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明細書 :抗デングウイルス剤及びそのスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-009928 (P2018-009928A)
公開日 平成30年1月18日(2018.1.18)
発明の名称または考案の名称 抗デングウイルス剤及びそのスクリーニング方法
国際特許分類 G01N  33/50        (2006.01)
A61K  31/137       (2006.01)
A61K  31/473       (2006.01)
A61K  31/13        (2006.01)
A61P  31/14        (2006.01)
A61K  31/095       (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI G01N 33/50 Z
A61K 31/137
A61K 31/473
A61K 31/13
A61P 31/14
A61K 31/095
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-140294 (P2016-140294)
出願日 平成28年7月15日(2016.7.15)
発明者または考案者 【氏名】日紫喜 隆行
【氏名】加藤 文博
【氏名】石田 裕樹
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000154、【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4C086
4C206
Fターム 2G045AA29
2G045AA40
2G045CB17
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206FA29
4C206JA80
4C206KA04
4C206KA08
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB33
要約 【課題】デングウイルス感染症に有効な抗デングウイルス剤及びそのスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る抗デングウイルス剤のスクリーニング方法は、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物をリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすることを含む。本発明の一実施形態に係る抗デングウイルス剤は、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物又はその誘導体を有効成分として含む。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物をリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすることを含む、抗デングウイルス剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記リード化合物として、少なくともマプロチリンを使用する、
請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記リード化合物として、少なくともSe-メチルセレノシステインを使用する、
請求項1又は2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記リード化合物として、少なくともキナクリンを使用する、
請求項1乃至3のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
前記リード化合物として、少なくともインダトラリンを使用する、
請求項1乃至4のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記リード化合物の誘導体を非ヒト動物に投与して、前記非ヒト動物における前記誘導体の抗デングウイルス活性を評価することを含む、
請求項1乃至5のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物又はその誘導体を有効成分として含む、抗デングウイルス剤。
【請求項8】
少なくともマプロチリン又はその誘導体を前記有効成分として含む、
請求項7に記載の抗デングウイルス剤。
【請求項9】
少なくともSe-メチルセレノシステイン又はその誘導体を前記有効成分として含む、
請求項7又は8に記載の抗デングウイルス剤。
【請求項10】
少なくともキナクリン又はその誘導体を前記有効成分として含む、
請求項7乃至9のいずれかに記載の抗デングウイルス剤。
【請求項11】
少なくともインダトラリン又はその誘導体を前記有効成分として含む、
請求項7乃至10のいずれかに記載の抗デングウイルス剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗デングウイルス剤及びそのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デングウイルスは、蚊によって媒介され、デング熱やデング出血熱といったデングウイルス感染症を引き起こす。デングウイルス感染症は当初、熱帯地域及び亜熱帯地域で問題視されていたが、近年、日本国においても、デング熱の感染事例が報告され、さらに在来種の蚊からもデングウイルスが検出された。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Siew Pheng Lim et al., Antiviral Research, 100 (2013), 500-519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デングウイルス感染症については、未だ有効な治療薬やワクチンは開発されていないのが現状である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、デングウイルス感染症に有効な抗デングウイルス剤及びそのスクリーニング方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る抗デングウイルス剤のスクリーニング方法は、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物をリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすることを含む。本発明によれば、デングウイルス感染症に有効な抗デングウイルス剤のスクリーニング方法を提供することができる。
【0007】
また、前記スクリーニング方法において、前記リード化合物として、少なくともマプロチリンを使用することとしてもよい。また、前記スクリーニング方法において、前記リード化合物として、少なくともSe-メチルセレノシステインを使用することとしてもよい。また、前記スクリーニング方法において、前記リード化合物として、少なくともキナクリンを使用することとしてもよい。また、前記スクリーニング方法において、前記リード化合物として、少なくともインダトラリンを使用することとしてもよい。
【0008】
また、前記スクリーニング方法は、前記リード化合物の誘導体を非ヒト動物に投与して、前記非ヒト動物における前記誘導体の抗デングウイルス活性を評価することを含むこととしてもよい。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る抗デングウイルス剤は、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物又はその誘導体を有効成分として含む。本発明によれば、デングウイルス感染症に有効な抗デングウイルス剤を提供することができる。
【0010】
また、前記抗デングウイルス剤は、少なくともマプロチリン又はその誘導体を前記有効成分として含むこととしてもよい。また、前記抗デングウイルス剤は、少なくともSe-メチルセレノシステイン又はその誘導体を前記有効成分として含むこととしてもよい。また、前記抗デングウイルス剤は、少なくともキナクリン又はその誘導体を前記有効成分として含むこととしてもよい。また、前記抗デングウイルス剤は、少なくともインダトラリン又はその誘導体を前記有効成分として含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デングウイルス感染症に有効な抗デングウイルス剤及びそのスクリーニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る実施例において、抗デングウイルス剤の有効性を評価した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。

【0014】
本実施形態に係る抗デングウイルス(以下、「本剤」という。)剤は、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物又はその誘導体を有効成分として含む、抗デングウイルス剤である。

【0015】
すなわち、本発明の発明者らは、後述の実施例に示すとおり、抗デングウイルス剤について鋭意検討を重ねた結果、意外にも、これまで抗デングウイルス活性が報告されていないマプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンがそれぞれ抗デングウイルス活性を有することを独自に見出し、本発明を完成するに至った。

【0016】
本剤は、少なくともマプロチリン又はその誘導体を有効成分として含むこととしてもよい。マプロチリンとしては、例えば、下記化学式Iで示されるマプロチリン塩酸塩を使用することとしてもよい。

【0017】
【化1】
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【0018】
マプロチリンの誘導体は、マプロチリンに類似の化学構造を有し、抗デングウイルス活性を有するものであれば特に限られないが、例えば、マプロチリンのメチル基及び/又はトリメチレン基を化学的に修飾して得られる化合物であって、抗デングウイルス活性を有するものであることとしてもよい。マプロチリンのメチル基を化学的に修飾して得られる化合物としては、例えば、デスメチルマプロチリンが挙げられる。

【0019】
本剤は、少なくともSe-メチルセレノシステイン又はその誘導体を有効成分として含むこととしてもよい。Se-メチルセレノシステインとしては、例えば、下記化学式IIで示されるSe-メチルセレノシステイン塩酸塩を使用することとしてもよい。

【0020】
【化2】
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【0021】
Se-メチルセレノシステインの誘導体は、Se-メチルセレノシステインに類似の化学構造を有し、抗デングウイルス活性を有するものであれば特に限られないが、例えば、Se-メチルセレノシステインのメチル基、セレノ基及びアミノ基からなる群より選択される1以上を化学的に修飾して得られる化合物であって、抗デングウイルス活性を有するものであることとしてもよい。Se-メチルセレノシステインのメチル基を化学的に修飾して得られる化合物としては、例えば、Se-メチル-Se-メチルセレノシステインが挙げられる。Se-メチルセレノシステインのアミノ基を化学的に修飾して得られる化合物としては、例えば、γ-グルタミル-Se-メチルセレノシステインが挙げられる。

【0022】
本剤は、少なくともキナクリン又はその誘導体を有効成分として含むこととしてもよい。キナクリンとしては、例えば、下記化学式IIIで示されるキナクリン二塩酸塩を使用することとしてもよい。また、キナクリンとしては、例えば、キナクリン二塩酸塩二水和物やキナクリン2メタンスルホン酸を使用することとしてもよい。

【0023】
【化3】
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【0024】
キナクリンの誘導体は、キナクリンに類似の化学構造を有し、抗デングウイルス活性を有するものであれば特に限られないが、例えば、キナクリンのエチル基及び/又はメトキシ基を化学的に修飾して得られる化合物であって、抗デングウイルス活性を有するものであることとしてもよい。キナクリンのエチル基を化学的に修飾して得られる化合物としては、例えば、キナクリンマスタードが挙げられる。

【0025】
本剤は、少なくともインダトラリン又はその誘導体を有効成分として含むこととしてもよい。インダトラリンとしては、例えば、下記化学式IVで示されるインダトラリン塩酸塩を使用することとしてもよい。

【0026】
【化4】
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【0027】
インダトラリンの誘導体は、インダトラリンに類似の化学構造を有し、抗デングウイルス活性を有するものであれば特に限られないが、例えば、インダトラリンのメチルアミノ基及び/又はクロロ基を化学的に修飾して得られる化合物であって、抗デングウイルス活性を有するものであることとしてもよい。

【0028】
上記有効成分は、上述のとおり、抗デングウイルス活性を有する。すなわち、上記有効成分は、例えば、動物に投与した場合、又は動物由来の細胞に接触させた場合における、当該動物又は細胞に対するデングウイルスの感染の抑制、当該動物又は細胞におけるデングウイルスの増殖の抑制、当該動物におけるデングウイルス感染症(例えば、デング熱又はデング出血熱)の発症の抑制、症状の進行の抑制又は症状の緩和といった効果を示す。なお、デングウイルスには、4つの血清型、すなわち、I型(DENV-1)、II型(DENV-2)、III型(DENV-3)及びIV型(DENV-4)が存在する。

【0029】
本剤は、上記有効成分を含む医薬組成物である。本剤は、デングウイルス感染症の予防及び/又は治療剤であることとしてもよい。本剤の剤形は特に限られないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、注射剤、坐剤又は液剤であることとしてもよい。本剤の形状は特に限られず、例えば、固形、粉末状、液状、ペースト状又はゲル状であることとしてもよい。本剤は、さらに添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、溶剤、安定剤、基剤、湿潤剤及び保存剤からなる群より選択される1以上)を含むこととしてもよい。

【0030】
本実施形態に係る抗デングウイルス剤のスクリーニング方法(以下、「本方法」という。)は、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物をリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすることを含む。

【0031】
すなわち、上述のとおり、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンは、それぞれ抗デングウイルス活性を有する。そこで、本方法では、これら抗デングウイルス活性を有する化合物をリード化合物として使用して、新たな抗デングウイルス剤をスクリーニングする。

【0032】
本方法においては、リード化合物として、少なくともマプロチリンを使用することとしてもよい。本方法においては、リード化合物として、少なくともSe-メチルセレノシステインを使用することとしてもよい。本方法においては、リード化合物として、少なくともキナクリンを使用することとしてもよい。本方法においては、リード化合物として、少なくともインダトラリンを使用することとしてもよい。

【0033】
すなわち、本方法は、次の(a)-(d)からなる群より選択される1以上を含む方法であることとしてもよい:(a)マプロチリンをリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすること;、(b)Se-メチルセレノシステインをリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすること;、(c)キナクリンをリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすること;及び(d)インダトラリンをリード化合物として使用して、抗デングウイルス剤をスクリーニングすること。

【0034】
本方法は、リード化合物の誘導体を非ヒト動物に投与して、当該非ヒト動物における当該誘導体の抗デングウイルス活性を評価することを含むこととしてもよい。

【0035】
すなわち、この場合、本方法は、例えば、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンからなる群より選択される1以上の化合物をリード化合物として選択すること、次いで、当該各リード化合物の1以上の誘導体を用意すること、さらに、当該各誘導体を非ヒト動物に投与すること、その後、当該動物における当該各誘導体の抗デングウイルス活性を評価すること、を含む。

【0036】
本方法において用意するリード化合物の誘導体は、当該リード化合物に類似の化学構造を有し、抗デングウイルス活性を有し得る化合物であれば特に限られず、上記各リード化合物について、上述したような誘導体が使用される。

【0037】
なお、本方法においては、既にリード化合物が決定されているため、当業者であれば、スクリーニングの対象として使用され得る当該リード化合物の誘導体を適宜合成し、又は購入して用意することができる。

【0038】
非ヒト動物は、ヒト以外の動物であれば特に限られないが、例えば、マウス、ラット、モルモット、ツパイ、ウサギ、イヌ、ブタ又はサル(例えば、チンパンジー、マーモセット)であることとしてもよい。

【0039】
リード化合物誘導体の非ヒト動物への投与方法は、特に限られず、経口投与であってもよいし、非経口投与であってもよい。非経口投与は、例えば、血管内(例えば、静脈内)投与、皮下投与又は腹腔内投与であることとしてもよい。

【0040】
リード化合物誘導体を非ヒト動物に投与するタイミングは、当該動物における当該誘導体の抗デングウイルス活性を評価することができるタイミングであれば特に限られず、当該動物のデングウイルス感染の前、当該感染と同時、及び当該感染の後からなる群より選択される1以上のタイミングで当該誘導体を投与すればよい。

【0041】
すなわち、例えば、まずリード化合物誘導体を、デングウイルスに感染する前の非ヒト動物に投与し、次いで、当該誘導体を体内に含む当該動物にデングウイルスを感染させ、その後、当該動物における当該誘導体の抗デングウイルス活性を評価する。

【0042】
また、例えば、非ヒト動物のデングウイルス感染と同時に、リード化合物誘導体を当該動物に投与し、その後、当該動物における当該誘導体の抗デングウイルス活性を評価する。

【0043】
また、例えば、まず非ヒト動物にデングウイルスを感染させ、次いで、リード化合物誘導体を、デングウイルスに感染した当該動物に投与し、その後、当該動物における当該誘導体の抗デングウイルス活性を評価する。

【0044】
非ヒト動物におけるリード化合物誘導体の抗デングウイルス活性の評価は、例えば、当該誘導体が、当該動物におけるデングウイルス感染症(例えば、デング熱又はデング出血熱)の予防及び/又は治療に有効であるかを評価することにより行う。

【0045】
より具体的に、例えば、非ヒト動物に対するデングウイルスの感染の抑制、当該動物におけるデングウイルスの増殖の抑制、当該動物におけるデングウイルス感染症の発症の抑制、症状の進行の抑制又は症状の緩和を評価する。

【0046】
なお、後述の実施例にも記載のとおり、上記有効成分は、候補化合物を所定濃度で培養細胞に添加した場合の抗デングウイルス活性を評価する一次スクリーニング、当該一次スクリーニングで選択された候補化合物の細胞毒性試験を行う二次スクリーニング、当該二次スクリーニングで選択された候補化合物を当該一次スクリーニングより低濃度で培養細胞に添加した場合の抗デングウイルス活性を評価する三次スクリーニング、及び当該三次スクリーニングで選択された候補化合物の安全域を評価する四次スクリーニングによって選択された。

【0047】
ここで、上記一次スクリーニング及び三次スクリーニングは、フォーカスアッセイにより行った。この点、フォーカスアッセイに代えて、一過性発現型のレプリコンの系又は恒常発現型のレプリコン細胞を使用してスクリーニングを行うこともできる。

【0048】
すなわち、例えば、デングウイルス遺伝子を一過性に発現するレプリコンを使用することができる。具体的に、まず、ウイルス粒子形成に必須な構造遺伝子領域を削除し当該箇所に分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を挿入することにより、一過性発現型レプリコンプラスミドDNA(DGL2)を作製する。次に、このDGL2を培養細胞(例えば、BHK21細胞(ハムスター腎臓由来細胞)、Huh7細胞(ヒト肝癌由来細胞)又はVerо細胞(アフリカミドリザル腎臓由来細胞))にトランスフェクションする。

【0049】
さらに、トランスフェクションされた細胞を、スクリーニング対象の化合物を添加した培養液中で3日間培養する。その後、培養液中のルシフェラーゼ活性を測定する。そして、ルシフェラーゼ活性が、化合物を添加しなかった場合より減少した化合物を、抗デングウイルス活性を有する化合物として選択する。

【0050】
また、例えば、デングウイルス遺伝子を恒常的に発現するレプリコン細胞を使用することもできる。具体的に、まず、ウイルス粒子形成に必須な構造遺伝子領域を削除し当該箇所に分泌型ルシフェラーゼ遺伝子とネオマイシン耐性遺伝子とを挿入したレプリコンプラスミドDNA(GLR2)を作製し、さらにGLR2を鋳型としてin vitrо合成したRNAを作製する。

【0051】
次に、このRNAを培養細胞(例えば、BHK21細胞(ハムスター腎臓由来細胞)、Huh7細胞(ヒト肝癌由来細胞)又はVerо細胞(アフリカミドリザル腎臓由来細胞))にトランスフェクションし、G418(Geneticin)によってネオマイシン耐性細胞を選択する。選択した各細胞のルシフェラーゼ活性及び非構造タンパク質の発現を解析し、共に高発現の細胞をレプリコン細胞として選択する。

【0052】
さらに、このレプリコン細胞を、スクリーニング対象の化合物が添加された培養液中で1~3日間培養する。その後、培養液中のルシフェラーゼ活性を測定する。そして、ルシフェラーゼ活性が化合物を添加しなかった場合より減少した化合物を、抗デングウイルス活性を有する化合物として選択する。

【0053】
フォーカスアッセイでは、宿主細胞への吸着から当該宿主細胞からのウイルス放出までのウイルス生活環の全てを対象とした試験を行うことができるが、その操作には、多くの手間と時間がかかる。

【0054】
これに対し、一過性発現型のレプリコンの系や恒常発現型のレプリコン細胞を使用する方法によれば、ウイルスの吸着及び放出過程を評価することはできないが、より少ない手間と時間で抗デングウイルス活性を評価することができる。

【0055】
すなわち、例えば、一過性発現のレプリコンの系を使用する場合、実験の都度、遺伝子を導入する必要があるが、ウイルス構造遺伝子を欠失させているため、ウイルス遺伝子の増幅過程を効果的に評価することができる。また、分泌型のルシフェラーゼが発現するため、細胞を溶解することなく、ルシフェラーゼ活性を指標にして、簡便にウイルス遺伝子の増減を評価することができる。

【0056】
また、恒常発現のレプリコン細胞を使用する場合、ウイルス遺伝子が細胞内で維持されるため、一過性発現のレプリコン細胞を使用する場合に比べて、より簡便にウイルス遺伝子の増減を評価することができる。また、恒常発現のレプリコン細胞は、抗ウイルス化合物耐性変異体の評価にも利用することができる。

【0057】
また、上記リード化合物を使用することにより、抗デングウイルス活性を有する化合物がデングウイルスに作用する作用機序を評価することもできる。

【0058】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0059】
国立大学法人京都大学が保有する化合物データベースに登録されている化合物のうち、約2万個の化合物から、抗デングウイルス活性を有する化合物をスクリーニングした。このスクリーニングは、4段階の方法で行った。
【実施例】
【0060】
すなわち、まず一次スクリーニングとして、20880個の化合物について、フォーカスアッセイを行った。具体的に、まず96ウェルプレートのウェル内の培養液中でBHK21細胞(ハムスター腎臓由来株化細胞)を培養し、次いで、当該培養液に、添加後の濃度が1ウェル当たり50フォーカスフォーミングユニットとなる量のデングウイルスと、添加後の濃度が10μMとなる量の化合物とを含む溶液を添加し、その後、当該細胞を3日間培養した。培養3日後、細胞をパラホルムアルデヒドで固定した。
【実施例】
【0061】
そして、細胞の免疫染色を行った。すなわち、まず固定された細胞を含む溶液中に、一次抗体として、デングウイルスの外被タンパク質に対する抗体(抗フラビウイルス抗体4G2、ATCC社製)を添加した。次いで、二次抗体として、HRP(horse radish peroxidase)結合抗マウスIgG抗体(Dako社製)を添加した。その後、HRPの基質であるDiaminoBenzidine(和光純薬工業社製)を添加した。
【実施例】
【0062】
そして、各ウェル内において、免疫染色によって観察されるフォーカスの数を評価した。すなわち、例えば、スクリーニング対象の化合物を添加した場合のフォーカス数が、当該化合物を添加しなかった場合のフォーカス数より少ない場合、又はスクリーニング対象の化合物を添加した場合のフォーカスの大きさが、当該化合物を添加しなかった場合のフォーカスの大きさより小さくなった場合、当該化合物は抗デングウイルス活性を有する可能性があると評価することが考えられる。
【実施例】
【0063】
ただし、本実施例では、より強い抗デングウイルス活性を有する化合物を同定するため、添加することによってフォーカス数が消失した化合物を、抗デングウイルス活性を有する可能性があると評価した。そして、その結果、添加することによってフォーカス数が消失した196個の化合物が選択された。
【実施例】
【0064】
次に、二次スクリーニングとして、上記一次スクリーニングで選択された196個の化合物について、MTTアッセイによる細胞毒性試験を行った。すなわち、まず96ウェルプレートのウェル内の培養液中でBHK21細胞(ハムスター腎臓由来株化細胞)を培養し、次いで、当該培養液に、添加後の濃度が10μMとなる量の化合物を含む溶液を添加して3日間培養し、その後、当該培養液に、添加後の濃度が0.5%となる量のMTT(3-(4,5-dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)を添加した。
【実施例】
【0065】
そして、ホルマザン溶液を加え、分光光度計にて570nmの吸光度を測定した。その結果、細胞毒性を示さなかった78個の化合物が選択された。
【実施例】
【0066】
さらに、三次スクリーニングとして、上記二次スクリーニングで選択された78個の化合物について、上記一次スクリーニングより低濃度でのフォーカスアッセイを行った。すなわち、添加後の濃度が1μMとなる量の化合物を含む溶液を添加して3日間培養した。その結果、6個の化合物についてフォーカスの消失が認められた。
【実施例】
【0067】
さらに、四次スクリーニングとして、上記三次スクリーニングで選択された6個の化合物について、プラークアッセイを行った。すなわち、添加後の濃度を10μMから0.3μMまで2段階希釈となる量の化合物を含む溶液を添加して3日間培養した。さらに、Reed and Muench method(Reed, L.J., Muench, H., 1938. A simple method of estimating fifty percent endpoints. Am J Hyg 27, 493-497)を用いることにより、50%効果濃度(EC50)を算出した。また同様に、添加後の濃度を100μMから3.1μMまで2段階希釈となる量の化合物を含む溶液を添加して3日間培養し、50%細胞毒性濃度(CC50)を算出した。その結果、最終的に、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンを含む6個の化合物(三次スクリーニングで選択された6個の化合物の全て)が選択された。
【実施例】
【0068】
図1には、マプロチリン、Se-メチルセレノシステイン、キナクリン及びインダトラリンのそれぞれについて、抗デングウイルス活性を評価した結果を示す。すなわち、図1には、4つの血清型のデングウイルス(DENV-1、DENV-2、DENV-3及びDENV-4)の各々についてのEC50(μM)と、CC50(μM)とを示す。なお、図1において、「N.D.」は、評価を行わなかったことを示す。
【実施例】
【0069】
図1に示すように、マプロチリンは、DENV-1、DENV-2、DENV-3及びDENV-4の全てに対して、高い抗デングウイルス活性(EC50が2.9μM~7.0μM)を示し、CC50は33.4μMであった。
【実施例】
【0070】
Se-メチルセレノシステインもまた、DENV-1、DENV-2、DENV-3及びDENV-4の全てに対して、高い抗デングウイルス活性(EC50が、DENV-1に対して6.8μM、DENV-2、DENV-3及びDENV-4に対して10μM未満)を示し、CC50は41.1μMであった。
【実施例】
【0071】
キナクリンは、DENV-1及びDENV-2に対して、高い抗デングウイルス活性(EC50が0.8μM~1.2μM)を示し、CC50は18.7μMであった。
【実施例】
【0072】
インダトラリンは、DENV-1に対して、高い抗デングウイルス活性(EC50が3.0μM)を示し、CC50は11.8μMであった。
図面
【図1】
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