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明細書 :新規核酸合成法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-104092 (P2017-104092A)
公開日 平成29年6月15日(2017.6.15)
発明の名称または考案の名称 新規核酸合成法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 37
出願番号 特願2016-190363 (P2016-190363)
出願日 平成28年9月28日(2016.9.28)
優先権出願番号 2015232383
優先日 平成27年11月27日(2015.11.27)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】保川 清
【氏名】岡野 啓志
【氏名】藤原 伸介
【氏名】藤原 綾子
【氏名】秀瀬 涼太
【氏名】柳原 格
【氏名】名倉 由起子
【氏名】林 司
【氏名】宇治家 武史
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
【識別番号】506286928
【氏名又は名称】地方独立行政法人 大阪府立病院機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】高い正確性及び高い逆転写活性を維持したcDNA合成方法を提供すること。また、NASBA法においてヘリカーゼを用いることにより標的核酸がDNAの場合にも合成効率を向上させる方法を提供すること。
【解決手段】特定の(i)逆転写酵素、(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び(iii)ヘリカーゼを含有する溶液中で、RNAを鋳型としてcDNAを合成する方法。また、逆転写酵素、RNaseH、RNAポリメラーゼ、NTP、dNTP、及びヘリカーゼを含む溶液中で、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させる方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(i)逆転写酵素、(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び(iii)ヘリカーゼを含有する溶液中で、RNAを鋳型としてcDNAを合成する方法。
(i)以下の(i-1)又は(i-2)に記載の逆転写酵素;
(i-1):配列番号1のアミノ酸配列において、69位のグルタミン酸、108位のアスパラギン酸、117位のグルタミン酸、124位のアスパラギン酸、286位のグルタミン酸、302位のグルタミン酸、313位のトリプトファン、435位のロイシン及び454位のアスパラギンからなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸が、正電荷アミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写酵素
(i-2):(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写酵素
(ii)以下の(ii-1)又は(ii-2)に記載の逆転写DNAポリメラーゼ;
(ii-1):配列番号2のアミノ酸配列において、326番目、329番目、384番目、388番目、408番目、及び438番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写DNAポリメラーゼ
(ii-2):(ii-1)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写DNAポリメラーゼ
(iii)以下の(iii-1)又は(iii-2)に記載のヘリカーゼ;
(iii-1):配列番号3のアミノ酸配列からなる、ヘリカーゼ
(iii-2):(iii-1)のヘリカーゼのアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヘリカーゼ活性を有する、ヘリカーゼ
【請求項2】
請求項1に記載の方法で得られうるcDNAに対して核酸増幅反応を行う工程を含む、鋳型RNAの存在を確認する方法。
【請求項3】
さらに、前記核酸増幅反応で得られうる増幅された核酸の検出工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸増幅反応が、RT-PCR又はNASBAである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
以下の(i)逆転写酵素、(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び(iii)ヘリカーゼを備える、cDNA合成キット。
(i)以下の(i-1)又は(i-2)に記載の逆転写酵素;
(i-1):配列番号1のアミノ酸配列において、69位のグルタミン酸、108位のアスパラギン酸、117位のグルタミン酸、124位のアスパラギン酸、286位のグルタミン酸、302位のグルタミン酸、313位のトリプトファン、435位のロイシン及び454位のアスパラギンからなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸が、正電荷アミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写酵素
(i-2):(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写酵素
(ii)以下の(ii-1)又は(ii-2)に記載の逆転写DNAポリメラーゼ;
(ii-1):配列番号2のアミノ酸配列において、326番目、329番目、384番目、388番目、408番目、及び438番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写DNAポリメラーゼ
(ii-2):(ii-1)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写DNAポリメラーゼ
(iii)以下の(iii-1)又は(iii-2)に記載のヘリカーゼ;
(iii-1):配列番号3のアミノ酸配列からなる、ヘリカーゼ
(iii-2):(iii-1)のヘリカーゼのアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヘリカーゼ活性を有する、ヘリカーゼ
【請求項6】
逆転写酵素、RNaseH、RNAポリメラーゼ、NTP、dNTP、及びヘリカーゼを含む、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させるためのミックス。
【請求項7】
逆転写酵素、RNaseH、RNAポリメラーゼ、NTP、及びdNTPからなる群より選択される少なくとも1種、ならびにヘリカーゼを備える、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させるためのキット。
【請求項8】
逆転写酵素、RNaseH、RNAポリメラーゼ、NTP、dNTP、及びヘリカーゼを含む溶液中で、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させる方法。
【請求項9】
RNAポリメラーゼがT7RNAポリメラーゼである、請求項6に記載のミックスもしくは請求項7に記載のキット、又は請求項8に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な核酸合成法(特に、cDNA合成法及びNASBA法によるDNA合成法)に関する。本明細書に示される全ての文献(特にWO2012/020759号及びWO2010/050418号)の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在のcDNA合成には、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素やトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素に代表されるレトロウイルス由来の逆転写酵素が用いられているが、感度および正確性がDNAを鋳型とするDNA合成に及ばない。これは、鋳型RNAがつくる二次構造や、逆転写酵素の耐熱性が低いこと、校正活性をもたないこと、が原因である。これまでに、アミノ酸変異導入により、野生型逆転写酵素よりも耐熱性が高い逆転写酵素(耐熱型逆転写酵素)が報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献1及び2)。しかし、それらの耐熱性は、野生型逆転写酵素よりは高いが、耐熱型DNAポリメラーゼと比較すると著しく低い。
【0003】
耐熱型DNAポリメラーゼにアミノ酸変異を導入することより、逆転写活性を有する耐熱型DNAポリメラーゼが報告されている(例えば特許文献2)。これらは校正活性を有するので高い正確性が期待される。しかし、その逆転写活性は逆転写酵素と比較すると弱く(例えば非特許文献4)、実用化には至っていない。
【0004】
RNA・DNAヘリカーゼ(単にRNAヘリカーゼ又はヘリカーゼともよばれる)は、核酸のミスアニーリングを解消することが報告されている。従って、cDNA合成でしばしば問題となる非特異的増幅の解消が期待できる(例えば非特許文献5)。しかし、RNA・DNAヘリカーゼは本来のアニーリングを弱めることもある。逆転写酵素の作用を十分保持させた反応条件において、RNA・DNAヘリカーゼの作用によりミスアニーリングを解消させることは困難と考えられており、実用化には至っていない。
【0005】
Nucleic acid sequence based amplification(NASBA)は一定温度のRNA増幅法である(例えば非特許文献6)。RT-PCRのように温度の上げ下げが不要なため、RT-PCRよりも広い用途が期待される。NASBA以外で温度の上げ下げが不要なRNA増幅法としては、標的RNAにMMLV逆転写酵素あるいはAMV逆転写酵素で代表される逆転写酵素を作用させて二本鎖cDNAを合成し、これにTtE-UvrDで代表される耐熱型ヘリカーゼおよびBstポリメラーゼで代表される耐熱型鎖置換DNAポリメラーゼを作用させて一定温度でDNAを増幅させる方法(特許文献3)、および標的RNAに、PYROPHAGE 3173で代表される、逆転写活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ活性の両方を有するDNAポリメラーゼ(以下「逆転写DNAポリメラーゼ」)を作用させて二本鎖cDNAを合成し、これにRecQヘリカーゼあるいはT.テングコンジェンシスおよびT.アクチアシス由来ヘリカーゼで代表される耐熱型ヘリカーゼおよび上記逆転写DNAポリメラーゼを作用させて一定温度でDNAを増幅させる方法(特許公報4)が報告されている。しかし、それらの増幅効率はNASBAやPCRより低く、ほとんど実用化されていない。
【0006】
ところで、NASBA法は、通常標的核酸がRNAの場合に用いられる手法であるが、標的核酸がDNAの場合であっても、これを増幅させることができる(例えば非特許文献7)。しかし、標的核酸がDNAである場合のNASBA法の増幅効率は低く、これを微生物存在の検査等に応用しようとしても検出感度が低いため、実現は難しかった。その結果、NASBA法の実用化は、標的核酸がRNAであるに限定されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開第2012/020759号
【特許文献2】国際公開第2010/050418号
【特許文献3】特表2008-526231号公報
【特許文献4】特表2013-516192号公報
【0008】

【非特許文献1】K. Yasukawaら、「Increase in thermal stability of Moloney murine leukaemia virus reverse transcriptase by site-directed mutagenesis」、ジャーナル・オブ・バイオテクノロジー(Journal of Biotechnology)、2010年発行、第150巻、pp.299-306
【非特許文献2】B. Areziら、「モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素の新たな変異は、テンプレート-プライマーへの強力な結合を介して熱安定性を増加させる(Novel mutations in Moloney murine leukemia virus reverse transcriptase increase thermostability through tighter binding to template-primer)」、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research)、2009年発行、第37巻、pp.473-481)
【非特許文献3】S. Sanoら、「Mutations to create thermostable reverse transcriptase with bacterial family A DNA polymerase from Thermotoga petrophila K4」、ジャーナル・オブ・バイオサイエンス・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Biochemical and Bioengineering)、2012年発行、第13巻、pp.315-321
【非特許文献4】K. Yasukawaら、「Kinetic analysis of reverse transcriptase activity of bacterial family A DNA polymerases」バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochemical Biophysical Research Communication)、2012年発行、第427巻、pp.654-658
【非特許文献5】Y. Shimadaら、「Property of cold inducible DEAD-box RNA helicase in hyperthermophilic archaea」、バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochemical Biophysical Research Communication)、2009年発行、第389巻、pp.622-626
【非特許文献6】T.Hayashiら、「A competitive nucleic acid sequence-based amplification assay for the quantification of human MDR1 transcript in leukemia cells」、クリニカル・ケミカル・アクタ(Clinical Chemical Acta)、2004年発行、第342巻、pp.115-126
【非特許文献7】C.Voissetら、「RNA amplification Technique, NASBA,also amplifies homogeneous plasmid DNA in non-denaturing conditions」バイオテクニックス(BioTechniques)2000年発行、第29巻、pp.236-240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い正確性及び高い逆転写活性を維持したcDNA合成方法を見いだすことを課題とする。また、本発明は、NASBA法を用いて標的DNAを効率よく合成する方法を見出すことも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(α)特定の3種の酵素を組み合わせて用いることにより効率よくcDNAを合成する方法、及び(β)NASBA法においてヘリカーゼを用いることにより標的核酸がDNAの場合にも合成効率を向上させる方法、を包含する。
【0011】
本発明者らは、特定の(i)逆転写酵素、特定の(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び特定の(iii)ヘリカーゼの、特定の3種の酵素を組み合わせて用いることにより、効率よくcDNAを合成できることを見いだし、さらに改良を重ねて上記(α)の発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
以下の(i)逆転写酵素、(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び(iii)ヘリカーゼを含有する溶液中で、RNAを鋳型としてcDNAを合成する方法。
(i)以下の(i-1)又は(i-2)に記載の逆転写酵素;
(i-1):配列番号1のアミノ酸配列において、69位のグルタミン酸、108位のアスパラギン酸、117位のグルタミン酸、124位のアスパラギン酸、286位のグルタミン酸、302位のグルタミン酸、313位のトリプトファン、435位のロイシン及び454位のアスパラギンからなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸が、正電荷アミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写酵素
(i-2):(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写酵素
(ii)以下の(ii-1)又は(ii-2)に記載の逆転写DNAポリメラーゼ;
(ii-1):配列番号2のアミノ酸配列において、326番目、329番目、384番目、388番目、408番目、及び438番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写DNAポリメラーゼ
(ii-2):(ii-1)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写DNAポリメラーゼ
(iii)以下の(iii-1)又は(iii-2)に記載のヘリカーゼ;
(iii-1):配列番号3のアミノ酸配列からなる、ヘリカーゼ
(iii-2):(iii-1)のヘリカーゼのアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヘリカーゼ活性を有する、ヘリカーゼ
項2.
項1に記載の方法で得られうるcDNAに対して核酸増幅反応を行う工程を含む、鋳型RNAの存在を確認する方法。
項3.
さらに、前記核酸増幅反応で得られうる増幅された核酸の検出工程を含む、項2に記載の方法。
項4.
前記核酸増幅反応が、RT-PCR又はNASBAである、項2又は3に記載の方法。
項5.
以下の(i)逆転写酵素、(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び(iii)ヘリカーゼを備える、cDNA合成キット。
(i)以下の(i-1)又は(i-2)に記載の逆転写酵素;
(i-1):配列番号1のアミノ酸配列において、69位のグルタミン酸、108位のアスパラギン酸、117位のグルタミン酸、124位のアスパラギン酸、286位のグルタミン酸、302位のグルタミン酸、313位のトリプトファン、435位のロイシン及び454位のアスパラギンからなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸が、正電荷アミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写酵素
(i-2):(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写酵素
(ii)以下の(ii-1)又は(ii-2)に記載の逆転写DNAポリメラーゼ;
(ii-1):配列番号2のアミノ酸配列において、326番目、329番目、384番目、388番目、408番目、及び438番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写DNAポリメラーゼ
(ii-2):(ii-1)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写DNAポリメラーゼ
(iii)以下の(iii-1)又は(iii-2)に記載のヘリカーゼ;
(iii-1):配列番号3のアミノ酸配列からなる、ヘリカーゼ
(iii-2):(iii-1)のヘリカーゼのアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヘリカーゼ活性を有する、ヘリカーゼ
【0013】
また本発明者らは、NASBA法においてヘリカーゼを用いることにより標的核酸がDNAの場合にも合成効率を向上させ得ることを見いだし、さらに改良を重ねて上記(β)の発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の主題をも包含する。
項A.
逆転写酵素、RNaseH、T7RNAポリメラーゼ、NTP、dNTP、及びヘリカーゼを含む、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させるためのミックス。
項B.
逆転写酵素、RNaseH、T7RNAポリメラーゼ、NTP、及びdNTPからなる群より選択される少なくとも1種、ならびにヘリカーゼを備える、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させるためのキット。
項C.
逆転写酵素、RNaseH、T7RNAポリメラーゼ、NTP、dNTP、及びヘリカーゼを含む溶液(好ましくは、ヘリカーゼの濃度が100nM以下である)中で、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させる方法。
項D.
鋳型DNAの一部とアニールする塩基配列(好ましくは鋳型DNAの一部の相補配列)からなるDNAの5’端に、さらにT7プロモーター配列からなるDNAが結合した構造を有するプライマーを、さらに含む、項Aに記載のミックスもしくは項Bに記載のキット、あるいは当該プライマーを前記溶液中にさらに含む、項Cに記載の方法。
項E.
ヘリカーゼが、35~45℃でヘリカーゼ活性を有するヘリカーゼである、項Aに記載のミックスもしくは項Bに記載のキット、又は項Cに記載の方法。
項F.
核酸増幅がNASBA法によるものである、項A、D若しくはEに記載のミックスもしくは項B、D若しくはEに記載のキット、又は項C、D若しくはEに記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るcDNA合成方法(上記(α))によれば、高い逆転写活性により非常に効率よく、cDNAを合成することができる。しかも、高い正確性をもってcDNAが合成される。このため、非常に少数のテンプレートRNA分子からも正確かつ大量にcDNAを合成することができる。従って、本発明に係るcDNA合成方法により、RNA分子を非常に高感度かつ正確に検出することができる。
【0016】
また、本発明に係るヘリカーゼを用いるNASBA法(上記(β))によれば、NASBA法を用いて標的DNAを効率よく合成することができる。従って、標的DNA分子をNASBA法によって非常に高感度かつ正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】精製タンパク質(ヘリカーゼ)の巻き戻し活性測定実験のうち、両末端突出タイプの系を用いた際の結果を示す。
【図1b】精製タンパク質(ヘリカーゼ)の巻き戻し活性測定実験のうち、5’突出タイプの系を用いた際の結果を示す。
【図1c】精製タンパク質(ヘリカーゼ)の巻き戻し活性測定実験のうち、3’突出タイプの系を用いた際の結果を示す。
【図1d】精製タンパク質(ヘリカーゼ)の巻き戻し活性測定実験のうち、平滑末端タイプの系を用いた際の結果を示す。
【図1e】図1a~図1dの結果をまとめたグラフを示す。
【図1f】巻き戻し活性測定実験の結果から算出した、二本鎖DNAの各タイプの末端からの巻き戻し活性を示す。
【図2】実施例(cDNA合成産物のPCRによる検出1)で用いたテンプレートRNAおよびプライマーの配列を示す。
【図3】実施例(cDNA合成産物のPCRによる検出1)に示す方法でcDNA合成およびPCRを行い、PCRの増幅産物を2%アガロース電気泳動にかけた後、エチジウムブロミドで染色し、トランスイルミネータでDNAのバンドを解析した結果を示す。
【図4】実施例(cDNA合成産物のNASBAによる検出)に示す方法でPCRおよびNASBA-核酸クロマトを行った結果を示す。
【図5】実施例(cDNA合成産物のPCRによる検出2)で用いたテンプレートRNAおよびプライマーの配列を示す。
【図6】実施例(cDNA合成産物のPCRによる検出2)に示す方法でcDNA合成およびPCRを行い、PCRの増幅産物を1%アガロース電気泳動にかけた後、エチジウムブロミドで染色し、トランスイルミネータでDNAのバンドを解析した結果を示す。矢印は目的の増幅産物のバンドを示す。
【図7】実施例(cDNA合成産物のPCRによる検出3)に示す方法でcDNA合成およびPCRを行い、PCRの増幅産物を2%アガロース電気泳動にかけた後、エチジウムブロミドで染色し、トランスイルミネータでDNAのバンドを解析した結果を示す。矢印は目的の増幅産物のバンドを示す。
【図8】cesD配列を含んだプラスミドDNAを、cesD配列増幅のためのフォワードプライマー側又はリバースプライマー側のいずれか1カ所を制限酵素(EcoRI又はPstI)で消化した時の概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。まず、上記(α)について説明する。

【0019】
本発明に包含されるcDNA合成方法では、特定の(i)逆転写酵素、特定の(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び特定の(iii)ヘリカーゼの、特定の3種の酵素を組み合わせて用いる。これら特定の(i)~(iii)の酵素について、次に詳説する。

【0020】
本発明に用いる(i)逆転写酵素は、以下の(i-1)又は(i-2)の逆転写酵素である。
(i-1):配列番号1のアミノ酸配列において、69位のグルタミン酸、108位のアスパラギン酸、117位のグルタミン酸、124位のアスパラギン酸、286位のグルタミン酸、302位のグルタミン酸、313位のトリプトファン、435位のロイシンおよび454位のアスパラギンからなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸が、
正電荷アミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写酵素。
(i-2):(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写酵素。

【0021】
正電荷アミノ酸としては、pH7.0において正に荷電しているアミノ酸が好ましく、pH8.0において正に荷電しているアミノ酸がより好ましく、逆転写反応を行なうに適したpH(pH8.3)において、正に荷電しているアミノ酸がさらに好ましい。なかでも、特にアルギニン及びリジンが好ましい。

【0022】
なお、「(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列」とは、「配列番号1のアミノ酸配列において、69位のグルタミン酸、108位のアスパラギン酸、117位のグルタミン酸、124位のアスパラギン酸、286位のグルタミン酸、302位のグルタミン酸、313位のトリプトファン、435位のロイシンおよび454位のアスパラギンからなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸が、正電荷アミノ酸に置換されたアミノ酸配列」のことである。

【0023】
また、(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列においては、302位のグルタミン酸がアルギニンへの置換された配列は除かれることが好ましい。

【0024】
また、配列番号1は、野生型モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素のアミノ酸配列と同一である。

【0025】
本発明に用いる(i)逆転写酵素は、高い熱安定性を有し、比較的高温度(例えば50℃~60℃)条件下で好ましく逆転写活性を示す。

【0026】
(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列は、高い熱安定性を確保する観点から、配列番号1のアミノ酸配列において、
(i-1a)69位のグルタミン酸のアルギニン又はリジンへの置換、
(i-1b)108位のアスパラギン酸のアルギニン又はリジンへの置換、
(i-1c)117位のグルタミン酸のアルギニン又はリジンへの置換、
(i-1d)124位のアスパラギン酸のアルギニン又はリジンへの置換、
(i-1e)286位のグルタミン酸のアルギニン又はリジンへの置換、
(i-1f)302位のグルタミン酸のリジンへの置換、
(i-1g)313位のトリプトファンのアルギニン又はリジンへの置換、
(i-1h)435位のロイシンのアルギニン又はリジンへの置換、及び
(i-1i)454位のアスパラギンのアルギニン又はリジンへの置換
からなる群より選択される少なくとも1つの置換がなされた配列であることが好ましく、(i-1d)、(i-1e)、(i-1f)、及び(i-1h)からなる群より選択される少なくとも1つの置換がなされた配列であることがより好ましく、(i-1e)、(i-1f)、及び(i-1h)からなる群より選択される少なくとも1つの置換がなされた配列であることがさらに好ましく、(i-1e)、(i-1f)、及び(i-1h)の置換がなされた配列であることがよりさらに好ましい。中でも、配列番号1のアミノ酸配列において、286位のグルタミン酸のアルギニンへの置換(E286R)、302位のグルタミン酸のリジンへの置換(E302K)、及び435位のロイシンのアルギニン(L435R)への置換がなされた配列であることが特に好ましい。

【0027】
また、(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列は、さらに、524位のアスパラギン酸が非極性アミノ酸に置換された配列であることが好ましい。非極性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、システイン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン等が好ましく例示でき、特にアラニンが好ましい。

【0028】
最も好ましい本発明に用いる(i)逆転写酵素の一つは、配列番号1のアミノ酸配列において、286位のグルタミン酸のアルギニンへの置換、302位のグルタミン酸のリジンへの置換、435位のロイシンのアルギニンへの置換、及び524位のアスパラギン酸のアラニンへの置換がなされた配列(E286R/E302K/L435R/D524A)からなる逆転写酵素である。

また、(i-2)の「1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加」における「1又は2以上」とは、好ましくは1~30(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30)、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、よりさらに好ましくは1~5、特に好ましくは1、2又は3をいう。

【0029】
(i-2)の逆転写酵素のアミノ酸配列は、(i-1)の逆転写酵素のアミノ酸配列と高い同一性を有することが好ましい。より具体的には、同一性が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがよりさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。

【0030】
なお、本明細書において、アミノ酸配列の同一性は、BLASTアルゴリズムによって2つのアミノ酸を比較した際の同一性をいう。

【0031】
なお、(i-2)の逆転写酵素のアミノ酸配が、配列番号1のアミノ酸配列とはならないことが好ましい。つまり、配列番号1のアミノ酸配列からなる逆転写酵素は、(i-2)の逆転写酵素には含まれないことが好ましい。 (i-1)及び(i-2)の逆転写酵素は、例えば公知の遺伝工学的手法を用いることにより製造することができる。例えば、WO2012/020759パンフレットに記載される方法に基づいて、容易に製造することができる。

【0032】
本明細書において「逆転写活性」とは、RNAを鋳型としてそれと相補的なDNA(complementary DNA;cDNA)を合成する反応(逆転写反応)を触媒する活性をいう。本明細書において、逆転写活性を有するという場合における逆転写活性の程度は、特に限定されないが、例えば常法に従い逆転写反応を行わせた場合に、レトロウイルス由来の逆転写酵素として知られる種々の酵素と同等又はそれ以上のcDNAを生成する程度であれば好ましい。

【0033】
逆転写活性は、公知の方法又は公知の方法から容易に得られる方法により、測定することができる。例えば、以下のステップ1)~6):
1)反応液〔組成:25mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM塩化カリウム、2mMジチオスレイトール、5mM塩化マグネシウム、12.5μMポリ(rA)・p(dT)15(p(dT)15換算濃度)、および0.2mM [メチル-H]dTTP〕中で逆転写酵素を37℃でインキュベーションするステップ、
2)前記ステップ1)で得られた産物20μLを採取し、ガラスフィルターにスポットするステップ、
3)前記ステップ2)後のガラスフィルターを、冷却された5質量%トリクロロ酢酸水溶液で10分間洗浄した後、冷却された95体積%エタノール水溶液で洗浄して、前記ガラスフィルター上の産物からポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれていない[H]dTTPを除去するステップ、
4)前記ステップ3)後のガラスフィルターを乾燥させた後、前記ガラスフィルターを、液体シンチレーション用試薬2.5mL中に入れ、放射活性をカウントするステップ、
5)前記ステップ4)で得られた放射活性に基づき、ポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれた[H]dTTPの量(以下、「dTTP取り込み量」という)を算出するステップ、および
6)前記ステップ5)で算出されたdTTP取り込み量に基づき、10分間にポリ(rA)・p(dT)15に1nmolのdTTPを取り込ませる逆転写酵素の量を求めるステップ
を行なうことによって測定することができる。

【0034】
本発明に用いる(ii)逆転写DNAポリメラーゼは、以下の(ii-1)又は(ii-2)の逆転写DNAポリメラーゼである。
(ii-1):配列番号2のアミノ酸配列において、326番目、329番目、384番目、388番目、408番目、及び438番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されたアミノ酸配列からなる、逆転写DNAポリメラーゼ。
(ii-2):(ii-1)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換が維持された状態から1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ逆転写活性を有する、逆転写DNAポリメラーゼ。

【0035】
配列番号2は、嫌気性好熱性細菌Thermotoga sp. K4から単離されたDNAポリメラーゼ(以下、「K4 DNAポリメラーゼ」という)のアミノ酸配列である。K4 DNAポリメラーゼは逆転写活性を有さないが、326番目、329番目、384番目、388番目、408番目及び、438番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸をアラニンに置換することによって、逆転写活性を獲得する(WO2010/050418パンフレット)。

【0036】
(ii-1)の逆転写DNAポリメラーゼとしては、例えば次の逆転写DNAポリメラーゼが挙げられる:
配列番号2のアミノ酸配列において、326番目のトレオニン(T326)がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ(T326A);
配列番号2のアミノ酸配列において、329番目のロイシン(L329)がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ(L329A);
配列番号2のアミノ酸配列において、384番目のグルタミン(Q384)がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ(Q384A);
配列番号2のアミノ酸配列において、388番目のフェニルアラニン(F388)がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ(F388A);
配列番号2のアミノ酸配列において、408番目のメチオニン(M408)がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ(M408A); 及び
配列番号2のアミノ酸配列において、438番目のチロシン(Y438)がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ(Y438A)。

【0037】
これらの(ii-1)逆転写DNAポリメラーゼの中では、例えば、T326A、F388A、M408A、及びY438Aからなる群より選択される1つが好ましく、T326A、F388A、M408A、及びY438Aからなる群より選択される1つがより好ましい。特に、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性に優れるという点では、T326A及びM408Aからなる群より選択される1つが好ましい。

【0038】
また(ii-1)逆転写DNAポリメラーゼは、逆転写活性を有する限り、上記アミノ酸置換が単独でなされていてもよく、また複数組み合わせてなされていてもよい。後述するように、配列番号2のアミノ酸配列において、T326、L329、Q384、F388、M408、及びY438からなる群より選択される1つをアラニンに置換した各逆転写DNAポリメラーゼはいずれも耐熱性を維持しつつ逆転写活性を獲得することができるので、これら置換箇所のうち任意の複数箇所を同時にアラニンに置換した逆転写DNAポリメラーゼも、同様に耐熱性を維持しつつ逆転写活性を獲得することができる。

【0039】
アミノ酸置換が複数組み合わせてなされている(ii-1)逆転写DNAポリメラーゼとしては、L329及び/又はQ384がアラニンに置換されており、かつT326、F388、M408、及びY438からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼが好ましい。

【0040】
そのような(ii-1)逆転写DNAポリメラーゼとしては、例えば具体的には、次の逆転写DNAポリメラーゼが挙げられる:
配列番号2のアミノ酸配列において、L329がアラニンに置換されており、かつT326がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ;
配列番号2のアミノ酸配列において、L329がアラニンに置換されており、かつF388がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ;
配列番号2のアミノ酸配列において、L329がアラニンに置換されており、かつM408がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ;
配列番号2のアミノ酸配列において、L329がアラニンに置換されており、かつY438がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ;
配列番号2のアミノ酸配列において、Q384がアラニンに置換されており、かつT326がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ;
配列番号2のアミノ酸配列において、Q384がアラニンに置換されており、かつF388がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ;及び
配列番号2のアミノ酸配列において、Q384がアラニンに置換されており、かつM408がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ;
配列番号2のアミノ酸配列において、Q384がアラニンに置換されており、かつY438がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼ。

【0041】
アミノ酸置換が複数組み合わせてなされている(ii-1)逆転写DNAポリメラーゼとしては、L329及び/又はQ384がアラニンに置換されており、かつL329、F388、M408、Y438らなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼがより好ましく、L329及び/又はQ384がアラニンに置換されており、かつF388、M408、及びY438からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼがさらに好ましい。

【0042】
(ii-1)逆転写DNAポリメラーゼとして、中でも好ましい逆転写DNAポリメラーゼは、配列番号2の326番目、329番目、384番目、388番目、408番目及び、438番目のアミノ酸からなる群より選択される1つのアミノ酸がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼであり、特に好ましくは329番目のアミノ酸(ロイシン)がアラニンに置換されている逆転写DNAポリメラーゼである。

【0043】
また、(ii-2)の「1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加」における「1又は2以上」とは、好ましくは1~30(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30)、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、よりさらに好ましくは1~5、特に好ましくは1、2又は3をいう。

【0044】
(ii-2)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配列は、(ii-1)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配列と高い同一性を有することが好ましい。より具体的には、同一性が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがよりさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。

【0045】
なお、(ii-2)の逆転写DNAポリメラーゼのアミノ酸配が、配列番号2のアミノ酸配列とはならないことが好ましい。つまり、配列番号2のアミノ酸配列からなる逆転写DNAポリメラーゼは、(ii-2)の逆転写DNAポリメラーゼには含まれないことが好ましい。 (ii-1)及び(ii-2)の逆転写DNAポリメラーゼは、例えば公知の遺伝工学的手法を用いることにより製造することができる。例えば、WO2010/050418パンフレットに記載される方法に基づいて、容易に製造することができる。

【0046】
本発明に用いる(iii)ヘリカーゼは、以下の(iii-1)又は(iii-2)のヘリカーゼである。
(iii-1):配列番号3のアミノ酸配列からなる、ヘリカーゼ
(iii-2):(iii-1)のヘリカーゼのアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヘリカーゼ活性を有する、ヘリカーゼ

【0047】
配列番号3は、サーモコッカス属に属する超好熱性アーキア、サーモコッカス・コダカレンシス由来のへリカーゼ、TK0566のアミノ酸配列である。

【0048】
また、(iii-2)の「1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加」における「1又は2以上」とは、好ましくは1~30(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30)、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、よりさらに好ましくは1~5、特に好ましくは1、2又は3をいう。

【0049】
(iii-2)のへリカーゼのアミノ酸配列は、(iii-1)のへリカーゼのアミノ酸配列と比べて、高い同一性を有することが好ましい。より具体的には、同一性が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがよりさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。 なお、本明細書において、ヘリカーゼ活性を有するとは、ATP加水分解のエネルギーを用いて二本鎖核酸のらせんを不安定にし、二本鎖核酸を一本鎖核酸に巻き戻す活性を示すことをいう。

【0050】
二本鎖核酸を一本鎖核酸に巻き戻す活性(二本鎖核酸巻き戻し活性)は、次のようにして測定する。

【0051】
巻き戻し活性測定は、二本鎖DNAを基質として用いる。当該二本鎖の一方のDNA鎖のみを蛍光標識しておく。また、当該基質以外に、二本鎖DNAをヘリカーゼが巻き戻し(アンワイド)して遊離した一本鎖をトラップするための一本鎖DNA(トラップDNA)を測定系に加えておく。具体的には、以下の4つのタイプの基質及びトラップDNAの組み合わせでの測定を行う(各タイプにおいて、トラップDNA以外の二本のDNAが形成する二本鎖DNAを基質として用いる)。これにより、測定対象となるヘリカーゼが3’末端側及び/又は5’末端側から二本鎖DNAを巻き戻すかも検討できる。

【0052】
両末端突出タイプ
(IRD700で蛍光標識した54-mer)
5’-d/IRD700/TCACTCCGCATCTGCCGATTCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
(70-mer)
5’-dGACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAGGAAGCCGATTGCGAGGCCGTCCTACCATCCTGCAGG-3’
(34-mer ( trap DNA ))
5’-dGACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAG-3’
5’突出タイプ
(IRD700で蛍光標識した34-mer)
5’-d/IRD700/GACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAG-3’
(54-mer)
5’-dTCACTCCGCATCTGCCGATTCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
(34-mer ( trap DNA ))
5’-dCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
3’突出タイプ
(IRD700で蛍光標識した54-mer)
5’-d/IRD700/CTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTCTTAGCCGTCTACGCCTCACT-3’
(34-mer)
5’-dGACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAG-3’
trap DNAは5’突出と同様
平滑末端タイプ
(IRD700で蛍光標識した54-mer)
5’-d/IRD700/GACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAGAATCGGCAGATGCGGAGTGA-3 ’
(54-mer ( trap DNA ))
5’-dTCACTCCGCATCTGCCGATTCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
なお、IRD700の励起波長は685nm、蛍光波長は712nmである。

【0053】
具体的な手順は次の通りである。まず、基質作製のための反応液の組成を表1に示す。表1の反応組成で95℃、3分処理後、室温となるまで静置し、その後25℃で1時間処理する。作製した基質を10倍希釈し、2μMの二本鎖DNAを用意する。そして表2の組成で測定対象ヘリカーゼと50℃で40分間反応させる。そして氷上で急冷することで反応を停止させる。サンプルを3倍希釈し、そのうちの2μLと10×loading buffer 1μL、水7μLを混ぜ、13% アクリルアミドゲルにアプライし、遮光しながら15mA、50分間Native Pageを行う。そしてオデッセイ(Odyssey infrared imaging system (LI-COR, Nebraska, USA))を用いて蛍光を検出する。測定対象ヘリカーゼが巻き戻し活性を有するのであれば、ヘリカーゼにより(より特徴的には、ヘリカーゼ添加量を増やすにつれ)、基質二本鎖DNA量が減少することになる。

【0054】
【表1】
JP2017104092A_000002t.gif

【0055】
【表2】
JP2017104092A_000003t.gif

【0056】
【表3】
JP2017104092A_000004t.gif

【0057】
【表4】
JP2017104092A_000005t.gif

【0058】
【表5】
JP2017104092A_000006t.gif

【0059】
【表6】
JP2017104092A_000007t.gif

【0060】
また、ATP加水分解のエネルギーを用いて二本鎖核酸のらせんを不安定にしているかどうかについては、二本鎖核酸の存在下におけるATPase活性を測定し、当該活性を有していれば、ATP加水分解のエネルギーを用いて二本鎖核酸のらせんを不安定にしていると判断できる。ATPase活性は次のようにして測定する。

【0061】
ATPase活性はATPがADPに変換される際に放出される遊離リン酸量を測ることにより測定する。まず核酸依存性について調べるため、基質としてssRNAである63merRNA(ssRNA63(配列番号4))を用いる。反応液の総量は10μLとし、5nMの核酸基質、0.2μMの精製タンパク質、1mMATP、2mMMgCl、2mMDTT、4unitのRibonuclease inhibitor(Human placenta)(Takara Bio)、50mMHEPES(pH7.6)を含む。これを90℃で30分反応させ、反応停止のために直ちに氷上へ移す。反応液の遊離リン酸量をBIOMOLGREENTM(BIOMOL)を用いて測定し、Ab530をMultiskan Spectrum(ThermoLabsystems)を用いて測定する。

【0062】
本発明は、上述の(i)逆転写酵素、(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び(iii)ヘリカーゼを含有する溶液中で、RNAを鋳型としてcDNAを合成する方法も包含する。

【0063】
本発明に係るcDNA合成法では、RNA分子を鋳型として(i)逆転写酵素及び(ii)逆転写DNAポリメラーゼがDNAを合成する。また、(iii)ヘリカーゼが、RNA分子の二次構造(例えばヘアピン構造)を解消し、反応効率を上げる。

【0064】
これら(i)、(ii)及び(iii)の酵素は、同一溶液内に含有され、用いられる。当該溶液内には、これら3種の酵素及び鋳型となるRNAに加え、dNTP(各種デオキシリボヌクレオシドトリホスフェート;dATP、dTTP、dGTP及びdCTPのミックス)、ATP、プライマー等が含有される。他に、酵素の反応を効率的にするため、各種塩(例えばKCl、MgCl等)、緩衝剤(例えばTris-HCl、Bicine-KOH、Mn(CHCOO)、CHCOOK等)、Trehalose、E. coli RNA、グリセロール等が含まれ得る。これら他に用いる成分の種類や量については、特に制限されないが、本発明に係るcDNA合成法の利用方法(例えばRT-PCRやNASBA等)も考慮して、適宜設定することが出来る。

【0065】
例えば、dNTP濃度は、0.01~0.5mM程度が好ましく、0.05~0.3mM程度がより好ましく、0.1~0.2mM程度がさらに好ましい。

【0066】
緩衝剤については、pHが7.5~9程度に設定されるよう含有されることが好ましく、pH8~8.5程度がより好ましく、pH8.1~8.4程度がさらに好ましく、pH8.2~8.3程度がよりさらに好ましい。

【0067】
例えば、KCl濃度は、10~100mM程度が好ましく、25~75mM程度がより好ましく、40~60mM程度がさらに好ましい。例えば、MgCl濃度は、1~10mM程度が好ましく、2.5~7.5mM程度がより好ましく、4~6mM程度がさらに好ましい。

【0068】
トレハロースが溶液に含有される場合は、その濃度は、0.01~0.5M程度が好ましく、0.05~2.5M程度がより好ましく、0.08~1.5M程度がさらに好ましく、0.1M程度がよりさらに好ましい。

【0069】
ATP濃度は、0.1~5mM程度が好ましく、0.5~2.5mM程度がより好ましく、0.8~1.5mM程度がさらに好ましく、1mM程度がよりさらに好ましい。

【0070】
E. coli RNAが溶液に含有される場合は、その濃度は、0.01~0.5M程度が好ましく、0.05~0.25M程度がより好ましく、0.08~0.15M程度がさらに好ましく、0.1M程度がよりさらに好ましい。

【0071】
プライマー濃度としては、例えば、0.1~5μMが好ましく、0.5~2.5μMがより好ましく、0.8~1.5μMがさらに好ましく、1μM程度がよりさらに好ましい。

【0072】
また、反応温度や反応時間についても、各酵素の反応効率等に基づいて検討し決定し得る。例えば、反応温度は45~65℃が好ましく、50~60℃がより好ましい。また、反応時間は、例えば10~60分が好ましく、20~40分がより好ましく、30分程度がさらに好ましい。

【0073】
なお、最も良好な反応条件の一つは、以下の条件である。この条件は各種要因について要因解析を繰り返して得られたものであり、反応溶液における各成分の濃度が最適化されている。

【0074】
(i)逆転写酵素 10nM
(ii)逆転写DNAポリメラーゼ 50nM
(iii)ヘリカーゼ 20nM
dNTP (each) 0.2mM
KCl 50mM
Tris-HCl (pH 8.3): 25mM
Bicine-KOH (pH 8.2): 50mM
MgCl: 5mM
Mn(CHCOO) 1mM
CHCOOK 30mM
Trehalose 0.1M
ATP 1mM
E. coli RNA 10μg/ml
温度 50℃
反応時間 30分
RNA 100~100万分子
プライマー 1μM
反応液容量 10μl

【0075】
また、本発明に係るcDNA合成法を利用することで、様々な応用が可能である。特に、得られうるcDNAに対して核酸増幅反応を行うことができる。例えばRT-PCR(reverse transcriptase-PCR)を行い、cDNAを大量に合成することができる。つまり、本発明に係るcDNA合成法によりcDNAを合成し、当該cDNAに対してPCRを行うことができる。また例えば、NASBA(nucleic acid sequence based amplification)により、鋳型RNAと相補的な塩基配列を有する一本鎖RNA(アンチセンスRNA)を増幅することができる。

【0076】
またさらに、このようにして得られうる増幅した核酸を検出することで、鋳型RNAの存在を検出することができる。つまり、核酸が増幅している場合には、それを検出することが可能であり、検出されたということは鋳型RNAが存在していたことを意味する。逆に、核酸が増幅していない場合には、それを検出することは不可能であり、検出できないということは鋳型RNAが存在していない又はごく微量しか存在していないことを意味する。

【0077】
これを利用すれば、例えば、ウイルスや細菌に特有のRNAや、疾患に特有のRNAを検出することが可能であり、ひいてはウイルスや細菌の感染検査や、特定の疾患の検査(特に診断検査)に用いることが可能である。特に、本願発明に係るcDNA合成法を利用することで、極めて高感度且つ正確に検査に行うことができる。標的RNAの種類や反応条件にもよるが、標的RNA分子が例えば、10~1000分子(あるいは、10~500分子、10~300分子、10~100分子)程度しか存在していなくとも、検出可能であり得る。

【0078】
なお、増幅した核酸の検出方法は特に制限されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、アガロースゲル電気泳動をして核酸染色試薬(例えばエチジウムブロマイド)で染色する、あるいは核酸クロマトグラフィーを用いるなどの方法が例示される。またあるいは、増幅された核酸に相補的であり、かつ蛍光物質または放射性物質が結合したプローブを、増幅核酸とハイブリダイゼーションさせる、といった方法も例示される。

【0079】
これら以外の様々な反応にも本発明に係るcDNA合成法は利用することが可能であり、利用形態は特に制限されない。

【0080】
また、本発明は、上記cDNA合成法に用いるキットも包含する。当該キットには、上記(i)~(iii)の酵素が含まれる。それ以外に、例えば、cDNA合成に用いる各種塩、緩衝材、ATPなど上述した成分が備わっていてもよい。また例えば、逆転写反応のテンプレートとして用いられるRNA、前記RNAに相補的なオリゴヌクレオチドプライマー、4種のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート、逆転写反応用緩衝液、有機溶媒などが備わっていてもよい。(i)~(iii)の酵素がキットに含まれる形態は特に制限されず、例えば、同一溶液内に含まれていてもよいし、別々の溶液に含まれており、用いる際に全てを混ぜ合わせることであってもよい。また、酵素以外の成分についても、酵素と同様の溶液中に含まれていてもよいし、別の溶液に含まれていてもよい。また、固体や粉体の状態で含まれていてもよい。

【0081】
当該キットは、例えば、生体から得られたRNAを含む試料中のマーカーを検出するために好ましく用いることができる。つまり、検出キットとして好ましく用いることができる。本発明に係るcDNA合成法は、上記(i)~(iii)の酵素を用いることにより、高い正確性及び高い逆転写活性を維持した状態でcDNAを合成できるため、当該検出キットは、種々の試料に対して用いることができ、汎用性が高い。RNA検出対象試料としては、例えば、食品(飲料含む)、海水、水、排水、土壌、植物や動物の一部(組織等)、大気等が挙げられるが、特に制限されない。

【0082】
前記マーカーとしては、生体中に含まれるウイルスまたは細菌に特有の塩基配列、疾患に特有の塩基配列を有するRNAなどが挙げられる。なお、本明細書において、「ウイルスまたは細菌に特有の塩基配列」とは、ウイルスまたは細菌には存在するが、生体には存在しない塩基配列、あるいはウイルスまたは細菌に感染した生体と感染していない生体での発現量に有意に差異のある塩基配列をいう。また、「疾患に特有の塩基配列」とは、疾患に罹患した生体には存在するが、疾患に罹患していない正常な生体には存在しない塩基配列、あるいは疾患に罹患した生体と罹患していない正常な生体での発現量において有意に差異のある塩基配列をいう。

【0083】
前記ウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、HPV、HIV、インフルエンザウイルス、HCV、ノロウイルス、ウエストナイルウイルスなどが挙げられる。また、前記細菌としては、例えば、食中毒の原因となるバチルス・セレウス、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、ビブリオ、カンピロバクター、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌などが挙げられる。前記疾患としては、例えば、癌、糖尿病、心臓病、高血圧、感染症、遺伝性疾患、先天性疾患などが挙げられる。

【0084】
前記マーカーの検出用試薬としては、例えば、前記マーカーとなるRNAに相補的であり、かつ蛍光物質または放射性物質が結合したプローブ、二本鎖核酸に特異的にインターカレートする蛍光物質(例えば、エチジウムブロマイドなど)などが挙げられる。

【0085】
以上のように、当該検出キットを用いることで、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても効率よく逆転写反応を行なうことができるため、汎用性が高く、被験試料として用いられるRNAの種類を問わず、ウイルスもしくは細菌に特有の塩基配列または疾患に特有の塩基配列を高い精度で検出することができる。

【0086】
次に、上記(β)について説明する。

【0087】
本発明に包含される、ヘリカーゼを用いるNASBA法では、増幅対象となる標的核酸分子がDNAである。よって、当該発明は、NASBA法に用いられる成分及びヘリカーゼを含む、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させるためのキット、若しくは増幅させる方法を包含する。さらに、当該発明は、NASBA法に用いられる成分の少なくとも1種とヘリカーゼとを備えた、標的DNAを鋳型として核酸を増幅させるためのキットも包含する。

【0088】
NASBA法は、逆転写酵素、DNA依存性DNAポリメラーゼ、RNaseH、RNAポリメラーゼ、NTP、及びdNTPに、さらに基質となる標的核酸及びプライマーセットを加えた溶液中で反応が進行する。よって、本発明においても、NASBA法に用いられる成分としては、逆転写酵素、DNA依存性DNAポリメラーゼ、RNaseH、RNAポリメラーゼ(好ましくはT7RNAポリメラーゼ)、NTP、及びdNTPが挙げられる。なお、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ活性とを併せ持つ逆転写酵素(すなわち、DNA及びRNA依存性DNAポリメラーゼ)も知られており、当該逆転写酵素も好ましく本発明に用いることができる。当該逆転写酵素を用いる場合、DNA依存性DNAポリメラーゼは用いなくてもよい。

【0089】
逆転写酵素としては、特に制限されず、公知の逆転写酵素を用いることができる。40~45℃程度で逆転写活性を有する逆転写酵素が好ましく、至適温度が40~45℃程度の逆転写酵素がより好ましい。逆転写酵素としては、市販品を購入して用いることもできる。特に好ましい逆転写酵素の一例として、AMV reverse transcriptase(AMV-RT)を挙げることができる。AMV-RTはDNA及びRNA依存性DNAポリメラーゼである。なお、AMVはAvian Myeloblastosis Virusの略である。

【0090】
RNaseHとしては、特に制限されず、公知のRNaseHを用いることができる。40~45℃程度でRNase活性を有するRNaseHが好ましく、至適温度が40~45℃程度のRNaseHがより好ましい。例えば、大腸菌由来RNaseHを挙げることができる。RNaseHとしては、市販品を購入して用いることもできる。

【0091】
RNAポリメラーゼとしては、DNA依存性RNAポリメラーゼ活性を有していれば、特に制限されず、公知のRNAポリメラーゼを用いることができる。40~45℃程度でRNAポリメラーゼ活性を有するRNAポリメラーゼが好ましく、至適温度が40~45℃程度のRNAポリメラーゼがより好ましい。例えば、T7RNAポリメラーゼを好ましく挙げることができる。RNAポリメラーゼとしては、市販品を購入して用いることもできる。

【0092】
NTPはATP、GTP、CTP、UTPのミックスであることが好ましい。また、dNTPはdATP、dGTP、dCTP、dTTPのミックスであることが好ましい。

【0093】
なお、以上の酵素の市販品の購入先としては、例えばタカラバイオ株式会社、NEB、プロメガ株式会社等が挙げられる。

【0094】
特に好ましいNASBA法に用いられる成分の組み合わせとしては、DNA及びRNA依存性DNAポリメラーゼ、RNaseH、T7RNAポリメラーゼ、NTP、並びにdNTPが挙げられる。

【0095】
標的DNAは一本鎖でも二本鎖でもよいが、二本鎖の場合は反応開始時に一本鎖に解く操作を行うことが好ましい。当該操作としては、加熱(例えば90~98℃で1~10分間程度)が例示できる。

【0096】
標的DNAの増幅に用いるプライマーセットの構造としては、フォワードプライマーは標的DNAにアニールする配列からなるDNAであり、リバースプライマーは標的DNAにアニールする配列からなるDNAの5’端に、さらにRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるDNAが結合して含まれる構造を有する。

【0097】
標的DNAを増幅するにあたり、一本鎖DNA(センス鎖)に相補的なリバースプライマーがアニールする。フォワードプライマーは、リバースプライマーが伸張して生じるDNA(アンチセンス鎖)に相補的な配列を有する。そして、フォワードプライマーは当該DNA(アンチセンス鎖)にアニールしてDNA(センス鎖)を伸張させる。

【0098】
リバースプライマーが有するRNAポリメラーゼプロモーター配列は、用いるRNAポリメラーゼが認識しできるものが好ましい。例えば、用いるRNAポリメラーゼがT7RNAポリメラーゼである場合には、リバースプライマーが有するRNAポリメラーゼプロモーター配列は、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列であることが好ましい。

【0099】
また、標的DNAにアニールする配列とは、相補配列であるか、又は相補配列において1~複数個(例えば2、3、4又は5個)の塩基が欠失、置換及び/又は付加している配列であることが好ましい。なお、フォワードプライマー及びリバースプライマーとも、3’末端の塩基はそれぞれがアニールする一本鎖DNAの塩基の相補塩基であることが好ましい。

【0100】
ヘリカーゼとしては、公知のヘリカーゼを用いることができる。特に制限はされないが、40~45℃程度でヘリカーゼ活性を有するヘリカーゼが好ましく、至適温度が40~45℃程度のヘリカーゼがより好ましい。また、好ましいヘリカーゼの例として、例えば、高熱性アーキア由来DEAD-box型RNAヘリカーゼ及びその改変体を用いることができる。より具体的には例えば、国際公開第2016/013620号に記載の高熱性アーキア由来DEAD-box型RNAヘリカーゼ及びその改変体を用いることができる。また、上記(iii)のヘリカーゼを用いることもできる。またさらに、本発明(β)に用いるのに好ましいヘリカーゼの例として、TK0460及びその改変体を挙げることができる。TK0460及びその改変体を用いることで、標的DNA分子をNASBA法によって特に高感度かつ正確に検出することができる。

【0101】
TK0460は、サーモコッカス属に属する超好熱性アーキア、サーモコッカス・コダカレンシス由来のへリカーゼである。TK0460のアミノ酸配列を配列番号22に示す。また、ここでの改変体とは、アミノ酸配列は同一ではないが、同一性が高く、且つヘリカーゼ活性を有するものをいう。TK0460の改変体は、TK0460のアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヘリカーゼ活性を有する、ヘリカーゼである。ここで、「1又は2以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加」における「1又は2以上」とは、好ましくは1~30(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30)、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、よりさらに好ましくは1~5、特に好ましくは1、2又は3をいう。TK0460の改変体のアミノ酸配列は、TK0460のアミノ酸配列と、同一性が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがよりさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。なお、ヘリカーゼ活性の測定方法は、上記(α)の説明で述べた通りである。

【0102】
ヘリカーゼ含有NASBAミックスにおけるヘリカーゼの含有割合(濃度)は、適宜設定することができ、通常100nM以下であり、例えば100aM~100nMが好ましく、1fM~75nMがより好ましく、1pM~50nMがさらに好ましく、1nM~30nMがよりさらに好ましい。またあるいは、ヘリカーゼ濃度は比較的低濃度であってもNASBA増幅効率は良好であり得ることから、例えば、200aM~20nM、20aM~2nM、2aM~200pM、又は200fM~20pM程度であってもよい。

【0103】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。まず、(α):特定の3種の酵素を組み合わせて用いることにより効率よくcDNAを合成する方法、について具体的に説明し、次に(β):NASBA法においてヘリカーゼを用いることにより標的核酸がDNAの場合にも合成効率を向上させる方法、について具体的に説明する。
<(α)について>
(i)逆転写酵素の製造
WO2012/020759パンフレットの「実施例」欄の記載(特に実施例4の記載)に従い、MMLV逆転写酵素(配列番号1のアミノ酸配列からなる)の多重変異逆転写酵素(E286R/E302K/L435R/D524A)を得た。当該多重変異逆転写酵素を逆転写酵素MM4とよぶことがある。当該酵素を、(i)逆転写酵素として以下の検討に用いた。
【実施例】
【0105】
(ii)逆転写DNAポリメラーゼの製造
WO2010/050418パンフレットの「実施例」欄の記載(特に実施例1及び実施例3の記載)に従い、Thermotoga sp. K4株由来のDNAポリメラーゼ(配列番号2のアミノ酸配列からなる)の329番目のロイシンがアラニンに置換された変異逆転写DNAポリメラーゼを得、さらに当該逆転写DNAポリメラーゼが逆転写活性を有することをRT-PCRにより確認した。当該変異逆転写DNAポリメラーゼを、(ii)逆転写DNAポリメラーゼとして、以下の検討に用いた。
【実施例】
【0106】
(iii)ヘリカーゼの製造
T.kodakarensisの総DNAを鋳型にし、プライマー(TK0566EX-F(配列番号5)、TK0566EX-R(配列番号6))を用いてTK0566遺伝子を増幅した。得られたTK0566遺伝子を含むDNA断片はNdeI及びEcoRIを用いて切断しpET28aに挿入した。そして構築された pET-TK0566プラスミドを用いて、E. coli BL21-Codon-Plus(DE3)-RIL を形質転換した。5mLのLB培地(1% tryptone, 0.5% yeast extract, 1% NaCl; adjusted to pH 7.3 with NaOH)で37℃、6時間前々培養を行い、20mLのLB培地で前培養 (1%植菌、37℃、10時間) を行った。さらにジャーファーメンターを用いて、37℃で1L培養を行い、OD660が0.4付近でβ-D-1-thiogalactopyranoside (IPTG) (終濃度1mM)を添加し、誘導した。誘導4時間後に集菌し、SDS-PAGEによりTK0566の発現を確認した。LB培地には20μg/mLカナマイシン及び30μg/mLクロラムフェニコールが含まれている。培養菌体を回収し、10mLのバッファーD:20mM Tris-HCl、500mM NaCl、 0.1% Triton X-100、 pH 7.9で懸濁後、超音波破砕した。破砕液を8000g 10分間遠心し、上清を80℃で15分間熱処理した。そして再び8000g、10分間遠心して上清を回収した。発現したTK0566のN末端側にはHis6tagが付加されているため、Niカラムを使用して精製した。バッファーDでカラムを平衡化し、そこに上清をアプライした。そしてバッファーE:20mM Tris-HCl、500mM NaCl、20mM imidazole、0.1% Triton X-100、pH7.9で洗浄した後、バッファーF:20mM Tris-HCl、500mM NaCl、250mM imidazole、0.1% Triton X-100、pH7.9で溶出させた。溶出画分はバッファーDで透析した。
【実施例】
【0107】
ATPase 活性測定
ATPase活性はATPがADPに変換される際に放出される遊離リン酸量を測ることにより測定した。まず核酸依存性について調べるため、基質としてssRNAである63mer RNA (ssRNA63)を用いた。反応液の総量は10μLとし、5nMの核酸基質、0.2μMの精製タンパク質、1mM ATP、2mM MgCl、2mM DTT、4unitのRibonuclease inhibitor (Human placenta) (Takara Bio)、50mM HEPES (pH7.6) を含む。これを50℃から110℃で30分反応させ、反応停止のために直ちに氷上へ移した。反応液の遊離リン酸量をBIOMOL GREENTM(BIOMOL)を用いて測定し、Ab530をMultiskan Spectrum(ThermoLab Systems)を用いて測定した。これにより、得られた精製タンパク質(ヘリカーゼ)がATPase活性を有することを確認した。
【実施例】
【0108】
巻き戻し活性測定
巻き戻し活性測定は、二本鎖DNAを基質として用いた。当該二本鎖の一方のDNA鎖には蛍光標識したものを用いた。また、当該基質以外に、二本鎖DNAをヘリカーゼが巻き戻し(アンワイド)して遊離した一本鎖をトラップするための一本鎖DNA(トラップDNA)を測定系に加えた。具体的には、以下の3つのタイプの基質及びトラップDNAの組み合わせでの測定を行った(各タイプにおいて、トラップDNA以外の二本のDNAが形成する二本鎖DNAを基質として用いた)。
【実施例】
【0109】
両末端突出タイプ
(IRD700で蛍光標識した54-mer)
5’-d/IRD700/TCACTCCGCATCTGCCGATTCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
(70-mer)
5’-dGACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAGGAAGCCGATTGCGAGGCCGTCCTACCATCCTGCAGG-3’
(34-mer ( trap DNA ))
5’-dGACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAG-3’
5’突出タイプ
(IRD700で蛍光標識した34-mer)
5’-d/IRD700/GACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAG-3’
(54-mer)
5’-dTCACTCCGCATCTGCCGATTCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
(34-mer ( trap DNA ))
5’-dCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
3’突出タイプ
(IRD700で蛍光標識した54-mer)
5’-d/IRD700/CTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTCTTAGCCGTCTACGCCTCACT-3’
(34-mer)
5’-dGACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAG-3’
trap DNAは5’突出と同様
平滑末端タイプ
(IRD700で蛍光標識した54-mer)
5’-d/IRD700/GACCTAGGAACCACCAGAAACACGCCACAGCCAGAATCGGCAGATGCGGAGTGA-3 ’
(54-mer ( trap DNA ))
5’-dTCACTCCGCATCTGCCGATTCTGGCTGTGGCGTGTTTCTGGTGGTTCCTAGGTC-3’
【実施例】
【0110】
なお、IRD700の励起波長は685nm、蛍光波長は712nmである。
【実施例】
【0111】
具体的には次のようにして行った。基質作製のための反応液の組成を表7に示す。表7の反応組成で95℃、3分処理後、室温となるまで静置し、その後25℃で1時間処理した。作製した基質を10倍希釈し、2μMの二本鎖DNA溶液を用意した。そして表8の組成で測定対象ヘリカーゼと50℃で40分間反応させた。そして氷上で急冷することで反応を停止させた。サンプルを3倍希釈し、そのうちの2μLと10×loading buffer 1μL、水7μLを混ぜ、13% アクリルアミドゲルにアプライし、遮光しながら15mA、50分間Native Pageを行った。そしてオデッセイ(Odyssey infrared imaging system (LI-COR, Nebraska, USA))を用いて蛍光を検出した。ヘリカーゼ添加量を増やすにつれ、基質二本鎖DNA量が減少したことから(図1a~図1f)、測定対象とした精製タンパク質(ヘリカーゼ)が巻き戻し活性を有することが確認できた。またさらに、当該精製タンパク質(ヘリカーゼ)は、3’末端側から二本鎖DNAを巻き戻すこともわかった。
【実施例】
【0112】
【表7】
JP2017104092A_000008t.gif
【実施例】
【0113】
【表8】
JP2017104092A_000009t.gif
【実施例】
【0114】
【表9】
JP2017104092A_000010t.gif
【実施例】
【0115】
【表10】
JP2017104092A_000011t.gif
【実施例】
【0116】
【表11】
JP2017104092A_000012t.gif
【実施例】
【0117】
【表12】
JP2017104092A_000013t.gif
【実施例】
【0118】
当該精製タンパク質を、(iii)ヘリカーゼとして、以下の検討に用いた。
【実施例】
【0119】
cDNA合成反応条件の検討
三種の酵素、すなわち上記(i)逆転写酵素、(ii)逆転写DNAポリメラーゼ、及び(iii)ヘリカーゼの全てを含有した系において良好に機能させ得る条件を見いだすことは難しい。それぞれの酵素が働く最適条件が異なるためである。
【実施例】
【0120】
特に、ヘリカーゼは、cDNA合成反応においては、核酸のミスアニーリングを減少させ非特異的増幅を抑制することを期待して用いられるところ、逆転写酵素の作用を十分保持させた反応条件において、ヘリカーゼの作用によりミスアニーリングを解消させることは極めて困難とされている。逆転写酵素の最適条件とヘリカーゼの最適条件が大きく異なるためである。
【実施例】
【0121】
そこで、三種酵素含有cDNA合成系において、反応に影響を与える可能性がある各要因を以下の手法を用いて出来る限り最適化した。
1)反応に影響を与える可能性がある要因を13個あげ、各要因に対し、3個の水準(それぞれ水準1、水準2、水準3)を設定した。一例を表13にあげる。表13では、要因A~Nが条件検討要因であり、各要因の濃度を3個の水準に分けて検討している。
2)各要因から1個の水準を選び、27個の異なる反応条件を決定した。一例を表14にあげる。表14から明らかなように、各要因の1個の水準は9個の反応条件に使われている。
3)27個の反応条件に対してそれぞれ、初期コピー数が異なる(100個~100万個)条件でcDNA合成を行い、各反応条件に対して、検出感度が高いものほど高くなるスコアを与えた。さらに、各要因の各水準について、その水準が使われている反応条件のスコアを合計した。一例を表15にあげる。各要因に対して、最もスコアが高い水準が好ましいといえる。
4)さらに、全体を100%にしたときの、スコアに対する各要因の寄与率を求めた。一例を表15にあげる。
5)寄与率の大きい要因は、次の要因解析においては、水準をせまい範囲でとり、さらに詳細な条件を検討した。
【実施例】
【0122】
表15の結果に基づいた、新たな要因と水準を表16にあげる。例えば、MM4については、寄与率が2番目に高く、且つ水準3(1nM)が最もスコアが高いことから、MM4は寄与率が高く且つ濃度が高い方がスコアがよくなると考えられたため、次の検討(表16)においては、1nMよりも更に濃度を濃くした場合にどのようになるかを検討できるよう条件を設定している。逆に、D4R4濃度(プライマー濃度)については、寄与率が極めて低いため、重要な要因では無いと判断し、次の検討(表16)では条件検討要因から外して、新たにATP濃度を条件検討要因として加えている。
【実施例】
【0123】
なお、表13、表15、表16における各要因の記載では、MM4は逆転写酵素MM4を、L392Aは逆転写DNAポリメラーゼを、TK0556はヘリカーゼを、D4R4はプライマーDR4-4を、それぞれ示している。
【実施例】
【0124】
上記のサイクルで検討を繰り返し、三種酵素含有cDNA合成系における最適条件を探索した。
【実施例】
【0125】
【表13】
JP2017104092A_000014t.gif
【実施例】
【0126】
【表14】
JP2017104092A_000015t.gif
【実施例】
【0127】
【表15】
JP2017104092A_000016t.gif
【実施例】
【0128】
【表16】
JP2017104092A_000017t.gif
【実施例】
【0129】
cDNA合成産物のPCRによる検出1
以下の反応条件でcDNA合成反応を行った。なお、以下の条件は、上記のようにして三種酵素含有cDNA合成系における最適条件を探索した結果、得られた最適条件である。
【実施例】
【0130】
逆転写酵素MM4 10nM
逆転写DNAポリメラーゼ(L329A) 50nM
へリカーゼ(TK0566) 20nM
dNTP (each) 0.2mM
KCl 50mM
Tris-HCl (pH 8.3): 25mM
Bicine-KOH (pH 8.2): 50mM
MgCl: 5mM
Mn(CHCOO) 1mM
CHCOOK 30mM
Trehalose 0.1M
ATP 1mM
E. coli RNA 10μg/ml
温度 50℃
反応時間 30分
RNA(配列を図2に示す) 100、1000、1万、10万、100万分子
プライマーDR4-4(配列を図2に示す) 1μM
反応液容量 10μl
【実施例】
【0131】
次に、以下の反応条件でcDNA合成反応を行った。
【実施例】
【0132】
プライマーDR4-4(配列を図2に示す) 1μM
プライマーDF2-2(配列を図2に示す) 1μM
上記反応液1.5μl
dNTP (each) 0.2mM
MgSO 1mM
KOD-Plus-Neo(東洋紡)に添付の10×Buffer 2.5μl
10units/ml KOD-Plus-Neo(東洋紡) 0.5μl
温度条件 95℃ 30秒、59℃ 30秒、72℃ 30秒、30サイクル
【実施例】
【0133】
上記反応物を2%アガロース電気泳動にかけた結果を図3に示す。図3において、レーン1は100万分子のRNAを含む上記条件、レーン2は10万分子のRNAを含む上記条件、レーン3は1万分子のRNAを含む上記条件、レーン4は1000分子のRNAを含む上記条件、レーン5は100分子のRNAを含む上記条件、レーン6は100万分子のRNAを含み、逆転写酵素MM4、逆転写DNAポリメラーゼ(L329A)及びヘリカーゼのいずれも含まない上記条件で、cDNA合成をそれぞれ行ったときの結果を示す。
【実施例】
【0134】
レーン5で薄いながらもバンドが見られたことから、標的RNA100分子を含む試料10μlで3酵素によるcDNA合成を行った後、試料1.5μl(標的RNA15分子相当)に対して行ったPCRで、増幅DNAが検出されたことが示された。
【実施例】
【0135】
cDNA合成産物のNASBAによる検出
上記「cDNA合成産物のPCRによる検出」に示す条件(RNAは100万分子、容量20μl)で、cDNA合成を行った。
【実施例】
【0136】
次に、反応物を10の9乗倍、10の10乗倍、10の11乗倍に水で希釈したものを作製し、それぞれ2.5μlをセレウス用NASBA-核酸クロマト検出試薬キット(株式会社カイノス:スイフトジーン(登録商標)セレウリド産生セレウス「カイノス」)に供与した。結果を図4に示す。図4において、ICは増幅阻害が起きていないことを確認するためのInternal controlのライン、referenceは核酸クロマトにおいて正常に展開されていることを確認するためのライン、cesは標的であるセレウスRNAが検出されたときのラインを示す。Aは10分子のcesD RNA、Bは水、CはcDNA合成の反応物を10の9乗倍に希釈したもの、DはcDNA合成の反応物を10の10乗倍に希釈したもの、EはcDNA合成の反応物を10の11乗倍に希釈したものを、それぞれNASBA-核酸クロマトにかけた結果を示す。
【実施例】
【0137】
レーンCとDでcesの位置にバンドが検出されたことから、標的RNA100万分子を含む試料20μlで3酵素によるcDNA合成を行った後、反応液の10の10乗倍希釈液2.5μlに対して行ったNASBAで、増幅RNAが検出されたことが示された。
【実施例】
【0138】
cDNA合成産物のPCRによる検出2
二次構造をとりやすいことが知られている16S rRNAおよび5塩基のミスマッチを有するプライマーである16S miss Rv2 25-5-5’を用いて、以下の反応条件でcDNA合成反応を行った。
【実施例】
【0139】
逆転写酵素MM4 10nM
逆転写DNAポリメラーゼ(L329A) 50nM
へリカーゼ(TK0566) 0,2,40,又は130nM
dNTP (each) 0.2mM
KCl 50mM
Tris-HCl (pH 8.3): 25mM
Bicine-KOH (pH 8.2): 50mM
MgCl: 5mM
Mn(CHCOO) 1mM
CHCOOK 30mM
Trehalose 0.1M
ATP 1mM
E. coli RNA 10μg/ml
【実施例】
【0140】
T.Kodakarensis 16S rRNA (配列は図5に示す)100ng/ml;
プライマー16SRv(配列は図5に示す) 1.2μM;
プライマー16S miss Rv2 25-5-5’(配列は図5に示す)1.2μM;
反応液容量 20μl
温度 45℃
反応時間 30分
【実施例】
【0141】
次に、以下の反応条件でPCRを行った。
プライマー16S Fw(配列は図5に示す) 1.2μM
プライマー16S Rv(配列は図5に示す) 1.2μM
上記反応液2.0μl
dNTP (each) 0.2mM
MgSO4 1mM
KOD-Plus-Neo(東洋紡)に添付の10×Buffer 2.5μl
10units/ml KOD-Plus-Neo(東洋紡) 0.5μl
温度条件 94℃ 3分
94℃ 15秒、60℃ 30秒、68℃ 120秒、30サイクル
68℃ 5分
【実施例】
【0142】
上記反応物を1%アガロース電気泳動にかけた結果を図6に示す。逆転写酵素MM4および逆転写DNAポリメラーゼ(L329A)存在下、且つへリカーゼ(TK0566)非存在下でcDNA合成反応を行うと、1500塩基対のバンドが見られなかった(レーン1)。一方、MM4およびL329A存在下、且つTK0566 2nM(レーン2)又は40nM存在下(レーン3)では1500塩基対のバンドが見られたことから、TK0566がcDNA合成反応の効率を上げることが示された。しかし、MM4およびL329A存在下、且つTK0566 130nM存在下では1500塩基対のバンドが見られなかった(レーン4)。このことから、TK0566が過剰濃度で存在するとcDNA合成反応の効率を下げる可能性があることが示唆された。
【実施例】
【0143】
cDNA合成産物のPCRによる検出3
以下の反応条件でcDNA合成反応を行った。
【実施例】
【0144】
逆転写酵素MM4 0又は10nM
逆転写DNAポリメラーゼ(L329A) 0又は1000nM
へリカーゼ(TK0566) 0又は20nM
dNTP (each) 0.2mM
KCl 50mM
Tris-HCl (pH 8.3): 25mM
Bicine-KOH (pH 8.2): 50mM
MgCl: 5mM
Mn(CHCOO) 1mM
CHCOOK 30mM
Trehalose 0.1M
ATP 1mM
E. coli RNA 10μg/ml
温度 50℃
反応時間 30分
RNA(cDNA合成産物のPCRによる検出1で用いたものと同じ) 100万分子
プライマーDR4-4 0.5μM
反応液容量 10μl
【実施例】
【0145】
次に、以下の反応条件でcDNA合成反応を行った。
【実施例】
【0146】
プライマーDR4-4 0.4μM
プライマーDF2-2 0.4μM
上記反応液4.0μl
dNTP (each) 0.12mM
Bicine (pH 8.2) 50mM
Mn(CH3COO)2 1mM
CH3COOK 110mM
Glycerol 8%
温度条件 95℃ 30秒、59℃ 30秒、72℃ 30秒、30サイクル
【実施例】
【0147】
上記反応物を2%アガロース電気泳動にかけた結果を図7に示す。レーン1は、逆転写酵素MM4、逆転写DNAポリメラーゼ(L329A)及びへリカーゼ(TK0566)非存在下、レーン2はMM4存在下且つL329A及びTK0566非存在下、レーン3はL329A存在下且つMM4およびTK0566非存在下、レーン4はTK0566存在下且つMM4およびL329A非存在下、レーン5はMM4及びL329A存在下且つTK0566非存在下、レーン6はMM4及びTK0566存在下且つL329A非存在下、レーン7はL329A及びTK0566存在下且つMM4非存在下、レーン8はMM4、L329AおよびTK0566存在下で、cDNA合成をそれぞれ行ったときの結果を示す。
【実施例】
【0148】
レーン5と8で目的のバンドが検出され、さらにレーン5よりも8のバンドの方が濃く検出された。このことから、MM4およびL329Aが存在すればPCR工程で新たに酵素を加えなくても増幅反応が起きること、また、これらにさらにTK0566を加えることでより効率よくcDNAが合成できること、が分かった。
【実施例】
【0149】
<(β)について>
ヘリカーゼTK0460の調製
Thermococcus kodakarensis KOD1株(Atomi et al. Archaea. 2004, 1(4):263-7.)を20mlのASW-YT-S培地(Atomi et al. Archaea. 2004, 1(4):263-7.)で85℃、12時間液体培養した。生育した菌体を10000×g、4℃で20分間遠心した。得られた菌体からフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(ニッポンジーン, Code No. 311-90151)処理及びエタノール沈殿処理でゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAとプライマーセットtk-0460-Fw(配列番号20)、tk0460-Rv(配列番号21)及びKOD-plus polymerase(東洋紡, Code No. KOD-201X10)を用いてPCRを行い、TK0460遺伝子を増幅した。増幅したTK0460遺伝子をWizard SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ, Code No. A9281)で精製した後、NdeI及びNotI(タカラバイオ)で制限酵素処理を行った。得られた制限酵素処理断片をpET-28a(メルクミリポア, Code No. 69864-3CN)のNdeI/NotI部位に導入した。遺伝子導入により得られたTK0460発現ベクターをpET28a-TK0460とした。
【実施例】
【0150】
【表17】
JP2017104092A_000018t.gif
【実施例】
【0151】
pET28a-TK0460をEscherichia coli BL21 CodonPlus(DE3)(アジレントテクノロジー, Code No. 230280)に導入した。LB寒天培地上の形質転換体のコロニーを、15mlの20μg/mlカナマイシン及び25μg/mlクロラムフェニコール含有LB液体培地に植菌し、37℃、12時間振盪培養し、前培養液とした。1.5lの20μg/mlカナマイシン及び25μg/mlクロラムフェニコール含有LB液体培地に前培養液15mlを植菌し、37℃で振盪培養した。培養液のOD660が0.5に達したところで、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシドを終濃度0.1mMになるよう培養液に添加し、4時間、37℃で振盪培養し、組換えTK0460を発現した。次に10000×g、4℃で20分間遠心し、増殖した菌体を集菌した。回収した菌体に15mlの破砕バッファー(10 mM Tris-HCl (pH8.0)、400mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、50% グリセロール、0.1mMエチレンジアミン四酢酸ナトリウム)を加え、出力30Wで15分間超音波破砕した。得られた無細胞抽出液を10000×g、4℃で10分間遠心した。上清を回収し、60℃で30分間熱処理した。熱処理した溶液を21000×g、4℃で1時間遠心し、上清を回収した。次に破砕バッファーで平衡化した2mlのNi2+-NTA-アガロースカラム(キアゲン, Code No. 30210)に上清を加え、イミダゾールをそれぞれ10mM、50mM、100mM、200mM、500mMを含む溶出バッファー(10mM Tris-HCl (pH8.0)、400mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、50%グリセロール、0.1mM エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)で段階溶出した。Sodium dodecyl sulfate-ポリアクリルアミドゲル電気泳動でTK0460の存在する画分を確認した。TK0460が存在する画分を溶出バッファーで置換したPD-10(GE Healthcare, Code No. 17085101)に供し、酵素溶液中のイミダゾールを除いた。得られた精製酵素溶液をヘリカーゼTK0460として使用した。また、保存には-20℃フリーザーを用いた。なお、ヘリカーゼTK0460のアミノ酸配列を配列番号22に示す。
【実施例】
【0152】
ヘリカーゼ添加NASBA法によるDNA増幅の検討
ヘリカーゼ添加NASBA法によるDNA増幅の検討には、セレウス用NASBA-核酸クロマト検出試薬キット(株式会社カイノス:スイフトジーン(登録商標)セレウリド産生セレウス「カイノス」)を用いた。当該キットは、NASBA法により、セレウス(Bacillus cereus)のセレウリド合成酵素遺伝子のcesオペロンのcesD配列を増幅し、セレウスの存在の有無を確認するためのものである。当該キットの説明書に記載された「試薬の調製方法」の指示に従って、dNTPs、NTPs、cesD増幅用プライマーセットが含まれた試薬溶液を調製した。フォワードプライマーの塩基配列を配列番号23に、リバースプライマーの塩基配列を配列番号24に示す。リバースプライマーは、cesD配列DNAにアニールする配列からなるDNAの5’端に、さらにRNAポリメラーゼプロモーター配列からなるDNAが結合した構造を有する。
【実施例】
【0153】
当該試薬溶液に、cesD配列を含んだプラスミドDNA(pCED-1、約3500bp)を熱変性処理(95℃5分処理後氷冷)してから加え、さらに酵素溶液(AMV-RT、RNaseH、T7RNAポリメラーゼを含む)を加えて反応をスタートさせ、その5分後にヘリカーゼTK0460を終濃度20nMで加え(又は加えず)、NASBA法により25分間cesD配列DNAを増幅させた(反応時間30分)。反応後、上記キットの説明書の指示に従い、展開液を加えたうえで、当該キットに含まれる核酸クロマトグラフィーに反応溶液を供し、cesD配列DNAが検出されるかを検討した。なお、加えたcesD配列を含んだプラスミドDNAの量については、ヘリカーゼ無しで増幅時間30分で増幅可能なプラスミド量を1とし、その1/10、1/100、又は1/1000の量を検討に用いた(表18)。
【実施例】
【0154】
また、NASBA法による反応時間を120分(ヘリカーゼ添加はスタートから5分で変わらず)にした以外は上記と同様にしてcesD配列DNAが検出されるかを検討した。また、上記cesD配列を含んだプラスミドDNAを、フォワードプライマー側又はリバースプライマー側のいずれか1カ所を制限酵素(EcoRI又はPstI)で消化して(図8参照)、熱変性処理してから加えた以外は、上記と同様にしてcesD配列DNAが検出されるかを検討した。
【実施例】
【0155】
結果を以下の表18に示す。表中、「○」は検出できたことを、「-」は検出できなかったことを、「N.T」は検討していないことを、それぞれ示す。
【実施例】
【0156】
【表18】
JP2017104092A_000019t.gif
【実施例】
【0157】
なお、用いるヘリカーゼをTK0566もしくはPF0053に変更した以外は、上記と同様にしてNASBA法によりcesD配列DNAが増幅(検出)されるかを検討した結果、いずれのヘリカーゼを用いた場合においても、ヘリカーゼを用いない場合よりも検出感度が向上した。
図面
【図1a】
0
【図1b】
1
【図1c】
2
【図1d】
3
【図1e】
4
【図1f】
5
【図2】
6
【図3】
7
【図4】
8
【図5】
9
【図6】
10
【図7】
11
【図8】
12