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明細書 :被検査体濃度測定方法およびセンサ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-004561 (P2018-004561A)
公開日 平成30年1月11日(2018.1.11)
発明の名称または考案の名称 被検査体濃度測定方法およびセンサ装置
国際特許分類 G01N  27/22        (2006.01)
FI G01N 27/22 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2016-135163 (P2016-135163)
出願日 平成28年7月7日(2016.7.7)
発明者または考案者 【氏名】満仲 健
【氏名】飯塚 邦彦
【氏名】小川 雄一
【氏名】鈴木 哲仁
出願人 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
テーマコード 2G060
Fターム 2G060AA16
2G060AD06
2G060AE20
2G060AF10
2G060AG06
2G060AG08
2G060AG10
2G060HC10
要約 【課題】食中毒などを引き起こす細菌の濃度を簡単に得ることができる被検査体濃度測定方法を提供する。
【解決手段】被検査体濃度測定方法は、複数のセンサエレメント10により捉えられた被検査体の誘電率の変化に基づいて被検査体を検出する検出工程と、センサエレメント10の全数に対する被検査体を検出したセンサエレメント10の総数の割合を算出する算出工程とを含んでいる。前記細菌検出工程に先立って、複数の前記電極上に設けられた窪み内で培地を用いて被検査体を培養する培養工程をさらに含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の電極により捉えられた被検査体の誘電率の変化に基づいて被検査体を検出する検出工程と、
前記電極の全数に対する被検査体を検出した前記電極の総数の割合を算出する算出工程とを含んでいることを特徴とする被検査体濃度測定方法。
【請求項2】
前記検出工程に先立って、複数の前記電極上に設けられた窪み内で培地を用いて被検査体を培養する培養工程をさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載の被検査体濃度測定方法。
【請求項3】
複数の窪みと、
前記窪みの下に個々に設けられた、前記窪みに保持された被検査体の誘電率の変化を捉える電極を個々に有し、当該電極が捉えた誘電率の変化に基づいて被検査体を検出する複数のセンサ部と、
前記センサ部の全数に対する被検査体を検出した前記センサ部の総数の割合を算出する算出部とを備えていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
複数の前記窪みの開口の全体を取り囲むように設けられた壁部をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記壁部に囲まれた領域を覆う蓋をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載のセンサ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の濃度を測定する被検査体濃度測定方法および濃度測定に使用するセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食中毒などを引き起こす細菌の濃度を検査する方法には様々な方法があり、その多くが知られている。よく用いられる方法の一例として、細菌などを寒天培地上で培養を行い、形成されたコロニーをカウントする平板培養法や、乾燥させた細菌の重量を評価する乾燥重量法や、培養中の培地内で細菌が増殖するときに生じる培地の濁りを光学的に評価する濁度法などが挙げられる。
【0003】
平板培養法では、細菌培養の結果、形成するコロニーの集計が機器によりばらつきが大きくなることや、検査員が目視でカウントする場合もあり、多くの手間がかかる。また、乾燥重量法では、増殖させた細菌を乾燥させる工程を含むために処理時間がかかることと、観察するための細菌量が多く必要であることが課題である。また、濁度法では、培地の濁りや細胞の形状変化に影響されることと、分光光度計などの大型装置が必要となることが課題になる。
【0004】
さらには、集積回路センサを用いた方法も研究されている。菌や細胞において、代謝活動が活発な細胞の検査を行う方法として、特許文献1では、半導体基板上に作成したイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET::Ion Sensitive Field Effect Transistor)を用いたセンサを利用する方法が開示されている。この方法で用いられる集積回路センサは、基板上に複数の微小窪みを有し、かつ前記微小窪みの底部にpH感応性蛍光色素を含有するセンサ部を有している。複数の微小窪みに被検体を含む溶液を収納し、次いで前記微小窪みに収納された溶液のpHの変化を、センサ部からの蛍光強度を計測することで求めて、被検体の活性を検定する。このような集積回路センサを用いた検査方法では、乾燥重量法のように処理時間がかかることがなく、濁度法のように大型装置を必要とすることもない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-253412号公報(2005年9月22日公開)
【0006】

【非特許文献1】T.Mitsunaka, N.Ashida, A.Saito, K.Iizuka, T.Suzuki, Y.Ogawa, M.Fujishima “CMOS biosensor IC focusing on dielectric relaxations of biological water with 120GHz and 60GHz oscillator arrays”, IEEE Solid-State Circuit Conf. Dig. Tech. papers, pp.478-479, Feb. 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、集積回路センサを用いた上記の方法は、ISFETを用いているために、イオン感応によるセンサの反応範囲がデバイ長に制約される。このため、集積回路センサの表面となるイオン感応膜に対し、一般に数nmの範囲までしか検出できない。また、微小窪みの底にイオン感応性蛍光色素を含有するセンサ部を有することで、ガラス等の材料からなる微小窪み底部に、色素を付着させるなどの前処理が必要となる。
【0008】
これに対し、非特許文献1には、LC発振器を含んだセンサICを用いて、被検査体の状態を発振器の発振周波数の変化として検出することが記載されている。このセンサICでは、デバイ長の制約による検出範囲を超えて、センサの表面から数μmの範囲で被検査体を検出することができる。
【0009】
ところが、このようなセンサICを用いた検査方法だけでなく、上述のいずれの検査方法でも、被検査体の濃度を得ることはできない。
【0010】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査体の濃度を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る被検査体濃度測定方法は、複数の電極により捉えられた被検査体の誘電率の変化に基づいて被検査体を検出する検出工程と、前記電極の全数に対する被検査体を検出した前記電極の総数の割合を算出する算出工程とを含んでいる。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサ装置は、複数の窪みと、前記窪みの下に個々に設けられた、前記窪みに保持された被検査体の誘電率の変化を捉える電極を有し、当該電極が捉えた誘電率の変化に基づいて被検査体を検出する複数のセンサ部と、前記センサ部の全数に対する被検査体を検出した前記センサ部の総数の割合を算出する算出部とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、被検査体の濃度を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の実施形態1に係るセンサ装置の要部の構造を示す上面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【図2】上記センサ装置の構成を発振器を中心として示すブロック図である。
【図3】(a)および(b)は上記センサ装置を用いた実施形態1に係る被検査体の濃度の検出方法を示す図である。
【図4】(a)および(b)は上記センサ装置を用いた実施形態2に係る被検査体の濃度の検出方法を示す図である。
【図5】(a)および(b)は上記センサ装置を用いた実施形態3に係る被検査体の濃度の検出方法を示す図である。
【図6】(a)および(b)は本発明の実施形態4に係るセンサ装置の要部の構造を示す断面図である。
【図7】(a)は実施形態4に係るセンサ装置の要部の他の構成を示す上面図であり、(b)は(a)のB-B線矢視断面図である。
【図8】実施形態4に係るセンサ装置の要部のさらに他の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について図1~図3を参照して説明する。

【0016】
(センサ装置100の構成)
図1の(a)は、実施形態1に係るセンサ装置の要部の構造を示す上面図であり、図1の(b)は、図1の(a)のA-A線断面図である。図2は、センサ装置100の構成を発振器2を中心として示すブロック図である。

【0017】
図1に示すように、センサ装置100は、半導体基板1上に多数のセンサエレメント10(センサ部)が配列されて設けられている。センサエレメント10は、センシング電極11(電極)と、トランジスタ部12と、層間電極13と、微小窪み14(窪み)とを1つずつ(個々に)有している。

【0018】
また、半導体基板1上には、複数の層間絶縁膜17がSiOなどによって形成されている。最上の層間絶縁膜17の上には、パッシベーション膜16が形成されている。そして、パッシベーション膜16の上には、保護膜15が樹脂などによって形成されている。保護膜15には、表面と底面との間を貫通するように形成された穴を多数有しており、これらの穴が微小窪み14となる。

【0019】
微小窪み14は、被検査体を保持するために、円形の穴で構成されており、内径が上部開口14a(開口)から下部開口14bに向かうにしたがって小さくなるように形成されている。微小窪み14の底部は、保護膜15の下端面における開口すなわち下部開口14bに現れた、パッシベーション膜16の表面となる。微小窪み14の上部開口14aのサイズは、直径100マイクロメートル以下である。なお、微小窪み14の穴形状は円形に限らず多角形であってもよい。

【0020】
センシング電極11は、微小窪み14ごとに(個々に)設けられており、パッシベーション膜16において微小窪み14の底部の下方に形成されている。また、センシング電極11は、半導体基板1上の各層に形成されるメタル層のうち、トップメタル層(半導体基板1上で最も表面に近いメタル層)で形成されている。また、センシング電極11は、差動電極として形成されるが、それ以外の電極であってもよい。差動電極は、後述する発振器2(図2参照)のインダクタの両端に設けられた互いに平行に向き合う電極である(図示せず)。

【0021】
センシング電極11の中心は、微小窪み14の底部に面している。微小窪み14の底部は、センシング電極11の全体を底部に面するようにするために、センシング電極11を上方から見た外形よりも大きく形成されることが好ましいが、当該外形よりも小さく形成されてもよい。

【0022】
トランジスタ部12は、後述する差動回路5などを構成するトランジスタを含む部分であり、層間絶縁膜17に形成されている。層間電極13は、センシング電極11とトランジスタ部12とを接続する電極であり、複数の層間絶縁膜17にわたって形成されている。

【0023】
センサエレメント10は、例えば、非特許文献1に開示されたセンサICで構成される。このセンサICは、発振器を含んでおり、被検査体の状態を発振器の発振周波数の変化として検出する。微小窪み14において、液滴に含まれた被検査体の状態を水の変化で確認するには、高周波数域(50GHz以上)における発振周波数の変化を捉えることが有効である。

【0024】
なお、センサエレメント10は、センシング電極11が捉えた、微小窪み14における被検査体の誘電率の変化に基づいて、被検査体の状態を検出できればよく、上記のような発振器を含むものに限定されない。例えば、センサエレメント10は、被検査体がセンシング電極11上に付着したときに生じる容量の変化を誘電率の変化として検出するようにしてもよい。水溶液中では、水分子がタンパク質に束縛される束縛水が多くなることにより、バルク水(溶質から十分離れて束縛されない状態の水)が減少するので、バルク水が多く含む水の誘電率から束縛水が多く含む水の誘電率に変化する。バルク水の複素誘電率は、バルク水の緩和現象によって、特定の周波数領域で複素誘電率の特に虚部の変動が大きい。生体の主要成分は水であるため、当該周波数領域で複素誘電率を調べることで、生体および生体高分子の状態を調べることができる。

【0025】
ここで、上記のような発振器を含むセンサ装置100の構成について説明する。

【0026】
図2に示すように、センサ装置100は、発振器2と、出力部3とを備えている。

【0027】
発振器2は、共振器4と、差動回路5とを備えたLC発振回路である。この発振器2は、センサエレメント10に1つずつ含まれている。

【0028】
共振器4は、キャパシタC0と、インダクタL0とを有している。インダクタL0およびキャパシタC0は並列に接続されている。パッシベーション膜16が持つ容量C11の一端は、インダクタL0およびキャパシタC0の一端に接続され、パッシベーション膜16が持つ容量C12の一端は、インダクタL0およびキャパシタC0の他端に接続されている。インダクタL0は、センシング電極11と同様、トップメタル層に形成されている。キャパシタC0は、センシング電極11を構成する上述の差動電極間の寄生容量や、差動回路5の寄生容量などによって構成される。

【0029】
容量C11,C12のそれぞれの他端には、被検査体200が接触している。容量C11,C12は、センシング電極11の上端面と、被検査体200が接する微小窪み14の底部との間のパッシベーション膜16によって形成される容量部分である。被検査体200は、キャパシタC2および抵抗R2の並列回路で表すことができる。これにより、容量C11,C12は、被検査体200と電気的に直列に接続される。

【0030】
また、共振器4は、被検査体200の複素誘電率に応じて共振周波数が変化し、複素誘電率を検出する。

【0031】
差動回路5は、差動トランジスタ対を含む回路であり、例えば、互いにクロスカップルされた複数のトランジスタから成る差動回路のような公知の差動回路によって適宜形成されている。差動回路5を構成するトランジスタは、上述のトランジスタ部12に含まれる。

【0032】
出力部3は、発振周波数検出部6と、濃度推定部7(算出部)とを有している。出力部3は、半導体基板1上に形成されてもよいし、半導体基板1外に形成されてもよい。

【0033】
発振周波数検出部6は、発振器2の発振周波数を検出する部分であり、一例として周波数カウンタを用いる。発振周波数検出部6は、ある期間中に発振周波数、または発振周波数を図示しない分周回路にて分周した周波数をカウントすることで、発振周波数を推定する。

【0034】
濃度推定部7は、発振周波数検出部6によって発振周波数が検出された発振器2の数すなわちセンサエレメント10の数に基づいて被検査体200の濃度を推定する。具体的に、濃度推定部7は、発振周波数検出部6が発振周波数を出力する検出信号を順次計数していき、菌によって周波数変化が検出できた発振器2の総数を算出し、当該総数を予め記憶しているセンサエレメント10の全数で除算することにより、被検査体200を検出したセンサエレメント10の割合を算出する。濃度推定部7は、被検査体200を検出したセンサエレメント10の割合を算出することで、被検査体200の濃度を推定する。

【0035】
ここで、上記の検出信号は、例えばハイレベルの信号である。このため、発振周波数検出部6は、発振周波数を検出したときにハイレベルの検出信号を出力し、発振周波数を検出しないときにはローレベルの非検出信号を出力する。したがって、発振周波数検出部6は、全ての発振器2について検出信号または非検出信号を順次出力する。

【0036】
なお、濃度推定部7が行う濃度の推定については、上記の方法に限らず、他の方法を用いてもよい。

【0037】
(センサ装置100による被検査体濃度測定方法)
図3の(a)および(b)は、センサ装置100を用いた被検査体の濃度の測定方法を示す図である。

【0038】
図3の(a)に示すように、培地21中に被検査体となる細胞22を混入させた混合液を混合サンプル23として用意する。図3の(b)に示す例では、5つの微小窪み14A~14Eに混合サンプル23を均一量入れるものとする。

【0039】
センサエレメント10において、センシング電極11の近傍にある細胞22の誘電率が変化した場合、センシング電極11への寄生容量値が変化し、共振器4の共振周波数が変化する。発振周波数検出部6は、共振周波数の変化に伴う発振器2の発振周波数の変化を検出する。以上の動作により、センサ装置100は、センシング電極11の近傍にある細胞22に生じた誘電率の変化を発振周波数の変化として検出することができる(検出工程)。

【0040】
微小窪み14A,14B,14Dを有するセンサエレメント10が、それぞれ微小窪み14A,14B,14Dに保持された細胞22を検出し、微小窪み14C,14Eを有するセンサエレメント10が細胞22を検出しなかったとする。この場合、センサエレメント10の全数が5であるのに対して、細胞22を検出したセンサエレメント10の総数は3となる。したがって、濃度推定部7は、センサエレメント10の全数に対する細胞22に反応したセンサエレメント10の総数の割合を算出することにより(算出工程)、混合サンプル23における細胞22の濃度を60%程度と推定する。

【0041】
このような濃度推定方法では、センサエレメント10の数を増やすことで、さらに正確な細胞濃度を推定することができる。

【0042】
本実施形態では、細菌より少し大きい細胞(20um程度)をも被検査対象とすることができる。この場合、センサエレメント10は、感度を高めなくても1つの細胞が微小窪み14に挿入されていることを検出することもできる。

【0043】
(センサ装置100による効果)
センサ装置100によれば、平板培養法や乾燥重量法のように処理時間がかかることがなく、濁度法のように大型装置を必要とすることもない。また、センサ装置100によれば、誘電率の変化に基づいて被検査体を検出することにより、ISFETを用いた従来のイオン感応によるセンサと異なり、デバイ長の制約による検出範囲を超えて、保護膜15の表面から数μmの範囲で被検査体を検出することができる。したがって、上記のような特徴を備えたセンサ装置100は、特別な構成を用いることなく、簡便に被検査体の濃度を得ることができる。

【0044】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図4を参照して説明する。なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の番号を付記して、その説明を省略する。

【0045】
図4の(a)および(b)は、センサ装置100を用いた実施形態2に係る被検査体の濃度の検出方法を示す図である。本実施形態で使用するセンサ装置は、実施形態1で説明したセンサ装置100と同一である。

【0046】
本実施形態では、代謝活動が活発な細胞と、そうでない細胞(例えば死菌などの活性度が低い細胞)とを見分ける場合について示す。図4の(a)に示すように、図3の(b)に示す例と同様、5つの微小窪み14A~14Eに、培地21に被検査体としての細菌31を混入させた混合サンプル33を入れる。この状態で、検出に先立って細菌31を数時間培養させる(培養工程)。培養後、図4の(b)に示すように、微小窪み14A,14Dにおいて細菌31が細菌32にまで増殖し、微小窪み14C,14Eにおける混合サンプル33には細菌31が含まれていなかったとする。また、微小窪み14B内の細菌31は、培養しても増殖されなかったため、活性度が低いものと推定される。

【0047】
この場合、微小窪み14A,14Dを有するセンサエレメント10が、それぞれ微小窪み14A,14Dに保持されて培養された細菌32を検出し、微小窪み14B,14C,14Eを有するセンサエレメント10が細菌32を検出しない。それゆえ、センサエレメント10の全数が5であるのに対して、細菌32を検出したセンサエレメント10の総数は2となる。したがって、濃度推定部7は、センサエレメント10の全数に対する細菌32に反応したセンサエレメント10の総数の割合を算出することにより、混合サンプル33における細菌32の濃度を40%程度と推定する。

【0048】
このように、細菌31を培養することにより、センサエレメント10の感度を高めなくても細胞より小さい細菌31を検出できるだけでなく、活性度の高い細菌32の割合を推定できる。また、センサエレメント10の数を増やすことで、活性度が高い細菌32の濃度をより正確に推定することができる。

【0049】
なお、「背景技術」において述べた乾燥重量法では、上記のような細菌の培養後に、通常105℃に温度調整した定温乾燥器で1時間程度の乾燥が追加される。また、乾燥重量法では、充分な菌体量が必要になるため、培養そのものにも菌体量に応じた時間を要する。

【0050】
〔実施の形態3〕
本発明の実施形態2について、図5を参照して説明する。なお、本実施形態において、前述の実施形態1および2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の番号を付記して、その説明を省略する。

【0051】
図5の(a)および(b)は、センサ装置100を用いた実施形態3に係る被検査体の濃度の検出方法を示す図である。本実施形態で使用するセンサ装置は、実施形態1で説明したセンサ装置100と同一である。

【0052】
図5の(a)に示すように、本実施形態でも、図3の(b)に示す例と同様、5つの微小窪み14A~14Eを用意する。本実施形態では、微小窪み14A~14Eに異なる選択性培地21A~21Eをそれぞれ充填しておき、培養する細菌31をスプレー等で散布する方法や、流路等を用いて微量の懸濁液を流し入れる方法、さらには、スポイト等で懸濁液を滴下する方法などで選択性培地21A~21Eに混入させる。この状態で数時間培養させると、図5の(b)に示すように、微小窪み14A,14Dにおける選択性培地21A,21Dには細菌31が細菌32にまで増殖する。また、微小窪み14Bにおける選択性培地21Bの細菌31は増殖せず、微小窪み14C,14Eにおける選択性培地21C,21Eには細菌31が含まれていない。このように、細菌31は、微小窪み14B,14C,14Eにおいて培養されないことから、選択性培地21B,21C,21Eに対しては活性度が低いものと推定される。

【0053】
この場合は、センサエレメント10の全数が5であるのに対して、細菌32を検出したセンサエレメント10の総数は2となる。したがって、濃度推定部7は、センサエレメント10の全数に対する細菌32に反応したセンサエレメント10の総数の割合を算出することにより、細菌32の濃度を40%程度と推定する。

【0054】
このように、細菌31を培養することにより、実施形態2と同様に、センサエレメント10の感度を高めなくても細胞より小さい細菌31を検出できるだけでなく、活性度の高い細菌32の割合を推定できる。また、センサエレメント10の数を増やすことで、活性度が高い細菌濃度をより正確に推定することができる。さらに、細菌31を選択性培地21A~21Eで培養することにより、細菌31の活性度が異なることから、細菌31の種類を特定することができる。

【0055】
〔実施の形態4〕
本発明の実施形態4について、図6~図8を参照して説明する。なお、本実施形態において、前述の実施形態1~3における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の番号を付記して、その説明を省略する。

【0056】
図6の(a)および(b)は、実施形態4に係るセンサ装置100Aの要部の構造を示す断面図である。図7の(a)は、センサ装置100Aの要部の他の構成を示す上面図であり、図7の(b)は図7の(a)のB-B線矢視断面図である。図8は、センサ装置100Aの要部のさらに他の構成を示す上面図である。

【0057】
図6の(a)および図7の(a)に示すように、センサ装置100Aは、保護膜15上に、全ての微小窪み14あるいは所定範囲の複数の微小窪み14の上部開口14aの全体を取り囲むように壁部50が設けられている。壁部50と保護膜15の表面とで容器51が形成されている。また、図6の(b)に示すように、容器51には、壁部50に囲まれた領域を覆う蓋52が嵌め込まれる。センサ装置100Aは、容器51および蓋52を備える以外は、実施形態1のセンサ装置100と同様に構成されている。

【0058】
上記のように、センサ装置100Aが容器51を有している。これにより、図6の(a)に示すように、細菌31(あるいは細胞)を混入させた培地41を、微小窪み14から溢れるように流し込んでも容器51の外側に漏れることはない。それゆえ、培地41が微小窪み14から溢れないように、微小窪み14の個々に培地41を入れる必要がなくなる。また、容器51を蓋52で覆うことにより、微小窪み14を外気から遮断されるので、コンタミネーションを防止することができる。

【0059】
容器51には、図7の(a)および(b)に示すように、壁部50の一辺側に外部に通じる溝53が設けられていてもよい。これにより、容器51を蓋52で覆うことにより溢れる培地41を溝53から外部に排出することができる。溝53は、1つに限らず複数設けられていてもよいし、壁部50の他の辺側に設けられていてもよい。

【0060】
さらに、図8に示すように、センサ装置100Aでは、壁部50に囲まれた領域が、単一の半導体基板1上に複数形成されることにより、複数の容器51が設けられていてもよい。これにより、それぞれの容器51に異なる選択性培地を入れることができる。実施形態3では、微小窪み14A~14Eにそれぞれ異なる選択性培地21A~21Eを入れることから、選択性培地21A~21Eが微小窪み14A~14Eから溢れると混合してしまう。これに対し、容器51ごとに異なる選択性培地を入れることにより、選択性培地の混合を防止することができる。したがって、選択性培地の特性に応じて、細菌の種類をより正確に特定することができる。

【0061】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る被検査体濃度測定方法は、複数の電極(センシング電極11)により捉えられた被検査体(細胞22,細菌31,32)の誘電率の変化に基づいて被検査体を検出する検出工程と、前記電極の全数に対する被検査体を検出した前記電極の総数の割合を算出する算出工程とを含んでいる。

【0062】
上記の方法によれば、乾燥重量法のように処理時間がかかることがなく、濁度法のように大型装置を必要とすることもない。また、誘電率の変化に基づいて被検査体を検出することにより、デバイ長の制約による検出範囲を超えて、センサ部の表面から数μmの範囲で被検査体を検出することができる。したがって、特別な構成を用いることなく、簡便に被検査体の濃度を得ることができる。

【0063】
本発明の態様2に係る被検査体濃度測定方法は、上記態様1において、前記検出工程に先立って、複数の前記電極上に設けられた窪み(微小窪み14,14A~14E)内で培地を用いて被検査体を培養する培養工程をさらに含んでいてもよい。

【0064】
上記の方法によれば、被検査体を培地21を用いて培養するので、細胞よりも小さい細菌のような被検査体をセンサ感度を高めることなく検出することができるだけでなく、活性度の高い被検査体の割合を推定することができる。

【0065】
本発明の態様3に係る被検査体濃度測定方法は、上記態様2において、前記培地は選択性培地であってもよい。

【0066】
上記の構成によれば、選択性培地21A~21Eで培養することにより、被検査体(細菌31)の活性度が異なることから、被検査体の種類を特定することができる。

【0067】
本発明の態様4に係るセンサ装置は、複数の窪み(微小窪み14,14A~14E)と、前記窪みの下に個々に設けられた、前記窪みに保持された被検査体(細胞22,細菌31,32)の誘電率の変化を捉える電極(センシング電極11)を個々に有し、当該電極が捉えた誘電率の変化に基づいて被検査体を検出する複数のセンサ部(センサエレメント10)と、前記センサ部の全数に対する被検査体を検出した前記センサ部の総数の割合を算出する算出部(濃度推定部7)とを備えている。

【0068】
上記の構成によれば、乾燥重量法のように処理時間がかかることがなく、濁度法のように大型装置を必要とすることもない。また、誘電率の変化に基づいて被検査体を検出することにより、デバイ長の制約による検出範囲を超えて、センサ部の表面から数μmの範囲で被検査体を検出することができる。したがって、特別な構成を用いることなく、簡便に被検査体の濃度を得ることができる。

【0069】
本発明の態様5に係るセンサ装置は、態様4において、複数の前記窪みの開口(上部開口14a)の全体を取り囲むように設けられた壁部50をさらに備えていてもよい。

【0070】
上記の構成によれば、被検査体を混入させた培地41を、窪みから溢れるように流し込んでも容器51の外側に漏れることはない。それゆえ、培地41が窪みから溢れないように、窪みの個々に培地41を入れる必要がなくなる。

【0071】
本発明の態様6に係るセンサ装置は、態様5において、前記壁部50に囲まれた領域が単一の半導体基板1の上に複数形成されていてもよい。

【0072】
上記の構成によれば、それぞれの壁部50で形成される容器51に異なる選択性培地を入れることができる。それゆえ、容器51ごとに異なる選択性培地を入れることにより、選択性培地の混合を防止することができる。したがって、選択性培地の特性に応じて、細菌の種類をより正確に特定することができる。

【0073】
本発明の態様7に係るセンサ装置は、態様6において、前記壁部50に囲まれた領域を覆う蓋52をさらに備えていてもよい。

【0074】
上記の構成によれば、窪みを蓋52で覆うことにより、窪みが外気から遮断されるので、コンタミネーションを防止することができる。

【0075】
本発明の態様8に係るセンサ装置は、態様7において、前記壁部50には、外部に通じる溝53が形成されていてもよい。

【0076】
上記の構成によれば、容器51を蓋52で覆うことにより溢れる培地41を溝53から外部に排出することができる。

【0077】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0078】
7 濃度推定部(算出部)
10 センサエレメント(センサ部)
11 センシング電極(電極)
14,14A~14E 微小窪み(窪み)
14a 上部開口(開口)
15 保護膜
22 細胞(被検査体)
31,32 細菌(被検査体)
50 壁部
51 容器
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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