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明細書 :無線通信システムおよび無線通信方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6579447号 (P6579447)
公開番号 特開2017-224948 (P2017-224948A)
登録日 令和元年9月6日(2019.9.6)
発行日 令和元年9月25日(2019.9.25)
公開日 平成29年12月21日(2017.12.21)
発明の名称または考案の名称 無線通信システムおよび無線通信方法
国際特許分類 H04W  16/10        (2009.01)
H04W  84/12        (2009.01)
H04W  92/20        (2009.01)
FI H04W 16/10
H04W 84/12
H04W 92/20
請求項の数または発明の数 10
全頁数 15
出願番号 特願2016-118188 (P2016-118188)
出願日 平成28年6月14日(2016.6.14)
審査請求日 平成30年7月23日(2018.7.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】アベセカラ ヒランタ
【氏名】篠原 笑子
【氏名】福園 隼人
【氏名】松井 宗大
【氏名】溝口 匡人
【氏名】山本 高至
【氏名】尹 博
個別代理人の代理人 【識別番号】100072718、【弁理士】、【氏名又は名称】古谷 史旺
【識別番号】100151002、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 剛之
【識別番号】100201673、【弁理士】、【氏名又は名称】河田 良夫
審査官 【審査官】伊東 和重
参考文献・文献 特開2002-152272(JP,A)
特開2014-131285(JP,A)
米国特許出願公開第2008/0268858(US,A1)
特開2013-081089(JP,A)
調査した分野 H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の無線基地局とそれぞれ配下の無線端末を備え、該複数の無線基地局が所定数のチャネルの中から一部のチャネルを共用して配下の無線端末と無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記無線基地局は、
受信信号強度が所定の閾値以上となる2つの無線基地局を「隣接する」および「隣接無線基地局」とし、該隣接無線基地局間でそれぞれの識別子と使用チャネルを含む無線環境情報を送受信し、自局に隣接する隣接無線基地局および該隣接無線基地局に隣接する次隣接無線基地局の使用チャネルを収集して保持する無線環境情報収集・保持手段と、
前記隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、または前記隣接無線基地局および前記次隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、前記所定数のチャネルの中から自局の使用チャネルとして、自局がさらし端末にならず、かつ他局をさらし端末にしないチャネルを選択して設定するチャネル選択・設定手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記チャネル選択・設定手段は、所定のチャネルを共用する前記隣接無線基地局同士が互いに隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記チャネル選択・設定手段は、所定のチャネルを共用する前記隣接無線基地局と前記次隣接無線基地局があって自局と前記次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記チャネル選択・設定手段は、それぞれ所定のチャネルを共用しながら互いに隣接しない前記隣接無線基地局のペア数をチャネルごとに計数し、該ペア数が最少のチャネルを選択する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記チャネル選択・設定手段は、第1のチャネルを共用しながら互いに隣接しない第1の隣接無線基地局のペアがあり、第2のチャネルを共用する第2の隣接無線基地局と前記次隣接無線基地局があって自局と前記次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局のスループットを優先する場合には前記第2のチャネルを選択し、第2の隣接無線基地局のスループットを優先する場合には前記第1のチャネルを選択する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
複数の無線基地局とそれぞれ配下の無線端末を備え、該複数の無線基地局が所定数のチャネルの中から一部のチャネルを共用して配下の無線端末と無線通信を行う無線通信方法において、
前記無線基地局は、
受信信号強度が所定の閾値以上となる2つの無線基地局を「隣接する」および「隣接無線基地局」とし、該隣接無線基地局間でそれぞれの識別子と使用チャネルを含む無線環境情報を送受信し、自局に隣接する隣接無線基地局および該隣接無線基地局に隣接する次隣接無線基地局の使用チャネルを収集して保持する第1のステップと、
前記隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、または前記隣接無線基地局および前記次隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、前記所定数のチャネルの中から自局の使用チャネルとして、自局がさらし端末にならず、かつ他局をさらし端末にしないチャネルを選択して設定する第2のステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信方法において、
前記第2のステップは、所定のチャネルを共用する前記隣接無線基地局同士が互いに隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない処理を行う ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
請求項6に記載の無線通信方法において、
前記第2のステップは、所定のチャネルを共用する前記隣接無線基地局と前記次隣接無線基地局があって自局と前記次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない処理を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項9】
請求項6に記載の無線通信方法において、
前記第2のステップは、それぞれ所定のチャネルを共用しながら互いに隣接しない前記隣接無線基地局のペア数をチャネルごとに計数し、該ペア数が最少のチャネルを選択する処理を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項10】
請求項6に記載の無線通信方法において、
前記第2のステップは、第1のチャネルを共用しながら互いに隣接しない第1の隣接無線基地局のペアがあり、第2のチャネルを共用する第2の隣接無線基地局と前記次隣接無線基地局があって自局と前記次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局のスループットを優先する場合には前記第2のチャネルを選択し、第2の隣接無線基地局のスループットを優先する場合には前記第1のチャネルを選択する処理を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)の稠密環境において、各無線局のCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)制御に起因するスループットの低下を改善する無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやスマートフォン等の持ち運び可能で高性能な無線端末の普及により企業や公共スペースだけではなく、一般家庭でもIEEE802.11標準規格の無線LANが広く使われるようになっている。IEEE802.11標準規格の無線LANには、 2.4GHz帯を用いるIEEE802.11b/g/n 規格の無線LANと、5GHz帯を用いるIEEE802.11a/n/ac規格の無線LANがある。
【0003】
IEEE802.11b規格やIEEE802.11g規格の無線LANでは、2400MHzから2483.5MHz間に5MHz間隔で13チャネルが用意されている。ただし、同一場所で複数のチャネルを使用する際は、干渉を避けるためスペクトルが重ならないようにチャネルを使用すると最大で3チャネル、場合によっては4チャネルまで同時に使用できる。
【0004】
IEEE802.11a規格の無線LANでは、日本の場合は、5170MHzから5330MHz間と、5490MHzから5710MHz間で、それぞれ互いに重ならない8チャネルおよび11チャネルの合計19チャネルが規定されている。なお、IEEE802.11a規格では、チャネル当たりの帯域幅が20MHzに固定されている。
【0005】
無線LANの最大伝送速度は、IEEE802.11b規格の場合は11Mbps であり、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格の場合は54Mbps である。ただし、ここでの伝送速度は物理レイヤ上での伝送速度である。実際にはMAC(Medium Access Control )レイヤでの伝送効率が50~70%程度であるため、実際のスループットの上限値はIEEE802.11b規格では5Mbps 程度、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格では30Mbps 程度である。また、伝送速度は、情報を送信しようとする通信局が増えればさらに低下する。
【0006】
一方で、有線LANでは、Ethernet(登録商標)の100Base-T インタフェースをはじめ、各家庭にも光ファイバを用いたFTTH(Fiber to the home)の普及から、 100Mbps ~1Gbps 級の高速回線の提供が普及しており、無線LANにおいても更なる伝送速度の高速化が求められている。
【0007】
そのため、2009年に標準化が完了したIEEE802.11n規格では、これまで20MHzと固定されていたチャネル帯域幅が最大で40MHzに拡大され、また、空間多重送信技術(MIMO:Multiple input multiple output)技術の導入が決定された。IEEE802.11n規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で 600Mbps の通信速度を実現可能である。
【0008】
さらに、2013年に標準化が完了したIEEE802.11ac規格では、チャネル帯域幅を80MHzや最大で 160MHzまで拡大することや、空間分割多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)を適用したマルチユーザMIMO(MU-MIMO)送信方法の導入が決定している。IEEE802.11ac規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で約 6.9Gbps の通信速度を実現可能である。
【0009】
IEEE802.11規格の無線LANは、 2.4GHz帯または5GHz帯の免許不要な周波数帯で運用するため、IEEE802.11規格の無線基地局は、無線LANセル(BSS:Basic Service Set )を形成する際に、自無線基地局で対応可能な周波数チャネルのうち、運用する周波数チャネルを決定する必要がある。
【0010】
さらに、IEEE802.11n規格またはIEEE802.11ac規格の無線基地局では、運用する帯域幅も決定する必要がある。例えば、IEEE802.11n規格の場合は、帯域幅は最大で40MHzまで対応可能であるが、周辺の無線環境状況によって40MHzではなく20MHzで運用した方が効率的な場合がある。同様に、IEEE802.11ac規格の場合は、連続した80MHzまたは連続した 160MHzまたは非連続の80+80MHz、すなわち最大で 160MHzまで対応可能であるが、周辺の無線環境状況によって40MHzや20MHzで運用した方が効率的な場合がある。
【0011】
自セルで使用するチャネル、帯域幅およびそれ以外のパラメータの設定値および自無線基地局において対応可能なその他のパラメータは、定期的に送信するBeaconフレームや、無線端末から受信するProbe Request フレームに対するProbe responseフレーム等に記載し、運用が決定された周波数チャネル上でフレームを送信し、配下の無線端末および周辺の他通信局に通知することで、セルの運用を行っている。
【0012】
自セルで使用するパラメータの設定値には、例えば、アクセス権取得に関するパラメータ値やQoS(Quality of Services )等のパラメータ値が含まれる。また、自無線基地局において対応可能なその他のパラメータには、フレーム送信に用いる帯域幅、制御フレーム送信に使用する基本データレートや、データ送受信可能な変調方式と符合化率に関するデータレートセットなどが含まれる。
【0013】
無線基地局において、周波数チャネルや帯域幅およびその他のパラメータの選択および設定方法には、次の4つの方法がある。
(1) 無線基地局の製造メーカで設定されたデフォルトのパラメータ値をそのまま使用する方法
(2) 無線基地局を運用するユーザが手動で設定した値を使用する方法
(3) 各無線基地局が起動時に自局において検知する無線環境情報に基づいて自律的にパラメータ値を選択して設定する方法
(4) 無線LANコントローラなどの集中制御局で決定されたパラメータ値を設定する方法
【0014】
ここで、IEEE802.11ac規格においてチャネル帯域幅を40MHz、80MHz、 160MHzと広くする場合、5GHz帯において同一場所で同時に使えるチャネル数は、チャネル帯域幅が20MHzで19チャネルだったものが、9チャネル、4チャネル、2チャネルと少なくなる。すなわち、チャネル帯域幅が増加するにつれて、使えるチャネル数が低減することになる。
【0015】
また、同一場所で同時に使えるチャネル数は、通信に用いるチャネル帯域幅によって、 2.4GHz帯の無線LANでは3つ、5GHz帯の無線LANでは2つ,4つ,9つ,または19のチャネルになるので、実際に無線LANを導入する際には無線基地局が自BSS内で使用するチャネルを選択する必要がある。
【0016】
このとき、使用可能なチャネル数よりもBSS数が多い無線LANの稠密環境では、複数のBSSが同一チャネルを使うことになる(OBSS:Overlapping BSS )。その場合、同一チャネルを使用するBSS間の干渉の影響により、当該BSSおよびシステム全体のスループットが低下することになる。そのため無線LANでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を用いて、キャリアセンスによりチャネルが空いているときにのみデータの送信を行う自律分散的なアクセス制御が使われている。
【0017】
具体的には、送信要求が発生した通信局は、まず所定のセンシング期間(DIFS:Distributed Inter-Frame Space )だけキャリアセンスを行って無線媒体の状態を監視し、この間に他の通信局による送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行う。通信局は、引き続きランダム・バックオフ期間中もキャリアセンスを行うが、この間にも他の通信局による送信信号が存在しない場合に、チャネルの利用権(TXOP:Transmission Opportunity)を得る。チャネルの利用権を得た通信局(TXOP Holder )は、同一BSS内の他の通信局にデータを送信し、またそれらの通信局からデータを受信できる。このようなCSMA/CA制御を行う場合、同一チャネルを使用する無線LANの稠密環境では、キャリアセンスによりチャネルがビジーになる頻度が高くなるため、送信機会(チャネルの利用権を得る機会)が低下し、スループットが低下することになる。したがって、周辺環境をモニタリングし、適切なチャネルを選択することが重要になる。
【0018】
無線基地局におけるチャネルの選択方法は、IEEE802.11標準規格で定まっていないため、各ベンダーが独自の方法を採用しているが、最も一般的なチャネル選択方法としては、干渉電力の最も少ないチャネルを自律分散的に選択する方法がある。無線基地局は、一定期間すべてのチャネルについてキャリアセンスして最も干渉電力が小さいチャネルを選択し、選択したチャネル上で配下の端末装置とデータの送受信を行う。なお、干渉電力とは、近隣BSSや他システムから受信する信号のレベルであり、例えば、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)により測定することができる。
【0019】
また、IEEE802.11標準規格では、BSS周辺の無線状況が変化した場合におけるチャネルの変更手順が規定されているが、基本的に、レーダ検出などによる強制移行以外は、一度選択したチャネルの再選択を行っていない。すなわち、現状無線LANでは、無線状況の変化に応じたチャネルの最適化は行われていない(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0020】

【非特許文献1】守倉正博、久保田周治監修、「802.11高速無線LAN教科書」改訂三版、インプレスR&D、2008年3月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述した周波数チャネルや帯域幅およびその他のパラメータの選択および設定方法 (1)~(4) のうち、特に安価な無線基地局は、(1) の製造メーカで設定されたデフォルトのパラメータをそのまま使用することが多い。しかし、近くに同じ製造メーカの無線基地局が複数台設置された環境の場合は、全ての無線基地局が同じ周波数チャネルや送信電力値を使うことになるので、無線基地局間で干渉が発生してしまい通信品質が劣化する問題がある。
【0022】
一般家庭など比較的小規模なネットワークでは、(2) の無線LANを運用するユーザが適切なパラメータを設定することが考えられる。しかし、外部干渉源がない環境では各種パラメータの設定は可能だが、都市部や集合住宅など周りで無線LANが使われている環境、または中規模や大規模なネットワークでは、ユーザまたは管理者による適切なパラメータ設定が困難である。
【0023】
自律分散動作が可能な無線基地局は、(3) の各無線基地局が起動時に自局において検知する無線環境情報に基づいて自律的にパラメータ値の選択が可能である。しかし、無線基地局が起動される順番によって適切なパラメータ値が異なる。
【0024】
また、それぞれの無線基地局は自局における最適なパラメータ値を選択して設定するため、局所的に最適化が可能だがシステム全体の最適化はできず、さらに周辺無線環境が変わった場合は対応が困難となる。例えば、起動中の無線基地局数の変化、各々の無線基地局配下の無線端末装置の変化、各々のセル内の無線装置により送出されるデータ量の変化などの環境変化が起きたときに、使用チャネルや帯域幅の最適化を行っていないため、各々のセルのスループット間で差が生じたり、システム全体でもスループットが劣化したりするという問題がある。
【0025】
ところで、同一チャネルを使用する無線LANの稠密環境においてCSMA/CA制御を行う場合は、キャリアセンスによりチャネルがビジーになる頻度が高くなるが、その要因として隠れ端末およびさらし端末の問題がある。
【0026】
図12は、隠れ端末およびさらし端末の関係におけるアクセス権獲得状況を示す。
図12において、無線基地局AP1に隣接して、同一チャネルを使用する無線基地局AP2,AP3,AP4が存在するネットワークにおいて、AP1とAP2とAP3は互いに干渉し、AP1とAP4も互いに干渉する関係にあるが、AP2,AP3と隣接しないAP4は互いにキャリアセンスによって検出できない「隠れ端末」の関係にある。したがって、AP2とAP3は一方が送信中のときは他方がチャネルビジーとなるが、AP4とAP2,AP3との間では互いに無関係に送信が可能であり、結果としてAP1はAP2~AP4の少なくとも1つが送信中のときはチャネルビジーとなってアクセス権を獲得できない「さらし端末」の状態になる。
【0027】
本発明は、無線LANの稠密環境において隠れ端末およびさらし端末の影響によるスループットの低下を回避できるように無線基地局が使用するチャネルを選択する無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
第1の発明は、複数の無線基地局とそれぞれ配下の無線端末を備え、該複数の無線基地局が所定数のチャネルの中から一部のチャネルを共用して配下の無線端末と無線通信を行う無線通信システムにおいて、無線基地局は、受信信号強度が所定の閾値以上となる2つの無線基地局を「隣接する」および「隣接無線基地局」とし、該隣接無線基地局間でそれぞれの識別子と使用チャネルを含む無線環境情報を送受信し、自局に隣接する隣接無線基地局および該隣接無線基地局に隣接する次隣接無線基地局の使用チャネルを収集して保持する無線環境情報収集・保持手段と、隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、または隣接無線基地局および次隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、所定数のチャネルの中から自局の使用チャネルとして、自局がさらし端末にならず、かつ他局をさらし端末にしないチャネルを選択して設定するチャネル選択・設定手段とを備える。
【0029】
第1の発明の無線通信システムにおいて、チャネル選択・設定手段は、所定のチャネルを共用する隣接無線基地局同士が互いに隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない構成である。
第1の発明の無線通信システムにおいて、チャネル選択・設定手段は、所定のチャネルを共用する隣接無線基地局と次隣接無線基地局があって自局と次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない構成である。
【0030】
第1の発明の無線通信システムにおいて、チャネル選択・設定手段は、それぞれ所定のチャネルを共用しながら互いに隣接しない隣接無線基地局のペア数をチャネルごとに計数し、該ペア数が最少のチャネルを選択する構成である。
【0031】
第1の発明の無線通信システムにおいて、チャネル選択・設定手段は、第1のチャネルを共用しながら互いに隣接しない第1の隣接無線基地局のペアがあり、第2のチャネルを共用する第2の隣接無線基地局と次隣接無線基地局があって自局と次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局のスループットを優先する場合には第2のチャネルを選択し、第2の隣接無線基地局のスループットを優先する場合には第1のチャネルを選択する構成である。
【0032】
第2の発明は、複数の無線基地局とそれぞれ配下の無線端末を備え、該複数の無線基地局が所定数のチャネルの中から一部のチャネルを共用して配下の無線端末と無線通信を行う無線通信方法において、無線基地局は、受信信号強度が所定の閾値以上となる2つの無線基地局を「隣接する」および「隣接無線基地局」とし、該隣接無線基地局間でそれぞれの識別子と使用チャネルを含む無線環境情報を送受信し、自局に隣接する隣接無線基地局および該隣接無線基地局に隣接する次隣接無線基地局の使用チャネルを収集して保持する第1のステップと、隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、または隣接無線基地局および次隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて、所定数のチャネルの中から自局の使用チャネルとして、自局がさらし端末にならず、かつ他局をさらし端末にしないチャネルを選択して設定する第2のステップとを有する。

【0033】
第2の発明の無線通信方法において、第2のステップは、所定のチャネルを共用する隣接無線基地局同士が互いに隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない処理を行う。
【0034】
第2の発明の無線通信方法において、第2のステップは、所定のチャネルを共用する隣接無線基地局と次隣接無線基地局があって自局と次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局の使用チャネルとして当該所定のチャネルを選択しない処理を行う。
【0035】
第2の発明の無線通信方法において、第2のステップは、それぞれ所定のチャネルを共用しながら互いに隣接しない隣接無線基地局のペア数をチャネルごとに計数し、該ペア数が最少のチャネルを選択する処理を行う。
【0036】
第2の発明の無線通信方法において、第2のステップは、第1のチャネルを共用しながら互いに隣接しない第1の隣接無線基地局のペアがあり、第2のチャネルを共用する第2の隣接無線基地局と次隣接無線基地局があって自局と次隣接無線基地局が隣接しない場合に、自局のスループットを優先する場合には第2のチャネルを選択し、第2の隣接無線基地局のスループットを優先する場合には第1のチャネルを選択する処理を行う。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、無線基地局がさらし端末にならないように、また他の無線基地局をさらし端末にしないように、隣接無線基地局および次隣接無線基地局の使用チャネルに基づいて自局の使用チャネルの選択が行われるため、アクセス権の獲得が困難な無線基地局を最小限に抑えることができる。また、無線LANの稠密環境であっても、本発明のチャネル選択により局所的なスループットの低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の無線通信システムの実施例1の構成例を示す図である。
【図2】実施例1における無線基地局AP1で収集された無線環境情報を示す図である。
【図3】実施例1における無線基地局AP1のチャネル選択例を示す図である。
【図4】無線基地局APの構成例を示す図である。
【図5】無線基地局APの処理手順例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の無線通信システムの実施例2の構成例を示す図である。
【図7】実施例2における無線基地局AP1で収集された無線環境情報を示す図である。
【図8】実施例2における無線基地局AP1のチャネル選択例を示す図である。
【図9】本発明の無線通信システムの実施例3の構成例を示す図である。
【図10】本発明の無線通信システムの実施例4の構成例を示す図である。
【図11】シミュレーション結果を示す図である。
【図12】隠れ端末およびさらし端末の関係におけるアクセス権獲得状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(実施例1)
図1は、本発明の無線通信システムの実施例1の構成例を示す。
図1において、無線基地局AP1~AP5は、あらかじめ設定されたチャネルCh1またはCh2を用いてそれぞれ帰属する無線端末(図示せず)と無線通信を行う。AP2とAP4はチャネルCh1を使用し、AP3とAP5はチャネルCh2を使用する状況において、AP1が自セル(BSS)で使用するチャネルの選択手順について実施例1として以下に説明する。

【0040】
実施例1は、AP1とAP2~AP5はそれぞれ隣接し、チャネルCh2を使用するAP3とAP5は互いに隣接し、チャネルCh1を使用するAP2とAP4は互いに隣接しない構成である。なお、隣接するAP間を実線で接続する。ここで、「隣接」とは、2つのAP間の受信信号強度が所定の閾値以上となり、互いに同一チャネルを共用する場合に干渉する関係であり、CSMA/CA制御によりキャリアセンスによってアクセス権を獲得してから送信する。すなわち、チャネルCh2を使用するAP3とAP5は互いに隣接しているので、キャリアセンスによってアクセス権を獲得した方が送信する。一方、チャネルCh1を使用するAP2とAP4は互いに隣接しないので、キャリアセンスによって検出できない隠れ端末の関係になり、互いに制限されない送信が可能になる。

【0041】
各APは、それぞれ隣接するAPとの間で使用チャネルを含む無線環境情報を通知しあう。ここでは、AP1が無線通信を開始していないので、AP2~AP5がそれぞれ隣接するAPから通知された無線環境情報のうちAPの識別子と使用チャネルを図1中に示す。AP2およびAP4は、それぞれ無線通信開始前のAP1以外に隣接するAPがないので自局の無線環境情報のみを保持する。AP3およびAP5は、互いに隣接しているので双方の無線環境情報を保持する。

【0042】
図2は、実施例1における無線基地局AP1で収集された無線環境情報を示す。
図2において、AP1に隣接するAPはAP2~AP5の4台であり、AP1はAP2~AP5からそれぞれの無線環境情報を収集する。AP1で収集された隣接AP別情報は、隣接APごとに次に隣接するAP(次隣接AP)と使用チャネルを整理したものである。さらに、チャネルごとに隣接APおよび次隣接APを示すチャネル別情報が整理される。ここでは、チャネルCh1を使用するAP2とAP4は互いに隣接しないこと、チャネルCh2を使用するAP3とAP5は互いに隣接することがわかる。

【0043】
AP1は、このチャネル別情報に基づいて使用するチャネルを選択する処理を行う。ここで、AP1が使用するチャネルとして、互いに隣接するAP3とAP5が使用するチャネルCh2を選択した場合には、AP1,AP3,AP5間でキャリアセンスによるアクセス権の獲得制御が行われる。一方、AP1が使用するチャネルとして、互いに隣接しないAP2とAP4が使用するチャネルCh1を選択した場合には、図3に示すようにAP2とAP4の中間のAP1はさらし端末の状態になる。以上の結果から、AP1はさらし端末になってスループットが低下するチャネルCh1ではなく、通常のCSMA/CA制御によるアクセス権の獲得が可能なチャネルCh2を選択する。

【0044】
図4は、本発明の無線通信システムの無線基地局APの構成例を示す。
図4において、無線基地局APは、宛先局とデータ送受信を行う無線通信部11と、周辺の無線環境情報のスキャニングを実施し、隣接APおよび次隣接APの使用チャネルの情報を含む無線環境情報を収集して保持する無線環境情報収集・保持部12と、自局および周辺の無線環境情報を他局に通知する無線環境情報通知部13と、隣接APおよび次隣接APの使用チャネルに基づいて自局の使用チャネルを選択するチャネル選択部14と、選択した使用チャネルを設定するチャネル設定部15と、使用チャネルを用いたキャリアセンスによりアクセス権を獲得するアクセス権獲得部16とにより構成される。

【0045】
図5は、本発明の無線通信システムの無線基地局APの処理手順例を示す。
図5において、無線基地局APは、周辺の無線環境情報のスキャニングを実施し、隣接APおよび次隣接APの使用チャネルの情報を含む無線環境情報を収集して保持し(S11)、隣接APおよび次隣接APの使用チャネルに基づいて自局の使用チャネルを選択し(S12)、選択した使用チャネルを設定し(S13)、使用チャネルを用いて保持している自局および周辺の無線環境情報を周辺の無線局に通知する(S14)。

【0046】
本発明の特徴は、チャネル選択部14におけるチャネル選択処理S12であり、例えば図1~図3に示す実施例1におけるAP1は、原則として互いに隣接しないAP2とAP4が使用するチャネルCh1を自局の使用チャネルとして選択せず、ここではチャネルCh2を選択する処理を行う。

【0047】
(実施例2)
図6は、本発明の無線通信システムの実施例2の構成例を示す。
図6において、無線基地局AP1~AP6は、あらかじめ設定されたチャネルCh1またはCh2を用いてそれぞれ帰属する無線端末(図示せず)と無線通信を行う。AP2とAP4とAP6はチャネルCh1を使用し、AP3とAP5はチャネルCh2を使用する状況において、AP1が自セル(BSS)で使用するチャネルの選択手順について実施例2として以下に説明する。

【0048】
実施例2は、図1に示す実施例1の構成に加えて、AP4に隣接しかつAP1に隣接しないAP6を配置した構成である。

【0049】
各APは、それぞれ隣接するAPとの間で使用チャネルを含む無線環境情報を通知しあう。ここでは、AP1が無線通信を開始していないので、AP2~AP6がそれぞれ隣接するAPから通知された無線環境情報のうちAPの識別子と使用チャネルを図6中に示す。AP2は自局の無線環境情報のみを保持し、AP4とAP6は互いに隣接しているので双方の無線環境情報を保持し、AP3とAP5は互いに隣接しているので双方の無線環境情報を保持する。

【0050】
図7は、実施例2における無線基地局AP1で収集された無線環境情報を示す。
図7において、AP1に隣接するAPはAP2~AP5の4台であり、AP1はAP2~AP5からそれぞれの無線環境情報を収集する。AP6とAP1は隣接していないため、AP1で収集される無線環境情報にはAP6が保持する無線環境情報は含まれないが、AP4が通知する無線環境情報の中にAP4とAP6が隣接していることを示す情報がある。AP1で収集された隣接AP別情報は、隣接APごとに次に隣接するAP(次隣接AP)と使用チャネルを整理したものである。さらに、チャネルごとに隣接APおよび次隣接APを示すチャネル別情報が整理される。ここでは、チャネルCh1を使用するAP2とAP4は互いに隣接しないこと、さらにAP1と隣接しないAP6が存在すること、チャネルCh2を使用するAP3とAP5は互いに隣接することがわかる。

【0051】
AP1は、このチャネル別情報に基づいて使用するチャネルを選択する処理を行う。ここで、AP1が使用するチャネルとして、互いに隣接するAP3とAP5が使用するチャネルCh2を選択した場合には、AP1,AP3,AP5間でキャリアセンスによるアクセス権の獲得制御が行われる。一方、AP1が使用するチャネルとして、互いに隣接しないAP2とAP4とAP6が使用するチャネルCh1を選択した場合には、図8に示すようにAP2とAP4の中間のAP1はさらし端末の状態になるだけでなく、AP1とAP6の中間のAP4をさらし端末の状態にする。以上の結果から、AP1はさらし端末になってスループットが低下するチャネルCh1ではなく、またAP1は自局のスループットは低下しないものの他のAP4をさらし端末にしてスループットを低下させるチャネルCh1ではなく、通常のCSMA/CA制御によるアクセス権の獲得が可能なチャネルCh2を選択する。

【0052】
(実施例3)
図9は、本発明の無線通信システムの実施例3の構成例を示す。
図9において、無線基地局AP1~AP6は、あらかじめ設定されたチャネルCh1またはCh2を用いてそれぞれ帰属する無線端末(図示せず)と無線通信を行う。AP2およびAP4はチャネルCh1を使用し、AP3,AP5,AP6はチャネルCh2を使用する状況において、AP1が自セル(BSS)で使用するチャネルの選択手順について実施例3として以下に説明する。

【0053】
実施例3は、図1に示す実施例1におけるAP3とAP5が隣接せず、さらにAP3およびAP5と隣接しないAP6を配置した構成である。

【0054】
AP1は使用するチャネルとして、互いに隣接しないAP2とAP4が使用するチャネルCh1を選択した場合には、互いに隣接しない1組のAPペア(AP2とAP4)の中間のAP1はさらし端末の状態になる。同様に、互いに隣接しないAP3とAP5とAP6が使用するチャネルCh2を選択した場合には、互いに隣接しない3組のAPペア(AP3とAP5、AP3とAP6、AP5とAP6)のそれぞれの中間のAP1はさらし端末の状態になる。

【0055】
AP1はチャネルCh1またはCh2のいずれを選択してもさらし端末の状態になるが、互いに隣接しないAPペア数が多い方、すなわちチャネルCh2を使用する方がさらし端末の状態になる頻度が高い。以上の結果から、AP1はさらし端末となる頻度が相対的に高いチャネルCh2ではなく、さらし端末となる頻度が相対的に低いチャネルCh1を選択する。

【0056】
(実施例4)
図10は、本発明の無線通信システムの実施例4の構成例を示す。
図10において、無線基地局AP1~AP5は、あらかじめ設定されたチャネルCh1またはCh2を用いてそれぞれ帰属する無線端末(図示せず)と無線通信を行う。AP2およびAP3はチャネルCh1を使用し、AP4,AP5はチャネルCh2を使用する状況において、AP1が自セル(BSS)で使用するチャネルの選択手順について実施例4として以下に説明する。

【0057】
実施例4は、AP1とAP2,AP3,AP4はそれぞれ隣接し、AP1とAP5は隣接せず、チャネルCh1を使用するAP2とAP3は隣接せず、チャネルCh2を使用するAP4とAP5は隣接する位置関係にある。

【0058】
AP1は使用するチャネルとして、互いに隣接しないAP2とAP3が使用するチャネルCh1を選択した場合には、AP2とAP3からさらし端末の状態になる。一方、AP1は使用するチャネルとして、互いに隣接するAP4とAP5が使用するチャネルCh2を選択した場合には、AP1はAP4に対してさらし端末の状態にさせることになる。このように、AP1が互いに隣接しないAP2,AP3の中心となるか、それともAP1が互いに隣接しないAP1,AP5の一端でその中心にAP4が存在するかにより、AP1またはAP4におけるスループットが大きく変化する。前者の中心となるAP1はスループットが低下し、後者の一端となるAP1のスループットは低下せず、中心となるAP4のスループットを低下させる。以上の結果から、AP1は自局のスループットを最大化させる場合はチャネルCh2を選択し、他局(AP4)に与える影響を最小限にする場合はチャネルCh1を選択する。

【0059】
(シミュレーション結果)
図11は、本発明による効果を確認するシミュレーション結果を示す。
図11において、横軸はチャネルを占有できたエアータイム(正規化)であり、スループットに相当する。縦軸はスループットごとの出現確率を示す。シミュレーション諸元は次の通りである。
・エリアサイズ:30×30m
・AP数:30台(ランダム配置)
・セル半径:10m
・チャネル数:3
・実施回数:100 回

【0060】
スループットが0(横軸が0)の端末に着目すると、当該端末は (3)に示す従来方式で10%程度存在し、(2) に示すランダムチャネル割当方式で18%程度存在するが、(1) に示す本発明方式では1%程度まで抑えられており、アクセス権が獲得できないスタベーションの解消ができていることがわかる。
【符号の説明】
【0061】
AP 無線基地局
11 無線通信部
12 無線環境情報収集・保持部
13 無線環境情報通知部
14 チャネル選択部
15 チャネル設定部
16 アクセス権獲得部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11