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明細書 :センサ素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-004356 (P2018-004356A)
公開日 平成30年1月11日(2018.1.11)
発明の名称または考案の名称 センサ素子
国際特許分類 G01N  27/00        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
FI G01N 27/00 J
H01L 29/78 617M
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2016-129111 (P2016-129111)
出願日 平成28年6月29日(2016.6.29)
発明者または考案者 【氏名】内田 建
【氏名】寺尾 潤
【氏名】高橋 綱己
出願人 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100113435、【弁理士】、【氏名又は名称】黒木 義樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査請求 未請求
テーマコード 2G060
5F110
Fターム 2G060AA01
2G060AB15
2G060AE19
2G060DA02
2G060DA06
2G060DA09
2G060DA12
2G060DA27
2G060JA01
2G060KA01
5F110AA03
5F110BB09
5F110BB13
5F110DD05
5F110DD13
5F110EE08
5F110FF02
5F110GG02
5F110GG12
5F110GG22
5F110GG25
5F110GG32
5F110GG34
5F110GG58
5F110HJ01
5F110HJ13
5F110HJ23
5F110HL02
5F110HL03
5F110HL11
5F110HL22
5F110HL27
5F110NN04
5F110NN23
5F110NN37
5F110NN71
要約 【課題】寄生抵抗を低減させると共に特性ばらつきを抑制しつつ、感度を向上させる。
【解決手段】センサ素子1は、導電性の支持基板2と、支持基板2上に設けられた第1絶縁層3と、第1絶縁層3上に設けられ、n型又はp型の導電型を有する半導体からなるチャネル部4と、チャネル部4に電気的に接続されたソース電極部5及びドレイン電極部6と、チャネル部4上に設けられた第2絶縁層7と、第2絶縁層7のチャネル部4とは反対側に設けられ、気体分子Mを捕捉する受容部10と、を備え、チャネル部4の幅Wは厚さZの2倍以上であり、ソース電極部5及びドレイン電極部6は、チャネル部4の半導体の導電型と同じ導電型であると共にチャネル部4と比較して不純物密度の高い半導体からなる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
気体分子を検出するセンサ素子であって、
導電性の支持基板と、
前記支持基板上に設けられた第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に設けられ、n型又はp型の導電型を有する半導体からなるチャネル部と、
前記チャネル部の一端に電気的に接続されたソース電極部と、
前記チャネル部の他端に電気的に接続されたドレイン電極部と、
前記チャネル部上に設けられた第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の前記チャネル部とは反対側に設けられ、前記気体分子を捕捉する受容部と、を備え、
前記ソース電極部から前記ドレイン電極部に向かう方向において、前記チャネル部の幅は、前記チャネル部の厚さの2倍以上であり、
前記ソース電極部及び前記ドレイン電極部は、前記チャネル部の半導体の導電型と同じ導電型であると共に前記チャネル部と比較して不純物密度の高い半導体からなる、センサ素子。
【請求項2】
前記厚さは、前記チャネル部のデバイ長の8倍以下である、請求項1記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記受容部は、前記気体分子との間で超分子相互作用を示すことにより当該気体分子を捕捉する化合物である、請求項1又は2記載のセンサ素子。
【請求項4】
前記受容部は、環状構造を有する有機化合物である、請求項3記載のセンサ素子。
【請求項5】
前記第2絶縁層と前記受容部との間に単分子層を更に備える、請求項1~4の何れか一項記載のセンサ素子。
【請求項6】
前記受容部を浸漬させる有機溶媒を更に備える、請求項1~5の何れか一項記載のセンサ素子。
【請求項7】
前記チャネル部の半導体の導電型がn型である場合において、前記ソース電極部に対する前記支持基板の電位がフラットバンド電圧より小さくなるように、前記支持基板と前記ソース電極部との間に電圧を印加可能、又は、前記チャネル部の半導体の導電型がp型である場合において、前記ソース電極部に対する前記支持基板の電位がフラットバンド電圧より大きくなるように、前記支持基板と前記ソース電極部との間に電圧を印加可能な電源部を更に備える、請求項1~6の何れか一項記載のセンサ素子。
【請求項8】
前記電源部は、前記支持基板と前記ソース電極部との間に印加する前記電圧の正負を逆転可能なスイッチ部を有する、請求項7記載のセンサ素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体分子を検出するためのセンサ素子(ガスセンサ)が知られている。センサ素子は、その用途の一例として、特定の疾病に罹患した患者の呼気中に多く含まれる揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)を検出することによって、当該疾病の早期判断に利用される。センサ素子は、より精度良く気体分子を検出することを可能とするために、感度を向上させることが望まれている。
【0003】
上述したセンサ素子として、例えば非特許文献1~3には、ゲート電極として機能する導電性の支持基板と、支持基板上に設けられた絶縁層と、絶縁層の上面に沿って延在し、表面に絶縁性の酸化膜を有するシリコンナノワイヤと、シリコンナノワイヤの一端に電気的に接続された金属からなるソース電極と、シリコンナノワイヤの他端に電気的に接続された金属からなるドレイン電極と、シリコンナノワイヤの酸化膜に設けられた受容部と、を備えるセンサ素子が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Yair Paska, Thomas Stelzner,Silke Christiansen, Hossam Haick、“Enhanced Sensing ofNonpolar Volatile Organic Compounds by Silicon Nanowire Field EffectTransistors”、ACS NANO、2011、Vol. 5、No. 7、p. 5620-5626
【非特許文献2】Bin Wang, Hossam Haick、“Effect of Functional Groups on the Sensing Properties of SiliconNanowires toward Volatile Compounds”、ACS Appl. Mater.Interfaces、2013、Vol. 5、p. 2289-2299
【非特許文献3】Bin Wang, Hossam Haick、“Effect of Chain Length on the Sensing of Volatile Organic Compoundsby means of Silicon Nanowires”、ACS Appl. Mater.Interfaces、2013、Vol. 5、p. 5748-5756
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したセンサ素子においては、より感度を向上させる観点から、ソース電極、シリコンナノワイヤ、及びドレイン電極における寄生抵抗を低減させることが望まれている。また、上述したセンサ素子では、シリコンナノワイヤの表面の形状及び方位を揃えることが難しいこと、及び、品質を確保することの難しいシリコンナノワイヤの側面にも多くの受容部が設けられてしまうことから、特性ばらつきが生じ易い。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、寄生抵抗を低減させると共に特性ばらつきを抑制しつつ、感度を向上させることができるセンサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンサ素子は、気体分子を検出するセンサ素子であって、導電性の支持基板と、支持基板上に設けられた第1絶縁層と、第1絶縁層上に設けられ、n型又はp型の導電型を有する半導体からなるチャネル部と、チャネル部の一端に電気的に接続されたソース電極部と、チャネル部の他端に電気的に接続されたドレイン電極部と、チャネル部上に設けられた第2絶縁層と、第2絶縁層のチャネル部とは反対側に設けられ、気体分子を捕捉する受容部と、を備え、ソース電極部からドレイン電極部に向かう方向において、チャネル部の幅は、チャネル部の厚さの2倍以上であり、ソース電極部及びドレイン電極部は、チャネル部の半導体の導電型と同じ導電型であると共にチャネル部と比較して不純物密度の高い半導体からなる。
【0008】
このセンサ素子では、受容部が気体分子を捕捉するとドレイン電極部とソース電極部との間のドレイン電流が変化することを利用して、気体分子が検出される。ここで、センサ素子では、ソース電極部、チャネル部、及びドレイン電極部の半導体の導電型が互いに同じである。このため、ゲート電極として機能する支持基板とソース電極部との間にゲート-ソース間電圧が印加されると、チャネル部において、支持基板側から支持基板とは反対側に向かって空乏層が形成される。ここで、ゲート-ソース間電圧は、ソース電極部の電位を基準とした支持基板の電位である。上記のように空乏層が形成されると、キャリアは、チャネル部において、支持基板とは反対側の端面付近の領域であって、空乏層が形成されていない領域のみを通過することとなる。このような状態において受容部が気体分子を捕捉すると、受容部の分極状態が変化し、チャネル部の支持基板とは反対側の端面付近の領域の電界が変化して、その結果、チャネル部の空乏層が形成される領域が変化する。このように、ソース電極部、チャネル部、及びドレイン電極部の半導体の導電型が互いに同じであることから、チャネル部において、キャリアが通過する領域と、受容部が気体分子を捕捉したことによって空乏層が影響を受ける領域とを近づけることができる。これにより、受容部が気体分子を捕捉した場合にドレイン電流が変化し易くなるため、当該センサ素子の感度を向上させることができる。また、センサ素子では、ソース電極部及びドレイン電極部の半導体の不純物密度がチャネル部の半導体の不純物密度よりも高い。このことに起因して、ソース電極部とソース配線との境界、及び、ドレイン電極部とドレイン配線との境界における寄生抵抗が低減されると共に、ソース電極部及びドレイン電極部の半導体の不純物密度を通常よりも高くしてソース電極部内及びドレイン電極部内における寄生抵抗を低減することができる。また、センサ素子では、チャネル部は、表面の形状及び方位を揃えることが難しいシリコンナノワイヤではないため、当該センサ素子の特性ばらつきが生じ難い。また、センサ素子では、チャネル部の幅が厚さの2倍以上であることから、チャネル部の上面の面積が側面の面積以上となる。このため、チャネル部の上面及び側面の両方に受容部が設けられた場合に、当該センサ素子の特性ばらつきに影響し易いチャネル部の側面に設けられた受容部の効果と比較して、当該センサ素子の特性ばらつきに影響し難いチャネル部の上面に設けられた受容部の効果が同等以上になる。従って、当該センサ素子の特性ばらつきが生じ難い。以上により、寄生抵抗を低減すると共に特性ばらつきを抑制しつつ、感度を向上させることができるセンサ素子を提供することが可能となる。
【0009】
本発明のセンサ素子では、厚さは、チャネル部のデバイ長の8倍以下であってもよい。ここで、例えばチャネル部の半導体材料として不純物を含むシリコンを用いる場合に、ゲート電極として機能する支持基板とソース電極部との間にゲート-ソース間電圧が印加されると、チャネル部において、支持基板側から支持基板とは反対側に向かってデバイ長の約8倍の深さまで空乏層が形成される。このため、上記構成によれば、チャネル部において、キャリアが通過する領域と、受容部が気体分子を捕捉したことによって空乏層が影響を受ける領域とを近づけることができる。従って、当該センサ素子の感度を向上させることができる。
【0010】
本発明のセンサ素子では、受容部は、気体分子との間で超分子相互作用を示すことにより当該気体分子を捕捉する化合物であってもよい。この場合、受容部を構成する化合物との間で超分子相互作用を示し易い気体分子を選択的に検出することができる。
【0011】
本発明のセンサ素子では、受容部は、環状構造を有する有機化合物であってもよい。この場合、検出すべき気体分子が環状構造の内側に入り込むことによって、受容部を構成する有機化合物は、当該気体分子との間で超分子相互作用を好適に示すことができる。よって、受容部を構成する有機化合物との間で超分子相互作用を示し易い気体分子を選択的に検出することができる。
【0012】
本発明のセンサ素子では、第2絶縁層と受容部との間に単分子層を更に備えてもよい。この場合、外部の水分が第2絶縁層に付着し難くなるため、外部の湿度変化による当該センサ素子の特性変動を抑制することができる。
【0013】
本発明のセンサ素子では、受容部を浸漬させる有機溶媒を更に備えてもよい。この場合、外部の水分が第2絶縁層に付着し難くなるため、外部の湿度変化による当該センサ素子の特性変動を抑制することができる。
【0014】
本発明のセンサ素子では、チャネル部の半導体の導電型がn型である場合において、ソース電極部に対する支持基板の電位がフラットバンド電圧より小さくなるように、支持基板とソース電極部との間に電圧を印加可能、又は、チャネル部の半導体の導電型がp型である場合において、ソース電極部に対する支持基板の電位がフラットバンド電圧より大きくなるように、支持基板とソース電極部との間に電圧を印加可能な電源部を更に備えてもよい。ここで、フラットバンド電圧とは、チャネル部と第1絶縁層との境界部分の電界が0となるゲート-ソース間電圧である。この場合、電源部が、ゲート電極として機能する支持基板とソース電極部との間にゲート-ソース間電圧を印加することにより、チャネル部において、支持基板側から支持基板とは反対側に向かって空乏層を形成することができる。
【0015】
本発明のセンサ素子では、電源部は、支持基板とソース電極部との間に印加する電圧の正負を逆転可能なスイッチ部を有してもよい。この場合、受容部に気体分子が捕捉されている状態において、ソース電極部に対する支持基板の電位の正負が、当該センサ素子が気体分子を検出する場合とは逆になるように、支持基板とソース電極部との間に電圧を印加することができる。このように電圧を印加することにより、受容部付近に当該センサ素子が気体分子を検出する場合とは逆方向の電界を発生させて、受容部から気体分子を離脱させることができる。よって、例えば受容部を加熱して当該受容部から気体分子を離脱させる場合と比較して、エネルギーの消費量を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、寄生抵抗を低減すると共に特性ばらつきを抑制しつつ、感度を向上させることができるセンサ素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係るセンサ素子を示す図である。
【図2】図1のセンサ素子を示す平面図である。
【図3】図1のセンサ素子の受容部及び単分子層を示す図である。
【図4】受容部の分子構造を示す図である。
【図5】スイッチ部を有する電源部を示す回路図である。
【図6】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図7】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図8】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図9】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図10】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図11】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図12】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図13】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図14】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図15】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図16】センサ素子の製造工程を説明するための図である。
【図17】気体分子の種類に応じたセンサ素子の反応性の違いを示すグラフである。
【図18】ゲート-ソース間電圧の印加による受容部からの気体分子の離脱の様子をドレイン電流の時間変化で示すグラフである。
【図19】受容部から気体分子を離脱可能なゲート-ソース間電圧をドレイン電流との関係で示すグラフである。
【図20】変形例に係るセンサ素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。

【0019】
[センサ素子1の構成]
図1は、一実施形態に係るセンサ素子を示す図である。図2は、図1のセンサ素子を示す平面図である。図1及び図2に示すように、センサ素子1は、支持基板2と、第1絶縁層3と、チャネル部4と、ソース電極部5と、ドレイン電極部6と、第2絶縁層7と、ソース配線8と、ドレイン配線9と、受容部10と、単分子層11と、電源部12とを備える。なお、図2では電源部12が省略されている。センサ素子1では、電源部12によって、ゲート電極として機能する支持基板2とソース電極部5との間にゲート-ソース間電圧が印加されると共に、ドレイン電極部6とソース電極部5との間にドレイン-ソース間電圧が印加される。センサ素子1では、所定のゲート-ソース間電圧及び所定のドレイン-ソース間電圧が印加された状態において、受容部10が気体分子Mを捕捉すると、ドレイン電極部6とソース電極部5との間のドレイン電流が変化する(詳しくは後述)。このことを利用して、センサ素子1は、例えばVOC等の気体分子Mを検出するためのガスセンサとして用いられる。なお、本実施形態では、気体分子Mの一例としてノナナールが例示されている。なお、ゲート-ソース間電圧は、ソース電極部5の電位を基準とした支持基板2の電位である。

【0020】
支持基板2と、第1絶縁層3と、チャネル部4と、ソース電極部5と、ドレイン電極部6とは、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて作製される。支持基板2は、平板状をなす導電性のシリコン基板である。支持基板2は、ゲート電極として機能する。第1絶縁層3は、支持基板2上に設けられた埋め込みシリコン酸化膜であり、例えば400nmの厚さに形成されている。第1絶縁層3は、ゲート絶縁層として機能する。チャネル部4と、ソース電極部5と、ドレイン電極部6とは、SOI基板の表面シリコン層を加工することによって第1絶縁層3上に設けられ、例えば40nmの厚さに形成されている。

【0021】
チャネル部4は、シリコンに不純物がドーピングされたn型の導電型を有する半導体からなる。チャネル部4は、一例として、ソース電極部5からドレイン電極部6に向かう方向(すなわち、チャネル部4中をキャリアが通過する方向)に垂直な断面において矩形状をなしている。チャネル部4は、その厚さZがチャネル部のデバイ長Lの8倍以下となるように形成されている。デバイ長Lは、下記の式(1)のように表される長さである。式(1)において、εはチャネル部4を構成する半導体の誘電率、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電子電荷、Nはチャネル部4を構成する半導体の不純物密度を表す。
【数1】
JP2018004356A_000003t.gif

【0022】
チャネル部4のようにシリコンに不純物がドーピングされた半導体において、チャネル部4の半導体の導電型がn型である場合に、フラットバンド電圧より小さいゲート-ソース間電圧が印加されると、チャネル部4においてゲート電極側からデバイ長Lの約8倍の深さまで空乏層Dが形成されることが知られている。ここで、フラットバンド電圧とは、チャネル部4と第1絶縁層3との境界部分の電界が0となるゲート-ソース間電圧である。従って、センサ素子1では、ゲート-ソース間電圧が印加されると、チャネル部4において、支持基板2側から支持基板2とは反対側の端面4a付近まで空乏層Dが形成される。これにより、キャリア(ここでは、電子)は、支持基板2とは反対側の端面4a付近の領域であって、空乏層Dが形成されていない領域のみを通過することとなる(図1の矢印A)。なお、式(1)に示すように、デバイ長Lは、チャネル部4を構成する半導体の不純物密度の平方根に反比例する。つまり、チャネル部4を構成する半導体の不純物密度が高いほど、チャネル部4において形成される空乏層Dの深さが浅くなる。

【0023】
また、ソース電極部5からドレイン電極部6に向かう方向において、チャネル部4の幅Wは、チャネル部4の厚さZの2倍以上に形成されている。なお、チャネル部4の幅Wとは、平面視におけるチャネル部4の最大幅であり、チャネル部4の厚さZとは、側面視におけるチャネル部4の最大厚さである。なお、チャネル部の長さL(図2参照)は、ソース電極部5とチャネル部4との境界から、チャネル部4とドレイン電極部6との境界までの最短距離である。

【0024】
ソース電極部5は、チャネル部4と同様に、シリコンに不純物がドーピングされたn型の導電型を有する半導体からなる。ソース電極部5は、チャネル部4の一端に電気的に接続されている。また、ドレイン電極部6は、チャネル部4と同様に、シリコンに不純物がドーピングされたn型の導電型を有する半導体からなる。ドレイン電極部6は、チャネル部4の他端に電気的に接続されている。

【0025】
このように、ソース電極部5及びドレイン電極部6は、チャネル部4の半導体の導電型と同じn型の導電型である。ソース電極部5及びドレイン電極部6は、チャネル部4と比較して不純物密度の高い半導体からなる。以下の説明では、相対的に不純物密度の低い半導体からなるチャネル部4の導電型をn型と呼ぶと共に、相対的に不純物密度の高い半導体からなるチャネル部4の導電型をn型と呼ぶこととする。なお、センサ素子1のチャネル部4の半導体の不純物密度は、通常のnpn型及びpnp型のMOSFETにおけるチャネル部の半導体の不純物密度と同等であり、センサ素子1のソース電極部5及びドレイン電極部6の半導体の不純物密度は、通常のnpn型及びpnp型のMOSFETにおけるソース電極部及びドレイン電極部の半導体の不純物密度と同等である。

【0026】
第2絶縁層7は、チャネル部4、ソース電極部5、及びドレイン電極部6の表面に設けられたシリコン酸化膜であり、少なくともチャネル部4上に設けられている。具体的には、第2絶縁層7は、チャネル部4、ソース電極部5、及びドレイン電極部6の上面と、ソース電極部5からドレイン電極部6に向かう方向に沿ったチャネル部4、ソース電極部5、及びドレイン電極部6の両側面と、ソース電極部5からドレイン電極部6に向かう方向を横切るソース電極部5及びドレイン電極部6の両端面と、の各表面に設けられている。第2絶縁層7には、ソース電極部5の上面に対応する位置の一部にコンタクトホール7aが形成されており、また、ドレイン電極部6の上面に対応する位置の一部にコンタクトホール7bが形成されている。

【0027】
ソース配線8は、電源部12に対して電気的に接続されていると共に、第2絶縁層7のコンタクトホール7aを介してソース電極部5に電気的に接続されている。ドレイン配線9は、電源部12に対して電気的に接続されていると共に、第2絶縁層7のコンタクトホール7bを介してドレイン電極部6に電気的に接続されている。

【0028】
受容部10は、例えばVOC等の気体分子Mを捕捉する。受容部10は、第2絶縁層7のチャネル部4とは反対側の面上に設けられ、第2絶縁層7に対して単分子層11を介して結合されている。具体的には、受容部10は、第2絶縁層7の各面の内、チャネル部4の上面(端面4a)に対向する面に結合された部分と、ソース電極部5からドレイン電極部6に向かう方向におけるチャネル部4の両側面に対向する面に結合された部分とを含んでいる。なお、受容部10は、単分子層11を介さずに第2絶縁層7の表面に対して直接結合されていてもよい。

【0029】
図3は、図1のセンサ素子の受容部及び単分子層を示す図である。図4は、受容部の分子構造を示す図である。図3及び図4に示すように、受容部10は、センサ素子1が検出すべき気体分子Mとの間で超分子相互作用を示すことにより当該気体分子Mを捕捉する化合物である。ここで、超分子相互作用とは、配位結合、ファンデルワールス結合、π-π相互作用、水素結合、親水疎水相互作用等の相互作用である。受容部10は、気体分子Mとの間で、これらの超分子相互作用の内の少なくとも一つの相互作用を示す。

【0030】
図3には、第2絶縁層7上に単分子層11を介して受容部10が設けられた状態が示されている。受容部10は、図3において簡略化して示された環状構造Rを有する有機化合物である。具体的には、受容部10はシクロデキストリン(β-シクロデキストリン)である。図4には、右辺に図3の受容部10の概略構成を示し、左辺に受容部10の具体的な化学式を示している。

【0031】
受容部10を構成するシクロデキストリンは、検出すべき気体分子Mが環状構造Rの内側に入り込むことにより、当該気体分子Mとの間で超分子相互作用を示す。なお、受容部10の一例としてのシクロデキストリンの環状構造Rは、具体的には中心軸線方向に貫通した中空の円錐台形状の構造であるが、受容部10の環状構造Rは必ずしもこのような形状に限定されない。また、受容部10は、シクロデキストリン誘導体であってもよく、或いは、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体以外の化合物であってもよい。

【0032】
単分子層11は、第2絶縁層7と受容部10との間に設けられている。単分子層11は、外部の水分を遮断する性質(外部からの水分の浸入を抑制する性質)のものが好適に用いられる。ここでは、単分子層11は、シランカップリング部位とエポキシ基とを含んだ飽和アルカンを有している。単分子層11は、第2絶縁層7に対して複数の飽和アルカンが整列して配置されており、全体として飽和アルカン単分子からなる層を形成している。各飽和アルカンの第2絶縁層7とは反対側の端部には、受容部10が結合されている。なお、飽和アルカン中のアルキル鎖の長さは特に限定されない。また、単分子層11において、シランカップリング部位に代えてカルボキシル基、リン酸基等を用いてもよい。また、エポキシ基に代えてアミノ基、アルキニル基、アルケニル基等を用いてもよい。

【0033】
図5は、スイッチ部を有する電源部を示す回路図である。図1及び図5に示すように、電源部12は、電源12a,12bとスイッチ部13とを有する。電源12aは、ゲート電極として機能する支持基板2とソース電極部5(ソース配線8)との間にゲート-ソース間電圧を印加する。電源12bは、ドレイン電極部6(ドレイン配線9)とソース電極部5(ソース配線8)との間にドレイン-ソース間電圧を印加する。スイッチ部13は、電源12aによって支持基板2とソース電極部5(ソース配線8)との間に印加される電圧の正負を逆転可能である。

【0034】
具体的には、センサ素子1ではチャネル部4の半導体の導電型がn型(n型)であることから、電源12aは、ソース電極部5に対する支持基板2の電位がフラットバンド電圧より小さくなるように、支持基板2とソース電極部5との間にゲート-ソース間電圧を印加可能とされている。また、センサ素子1ではキャリアが電子であるため、電源12bは、ソース電極部5に対するドレイン電極部6の電位が正となるように、ドレイン電極部6とソース電極部5との間にドレイン-ソース間電圧を印加可能とされている。

【0035】
なお、チャネル部4の半導体の導電型がp型(p型)である場合においては、電源12aは、ソース電極部5に対する支持基板2の電位がフラットバンド電圧より大きくなるように、支持基板2とソース電極部5との間にゲート-ソース間電圧を印加可能とされる。また、この場合、キャリアがホールであるため、電源12bは、ソース電極部5に対するドレイン電極部6の電位が負となるように、ドレイン電極部6とソース電極部5との間にドレイン-ソース間電圧を印加可能とされる。

【0036】
スイッチ部13は、スイッチ13a,13b,13c,13dを含むHブリッジ回路によって構成されている。スイッチ部13において、図中のスイッチ13a,13dをONとすると共にスイッチ13b,13cをOFFとした場合、電源12aによって、支持基板2とソース電極部5との間に負のゲート-ソース間電圧が印加される。一方、スイッチ部13において、図中のスイッチ13b,13cをONとすると共にスイッチ13a,13dをOFFとした場合、電源12aによって、支持基板2とソース電極部5との間に正の電圧が印加される。なお、スイッチ部13は、支持基板2とソース電極部5(ソース配線8)との間に印加する電圧の正負を逆転することができれば、Hブリッジ回路に限定されない。

【0037】
[センサ素子1の動作]
続いて、センサ素子1の動作について説明する。図1~図5に示すように、センサ素子1では、まず、電源部12のスイッチ部13において、スイッチ13a,13dがONとされると共にスイッチ13b,13cがOFFとされる。この状態で、電源12aは、接地されたソース電極部5に対する支持基板2の電位フラットバンド電圧より小さくなるようにゲート-ソース間電圧を印加する。チャネル部4の半導体の導電型がn型であることから、これにより、チャネル部4において、支持基板2側から支持基板2とは反対側に向かって空乏層Dが形成される。

【0038】
ここで、ドレイン電極部6とソース電極部5との間に電源12bによってドレイン-ソース間電圧が印加されると、キャリアである電子は、チャネル部4の支持基板2とは反対側の端面4a付近の領域であって、空乏層Dが形成されていない領域のみを通過する(図1の矢印A)。

【0039】
このような状態において、受容部10を構成するシクロデキストリンが、例えばノナナール等の気体分子Mとの間で超分子相互作用を示して当該気体分子Mを捕捉すると、受容部10の分極状態が変化する。これにより、チャネル部4の支持基板2とは反対側の端面4a付近の領域の電界が変化する。その結果、チャネル部4において、例えば、空乏層Dの一端がチャネル部4の支持基板2側に押し戻される、或いは、チャネル部4の支持基板2とは反対側の端面4aから支持基板2側に向かって新たな空乏層が更に形成される等の変化が生じる。このように、受容部10が気体分子Mを捕捉すると、チャネル部4において、キャリアである電子が通過することができる領域に変化が生じる。従って、ゲート-ソース間電圧及びドレイン-ソース間電圧のそれぞれを一定に保った状態におけるドレイン電流の変化を検出することによって、受容部10が気体分子Mを捕捉したことを検知することができる。よって、センサ素子1は、外部に検出対象となる気体分子Mが存在することを検知することができる。

【0040】
更に、センサ素子1では、電源部12のスイッチ部13において、スイッチ13b,13cがONとされると共にスイッチ13a,13dがOFFとされる。これにより、受容部10付近に逆方向の電界が発生し、その結果、受容部10に捕捉された気体分子Mが受容部10から離脱し(徐放され)、センサ素子1がリセットされる。

【0041】
[センサ素子1の製造工程]
続いて、図6~図16を参照しつつ、センサ素子1の製造工程について説明する。図6~図16は、センサ素子の製造工程を説明するための図である。まず、図6に示すように、SOI基板20を用意する。SOI基板20は、支持基板21と、埋め込みシリコン酸化膜22と、表面シリコン層(SOI層)23と、を備える。支持基板21は、平板状をなす導電性のシリコン基板である。支持基板21は、センサ素子1における支持基板2である。埋め込みシリコン酸化膜22は、支持基板21上に設けられており、ゲート絶縁層として機能する。埋め込みシリコン酸化膜22は、例えば400nmの厚さに形成されている。埋め込みシリコン酸化膜22は、センサ素子1における第1絶縁層3である。表面シリコン層23は、埋め込みシリコン酸化膜22上に設けられている。表面シリコン層23は、例えば40nmの厚さに形成されている。

【0042】
次に、図7に示すように、表面シリコン層23の上面(すなわち、埋め込みシリコン酸化膜22とは反対側の面)に絶縁膜24を形成する。具体的には、SOI基板20に対して、900℃の酸素中にて60分間の加熱処理を行う。絶縁膜24は、例えば20nmの厚さになるように形成される。

【0043】
次に、表面シリコン層23に対して、イオン注入及び活性化アニールを行う。具体的には、表面シリコン層23に対して、P(リン)イオンの不純物密度が例えば5×1017cm-3程度となるようにイオン注入を行い、その後、1000℃の窒素中にて20分間の加熱処理(活性化アニール)を行う。これにより、表面シリコン層23の中央部がチャネル部4として使用可能な状態となる。

【0044】
次に、図8に示すように、表面シリコン層23及び絶縁膜24に対して、デバイス領域の形成を行う。具体的には、表面シリコン層23及び絶縁膜24に対して、フォトリソグラフィによるレジストパターニングを行う。そして、CFとOとの混合ガスのプラズマによるドライエッチングを行い、その後、レジストを剥離する。

【0045】
次に、図9に示すように、表面シリコン層23の両端部に対して不純物イオン注入を行う。具体的には、表面シリコン層23の両端部に対して、フォトリソグラフィによるレジストパターニングを行う。そして、表面シリコン層23の両端部に対して、P(リン)イオンの不純物密度が例えば1×1020cm-3程度となるようにイオン注入を行い、その後、1000℃の窒素中にて20分間の加熱処理(活性化アニール)を行う。これにより、表面シリコン層23の両端部がソース電極部5及びドレイン電極部6となり、これらのソース電極部5及びドレイン電極部6に挟まれた表面シリコン層23の中央部がチャネル部4となる。

【0046】
次に、図10に示すように、表面シリコン層23の上面の絶縁膜24を剥離し、第2絶縁層7を形成する。具体的には、絶縁膜24をフッ酸にて剥離し、露出した表面シリコン層23の表面を洗浄する。その後、900℃の酸素中にて20分間の加熱処理を行って第2絶縁層7を形成する。第2絶縁層7は、例えば10nmの厚さになるように形成される。

【0047】
次に、図11に示すように、表面シリコン層23において、ソース電極部5の上面に対応する位置の一部にコンタクトホール7aを形成すると共に、ドレイン電極部6の上面に対応する位置の一部にコンタクトホール7bを形成する。具体的には、表面シリコン層23において、ソース電極部5及びドレイン電極部6の上面に対応する位置のそれぞれの一部に対して、フォトリソグラフィによるレジストパターニングを行う。そして、フッ酸にて第2絶縁層7のエッチングを行い、その後、レジストを剥離する。これにより、コンタクトホール7a,7bが形成される。

【0048】
次に、図12に示すように、ソース配線8及びドレイン配線9を形成する。具体的には、フォトリソグラフィよるソース配線8及びドレイン配線9のレジストパターニングを行い、電子線蒸着装置によって、Al(アルミニウム)が10nmの厚さとなるように蒸着されると共にAu(金)が80nmの厚さとなるように蒸着される。ソース配線8は、一端がコンタクトホール7aを介してソース電極部5に接続されると共に、他端が埋め込みシリコン酸化膜22上に位置するように形成される。ドレイン配線9は、一端がコンタクトホール7bを介してドレイン電極部6に接続されると共に、他端が埋め込みシリコン酸化膜22上に位置するように形成される。そして、リフトオフプロセスによってレジストを剥離する。その後、400℃の水素4%、窒素96%の混合気体中にて30分間の加熱処理を行う。

【0049】
続いて、チャネル部4の上面及び両側面に設けられた第2絶縁層7に対して、単分子層11及び受容部10の分子修飾を行う。まず、図13に示すように、第2絶縁層7の表面においてHSO/H及びHFを反応させることにより、第2絶縁層7の表面に水酸基を持たせたケイ素酸化物が形成される。

【0050】
次に、図14に示すように、表面に水酸基を持たせたケイ素酸化物が形成された第2絶縁層7に、シランカップリング剤を作用させる。ここで、シランカップリング剤はSi-O-C結合を有している。Si-O結合はC-O結合と比較して強い結合であることから、上記Si-O-C結合にはSi-O-Si結合になろうとする力が働く。その結果、Si-O-Si結合を介してシランカップリング剤と第2絶縁層7との間で化学結合が形成される。

【0051】
次に、図15に示すように、シランカップリング剤が第2絶縁層7とは反対側の端部に有するエポキシドをアジド化する。エポキシドは、炭素2つと酸素1つとが無理のある角度で三角形に結合しているため、炭素と結合し得る物質に対して容易に反応して三角形の構造を解消する。ここでは、N(アジドイオン)を用いてエポキシドをアジド化(アジド構造を導入)している。

【0052】
次に、図16に示すように、アジド構造に対して、シクロデキストリンを結合させる。ここでは、銅イオンを触媒として用いたクリック反応であるヒュスゲン環化付加によって、シクロデキストリンを導入している。

【0053】
次に、電源部12を用意し、電源12aに対してスイッチ部13を介してソース配線8及び支持基板2を電気的に接続すると共に、電源12bに対してソース配線8及びドレイン配線9を電気的に接続する(図5参照)。以上により、センサ素子1が製造される。

【0054】
[センサ素子1の作用及び効果]
以上説明したように、センサ素子1では、受容部10が気体分子Mを捕捉するとドレイン電極部6とソース電極部5との間のドレイン電流が変化することを利用して、気体分子Mが検出される。ここで、センサ素子1では、ソース電極部5、チャネル部4、及びドレイン電極部6の半導体の導電型が互いに同じである。このため、ゲート電極として機能する支持基板2とソース電極部5との間にチャネルがn型半導体の場合にはフラットバンド電圧より小さいゲート-ソース間電圧が印加されると、チャネル部4において、支持基板2側から支持基板2とは反対側に向かって空乏層Dが形成される。これにより、キャリアは、チャネル部4において、支持基板2とは反対側の端面4a付近の領域であって、空乏層Dが形成されていない領域のみを通過することとなる。このような状態において、受容部10が気体分子Mを捕捉すると、受容部10の分極状態が変化し、チャネル部4の支持基板2とは反対側の端面4a付近の領域の電界が変化して、その結果、チャネル部4の空乏層Dが形成される領域が変化する。このように、ソース電極部5、チャネル部4、及びドレイン電極部6の半導体の導電型が互いに同じであることから、チャネル部4において、キャリアが通過する領域と、受容部10が気体分子Mを捕捉したことによって空乏層Dが影響を受ける領域とを近づけることができる。これにより、受容部10が気体分子Mを捕捉した場合にドレイン電流が変化し易くなるため、当該センサ素子1の感度を向上させることができる。また、センサ素子1では、ソース電極部5及びドレイン電極部6の半導体の不純物密度がチャネル部4の半導体の不純物密度よりも高い。このことに起因して、ソース電極部5とソース配線8との境界、及び、ドレイン電極部6とドレイン配線9との境界における寄生抵抗が低減されると共に、ソース電極部5及びドレイン電極部6の半導体の不純物密度を通常よりも高くしてソース電極部5内及びドレイン電極部6内における寄生抵抗を低減することができる。また、センサ素子1では、チャネル部4は、表面の形状及び方位を揃えることが難しいシリコンナノワイヤではないため、当該センサ素子1の特性ばらつきが生じ難い。また、センサ素子1では、チャネル部4の幅Wが厚さZの2倍以上であることから、チャネル部4の上面の面積が側面の面積以上となる。このため、チャネル部4の上面及び側面の両方に受容部10が設けられた場合に、当該センサ素子1の特性ばらつきに影響し易いチャネル部4の側面に設けられた受容部10の効果と比較して、当該センサ素子1の特性ばらつきに影響し難いチャネル部4の上面に設けられた受容部10の効果が同等以上になる。更に、チャネル部4の幅Wを厚さZの2倍よりも大きくしていくことに伴って、チャネル部4の側面に設けられた受容部10の効果よりも、チャネル部4の上面に設けられた受容部10の効果を一層支配的にすることができる。従って、当該センサ素子1の特性ばらつきが生じ難い。以上により、寄生抵抗を低減すると共に特性ばらつきを抑制しつつ、感度を向上させることができるセンサ素子1を提供することが可能となる。

【0055】
また、センサ素子1では、厚さZは、チャネル部4のデバイ長の8倍以下である。ここで、例えばチャネル部4の半導体材料として不純物を含むシリコンを用いる場合に、ゲート電極として機能する支持基板2とソース電極部5との間にゲート-ソース間電圧が印加されると、チャネル部4において、支持基板2側から支持基板2とは反対側に向かってデバイ長の約8倍の深さまで空乏層Dが形成される。このため、チャネル部4において、キャリアが通過する領域と、受容部10が気体分子Mを捕捉したことによって空乏層Dが影響を受ける領域とを近づけることができる。従って、当該センサ素子1の感度を向上させることができる。

【0056】
また、センサ素子1では、受容部10は、気体分子Mとの間で超分子相互作用を示すことにより当該気体分子Mを捕捉する化合物である。このため、受容部10を構成する化合物との間で超分子相互作用を示し易い気体分子Mを選択的に検出することができる。

【0057】
また、センサ素子1では、受容部10は、環状構造Rを有する有機化合物である。このため、検出すべき気体分子Mが環状構造Rの内側に入り込むことによって、受容部10を構成する有機化合物は、当該気体分子Mとの間で超分子相互作用を好適に示すことができる。よって、受容部10を構成する有機化合物との間で超分子相互作用を示し易い気体分子Mを選択的に検出することができる。

【0058】
また、センサ素子1では、第2絶縁層7と受容部10との間に単分子層11を更に備える。このため、外部の水分が第2絶縁層7に付着し難くなるため、外部の湿度変化による当該センサ素子1の特性変動を抑制することができる。

【0059】
また、センサ素子1では、チャネル部4の半導体の導電型がn型である場合において、ソース電極部5に対する支持基板2の電位がフラットバンド電圧より小さくなるように、支持基板2とソース電極部5との間に電圧を印加可能、又は、チャネル部4の半導体の導電型がp型である場合において、ソース電極部5に対する支持基板2の電位がフラットバンド電圧より大きくなるように、支持基板2とソース電極部5との間に電圧を印加可能な電源部12を更に備える。このため、電源部12が、ゲート電極として機能する支持基板2とソース電極部5との間にゲート-ソース間電圧を印加することにより、チャネル部4において、支持基板2側から支持基板2とは反対側に向かって空乏層Dを形成することができる。

【0060】
また、センサ素子1では、電源部12は、支持基板2とソース電極部5との間に印加する電圧の正負を逆転可能なスイッチ部13を有する。このため、受容部10に気体分子が捕捉されている状態において、ソース電極部5に対する支持基板2の電位の正負が、当該センサ素子1が気体分子を検出する場合とは逆になるように、支持基板2とソース電極部5との間に電圧を印加することができる。このように電圧を印加することにより、受容部10付近に当該センサ素子1が気体分子を検出する場合とは逆方向の電界を発生させて、受容部10から気体分子Mを離脱させることができる。よって、例えば受容部10を加熱して当該受容部10から気体分子Mを離脱させる場合と比較して、エネルギーの消費量を抑制することができる。

【0061】
[実施例]
以下、センサ素子の特性に関する実測結果について説明する。なお、それぞれの実測結果は、上記実施形態に係るセンサ素子1において、チャネル部4の幅Wを20μm、厚さZを34nm、長さLを50μmとすると共にソース電極部5の電位を0Vとして測定した結果を示している。

【0062】
図17は、気体分子の種類に応じたセンサ素子の反応性の違いを示すグラフである。この試験では、25℃の環境下で、センサ素子に1.16Vのゲート-ソース間電圧及び0.05Vのドレイン-ソース間電圧を印加した状態において、センサ素子に対して窒素中に479ppmのノナナールを含む気体、窒素中に1000ppmの水素を含む気体、及び乾燥空気を吹き付けた。図17の横軸は時間(分)を表し、左側の縦軸はドレイン電流(nA)を表し、右側の縦軸はセンサ素子に対する気体分子の吹き付け量を表す。図中のグラフG1は、センサ素子に対して窒素中にノナナールを含む気体を吹き付けたときのドレイン電流の時間変化を示す。グラフG2は、センサ素子に対して窒素中に水素を含む気体を吹き付けたときのドレイン電流の時間変化を示す。グラフG3は、センサ素子に対して乾燥空気を吹き付けたときのドレイン電流の時間変化を示す。また、図中の右側の縦軸には二点鎖線で示すグラフG4が対応している。グラフG4の読みが1であるときには、センサ素子に対して各気体分子を0.5L/minで吹き付けており、グラフG4の読みが0であるときには、センサ素子に対して窒素を0.5L/minで吹き付けている。

【0063】
図17に示すように、センサ素子に対して窒素中にノナナールを含む気体を吹き付けているときには、ドレイン電流が増大する。一方、センサ素子に対して窒素中にノナナールを含む気体を吹き付けることを止めると、ドレイン電流は増大しなくなる。このことから、センサ素子が、外部にノナナールが存在することを検知可能であることが確認された。

【0064】
また、図17に示すように、センサ素子に対して窒素中に水素を含む気体及び乾燥空気を吹き付けても、ドレイン電流は増大しない。このことから、センサ素子が、外部に窒素、水素、及び乾燥空気が存在することを検知しないことが確認された。以上により、センサ素子は、少なくともノナナール、窒素、水素、及び乾燥空気の内からノナナールを選択的に検出可能であることが確認された。

【0065】
図18は、ゲート-ソース間電圧の印加による受容部からの気体分子の離脱の様子をドレイン電流の時間変化で示すグラフである。この試験では、センサ素子に0.05Vのドレイン-ソース間電圧を印加した状態において、センサ素子に正(約2V)のゲート-ソース間電圧と負(約-4V)のゲート-ソース間電圧とを交互に印加すると共に、所定のドレイン-ソース間電圧を印加した。また、センサ素子に対して窒素を吹き付ける(区間Q1)と共に、センサ素子に正のゲート-ソース間電圧を印加している途中で、窒素に代えて、窒素中に47.9ppmのノナナールを含む気体を吹き付けた(区間Q2)。図18の横軸は時間(分)を表し、左側の縦軸はドレイン電流I(nA)を表し、右側の縦軸はゲート-ソース間電圧V(V)を表す。また、図中の縦軸に沿って示されている複数の破線は、センサ素子に対する窒素中にノナナールを含む気体の吹き付けの開始又は停止のタイミングを表す。グラフG5は、ドレイン電流Iの時間変化を示す。グラフG6は、ゲート-ソース間電圧Vの時間変化を示す。

【0066】
図18の区間P1に示すように、センサ素子に正のゲート-ソース間電圧Vを印加すると、ドレイン電流Iは徐々に増大する。ここで、区間P2に示すように、センサ素子に対する窒素中にノナナールを含む気体の吹き付けを開始すると、ドレイン電流Iは、急激に増大し、その後も徐々に増大し続ける。センサ素子に対して窒素中にノナナールを含む気体の吹き付けを停止した後、区間P3に示すように、センサ素子に負のゲート-ソース間電圧Vを印加すると、ドレイン電流Iは流れなくなる。その後、区間P4に示すように、再びセンサ素子に正のゲート-ソース間電圧Vを印加すると、ドレイン電流Iは、センサ素子に負のゲート-ソース間電圧Vを印加する直前の電流値から低下して、区間P1においてセンサ素子への正のゲート-ソース間電圧Vの印加を開始した直後、すなわちノナナールを含む気体の吹き付けを開始する前の電流値に近い値となっている。このことから、センサ素子は、負のゲート-ソース間電圧Vが印加されることによって、受容部によって捕捉された気体分子を離脱させることが確認された。

【0067】
ここで、図19は、受容部から気体分子を離脱可能なゲート-ソース間電圧をドレイン電流との関係で示すグラフである。この試験では、24℃の環境下で、センサ素子に0.05Vのドレイン-ソース間電圧を印加した状態において、センサ素子に対して窒素を0.5L/minで吹き付けた。そして、ゲート-ソース間電圧を正(約7V)と負(約-4V)との間で変化させつつ、ドレイン電流を測定した。図19の横軸はゲート-ソース間電圧(V)を表し、縦軸はドレイン電流(A)を表す。グラフG7は、ゲート-ソース間電圧に応じたドレイン電流を示す。

【0068】
図19に示すように、センサ素子では、約1V以下のゲート-ソース間電圧ではドレイン電流は流れず、約1Vから約3Vまでのゲート-ソース間電圧の増大に伴ってドレイン電流も増大し、約3V以上のゲート-ソース間電圧では、ゲート-ソース間電圧の増大に対するドレイン電流の増大は飽和している。このことから、このセンサ素子では、約1.68Vの正のゲート-ソース間電圧を、気体分子を検出する際のセンシング電圧(例えば、図中の縦軸に沿って示されている破線参照)とすることが好適であることが確認された。また、受容部からのノナナールの離脱に用いる電圧を約-4Vとすることが好適であることが確認された。

【0069】
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図20は、変形例に係るセンサ素子を示す図であり、図20に示すように、センサ素子1は、受容部10を浸漬させる有機溶媒14を更に備えてもよい。なお、図20では電源部12が省略されている。有機溶媒14としては、例えばジメチルスルホキシド等を用いてもよい。この場合、外部の水分が第2絶縁層7に付着し難くなるため、外部の湿度変化による当該センサ素子1の特性変動を抑制することができる。

【0070】
また、上記実施形態では、チャネル部4、ソース電極部5、及びドレイン電極部6のそれぞれは、n型の導電型を有する半導体からなるとした。しかし、チャネル部4、ソース電極部5、及びドレイン電極部6のそれぞれは、p型の導電型を有する半導体からなっていてもよい。この場合、チャネル部4は相対的に不純物密度の低いp型の半導体からなり、ソース電極部5及びドレイン電極部6は、相対的に不純物密度の高いp型の半導体からなる。なお、このようにチャネル部4、ソース電極部5、及びドレイン電極部6のそれぞれがp型の導電型を有する半導体からなる場合には、図5に示す電源12a,12bのそれぞれの正負の向きが逆であると共に、キャリアは電子ではなくホールである。

【0071】
また、上記実施形態では受容部10はシクロデキストリンであるとした。しかし、受容部10は、気体分子Mを捕捉する他の構成であってもよく、例えば、気体分子Mとの間で超分子相互作用を示すことにより当該気体分子Mを捕捉する他の化合物であってもよい。例えば、受容部10は、カリックスアレーン、クラウンエーテル、シクロファン、キューカビチュリル等であってもよい。ここで、カリックスアレーンは、フェノールの2,6位がメチレン基を介して数個環状に繋がったオリゴマーの総称である。また、クラウンエーテルは、一般構造式(-CH-CH-O-)で表される大環状のエーテルである。また、シクロファンは、芳香環の2箇所以上が、炭素等の鎖状構造の架橋によって環状に結びついた構造を持つ大環状化合物の総称である。また、キューカビチュリルは、数個のグリコウリルがメチレン単位を介して環状に繋がった化合物の総称である。
【符号の説明】
【0072】
1…センサ素子、2…支持基板、3…第1絶縁層、4…チャネル部、5…ソース電極部、6…ドレイン電極部、7…第2絶縁層、10…受容部、11…単分子層、12…電源部、13…スイッチ部、14…有機溶媒、M…気体分子、W…幅、Z…厚さ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19