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明細書 :燃料電池の状態判断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-026312 (P2018-026312A)
公開日 平成30年2月15日(2018.2.15)
発明の名称または考案の名称 燃料電池の状態判断方法
国際特許分類 H01M   8/02        (2016.01)
H01M   8/04        (2016.01)
H01M   4/88        (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
FI H01M 8/02 Z
H01M 8/02 E
H01M 8/04 Z
H01M 4/88 Z
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2016-158866 (P2016-158866)
出願日 平成28年8月12日(2016.8.12)
発明者または考案者 【氏名】猪子 寛司
【氏名】山本 敦巳
【氏名】井上 元
出願人 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079108、【弁理士】、【氏名又は名称】稲葉 良幸
【識別番号】100109346、【弁理士】、【氏名又は名称】大貫 敏史
【識別番号】100117189、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 昭彦
審査請求 未請求
テーマコード 5H018
5H026
5H126
5H127
Fターム 5H018AA06
5H018AS01
5H026AA06
5H126AA02
5H126AA15
5H126BB06
5H127AA06
5H127AC13
要約 【課題】短時間で発散することなく多孔体の液水分布を予測することができる燃料電池の状態判断方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る燃料電池の状態判断方法は、燃料電池に用いられる多孔体を3次元格子にモデル化した多孔体構造モデルMを作成する第1ステップと、多孔体構造モデルMの任意の空孔に液水Wを配置する第2ステップと、液水W周辺に配置された、閾値以上の径を有する空孔Hmに液水Wを膨張させる第3ステップと、液水Wが多孔体構造モデルMの界面まで到達するまで第3ステップを繰り返す第4ステップと、第4ステップ後の多孔体構造モデルM´を用いて燃料電池の性能を判断する第5ステップとを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
燃料電池の状態判断方法であって、
燃料電池に用いられる多孔体を3次元格子にモデル化した多孔体構造モデルを作成する第1ステップと、
前記多孔体構造モデルの任意の空孔に液水を配置する第2ステップと、
前記液水周辺に配置された、閾値以上の空孔径に液水を膨張させる第3ステップと、
前記液水が前記多孔体構造モデルの界面まで到達するまで前記第3ステップを繰り返す第4ステップと、
前記第4ステップ後の多孔体構造モデルを用いて燃料電池の性能を判断する第5ステップと、
を有する燃料電池の状態判断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の状態判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、例えば、プロトン伝導性を有する電解質膜と、電解質膜の両面に配置された電極(アノード触媒層、カソード触媒層)と、該電極を挟持したセパレータと、を備える。このような燃料電池においては、カソード触媒層にカソードガスが供給され、アノード触媒層にアノードガスが供給される。それにより、発電が行われる。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、発電の過程で内部の電気化学反応によって水が生成される。生成された水は、セパレータのガス流路を流れているガスと共に燃料電池の外部に排出される。
【0004】
ところで、固体高分子型燃料電池では、電解質膜が乾燥すると急激にプロトン伝導性が低下する。一方で、水が多量に存在するとフラッディングによる発電性能の低下を起こすことが知られている。このため、常に電解質膜を適当な含水状態に制御することが求められる。同様に触媒層も一定範囲の水分含有量を保持することが好ましい。
【0005】
そこで従来では、触媒層とガス拡散層との間に、気孔を有するポーラスな物質である多孔体を配置し、均一にガス拡散を行わせることによって、セル全体の水分の均一化を図っている。
【0006】
上記多孔体は気孔を有するものであるので、気体や液体がどのように透過するか、多孔体の特性を十分考慮する必要がある。このような多孔体内の水分の挙動を解析するためのシミュレーション方法が、下記特許文献1に開示されている。
【0007】
下記特許文献1では、多孔体の空孔径の統計値に対応させて、飽和水蒸気圧の3次元分布を算出する。そして、触媒層から連続的に供給される水蒸気が電極層内に拡散した場合の水蒸気圧の3次元分布を取得し、水蒸気圧及び飽和蒸気圧の3次元分布を用いて、ケルビン効果の発現を考慮した水の凝縮量の3次元分布を算出する。そして、凝縮量の3次元分布を用いて、水の質量保存式から電極層内の液水量の3次元分布を算出する。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-245874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特許文献1では、多孔体内のガスと液水の気液2相流それぞれの輸送方程式を連成させて解析している(別々の方程式で表される物理現象が互いに関係をもつような複雑な現象を、それぞれの方程式を関連付けて解くことによって求める)ため、計算が収束しない可能性や、構造が大きい場合に計算時間が長くなることがある。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、短時間で発散することなく多孔体の液水分布を予測することができる燃料電池の状態判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池の状態判断方法は、燃料電池に用いられる多孔体を3次元格子にモデル化した多孔体構造モデルを作成する第1ステップと、前記多孔体構造モデルの任意の空孔に液水を配置する第2ステップと、前記液水周辺に配置された、閾値以上の空孔径に液水を膨張させる第3ステップと、前記液水が前記多孔体構造モデルの界面まで到達するまで前記第3ステップを繰り返す第4ステップと、前記第4ステップ後の多孔体構造モデルを用いて燃料電池の性能を判断する第5ステップと、を有する。
【0012】
本発明によれば、多孔体構造モデルの任意の空孔に配置した液水を、閾値以上の径を有する空孔に膨張させ、これを液水が界面に到達するまで繰り返すという方法で、多孔体の液水分布を予測できる。つまり、液体輸送に関して独立して計算を実施して多孔体の液水分布を予測できるので、気液2相流それぞれの輸送方程式を連成させて解析する方法と比較して、単純なアルゴリズムにより簡易的に多孔体内の液水分布を予測することができる。また、予測した液水分布を反映させた多孔体構造モデルに基づいて燃料電池の性能を判断することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、短時間で発散することなく多孔体の液水分布を予測することができる燃料電池の状態判断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態の処理手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。

【0016】
図1は、本実施形態における燃料電池の状態判断方法の処理手順を示すフローチャートである。図2は、図1に示す処理手順の説明図である。

【0017】
燃料電池は、固体高分子型燃料電池(PEFC)であり、図示は省略するが、単位セルを複数重ね合わせたスタック構造を有する。単位セルは、電解質膜の両側を電極で狭持した後にさらに拡散層で狭持したMEAの両側をセパレータで狭持した構造をもつ。電解質膜は、プロトン伝導性を有する電解質膜であり、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーのようなフッ素系電解質樹脂(イオン交換樹脂)が用いられる。電極は、触媒(例えば白金)を担持したカーボンを有している。セパレータには、反応ガスを供給するための流路が形成されている。

【0018】
なお、本実施形態における燃料電池の状態判断方法は、シミュレーション解析を実行するためのコンピュータシステム(以下、シミュレーション装置(図示略))を用いて行われる。このシミュレーション装置は、シミュレーションプログラムを実行する制御手段や、解析途中のデータを一時記憶するためのメモリ等を備え、以下で説明する計算を実施し、また、計算により得られた結果を用いて含水時の多孔体の特性を算出し、この含水時の多孔体の特性に基づいて燃料電池の発電性能を判断することができる。本実施形態では、3次元解析空間に燃料電池の多孔体をモデル化した計算格子を用いて処理が行われる。

【0019】
(ステップS10)
まず、図1のステップS10及び図2(A)に示すように、シミュレーション装置は、燃料電池の多孔体の3次元モデルデータ(多孔体構造モデルM)を作成する。この3次元モデルデータは、多孔体の3次元モデルにおける座標(x軸、y軸、z軸)毎に算出した空孔径に関するデータを含む。

【0020】
(ステップS20)
次いで、図2(B)に示すように、作成された多孔体構造モデルMの任意の空孔Hに、初期液水Wを配置する。図1のステップS20では、液水Wの存在の有無が判定され、液水Wが存在していないと判定されると(ステップS20(No))、ステップS40に進む。一方で、液水Wの存在が判定されれば(ステップS20(Yes))、ステップS30に進む。

【0021】
なお、図2(B)に示した液水Wは、ランダムに配置しても良く、また、実際の燃料電池の反応量による水蒸気濃度分布を予め計算しておき、当該水蒸気濃度分布に基づき、配置しても良い。

【0022】
そして、図2(B)の点線(探索領域S)に示すように、液水Wを配置した空孔Hの周辺部において、閾値以上の径を有する空孔を探索する。この探索する際に設定されている閾値は任意の値に設定されるものであるが、この閾値を多孔体の最大空孔径に設定しても良い。

【0023】
(ステップS30)
ステップS20(Yes)に続くステップ30では、図2(C)の矢印に示すように、閾値以上の径を有する空孔Hmに、液水Wを膨張させる。なお、閾値以上の径の空孔Hmが複数あれば(若しくは、最大空孔径が複数あれば)、当該空孔の全てに液水Wを膨張させ(図2(C)では、閾値以上の径の空孔Hmが2つある例を示している)、ステップS40に進む。

【0024】
(ステップS40)
ステップS40では、x、y、zが格子数であるか否かが判定される。格子数は、ステップS10で作成した3次元モデルデータ(多孔体構造モデルM)に基づき予め設定される値である。x、y、zが格子数でないと判定されると(ステップS40(No))、ステップS10に戻り、x、y、zが格子数に到達するまでステップS10~ステップS30を繰り返す。初期値(x=1、y=1、z=1)から格子数に到達するまでステップS10~ステップS30を繰り返し、ステップS10においてx=格子数、y=格子数、z=格子数であり、ステップS20において液水Wが存在していないと判定されると、ステップS50に進む(ステップS40(Yes))。

【0025】
(ステップS50)
次いで、図1のステップS50及び図2(D)に示すように、液水Wが界面部に到達しているか否かが判定される。液水Wが界面部に到達していなければ(ステップS50(No))、ステップS10に戻り、液水Wが界面部に到達するまで繰り返す。液水Wが界面部の空孔Hsに到達している場合には、このフローを終了する(燃料電池が、例えば、電解質膜(EL)、触媒層(CL)、マイクロポーラス層(MPL)、ガス拡散電極層(GDL)で挟まれた膜電極接合体を有する場合には、マイクロポーラス層界面に液水Wが到達すると終了とみなす)。本実施形態では、液水Wが界面部の空孔Hsに到達している場合の多孔体構造モデルM´(図2(E))を用いて、多孔体内の液水分布を算出することができる。そして、得られた液水分布から含水時の多孔体内の特性(ガス拡散、透気度など)を算出でき、算出された含水時の多孔体内の特性に基づいて燃料電池の発電性能の良否を判断することができる。

【0026】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池の状態判断方法では、燃料電池の多孔体を3次元格子にモデル化した多孔体構造モデルMを作成する第1ステップと、多孔体構造モデルMの任意の空孔に液水Wを配置する第2ステップと、液水W周辺に配置された、閾値以上の径を有する空孔Hmに液水を膨張させる第3ステップと、液水Wが多孔体構造モデルMの界面まで到達するまで第3ステップを繰り返す第4ステップと、第4ステップ後の多孔体構造モデルM´を用いて燃料電池の性能を判断する第5ステップとを有する。

【0027】
なお、以上の処理手順は、一般的に燃料電池の多孔体材料が撥水性であることから閾値以上の径を有する空孔に液水を膨張させることとしているが、仮に、多孔体材料として親水性の材料を用いたときは、逆に閾値以下の径を有する空孔に液水を膨張させることで、同様に処理することができる。

【0028】
また、本実施形態における燃料電池の状態判断方法では、液水の初期位置(液水Wを配置する位置)を多孔体の任意の位置に配置することができる利点がある。

【0029】
更に、本実施形態における燃料電池の状態判断方法では、液水Wを配置した空孔の周囲の閾値以上の径を有する空孔に液水Wを膨張させ、これを液水Wが界面部に到達するまで繰り返す、という方法で液水分布を算出するので、単純なアルゴリズムにより簡易的に多孔体内の液水分布を予測することができる。

【0030】
以上説明した本実施形態における燃料電池の状態判断方法によれば、試作した多孔体構造モデルを計算することで、実験による評価なしで、燃料電池の発電性能の良否を判断することができる。また、試作したい多孔体構造の性能を、実際に試作する前にその良否判断をすることができる。また、計算にかかる時間が短いため、計算の試行回数を増やすことができる。

【0031】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
H:空孔
M:多孔体構造モデル
S:探索領域
W:液水
図面
【図1】
0
【図2】
1