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明細書 :菌の検査方法および菌検査装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6671063号 (P6671063)
公開番号 特開2017-131203 (P2017-131203A)
登録日 令和2年3月5日(2020.3.5)
発行日 令和2年3月25日(2020.3.25)
公開日 平成29年8月3日(2017.8.3)
発明の名称または考案の名称 菌の検査方法および菌検査装置
国際特許分類 C12Q   1/04        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
G01N  27/22        (2006.01)
FI C12Q 1/04
C12M 1/34 B
G01N 27/22 C
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2016-016540 (P2016-016540)
出願日 平成28年1月29日(2016.1.29)
審査請求日 平成31年1月28日(2019.1.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】飯塚 邦彦
【氏名】齊藤 晶
【氏名】満仲 健
【氏名】芦田 伸之
【氏名】小川 雄一
【氏名】鈴木 哲仁
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】松本 淳
参考文献・文献 特開2011-209260(JP,A)
特開2008-040835(JP,A)
特開2001-245693(JP,A)
特開2004-313028(JP,A)
特表2015-508895(JP,A)
中国特許出願公開第1584579(CN,A)
ONG, K. G. et al.,Design and application of a wireless, passive, resonant-circuit environmental monitoring sensor,Sensors and Actuators. A: Physical,2001年,Vol.93,pp.33-43
調査した分野 C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
G01N 27/00-27/92
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
試料に存在する菌が加えられた固形培地と、2次元状に配された複数の発振器を内蔵する物性検知センサとが接触した状態で、上記菌の培養を開始する第1ステップと、
上記物性検知センサによって、上記菌の培養開始時点および所定時間毎の上記固形培地の複素誘電率を、上記菌の培養開始時点および所定時間毎の上記複数の発振器の発振周波数として検知する第2ステップと、
上記物性検知センサによる検知結果に基づいて、発振器毎に、上記菌の培養開始時点の初期発振周波数と所定時間経過時点の所定発振周波数との変化量を算出する第3ステップと、
上記変化量と閾値とを比較することにより、各発振器の配置位置に対応する上記固形培地の領域のそれぞれについて、上記菌が存在するか否かを判定する第4ステップと、を含んでおり、
上記複数の発振器の上記発振周波数は、100GHz~120GHzであることを特徴とする菌の検査方法。
【請求項2】
上記固形培地は、寒天培地であることを特徴とする請求項1に記載の菌の検査方法。
【請求項3】
上記固形培地は、シート状培地であることを特徴とする請求項1に記載の菌の検査方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の菌の検査方法に用いられる菌検査装置であって、
上記固形培地と上記物性検知センサとが一体化していることを特徴とする菌検査装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の菌の検査方法に用いられる菌検査装置であって、
基板上に、上記物性検知センサと、ワイヤレスで上記物性検知センサを作動させるための無線通信用集積回路と、上記物性検知センサに電力を供給する電源部と、が実装されていることを特徴とする菌検査装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固形培地の物性を検知することで菌を検出する菌の検査方法、および当該菌の検査方法に用いられる菌検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、我が国では、食の安全を確保するために、食中毒の原因菌となるサルモネラ属菌(サルモネラ)、腸炎ビブリオ菌等が食品に混入しているか否かを判定するための種々の検査方法が研究されている。例えば、特許文献1には、酸素電極法を用いて培養液中の検査対象菌の検出を行う菌の検査方法が開示されている。特許文献1に開示された検査方法は、液体培地中の溶存酸素量が増殖した検査対象菌の呼吸により消費されるまでの時間が、測定開始時の菌濃度に依存するという原理を用いている。また例えば、非特許文献1には、生体計測のための磁気分光器が開示されている。
【0003】
また、生体分子の検査を行う従来の方法として、図1に示すような従来の集積回路センサ101を使う方法が知られている。図1に示すように、集積回路センサ101は、平面視において、n行×n列の合計n個の発振器11がマトリックス状に配置された状態で内蔵されている。なお、発振器11の個数および配置については2次元状に配されている限り特に限定されないが、図1では、図示を簡単にするため2行×2列の配列を例示している。
【0004】
また、図2に示すように、発振器11は、共振器11bと差動回路11cとを備えている。差動回路11cは、共振器11bから出力された共振周波数に係る2つの信号の差分を増幅する。さらに、発振器11は、共振器11bを構成するインダクタ11aが、集積回路センサ101における被検査体との接触面(図示せず)の近傍に配置されるような構成になっている。そして、集積回路センサ101の上記接触面近傍にある被検査体の物性(複素誘電率および複素透磁率)の変化に伴って共振器11bの共振周波数も変化し、ひいては発振器11の発振周波数が変化する。
【0005】
上述した発振器11の発振周波数の変化は、図1に示すような、集積回路センサ101の外部または内部に設けられた周波数読み出し回路120によって検出される。このように、集積回路センサ101は、被検査体の物性の変化を発振器11の発振周波数の変化として検出することができる。
【0006】
例えば、水の複素誘電率は、100GHz付近の周波数帯において、水分子の状態によって大きく変化する。また、生体の主要成分は水であることから、水分子の状態を調べることにより生体および生体高分子の状態を調べることができる。
【0007】
また例えば、タンパク質の周りの水分子は、タンパク質と水和した状態にあり、同じ温度の純水中の水分子より動きにくい状態になっている。さらに、細胞内の水も同様に水和した状態にあり、純水中の水分子より動きにくい状態になっている。したがって、細胞内の水は、細胞外の水よりも誘電ロスが小さくなる。それゆえ、細胞を含む水溶液で集積回路センサ101の表面を濡らした場合、インダクタ11aの配置位置に対応する集積回路センサ101の表面上に細胞が存在する共振器11bは、当該表面上に細胞が存在しない共振器11bよりも共振周波数が高くなる。
【0008】
さらに、固形培地を用いる従来の菌の検査方法としては、例えば図3に示すような方法が知られている。まず、図3の(a)に示すように、検査対象となる菌の種類に応じた寒天培地201を適宜選択し、当該培地に検査対象の菌(図示せず)を加えてシャーレの底に凝固させた上で培養する。そして、図3の(b)に示すように、寒天培地201中に形成されたコロニーKの数を目視またはコロニーカウンター等によって計数する。なお、寒天培地201に代えて、検査対象となる菌の種類に適合した市販のシート状培地(図示せず)を用いてもよい。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2013-220047号公報(2013年10月28日公開)
【0010】

【非特許文献1】C.Sideris, A.Hajimiri, "An Integrated magnetic Spectrometer for Multiplexed Biosensing", IEEE Solid-State Circuit Conf. Dig. Tech. papers, pp.300-302, Feb. 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された菌の検査方法および非特許文献1に開示された磁気分光器ともに、培養液等の液体培地で菌を培養することを前提としている。それゆえ、検査対象となる菌の種類に応じて新たに液体培地を開発する必要があり、その分作業時間を要するとともに検査が煩雑になるという問題点があった。また、液体培地に雑菌が混入した場合、検査者が混入の事実に気付かないことが多いとともに雑菌の除去等が困難であることから、検査精度が低下するという問題点もあった。
【0012】
さらに、固形培地を用いた従来の菌の検査方法では、コロニーの数を目視またはコロニーカウンター等によって計数することから、多数のコロニーが形成されたり形成されたコロニーの大きさが小さい場合には誤ってカウントされなかったコロニーの数が増加してしまい、検査精度か低下するという問題点もあった。
【0013】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、寒天培地、シート状培地等の固形培地を用いた従来の菌の検査方法と比較して、検査の簡略化、検査時間の短縮化および検査信頼性の向上が図られた菌の検査方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る菌の検査方法は、試料に存在する菌が加えられた固形培地と、2次元状に配された複数の発振器を内蔵する物性検知センサとが接触した状態で、上記菌の培養を開始する第1ステップと、上記物性検知センサによって、上記菌の培養開始時点および所定時間毎の上記固形培地の物性を、上記菌の培養開始時点および所定時間毎の上記複数の発振器の発振周波数として検知する第2ステップと、上記物性検知センサによる検知結果に基づいて、発振器毎に、上記菌の培養開始時点の初期発振周波数と所定時間経過時点の所定発振周波数との変化量を算出する第3ステップと、上記変化量と閾値とを比較することにより、各発振器の配置位置に対応する上記固形培地の領域のそれぞれについて、菌が存在するか否かを判定する第4ステップと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、検査対象となる菌の種類に拘らず、簡易かつ短時間で信頼性の高い菌の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の集積回路センサの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す集積回路センサに内蔵されている発振器の概略構成を示す図である。
【図3】(a)および(b)は、寒天培地を用いた従来の菌の検査方法を示す概略図である。
【図4】(a)~(d)は、本発明の実施形態1に係る菌の検査方法の概略を示す図である。
【図5】上記菌の検査方法を実施した場合において、各所定時間経過時点における寒天培地のセンサ接触面を当該接触面の反対側から顕微鏡で撮像したときの顕微鏡写真を示す図である。
【図6】上記菌の検査方法を実施した場合において、各所定時間経過時点における変化量の2次元分布を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1に係る菌の検査方法を示すフローチャートの一例である。
【図8】上記菌の検査方法を示すフローチャートの他の例である。
【図9】上記菌の検査方法を示すフローチャートの他の例である。
【図10】(a)~(d)は、本発明の実施形態2に係る菌の検査方法の概略を示す図である。
【図11】(a)は、本発明の実施形態3に係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置の概略構成を示す側面図である。(b)は、上記菌検査装置の概略構成を示す平面図である。
【図12】(a)は、本発明の実施形態4に係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置の概略構成を示す平面図である。(b)および(c)は、本発明の実施形態4に係る菌の検査方法の概略を示す図である。
【図13】(a)は、本発明の実施形態5に係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置の概略構成を示す図である。(b)は、本発明の実施形態5に係る菌の検査方法の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図4~図9を参照しながら、詳細に説明する。

【0018】
<本実施形態に係る菌の検査方法の概略>
まず、図4を参照して、本発明の実施形態1に係る菌の検査方法の概略について説明する。図4の(a)~(d)は、本発明の実施形態1に係る菌の検査方法の概略を示す図である。本実施形態では、固形培地として寒天培地1を使用するとともに検査対象の菌を大腸菌(図示せず)とし、インキュベータ(図示せず)にて24時間の培養を行う場合について説明する。

【0019】
なお、検査対象となる菌の種類に応じて、寒天培地1を他の寒天培地に変更してもよい。例えば、検査対象がサルモネラ菌または赤痢菌の場合はデソキシコレート寒天培地またはDHL(Deoxycholate-Hydrogen sulfide-Lactose)寒天培地、検査対象が黄色ブドウ球菌の場合は卵黄加マンニット食塩寒天培地をそれぞれ用いることができる。また例えば、検査対象がコレラ菌、腸炎ビブリオまたはその他のビブリオ菌の場合はTCBS(Thiosulfate Citrate Bile Sults Sucrose)寒天培地、検査対象がセレウス菌の場合はNGKG(NaClグルシル・キム・ゴッファード)寒天培地をそれぞれ用いることができる。さらに例えば、検査対象がカンピロバクターの場合はmCCDA(modified Charcoal Cefoperazone Desoxycholate Agar)培地、検査対象がウェルシュ菌の場合はカナマイシン加卵黄CW(Clostridium Welchii)寒天培地をそれぞれ用いることができる。

【0020】
また、検査対象となる菌の種類によっては、寒天培地1に代えて、例えば市販のシート状培地を用いてもよい。

【0021】
図4に示すように、本発明に係る菌の検査方法には、マトリックス状(2次元状)に配置されたn個の発振器11を内蔵する従来の集積回路センサ(物性検知センサ)101が用いられる(図1等参照)。図4の(a)に示すように、集積回路センサ101は基板102上に実装されており、集積回路センサ101に内蔵された発振器11は、約120GHzの発振周波数を有する。なお、発振器11の発振周波数は、検査対象となる菌の存在の有無が判定できる程度の数値であればよい。また、集積回路センサ101は、大腸菌が加えられた寒天培地1に接触させることにより、大腸菌の培養開始から所定時間毎の寒天培地1の複素誘電率(物性)を、所定時間毎のn個の発振器(複数の発振器)11の発振周波数として検知する。

【0022】
なお、集積回路センサ101は、例えば、所定時間毎の寒天培地1の複素誘電率に代えて所定時間毎の寒天培地1の複素透磁率を、所定時間毎のn個の発振器11の発振周波数として検知してもよい。換言すれば、集積回路センサ101は、所定時間毎の寒天培地1の物性を、所定時間毎の複数の発振器11の発振周波数として検知すればよい。

【0023】
まず、図4の(a)および(b)に示すように、あらかじめシャーレの底に冷却凝固させた寒天培地1に大腸菌が存在する希釈試料(試料;図示せず)を噴霧する。そして、希釈試料が噴霧された寒天培地1の表面に、集積回路センサ101の表面が密着するように基板102を押し当てる。ここで、シャーレを倒置する場合は、基板102が寒天培地1から剥がれないように、基板102の背面(集積回路センサ101の実装面と反対側の面)にクッション材(図示せず)を設けて基板102を支持する。そして、この状態で、インキュベータにて大腸菌の培養を開始する。

【0024】
なお、本実施形態においては、あらかじめ冷却凝固させた寒天培地1に大腸菌が存在する希釈試料を噴霧した後、当該寒天培地1に集積回路センサ101を接触させている。しかし、例えば、あらかじめ冷却凝固させた寒天培地1に集積回路センサ101を接触させた後、当該寒天培地1に希釈試料を噴霧してもよい。また例えば、寒天培地1と大腸菌の存在する試料とを混和して冷却凝固させた後、当該寒天培地1に集積回路センサ101を接触させてもよい。換言すれば、試料に存在する検査対象の菌が加えられた寒天培地1と集積回路センサ101とが接触した状態になっていれば、その状態を作出するまでの手順は問わない。

【0025】
大腸菌の培養時間が進むにつれて、図4の(c)に示すように、寒天培地1の表面および内部にコロニーK1が形成される。この間、集積回路センサ101は、大腸菌の培養開始時点および所定時間毎の寒天培地1の複素誘電率を、大腸菌の培養開始時点および所定時間毎のn個の発振器11の発振周波数として検知する。そして、集積回路センサ101によって検知された各発振周波数は、周波数読み出し回路120によって読み出された上、当該周波数読み出し回路120から集積回路センサ101の内部または外部に設けられた菌存在判定部(図示せず)に出力される。周波数読み出し回路120から出力された初期発振周波数および所定発振周波数は、例えば、菌存在判定部の内部に設けられた記憶部(図示せず)に格納される。

【0026】
菌存在判定部は、まず、記憶部に格納されたデータを読み出すことにより、発振器11毎に、大腸菌の培養開始時点の初期発振周波数と所定時間経過時点の所定発振周波数との変化量を算出する。換言すれば、菌存在判定部は、集積回路センサ101による検知結果に基づいて、発振器11毎に、初期発振周波数と所定発振周波数との変化量を算出する。

【0027】
本実施形態では、大腸菌の培養開始から6時間後を第1所定時間、10時間後を第2所定時間、23時間後を第3所定時間として3つの所定時間を設定する。また、第1所定時間経過時点の発振周波数を第1所定発振周波数、第2所定時間経過時点の発振周波数を第2所定発振周波数、第3所定時間経過時点の発振周波数を第3所定発振周波数とする。したがって、菌存在判定部は、初期発振周波数と第1所定発振周波数との変化量である第1変化量、初期発振周波数と第2所定発振周波数との変化量である第2変化量、初期発振周波数と第3所定発振周波数との変化量である第3変化量の3つの変化量を、発振器11毎に算出する。

【0028】
なお、所定時間の長さおよび所定時間の個数については上述の場合に限定されず、検査者によって任意に設定することができる。この場合、大腸菌の培養時間を上述のように24時間のままにしてもよいし、短縮または延長してもよい。

【0029】
次に、菌存在判定部は、発振器11毎に第1変化量から第3変化量までの各変化量とあらかじめ設定された閾値とを比較する。そして、第1所定時間から第3所定時間までの各所定時間の経過時点において、各発振器11の配置位置(具体的には、インダクタ11aの配置位置)に対応する寒天培地1の領域のそれぞれについて、大腸菌が存在するか否かを判定する。具体的には、菌存在判定部は、変化量が閾値以上になった発振器11の配置位置に対応する寒天培地1の領域を、培養により大腸菌が増殖してコロニーK1を形成した領域(大腸菌が存在する領域)として判定する。

【0030】
次に、菌存在判定部は、所定時間毎の判定結果に基づいて、図4の(d)に示すような、n個の発振器11の配置に対応する所定時間毎の変化量の2次元分布を生成する。そして、この2次元分布は、例えば、集積回路センサ101の外部に設けられた表示部(図示せず)等に表示される。図4の(d)に示す2次元分布において、紙面の色(白色)以外の色の領域が、コロニーK1が形成されていると判定された領域、すなわち大腸菌が存在すると判定された領域となる。検査者は、この2次元分布を確認することにより、大腸菌がどの程度増殖したか等を判断することができる。

【0031】
<検査結果>
次に、図5および図6を参照して、本発明の実施形態1に係る菌の検査方法によって検査した場合の検査結果について説明する。図5は、上記菌の検査方法を実施した場合において、各所定時間経過時点における寒天培地1のセンサ接触面を当該接触面の反対側から顕微鏡で撮像したときの顕微鏡写真を示す図である。図6は、上記菌の検査方法を実施した場合において、各所定時間経過時点における変化量の2次元分布を示す図である。

【0032】
図5に示す顕微鏡写真では、第3所定時間経過時点(培養開始から23時間後)の写真において、明確とはまでは言えないものの、当該写真の中央部付近にコロニーの形成が確認できる。一方、図6に示す2次元分布では、第2所定時間経過時点(培養開始から10時間後)のデータにてすでにコロニーの発生(紙面向かって略右下の領域)が明確に確認できる。第3所定時間経過時点のデータでは、コロニーの発生(紙面向かって略右半分の領域)がより明確に確認できる。

【0033】
上述の検査結果から、菌存在判定部によって生成される発振周波数の変化量の2次元分布を用いることにより、より短時間で精度の高い菌の検査が可能になることがわかる。

【0034】
<本実施形態に係る菌の検査方法の手順>
次に、図7~図9を参照して、本発明の実施形態1に係る菌の検査方法の手順について説明する。図7は、本発明の実施形態1に係る菌の検査方法を示すフローチャートの一例である。図8および図9は、上記菌の検査方法を示すフローチャートの他の例である。

【0035】
なお、以下の説明では、第1所定時間から第3所定時間、第1所定発振周波数から第3所定発振周波数および第1変化量から第3変化量における各数値を番号iで表す。また、大腸菌の培養開始時を「所定時間(i=0)」で表すとともに、大腸菌の培養開始時点の初期発振周波数を「所定発振周波数(i=0)」で表す。さらに、Imaxは番号iの最大値を表し、本実施形態ではImax=3となる。

【0036】
図7に示すように、まず、寒天培地1をシャーレの底に冷却凝固させた上で(ステップ100(以下、「S100」と略記する);冷却凝固ステップ)、当該寒天培地1の表面に大腸菌が存在する希釈試料を噴霧する(S101;試料噴霧ステップ(第1ステップ))。そして、希釈試料が噴霧された寒天培地1の表面に集積回路センサ101を押し当てる(S102;センサ接触ステップ(第1ステップ))。この状態で、インキュベータにて大腸菌の培養を開始する。

【0037】
次に、集積回路センサ101は、発振器11毎に、所定時間(i=0)における所定発振周波数(i=0)を検知する(S103;初期発振周波数検知ステップ(第2ステップ))。検知結果は、周波数読み出し回路120を介して菌存在判定部の記憶部に格納される。次に、菌存在判定部は、記憶部に格納された発振器11毎の所定発振周波数(i=0)を読み出して閾値と比較することにより、各発振器11の配置位置に対応する寒天培地1の領域のそれぞれについてコロニーK1が形成されているか否かを判定する。そして、菌存在判定部は、判定結果である2次元分布を生成する(S104;判定結果取得ステップ(第4ステップ))。

【0038】
次に、所定時間(i=0)から6時間(N=6、第1所定時間の長さに相当)ほど大腸菌を培養する(S105;菌培養ステップ)。そして、集積回路センサ101は、第1所定時間が経過した時点(i=0+1=1)で、発振器11毎に、第1所定時間における第1所定発振周波数を検知する(S106;所定発振周波数検知ステップ(第2ステップ))。検知結果は、周波数読み出し回路120を介して菌存在判定部の記憶部に格納される。

【0039】
次に、菌存在判定部は、記憶部に格納された第1所定発振周波数および所定発振周波数(i=0)を発振器11毎に読み出して、当該発振器11毎の第1変化量を算出する(S107;変化量算出ステップ(第3ステップ))。そして、菌存在判定部は、第1変化量と閾値とを発振器11毎に比較することによりコロニーK1が形成されているか否かを判定した上で、2次元分布を生成する(S108;菌存在判定ステップ(第4ステップ))。

【0040】
S108でYES(以下、「Y」と略記する)と判定した場合、すなわち、コロニーK1の形成が明確に確認できる場合は検査を終了する。一方、S108でNO(以下、「N」と略記する)と判定した場合、菌存在判定部は、第3所定時間を経過していないか判定する(S109;検査終了判定ステップ)。

【0041】
第1所定時間しか経過していないことから(S109でY)、S105からS108までの手順を再び繰り返す。具体的には、所定時間(i=0)から10時間(N=10、第2所定時間の長さに相当)が経過するまで大腸菌を培養した上で(S105)、集積回路センサ101による第2所定発振周波数の検知(S106)、および菌存在判定部による第2変化量の算出(S107)、コロニーK1の形成の判定(S108)、2次元分布の生成を行う。

【0042】
1回目のS109でYと判定した場合において、2回目のS108でもNと判定した場合、菌存在判定部は、第3所定時間を経過していないか再び判定する(S109)。第2所定時間しか経過していないことから(S109でY)、S105からS108までの手順を再び繰り返す。具体的には、所定時間(i=0)から23時間(N=23、第3所定時間の長さに相当)が経過するまで大腸菌を培養した上で(S105)、集積回路センサ101による第3所定発振周波数の検知(S106)、および菌存在判定部による第3変化量の算出(S107)、コロニーK1の形成の判定(S108)、2次元分布の生成を行う。

【0043】
3回目のS108でNと判定した場合でも、第3所定時間が経過していることから(S109でN)検査は終了する。

【0044】
また、本実施形態に係る菌の検査方法は、図8に示すような手順で行ってもよい。すなわち、まず、寒天培地1をシャーレの底に冷却凝固させた上で(S200;冷却凝固ステップ)、当該寒天培地1の表面に集積回路センサ101を押し当てる(S201;センサ接触ステップ)。そして、大腸菌が存在する希釈試料を、集積回路センサ101と接触している寒天培地1の表面に噴霧する(S202;試料噴霧ステップ)。この状態で、インキュベータにて大腸菌の培養を開始する。

【0045】
さらに、本実施形態に係る菌の検査方法は、図9に示すような手順で行ってもよい。すなわち、まず、寒天培地1と大腸菌の存在する試料とを混和した上で(S300;試料混和ステップ(第1ステップ))、当該寒天培地1を冷却凝固する(S301;冷却凝固ステップ)。そして、試料が混和された寒天培地1の表面に集積回路センサ101を押し当てる(S303;センサ接触ステップ)。この状態で、インキュベータにて大腸菌の培養を開始する。

【0046】
なお、図8に示すフローチャートにおけるS203~S209の処理、および図9に示すフローチャートにおけるS303~S309の処理は、図7に示すフローチャートにおけるS103~S109の処理と同様であるため、その説明を省略する。

【0047】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0048】
本発明の実施形態2に係る菌の検査方法は、寒天培地1に代えて市販のシート状培地2を固形培地として用いている点で、本発明の実施形態1に係る菌の検査方法と異なる。

【0049】
<本実施形態に係る菌の検査方法の概略>
図10を参照して、本発明の実施形態2に係る菌の検査方法の概略について説明する。図10の(a)~(d)は、本発明の実施形態2に係る菌の検査方法の概略を示す図である。

【0050】
まず、図10の(a)および(b)に示すように、シート状培地2に大腸菌を含んだ試料を塗布(噴霧してもよい)した上で、基板102上に実装された集積回路センサ101の表面と、シート状培地2における試料が塗布された面(以下、「試料塗布面」とする)とが密着するように押し当てる。そして、この状態で、インキュベータにて大腸菌の培養を開始する。

【0051】
大腸菌の培養時間が進むにつれて、図10の(c)に示すように、シート状培地2の試料塗布面にコロニーK2が形成される。この間、集積回路センサ101は、大腸菌の培養開始時点および所定時間毎のシート状培地2の複素誘電率を、大腸菌の培養開始時点および所定時間毎のn個の発振器11の発振周波数として検知する。そして、集積回路センサ101によって検知された各発振周波数は、周波数読み出し回路120を介して菌存在判定部に出力される。

【0052】
菌存在判定部は、発振器11毎に、大腸菌の培養開始時点の初期発振周波数と各所定時間(第1所定時間~第3所定時間)経過時点の各所定発振周波数(第1所定発振周波数~第3所定発振周波数)との変化量を算出する。そして、菌存在判定部は、発振器11毎に第1変化量から第3変化量までの各変化量とあらかじめ設定された閾値とを比較することで、シート状培地2の試料塗布面および内部に大腸菌が存在するか否かを判定する。

【0053】
次に、菌存在判定部は、所定時間毎の判定結果に基づいて、図10の(d)に示すような2次元分布を生成する。検査者は、この2次元分布を確認することにより、大腸菌がどの程度増殖したか等を判断する。

【0054】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。図11の(a)は、本発明の実施形態3に係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置30の概略構成を示す側面図である。図11の(b)は、菌検査装置30の概略構成を示す平面図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0055】
本発明の実施形態3に係る菌の検査方法は、菌検査装置30を用いている点で、本発明の実施形態1および2に係る菌の検査方法と異なる。

【0056】
菌検査装置30は、検査対象となる菌の存在を検知するための装置である。菌検査装置30は、図11の(a)および(b)に示すように、集積回路センサ101とシート状培地2とが密着するように、基板102における集積回路センサ101が実装されている側の面(以下、「実装面」とする)にシート状培地2が密着固定された構造になっている。

【0057】
そして、検査時には、シート状培地2における基板102と接触していない側の面に、大腸菌を含んだ試料を塗布または噴霧した上で、インキュベータにて培養を開始する。菌検査装置30を検査に用いることにより、シート状培地2と集積回路センサ101とを検査のたびに密着させる操作が不要になる。それゆえ、さらなる検査の簡易化、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0058】
なお、図示しないものの、菌検査装置30においては、例えばシート状培地2に代えて寒天培地1を構成部材として用いてもよい。具体的には、寒天培地1における、基板102との接触面および当該接触面の反対側の表面(以下、「開放面」とする)以外の面をプラスチック製等の枠で囲み、寒天培地1が型崩れしないようにする。そして、寒天培地1が集積回路センサ101を覆うように枠を基板102の実装面に固定することによって、寒天培地1と集積回路センサ101とが密着した構造となる。この場合、大腸菌を含んだ試料は、寒天培地1の開放面に塗布等することになる。換言すれば、菌検査装置30は、シート状培地2等の固形培地と集積回路センサ101とが一体化した構造になっていればよい。

【0059】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図12に基づいて説明すれば、以下のとおりである。図12の(a)は、本発明の実施形態4に係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置40の概略構成を示す平面図である。図12の(b)および(c)は、本発明の実施形態4に係る菌の検査方法の概略を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0060】
本発明の実施形態4に係る菌の検査方法は、菌検査装置40を用いている点で、本発明の実施形態1~3に係る菌の検査方法と異なる。

【0061】
菌検査装置40は、無線通信を利用して、検査者が外部機器等から指令を送信することにより、検査対象となる菌の存在を検知するための装置である。無線通信としては、例えば、光無線通信、電波を用いた無線通信またはBluetooth(登録商標)等を採用することができる。後述する菌検査装置50についても同様である。菌検査装置40は、図12の(a)に示すように、集積回路センサ101、ワイヤレスで集積回路センサ101を作動させるための無線通信用IC(無線通信用集積回路)103および集積回路センサ101に電力を供給する電池(電源部)104が、基板102上に実装された構造になっている。

【0062】
また、本実施形態に係る菌の検査方法は、図12の(a)および(b)に示すような手順で行う。すなわち、まず、シャーレの底に冷却凝固させた寒天培地1の表面に、大腸菌が存在する希釈試料を噴霧する。そして、希釈試料が噴霧された寒天培地1の表面に、集積回路センサ101が密着するように菌検査装置40を押し当て、インキュベータにて大腸菌の培養を開始する。以降の手順については、本発明の実施形態1~3に係る菌の検査方法と同様である。

【0063】
このように、菌検査装置40を用いることにより、寒天培地1に集積回路センサ101を密着させた後、ワイヤレスで当該集積回路センサ101が動作できるようになる。それゆえ、インキュベータから信号線および電源線を外部に出す必要がなくなり、隙間なくシャーレに蓋ができることから、寒天培地1の乾燥を防ぐことができる。また、検査のたびに信号線および電源線を接続する必要もなくなることから、さらなる検査の簡易化、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0064】
なお、シート状培地2を用いた本発明の実施形態2に係る菌の検査方法に菌検査装置40を適用することができるのは言うまでもない。

【0065】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。図13の(a)は、本発明の実施形態5に係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置50の概略構成を示す図である。図13の(b)は、本発明の実施形態5に係る菌の検査方法の概略を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。

【0066】
本発明の実施形態5に係る菌の検査方法は、菌検査装置50を用いている点で、本発明の実施形態1~4に係る菌の検査方法と異なる。

【0067】
図13の(a)および(b)に示すように、菌検査装置50は、センサ実装部50aと無線給電用シート50bとで構成される。センサ実装部50aは、基板102上に、集積回路センサ101、無線通信用IC103、無線給電用受電回路IC(電源部)105および無線給電用受電側コイル(電源部)106が実装された構造になっている。また、無線給電用シート50b上には、無線給電用電装側コイル(電源部)106aが実装されている。

【0068】
菌検査装置50においては、無線給電用受電側コイル106を無線給電用伝送側コイル106aに近づけた状態で当該無線給電用伝送側コイル106aに電流を流すことによって、無線給電用受電側コイル106に電力が発生する。そして、無線給電用受電側コイル106に発生した電力は、無線給電用受電回路IC105を介して集積回路センサ101に供給される。このようにして、集積回路センサ101は作動する。

【0069】
また、本実施形態に係る菌の検査方法は、図13の(b)に示すような手順で行う。すなわち、まず、シャーレの底に冷却凝固させた寒天培地1の表面に、大腸菌が存在する希釈試料を噴霧する。そして、希釈試料が噴霧された寒天培地1の表面に、集積回路センサ101が密着するようにセンサ実装部50aを押し当てる。また、このとき、無線給電用受電側コイル106の配置位置と無線給電用伝送側コイル106aの配置位置とが一致するように、当該無線給電用伝送側コイル106aをシャーレの外側底面に接触させる。この状態で、インキュベータにて大腸菌の培養を開始する。以降の手順については、本発明の実施形態1~4に係る菌の検査方法と同様である。

【0070】
このように、無線給電用受電側コイル106を実装したセンサ実装部50aと、無線給電用伝送側コイル106aを実装した無線給電用シート50bとをセットで使用することで、集積回路センサ101を用いた検査を、電池104を用いることなくワイヤレスで行うことができる。それゆえ、菌検査装置40と同様に、寒天培地1の乾燥を防ぐことができるとともに、さらなる検査の簡易化、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0071】
なお、シート状培地2を用いた本発明の実施形態2に係る菌の検査方法に菌検査装置50を適用することができるのは言うまでもない。

【0072】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る菌の検査方法は、試料に存在する菌が加えられた固形培地(寒天培地1、シート状培地2)と、2次元状に配された複数の発振器(11)を内蔵する物性検知センサ(集積回路センサ101)とが接触した状態で、上記菌の培養を開始する第1ステップ(S101・S202;試料噴霧ステップ、S102・S201・S302;センサ接触ステップ、S300;試料混和ステップ)と、上記物性検知センサによって、上記菌の培養開始時点および所定時間毎の上記固形培地の物性を、上記菌の培養開始時点および所定時間毎の上記複数の発振器の発振周波数として検知する第2ステップ(S103・S203・S303;初期発振周波数検知ステップ、S106・S206・S306;所定発振周波数検知ステップ)と、上記物性検知センサによる検知結果に基づいて、発振器毎に、上記菌の培養開始時点の初期発振周波数と所定時間経過時点の所定発振周波数との変化量を算出する第3ステップ(S107・S207・S307;変化量算出ステップ)と、上記変化量と閾値とを比較することにより、各発振器の配置位置に対応する上記固形培地の領域のそれぞれについて、菌が存在するか否かを判定する第4ステップ(S104・S204・S304;判定結果取得ステップ、S108・S208・S308;菌存在判定ステップ)と、を含んでいる。

【0073】
上記構成によれは、本発明に係る菌の検査方法は、2次元状に配された複数の発振器を内蔵する物性検知センサを検査対象となる菌が加えられた固形培地に接触させることにより、各発振器の配置位置に対応する固形培地の領域のそれぞれについて、菌が存在するか否かを判定する。

【0074】
それゆえ、検査対象となる菌の種類に応じて既製品の選択性培地を適宜選択できることから、菌の種類ごとに培地を開発する手間を省くことができる。また、固形培地は、液体培地と比較して雑菌が混入したか否かの判別および混入した雑菌の除去が容易であることから、雑菌を確実に除去することにより検査対象となる菌の存在の有無を精度高く検査することができる。

【0075】
また、上記構成によれば、本発明に係る菌の検査方法は、物性検知センサに内蔵された複数の発振器から出力される発振周波数の変化量を算出し、当該変化量と閾値とを比較することにより、各発振器の配置位置に対応する固形培地の領域のそれぞれについて、菌が存在するか否かを判定する。それゆえ、形成されたコロニーを精度高く捕捉することができ、検査精度を向上させることができる。

【0076】
以上より、本発明に係る菌の検査方法によれば、簡易かつ短時間で信頼性の高い菌の検査を行うことができる。

【0077】
本発明の態様2に係る菌の検査方法は、上記態様1において、上記固形培地は、寒天培地であることが好ましい。

【0078】
上記構成によれば、固形培地は寒天培地であることから、溶液のpHを極端に上下させる水溶性物質でなければ、大抵の水溶性物質を寒天に溶け込ませ、固化させることができる。それゆえ、様々な種類の液体培地を、寒天を加えることで固形培地として使用することができる。また、寒天を分解する能力のある生物がほとんどいないことから、様々な種類の微生物を培養する場合において、途中で分解されて液化することが少ない。

【0079】
また、寒天は高温でも化学的に安定しており、例えば、培地に加えたままオートクレーブ滅菌(121℃)を行うことが可能である。加熱によって分解されないため副生成物をほとんど生成しないとともに、化学的に純度の高いものが得られやすいため、微生物の生育や検査試験の結果に誤差が生じることを低減することができる。

【0080】
また、純度が高い寒天は無色透明であることから、純度が高い寒天を用いることにより、培地上で成長する微生物を観察することが容易になる。また、寒天培地は、柔らかくかつ弾力があるため、刃物で切ったり削ったりするといった加工が容易である。したがって、比較的簡単に微生物が混入した箇所を除去することができるとともに、混入した微生物がカビなどの場合であれば、混入した箇所を切り取って封入し、プレパラートとすることもできる。

【0081】
本発明の態様3に係る菌の検査方法は、上記態様1において、上記固形培地は、シート状培地であることが好ましい。

【0082】
上記構成によれば、固形培地はシート状培地であることから、検査対象となる菌の種類に応じて、市販されている選択性培地を適宜選択することができる。それゆえ、菌の種類毎に培地を作成する必要がなく、検査の簡略化、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0083】
本発明の態様4に係る菌検査装置は、上記態様1から3のいずれかに係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置(30)であって、上記固形培地(シート状培地2)と上記物性検知センサとが一体化している。

【0084】
上記構成によれば、本発明に係る菌検査装置は、固形培地と物性検知センサとが一体化していることから、検査の度に固形培地と物性検知センサとを接触させる必要がなくなる。それゆえ、検査の簡略化、検査時間の短縮化をより図ることができる。

【0085】
本発明の態様5に係る菌検査装置は、上記態様1から3のいずれかに係る菌の検査方法に用いられる菌検査装置(40、50)であって、基板(102)上に、上記物性検知センサと、ワイヤレスで上記物性検知センサを作動させるための無線通信用集積回路(無線通信用IC103)と、上記物性検知センサに電力を供給する電源部(電池104、無線給電用受電回路IC105、無線給電用受電側コイル106、無線給電用伝送側コイル106a)と、が実装されている。

【0086】
上記構成によれは、本発明に係る菌検査装置は、基板上に、物性検知センサ、無線通信用集積回路および電源部が実装されていることから、当該菌検査装置を固形培地に接触させた状態で隙間なくシャーレに蓋ができ、固形培地の乾燥を防ぐことができる。また、インキュベータから信号線および電源線を外部に出す必要がなくなることから、検査のたびに信号線および電源線を接続する必要がなく、さらなる検査の簡略化、検査時間の短縮化を図ることができる。

【0087】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0088】
1、201 寒天培地(固形培地)
2 シート状培地(固形培地)
11 発振器
30、40、50 菌検査装置
101 集積回路センサ(物性検知センサ)
102 基板
103 無線通信用IC(無線通信用集積回路)
104 電池(電源部)
105 無線給電用受電回路IC(電源部)
106 無線給電用受電側コイル(電源部)
106a 無線給電用伝送側コイル(電源部)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12