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明細書 :バッテリのパラメータ推定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-198542 (P2017-198542A)
公開日 平成29年11月2日(2017.11.2)
発明の名称または考案の名称 バッテリのパラメータ推定装置
国際特許分類 G01R  31/36        (2006.01)
H02J   7/00        (2006.01)
H01M  10/48        (2006.01)
FI G01R 31/36 A
H02J 7/00 Q
H01M 10/48 P
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2016-089505 (P2016-089505)
出願日 平成28年4月27日(2016.4.27)
発明者または考案者 【氏名】馬場 厚志
【氏名】足立 修一
【氏名】丸田 一郎
出願人 【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100164471、【弁理士】、【氏名又は名称】岡野 大和
【識別番号】100195534、【弁理士】、【氏名又は名称】内海 一成
審査請求 未請求
テーマコード 2G216
5G503
5H030
Fターム 2G216AB01
2G216BA03
2G216BA22
2G216BA44
2G216BA54
2G216CB13
2G216CB51
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA09
5H030AA03
5H030AA09
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
要約 【課題】ヒステリシスモデルに係るパラメータの推定精度と過電圧モデルに係るパラメータの推定精度とをそれぞれ向上させることができるバッテリのパラメータ推定装置を提供する。
【解決手段】過電圧モデルとヒステリシスモデルとを備えるバッテリ4の等価回路モデル21のパラメータを推定するバッテリのパラメータ推定装置1において、バッテリ4に第1の振幅を有する第1の電流と、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅を有する第2の電流とをそれぞれ入力し、第1の電流に応じたバッテリ4の出力に基づいて、過電圧モデルに係るパラメータを推定し、第2の電流に応じたバッテリ4の出力に基づいて、ヒステリシスモデルに係るパラメータを推定することを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
過電圧モデルとヒステリシスモデルとを備えるバッテリの等価回路モデルのパラメータを推定するバッテリのパラメータ推定装置において、
前記バッテリに第1の振幅を有する第1の電流と、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅を有する第2の電流とをそれぞれ入力し、
前記第1の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記過電圧モデルに係るパラメータを推定し、
前記第2の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記ヒステリシスモデルに係るパラメータを推定することを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記第1の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記ヒステリシスモデルに係るパラメータを固定しつつ、前記過電圧モデルに係るパラメータを推定することを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記第2の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記過電圧モデルに係るパラメータを固定しつつ、前記ヒステリシスモデルに係るパラメータを推定することを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記ヒステリシスモデルに係るパラメータの推定と、前記過電圧モデルに係るパラメータの推定とを交互に繰り返すことを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記バッテリに入力される電流は、M系列信号であることを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記ヒステリシスモデルに係るパラメータは、前記ヒステリシスモデルにおける、電圧降下の最大範囲及び入力電流の特性により関連付けられるヒステリシス抵抗を含むことを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記ヒステリシスモデルに係るパラメータは、前記ヒステリシスモデルにおける、電圧降下の最大範囲及び電圧降下の速さの特性により関連付けられるヒステリシス容量を含むことを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項8】
請求項6に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記電圧降下の最大範囲をM(t)、前記入力電流をu(t)とした場合に、前記ヒステリシス抵抗Rh(t)を式
【数1】
JP2017198542A_000037t.gif
で表すことを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項9】
請求項7に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記電圧降下の最大範囲をM(t)、前記電圧降下の速さをΓ(t)とした場合に、前記ヒステリシス容量Ch(t)を式
【数2】
JP2017198542A_000038t.gif
で表すことを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項10】
請求項8に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記ヒステリシス抵抗Rh(t)を式
【数3】
JP2017198542A_000039t.gif
で表すことを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
【請求項11】
請求項8に記載のバッテリのパラメータ推定装置において、
前記ヒステリシス抵抗Rh(t)を式
【数4】
JP2017198542A_000040t.gif
で表すことを特徴とするバッテリのパラメータ推定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリのパラメータ推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの内部状態又は等価回路モデルのパラメータを推定する装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載のバッテリのパラメータ推定装置は、バッテリの充放電電流および端子電圧を検出し、これらを入力として、抵抗と容量を含むバッテリの等価回路モデルを用いてカルマンフィルタでそのパラメータやバッテリの内部状態、及び開回路電圧を推定(算出)する。
【0003】
上述のバッテリの等価回路モデルにおいて、過電圧に関するモデル(過電圧モデル)を用いてバッテリのSOC-OCV特性を表すことができる。しかしながら、実際のバッテリでは充電後と放電後とでSOC-OCV特性が異なるヒステリシス現象が発生することがある。この場合にはバッテリのSOC-OCV特性を正確に表すことができない。ヒステリシス現象は電極の材料により発生し、特にリン酸リチウムを用いた場合にはヒステリシス現象の影響が大きく出る。
【0004】
ここで、バッテリのヒステリシス現象を取り扱うためにバッテリの等価回路にヒステリシスによる電圧降下を表すヒステリシス素子を付け加えたモデル(ヒステリシスモデル)が提案されている。バッテリのヒステリシス現象とは、バッテリの充放電に伴う状態の変動において、その変動の履歴によってバッテリの平衡状態が変動することを言う。ヒステリシスのないバッテリでは、バッテリの充放電の履歴にかかわらず、ある程度の時間放置することによって元の平衡状態に戻る。一方で、ヒステリシスのあるバッテリでは、バッテリの充放電の履歴によっては、いくら放置しても元の平衡状態に戻らないことがある。
【0005】
ヒステリシスモデルを考慮して、バッテリの内部状態又は等価回路モデルのパラメータを推定する装置として、例えば特許文献2、非特許文献1に記載のものが知られている。特許文献2、非特許文献1では、バッテリのヒステリシスモデルに係るパラメータを、SOC等とあわせてカルマンフィルタで同時推定している。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2014-74682号公報
【特許文献2】特許第4511600号公報
【0007】

【非特許文献1】G. L. Plett: "Extended Kalman filtering for battery management systems of LiPB-based HEV battery packs Part 2. Modeling and identification", Journal of Power Sources 134 (2004) 262-276
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2、非特許文献1では、ヒステリシスの性質を考慮せずに任意の入力をバッテリの等価回路に加えて、ヒステリシスモデルに係るパラメータを推定している。この場合、ヒステリシスによって生じる電圧降下が相対的に小さい場合にもヒステリシスモデルに係るパラメータを推定することで、推定精度が落ちることがある。一方で、過電圧モデルによって生じる電圧降下が相対的に小さい場合に過電圧モデルに係るパラメータを推定することで、推定精度が落ちることがある。また、任意の入力から推定するために、カルマンフィルタとして、UKF(Unscented Kalman Filter)等の高度なものを用いる必要がある。
【0009】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、ヒステリシスモデルに係るパラメータの推定精度と過電圧モデルに係るパラメータの推定精度とをそれぞれ向上させることができるバッテリのパラメータ推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
過電圧モデルとヒステリシスモデルとを備えるバッテリの等価回路モデルのパラメータを推定するバッテリのパラメータ推定装置において、
前記バッテリに第1の振幅を有する第1の電流と、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅を有する第2の電流とをそれぞれ入力し、
前記第1の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記過電圧モデルに係るパラメータを推定し、
前記第2の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記ヒステリシスモデルに係るパラメータを推定することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、第2の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記第1の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記ヒステリシスモデルに係るパラメータを固定しつつ、前記過電圧モデルに係るパラメータを推定することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために、第3の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記第2の電流に応じた前記バッテリの出力に基づいて、前記過電圧モデルに係るパラメータを固定しつつ、前記ヒステリシスモデルに係るパラメータを推定することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、第4の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記ヒステリシスモデルに係るパラメータの推定と、前記過電圧モデルに係るパラメータの推定とを交互に繰り返すことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、第5の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記バッテリに入力される電流は、M系列信号であることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、第6の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記ヒステリシスモデルに係るパラメータは、前記ヒステリシスモデルにおける、電圧降下の最大範囲及び入力電流の特性により関連付けられるヒステリシス抵抗を含むことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、第7の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記ヒステリシスモデルに係るパラメータは、前記ヒステリシスモデルにおける、電圧降下の最大範囲及び電圧降下の速さの特性により関連付けられるヒステリシス容量を含むことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために、第8の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記電圧降下の最大範囲をM(t)、前記入力電流をu(t)とした場合に、前記ヒステリシス抵抗Rh(t)を式
【数1】
JP2017198542A_000003t.gif
で表すことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、第9の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記電圧降下の最大範囲をM(t)、前記電圧降下の速さをΓ(t)とした場合に、前記ヒステリシス容量Ch(t)を式
【数2】
JP2017198542A_000004t.gif
で表すことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために、第10の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記ヒステリシス抵抗Rh(t)を式
【数3】
JP2017198542A_000005t.gif
で表すことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するために、第11の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置は、
前記ヒステリシス抵抗Rh(t)を式
【数4】
JP2017198542A_000006t.gif
で表すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、ヒステリシスモデルに係るパラメータの推定精度と過電圧モデルに係るパラメータの推定精度とをそれぞれ向上させることができる。
【0022】
第2の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、パラメータの推定値をより効率よく真値に近づけることができる。
【0023】
第3の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、パラメータの推定値をより効率よく真値に近づけることができる。
【0024】
第4の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、パラメータの推定値をより速く真値に近づけることができる。
【0025】
第5の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、ヒステリシスモデルを線形モデルとして取り扱うことができ、且つ、広い周波数帯域を取り扱うことができる。
【0026】
第6の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、バッテリの等価回路にヒステリシス素子を増やすことなくヒステリシス現象を扱える。
【0027】
第7の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、バッテリの等価回路にヒステリシス素子を増やすことなくヒステリシス現象を扱える。
【0028】
第8の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、バッテリの等価回路にヒステリシス素子を増やすことなくヒステリシス現象を扱える。
【0029】
第9の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、バッテリの等価回路にヒステリシス素子を増やすことなくヒステリシス現象を扱える。
【0030】
第10の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、より正確な推定値をより速く算出できる。
【0031】
第11の観点に係るバッテリのパラメータ推定装置によれば、より簡易なモデル構成とすることができ、ヒステリシス現象の取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1に係るパラメータ推定装置の構成例の機能ブロック図である。
【図2】n次のRC梯子回路(A)フォスタ型(B)カウエル型である。
【図3】リン酸鉄リチウムイオン電池のSOC-OCV特性の測定結果の例である。
【図4】Plettによるヒステリシスモデルの等価回路である。
【図5】可変抵抗Rhと可変容量Chによって構成されるRC並列回路である。
【図6】パラメータ感度プロットの一例である。
【図7】入力電流の振幅の大きさとパラメータの推定精度との関係の例である。
【図8】入出力データに基づくパラメータ推定方法の一例である。
【図9】入力信号に応じたパラメータに限定した推定手順の一例である。
【図10】図8の方法を繰り返したときの推定値の変動の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施形態1)
以下、実施形態1に係るバッテリのパラメータ推定装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係るバッテリのパラメータ推定装置は、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車両に用いられる。このような車両には、車両を駆動する電気モータ、バッテリ、これらのコントローラなどが搭載され、電気モータへの電力の供給(放電)や制動時における電気モータからの制動エネルギの回生、地上充電設備からのバッテリへの電力回収(充電)が行われる。このような充放電電流のバッテリへの出入りがあると、バッテリの内部状態が変化していき、この内部状態をバッテリのパラメータ推定装置で推定しながらモニタしていくことで、バッテリの残量など必要な情報を収集している。

【0034】
[機能ブロック]
図1に示されるように、パラメータ推定装置1は、パラメータ推定部10と、記憶部20と、充電率算出部30と、電荷量算出部40と、健全度算出部50とを備える。パラメータ推定部10は、電流センサ(入力検出部)2及び電圧センサ(出力検出部)3を介してバッテリ4に接続される。パラメータ推定部10は、電源装置5に接続される。

【0035】
電流センサ2は、バッテリ4に入力される電流(充放電電流)を検出して、検出した充放電電流をパラメータ推定部10に対して出力する。電圧センサ3は、バッテリ4から出力される電圧(端子電圧)を検出して、検出した端子電圧をパラメータ推定部10に対して出力する。

【0036】
バッテリ4は、例えばリチャージャブル・バッテリ(二次電池)である。バッテリ4は、本実施の形態においてリチウム・イオン・バッテリであるものとして説明するが、他の種類のバッテリであってもよい。

【0037】
電源装置5は、例えば電流源であり、パラメータ推定部10からの指示に応じて、バッテリ4に所定の波形を有する電流を入力する。

【0038】
パラメータ推定部10は、出力予測部11と、誤差算出部12と、パラメータ更新部13とを備える。パラメータ推定部10は、例えばプロセッサ又はマイクロコンピュータ等で構成される。出力予測部11、誤差算出部12及びパラメータ更新部13は、それぞれ別個のチップとして構成されてもよいし、1チップにまとめて構成されてもよい。

【0039】
記憶部20は、例えば半導体メモリ又は磁気記憶装置等で構成される。記憶部20は、バッテリ等価回路モデル21を格納する。記憶部20は、パラメータ推定装置1が取り扱うデータ又は情報等を格納してもよい。

【0040】
バッテリ等価回路モデル21は、バッテリ4の内部状態を等価回路で表したモデル(等価回路モデル)である。バッテリ等価回路モデル21は、パラメータとして、バッテリ4の開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)、並びに、バッテリ4の内部抵抗及び容量を有する。バッテリ等価回路モデル21のパラメータは、記憶部20に格納される。

【0041】
出力予測部11は、電流センサ2からバッテリ4の充放電電流(i)を取得し、記憶部20からバッテリ等価回路モデル21のパラメータを取得する。出力予測部11は、バッテリ4の充放電電流とバッテリ等価回路モデル21のパラメータとに基づいて、バッテリ4の端子電圧の予測値を算出する。

【0042】
誤差算出部12は、電圧センサ3からバッテリ4の端子電圧(v)を取得し、出力予測部11からバッテリ4の端子電圧の予測値を取得する。誤差算出部12は、電圧センサ3から取得した端子電圧と、出力予測部11から取得した端子電圧の予測値との誤差を算出する。

【0043】
パラメータ更新部13は、誤差算出部12から端子電圧の誤差を取得する。パラメータ更新部13は、端子電圧の誤差に基づいて、記憶部20に格納されているバッテリ等価回路モデル21のパラメータを更新する。

【0044】
バッテリ等価回路モデル21のパラメータは、バッテリ4の内部状態を表す。つまりパラメータ推定部10は、出力予測部11、誤差算出部12及びパラメータ更新部13を動作させることにより、バッテリ4の内部状態を推定する。

【0045】
充電率算出部30は、パラメータ推定部10で推定されたバッテリ4の内部状態に基づいて、バッテリ4の充電率(SOC:State Of Charge)を算出する。SOCは、バッテリ4の充電容量に対する充電量の比である。バッテリ4のOCVとSOCとの関係は、バッテリ4の温度又は劣化度合い等に影響されにくい。よって、バッテリ4のSOCは、予め実験等によって求められたバッテリ4のOCVとSOCとの関係、及び、パラメータ推定部10で推定されたOCVに基づいて算出されうる。本実施形態において、充電率算出部30は、上述の方法によりバッテリ4のSOCを算出する。充電率算出部30で算出されるSOCは、バッテリ4のバッテリ・マネジメントに利用される。

【0046】
電荷量算出部40は、電流センサ2からバッテリ4の充放電電流値(i)を取得する。電荷量算出部40は、充放電電流値(i)を逐次積算していくことでバッテリ4に出入りする電荷量を算出する。電荷量算出部40は、充放電電流値(i)から算出した電荷量を、逐次積算演算を開始する前にバッテリ4に充電されている電荷量(残存電荷量ともいう)から減算することで、バッテリ4に現在充電されている電荷量(現存電荷量ともいう)を算出する。

【0047】
健全度算出部50は、バッテリ4の健全度(SOH:State Of Health)を算出する。SOHは、バッテリ4の現在の満充電容量(FCC:Full Charge Capacity)が、バッテリ4の新品時のFCCに対して何%であるかを示す。バッテリ4の新品時のFCCは、既知の値である。バッテリ4の新品時のFCCは、健全度算出部50に格納されてもよいし、記憶部20に格納されてもよい。健全度算出部50は、充電率算出部30からバッテリ4のSOCを取得し、電荷量算出部40からバッテリ4の現存電荷量を取得する。健全度算出部50は、バッテリ4のSOCと現存電荷量とに基づいて、バッテリ4の現在のFCCを算出する。健全度算出部50は、バッテリ4の新品時のFCCとバッテリ4の現在のFCCとに基づいて、バッテリ4のSOHを算出する。

【0048】
健全度算出部50は、バッテリ4のSOHと、バッテリ4の現存電荷量と、バッテリ4のOCVとの関係に基づいて、バッテリ4のSOHを算出してもよい。健全度算出部50は、例えば、本出願人の出願による特開2012-57956号公報に開示されているような、所定幅で区分けしたSOHごとに現存電荷量とOCVとの関係を表わす特性表に基づいて、SOHを算出してもよい。この場合、健全度算出部50は、記憶部20に格納されたOCVの推定値と、電荷量算出部40で算出された現存電荷量とが特性表のいずれのSOHの範囲に入るのか判定し、バッテリ4のSOHを算出する。

【0049】
[バッテリ等価回路モデル]
本実施形態においては、バッテリ4の内部状態を推定するためのバッテリ等価回路モデル21として、OCV、過電圧パラメータ及びヒステリシスパラメータの3つの要素を含むモデルを考える。バッテリ等価回路モデル21は、例えば、OCVに対応する電圧源と、過電圧パラメータ及びヒステリシスパラメータにそれぞれ対応するインピーダンスとが直列に接続する開回路である。開回路に流れる電流は、バッテリ4の充放電電流(i)に対応する。開回路の両端の電圧は、バッテリ4の端子電圧(v)に対応する。

【0050】
<過電圧モデル>
過電圧パラメータは、過電圧に関するモデル(過電圧モデル)を表すパラメータである。過電圧は、バッテリ4のOCVと、バッテリ4に充放電電流が入力される際の端子電圧との差であり、バッテリ4の内部インピーダンスに起因する。バッテリ4の内部インピーダンスは、バッテリ4の電解液の電気抵抗、及び、バッテリ4の電極反応に起因するインピーダンスを含む。

【0051】
バッテリ4の電極反応は、電解液と活物質との界面における電荷移動過程と、電解液又は活物質におけるイオンの拡散過程とを含む。例えば、リチウム・イオン・バッテリ等の物理過程(non-Faradaic process)バッテリ、つまり、拡散過程が支配的なバッテリにおいては、拡散過程に起因するインピーダンスであるワールブルグインピーダンスの影響が支配的となる。

【0052】
本実施形態においては、過電圧パラメータに対応するインピーダンスとして、電解液等の抵抗を含む内部抵抗(R0)と、ワールブルグインピーダンス(Zw)とが直列に接続されるインピーダンスを想定する。

【0053】
SOCは、バッテリ4の充放電電流(i)と、バッテリ4の新品時の満充電容量(FCC0)と、バッテリ4のSOHとを用いて、式(1)で表される。
【数5】
JP2017198542A_000007t.gif

【0054】
また、ワールブルグインピーダンス(Zw)の伝達関数は、式(2)により表される。
【数6】
JP2017198542A_000008t.gif
ただし、sはラプラス演算子であり、RdはZw(s)の低周波極限(ω→0)で算出される拡散抵抗であり、τdは、拡散反応の速度に対応する拡散時定数である。また、拡散抵抗及び拡散時定数を用いた式(3)により拡散容量(Cd)が定義される。
【数7】
JP2017198542A_000009t.gif

【0055】
式(2)において、ワールブルグインピーダンス(Zw)は、ラプラス演算子(s)の平方根を含む。ワールブルグインピーダンス(Zw)を時間領域へ変換しやすくするために、ワールブルグインピーダンス(Zw)を近似する。

【0056】
<<無限級数展開>>
ワールブルグインピーダンス(Zw)は、例えば式(4)に示すように、無限級数の和として表されうる。
【数8】
JP2017198542A_000010t.gif
ただし、
【数9】
JP2017198542A_000011t.gif
である。上述の式(4)は、図2(A)に示されるような、抵抗(R1~Rn)とコンデンサ(C1~Cn)との並列回路が直列にn個接続されたn次フォスタ型回路に対応する。式(5)(6)から明らかなように、ワールブルグインピーダンス(Zw)を近似したn次のフォスタ型等価回路モデルによれば、拡散容量(Cd)及び拡散抵抗(Rd)を用いて、バッテリ等価回路モデル21の他のパラメータ(Rn又はCn等)を算出可能である。

【0057】
<<連分数展開>>
ワールブルグインピーダンス(Zw)は、式(7)に示すように、連分数展開によっても表されうる。
【数10】
JP2017198542A_000012t.gif
ただし、
【数11】
JP2017198542A_000013t.gif
である。上述の式(7)は、図2(B)に示されるような、並列に接続されたn個の抵抗(R1~Rn)のそれぞれが、直列に接続されたn個のコンデンサ(C1~Cn)の間に接続されたn次カウエル型回路に対応する。式(8)(9)から明らかなように、ワールブルグインピーダンス(Zw)を近似したn次のカウエル型等価回路モデルによれば、拡散容量(Cd)及び拡散抵抗(Rd)を用いて、バッテリ等価回路モデル21の他のパラメータ(Rn又はCn等)を算出可能である。

【0058】
<ヒステリシスモデル>
ヒステリシスパラメータは、バッテリ4のヒステリシス現象に関するモデル(ヒステリシスモデル)を表すパラメータである。バッテリ4において、充電後と放電後とでSOC-OCV特性が異なるヒステリシス現象が発生することがある。ヒステリシス現象は電極の材料により発生し、特にリン酸リチウムを用いた場合にはヒステリシス現象の影響が大きく出る。

【0059】
図3はリン酸鉄リチウムイオン電池のSOC-OCV特性の測定結果の一例である。図3(A)によれば充電時の特性と放電時の特性との間でOCVの差が生じていることが分かる。また図3(A)の破線囲み部を拡大した図3(B)において、SOCが約30%の時点で放電するようにしてもヒステリシス特性を示すことが分かる。ヒステリシス現象が発生する場合、上述の過電圧モデルだけでは、バッテリ4のSOC-OCV特性を正確に表すことができない。

【0060】
このようなヒステリシス現象を表すモデルの一つであるPlettによるヒステリシスモデルは、図4に示される等価回路で表される。ここでVHがヒステリシス電圧を表す素子である。このヒステリシスモデルは、以下の式(10)で表される。
【数12】
JP2017198542A_000014t.gif
ここで、vh(t)はヒステリシス電圧、Γ(t)はヒステリシスモデルの電圧降下の速さ(SOC-OCV曲線の傾きに相当)、M(t)はヒステリシスモデルの電圧降下の最大範囲、u(t)は入力電流を表すパラメータである。

【0061】
本来、バッテリ4のヒステリシスはバッテリ内部の電気化学反応の結果としてあらわれてくるもので、バッテリ4内部の電荷移動過程やイオンの拡散過程と密接な関係が有る。しかしながらPlettによるヒステリシスモデルは、電荷移動過程やイオンの拡散過程とは独立した反応を追加してvh(t)を表している。そのため、式(10)に基づいてバッテリ4の内部状態を推定する場合には、RC並列回路の抵抗及び容量の推定に加え、ヒステリシス電圧を表すΓ(t)及びM(t)を推定する必要がある。つまりヒステリシスを考えないモデルによる推定と比較して、推定すべきパラメータが2つ(ΓとM)増加する。

【0062】
ここで、本実施形態においては、かかる独立した反応を電荷移動過程やイオンの拡散過程に対応したモデルに統合する。ヒステリシスモデルを表す式(10)は、以下の式(11)(12)を用いて、以下の式(13)のように変形される。
【数13】
JP2017198542A_000015t.gif

【0063】
式(13)は、図5に示されるような可変抵抗(Rh)と可変容量(Ch)によって構成されるRC並列回路を表す式と同等であると解釈できる。特に式(11)で表されるように、モデルの抵抗は電流の大きさによって可変となる可変抵抗であることが特徴である。

【0064】
以上説明してきたように、ヒステリシスモデルを式(11)~(13)で表すことができる。このようにヒステリシスモデルを表すことで、ヒステリシス素子を増やすことなく、ヒステリシス現象を取り扱うことができる。

【0065】
ヒステリシスモデルに係るパラメータは、可変抵抗(Rh)及び可変容量(Ch)である。可変抵抗(Rh)は、ヒステリシス抵抗ともいう。ヒステリシス抵抗は、ヒステリシスモデルの電圧降下の最大範囲(M(t))及び入力電流(u(t))の特性により関連付けられる。可変容量(Ch)は、ヒステリシス容量ともいう。ヒステリシス容量は、ヒステリシスモデルの電圧降下の最大範囲(M(t))及びヒステリシスモデルの電圧降下の速さ(Γ(t))の特性により関連付けられる。

【0066】
[連続時間システム同定法]
本実施形態においては、バッテリ等価回路モデル21で表されるシステムに連続時間システム同定法を適用して、バッテリ等価回路モデル21のパラメータが推定される。連続時間システム同定法による推定の対象となるパラメータは、過電圧モデルのR0、Rd及びτd(Cd)、並びに、ヒステリシスモデルのRh及びChである。

【0067】
連続時間システム同定法によれば、バッテリ等価回路モデル21で表されるシステムの入出力データの関係を表す式に基づいて、各パラメータが推定される。以下、連続時間システム同定法によるパラメータ推定方法について説明する。

【0068】
<伝達関数>
u(t)が入力された場合にy(t)が出力される線形時不変システムを考える。該システムの伝達関数がG(p,θ)と表される場合、u(t)とy(t)との関係は、以下の式(14)により表される。
【数14】
JP2017198542A_000016t.gif
pは、微分演算子(d/dt)である。θは、m個のパラメータの集合(θ=[θ1・・・θm])である。θは、m次元の列ベクトルとしても表される。

【0069】
G(p,θ)は、パラメータ(θ)に関して線形な関数であるN(p,θ)及びD(p,θ)を用いて、以下の式(15)のようにも表される。
【数15】
JP2017198542A_000017t.gif
N(p,θ)は、m次元行ベクトルとして表されるn(p)=[n1(p)・・・nm(p)]に対してm次元列ベクトルとして表されるθを掛けて算出される内積である。D(p,θ)は、m次元行ベクトルとして表されるd(p)=[d1(p)・・・dm(p)]に対してm次元列ベクトルとして表されるθを掛けて算出される内積である。

【0070】
<パラメータ誤差>
伝達関数(G)に含まれるパラメータ(θ)は、連続時間システム同定法により推定される。パラメータの推定値をθ^とした場合、システムの出力の推定値(y^(t))は、以下の式(16)のように表される。
【数16】
JP2017198542A_000018t.gif
なお、数式内で用いられる、文字の上に「^」が付される記号は、明細書における表記の制約上、「y^」のように表すことがある。

【0071】
連続時間システム同定法においては、システムの出力(y(t))と、出力の推定値(y^(t))との誤差が最小となるようにパラメータ(θ)が推定される。y^(t)とy(t)との誤差は、推定誤差信号(e(t))として、以下の式(17)により定義される。
【数17】
JP2017198542A_000019t.gif

【0072】
ここでパラメータの真値(θ0)が存在してy(t)=G(p,θ0)u(t)が成り立つ場合、式(17)は、式(14)~(16)を用いて、以下の式(18)のように変形される。
【数18】
JP2017198542A_000020t.gif

【0073】
さらに式(18)は、N(p,θ)=n(p)・θ、及び、D(p,θ)=d(p)・θの関係を用いて、以下の式(19)のように変形される。
【数19】
JP2017198542A_000021t.gif

【0074】
式(19)に含まれるθ0-θ^は、パラメータ誤差を表す。パラメータ誤差をεとすると、ε=θ0-θ^となる。この場合、式(19)は、以下の式(20)のように変形される。
【数20】
JP2017198542A_000022t.gif

【0075】
ここで、部分空間の基底ベクトル(V)を式(21)のように定義する。
【数21】
JP2017198542A_000023t.gif

【0076】
式(21)のように部分空間が定義される場合、式(20)によれば、パラメータ誤差(ε)は、推定誤差信号(e(t))が基底ベクトル(V)を有する部分空間に射影されたときの射影ベクトルとなる。

【0077】
式(21)に示される基底ベクトル(V)に含まれるパラメータの真値(θ0)を、パラメータの推定値(θ^)に置き換える場合、パラメータ誤差(ε)は、以下の式(22)のように表される。
【数22】
JP2017198542A_000024t.gif
Iは単位行列である。ΔはG(p,θ0)とG(p,θ^)との差に起因する項である。

【0078】
<パラメータ推定>
式(20)~(22)により示される推定誤差信号(e(t))が最小化されるようにパラメータの推定値(θ^)を算出することにより、パラメータの推定値を真値に近づけることができる。推定誤差信号(e(t))は、例えばガウス・ニュートン法を用いた反復計算を行うことによって最小化されうる。

【0079】
ガウス・ニュートン法を用いて推定誤差信号を最小化するようにパラメータの推定値を算出するための反復計算は、例えば以下の式(23)のように表される。
【数23】
JP2017198542A_000025t.gif
上添え字のkは、k回目の反復計算で得られる値であることを示している。つまりθ^kは、k回目の反復計算で得られるパラメータの推定値である。αは、反復計算によるパラメータ推定のアルゴリズムの安定性を決めるステップ幅パラメータであり、0<α<1である。

【0080】
式(23)は、式(22)を用いて、以下の式(24)に示されるように変形される。
【数24】
JP2017198542A_000026t.gif

【0081】
式(24)で表されるシステムの平衡点は、θ^k=θ0である。該システムの伝達関数をインパルス応答のz変換の形式で表した場合、H(z)=[-α/{z-(1-α)}]×Iと表される。0<α<1である場合、H(z)の極(1-α)が単位円の内側となるので、該システムは安定であるといえる。つまり、反復計算においてθ^kが発散してしまうことなく、真値であるθ0に収束するといえる。

【0082】
<バッテリ等価回路モデルへの適用>
バッテリ4から取得される入出力データがサンプリング時刻をti(i=0、1、・・・、N)として離散的に取得される場合を考える。この場合における基底ベクトル(VD)及び推定誤差信号(eD)はそれぞれ、以下の式(25)及び(26)のように表される。
【数25】
JP2017198542A_000027t.gif

【0083】
パラメータ誤差(ε)は、式(20)で表されるe(t)及び式(21)で表されるVをそれぞれeD及びVDに置換して変形することで、例えば式(27)のように表される。
【数26】
JP2017198542A_000028t.gif
ここで、Tは転置行列を意味する。

【0084】
バッテリ等価回路モデル21のパラメータ(θ)は、OCV、過電圧パラメータ及びヒステリシスパラメータであり、以下の式(28)で表される。
【数27】
JP2017198542A_000029t.gif

【0085】
バッテリ等価回路モデル21のパラメータの推定に、式(24)で表されるシステムを適用するために、パラメータの各要素と基底ベクトルとを対応づける。ここで、式(16)の両辺をパラメータ(θ)の要素であるθjで偏微分して、以下の式(29)が導かれる。
【数28】
JP2017198542A_000030t.gif

【0086】
さらに、式(29)と式(21)とに基づいて、以下の式(30)が導かれる。
【数29】
JP2017198542A_000031t.gif

【0087】
式(30)は、基底ベクトル(V)の要素(Vj)が、出力の推定値(y^)をパラメータの各要素(θj)で偏微分したものとして表されることを示している。式(30)によって、バッテリ等価回路モデル21のパラメータと式(24)で表されるシステムの基底ベクトルとが対応づけられる。式(30)をパラメータの感度関数ともいう。

【0088】
<パラメータ感度プロット>
式(30)で示されるパラメータの感度関数から、パラメータの感度が定義される。ラプラス演算子(s)で表される伝達関数(G(s))を用いて、パラメータの各要素(θj)に対応する正規化パラメータ感度(以下、単に感度又はパラメータ感度ともいう)が式(31)のように定義される。
【数30】
JP2017198542A_000032t.gif

【0089】
パラメータが式(28)に示されるものである場合の正規化パラメータ感度は式(32)のように表される。
【数31】
JP2017198542A_000033t.gif

【0090】
正規化パラメータ感度は、周波数特性を有する。図6に例示されるように、横軸に周波数をとり、縦軸に正規化パラメータ感度をとったグラフを、パラメータ感度プロットという。

【0091】
バッテリ等価回路モデル21のパラメータを推定する場合、パラメータの各要素を同時に推定してもよい。この際、感度が高い要素ほど、精度よく推定されうる。例えば図6(A)において、R0は、広い周波数帯域において高い感度を有している。一方でChは、他の要素と比較して感度が低くなっている。この場合、R0はChよりも精度よく推定されうる。

【0092】
図6(A)において、τdは、表示されている周波数帯域の大部分で感度が低くなっているが、Ωτdで示される周波数帯域においては、比較的高い感度を有している。この場合、τdは、入出力データのうちΩτdで示される周波数帯域のデータに基づいて、比較的精度よく推定されうる。

【0093】
<入力信号の使い分け>
以上説明してきたように、連続時間システム同定法を用いて、バッテリ等価回路モデル21のパラメータを推定できる。パラメータの推定の精度を向上させるためには、正規化パラメータ感度が高い周波数帯域のデータを用いる方がよい。よって、パラメータの各要素を全て同時に推定するのではなく、感度が高いパラメータに限定して推定してもよい。

【0094】
ここで、バッテリ4に入力される電流の振幅が比較的大きい場合と、比較的小さい場合とで、それぞれ異なるパラメータ感度プロットが得られる。図6(A)には、入力電流の振幅が比較的大きい場合のパラメータ感度プロットが示される。一方で図6(B)には、入力電流の振幅が比較的小さい場合のパラメータ感度プロットが示される。

【0095】
入力電流の振幅が比較的大きい場合、図6(A)に示されるように、表示されている周波数の全帯域にわたって、R0及びRdのパラメータ感度は、比較的高い。よって、R0及びRdについては比較的精度よく推定されうる。τdのパラメータ感度は、Ωτdで示される周波数帯域において、比較的高くなっている。よって、τdについては、Ωτdで示される周波数帯域のデータに基づいて、比較的精度よく推定されうる。一方で、Rh及びChのパラメータ感度は、表示されている周波数の全帯域にわたって比較的低い。よって、Rh及びChについては、推定精度を向上させることが難しい。

【0096】
入力電流の振幅が比較的小さい場合、図6(B)に示されるように、表示されている周波数の帯域の一部において、Rh及びChのパラメータ感度は、比較的高い。例えば、Rhのパラメータ感度は、ΩRhで示される周波数帯域において、比較的高くなっている。また、Chのパラメータ感度は、ΩChで示される周波数帯域において、比較的高くなっている。よって、Rh及びChについては、それぞれΩRh及びΩChで示される周波数帯域のデータに基づいて、比較的精度よく推定されうる。一方で、Rd及びτdのパラメータ感度は、表示されている周波数の全帯域にわたって比較的低い。よって、Rd及びτdについては、推定精度を向上させることが難しい。R0のパラメータ感度は、ΩR0で示される周波数帯域において、比較的高くなっている。よって、R0については、ΩR0で示される周波数帯域のデータに基づいて、比較的精度よく推定されうる。

【0097】
以上のように、入力電流の振幅が比較的大きい場合と比較的小さい場合とで、それぞれ異なるパラメータが比較的精度よく推定されうる(図7参照)。入力電流の振幅が比較的小さい場合(図7の2行目)、ヒステリシスパラメータ(Rh及びCh)の推定精度は比較的高い。一方で、過電圧パラメータ(Rd及びτd)の推定精度は比較的低い。入力電流の振幅が比較的大きい場合(図7の3行目)、ヒステリシスパラメータ(Rh及びCh)の推定精度は比較的低い。一方で、過電圧パラメータ(Rd及びτd)の推定精度は比較的高い。

【0098】
[パラメータ推定方法]
以上説明してきたように、バッテリ4の内部状態は、連続時間システム同定法を用いて推定されうる。本実施形態に係るパラメータ推定装置1は、パラメータの各要素を同時に推定するのではなく、入力信号に応じた感度が高い要素を選択的に推定する。このようにすることで、パラメータの推定精度を向上させることができる。以下、本実施形態に係るパラメータ推定方法について説明する。

【0099】
<入力電流>
本実施形態において、バッテリ等価回路モデル21は、ヒステリシスモデルを含む。ヒステリシスモデルは、電流の大きさによって可変となる可変抵抗を含む。バッテリ等価回路モデル21に入力される電流の大きさ(絶対値)が一定である場合、式(11)で表されるヒステリシスモデルの抵抗(Rh)は時不変となる。この場合、ヒステリシスモデルは、線形時不変のモデルとして取り扱うことができるものとなる。

【0100】
入力される電流は、例えばM系列信号(Maximum Length Sequence)である。M系列信号は、振幅が一定の周期信号であり、且つ、1周期内では擬似的な乱数としての性質を示すものである。M系列信号は、その性質上、広帯域の周波数成分を含む。

【0101】
一般的なM系列信号は、0と1との2値をとるものである。本実施形態において入力されるM系列信号は、絶対値が同一である正の値と負の値との2値をとるものとする。つまりM系列信号が入力される場合、Rhは時不変となる。

【0102】
入力される電流は、M系列信号に限られず、振幅が一定の矩形波の信号であってもよい。入力される電流は、広帯域の周波数成分を含む信号であってもよいし、パラメータの推定に用いられる一部の周波数成分を含む信号であってもよい。

【0103】
<入出力データに基づくパラメータの推定>
パラメータ推定部10は、図8のフローチャートを実行して、1組の入出力データ(u(t)及びy(t))に基づく反復計算によってパラメータの推定値を算出する。

【0104】
まず、パラメータ推定部10は、電源装置5を用いて、バッテリ4に対してM系列信号の電流を入力する(ステップS1)。入力される電流は、M系列信号に限られず、他の信号であってもよい。

【0105】
続いて、パラメータ推定部10は、電流センサ2から入力電流(u(t))を取得し、電圧センサ3から端子電圧(y(t))を取得する(ステップS2)。パラメータ推定部10は、u(t)及びy(t)を所定のサンプリング時刻で取得してもよい。本実施形態においては、所定のサンプリング時刻をti(i=0、1、・・・、N)とする。パラメータ推定部10は、取得したu(t)及びy(t)のデータを記憶部20に格納してもよい。

【0106】
続いて、パラメータ推定部10は、パラメータの推定値の初期値(θ^0)を設定する(ステップS3)。ガウス・ニュートン法は、勾配法の一種であり、初期値の選択によっては局所最適解に陥るおそれもある。よって初期値は、例えばバッテリ4に関する既知の事前情報に基づいて設定される。

【0107】
続いて、パラメータ推定部10は、反復計算の回数のカウンタ(k)を0に設定する(ステップS4)。つまり、ステップS3で設定された初期値(θ^0)は、0回目の推定値である。

【0108】
続いて、パラメータ推定部10は、k回目の推定値(θ^k)に基づいて、基底(VD)と推定誤差信号(eD)とを設定する(ステップS5)。基底及び推定誤差信号は、上述の式(25)、(26)、(28)及び(30)に基づいて設定される。

【0109】
続いて、パラメータ推定部10は、(k+1)回目の反復計算(k=0の場合、1回目の反復計算)を行い、パラメータの推定値(θ^k+1)を算出する(ステップS6)。この算出は、式(22)~(24)に基づいて行われる。パラメータ推定部10は、算出した推定値を記憶部20に格納してもよい。

【0110】
続いて、パラメータ推定部10は、パラメータの推定値が収束したか判定する(ステップS7)。収束の判定は、例えば以下の式(33)を用いて行われる。
【数32】
JP2017198542A_000034t.gif
ζは、収束判定値であり、適宜設定されうる。パラメータ推定部10は、式(33)が満たされる場合に推定値が収束したと判定する。

【0111】
パラメータの推定値が収束していない場合(ステップS7:NO)、パラメータ推定部10は、反復計算の回数のカウンタ(k)に1を加える(ステップS8)。その後、パラメータ推定部10は、ステップS5に戻って、パラメータ推定の反復計算を続ける。

【0112】
パラメータの推定値が収束した場合(ステップS7:YES)、パラメータ推定部10は、図8のフローチャートの処理を終了する。図8に示される反復計算による推定結果は、ステップS6で算出された(k+1)回目の推定値(θ^k+1)である。

【0113】
<入力信号に応じたパラメータの推定>
図9は、入力信号に応じたパラメータに限定して推定するパラメータ推定方法の一例である。パラメータ推定部10は、図9のフローチャートに沿って、振幅が比較的大きい入力信号と振幅が比較的小さい入力信号とをそれぞれ使い分けて、各入力信号に対応するパラメータを推定する。

【0114】
まず、パラメータ推定部10は、電源装置5を用いて、振幅が比較的大きいM系列信号をバッテリ4に対して入力する(ステップS21)。入力される電流は、M系列信号に限られず、他の信号であってもよい。ステップS21で入力される振幅が比較的大きい電流のことを、第1の電流ともいう。第1の電流は、第1の振幅を有するものとする。

【0115】
続いて、パラメータ推定部10は、電流センサ2から入力電流(u1(t))を取得し、電圧センサ3から端子電圧(y1(t))を取得する(ステップS22)。パラメータ推定部10は、u1(t)及びy1(t)を所定のサンプリング時刻で取得してもよい。ステップS22では、図8のステップS2と同様に、所定のサンプリング時刻をti(i=0、1、・・・、N)とする。パラメータ推定部10は、取得したu1(t)及びy1(t)のデータを記憶部20に格納してもよい。

【0116】
続いて、パラメータ推定部10は、ステップS22で取得したu1(t)及びy1(t)に基づいて、図8のステップS3~S8の処理を実行して、バッテリ等価回路モデル21のパラメータを推定する(ステップS23)。u1(t)及びy1(t)は、バッテリ4に入力される電流の振幅が比較的大きい場合に対応する入出力データである。この場合、パラメータ感度プロットは、図6(A)に例示されるものと同様の傾向を有するものとなる。図6(A)によれば、過電圧パラメータ(R0、Rd、τd)の感度が比較的高い。よって、パラメータの推定精度が高められるように、パラメータ推定部10は、図8のステップS6で算出するパラメータを過電圧パラメータ(R0、Rd、τd)に限定する。一方で、パラメータ推定部10は、ヒステリシスパラメータ(Rh、Ch)を図8のステップS3で設定された初期値のまま固定する。

【0117】
続いて、パラメータ推定部10は、電源装置5を用いて、振幅が比較的小さいM系列信号をバッテリ4に対して入力する(ステップS24)。入力される電流は、ステップS21と同様にM系列信号に限られず、他の信号であってもよい。ステップS24で入力される振幅が比較的小さい電流のことを、第2の電流ともいう。第2の電流は、第2の振幅を有するものとする。第2の振幅は、上述の第1の振幅よりも小さい。

【0118】
続いて、パラメータ推定部10は、電流センサ2から入力電流(u2(t))を取得し、電圧センサ3から端子電圧(y2(t))を取得する(ステップS25)。パラメータ推定部10は、u2(t)及びy2(t)を所定のサンプリング時刻で取得してもよい。ステップS25では、ステップS22と同様に、所定のサンプリング時刻をti(i=0、1、・・・、N)とする。パラメータ推定部10は、取得したu2(t)及びy2(t)のデータを記憶部20に格納してもよい。

【0119】
続いて、パラメータ推定部10は、ステップS25で取得したu2(t)及びy2(t)に基づいて、図8のステップS3~S8の処理を実行して、バッテリ等価回路モデル21のパラメータを推定する(ステップS26)。u2(t)及びy2(t)は、バッテリ4に入力される電流の振幅が比較的小さい場合に対応する入出力データである。この場合、パラメータ感度プロットは、図6(B)に例示されるものと同様の傾向を有するものとなる。図6(B)によれば、ヒステリシスパラメータ(Rh、Ch)の感度が比較的高い。よって、パラメータの推定精度が高められるように、パラメータ推定部10は、図8のステップS6で算出するパラメータをヒステリシスパラメータ(Rh、Ch)に限定する。一方で、パラメータ推定部10は、過電圧パラメータ(R0、Rd、τd)をステップS23で算出された推定値のまま固定する。

【0120】
続いて、パラメータ推定部10は、ステップS22で取得したu1(t)及びy1(t)に基づいて、図8のステップS3~S8の処理を実行して、バッテリ等価回路モデル21の過電圧パラメータを推定する(ステップS27)。この際、図8のステップS3で設定される初期値として、ステップS23で算出された過電圧パラメータの推定値が用いられる。ヒステリシスパラメータ(Rh、Ch)は、ステップS26で算出された推定値のまま固定される。

【0121】
続いて、パラメータ推定部10は、ステップS26及びS27においてそれぞれ算出された過電圧パラメータ及びヒステリシスパラメータの推定値が収束したか判定する(ステップS28)。パラメータ推定部10は、例えば、ステップS26及びS27の処理の前後の推定値の差が、所定の値未満となった場合に、推定値が収束したと判定する。収束判定の方法は、これに限られない。例えば、推定値の変化から、最終的な収束値を予測して、収束したものとみなしてもよい。

【0122】
パラメータの推定値が収束していない場合(ステップS28:NO)、パラメータ推定部10は、ステップS26に戻って、パラメータ推定を続ける。この場合、過電圧パラメータの推定とヒステリシスパラメータの推定とが交互に行われることとなる。パラメータの一部が収束した場合、収束したパラメータを除いて推定を続けてもよいし、収束したパラメータも含めて推定を続けてもよい。

【0123】
パラメータの推定値が収束した場合(ステップS28:YES)、パラメータ推定部10は、図9のフローチャートの処理を終了する。図9に示される処理によるパラメータの推定結果は、ステップS26及びS27で算出された推定値である。

【0124】
図9のフローチャートの処理において、パラメータ推定部10は、ステップS26における過電圧パラメータの推定を繰り返す際に、既に取得した入出力データ(u1(t)及びy1(t))を再取得せずにそのまま利用している。パラメータ推定部10は、再度バッテリ4に電流信号を入力して、入出力データ(u1(t)及びy1(t))を再取得してもよい。

【0125】
図9のフローチャートの処理において、パラメータ推定部10は、過電圧パラメータとヒステリシスパラメータとを交互に推定する。パラメータ推定部10は、過電圧パラメータとヒステリシスパラメータとのいずれか一方を連続して推定してもよい。

【0126】
図9のフローチャートの処理において、パラメータ推定部10は、ステップS27におけるヒステリシスパラメータの推定を繰り返す際に、既に取得した入出力データ(u2(t)及びy2(t))を再取得せずにそのまま利用している。パラメータ推定部10は、再度バッテリ4に電流信号を入力して、入出力データ(u2(t)及びy2(t))を再度取得してもよい。パラメータ推定部10は、振幅が比較的大きい電流信号と振幅が比較的小さい電流信号とを交互にバッテリ4に入力してもよい。パラメータ推定部10は、振幅が比較的大きい電流信号と振幅が比較的小さい電流信号とのいずれか一方を連続してバッテリ4に入力してもよい。

【0127】
図9のフローチャートの処理において、パラメータ推定部10は、第2の電流よりも先に第1の電流をバッテリ4に入力している。パラメータ推定部10は、第1の電流よりも先に第2の電流をバッテリ4に入力してもよい。

【0128】
図9のフローチャートの処理において、パラメータ推定部10は、ヒステリシスパラメータよりも先に過電圧パラメータを推定している。パラメータ推定部10は、過電圧パラメータよりも先にヒステリシスパラメータを推定してもよい。

【0129】
図9のフローチャートの処理において、OCVの推定は、ステップS26で行われてもよいし、ステップS27で行われてもよいし、両方のステップでそれぞれ行われてもよい。R0の推定についても、ステップS26で行われてもよいし、ステップS27で行われてもよいし、両方のステップでそれぞれ行われてもよい。

【0130】
<推定精度及び収束の速さ>
本実施形態に係るパラメータ推定装置1は、図8及び図9に示されるフローチャートの処理を実行して、バッテリ等価回路モデル21のパラメータを推定できる。本実施形態に係るパラメータ推定方法によれば、パラメータの推定精度を高くでき、且つ、推定値の収束を速くすることができる。

【0131】
図10は、図8のパラメータ推定方法を繰り返したときの推定値の変動の一例である。図10(A)は、ヒステリシスパラメータの一つであるChの推定値の変動を示す。図10(B)は、過電圧パラメータの一つであるRdの推定値の変動を示す。図10において、パラメータの真値は、一点鎖線で示される。本実施形態に係るパラメータ推定方法による推定値の変動は、実線で示される。比較例に係る推定値の変動は、破線で示される。

【0132】
<<ヒステリシスパラメータの推定値>>
図10(A)を参照して、Chの推定値の変動について説明する。比較例の一つは、振幅が比較的小さい電流信号を入力した場合に取得される入出力データのみに基づいてChを推定する場合である。この場合、図10(A)によれば、Chの推定値(破線で示される)は、パラメータ推定を繰り返すことで真値に徐々に近づく。

【0133】
他の比較例は、振幅が比較的大きい電流信号を入力した場合に取得される入出力データのみに基づいてパラメータを推定する場合である。この場合も、図10(A)によれば、Chの推定値(破線で示される)は、パラメータ推定を繰り返すことで真値に徐々に近づく。

【0134】
一方で、本実施形態に係るパラメータ推定方法により算出されたChの推定値(実線で示される)は、図10(A)によれば、比較例に係るChの推定値(破線で示される)よりも真値に近く、比較例よりも真値に速く近づく。

【0135】
<<過電圧パラメータの推定値>>
図10(B)を参照して、Rdの推定値の変動について説明する。比較例の一つは、振幅が比較的小さい電流信号を入力した場合に取得される入出力データのみに基づいてパラメータを推定する場合である。この場合、図10(B)によれば、Rdの推定値(破線で示される)は、パラメータ推定を繰り返すことで真値に徐々に近づくが、真値から大きく異なる値に収束する。

【0136】
他の比較例は、振幅が比較的大きい電流信号を入力した場合に取得される入出力データのみに基づいてパラメータを推定する場合である。この場合、図10(B)によれば、Rdの推定値(破線で示される)は、パラメータ推定を繰り返すことで真値に徐々に近づく。

【0137】
一方で、本実施形態に係るパラメータ推定方法により算出されたRdの推定値(実線で示される)は、図10(B)によれば、比較例に係るRdの推定値よりも真値に速く近づく。

【0138】
以上説明してきたように、本実施形態に係るパラメータ推定装置1によれば、推定しようとするパラメータに応じて入力電流を選択して、パラメータの推定精度を向上させることができる。また、本実施形態に係るパラメータ推定装置1によれば、パラメータの推定値を効率よく真値に近づけることができる。また、本実施形態に係るパラメータ推定装置1によれば、パラメータの推定値をより速く真値に近づけることができる。

【0139】
(実施形態2)
実施形態1では、ヒステリシスモデルのパラメータの一つであるRhを式(11)の形式で表した。実施形態2では、Rhを表す形式として式(11)以外の形式を用いる場合について説明する。実施形態1と重複する説明については省略する。

【0140】
式(11)ではヒステリシスモデルの可変抵抗(Rh)が入力電流(u(t))の絶対値|u(t)|を分母とする関数で表される。一方、ヒステリシス現象をさらに正確に取り扱うために、可変抵抗(Rh)を表す式の分母を入力電流(u(t))の関数として拡張して表すことが考えられる。ここで、入力電流(u(t))の関数として、f(|u(t)|)を定義する。関数f(x)は入力xに対する出力を表し、入力xと出力f(x)の関係は任意に定められる。関数f(|u(t)|)を用いて可変抵抗(Rh)を表すと、以下の式(34)のようになる。
【数33】
JP2017198542A_000035t.gif
式(34)においても、モデルの抵抗は電流の大きさによって可変となる可変抵抗であることが特徴である。

【0141】
関数f(x)の形式の一つに一次関数がある。これは、f(x)=αx+βと表す形式であり、α及びβは定数である。この形式で可変抵抗(Rh)を表すと、式(35)のようになる。
【数34】
JP2017198542A_000036t.gif
式(35)においてβ>0であれば、u(t)=0の場合に可変抵抗(Rh)は有限の値をとる。すなわち可変抵抗(Rh)を推定するときに無限大に発散することがなくモデルが安定し、実際のモデルに近づく。また式(35)においてβ=1であれば、u(t)=0の場合にRh(t)=M(t)となるため、モデルのパラメータの理解が容易になる。このように本実施形態に係るパラメータ推定装置1によれば、ヒステリシスを正確に扱えるため、より早く正確な推定値を得ることができる。特に、f(|u(t)|)=α|u(t)|+βと表す形式とした式(35)のモデルによれば、より早く正確な推定値を得ることができる。

【0142】
さらに式(35)においてα=1、β=0とすれば、f(|u(t)|)=|u(t)|であり、式(11)の形式でモデルを表すこととなる。これによりモデル構成がより簡易にできるため、より容易にヒステリシス現象を取り扱うことができる。

【0143】
以上、関数f(x)の形式として一次関数について説明したが、これに限られない。二次関数などの多項式であってもよいし、有理関数、無理関数、対数関数や指数関数などであってもよい。いずれの形式であっても、バッテリ4の等価回路にヒステリシス素子を増やすことなくヒステリシスを扱うことができ、ヒステリシス特性に則したモデルとして係数を選ぶことにより正確な推定値を得ることができる。

【0144】
本発明を諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正をおこなうことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部およびステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。

【0145】
例えば、上述の実施形態において、ワールブルグインピーダンス(Zw)を無限級数展開又は連分数展開により近似したが、任意の方法で近似してもよい。例えば、無限乗積展開を用いて近似することが考えられる。
【符号の説明】
【0146】
1 パラメータ推定装置
2 電流センサ(入力検出部)
3 電圧センサ(出力検出部)
4 バッテリ
5 電源装置
10 パラメータ推定部
11 出力予測部
12 誤差算出部
13 パラメータ更新部
20 記憶部
21 バッテリ等価回路モデル
30 充電率算出部
40 電荷量算出部
50 健全度算出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9