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明細書 :アシスト移動体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-057759 (P2018-057759A)
公開日 平成30年4月12日(2018.4.12)
発明の名称または考案の名称 アシスト移動体
国際特許分類 A61H   3/04        (2006.01)
FI A61H 3/04
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2016-199500 (P2016-199500)
出願日 平成28年10月7日(2016.10.7)
発明者または考案者 【氏名】松野 文俊
【氏名】遠藤 孝浩
【氏名】張 一弛
【氏名】馬 家▲きん▼
【氏名】片山 貴寛
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】514236887
【氏名又は名称】RT.ワークス株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100104433、【弁理士】、【氏名又は名称】宮園 博一
審査請求 未請求
テーマコード 4C046
Fターム 4C046AA24
4C046AA42
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD26
4C046DD33
4C046EE02
4C046EE06
4C046FF27
4C046FF33
要約 【課題】外乱に依らず、操作者の意図に合致する走行速度で移動させることによって、操作者の違和感を抑制し、操作者の操作感を向上させることが可能なアシスト移動体を提供する。
【解決手段】このアシスト移動体100は、把持部11と、操作者の押圧力を検出するための力検出部20aおよび20bと、アシスト力を発生させる駆動モータ30aおよび30bと、アシスト移動体本体10の走行速度を検出するための速度検出部50aおよび50bと、アシスト移動体本体10の走行速度に基づいて、アシスト移動体本体10に作用した外力を取得し、取得された外力と、操作者による押圧力および駆動モータ30aおよび30bによるアシスト力とに基づいて、アシスト移動体本体10に作用した外乱を推定する外乱推定オブザーバ70を実行するとともに、推定された外乱を補償する制御部60と、を備える。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
アシスト移動体本体と、
前記アシスト移動体本体を操作者の押圧力により移動させるための把持部と、
前記操作者の押圧力を検出するための力検出部と、
前記力検出部の検出結果に基づいて、駆動輪を駆動して、アシスト力を発生させる駆動部と、
前記アシスト移動体本体の走行速度を検出するための速度検出部と、
前記速度検出部の検出結果に基づく前記アシスト移動体本体の走行速度に基づいて、前記アシスト移動体本体に作用した外力を取得し、取得された外力と、前記操作者による押圧力および前記駆動部によるアシスト力とに基づいて、前記アシスト移動体本体に作用した外乱を推定する外乱推定オブザーバを実行するとともに、前記外乱推定オブザーバにより推定された外乱を補償する制御部と、を備える、アシスト移動体。
【請求項2】
前記外乱推定オブザーバは、
直進方向の前記アシスト移動体本体の走行速度に基づいて、前記直進方向において前記アシスト移動体本体に作用した外乱を推定する直進用外乱推定オブザーバと、
回転方向の前記アシスト移動体本体の走行速度に基づいて、前記回転方向において前記アシスト移動体本体に作用した外乱を推定する回転用外乱推定オブザーバと、
を含み、
前記制御部は、前記直進用外乱推定オブザーバと、前記回転用外乱推定オブザーバとを実行するとともに、前記直進用外乱推定オブザーバにより推定された前記直進方向の外乱および前記回転用外乱推定オブザーバにより推定された前記回転方向の外乱を補償するように構成されている、請求項1に記載のアシスト移動体。
【請求項3】
前記駆動輪は、第1駆動輪と、前記アシスト移動体本体の前記直進方向と直交する方向に前記第1駆動輪と並んで配置される第2駆動輪とを含み、
前記速度検出部は、前記第1駆動輪の走行速度を検出するための第1速度検出部と、前記第2駆動輪の走行速度を検出するための第2速度検出部とを含み、
前記制御部は、前記直進用外乱推定オブザーバにより、前記第1速度検出部の検出結果および前記第2速度検出部の検出結果に基づいて、前記直進方向の前記アシスト移動体本体の走行速度を取得する処理を実行するように構成されている、請求項2に記載のアシスト移動体。
【請求項4】
前記制御部は、前記回転用外乱推定オブザーバにより、前記第1速度検出部の検出結果および前記第2速度検出部の検出結果に基づいて、前記回転方向の前記アシスト移動体本体の走行速度を取得する処理を実行するように構成されている、請求項3に記載のアシスト移動体。
【請求項5】
前記力検出部は、前記操作者の左手による押圧力を検出するための第1力検出部と、前記操作者の右手による押圧力を検出するための第2力検出部とを含み、
前記制御部は、前記直進用外乱推定オブザーバにより、前記第1力検出部の検出結果および前記第2力検出部の検出結果に基づいて、前記直進方向の前記操作者の押圧力を取得するように構成されており、
前記制御部は、前記回転用外乱推定オブザーバにより、前記第1力検出部の検出結果および前記第2力検出部の検出結果に基づいて、前記回転方向の前記操作者の押圧力を取得する処理を実行するように構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載のアシスト移動体。
【請求項6】
前記制御部は、前記外乱推定オブザーバにより推定された外乱を、外乱を含まない状態で前記駆動部により発生されるアシスト力から減算することによって、外乱を補償する処理を実行するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のアシスト移動体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アシスト移動体に関し、特に、駆動輪を駆動してアシスト力を発生させるアシスト移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動輪を駆動して、アシスト力を発生させるアシスト移動体が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、アシスト力を発生させ、操作者の歩行をアシストする歩行アシスト移動体(アシスト移動体)が開示されている。この歩行アシスト移動体は、操作者が把持する把持部と、操作者により把持部に加えられた力(押圧力)を検出する圧力検出部と、圧力検出部により検出された力に基づいて、駆動輪を駆動して、アシスト力を発生させる駆動モータとを備えている。この歩行アシスト移動体では、操作者の押圧力に応じたアシスト力で、操作者の歩行がアシストされる。また、この歩行アシスト移動体は、荷物を載置可能な車台を備えている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-47298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の歩行アシスト移動体では、単に操作者の押圧力に応じてアシスト力を発生させるだけであるため、平坦で摩擦が小さい路面を走行する場合には、操作者の押圧力に対して一定の走行速度が得られるものの、傾斜した路面(坂道)を走行する場合や、摩擦が大きい路面を走行する場合には、傾斜した路面における重力や路面との間の摩擦力などの変動に起因する外乱に影響されて、操作者の押圧力に対して一定の走行速度が得られないと考えられる。また、上記特許文献1に記載の歩行アシスト移動体では、車台に荷物が積載される場合には、積載された荷物の重量の変動に起因する外乱に影響されて、操作者の押圧力に対して一定の走行速度が得られないと考えられる。これらの場合、操作者が同じ押圧力で歩行アシスト移動体を押しても、路面や荷物の重量によって走行速度が異なることとなる。この結果、操作者の意図とは異なる走行速度(操作者の意図よりも速い速度または操作者の意図よりも遅い速度)で歩行アシスト移動体が移動するため、操作者は、把持部を介して違和感を感じてしまう。このため、操作者の操作感が悪くなると考えられる。この点において、上記特許文献1に記載の歩行アシスト移動体は、改善の余地があると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、外乱に依らず、操作者の意図に合致する走行速度で移動させることによって、操作者の違和感を抑制し、操作者の操作感を向上させることが可能なアシスト移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるアシスト移動体は、アシスト移動体本体と、アシスト移動体本体を操作者の押圧力により移動させるための把持部と、操作者の押圧力を検出するための力検出部と、力検出部の検出結果に基づいて、駆動輪を駆動して、アシスト力を発生させる駆動部と、アシスト移動体本体の走行速度を検出するための速度検出部と、速度検出部の検出結果に基づくアシスト移動体本体の走行速度に基づいて、アシスト移動体本体に作用した外力を取得し、取得された外力と、操作者による押圧力および駆動部によるアシスト力とに基づいて、アシスト移動体本体に作用した外乱を推定する外乱推定オブザーバを実行するとともに、外乱推定オブザーバにより推定された外乱を補償する制御部と、を備える。なお、押圧力やアシスト力などの「力」は、単なる力のみならず、モーメントをも含む広い概念である。
【0008】
この発明の一の局面によるアシスト移動体では、上記のように、アシスト移動体本体に作用した外乱を推定する外乱推定オブザーバを実行するとともに、外乱推定オブザーバにより推定された外乱を補償する制御部を設ける。これにより、傾斜した路面における重力や路面との間の摩擦力などの変動に起因する外乱がアシスト移動体に作用したとしても、外乱推定オブザーバにより外乱が推定され、補償されるので、操作者の押圧力に対するアシスト移動体の走行速度を安定させることができる。つまり、アシスト移動体が傾斜した路面(坂道)を走行する場合には、傾斜した路面における重力の変動による影響が補償されるので、操作者の押圧力に対して、平坦な路面を走行する場合に近いアシスト移動体の走行速度が得られる。また、アシスト移動体が摩擦が大きい路面を走行する場合には、路面との間の摩擦力の変動による影響が補償されるので、操作者の押圧力に対して、アシスト移動体が摩擦が小さい路面を走行する場合に近いアシスト移動体の走行速度が得られる。また、アシスト移動体に荷物を載置可能な場合には、載置された荷物の重量の変動に起因する外乱がアシスト移動体に作用したとしても、外乱推定オブザーバにより外乱が推定され、補償されるので、操作者の押圧力に対するアシスト移動体の走行速度を安定させることができる。つまり、アシスト移動体に荷物が載置される場合には、載置された荷物の重量の変動による影響が補償されるので、操作者の押圧力に対して、荷物を載置していない場合に近いアシスト移動体の走行速度が得られる。これらの結果、路面によって、操作者の押圧力に対する走行速度が異なることを抑制することができるので、操作者の意図とは異なる走行速度でアシスト移動体が移動することを抑制することができる。その結果、外乱に依らず、操作者の意図に合致する走行速度でアシスト移動体を移動させるができるので、操作者の違和感を抑制し、操作者の操作感を向上させることができる。また、一般的に、傾斜した路面における重力の変動による影響を補償するためには、アシスト移動体に加速度センサなどの傾斜角取得用のセンサを設けて、傾斜した路面の傾斜角を検出する必要があると考えられる。また、アシスト移動体に荷物を載置可能な場合には、荷物の重量により、アシスト移動体の総重量が変化する。このため、傾斜した路面における重力の変動による影響を補償するためには、傾斜角取得用のセンサに加えて、さらに重量取得用のセンサを設けて、アシスト移動体の総重量を取得する必要があると考えられる。一方、本構成では、傾斜した路面における重力の変動による影響を補償するために、傾斜した路面の傾斜角を検出する必要が無く、アシスト移動体の総重量を検出する必要も無いので、アシスト移動体に傾斜角取得用のセンサおよび重量取得用のセンサを設ける必要がない。その結果、アシスト移動体の構成を簡素化しつつ、操作者の意図に合致する走行速度でアシスト移動体を移動させるができる。
【0009】
上記一の局面によるアシスト移動体において、好ましくは、外乱推定オブザーバは、直進方向のアシスト移動体本体の走行速度に基づいて、直進方向においてアシスト移動体本体に作用した外乱を推定する推定オブザーバと、回転方向のアシスト移動体本体の走行速度に基づいて、回転方向においてアシスト移動体本体に作用した外乱を推定する回転用外乱推定オブザーバと、を含み、制御部は、直進用外乱推定オブザーバと、回転用外乱推定オブザーバとを実行するとともに、直進用外乱推定オブザーバにより推定された直進方向の外乱および回転用外乱推定オブザーバにより推定された回転方向の外乱を補償するように構成されている。このように構成すれば、直進方向の外乱および回転方向の外乱の両方を補償することができるので、いずれの路面をいずれの方向にアシスト移動体が走行する場合であっても、アシスト移動体の走行速度を安定させることができる。その結果、操作者の違和感をさらに抑制することができるので、操作者の操作感をさらに向上させることができる。また、直進方向の外乱および回転方向の外乱の両方を補償することができるので、たとえば、傾斜した路面において操作者が把持部から手を離した場合に、そのままの状態でアシスト移動体を停止させておくことができる。
【0010】
この場合、好ましくは、駆動輪は、第1駆動輪と、アシスト移動体本体の直進方向と直交する方向に第1駆動輪と並んで配置される第2駆動輪とを含み、速度検出部は、第1駆動輪の走行速度を検出するための第1速度検出部と、第2駆動輪の走行速度を検出するための第2速度検出部とを含み、制御部は、直進用外乱推定オブザーバにより、第1速度検出部の検出結果および第2速度検出部の検出結果に基づいて、直進方向のアシスト移動体本体の走行速度を取得する処理を実行するように構成されている。このように構成すれば、第1速度検出部の検出結果と第2速度検出部の検出結果との両方の検出結果を用いることにより、直進方向のアシスト移動体本体の走行速度を精度良く取得することができるので、取得された直進方向のアシスト移動体本体の走行速度に基づいて、直進方向の外乱を精度良く推定することができる。
【0011】
上記速度検出部が第1速度検出部および第2速度検出部を含む構成において、好ましくは、制御部は、回転用外乱推定オブザーバにより、第1速度検出部の検出結果および第2速度検出部の検出結果に基づいて、回転方向のアシスト移動体本体の走行速度を取得する処理を実行するように構成されている。このように構成すれば、第1速度検出部および第2速度検出部により、直進方向のアシスト移動体本体の走行速度だけでなく、回転方向のアシスト移動体本体の走行速度も取得することができる。その結果、回転方向のアシスト移動体本体の走行速度を取得する検出部を別途設ける場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができるとともに、装置の構成を簡素化することができる。
【0012】
上記外乱推定オブザーバが直進用外乱推定オブザーバおよび回転用外乱推定オブザーバを含む構成において、好ましくは、力検出部は、操作者の左手による押圧力を検出するための第1力検出部と、操作者の右手による押圧力を検出するための第2力検出部とを含み、制御部は、直進用外乱推定オブザーバにより、第1力検出部の検出結果および第2力検出部の検出結果に基づいて、直進方向の操作者の押圧力を取得する処理を実行するように構成されており、制御部は、回転用外乱推定オブザーバにより、第1力検出部の検出結果および第2力検出部の検出結果に基づいて、回転方向の操作者の押圧力を取得する処理を実行するように構成されている。このように構成すれば、左手用の第1力検出部と右手用の第2力検出部との2つの力検出部によって、直進方向の操作者の押圧力および回転方向の操作者の押圧力の両方を取得することができる。
【0013】
上記一の局面によるアシスト移動体において、好ましくは、制御部は、外乱推定オブザーバにより推定された外乱を、外乱を含まない状態で駆動部により発生されるアシスト力から減算することによって、外乱を補償する処理を実行するように構成されている。このように構成すれば、駆動部により発生されるアシスト力を、推定された外乱の分だけ減少させることができるので、確実に、外乱を補償することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、外乱に依らず、操作者の意図に合致する走行速度で移動させることによって、操作者の違和感を抑制し、操作者の操作感を向上させることが可能なアシスト移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態によるアシスト移動体の全体構成を示す図である。
【図2】一実施形態のアシスト移動体の駆動系の構成を示すブロック図である。
【図3】一実施形態のアシスト移動体の駆動モータの制御を説明するための図である。
【図4】一実施形態のアシスト移動体の外乱推定オブザーバによる外乱の推定を説明するための図である。
【図5】一実施形態のアシスト移動体の運動モデルの座標系を説明するための図である。
【図6】直進方向の力と直進方向の速度(並進速度)との関係式のパラメータ“K1”を求めるための実験結果の一例を示す図である。
【図7】回転方向の力(モーメント)と回転方向の速度(回転速度)との関係式のパラメータ“K2”を求めるための実験結果の一例を示す図である。
【図8】傾斜した路面におけるアシスト移動体の停止実験の結果を説明するための図である。
【図9】平坦な路面においてアシスト移動体を直進方向に走行させた場合に得られる走行に関する指標の実験の結果を説明するための図である。
【図10】平坦な路面においてアシスト移動体を回転方向に走行させた場合に得られる走行に関する指標の実験の結果を説明するための図である。
【図11】傾斜した路面においてアシスト移動体を直進方向に走行させた場合に得られる走行に関する指標の実験の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面(図1~図7)に基づいて説明する。以下の説明では、前後方向、上下方向、および左右方向は、アシスト移動体100を基準とする方向である。すなわち、アシスト移動体100の前進方向(Y2方向)を前方とし、後進方向(Y1方向)を後方とする。また、アシスト移動体100の前進方向に対して右方向(X2方向)を右方とし、アシスト移動体100の前進方向に対して左方向(X1方向)を左方とする。また、前後方向(Y方向)および左右方向(X方向)に直交する方向(Z方向)を上下方向とする。

【0017】
(アシスト移動体の構成)
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態によるアシスト移動体100の構成について説明する。

【0018】
まず、図1を参照して、アシスト移動体100の基本構成を説明する。図1に示すように、アシスト移動体100は、操作者(図示せず)が把持部11に加えた押圧力に応じて、駆動モータ30aおよび30bにより駆動力を発生させることによって、操作者の移動(歩行)をアシストするアシスト移動体である。アシスト移動体100は、操作者が自立して歩行する際に、操作者の歩行をアシストする非搭乗型のアシスト移動体である。

【0019】
アシスト移動体100は、アシスト移動体本体10を備えている。アシスト移動体本体10は、把持部11と、連結部12と、台車部13と、2つの駆動輪14aおよび14bと、2つの自在輪15aおよび15bとを含んでいる。なお、駆動輪14aおよび14bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1駆動輪」および「第2駆動輪」の一例である。

【0020】
把持部11は、左右方向(X方向)に延びる棒状のハンドルであり、操作者の両手により把持される。具体的には、把持部11は、操作者の左手により把持される左手用把持部11aと、操作者の右手により把持される右手用把持部11bとを含んでいる。左手用把持部11aは、連結部12に対して左側(X1側)の把持部11の部分である。右手用把持部11bは、連結部12に対して右側(X2側)の把持部11の部分である。

【0021】
また、把持部11は、アシスト移動体本体10を操作者の押圧力により移動させるために設けられている。操作者は、把持部11を把持するとともに、把持した把持部11を押圧することによって、直進方向(Y方向)および回転方向(Z方向回りの回転方向)にアシスト移動体本体10を移動させることが可能である。

【0022】
連結部12は、把持部11と台車部13とを接続する部材であって、アシスト移動体本体10を回転方向に走行させる場合の回転軸である。連結部12は、上下方向に延びるように形成されており、上端が把持部11の中央部に接続され、下端が台車部13の後端部の中央部に接続されている。これにより、連結部12は、把持部11に加えられた操作者の押圧力を、台車部13、駆動輪14aおよび14b、自在輪15aおよび15bに伝達するように構成されている。

【0023】
台車部13は、操作者の荷物を載置するために設けられている。アシスト移動体100では、操作者は、台車部13上に荷物を載置して、運搬することが可能である。つまり、アシスト移動体100は、荷物を運搬することが可能なアシストカートである。

【0024】
2つの駆動輪14aおよび14bは、台車部13の後部の下方(Z2方向)に設けられており、アシスト移動体100の後輪を構成する。2つの駆動輪14aおよび駆動輪14bは、台車部13の後側(Y1側)の部分において、アシスト移動体本体10の直進方向(Y方向)と水平面内で直交する左右方向(X方向)に並んで配置されている。2つの駆動輪14aおよび14bは、連結部12に対して左右方向(X方向)に等距離(距離r)の位置に配置されている。

【0025】
駆動輪14aは、連結部12に対して左方(X1方向)に設けられる左側の駆動輪である。駆動輪14aには、後述する駆動モータ30aが取り付けられている。駆動輪14aは、駆動モータ30aにより駆動(回転)される。また、駆動輪14bは、連結部12に対して右方(X2方向)に設けられる右側の駆動輪である。駆動輪14bには、後述する駆動モータ30bが取り付けられている。駆動輪14bは、駆動モータ30bにより駆動(回転)される。

【0026】
2つの自在輪15aおよび15bは、台車部13の前部の下方(Z2方向)に設けられており、アシスト移動体100の前輪を構成する。自在輪15aおよび15bは、台車部13の前側(Y2側)の部分において、アシスト移動体本体10の直進方向(Y方向)と水平面内で直交する左右方向(X方向)に並んで配置されている。2つの自在輪15aおよび15bは、平面視で、連結部12に対して左右方向(X方向)に等距離の位置に配置されている。2つの自在輪15aおよび15bには、駆動モータは取り付けられていない。また、2つの自在輪15aおよび15bは、上下方向回りに回転することが可能なように構成されている。

【0027】
次に、図1および図2を参照して、アシスト移動体100の駆動系の構成について説明する。図1および図2に示すように、アシスト移動体100は、2つの力検出部20aおよび20bと、2つの駆動モータ30aおよび30bと、2つのモータドライバ40aおよび40b(図2参照)と、2つの速度検出部50aおよび50b(図2参照)と、制御部60(図2参照)とを備えている。なお、力検出部20aおよび20bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1力検出部」および「第2力検出部」の一例である。また、駆動モータ30aおよび30bは、共に、特許請求の範囲の「駆動部」の一例である。また、速度検出部50aおよび50bは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1速度検出部」および「第2速度検出部」の一例である。

【0028】
2つの力検出部20aおよび20bは、操作者が把持部11に加える押圧力を検出するために設けられている。2つの力検出部20aおよび20bは、たとえば、圧力検出部である。また、2つの力検出部20aおよび20bは、連結部12に対して左右方向(X方向)に等距離(距離L)の位置に配置されている。

【0029】
力検出部20aは、左手用把持部11aに設けられている。つまり、力検出部20aは、操作者の左手による押圧力FLHを検出するために設けられている。力検出部20aの検出結果は、制御部60により取得される。制御部60は、取得された力検出部20aの検出結果に基づいて、操作者の左手による押圧力FLHを取得するように構成されている。

【0030】
力検出部20bは、右手用把持部11bに設けられている。つまり、力検出部20bは、操作者の右手による押圧力FRHを検出するために設けられている。力検出部20bの検出結果は、制御部60により取得される。制御部60は、取得された力検出部20bの検出結果に基づいて、操作者の右手による押圧力FRHを取得するように構成されている。

【0031】
駆動モータ30aおよび30bは、力検出部20aの検出結果および力検出部20bの検出結果に基づいて、操作者の移動(歩行)をアシストするためのアシスト力を発生させるように構成されている。駆動モータ30aは、左側(X1側)の駆動輪14aを駆動するように構成されている。また、駆動モータ30bは、右側(X2側)の駆動輪14bを駆動するように構成されている。

【0032】
2つのモータドライバ40aおよび40bは、それぞれ、駆動モータ30aに流れる電流および駆動モータ30bに流れる電流を制御するように構成されている。モータドライバ40aは、制御部60から出力される左側の駆動モータ30a用のモータトルク指令値TL(図3参照)に基づいて、左側の駆動モータ30aに流れる電流IL(図3参照)を制御するように構成されている。モータドライバ40bは、制御部60から出力される右側の駆動モータ30b用のモータトルク指令値TR(図3参照)に基づいて、右側の駆動モータ30bに流れる電流IR(図3参照)を制御するように構成されている。

【0033】
2つの速度検出部50aおよび50bは、アシスト移動体本体10の走行速度を検出するために設けられている。速度検出部50aは、左側の駆動輪14aの走行速度を検出するために設けられている。具体的には、速度検出部50aは、左側の駆動モータ30aに設けられたエンコーダを含み、左側の駆動モータ30aの回転速度を検出するように構成されている。速度検出部50aの検出結果は、制御部60により取得される、制御部60は、取得された速度検出部50aの検出結果に基づいて、左側の駆動輪14aの走行速度vL(図4参照)を取得するように構成されている。

【0034】
速度検出部50bは、右側の駆動輪14bの走行速度を検出するために設けられている。具体的には、速度検出部50bは、右側の駆動モータ30bに設けられたエンコーダを含み、右側の駆動モータ30bの回転速度を検出するように構成されている。速度検出部50bの検出結果は、制御部60により取得される、制御部60は、取得された速度検出部50bの検出結果に基づいて、右側の駆動輪14bの走行速度vR(図4参照)を取得するように構成されている。

【0035】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含み、アシスト移動体100の動作を制御するように構成されている。制御部60は、アシスト移動体100の動作を制御する制御回路である。

【0036】
(外乱推定オブザーバに関する構成)
ここで、本実施形態では、図2に示すように、制御部60は、速度検出部50aおよび50bの検出結果に基づくアシスト移動体本体10の走行速度に基づいて、アシスト移動体本体10に作用した外力を取得し、取得された外力と、操作者による押圧力および駆動モータ30aおよび30bによるアシスト力とに基づいて、アシスト移動体本体10に作用した外乱を推定する外乱推定オブザーバ70を実行するとともに、外乱推定オブザーバ70により推定された外乱を補償するように構成されている。ここで、外乱とは、たとえば、傾斜した路面における重力の変動や、路面との間の摩擦力の変動、荷物の重量の変動などである。

【0037】
具体的には、本実施形態では、外乱推定オブザーバ70は、直進方向(Y方向)においてアシスト移動体本体10に作用した外乱FDOB(図3参照)を推定する直進用外乱推定オブザーバ71、および、回転方向(Z方向回りの回転方向)においてアシスト移動体本体10に作用した外乱MDOB(図3参照)を推定する回転用外乱推定オブザーバ72を含んでいる。制御部60は、直進用外乱推定オブザーバ71と、回転用外乱推定オブザーバ72とを実行するとともに、直進用外乱推定オブザーバ71により推定された直進方向の外乱FDOBおよび回転用外乱推定オブザーバ72により推定された回転方向の外乱MDOBを補償するように構成されている。

【0038】
ここで、図3を参照して、直進方向の外乱FDOBの補償と回転方向の外乱MDOBの補償とについて説明する。ここでは、直進方向の外乱FDOBの補償を先に説明する。

【0039】
図3に示すように、左側の力検出部20aの検出結果および右側の力検出部20bの検出結果に基づいて、直進方向の基本アシスト力{α1・(FLH+FRH)}が、制御部60(直進用外乱推定オブザーバ71)により取得される。ここで、直進方向の基本アシスト力は、直進方向の外乱FDOBを含まない状態で駆動モータ30aおよび30bにより発生される直進方向のアシスト力である。また、α1は、直進方向のアシスト力を生成させるために予め設定されるアシスト率である。つまり、アシスト移動体100では、操作者が左手による押圧力FLHおよび右手による押圧力FRHで押すと、操作者の直進方向の押圧力(FLH+FRH)のα1倍の直進方向の基本アシスト力が制御部60により取得される。α1は、たとえば、約1.5に設定される。

【0040】
また、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度(後述するV(s))に基づいて、直進方向においてアシスト移動体本体10に作用した外乱FDOBが推定され、制御部60(直進用外乱推定オブザーバ71)により取得される。直進方向の外乱FDOBは、図4に示すステップS19において算出され出力されたものを用いる。この直進方向の外乱FDOBの推定方法の詳細は、後述する。

【0041】
そして、ステップS1では、取得された直進方向の基本アシスト力{α1・(FLH+FRH)}から、直進方向の外乱FDOBが減算されることによって、直進方向のアシスト力FAが制御部60により取得される。つまり、ステップS1では、直進方向の外乱FDOBが補償されている。

【0042】
また、直進方向とは別個に、力検出部20aの検出結果および力検出部20bの検出結果に基づいて、回転方向の基本アシスト力(モーメント){α2・(FRH-FLH)・L}が、制御部60(回転用外乱推定オブザーバ72)により取得される。なお、Lは、上記のように、連結部12(アシスト移動体本体10の回転軸)と力の作用点(力検出部20a(20b))との間の距離である。ここで、回転方向の基本アシスト力(モーメント)は、回転方向の外乱MDOBを含まない状態で駆動モータ30aおよび30bにより発生される回転方向のアシスト力(モーメント)である。また、α2は、回転方向のアシスト力を生成させるために予め設定されるアシスト率である。α2は、α1と同じ値でもよいし、α1とは異なる値でもよい。つまり、アシスト移動体100では、操作者が左手による押圧力FLHおよび右手による押圧力FRHで押すと、操作者の回転方向の押圧力(FRH-FLH)・Lのα2倍の回転方向の基本アシスト力が制御部60により取得される。

【0043】
また、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度(後述するΩ(s))に基づいて、回転方向においてアシスト移動体本体10に作用した外乱MDOBが推定され、制御部60(回転用外乱推定オブザーバ72)により取得される。回転方向の外乱MDOBは、図4に示すステップS30において算出され出力されたものを用いる。この回転方向の外乱MDOBの推定方法の詳細は、後述する。

【0044】
そして、ステップS2では、取得された回転方向の基本アシスト力{α2・(FRH-FLH)・L}から、回転方向の外乱MDOBが減算されることによって、回転方向のアシスト力(モーメント)MAが制御部60により取得される。つまり、ステップS2では、回転方向の外乱MDOBが補償されている。

【0045】
そして、ステップS3では、直進方向の外乱FDOBが補償された直進方向のアシスト力FA、および、回転方向の外乱MDOBが補償された回転方向のアシスト力MAに基づいて、左側の駆動モータ30a用のモータトルク指令値TL、および、右側の駆動モータ30b用のモータトルク指令値TRが制御部60により取得される。

【0046】
そして、ステップS4では、左側の駆動モータ30a用のモータトルク指令値TLが左側の駆動モータ30a用のモータドライバ40aに入力される。そして、入力された左側の駆動モータ30a用のモータトルク指令値TLに基づいて、左側の駆動モータ30a用のモータドライバ40aにより、左側の駆動モータ30aに流れる電流ILが制御される。

【0047】
同様に、ステップS4では、右側の駆動モータ30b用のモータトルク指令値TRが右側の駆動モータ30b用のモータドライバ40bに入力される。そして、入力された右側の駆動モータ30b用のモータトルク指令値TRに基づいて、右側の駆動モータ30b用のモータドライバ40bにより、右側の駆動モータ30bに流れる電流IRが制御される。以上のように、本実施形態では、傾斜した路面における重力や路面との間の摩擦力、荷物の重量などの変動に起因する外乱(FDOBおよびMDOB)が、アシスト移動体100に作用したとしても、外乱推定オブザーバ70により外乱が推定され、制御部60により外乱が補償される。

【0048】
次に、図4を参照して、直進用外乱推定オブザーバ71による直進方向の外乱FDOBの推定、および、回転用外乱推定オブザーバ72による回転方向の外乱MDOBの推定について説明する。

【0049】
なお、図4に示すステップS11~S19は、直進用外乱推定オブザーバ71による直進方向の外乱FDOBの推定に対応する。したがって、ステップS11~S19の処理は、直進用外乱推定オブザーバ71(制御部60)により行われる。また、図4に示すステップS21~S30は、回転用外乱推定オブザーバ72による回転方向の外乱MDOBの推定に対応する。したがって、ステップS21~S30の処理は、回転用外乱推定オブザーバ72(制御部60)により行われる。ここでは、直進用外乱推定オブザーバ71による直進方向の外乱FDOBの推定(ステップS11~19)を先に説明する。

【0050】
図4に示すように、ステップS11では、左側の力検出部20aの検出結果に基づく操作者の左手による押圧力FLHと、右側の力検出部20aの検出結果に基づく操作者の右手による押圧力FRHとが加算される。これにより、ステップS11では、左側の力検出部20aの検出結果と右側の力検出部20bの検出結果とに基づいて、直進方向の操作者の押圧力(FLH+FRH)が取得される。

【0051】
そして、ステップS12では、直進方向の操作者の押圧力(FLH+FRH)にアシスト率α1が乗算される。つまり、ステップS12では、直進方向の基本アシスト力{α1・(FLH+FRH)}が取得される。

【0052】
そして、ステップS13では、直進方向の操作者の押圧力(FLH+FRH)と、直進方向の基本アシスト力{α1・(FLH+FRH)}とが加算される。

【0053】
そして、ステップS14では、後述するステップS19において推定される直進方向の外乱FDOBが、ステップS13において取得された{(FLH+FRH)+(α1・(FLH+FRH))}から減算される。この結果、ステップS14では、{(FLH+FRH)+(α1・(FLH+FRH))-FDOB}が取得される。つまり、ステップS14では、直進方向の操作者の押圧力(FLH+FRH)と、駆動モータ30aおよび30bによる直進方向の全アシスト力{(α1・(FLH+FRH))-FDOB}(=FA(図3参照))とが加算された値が取得される。

【0054】
そして、ステップS15では、ステップS14において取得された{(FLH+FRH)+(α1・(FLH+FRH))-FDOB}に、(1/(T1s)+1)が乗算されることによって、ローパスフィルタによる高周波成分のカットが行われる。(1/(T1s)+1)は、直進方向用のローパスフィルタを表す関数である。ステップS11~S15では、アシスト移動体本体10に作用させる直進方向の力が求められる。

【0055】
また、ステップS16において、左側の速度検出部50aの検出結果に基づく左側の駆動輪14aの走行速度vLと、右側の速度検出部50aの検出結果に基づく右側の駆動輪14bの走行速度vRとが加算される。

【0056】
そして、ステップS17では、加算された(vL+vR)に、1/2が乗算される。つまり、ステップS17では、速度検出部50aの検出結果および速度検出部50bの検出結果に基づいて、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)が取得される。具体的には、左側の駆動輪14aの走行速度vLと、右側の駆動輪14bの走行速度vRとの走行速度の平均値を取得することによって、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)が取得される。

【0057】
そして、ステップS18では、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)に、(ms+K1)が乗算される。ここで、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)と、アシスト移動体本体10に作用した直進方向の外乱FDOBを含む、実際にアシスト移動体本体10に作用した直進方向の外力F(s)との関係は、以下の式(1)により表される。なお、式(1)において、mは、荷物を積載していない状態の(無負荷の)アシスト移動体100の重量であり、sは、ラプラス変換を示すものであり、K1は、後述する実験から求められる定数である。
【数1】
JP2018057759A_000003t.gif

【0058】
上記式(1)は、アシスト移動体100の運動モデルから導出される直進方向の力と直進方向の速度(並進速度)との関係式である。この直進方向の力と直進方向の速度との関係式の詳細は、後述する。

【0059】
したがって、ステップS18では、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)に、(ms+K1)が乗算されることによって、アシスト移動体本体10に作用した直進方向の外乱FDOBを含む、実際にアシスト移動体本体10に作用した直進方向の外力F(s)が取得される。また、ステップS18では、ステップS15と同様に、取得された外力F(s)に、(1/(T1s)+1)が乗算されることによって、ローパスフィルタによる高周波成分のカットが行われる。

【0060】
そして、ステップS19では、ステップS15において取得された高周波成分のカット後の{(FLH+FRH)+(α1・(FLH+FRH))-FDOB}から、ステップS18において取得された高周波成分のカット後の外力F(s)が減算される。つまり、ステップS19では、アシスト移動体本体10に作用させた直進方向の力から、実際にアシスト移動体本体10に作用した直進方向の力が減算される。実際にアシスト移動体本体10に作用した直進方向の力(外力F(s))には、直進方向の外乱FDOBが含まれているため、ステップS19では、上記した減算によって、直進方向の外乱FDOBが取得(推定)される。そして、取得(推定)された直進方向の外乱FDOBは、ステップS14において次の時点の直進方向の外乱FDOBを取得(推定)するのに用いられるとともに、図3に示すステップS1に入力され、現在出力すべき直進方向のアシスト力FAを取得するのに用いられる。

【0061】
次に、ステップS21~S30を参照して、回転用外乱推定オブザーバ72による回転方向の外乱MDOBの推定を説明する。

【0062】
ステップS21では、右側の力検出部20aの検出結果に基づく操作者の右手による押圧力FRHから、左側の力検出部20aの検出結果に基づく操作者の左手による押圧力FLHが減算される。

【0063】
そして、ステップS22では、減算された(FRH-FLH)にアシスト率α2が乗算される。

【0064】
そして、ステップS23では、ステップS21において取得された(FRH-FLH)と、ステップS22において取得された{α2・(FRH-FLH)}とが加算される。

【0065】
そして、ステップS24では、{(FRH-FLH)+α2・(FRH-FLH)}に、連結部12と力の作用点(力検出部20a(20b))との間の距離Lが乗算される。これにより、ステップS24では、左側の力検出部20aの検出結果と右側の力検出部20bの検出結果とに基づいて、回転方向の操作者の押圧力(モーメント)(FRH-FLH)・Lが取得されるとともに、回転方向の基本アシスト力(モーメント){α2・(FRH-FLH)・L}が取得される。

【0066】
そして、ステップS25では、後述するステップS30において推定される回転方向の外乱MDOBが、ステップS24において取得された{(FRH-FLH)・L+α2・(FRH-FLH)・L}から減算される。この結果、ステップS25では、{(FRH-FLH)・L+α2・(FRH-FLH)・L-MDOB}が取得される。つまり、ステップS25では、回転方向の操作者の押圧力(FRH-FLH)・Lと、駆動モータ30aおよび30bによる回転方向の全アシスト力{(α2・(FRH-FLH)・L-MDOB)(=MA(図3参照))とが加算された値が取得される。

【0067】
そして、ステップS26では、加算された{(FRH-FLH)・L+α2・(FRH-FLH)・L-MDOB}に、(1/(T3s)+1)が乗算されることによって、ローパスフィルタによる高周波成分のカットが行われる。(1/(T3s)+1)は、回転方向用のローパスフィルタを表す関数である。ステップS21~S26では、アシスト移動体本体10に作用させる回転方向の力が求められる。

【0068】
また、ステップS27において、右側の速度検出部50bの検出結果に基づく右側の駆動輪14bの走行速度vRから、左側の速度検出部50aの検出結果に基づく左側の駆動輪14aの走行速度vLが減算される。

【0069】
そして、ステップS28では、減算された(vR-vL)に、1/(2r)が乗算される。なお、rは、上記のように、駆動輪14a(14b)と連結部12(アシスト移動体本体10の回転軸)との間の距離である。つまり、ステップS28では、速度検出部50aの検出結果および速度検出部50bの検出結果に基づいて、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度(角速度)Ω(s)が取得される。具体的には、右側の駆動輪14bの走行速度vRから、左側の駆動輪14aの走行速度vLを減算した値を、回転直径(2r)で除算することによって、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)が取得される。

【0070】
そして、ステップS29では、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)に、(I33s+K2)が乗算される。ここで、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)と、アシスト移動体本体10に作用した回転方向の外乱MDOBを含む、実際にアシスト移動体本体10に作用した回転方向の外力M(s)との関係は、以下の式(2)により表される。なお、I33は、アシスト移動体100のzr軸(図5参照)周りの慣性モーメントであり、sは、ラプラス変換を示すものであり、K2は、後述する実験により求められる定数である。
【数2】
JP2018057759A_000004t.gif

【0071】
上記式(2)は、アシスト移動体100の運動モデルから導出される回転方向の力と回転歩行の速度(回転速度)との関係式である。この回転方向の力と回転方向の速度との関係式の詳細は、後述する。

【0072】
したがって、ステップS29では、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)に、(I33s+K2)が乗算されることによって、アシスト移動体本体10に作用した回転方向の外乱MDOBを含む、実際にアシスト移動体本体10に作用した回転方向の外力M(s)が取得される。また、ステップS29では、ステップS26と同様に、取得された外力M(s)に、(1/(T3s)+1)が乗算されることによって、ローパスフィルタによる高周波成分のカットが行われる。

【0073】
そして、ステップS30では、ステップS26において取得された高周波成分のカット後の{(FRH-FLH)・L+α2・(FRH-FLH)・L-MDOB}から、ステップS29において取得された高周波成分のカット後の外力M(s)が減算される。つまり、ステップS19では、アシスト移動体本体10に作用させた回転方向の力から、実際にアシスト移動体本体10に作用した回転方向の力が減算される。実際にアシスト移動体本体10に作用した回転方向の力(外力M(s))には、回転方向の外乱MDOBが含まれているため、ステップS30では、上記した減算によって、回転方向の外乱MDOBが取得(推定)される。取得(推定)された直進方向の外乱MDOBは、ステップS24において次の時点の回転方向の外乱MDOBを取得(推定)するのに用いられるとともに、図3に示すステップS2に入力されて、現在出力すべき回転方向のアシスト力MAを取得するのに用いられる。

【0074】
(アシスト移動体の運動モデル)
次に、図5を参照して、アシスト移動体100の運動モデルを説明する。この運動モデルから、上記した直進方向の外乱FDOBを推定するのに用いられた式(1)、および、回転方向の外乱MDOBを推定するのに用いられた式(2)が導出される。

【0075】
〈座標系〉
図5に示すように、絶対座標系Σ0は、平坦な路面で固定した基準座標系である。機体座標系Σrは、アシスト移動体100に設定した物体座標系である。機体座標系Σrの原点は、駆動輪14aおよび14bを結ぶ直線と、連結部12(アシスト移動体本体10の回転軸)が延びる方向の直線との交差点である。xr軸は、原点から右側の駆動輪14bに向かう軸である。yr軸は、原点からアシスト移動体100の前進方向に向かう軸である。zr軸は、原点から連結部12(アシスト移動体本体10の回転軸)が延びる方向であって上向きの軸である。時刻0におけるアシスト移動体100の位置を初期位置とし、初期位置におけるヨー角度γを0とした。ヨー角度γは、連結部12回り(zr軸回り)の回転角度である。また、絶対座標系Σ0を、ピッチ方向にピッチ角度β、ロール方向にロール角度θで回転させると、初期位置のアシスト移動体100の機体座標系Σrになる。また、時刻tでは、ヨー角度γをγとした。なお、図5では、座標系の関係をわかりやすくするために、それぞれの座標系の原点を合わせずに記載している。

【0076】
〈傾斜した路面の角度〉
傾斜した路面のピッチ角度βおよびロール角度θは、変わらないと仮定した。

【0077】
〈車輪〉
前輪(自在輪15aおよび15b)には、駆動モータが取り付けられていないので、後輪(駆動輪14aおよび14b)しかないと仮定した。

【0078】
〈回転軸〉
連結部12(アシスト移動体本体10の回転軸)は、把持部11の中心と、駆動輪14aおよび14bを結ぶ直線の中心と平面視で重なっていると仮定した。

【0079】
〈操作者の力〉
操作者の左手がFLHの力で押圧し、操作者の右手がFRHの力で押圧すると仮定した。また、操作者の力(FLHおよびFRH)の方向は、アシスト移動体100の直進方向(yr軸の正方向)に向かっていると仮定した。また、操作者の左手がFLHの力を加える位置である左側の作用点、および、操作者の右手がFRHの力を加える位置である右側の作用点は、中心にある回転軸(連結部12)に対して等距離の位置であり、距離はLと仮定した。

【0080】
〈回転行列〉
時刻tに、絶対座標系Σ0から機体座標系Σrまで動いた回転行列Rは、以下の式(3)により表される。
【数3】
JP2018057759A_000005t.gif

【0081】
<座標系単位ベクトル>
機体座標系Σrのxr軸、yr軸およびzr軸の単位ベクトルは、それぞれ以下の式(4)、式(5)および式(6)により表される。
【数4】
JP2018057759A_000006t.gif
【数5】
JP2018057759A_000007t.gif
【数6】
JP2018057759A_000008t.gif

【0082】
<直進方向の走行速度>
直進方向の走行速度vは、左側の駆動輪14aの走行速度vLおよび右側の駆動輪14bの走行速度vRを用いて、以下の式(7)により表される。また、絶対座標系Σ0から見る直進方向の走行速度vのベクトルv0は、以下の式(8)により表される。
【数7】
JP2018057759A_000009t.gif
【数8】
JP2018057759A_000010t.gif

【0083】
<回転方向の速度>
回転方向の速度(角速度)ωは、左側の駆動輪14aの走行速度vL、右側の駆動輪14bの走行速度vR、および、駆動輪14a(14b)と連結部12(アシスト移動体本体10の回転軸)との間の距離(回転半径)rを用いて、以下の式(9)により表される。また、絶対座標系Σ0から見る回転方向の走行速度ωのベクトルω0は、以下の式(10)により表される。また、機体座標系Σrから見る回転方向の走行速度ωのベクトルωrは、以下の式(11)により表される。
【数9】
JP2018057759A_000011t.gif
【数10】
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【数11】
JP2018057759A_000013t.gif

【0084】
<直進方向の力の釣り合い>
絶対座標系Σ0から見るアシスト移動体100が受ける直進方向の全ての力の釣り合いは、以下の式(12)により表される。
【数12】
JP2018057759A_000014t.gif

【0085】
ここで、式(12)において、(FLH+FRH)は、操作者の左手の力および右手の力である。また、FAは、アシスト移動体100が提供した力であって、以下の式(13)により表される。α1は、直進方向のアシスト率であり、FDOBは、直進用外乱推定オブザーバ71により推定される外乱の力である。
【数13】
JP2018057759A_000015t.gif

【0086】
また、式(12)において、G(G=[0,0,g]。gは、重力加速度)、fxr・xr、fyr・yrおよびfzr・zrは、重力や空気抵抗などによりアシスト移動体100が受ける力である。また、式(12)において、右辺は加速度の項と速度の項である。加速度の項におけるmは、荷物を積載していない状態の(無負荷の)アシスト移動体100の重量であり、速度の項におけるK1は、後述する実験により求められる定数である。

【0087】
そして、式(12)に、左からyrの転置行列yrTを乗算するとともに、F=(FLH+FRH)+FAとし、d1=fyr+yrTGとすると、以下の式(14)が得られる。また、式(14)をラプラス変換すると、以下の式(15)が得られる。ただし、式(15)において、V(s)は、vをラプラス変換したものであり、F(s)は、Fをラプラス変換したものであり、d1(s)は、d1をラプラス変換したものである。
【数14】
JP2018057759A_000016t.gif
【数15】
JP2018057759A_000017t.gif

【0088】
そして、式(15)のd1(s)を無視すると式(15)から、直進方向の力と直進方向の速度との関係式である以下の式(16)が得られる。
【数16】
JP2018057759A_000018t.gif

【0089】
そして、式(16)から、上記した直進方向の外乱FDOBを推定するのに用いられた式(1)が得られる。

【0090】
ここで、式(16)において、mおよびK1の値が分からなければ、直進方向の走行速度V(s)を、直進方向の外力F(s)に変換することができない。上記のように、mは、荷物を積載していない状態の(無負荷の)アシスト移動体100の重量であるので、既知の値である。そして、K1は、以下のような実験から得られる。すなわち、加速度が0である一定な速度で、アシスト移動体100を直進方向に自律走行させる。そして、図6に示すように、自律走行時の速度の値と、自律走行時の駆動モータの力との関係を複数点においてプロットすると、一次関数(F1=K1・v+d1)が得られる。そして、この一次関数の傾きを、K1として得ることができる。ただし、d1を定数としている。

【0091】
<回転方向の力の釣り合い>
絶対座標系Σ0から見るアシスト移動体100が受ける回転方向の全ての力(モーメント)の釣り合いは、以下の式(17)により表される。
【数17】
JP2018057759A_000019t.gif

【0092】
ここで、式(17)において、(FRH-FLH)・Lは、操作者が提供した力(モーメント)である。なお、Lは、連結部12(アシスト移動体本体10の回転軸)と力の作用点(力検出部20a(20b))との間の距離である。また、MAは、アシスト移動体100が提供した力(モーメント)であって、以下の式(18)により表される。α2は、回転方向のアシスト率であり、MDOBは、回転用外乱推定オブザーバ72により推定される外乱の力(モーメント)である。
【数18】
JP2018057759A_000020t.gif

【0093】
また、式(18)において、MG、Mxr・xr、Myr・yrおよびMzr・zrは、重力や空気抵抗などによりアシスト移動体100が受ける力である。また、式(18)において、R・(I・(dωr/dt))は、角加速度の項である。(R・ωr)・(R・(R・(I・ωr)))は、慣性による項である。また、K2ω0は、粘性による項である。粘性による項におけるK2は、後述する実験により求められる定数である。また、Iは、機体座標系Σrから見るアシスト移動体100の慣性モーメントである。

【0094】
そして、式(17)に、左からzrの転置行列zrTを乗算するとともに、M=(FRH-FLH)・L+MAとし、d2=Mzrとすると、以下の式(19)が得られる。また、式(19)をラプラス変換すると、以下の式(20)が得られる。ただし、式(20)において、Ω(s)は、ωをラプラス変換したものであり、M(s)は、Mをラプラス変換したものであり、d2(s)は、d2をラプラス変換したものである。
【数19】
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【数20】
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【0095】
そして、式(20)のd2(s)を無視すると式(20)から、回転方向の力(モーメント)と回転方向の速度(角速度)との関係式である以下の式(21)が得られる。
【数21】
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【0096】
そして、式(21)から、上記した回転方向の外乱MDOBを推定するのに用いられた式(2)が得られる。

【0097】
ここで、式(21)において、I33およびK2の値が分からなければ、回転方向の走行速度Ω(s)を、回転方向の外力M(s)に変換することができない。I33は、アシスト移動体100のzr軸周りの慣性モーメントである。そして、K2は、以下のような実験から得られる。すなわち、角加速度が0である一定な速度で、アシスト移動体100を回転方向に自律走行させる。そして、図7に示すように、自律走行時の角速度の値と、自律走行時の駆動モータの力(モーメント)との関係を複数点においてプロットすると、一次関数(M1=K2・ω+d2)が得られる。そして、この一次関数の傾きを、K2として得ることができる。ただし、d2を定数としている。

【0098】
(外乱推定オブザーバの実験結果)
次に、図8~図11を参照して、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72を備えるアシスト移動体100を用いた実験結果について説明する。

【0099】
〈傾斜した路面におけるアシスト移動体の停止実験結果〉
まず、図8を参照して、傾斜した路面におけるアシスト移動体の停止実験の結果について説明する。この実験は、傾斜した路面において、アシスト移動体が任意姿勢で停止するか否かを確認するために行った。実験では、0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度および315度の角度の向きで、アシスト移動体を傾斜した路面に配置し、アシスト移動体から手を離して、アシスト移動体が停止するか否かを確認した。角度は、アシスト移動体の向きが、上り方向である場合を0度とし、下り方向である場合を180度とした。また、アシスト移動体が停止するか否かは、速度検出部の計測結果に基づいて判断した。また、実験は、約6度の傾斜した路面で行った。また、実験は、アシスト移動体に荷物を載せない場合(0kgの場合)と、アシスト移動体に10kgの荷物を載せた場合とにおいて行った。

【0100】
図8は、上記実施形態のアシスト移動体100(実施例)と、アシスト機能をオフにした状態のアシスト移動体(比較例1)による実験結果を示す。図8の表では、「×」は、手を離すと停止することができないことを表し、「△」は、アシスト移動体の前輪の角度によって時々停止することができることを表し、「○」は、何回の実験を行っても、停止することができることを表す。

【0101】
図8に示すように、比較例1では、アシスト移動体に荷物を載せない場合(0kgの場合)とアシスト移動体に10kgの荷物を載せた場合とのいずれの場合にも、90度および180度において、アシスト移動体の前輪の角度によって時々停止することができるだけで、0度、45度、135度、225度、270度および315度では、アシスト移動体を停止することができなかった。

【0102】
一方、実施例では、アシスト移動体に荷物を載せない場合(0kgの場合)とアシスト移動体に10kgの荷物を載せた場合との両方の場合において、0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度および315度のいずれの角度であっても、アシスト移動体を停止することができた。これは、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72によって、傾斜した路面における重力の変動およびアシスト移動体に載置された荷物の重量の変動による影響が補償されたためであると考えられる。したがって、本実験では、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72を備えることによって、傾斜した路面において、アシスト移動体を任意の姿勢で停止させることができることが確認できた。

【0103】
〈走行に関する指標の実験結果・平坦な路面/直進〉
次に、図9を参照して、平坦な路面においてアシスト移動体を直進方向に走行させた場合に得られる走行に関する指標の実験結果を説明する。走行に関する指標FEは、以下の式(26)により表されるものを定義して用いた。
【数22】
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【0104】
走行に関する指標FEは、操作者がどれだけ楽にアシスト移動体を押せるかを判断するための指標である。式(26)の分母は、操作者がアシスト移動体を押す仕事を表し、式(26)の分子は、アシスト移動体が動いた仕事を表す。走行に関する指標FEは、値が大きいほど、操作者がアシスト移動体を押す仕事に対して、アシスト移動体が大きく動いたことを表す。したがって、走行に関する指標FEは、値が大きいほど、操作者が楽にアシスト移動体を押せることを表す。

【0105】
また、この実験では、メトロノームで85bpmのテンポに従い、一定のペースで平坦な路面においてアシスト移動体を走行させた。実験は、屋内、タイル、砂地の3種類の異なる路面において行った。この実験では、屋内、タイル、砂地の順に路面の摩擦力が大きい。また、実験は、アシスト移動体に荷物を載せない場合(0kgの場合)と、アシスト移動体に10kgの荷物を載せた場合とにおいて行った。また、各条件において、5回の実験を行い、5回分の走行に関する指標FEの平均値を測定値とした。

【0106】
図9は、上記実施形態のアシスト移動体100(実施例)と、アシスト機能をオフにした状態のアシスト移動体(比較例1)と、外乱オブザーバを備えずアシスト率α1=α2=1.5でアシストするアシスト移動体(比較例2)による実験結果を示す。

【0107】
図9に示すように、屋内の平坦な路面を直進方向に走行させた実験結果では、比較例2の走行に関する指標FEと、実施例との走行に関する指標FEとの間に、大きな差は見られなかった。これは、屋内の平坦な路面を直進させる場合には、重力の影響や路面との摩擦の影響が小さく、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72による外乱補償の効果が小さいためであると考えられる。

【0108】
一方、タイルおよび砂地の平坦な路面を直進方向に走行させた実験結果では、比較例1および比較例2に比べて、実施例の走行に関する指標FEが大きくなった。これは、タイルおよび砂地の平坦な路面を直進させる場合には、屋内の平坦な路面を直進させる場合に比べて、路面との摩擦の影響が大きく、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72による外乱補償の効果が大きいためであると考えられる。

【0109】
〈走行に関する指標の実験結果・平坦な路面/回転〉
次に、図10を参照して、平坦な路面においてアシスト移動体を回転方向に走行させた場合に得られる走行に関する指標の実験結果を説明する。走行に関する指標FEは、上記した式(26)により表されるものを用いた。

【0110】
実験は、屋内、タイル、砂地の3種類の異なる路面において行った。また、実験は、アシスト移動体に荷物を載せない場合(0kgの場合)と、アシスト移動体に10kgの荷物を載せた場合とにおいて行った。

【0111】
図10は、上記実施形態のアシスト移動体100(実施例)と、アシスト機能をオフにした状態のアシスト移動体(比較例1)と、外乱オブザーバを備えずアシスト率α1=α2=1.5でアシストするアシスト移動体(比較例2)による実験結果を示す。

【0112】
図10に示すように、屋内、タイルおよび砂地の平坦な路面のいずれの路面を回転方向に走行させた実験結果でも、比較例1および比較例2に比べて、実施例の走行に関する指標FEが大きくなった。これは、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72による外乱補償の効果によるものであると考えられる。

【0113】
〈走行に関する指標の実験結果・傾斜した路面/直進〉
次に、図11を参照して、傾斜した路面においてアシスト移動体を直進方向に走行させた場合に得られる走行に関する指標の実験結果を説明する。走行に関する指標FEは、上記した式(26)により表されるものを用いた。

【0114】
実験は、タイル地であって、水平面に対して約8度傾斜した路面において行った。また、実験は、アシスト移動体に荷物を載せない場合(0kgの場合)と、アシスト移動体に10kgの荷物を載せた場合とにおいて行った。また、実験は、傾斜した路面を上る場合と、傾斜した路面を下る場合とにおいて行った。

【0115】
図11は、上記実施形態のアシスト移動体100(実施例)と、アシスト機能をオフにした状態のアシスト移動体(比較例1)と、外乱オブザーバを備えずアシスト率α1=α2=1.5でアシストするアシスト移動体(比較例2)による実験結果を示す。

【0116】
図11に示すように、傾斜した路面を上る場合と傾斜した路面を下る場合とのいずれの実験結果でも、比較例1および比較例2に比べて、実施例の走行に関する指標FEが大きくなった。これは、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72による外乱補償の効果によるものであると考えられる。図9~図11に示す実験では、直進用外乱推定オブザーバ71および回転用外乱推定オブザーバ72を備えることによって、路面や荷物の重量によって、操作者の押圧力に対する走行速度が異なることを抑制することができることを確認できた。

【0117】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。

【0118】
本実施形態では、上記のように、アシスト移動体本体10に作用した外乱(FDOBおよびMDOB)を推定する外乱推定オブザーバ70を実行するとともに、外乱推定オブザーバ70により推定された外乱を補償する制御部60を設ける。これにより、傾斜した路面における重力や路面との間の摩擦力などの変動に起因する外乱がアシスト移動体100に作用したとしても、外乱推定オブザーバ70により外乱が推定され、補償されるので、操作者の押圧力に対するアシスト移動体100の走行速度を安定させることができる。つまり、アシスト移動体100が傾斜した路面(坂道)を走行する場合には、傾斜した路面における重力の変動による影響が補償されるので、操作者の押圧力に対して、平坦な路面を走行する場合に近いアシスト移動体100の走行速度が得られる。また、アシスト移動体100が摩擦が大きい路面を走行する場合には、路面との間の摩擦力の変動による影響が補償されるので、操作者の押圧力に対して、アシスト移動体100が摩擦が小さい路面を走行する場合に近いアシスト移動体100の走行速度が得られる。また、本実施形態のようにアシスト移動体100に荷物を載置可能な場合には、載置された荷物の重量の変動に起因する外乱がアシスト移動体100に作用したとしても、外乱推定オブザーバ70により外乱が推定され、補償されるので、操作者の押圧力に対するアシスト移動体100の走行速度を安定させることができる。つまり、アシスト移動体100に荷物が載置される場合には、載置された荷物の重量の変動による影響が補償されるので、操作者の押圧力に対して、荷物を載置していない場合に近いアシスト移動体100の走行速度が得られる。これらの結果、路面によって、操作者の押圧力に対する走行速度が異なることを抑制することができるので、操作者の意図とは異なる走行速度でアシスト移動体100が移動することを抑制することができる。その結果、外乱に依らず、操作者の意図に合致する走行速度でアシスト移動体100を移動させるができるので、操作者の違和感を抑制し、操作者の操作感を向上させることができる。また、一般的に、傾斜した路面における重力の変動による影響を補償するためには、アシスト移動体100に加速度センサなどの傾斜角取得用のセンサを設けて、傾斜した路面の傾斜角を検出する必要があると考えられる。また、本実施形態のようにアシスト移動体100に荷物を載置可能な場合には、荷物の重量により、アシスト移動体100の総重量が変化する。このため、傾斜した路面における重力の変動による影響を補償するためには、傾斜角取得用のセンサに加えて、さらに重量取得用のセンサを設けて、アシスト移動体100の総重量を取得する必要があると考えられる。一方、本実施形態では、傾斜した路面における重力の変動による影響を補償するために、傾斜した路面の傾斜角を検出する必要が無く、アシスト移動体100の総重量を検出する必要も無いので、アシスト移動体100に傾斜角取得用のセンサおよび重量取得用のセンサを設ける必要がない。その結果、アシスト移動体100の構成を簡素化しつつ、操作者の意図に合致する走行速度でアシスト移動体100を移動させるができる。

【0119】
また、本実施形態では、上記のように、外乱推定オブザーバ70が、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)に基づいて、直進方向においてアシスト移動体本体10に作用した外乱FDOBを推定するとともに、推定された直進方向の外乱FDOBを補償する直進用外乱推定オブザーバ71と、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)に基づいて、回転方向においてアシスト移動体本体10に作用した外乱MDOBを推定するとともに、推定された回転方向の外乱MDOBを補償する回転用外乱推定オブザーバ72と、を含んでいる。そして、制御部60を、直進用外乱推定オブザーバ71と、回転用外乱推定オブザーバ72とを実行するとともに、直進用外乱推定オブザーバ71により推定された直進方向の外乱FDOBおよび回転用外乱推定オブザーバ72により推定された回転方向の外乱MDOBを補償するように構成する。これにより、直進方向の外乱FDOBおよび回転方向の外乱MDOBの両方を補償することができるので、いずれの路面をいずれの方向にアシスト移動体100が走行する場合であっても、アシスト移動体100の走行速度を安定させることができる。その結果、操作者の違和感をさらに抑制することができるので、操作者の操作感をさらに向上させることができる。また、直進方向の外乱FDOBおよび回転方向の外乱MDOBの両方を補償することができるので、たとえば、傾斜した路面において操作者が把持部から手を離した場合に、そのままの状態でアシスト移動体100を停止させておくことができる。

【0120】
また、本実施形態では、上記のように、制御部60を、直進用外乱推定オブザーバ71により、左側の速度検出部50aの検出結果および右側の速度検出部50bの検出結果に基づいて、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)を取得する処理を実行するように構成する。これにより、速度検出部50aの検出結果と速度検出部50bの検出結果との両方の検出結果を用いることにより、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)を精度良く取得することができるので、取得された直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)に基づいて、直進方向の外乱FDOBを精度良く取得することができる。

【0121】
また、本実施形態では、上記のように、制御部60を、回転用外乱推定オブザーバ72により、左側の速度検出部50aの検出結果および右側の速度検出部50bの検出結果に基づいて、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)を取得する処理を実行するように構成する。これにより、左側の速度検出部50aおよび右側の速度検出部50bにより、直進方向のアシスト移動体本体10の走行速度V(s)だけでなく、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)も取得することができる。その結果、回転方向のアシスト移動体本体10の走行速度Ω(s)を取得する検出部を別途設ける場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができるとともに、装置の構成を簡素化することができる。

【0122】
また、本実施形態では、上記のように、制御部60を、直進用外乱推定オブザーバ71により、左側の力検出部20aの検出結果および右側の力検出部20bの検出結果に基づいて、直進方向の操作者の押圧力(FLH+FRH)を取得する処理を実行するように構成する。そして、回転用外乱推定オブザーバ72を、左側の力検出部20aの検出結果および右側の力検出部20bの検出結果に基づいて、回転方向の操作者の押圧力(FRH-FLH)・Lを取得するように構成する。これにより、左手用の左側の力検出部20aと右手用の右側の力検出部20bとの2つの力検出部によって、直進方向の操作者の押圧力(FLH+FRH)および回転方向の操作者の押圧力(FRH-FLH)・Lの両方を取得することができる。

【0123】
また、本実施形態では、上記のように、制御部60を、外乱推定オブザーバ70により推定された外乱(FDOBおよびMDOB)を、外乱を含まない状態で駆動モータ30aおよび30bにより発生されるアシスト力(直進方向の基本アシスト力および回転方向の基本アシスト力)から減算することによって、外乱を補償する処理を実行するように構成する。これにより、駆動モータ30aおよび30bにより発生されるアシスト力を、推定された外乱の分だけ減少させることができるので、確実に、外乱を補償することができる。

【0124】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。

【0125】
たとえば、上記実施形態では、操作者が自立して歩行する際に、操作者の歩行をアシストする非搭乗型のアシスト移動体に、本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、操作者が自立して歩行する際に、操作者の歩行をアシストする非搭乗型のアシスト移動体以外のアシスト移動体に適用されてもよい。たとえば、操作者が移動する際に、操作者が搭乗する車椅子などの搭乗型のアシスト移動体に適用されてもよい。

【0126】
また、上記第実施形態では、外乱推定オブザーバが、直進用外乱推定オブザーバと回転用外乱推定オブザーバとを含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、外乱推定オブザーバが、直進用外乱推定オブザーバのみにより構成されていてもよいし、回転用外乱推定オブザーバのみにより構成されていてもよい。また、外乱推定オブザーバが、直進用外乱推定オブザーバおよび回転用外乱推定オブザーバ以外の外乱推定オブザーバを含んでいてもよい。

【0127】
また、上記実施形態では、直進用外乱推定オブザーバが、左側の駆動輪の走行速度を検出するための左側の速度検出部の検出結果、および、右側の駆動輪の走行速度を検出するための右側の速度検出部の検出結果に基づいて、直進方向のアシスト移動体の走行速度を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アシスト移動体に直進方向のアシスト移動体の走行速度を検出するための単一の速度検出部を設けて、この単一の速度検出部の検出結果に基づいて、直進用外乱推定オブザーバが、直進方向のアシスト移動体の走行速度を取得してもよい。

【0128】
また、上記実施形態では、回転用外乱推定オブザーバが、左側の駆動輪の走行速度を検出するための左側の速度検出部の検出結果、および、右側の駆動輪の走行速度を検出するための右側の速度検出部の検出結果に基づいて、回転方向のアシスト移動体の走行速度を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アシスト移動体に角速度検出部を設けて、この角速度センサの検出結果に基づいて、回転用外乱推定オブザーバが、回転方向のアシスト移動体の走行速度を取得してもよい。

【0129】
また、上記実施形態では、2つの駆動輪をアシスト移動体が備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アシスト移動体が、1つの駆動輪を備えていてもよいし、3つ以上の駆動輪を備えていてもよい。

【0130】
また、上記実施形態では、荷物を運搬することが可能なアシストカートとしてのアシスト移動体に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、荷物を運搬しないアシスト移動体に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0131】
10 アシスト移動体本体
11 把持部
14a 駆動輪(第1駆動輪)
14b 駆動輪(第2駆動輪)
20a 力検出部(第1力検出部)
20b 力検出部(第2力検出部)
30a、30b 駆動モータ(駆動部)
50a 速度検出部(第1速度検出部)
50b 速度検出部(第2速度検出部)
60 制御部
70 外乱推定オブザーバ
71 直進用外乱推定オブザーバ
72 回転用外乱推定オブザーバ
100 アシスト移動体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10