TOP > 国内特許検索 > 誘電分光装置 > 明細書

明細書 :誘電分光装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-194361 (P2017-194361A)
公開日 平成29年10月26日(2017.10.26)
発明の名称または考案の名称 誘電分光装置
国際特許分類 G01J   3/45        (2006.01)
G01N  21/3586      (2014.01)
FI G01J 3/45
G01N 21/3586
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-084972 (P2016-084972)
出願日 平成28年4月21日(2016.4.21)
発明者または考案者 【氏名】田島 卓郎
【氏名】小川 雄一
【氏名】白神 慧一郎
出願人 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100129230、【弁理士】、【氏名又は名称】工藤 理恵
審査請求 未請求
テーマコード 2G020
2G059
Fターム 2G020AA02
2G020AA03
2G020BA02
2G020CA12
2G020CB05
2G020CB42
2G020CD03
2G020CD16
2G020CD24
2G059AA01
2G059BB12
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE02
2G059HH01
2G059JJ01
2G059KK01
要約 【課題】迷光の発生やスペクトル上の干渉リプルを低減し、測定再現性や測定精度を向上させる。
【解決手段】断面形状が台形の減衰全反射プリズム30の平行な面上に測定試料100を配置し、配置面に対向する面に電波吸収材31を備え、傾斜面から電磁波を入射して別の傾斜面から電磁波を出射する。これにより、減衰全反射プリズム30内で生じる回析や多重反射の影響による迷光の発生やスペクトル上の干渉リプルを低減することができ、測定再現性や測定精度を向上できるという効果を奏する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
周波数の異なる2つの連続光波が合成された光信号を光電変換して電磁波を発生する放射器と、
断面形状が台形であって、平行な面の一方に測定対象物を配置し、一方の傾斜面から前記電磁波を入射し、他方の傾斜面から前記電磁波を出射する減衰全反射プリズムと、
前記減衰全反射プリズムの他方の平行な面に配置された、前記減衰全反射プリズムと同等の誘電率を有する電波吸収材と、
前記2つの連続光波のうちの少なくとも一方の位相を変調して合成した参照光を入力し、前記電磁波を受信してホモダイン検波する検波器と、
を有することを特徴とする誘電分光装置。
【請求項2】
前記傾斜面及び前記減衰全反射プリズムと前記電波吸収材との間の少なくともいずれかに反射防止構造を有することを特徴とする請求項1に記載の誘電分光装置。
【請求項3】
前記減衰全反射プリズムの温度を制御する温度制御手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の誘電分光装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電分光法を用いた測定対象物の成分濃度を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が進み、成人病に対する対応が大きな課題になっている。血糖値などの検査は血液の採取が必要なために患者にとって大きな負担である。そのため、血液を採取しない非侵襲な成分濃度測定装置が注目されている。
【0003】
非侵襲な成分濃度測定装置として、誘電分光法を用いた装置が提案されている。誘電分光法は、皮膚内に電磁波を照射し、測定対象の血液成分、例えば、グルコース分子と水の相互作用に従い、電磁波を吸収させ、電磁波の周波数に対する振幅及び位相を観測する。観測される電磁波の周波数に対する振幅及び位相から誘電緩和スペクトルを算定する。一般的には、Cole-Cole式に基づき緩和カーブの線形結合として表現し、複素誘電率を算定する。生体成分の計測では、例えば血液中に含まれるグルコースやコレステロール等の血液成分の量に複素誘電率は相関があり、その変化に対応した電気信号(振幅、位相)として測定される。複素誘電率変化と成分濃度との相関を予め測定することによって検量モデルを構築し、計測した誘電緩和スペクトルの変化から成分濃度の検量を行う。
【0004】
マイクロ波などの電磁波を利用した材料分析では、共振法、同軸反射法等の様々な手法を利用して材料の複素誘電率を評価する。THz帯のような高周波では、レンズや放物面鏡を用いた擬似光学系によるフリースペース法により測定対象の複素誘電率を計測することが一般的である。なおフリースペース法は非特許文献1にも記載されるようにミリ波帯でも用いられる。
【0005】
従来の測定装置としては、マイクロ波からミリ波以上の周波数帯では、光電気変換(フォトミキシング)を利用した誘電分光装置がある(特許文献1参照)。特許文献1の誘電分光装置は、周波数の異なる2つの連続光波が合成された光信号を光電変換して電磁波、例えばテラヘルツ波を発生し、発生したテラヘルツ波を被測定対象物に照射し、被測定対象物を透過したテラヘルツ波を受信するとともに、2つの連続光波のうちの一方の位相を変調して合成した参照光を入力してホモダインミキシングする構成である。ホモダインミキシングする検出器には例えば、光伝導アンテナを用い、参照光の照射によりアンテナ間のコンダクタンスが参照光に含まれる2つの連続光波間の差周波数にて変調されることで実現される。従来の誘電分光装置においては、電磁波をホモダイン検波する際には、検出器でのミキシング時における2つの光路長差が一致していることが必要である。そのため、空間を伝搬するテラヘルツ波の伝搬長や光が伝搬するファイバの長さ等を調節する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2013-32933号公報
【0007】

【非特許文献1】Andrew P. Gregory, and Robert N. Clarke,“A Review of RF and Microwave Techniques for Dielectric Measurements on Polar Liquids”, IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation, August 2006, Vol. 13, No. 4, pp.727-743
【非特許文献2】Jae-Young Kim, Ho-Jin Song, Katsuhiro Ajito, Makoto Yaita, and Naoya Kukutsu,“Continuous-Wave THz Homodyne Spectroscopy and Imaging System With Electro-Optical Phase Modulation for High Dynamic Range”, IEEE Transactions on terahertz science and technology, March 2013, Vol. 3, No. 2, pp.158-164
【非特許文献3】Hirotaka Naito, Yuichi Ogawa, Keiichiro Shiraga, Naoshi Kondo, Tsunao Hirai, Ikuo Osaka, and Asuka Kubota,“Inspection of Milk Components by Terahertz Attenuated Total Reflectance (THz-ATR) Spectrometer Equipped Temperature Controller”, IEEE/SICE International Symposium on System Integration, December 2011, pp. 192-196
【非特許文献4】M. Exter and D. Grischkowsky,“Optical and electronic properties of doped silicon from 0.1 to 2 TZh”, Applied Physics Letter, April 1990, Vol. 56, No. 17, pp.1694-1696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水溶液や油等の液体試料を評価する際には、サンプルセルに液体試料を封入する、もしくは液体試料をフローにより供給して測定することが一般的である。誘電測定用セルでは、テラヘルツ波を透過する窓材をテラヘルツ波の入射面と出射面に設ける。連続波電磁波分光測定では、窓材の厚さに依存するテラヘルツ波の多重反射が生ずることが知られている。2つの窓材の厚さと試料厚、誘電率から多重反射の影響を排除することは容易ではなく、例えば、移動平均をとることによりスペクトル上の干渉リプルを低減する方法がとられる。
【0009】
また、水は赤外領域で非常に強い吸収を呈するため、高抵抗シリコン製の減衰全反射プリズム(ATRプリズム)上に液体試料を配置し、プリズム内に電磁波を透過して液体試料を評価することが知られている(非特許文献3)。
【0010】
しかしながら、広帯域電磁波において、波長収差によるビーム径や集光位置の違いに伴う、減衰全反射プリズムで生じる回析や多重反射の影響により、迷光の発生やスペクトル上の干渉リプルが生ずる。これらの雑音は、温度等の環境変動によるプリズムの屈折率変動の影響により、信号の振幅・位相の変動をもたらすため、測定再現性や測定精度が得られないという課題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、迷光の発生やスペクトル上の干渉リプルを低減し、測定再現性や測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る誘電分光装置は、周波数の異なる2つの連続光波が合成された光信号を光電変換して電磁波を発生する放射器と、断面形状が台形であって、平行な面の一方に測定対象物を配置し、一方の傾斜面から前記電磁波を入射し、他方の傾斜面から前記電磁波を出射する減衰全反射プリズムと、前記減衰全反射プリズムの他方の平行な面に配置された、前記減衰全反射プリズムと同等の誘電率を有する電波吸収材と、前記2つの連続光波のうちの少なくとも一方の位相を変調して合成した参照光を入力し、前記電磁波を受信してホモダイン検波する検波器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、迷光の発生やスペクトル上の干渉リプルを低減し、測定再現性や測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における誘電分光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】測定系にレンズを用いた例を示す図である。
【図3】本実施の形態における減衰全反射プリズムを示す図である。
【図4】本実施の形態における電波吸収材の吸収係数と屈折率を計算したグラフである。
【図5A】減衰全反射プリズムの底部に金属を配置したときの数値解析例である。
【図5B】減衰全反射プリズムの底部に電波吸収材を配置したときの数値解析例である。
【図6】本実施の形態における減衰全反射プリズムの変形例を示す図である。
【図7】本実施の形態における減衰全反射プリズムの別の変形例を示す図である。
【図8】本実施の形態における減衰全反射プリズムのさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。

【0016】
図1は、本実施の形態における誘電分光装置の構成を示すブロック図である。

【0017】
図1に示す誘電分光装置は、連続波光源11A,11B、スプリッタ12A,12B、カプラ13A,13B、位相変調器14A,14B、第1フォトミキサ16、第2フォトミキサ17、ロックインアンプ18、モニタ19、及び遅延線20を備える。測定試料100は、電磁波の経路上の放物面鏡41A,41Bの間の減衰全反射プリズム30上に配置される。減衰全反射プリズム30の底部には、プリズムの材料と同等の誘電率を有する電波吸収材31を備える。

【0018】
連続波光源11A,11Bは、周波数が互いに異なる連続波光信号を出力する。以下の説明では、連続波光源11Aから出力された連続波光信号を第1光信号、連続波光源11Bから出力された連続波光信号を第2光信号とする。

【0019】
スプリッタ12Aは、第1光信号を分波する。スプリッタ12Bは、第2光信号を分波する。

【0020】
カプラ13Aは、スプリッタ12Aで分波された第1光信号とスプリッタ12Bで分波された第2光信号とを合波する。カプラ13Aで合波された光信号はファイバを通って第1フォトミキサ16に入力される。

【0021】
第1フォトミキサ16は、カプラ13Aで合波された光信号を光電変換し、第1光信号と第2光信号の周波数差に一致する周波数の電磁波(ミリ波又はテラヘルツ波)を発生する。第1フォトミキサ16としては、例えば単一走行キャリア・フォトダイオード(UTC-PD:Uni-Traveling-Carrier Photodiode)を利用できる。第1フォトミキサは電磁波を発生する放射器として機能する。

【0022】
位相変調器14A,14Bは、制御信号により電気的に位相変調が可能な電気光学結晶を用いた位相変調器である。位相変調器14Aはスプリッタ12Aとカプラ13Bの間に配置される。位相変調器14Bはスプリッタ12Bとカプラ13Bの間に配置される。位相変調器14A,14Bに、発振器15からの単一周波数fmのノコギリ波状の制御信号を印加してセロダイン位相変調を行い、変調周波数fmと同等の周波数シフトを光信号に生じさせる。位相変調器14Aは、スプリッタ12Aで分波した第1光信号のいずれか一方の位相を変調する位置に配置する。位相変調器14Aをスプリッタ12Aとカプラ13Aの間に配置してもよい。位相変調器14Bは、スプリッタ12Bで分波した第2光信号のいずれか一方の位相を変調する位置に配置する。位相変調器14Bをスプリッタ12Bとカプラ13Aの間に配置してもよい。位相変調器14A,14Bは互いに制御信号を反転して、プッシュ・プル制御による位相変調を行う。なお、位相変調器14A,14Bのいずれか一方を備える構成でもよい。

【0023】
カプラ13Bは、位相変調器14A,14Bのそれぞれで位相変調された第1光信号と第2光信号とを合波する。

【0024】
遅延線20は、カプラ13Bと第2フォトミキサ17とを結ぶファイバ上に配置され、カプラ13Bで合波された光信号は遅延線20を通って第2フォトミキサ17に入力される。遅延線20は、ファイバ端にレンズコリメータを接続し、2つのレンズを対向させ、平行光を伝搬させることで低損失で実現できる。誘電分光装置においては、電磁波をホモダイン検波する際に、検波器でのミキシング時における2つの光路長差が一致するように光が伝搬するファイバの長さ等を予め調整する。本実施の形態では、カプラ13Aから第1フォトミキサ16までのファイバと、カプラ13Bから第2フォトミキサ17までのファイバとを同等の遅延長とし、さらにカプラ13Bと第2フォトミキサ17の間に、第1フォトミキサ16から第2フォトミキサ17に出射される電磁波の空間伝搬長と同等の長さ(遅延長)を有する遅延線20を備えた。もしくは、カプラ13Aと第1フォトミキサ16との間に遅延線20を配置してもよいし、遅延線20を備えない構成としてもよい。

【0025】
第2フォトミキサ17は、カプラ13Bで合波された光信号を照射されるとともに、第1フォトミキサ16が放射し、減衰全反射プリズム30を透過して測定試料100で反射した電磁波を受信し、ホモダインミキシングして周波数fmの電気信号を出力する。第2フォトミキサ17は、アンテナ付きUTC-PDと光ファイバとを同一パッケージに実装することで実現できる。第2フォトミキサ17には、光伝導アンテナ(PCA:Photo-Conductive Antenna)を用いてもよい。第2フォトミキサは電磁波をホモダイン検波する検波器として機能する。

【0026】
ロックインアンプ18は、第2フォトミキサ17が出力する電気信号を同期検波して振幅及び位相を検出する(非特許文献2参照)。モニタ19は、ロックインアンプ18が検出した振幅及び位相を処理する。

【0027】
テラヘルツ波帯では、レンズや放物面鏡を用いた擬似光学系によるフリースペース法により、電磁波を減衰全反射プリズム30に入射して測定対象である測定試料100に照射し、減衰全反射プリズム30を透過した電磁波を検波して複素誘電率を計測する。放物面鏡41A,41Bを利用した場合は、レンズを利用するのに比べてレンズ内の多重反射が生じないので測定値が安定する。図2に示すように、放物面鏡41A,41Bの代わりにレンズ42A,42Bを用い、レンズ42A,42Bの中央に測定試料100を載せた減衰全反射プリズム30上を配置してもよい。支持台35上に減衰全反射プリズム30を配置し、電磁波の照射位置を調整する。

【0028】
図3は、本実施の形態における減衰全反射プリズムを示す図である。

【0029】
減衰全反射プリズム30は、断面形状が台形のDove型(ドーブ型)である。電磁波は、減衰全反射プリズム30の一方の傾斜面の所定位置に平面波で照射され、上面(平行な面のうちの幅の広い面)に配置された測定試料100で反射した後に、他方の傾斜面から出射する。照射される電磁波のビームサイズに応じて、減衰全反射プリズム30の幅及び高さを調整する。減衰全反射プリズム30の傾斜面の角度θは、入射した電磁波が測定試料100に45度で照射されるように設計する。

【0030】
電磁波の入射時および出射時には、減衰全反射プリズム30の材料であるシリコンと空気の界面でおよそ30%の電磁波が反射される。入射面と出射面での多重反射が生じるなかで、ビーム径の変化や球面波となることで迷光成分が生成される。また、減衰全反射プリズム30の一方の傾斜面の所定位置から上面側に電磁波が入射した際にも、図中の矢印で示すように、減衰全反射プリズム30の上面と下面で反射した後に出射される。さらに、減衰全反射プリズム30のエッジに電磁波が入射することによる回折の影響により不要波が入る。これらの迷光成分や不要波が多重反射を介して出射側の光学系と結合することにより測定信号の誤差を生ずる。

【0031】
本実施の形態では、減衰全反射プリズム30の底部に電波吸収材31を備えて、電波吸収材31が迷光などの電磁波を反射することなく吸収する。電波吸収材31は、1kΩ以下の低抵抗シリコンを用い、減衰全反射プリズム30との誘電率差を小さくする。p型もしくはn型の高濃度不純物ドープ(1015~1016cm-3)を行った低抵抗シリコンの吸収係数nと屈折率αはDrudeモデルによって表すことができる(非特許文献4)。例えば、不純物濃度N=2×1016cm-3として、吸収係数nと屈折率αを計算した例を図4に示す。同図に示すように、0.1~2THzで比較的平坦な吸収係数nと屈折率αを実現できている。電波吸収材31は、減衰全反射プリズム30の材料と同じ誘電率を有することが望ましい。電波吸収材31として磁性材料を分散させたゴムやセラミックスを用いてもよい。または、電波を良く透過する発泡スチロールやスポンジ等の多孔質材料中に分散させたカーボン等の導電性材料や波長と同程度のサイズを有する誘電体フィラーによる多重内部散乱によって、電磁波の減衰を生じさせてもよい。広帯域で電磁波を吸収するメタマテリアルを利用した金属パタンを形成してもよい。なお、減衰全反射プリズム30の底部に加えて側面(電磁波の入射面・出射面ではない側面)にも電波吸収材31を設置してもよい。

【0032】
続いて、本実施の形態の電波吸収材の不要反射波除去の効果の数値解析例について説明する。

【0033】
図5Aは減衰全反射プリズムの底部に金属を配置し、減衰全反射プリズムへの入射波をパルス状平面波として与えた際の出射パルス波形の信号強度の時間波形を数値解析した例である。図5Bは減衰全反射プリズムの底部に電波吸収材(低抵抗シリコン)を配置したときの数値解析例である。両者ともに、0.175nsecにおいて、入射したパルス状平面波が所望の伝播経路で減衰全反射プリズムの出射面に到達している。金属を配置した場合は、0.26nsecにおいて、不要反射波が出射面に到達していることがわかる。また、その他の迷光成分と考えられる0.2nsec以降の小さい不要反射波に関しても、電波吸収材を配置した場合には比較的低減できていることがわかる。

【0034】
次に、減衰全反射プリズムの変形例について説明する。

【0035】
図6は、本実施の形態における減衰全反射プリズムの変形例を示す図である。同図に示す減衰全反射プリズム30は、電磁波の入射面と出射面に反射防止構造32を設けた。電磁波が減衰全反射プリズム30に入射するとき及び出射するときに、反射が低減されるため、多重反射による干渉リプルや迷光の発生を低減できる。反射防止構造32として、光学的な反射防止構造と同様に、4分の1λ誘電体膜、あるいは表面に電磁波の波長の10分の1以下の凹凸を形成した構造を用いることが可能である。

【0036】
図7は、本実施の形態における減衰全反射プリズムの別の変形例を示す図である。同図に示す減衰全反射プリズム30は、図6の減衰全反射プリズム30の底部にさらに反射防止構造32を設けた。底部に設けた反射防止構造32の誘電率と厚さは、減衰全反射プリズム30の材料と電波吸収材31の誘電率に応じて適宜設計する。減衰全反射プリズム30の底部に反射防止構造32を設けたので、電波吸収材31は、減衰全反射プリズム30と同様の誘電率を有する必要はない。

【0037】
図8は、本実施の形態における減衰全反射プリズムのさらに別の変形例を示す図である。同図に示す減衰全反射プリズム30は、図6の減衰全反射プリズム30の電波吸収材31の下に温度制御器33を設けた。温度制御器33は、例えばペルチェ素子とヒータを備えた金属板である。電波吸収材31に熱伝導率の高いシリコンを用いることで、効率的に測定試料100及び減衰全反射プリズム30の温度を制御し、減衰全反射プリズム30の屈折率変動を抑制することが可能である。

【0038】
以上説明したように、本実施の形態によれば、断面形状が台形の減衰全反射プリズム30の平行な面上に測定試料100を配置し、配置面に対向する面に電波吸収材31を備え、傾斜面から電磁波を入射して別の傾斜面から電磁波を出射することにより、減衰全反射プリズム30内で生じる回析や多重反射の影響による迷光の発生やスペクトル上の干渉リプルを低減することができ、測定再現性や測定精度を向上できるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0039】
11A,11B…連続波光源
12A,12B…スプリッタ
13A,13B…カプラ
14A,14B…位相変調器
15…発振器
16,17…フォトミキサ
18…ロックインアンプ
19…モニタ
20…遅延線
30…減衰全反射プリズム
31…電波吸収材
32…反射防止構造
33…温度制御器
35…支持台
41A,41B…放物面鏡
42A,42B…レンズ
100…測定試料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5A】
4
【図5B】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8