場又は路線ルートとの間の距離[m]であり、d及びdi+1は任意の測位点i及びi+1と停留場又は路線ルートとの間の距離[m]である。なお、図6に示すように、路線ルートの端点(停留場)間に垂線が存在する場合、d及びdi+1は路線ルートまでの垂線の長さ(距離)となり、路線ルートの端点(停留場)間に垂線が存在しない場合、d及びdi+1は路線ルートの最近接頂点までの距離となる。

【0031】
以下の説明において、鉄道駅に対して求められた距離DをDstationとし、鉄道ルートに対して求められた距離DをDrailとし、バス停留所に対して求められた距離DをDbusstopとし、バスルートに対して求められた距離DをDbusrouteとする。

【0032】
なお、図7に示すように、停留場及び路線ルートから50m圏内に存在しても、同じ停留場(鉄道駅又はバス停留所)に引き返したとみなす場合は、候補路線ルートとして判断されない。

【0033】
図8に示すように、停留場における測位誤差を考慮して、例えば、停留場の50m圏外に存在していた測位点の経過時間の和がθ(s)未満である場合、停留場内に存在していたとみなす。その結果、移動軌跡が路線ルートから50m圏内に存在する場合、候補路線ルートと判断する。例えば、θは、対象となる停留場の区間とその前後の停留場内に含まれる測位点の平均取得間隔の3倍とする。

【0034】
図9に示すように、路線における測位誤差を考慮して、例えば路線ルートの50m圏外に存在していた測位点の経過時間の和がθ(s)未満である場合、候補路線ルートと判断する。

【0035】
図10に示すように、測位誤差を考慮したとしても、停留場内に測位点が存在しない場合、候補路線ルートとして判断されない。

【0036】
図11に示すように、測位誤差を考慮したとしても、路線ルート内のある停留場内に測位点が存在せず、その停留場外に測位点が存在する場合、候補路線ルートとして判断されない。

【0037】
移動手段判定部113は、移動軌跡から算出される移動速度を算出し、算出した移動速度に基づいて、行動調査対象者の移動手段を判定する。移動手段判定部113は、候補路線ルートが存在する場合、その候補路線ルート内において移動軌跡から移動速度を算出し、算出した移動速度に基づいて、行動調査対象者が候補路線ルートの移動手段で移動しているか(複数の候補路線ルートが存在する場合にはどの移動手段で移動しているか)、徒歩で移動しているかを判定する。

【0038】
以下、図12~15を参照して、移動手段判定部113における移動手段判定アルゴリズムについて詳細に説明する。

【0039】
移動手段判定部113は、近傍路線探索部111において行動調査対象者の移動軌跡が鉄道駅間の路線ルートに存在せず(S101:NO)、且つ、行動調査対象者の移動軌跡がバス停留所間の路線ルートに存在する場合(S103:YES)、移動手段がbw(バス又は徒歩)であると判定する(S105)。また、移動手段判定部113は、近傍路線探索部111において行動調査対象者の移動軌跡が鉄道駅間の路線ルートに存在せず(S101:NO)、且つ、行動調査対象者の移動軌跡がバス停留所間の路線ルートに存在しない場合(S103:NO)、移動手段がtbw2(鉄道、バス、徒歩のいずれか)であると判定する(S107)。ここで移動手段が徒歩と断定せずにtbw2であると判定する理由は、行動調査対象者がセグメント端点である停留場(鉄道駅又はバス停留所)で鉄道又はバスを待っており、その後の測位点が取得できていない場合の移動手段を正確に判定するためである。

【0040】
また、移動手段判定部113は、近傍路線探索部111において行動調査対象者の移動軌跡が鉄道駅間の路線ルートに存在し(S101:YES)、且つ、行動調査対象者の移動軌跡がバス停留所間の路線ルートに存在する場合(S109:YES)、移動手段がtbw1(鉄道、バス、徒歩のいずれか)であると判定する(S111)。また、移動手段判定部113は、近傍路線探索部111において行動調査対象者の移動軌跡が鉄道駅間の路線ルートに存在し(S101:YES)、且つ、行動調査対象者の移動軌跡がバス停留所間の路線ルートに存在しない場合(S109:NO)、移動手段がtw(鉄道又は徒歩)であると判定する(S113)。

【0041】
移動手段がtbw1の場合(S111)、移動手段判定部113は、予め算出された移動手段を判定するための閾値(10km/h及び20km/h)と、候補路線ルート内の移動速度とに基づいて、行動調査対象者の移動手段を判定する。

【0042】
候補路線ルートの区間に含まれる測位点間の平均移動速度Vaveは、以下の通り算出できる。

【0043】
ave=ΣV/n
ただし、Vaveは候補路線ルートの区間に含まれる全測位点の平均速度[km/h]であり、Vは候補路線ルートの区間に含まれる測位点間の速度[km/h]であり、nは候補路線ルートの区間に含まれる測位点の総数である。

【0044】
移動手段判定部113は、平均移動速度Vaveが20km/h以上であれば(S115:YES)、移動手段がt(鉄道)であると判定する(S117)。平均移動速度Vaveが10km/h以上20km/h未満であれば(S115:NO、S119:YES)、移動手段がtb(鉄道又はバス)であると判定する(S121)。平均移動速度Vaveが10km/h未満であれば(S115:NO、S119:NO)、移動手段がbw(バス又は徒歩)であると判定する(S123)。

【0045】
移動手段がtwの場合(S113)の場合も、移動手段判定部113は、予め算出された移動手段を判定するための閾値(10km/h)と、候補路線ルート内の移動速度とに基づいて、行動調査対象者の移動手段を判定する。

【0046】
移動手段判定部113は、平均移動速度Vaveが10km/h以上であれば(S125:YES)、移動手段がt(鉄道)であると判定する(S127)。平均移動速度Vaveが10km/h未満であれば(S125:NO)、移動手段がw(徒歩)であると判定する(S129)。

【0047】
次に、図13を参照して、バスと徒歩との区別について説明する。

【0048】
バスの場合には、バス停留所間によってバスの移動速度が遅い区間とバスの移動速度が速い区間が存在する。バスの移動速度が遅い区間であるか移動速度が速い区間であるかは、路線時刻表情報蓄積部107から候補路線ルートの時刻表を取得し、候補路線ルートにおいて行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より遅い場合、バスの移動速度が遅い区間であるとみなし、候補路線ルートにおいて行動調査対象者が存在する区間の表定速度が全区間の表定平均速度より速い場合、バスの移動速度が速い区間であるとみなす。

【0049】
具体的には、候補路線ルートにおいて行動調査対象者が存在する区間の表定速度ATVは以下の通り算出できる。

【0050】
ATV=(L×60)/(Ttable×1000)
ただし、ATVはバス停留所間の表定速度[km/h]であり、Lはバス停留所間の距離[m]であり、Ttableは時刻表におけるバス停留所間の所要時間[分]である。

【0051】
全区間の表定平均速度を

【0052】
【数1】
JP0006644362B2_000002t.gif
とすると、ATVが

【0053】
【数2】
JP0006644362B2_000003t.gif
以上である場合(S201:YES)、すなわち、バスの移動速度が速い区間では、移動手段がbw1(バス又は徒歩)であると判定する(S203)。また、ATVが

【0054】
【数3】
JP0006644362B2_000004t.gif
未満である場合(S201:NO)、すなわち、バスの移動速度が遅い区間では、移動手段がbw2(バス又は徒歩)であると判定する(S205)。

【0055】
移動手段がbw1の場合(S203)、平均移動速度Vaveが10km/h以上であれば(S207:YES)、移動手段がb(バス)であると判定し(S209)、平均移動速度Vaveが10km/h未満であれば、移動手段がw(徒歩)であると判定する(S211)。

【0056】
移動手段がbw2の場合(S205)、バスと徒歩とを分類するための閾値として、移動手段を判定するための閾値(10km/h)に係数を乗算して、行動調査対象者の移動手段がバスであるか徒歩であるかを判定する。ATVが

【0057】
【数4】
JP0006644362B2_000005t.gif
未満である場合、バスと徒歩を分類するための以下の閾値V'を定義する。

【0058】
【数5】
JP0006644362B2_000006t.gif
ただし、V'は平均速度閾値[km/h]であり、ATVは表定速度[km/h]であり、

【0059】
【数6】
JP0006644362B2_000007t.gif
は全区間の平均表定速度[km/h]である。

【0060】
このとき、平均移動速度VaveがV'km/h以上であれば(S213:YES)、移動手段がb(バス)であると判定し(S215)、平均移動速度VaveがV'km/h未満であれば(S213:NO)、移動手段がw(徒歩)であると判定する(S217)。

【0061】
次に、図14を参照して、電車とバスとの区別について説明する。

【0062】
移動手段がtbである場合、すなわち、候補路線ルートに鉄道及びバスの路線ルートが含まれる場合、移動手段判定部113は、移動軌跡から候補路線ルートまでの距離に基づいて移動手段を判定する。

【0063】
上記の停留場又は路線ルートと測位点間の距離Dを求める式
=(d+di+1)/2
に基づき、tbと分類された区間における、鉄道ルートと測位点間の距離Drailの平均値

【0064】
【数7】
JP0006644362B2_000008t.gif
及びバスルートと測位点間の距離Dbusrouteの平均値

【0065】
【数8】
JP0006644362B2_000009t.gif
を求める。

【0066】
【数9】
JP0006644362B2_000010t.gif
は、以下の式に基づいて算出される。

【0067】
【数10】
JP0006644362B2_000011t.gif
ただし、

【0068】
【数11】
JP0006644362B2_000012t.gif
は区間の測位点と鉄道ルート又はバスルートとの距離の平均値[m]であり、Dは区間に含まれる測位点間のDrail及びDbusroute[m]であり、nは区間に含まれる測位点の数である。

【0069】
このとき、

【0070】
【数12】
JP0006644362B2_000013t.gif
であれば(S301:YES)、移動手段がt(電車)であると判定する(S303)。

【0071】
【数13】
JP0006644362B2_000014t.gif
であれば(S301:NO)、移動手段がb(バス)であると判定する(S305)。

【0072】
次に、図15を参照して、セグメント端点を含めた移動手段の判定について説明する。

【0073】
移動手段がt(電車)又はtbw2(鉄道、バス、徒歩のいずれか)であると判定された場合、セグメントの端点が鉄道駅から50m圏内にあるか判定する。鉄道駅から50m圏内にある場合(S401:YES)、セグメントの端点の移動手段も含めて移動手段が電車であると判定する(S403)。

【0074】
セグメントの端点が鉄道駅から50m圏内にない場合(S401:NO)、又は移動手段がb(バス)である場合、セグメントの端点がバス停留所から50m圏内にあるか判定する。バス停留所から50m圏内にある場合(S405:YES)、セグメントの端点の移動手段も含めて移動手段がバスであると判定する(S407)。

【0075】
セグメントの端点が鉄道駅及びバス停留所から50m圏内にない場合(S401:NO、S405:NO)、又は移動手段がw(徒歩)である場合、セグメントの端点の移動手段も含めて移動手段が徒歩であると判定する(S409)。

【0076】
なお、移動手段が徒歩であるか否かをより正確に判定するために、行動調査対象者の端末に備えられた加速度計のデータを利用してもよい。移動手段判定部113は、一定間隔での上下動を加速度計により検出することにより、移動手段が徒歩である可能性を推定し、移動手段が候補路線ルートの移動手段(電車又はバス)であるか徒歩であるかを判定する。例えば、加速度計のデータによって移動手段が徒歩である可能性が高いと判定された場合、徒歩であると判定される可能性が高くなるように、移動手段を判定するための閾値(10km/h及びV')を変更してもよい。例えば、加速度計のデータによって徒歩である可能性が所定の確率より高くなった場合、図12のS119及びS125において用いられる閾値である10km/hを高くしてもよい。同様に、加速度計のデータによって徒歩である可能性が所定の確率より高くなった場合、図13のS207においてバスと徒歩とを区別するための閾値である10km/hを高くしてもよい。同様に、加速度計のデータによって徒歩である可能性が所定の確率より高くなった場合、図13のS213においてバスと徒歩とを区別するための閾値であるV'を高くしてもよい。

【0077】
判定結果出力部115は、移動手段判定部113が判定した結果を出力する。

【0078】
<本発明の実施例の効果>
本発明の実施例によれば、交通機関の時刻表の時間的制約と、路線地図の空間的制約を用いることにより、行動調査対象者の移動軌跡から移動手段を判定するときの判定精度を向上させることが可能になる。また、GPS等の測位誤差や欠落があっても行動調査対象者の移動経路を推定し、移動手段を判定することが可能になる。

【0079】
<ハードウェア構成例>
図16に、本発明の実施例に係る移動手段判定装置100のハードウェア構成例を示す。移動手段判定装置100は、CPU(Central Processing Unit)151等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリ装置152、ハードディスク等の記憶装置153等から構成されたコンピュータでもよい。例えば、移動手段判定装置100の機能及び処理は、記憶装置153又はメモリ装置152に格納されているデータやプログラムをCPU151が実行することによって実現される。また、移動手段判定装置100に必要な情報は、入出力インタフェース装置154から入力され、移動手段判定装置100において求められた結果は、入出力インタフェース装置154から出力されてもよい。

【0080】
<補足>
説明の便宜上、本発明の実施例に係る移動手段判定装置は機能的なブロック図を用いて説明しているが、本発明の実施例に係る移動手段判定装置は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。例えば、本発明の実施例は、コンピュータに対して本発明の実施例に係る移動手段判定装置の機能を実現させるプログラム、コンピュータに対して本発明の実施例に係る方法の各手順を実行させるプログラム等により、実現されてもよい。また、各機能部が必要に応じて組み合わせて使用されてもよい。また、本発明の実施例に係る方法は、実施例に示す順序と異なる順序で実施されてもよい。

【0081】
以上、行動調査対象者の移動軌跡から移動手段を判定するときの判定精度を向上させるための手法について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々の変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0082】
100 移動手段判定装置
101 測位点情報蓄積部
103 路線地理情報蓄積部
105 移動手段判定基準表蓄積部
107 路線時刻表情報蓄積部
111 近傍路線探索部
113 移動手段判定部
115 判定結果出力部
151 CPU
152 メモリ装置
153 記憶装置
154 入出力インタフェース装置
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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