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明細書 :センサ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-000158 (P2018-000158A)
公開日 平成30年1月11日(2018.1.11)
発明の名称または考案の名称 センサ装置
国際特許分類 C12M   1/34        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
G01N  27/72        (2006.01)
G01N  27/22        (2006.01)
FI C12M 1/34 B
G01N 33/48 Z
G01N 27/72
G01N 27/22 Z
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-135162 (P2016-135162)
出願日 平成28年7月7日(2016.7.7)
発明者または考案者 【氏名】満仲 健
【氏名】飯塚 邦彦
【氏名】小川 雄一
【氏名】鈴木 哲仁
出願人 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
2G053
2G060
4B029
Fターム 2G045AA24
2G045AA28
2G045BA13
2G045BB20
2G045FA34
2G045FA36
2G045FB05
2G045GC16
2G045GC20
2G045HA09
2G045HA14
2G045JA07
2G053AA01
2G053AB07
2G053BA05
2G053BA08
2G053CA19
2G053CB13
2G060AA06
2G060AA15
2G060AD06
2G060AF10
2G060HA02
2G060HC10
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA02
4B029FA10
要約 【課題】感度を安定化させる。
【解決手段】集積回路センサ(10)は、近傍にある被検査体の複層誘電率および複素透磁率に応じて発振周波数を変化させる発振器(24)と、発振器(24)を覆う被覆膜(5)と、を備える。被覆膜(5)に、上面視において発振器(24)と重なるように、微小窪み(6)が形成されており、発振器(24)は、微小窪み(6)の内部に存在する被検査体のみの物性に応じて発振周波数を変化させる。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板の上に少なくとも1つ配置され、近傍にある被検査体の物性に応じて発振周波数を変化させる発振器と、
前記発振器の上方に少なくとも配置されている第1保護膜と、を備え、
前記第1保護膜に、窪みが少なくとも1つ形成されており、
前記窪みは、上面視において、前記発振器と重なる位置に位置し、
前記発振器は、前記窪みの内部に存在する被検査体のみの物性に応じて発振周波数を変化させることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記発振器は、近傍にある被検査体の物性に応じて当該発振器の発振周波数を変化させる差動部を有し、
前記窪みは、上面視において、前記差動部と重なる位置に位置することを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記窪みの底の中心は、上面視において、前記差動部の中心と重なる位置に位置することを特徴とする請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記窪みの底の形状は、上面視において、円形または多角形であることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記窪みの底と前記発振器との間には、第2保護膜が少なくとも存在することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記第2保護膜は、パッシベーション膜を含むことを特徴とする請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記窪みは、開口側が底側よりも広くなっていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記発振器および前記窪みは、複数であり、
複数の前記窪みが、複数の前記発振器のそれぞれに応じて形成されていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
さらに、容器を少なくとも1つ備え、
前記容器の底の少なくとも一部は、前記基板であり、
前記第1保護膜は、前記容器の内側に位置することを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記容器は、複数であり、
複数の前記容器のそれぞれに、
前記発振器が少なくとも1つ含まれ、
前記窪みが少なくとも1つ含まれることを特徴とする請求項9に記載のセンサ装置。
【請求項11】
上面視において、前記容器の面積は、前記窪みの面積に比べて大きいことを特徴とする請求項9または10に記載のセンサ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体(水および培地など)の物性の変化を検査するセンサ装置に関し、特に、被検査体に含まれる検査対象(細菌、細胞および生体分子など)を検査するセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食中毒などを引き起こす細菌が、食品に混入しているか否かを判定する検査方法の中で、近年、集積回路センサを用いた検査方法が研究されている。細菌、細胞、生体分子、および生体高分子などを検査する検査方法のための集積回路センサとして、発明者らは非特許文献1に示す、半導体基板上に作成した集積回路センサを開発した。
【0003】
発明者らが開発した集積回路センサは、複数の発振器を備え、それぞれの発振器が有する共振器を構成するインダクタを集積回路センサの表面近傍に配置している。集積回路センサの表面近傍にある被検査体の物性(複素誘電率および複素透磁率)の変化により共振器の共振周波数が変化することで、発振器の発振周波数が変化する。この発振周波数の変化を、集積回路の外部または内部に形成された周波数検出回路にて検出する。結果として、集積回路センサは、被検査体の物性の変化を検出することができる。そして、被検査体の物性の変化を検出することにより、被検査体に含まれる検査対象を検査することができる。
【0004】
例えば、100GHz付近の周波数帯において、水分子の状態変化により、水の複素誘電率は大きく変化する。また、細菌および細胞などの生体は、水が主要成分であるため、水分子の状態を調べることにより、生体および生体高分子の状態を調べることができる。生体分子中の水は生体分子外の水に比べて束縛されるため、100GHz付近の周波数では誘電損が小さくなる。このため、生体または生体分子を含む培養液の下にある発振器の発振周波数は、生体も生体分子も含まない培養液のみの下にある発振器の発振周波数に比べて高くなる。非特許文献1では、120GHzと60GHzの2種類の発振器を複数並べた集積回路センサを用意し、寒天培地を集積回路センサに貼り付け、増殖させた大腸菌が存在する領域に存在する発振器の発振周波数が、寒天培地に比べて高いことを示した。
【0005】
他に、検査のための集積回路センサとして、蛍光を利用する集積回路センサも開発されている。例えば、特許文献1が示す集積回路センサは、被検査体のpHに感応するpH感応性蛍光色素含有層を有しており、発せられた蛍光の強度を測定することにより、被検査体のpHを検出する。そして、pH感応性蛍光色素含有層の上に、微小なウェル(井戸)が形成されている光不透過層を設けることにより、外光を遮断して、蛍光の測定の感度を向上させている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2005-253412号公報(2005年9月22日公開)
【0007】

【非特許文献1】T.Mitsunaka, N.Ashida, A.Saito, K.Iizuka, T.Suzuki, Y.Ogawa, M.Fujishima "CMOS biosensor IC focusing on dielectric relaxations of biological water with 120GHz and 60GHz oscillator arrays", IEEE Solid-State Circuit Conf. Dig. Tech. papers, pp.478-479, Feb. 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは、非特許文献1に示した集積回路センサの改良のために、集積回路センサが備える発振器124の感度の分布を測定した。
【0009】
図7は、発振器124の感度分布の測定を示す図である。図7の(a)は、樹脂針132の移動を概略的に示す図であり、線ABは、差動電極部122の中心122aを通る直線である。図7の(b)は、差動電極部122の中心122aに対する樹脂針132の距離Distanceを横軸に、発振器124の発振周波数の変化幅Frequency Siftを縦軸に、測定結果をプロットしたグラフである。
【0010】
図7に示す測定結果は、トランジスタ121と接続される差動電極部122が存在する領域(差動領域)が、最も発振器124の発振周波数が変化する領域であり、発振器124が発振周波数を変化させる感度が高い領域(高感度領域)であること示している。また、差動電極部122の中心122aが、発振器124が最高感度である位置(最高感度位置)であることを示している。また、差動電極部122の中心122aからの距離に応じて、発振器124の発振周波数が変化する感度が変動することも示している。
【0011】
そして、非特許文献1に記載した細菌の検査方法には、大腸菌をスプレーにて塗布した寒天培地を集積回路センサに貼り付けて検査しているため、検査対象である大腸菌が偶然に発振器124の高感度領域にあったり低感度領域にあったりする可能性がある。したがって、大腸菌の位置によって、大腸菌の検出に有効な発振器124(すなわち集積回路センサ)の感度が変動するという問題、すなわち、集積回路センサの感度が不安定であるという問題があった。
【0012】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査体の物性および被検査体に含まれる検査対象を検査する感度を安定化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係るセンサ装置は、基板と、前記基板の上に少なくとも1つ配置され、近傍にある被検査体の物性に応じて発振周波数を変化させる発振器と、前記発振器の上方に少なくとも配置されている第1保護膜と、を備え、前記第1保護膜に、窪みが少なくとも1つ形成されており、前記窪みは、上面視において、前記発振器と重なる位置に位置し、前記発振器は、前記窪みの内部に存在する被検査体のみの物性に応じて発振周波数を変化させる構成である。
【0014】
上記構成によれば、発振器の発振周波数は、発振器の近傍にある被検査体の物性に応じて変化する。また、発振器の近傍において、被検査体が存在可能な領域は、第1保護膜に形成されている窪みの内部の領域のみに限定される。このため、被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器の発振周波数に影響可能な領域は、第1保護膜に形成されている窪み内部の領域のみに限定される。
【0015】
被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器の発振周波数に影響可能な領域を限定することにより、被検査体の中の検査対象が存在する位置による発振器の感度の変動を排除することができる。このため、検査に有効な発振器およびセンサ装置の感度を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記構成によれば、発振器の発振周波数は、発振器の近傍にある被検査体の物性に応じて変化する。また、発振器の近傍において、被検査体が存在可能な領域は、第1保護膜に形成されている窪みの内部の領域のみに限定される。このため、被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器の発振周波数に影響可能な領域は、第1保護膜に形成されている窪み内部の領域のみに限定される。
【0017】
被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器の発振周波数に影響可能な領域を限定することにより、被検査体の中の検査対象が存在する位置による発振器の感度の変動を排除することができる。このため、発振器およびセンサ装置の感度を安定化させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の上記一実施形態に係る集積回路センサの概略上面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る集積回路センサが備える発振器の近傍の(a)概略断面図と(b)概略上面図とである。
【図3】本発明の上記一実施形態に係る集積回路センサの培地を挿入した状態の概略断面図である。
【図4】本発明の別の一実施形態に係る集積回路センサが備える発振器の近傍の(a)概略断面図と(b)概略上面図とである。
【図5】本発明のさらに別の一実施形態に係る集積回路センサの培地を挿入した状態の概略断面図である。
【図6】本発明のさらに別の一実施形態に係る集積回路センサの培地を挿入した状態の概略断面図である。
【図7】従来の集積回路センサが備える発振器の感度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1~図3に基づいて詳細に説明する。

【0020】
図1は、実施形態1に係る集積回路センサ10(センサ装置)におけるエレメント20と微小窪み6との概略配置を示す上面図である。

【0021】
図1に示すように、集積回路センサ10は、複数のエレメント20を備え、各エレメント20に対応して微小窪み6が形成されている。エレメント20を高い密度で一様に配置するために、エレメント20は、図1において千鳥状に配置されているが、他の二次元アレイ状の規則的配置であってもよく、不規則的配置であってもよい。また、集積回路センサ10は、複数のエレメント20に加えて、制御回路などの他の回路を備えてもよい。

【0022】
エレメント20は、発振器24自身の近傍にある被検査体の物性に応じて発振周波数を変化させる発振器24と、分周回路および周波数計測回路などの図示しない他の構成要素と、を含む。また、エレメント20は、図示しない信号線および電力線と接続されている。

【0023】
微小窪み6は、エレメント20に1対1対応に配置されているが、これに限らない。1つのエレメント20に対して、複数の微小窪み6が配置されてもよく、複数のエレメント20の一部と別の一部とで、各エレメント20に対して配置されている微小窪み6の数が異なっていてもよい。微小窪み6は、エレメント20に対する相対位置が同一であるように配置されているが、これに限らない。複数のエレメント20の一部と別の一部とで、各エレメント20に対する微小窪み6の相対位置が異なっていてもよい。

【0024】
図2は、実施形態1に係る集積回路センサ10が備える発振器24近傍の集積回路センサ10の概略構成を示す図である。図1の(a)は、発振器24近傍の部分断面を示し、図1の(b)は、発振器24の上面と微小窪み6の底6aとを示す。

【0025】
図2に示すように、集積回路センサ10は、半導体基板1(基板)と、半導体基板1の上に形成される配線層2と、配線層2の上に形成されるパッシベーション膜4(第2保護膜)と、パッシベーション膜4の上に形成される被覆膜5(第1保護膜)とを備える。また、半導体基板1と配線層2とには、発振器24が形成されており、被覆膜5には、微小窪み6(窪み)が形成されている。

【0026】
半導体基板1は、汎用のシリコン基板であり、その上にトランジスタ21などの回路素子が形成されている。これに限らず、半導体基板1は、他の半導体基板であってもよく、ガラス基板などの絶縁基板であってもよく、その上に回路(トランジスタ21などの回路素子および配線層2)を配置できればどのような基板であってもよい。

【0027】
配線層2は、半導体基板1を覆い、金属配線(配線に使用する導電層、最上位層メタル3を含む)と金属配線どうしを絶縁するための絶縁層とを含む。一般的に、金属配線を絶縁するための絶縁層は窒化シリコンSiの層である。また、配線層2の最上位層メタル3は、配線層2の金属配線のうち、培地などの被検査体が接触する被覆膜5およびパッシベーション膜4に最も近い層である。

【0028】
パッシベーション膜4は、配線層2を覆い、集積回路センサ10が備える回路(エレメント20および最上位層メタル3など)を保護するための膜であり、一般的に酸化シリコンSiOの膜である。

【0029】
被覆膜5は、パッシベーション膜4を覆う。被覆膜5は、発振器24の上方に少なくとも配置されており、培地などの被検査体を発振器24から離間させて、被検査体を発振器24の近傍から遠ざけるための膜である。このため、被覆膜5は、被検査体が浸透しない材料(樹脂など)の膜である。また、被覆膜5の厚さは、被検査体の物性が発振器24の発振周波数に影響しないまでに、被検査体を発振器24から離間して遠ざけることができる厚さである。

【0030】
微小窪み6は、被覆膜5の上面から被覆膜5内を発振器24に向かって形成されている孔であり、上側に開いている開口6bと、下側(発振器24側)にある底6aとを有する。実施形態1においては図2の(a)に示すように、パッシベーション膜4の上面が微小窪み6の底6aから露出しているが、これに限らない。例えば、微小窪み6が浅い場合、微小窪み6の底6aとパッシベーション膜4の上面との間に、被覆膜5が薄くまたは部分的に存在してもよい。また、例えば、微小窪み6が深い場合、パッシベーション膜4が部分的に削られて、パッシベーション膜4が微小窪み6の底6aから露出してもよい。

【0031】
なお、微小窪み6の底6aと発振器24との間には、パッシベーション膜4に限らず、被検査体の浸透を防止する何らの膜が少なくとも存在することが好ましい。例えば、被検査体が細菌を含む培養液の場合、被検査体の水分が配線層2へ浸透すると、漏電または短絡が生じ、集積回路センサ10が故障する。また、微小窪み6の底6aと発振器24との間に存在する膜の材料および厚さを適切に調整することが好ましい。これにより、被検査体の物性の変化をより適切に評価することができ、検査精度を向上させることができる。

【0032】
微小窪み6は、図2においては、発振器24が備える差動電極部22と上面視において重なる位置に形成されており、逆円錐台の形状に形成されているが、これに限らない。また、微小窪み6の底6aは、図2においては、差動電極部22の中心22aを中心とする円の形状であり、差動電極部22の一部(ほぼ全部)を収める大きさであり、具体的には、直径が50μm以下の円であるが、これに限らない。微小窪み6および発振器24に関する詳細な説明は、後述する。

【0033】
(発振器)
発振器24は、トランジスタ21と、トランジスタ21に接続される差動電極部22(差動部)と、差動電極部22に接続されるインダクタ23とを備える。

【0034】
差動電極部22に含まれるキャパシタとインダクタ23とは、LC共振回路を構成している。このLC共振回路は、(i)該キャパシタの近傍にある被検査体の物性の変化に応じて該キャパシタのキャパシタンスCが変化すること、および/または、(ii)インダクタ23の近傍にある被検査体の物性の変化に応じてインダクタ23のインダクタンスが変化すること、により共振周波数を変化させる。このため、発振器24の発振周波数は、発振器24の近傍にある被検査体の物性の変化に応じて、変化する。

【0035】
差動電極部22とインダクタ23とが両方とも最上位層メタル3に形成されている。このため、差動電極部22に含まれるキャパシタのキャパシタンスも、インダクタ23のインダクタンスも、被検査体の影響を受けやすい。これにより、差動電極部22に含まれるキャパシタとインダクタ23とが構成するLC共振回路は、共振周波数を変化させる感度が高い。そして、発振器24も同様に、発振周波数を変化させる感度が高い。

【0036】
発振器24は、発振器24の近傍にある、言い換えると、発振器24およびその近傍(発振器領域)の直上の領域にある被検査体の物性に応じて、発振周波数を変化させる。そして、発振器領域の直上の領域は、図2の(a)を参照して、(i)微小窪み6の内部の第1領域と、(ii)パッシベーション膜4および被覆膜5などが存在する第2領域と、(iii)被覆膜5および微小窪み6よりも上方の何もない第3領域と、の3つの領域に分けられる。

【0037】
これらの領域のうち、パッシベーション膜4および被覆膜5などが存在する第2領域には、被検査体が存在できない。また、被覆膜5および微小窪み6よりも上方の何もない第3領域には、被検査体が存在できるが、しかし、発振器24から遠すぎるために、発振器24の発振周波数に被検査体の物性が実質的に影響しない。したがって、被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器24の発振周波数に影響可能な領域は、微小窪み6の内部の第1領域のみである。

【0038】
このように、微小窪み6が形成された被覆膜5が形成されていることにより、発振器24は、微小窪み6の内部に存在する被検査体のみの物性に応じて発振周波数を変化させることができる。

【0039】
(微小窪みの配置と形状)
以下に、発振器24に対する、特に発振器24の差動電極部22に対する微小窪み6の配置と形状とについて、図2に基づいて詳細に説明する。

【0040】
微小窪み6が形成される位置は、上面視において、発振器24およびその近傍(発振器領域)と重なる領域にあればよく、発振器24の感度が高い高感度領域にあることが好ましく、微小窪み6の底6aの中心が、上面視において、発振器24の感度が最も高い最高感度位置と重なることがさらに好ましい。

【0041】
微小窪み6の底6aの形状は、楕円形または多角形のような単純な形状であることが好ましく、円形または正多角形のような中心が分かりやすい形状であることがさらに好ましい。

【0042】
微小窪み6が発振器領域の直上の領域にあれば、発振器24の発振周波数は微小窪み6の内部に存在する被検査体のみの物性に応じて変化する。このため、被検査体の中の検査対象が存在する位置による発振器の感度の変動を排除でき、発振器24の感度は、微小窪み6が形成されている位置における感度に限定される。これにより、被検査体の検査に有効な発振器24の感度が安定し、集積回路センサ10の感度も安定するので、集積回路センサ10の検査精度を安定させることができる。

【0043】
これに対し、微小窪み6が形成された被覆膜5を設けない従来構成においては、被検査体の中の検査対象が存在する位置が不明であった。このため、図7のように、検査対象(樹脂針132が相当)が存在する位置によって、発振器124の感度が変動するという問題があった。このように、発振器124の感度が変動して不安定であるため、従来構成の集積回路センサの感度は不安定であり、その検査精度も不安定であった。そのため、集積回路センサの検査精度を安定させるために、被検査体に含まれる検査対象(細菌など)が十分に広い範囲に広がるまで培養する必要があり、検査に必要な培養時間が長いという問題があった。一方、本発明の実施形態1に係る集積回路センサ10によれば、検査精度が安定しているので、検査に必要な培養時間を短縮化することができる。

【0044】
微小窪み6が高感度領域にあれば、発振器24が微小窪み6の内部に存在する被検査体の物性に応じて発振周波数を変化させる感度は、高感度になる。このため、被検査体の検査に有効な発振器24の感度が高い感度で安定し、集積回路センサ10の感度も高い感度で安定するので、集積回路センサ10の検査精度を高い精度で安定させることができる。また、感度と検査精度とが高いので、検査に必要な培養時間をより短縮化することができる。

【0045】
このような高感度領域は、実施形態1において具体的には、上面視において、発振器24が有する差動電極部22およびその近傍(差動領域)と重なる領域である。したがって、具体的には、微小窪み6は、差動領域の直上の領域に形成されることが好ましい。

【0046】
これに対し、微小窪み6が形成された被覆膜5を設けない従来構成においては、被検査体に含まれる検査対象(細菌など)が、発振器124の感度が低い低感度領域にある可能性があった(図7参照)。高感度領域よりも低感度領域の方が広いので、被検査体の検査に有効な発振器124の感度および集積回路センサの感度は、あまり高いことが期待できなかった。このため、集積回路センサの感度が低く、検査精度が低いという問題があった。さらに検査対象が低感度領域にあった場合、高感度領域まで成長するために必要な時間が長いので、検査に必要な培養時間が長いという問題があった。一方、本発明の実施形態1に係る集積回路センサ10によれば、被検査体は、高感度領域にある微小窪み6の内部に存在するので、感度および検査精度を向上させることができ、さらに、検査に必要な培養時間を短縮化することができる。

【0047】
微小窪み6の底6aの中心が、発振器24の感度が最も高い最高感度位置にあれば、微小窪み6の内部に存在する被検査体は、最高感度位置を中心に存在することとなる。このため、被検査体の検査に有効な発振器24の感度および集積回路センサ10の感度をより向上させることができ、集積回路センサ10の検査精度をより高い精度で安定させることができ、検査に必要な培養時間をより短縮化することができる。

【0048】
このような最高感度位置は、実施形態1において具体的には、差動電極部22の中心22aである。したがって、具体的には、微小窪み6の底6aの中心は、差動電極部22の中心22aの直上に形成されることが好ましい。

【0049】
微小窪み6の底6aの形状は、円または多角形などの単純な形状であることが好ましい。なぜならば、単純な形状であるので、微小窪み6を形成することが容易であるからであり、底6aの中心が分かりやすいので、微小窪み6の底6aの中心を差動電極部22の中心22aの直上に位置させることが容易であるからである。

【0050】
微小窪み6の底6aの面積は、大きすぎないことが好ましい。なぜならば、底6aの面積が大きすぎる場合、微小窪み6が形成されている位置における発振器24の感度の幅も広くなりすぎるため、被検査体の検査に有効な発振器24および集積回路センサ10の感度の安定化が弱くなるからである。一方、小さすぎる場合も、好ましくない。なぜならば、微小窪み6の内部の領域が小さくなりすぎるため、被検査体の検査が困難になるからである。したがって、微小窪み6の底6aは、発振器24の高感度領域の全部または一部と略一致することが好ましい。実施形態1において具体的には、微小窪み6の底6aは、差動電極部22の一部または全部と重なる位置にあり、差動電極部22の一部または全部を収める面積および形状であることが好ましい。

【0051】
(集積回路センサを用いた検査方法)
以下に図3に基づいて、実施形態1に係る集積回路センサ10を用いた検査方法について詳細に説明する。

【0052】
図3は、図2に示した集積回路センサ10の微小窪み6に、被検査体として培地30を挿入した断面図である。

【0053】
培地30は、検査対象として細胞または細菌を含む培養液(なお、本願明細書において、「検査対象を含む被検査体」とは、特に言及した場合を除き、検査対象を含まない被検査体を包含する。)であるが、これに限らない。検査対象として生体分子または生体高分子を含む抽出液などの他の検査試料を微小窪み6に被検査体として挿入してもよい。

【0054】
例えば、複数のエレメント20それぞれにおいて、検査対象として細胞を含む均一量の培地30を微小窪み6に挿入して、発振器24を用いて培地30を一度に検査する。そして、複数のエレメント20の一部または全部から、培地30が細胞を含む場合の結果(発振器24の発振周波数の変化)が得られる。そして、複数のエレメント20に対する、培地30が細胞を含む場合の結果を得られたエレメント20の割合を算出することにより、培地30に含まれる細胞の濃度を推定することができる。

【0055】
例えば、複数のエレメント20それぞれにおいて、検査対象として細菌を含む均一量の培地30を微小窪み6に挿入して、所定の培養時間が経過した後に、発振器24を用いて培地30を一度に検査する。そして、複数のエレメント20の一部または全部から、培地30が培養された細菌を含む場合の結果(発振器24の発振周波数の変化)が得られる。そして、複数のエレメント20に対する、培地30が培養された細菌を含む場合の結果を得られたエレメント20の割合を算出することにより、培地30に含まれる活性度の高い細菌の濃度を推定することができる。

【0056】
このように、実施形態1に係る集積回路センサ10を用いることにより、被検査体の物性の変化を検査することを通じて、被検査体に含まれる検査対象を検査することができ、検査対象である細菌、細胞、または生体分子などの濃度、数、活性度、または状態変化などを検査することができる。なお、複数の被検査体を一度に検査するのでない場合、集積回路センサ10が備えるエレメント20は、1つであってもよい。

【0057】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0058】
実施形態2に係る集積回路センサ10は、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、複数のエレメント20を備える。

【0059】
図4は、実施形態2に係る集積回路センサ10が備える発振器24近傍の集積回路センサ10の概略構成を示す図である。図1の(a)は、発振器24近傍の部分断面を示し、図1の(b)は、発振器24の上面と微小窪み6の底6aとを示す。

【0060】
図4に示すように、実施形態2に係る集積回路センサ10は、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、半導体基板1と、配線層2と、パッシベーション膜4と、被覆膜5とを備える。また、半導体基板1と配線層2(最上位層メタル3を含む)とには、発振器24が形成されており、被覆膜5には、微小窪み6が形成されている。

【0061】
実施形態2に係る発振器24は、実施形態1に係る発振器24と同様に、トランジスタ21と、差動電極部22と、インダクタ23´とを備えるが、しかし、実施形態1に係る発振器24と異なり、インダクタ23´が最上位層メタル3に形成されていない。

【0062】
実施形態2に係る発振器24において、図4に示されるように、差動電極部22は最上位層メタル3に形成されているが、インダクタ23´は配線層2に含まれる別の金属配線(最上位層メタル3でない導電層)に形成されている。このため、実施形態2に係るLC共振回路は、(i)差動電極部22の近傍にある被検査体の影響を、実施形態1に係るLC共振回路と同様に受けやすいが、一方、(ii)インダクタ23´の近傍にある被検査体の影響を、実施形態1に係るLC共振回路がインダクタ23の近傍にある被検査体の影響を受けやすいのと比較すると、比較的に受けにくい。

【0063】
しかしながら、発振器24は、微小窪み6の内部に存在する被検査体のみの物性に応じて発振周波数を変化させるため、インダクタ23´が最上位層メタル3でない導電層に形成されていることは、発振器24の感度に実質的に影響しない。

【0064】
したがって、実施形態2に係る集積回路センサ10によれば、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、被検査体の中の検査対象が存在する位置による発振器の感度の変動を排除でき、発振器24の感度は、微小窪み6が形成されている位置における感度に限定される。これにより、被検査体の検査に有効な発振器24の感度が安定し、集積回路センサ10の感度も安定するので、集積回路センサ10の検査精度を安定させることができる。また、検査精度が安定しているので、検査に必要な培養時間を短縮化することができる。

【0065】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0066】
実施形態3に係る集積回路センサ10は、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、複数のエレメント20を備える。

【0067】
図5は、実施形態3に係る集積回路センサ10が備える発振器24近傍の集積回路センサ10の概略構成を示す断面図であり、微小窪み6に被検査体として培地30を挿入した断面図である。

【0068】
図5に示すように、実施形態3に係る集積回路センサ10は、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、半導体基板1と、配線層2と、パッシベーション膜4と、被覆膜5とを備える。また、半導体基板1と配線層2(最上位層メタル3を含む)とには、発振器24が形成されており、被覆膜5には、微小窪み6´が形成されており、発振器24は、トランジスタ21と、差動電極部22と、インダクタ23とを備える。

【0069】
実施形態3に係る微小窪み6´は、実施形態1に係る微小窪み6と同様に、上側に開いている開口6bと、下側(発振器24側)にある底6aとを有し、加えて、上側の開口6bと下側の底6aとの間に段6cを有する。

【0070】
実施形態3に係る微小窪み6´において、図5に示されるように、段6cにより、微小窪み6´の開口6bの面積が底6cの面積よりも広くなっている。これにより、微小窪み6´の開口6b側の容積が、微小窪み6´の底6a側の容積よりも大きくなっているため、底6cの面積が同一である場合、実施形態3に係る微小窪み6´の内部の領域の容積は、実施形態1に係る微小窪み6の内部の領域の容積よりも大きくなることができる。容積の増大により、微小窪み6´の内部に挿入される培地30の体積も増大するので、微小窪み6´の内部に存在する培地30の乾燥を防止することができ、微小窪み6´の内部に存在する培養のための栄養の総量を増大させることができる。

【0071】
微小窪み6´において、開口6b側を底6a側よりも広くする方法は、図5に示す方法に限らない。例えば、開口6bと底6aとの間に複数の段を設けてもよく、段を設けずに滑らかに、微小窪み6´の断面積を徐々に広げてもよい。

【0072】
したがって、実施形態3に係る集積回路センサ10によれば、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、被検査体の中の検査対象が存在する位置による発振器の感度の変動を排除でき、発振器24の感度は、微小窪み6が形成されている位置における感度に限定される。これにより、被検査体の検査に有効な発振器24の感度が安定し、集積回路センサ10の感度も安定するので、集積回路センサ10の検査精度を安定させることができる。また、検査精度が安定しているので、検査に必要な培養時間を短縮化することができる。

【0073】
さらに、実施形態3に係る集積回路センサ10によれば、微小窪み6´の内部に挿入される培地30の体積も増大するので、微小窪み6´の内部に存在する培地30の乾燥を防止することができ、微小窪み6´の内部に存在する培養のための栄養の総量を増大させることができる。

【0074】
また、実施形態3に係る集積回路センサ10に実施形態2に係る集積回路センサ10を組み合わせてもよい。図5に示す集積回路センサ10において、発振器24は、最上位層メタル3に形成されているインダクタ23の代わりに、配線層2に含まれる別の金属配線(最上位層メタル3でない導電層)に形成されているインダクタ23´を備えてもよい。

【0075】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0076】
図6は、実施形態4に係る集積回路センサ10の概略構成を示す断面図であり、集積回路センサ10が備える発振器24近傍の概略構成を示す断面図であり、微小窪み6に被検査体として培地30を挿入した断面図である。

【0077】
実施形態4に係る集積回路センサ10は、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、複数のエレメント20を備え、加えて、容器31を備える。

【0078】
図6に示すように、実施形態4に係る集積回路センサ10は、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、半導体基板1と、配線層2と、パッシベーション膜4と、被覆膜5とを備える。また、半導体基板1と配線層2(最上位層メタル3を含む)とには、発振器24が形成されており、被覆膜5には、微小窪み6が形成されており、発振器24は、トランジスタ21と、差動電極部22と、インダクタ23とを備える。

【0079】
容器31の底の少なくとも一部は、被覆膜5とパッシベーション膜4と配線層2とが形成されている半導体基板1であり、半導体基板1が容器31の外側に位置し、被覆膜5が容器31の内側に位置する。このため、実施形態4に係る集積回路センサ10において、被覆膜5および微小窪み6よりも上の何もない第3領域に、培地30を留保することができる。

【0080】
図6に示すように、微小窪み6を超えて、微小窪み6の内部の領域に存在する培地30を覆うように、培地30を容器31の内部に挿入することができる。このため、微小窪み6の内部の領域に存在する培地30の乾燥を、より防止することができる。なお、上述の実施形態1において説明したように、被覆膜5および微小窪み6よりも上の何もない第3領域に存在する培地30は、発振器24から遠すぎるので、発振器24の発振周波数に実質的に影響しない。

【0081】
図示しないが、容器31は複数であってもよく、例えば、集積回路センサ10は、互いに分離している複数の容器31を備えてもよく、連結されている複数の容器31を備えてもよい。容器31を複数備えることにより、容器31毎に、培地30に異なる複数の選択性培地を用いることができる。そして、培養することにより、培地30が含む細菌などの被検査体を一度の検査で特定することができる。

【0082】
また、縮尺を無視した概略図であるため、図6には示されていないが、容器31は、微小窪み6よりも極めて大きく、人間が十分に視認できる大きさである。一方、半導体基板1の上に集積回路技術により作製される発振器24も微小窪み6も、微小であり、視認性が極めて低い。このため、例えば、集積回路センサ10の微小窪み6が形成されている側の面が分かりやすくなるなど、集積回路センサ10を用いる検査の作業性を向上させることができる。

【0083】
したがって、実施形態4に係る集積回路センサ10によれば、実施形態1に係る集積回路センサ10と同様に、被検査体の中の検査対象が存在する位置による発振器の感度の変動を排除でき、発振器24の感度は、微小窪み6が形成されている位置における感度に限定される。これにより、被検査体の検査に有効な発振器24の感度が安定し、集積回路センサ10の感度も安定するので、集積回路センサ10の検査精度を安定させることができる。また、検査精度が安定しているので、検査に必要な培養時間を短縮化することができる。

【0084】
さらに、実施形態4に係る集積回路センサ10によれば、微小窪み6´の内部に挿入される培地30を、培地30で覆うことができるので、微小窪み6´の内部に存在する培地30の乾燥を防止することができる。また、容器31を複数備えることにより、選択性培地を用いて、培地30が含む細菌などの被検査体を特定することができる。

【0085】
また、実施形態4に係る集積回路センサ10に、実施形態2に係る集積回路センサ10および/または実施形態2に係る集積回路センサ10を組み合わせてもよい。図6に示す集積回路センサ10において、発振器24は、最上位層メタル3に形成されているインダクタ23の代わりに、配線層2に含まれる別の金属配線(最上位層メタル3でない導電層)に形成されているインダクタ23´を備えてもよい。図6に示す集積回路センサ10において、被覆膜5に、段を有さない微小窪み6の代わりに、段6cを有する微小窪み6´が形成されてもよい。

【0086】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、基板(半導体基板1)と、前記基板の上に少なくとも1つ配置され、近傍にある被検査体(培地30)の物性(複層誘電率および複素透磁率)に応じて発振周波数を変化させる発振器(24)と、前記発振器の上方に少なくとも配置されている第1保護膜(被覆膜5)と、を備え、前記第1保護膜に、窪み(微小窪み6,6´)が少なくとも1つの形成されており、前記窪みは、上面視において、前記発振器と重なる位置(発振器領域)に位置し、前記発振器は、前記窪みの内部に存在する被検査体のみの物性に応じて発振周波数を変化させる構成である。

【0087】
上記構成によれば、発振器の発振周波数は、発振器の近傍にある被検査体の物性に応じて変化する。また、発振器の近傍において、被検査体が存在可能な領域は、第1保護膜に形成されている窪みの内部の領域のみに限定される。このため、被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器の発振周波数に影響可能な領域は、第1保護膜に形成されている窪み内部の領域のみに限定される。

【0088】
従来、発振器が近傍にある被検査体の物性に応じて発振周波数を変化させる感度は、発振器に対する被検査体の相対位置に応じて変動し、被検査体の中の検査対象(細菌、細胞、および生体高分子など)が偶然に、発振器の感度の高い位置に存在したり、低い位置に存在したりした。このため、発振器(すなわちセンサ装置)の検査精度が安定しにくいという問題、および、検査精度を安定させるために、被検査体の中の検査対象が広い範囲に広がるまで被検査体の中の検査対象を培養するので、検査に必要な培養時間が長いという問題があった。

【0089】
これに対して、上記構成によれば、被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器の発振周波数に影響可能な領域を限定することにより、被検査体の中の検査対象が存在する位置による発振器の感度の変動を排除することができる。このため、発振器およびセンサ装置の検査精度を安定化させることができ、また、検査に必要な培養時間を短縮化することができる。

【0090】
本発明の態様2に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様1において、前記発振器(24)は、近傍にある被検査体(培地30)の物性に応じて当該少なくとも1つの発振器の発振周波数を変化させる差動部(差動電極部22)を有し、前記窪み(微小窪み6,6´)は、上面視において、前記差動部と重なる位置に位置する構成としてもよい。

【0091】
上記構成によれば、発振周波数は、差動部の近傍にある被検査体の物性に応じて変化するので、発振器の感度は、差動部近傍(差動領域)において高くなっている。また、窪みが差動部近傍の直上に位置するので、被検査体が存在可能かつ被検査体の物性が発振器の発振周波数に影響する領域は、発振器の感度が高い差動部近傍に限定される。したがって、被検査体の中の検査対象に対して有効な発振器の有効感度を向上させることができる。

【0092】
発振器の有効感度を向上させることにより、センサ装置の感度も向上させることができる。また、発振器の感度が低い低感度領域による感度の変動を排除することができる。また、発振器の感度が高い高感度領域まで、被検査体に含まれる検査対象が成長するまでの時間が短い(または無い)ので、検査に必要な培養時間をさらに短縮化することができる。

【0093】
なお、差動部を有する共振器に限らず、窪みは、発振器の高感度領域と重なる位置および形状に形成されることが好ましい。

【0094】
本発明の態様3に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様2において、前記窪み(微小窪み6,6´)の底(6a)の中心は、上面視において、前記差動部(差動電極部22)の中心(22a)と重なる位置に位置する構成としてもよい。

【0095】
上記構成によれば、窪みの底の中心は、差動部の中心の直上に位置する。一方、発振器の感度は差動部の中心において最も高くなっている。このため、被検査体が、発振器の感度が最も高い最高感度位置を中心とする領域に存在するので、発振器の有効感度を、さらに向上させることができる。

【0096】
本発明の態様4に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様1から3の何れか1態様において、前記窪み(微小窪み6,6´)の底(6a)の形状は、上面視において、円形または多角形である構成としてもよい。

【0097】
上記構成によれば、窪みの底の形状は、円形または正多角形であるので、窪みの底の中心位置が分かりやすく、窪みを形成しやすい。このため、窪みの底の中心が差動部の中心の直上に位置するように、窪みを形成することが容易である。

【0098】
なお、円形または多角形に限らず、窪みの底の形状は、発振器の感度の分布に応じて、高感度領域と重なる単純な形状であることが好ましい。

【0099】
本発明の態様5に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様1から4の何れか1態様において、前記窪み(微小窪み6,6´)の底(6a)と前記発振器(24)との間には、第2保護膜(パッシベーション膜4)が少なくとも存在する構成としてもよい。

【0100】
上記構成によれば、窪みの底と発振器との間には、少なくとも第2保護膜が存在するので、被検査体の成分(水など)の浸透を防止することができる。浸透の防止により、発振器または基板に形成されている他の素子などにおける漏電を防止することができる。

【0101】
さらに、第2保護膜の厚みを調整することにより、被検査体の物性の変化(細菌の増殖による水の誘電損の変動など)をより適切に評価することができる。

【0102】
本発明の態様6に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様5において、前記第2保護膜(パッシベーション膜4)は、パッシベーション膜(3)を含む構成としてもよい。

【0103】
上記構成によれば、基板に形成されるパッシベーション膜を第2保護膜として活用することができる。

【0104】
本発明の態様7に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様1から6の何れか1態様において、前記窪み(微小窪み6,6´)は、開口(6b)側が底(6a)側よりも広くなっている構成としてもよい。

【0105】
上記構成によれば、底の面積が同じ場合、開口側が広くなっていない窪みに比べて、開口側が広くなっているので、窪みの容積が大きい。このため、窪みの内部の領域に挿入される被検査体の体積が増えるので、窪み内部の被検査体の乾燥を防止でき、また、窪み内部にある培養のための栄養の総量を増やすことができる。

【0106】
本発明の態様8に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様1から7の何れか1態様において、前記発振器(24)および前記窪み(微小窪み6,6´)は、複数であり、複数の前記窪みはそれぞれ、複数の前記発振器のそれぞれに応じて形成されている構成としてもよい。

【0107】
上記構成によれば、センサ装置は、発振器と窪みとの組を複数備える。このため、その組数に応じて、複数の被検査体を一度に検査することができる。

【0108】
本発明の態様9に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様1から8の何れか1態様において、さらに、容器(31)を少なくとも1つ備え、前記容器の底の少なくとも一部は、前記基板(半導体基板1)であり、前記第1保護膜(被覆膜5)は、前記容器の内側に位置する構成としてもよい。

【0109】
上記構成によれば、窪みが形成されている第1保護膜は、容器の底に位置するので、第1保護膜上に窪みを超えて(窪みの内部に入る場合を含む)、培地などを留保することができる。このため、窪みの内部の培地の乾燥を防止できる。

【0110】
本発明の態様10に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様9において、前記容器(31)は、複数であり、複数の前記容器のそれぞれに、前記発振器(24)が少なくとも1つ含まれ、前記窪み(微小窪み6,6´)が少なくとも1つ含まれる構成としてもよい。

【0111】
上記構成によれば、複数の容器を備え、各容器に発振器と窪みとの組を備えるので、容器ごとに異なる選択性培地を被検査体に用いることができる。選択性培地により、一度の検査で、被検査体に含まれる検査対象を特定することができる。

【0112】
本発明の態様11に係るセンサ装置(集積回路センサ10)は、上記の態様9または10において、上面視において、前記容器(31)の面積は、前記窪み(微小窪み6,6´)の面積に比べて大きい構成としてもよい。

【0113】
上記構成によれば、容器の面積が窪みの面積に比べて大きい。半導体基板の上に、集積回路技術により作製される発振器も窪みも、微小であり、視認性が極めて低い。一方、容器は窪みよりも極めて大きいので、人間が十分に視認できる。このため、例えば、窪みが形成されている側の基板の面が分かりやすくなるなど、センサ装置を用いる検査の作業性を向上させることができる。

【0114】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、被検査体の物性(複素誘電率および複素透磁率)の変化の検査に利用することができる。本発明は、被検査体の物性の変化を通じて、被検査体に含まれる検査対象を検査する検査方法に利用することができる。具体的には、例えば、本発明は、細菌または細胞などを含む培養液の検査、および、生体分子または生体高分子を含む試料の検査などに利用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 半導体基板(基板)
2 配線層
3 最上位層メタル
4 パッシベーション膜(第2護膜)
5 被覆膜(第1保護膜)
6,6´ 微小窪み(窪み)
6a 底
6b 開口
6c 段
10 集積回路センサ(センサ装置)
20 エレメント
21,121 トランジスタ
22,122 差動電極部(差動部)
22a,122a 中心
23,23´,123 インダクタ
24,124 発振器
30 培地(被検査体)
31 容器
132 樹脂針
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6