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明細書 :シリコーン製モノリス体と多空間体との複合体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-136552 (P2017-136552A)
公開日 平成29年8月10日(2017.8.10)
発明の名称または考案の名称 シリコーン製モノリス体と多空間体との複合体およびその製造方法
国際特許分類 B01J  20/30        (2006.01)
B01J  31/06        (2006.01)
B01J  32/00        (2006.01)
B01J  35/04        (2006.01)
B01J  20/26        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
C08G  77/06        (2006.01)
FI B01J 20/30
B01J 31/06 Z
B01J 32/00
B01J 35/04 Z
B01J 20/26 B
C02F 1/28 N
C08G 77/06
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2016-019383 (P2016-019383)
出願日 平成28年2月4日(2016.2.4)
発明者または考案者 【氏名】中西 和樹
【氏名】皆見 武志
【氏名】橋本 智佳子
【氏名】梅原 洋一
【氏名】金井 隆一
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100094112、【弁理士】、【氏名又は名称】岡部 讓
【識別番号】100096943、【弁理士】、【氏名又は名称】臼井 伸一
【識別番号】100102808、【弁理士】、【氏名又は名称】高梨 憲通
【識別番号】100128646、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 恒夫
【識別番号】100128668、【弁理士】、【氏名又は名称】齋藤 正巳
【識別番号】100134393、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 克彦
【識別番号】100142491、【弁理士】、【氏名又は名称】舛田 里会
審査請求 未請求
テーマコード 4D624
4G066
4G169
4J246
Fターム 4D624AA04
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4J246GB26
4J246GB29
4J246HA70
要約 【課題】強度が高く、疎水性物質含有水から疎水性物質を吸着する吸着材である複合体の提供。
【解決手段】アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドと、尿素又はアンモニアの少なくとも一方と、酢酸と、を含有し、二官能及び三官能アルコキシシランの合計に対して二官能アルコキシシランが25~60体積%である水性溶液に、表面にヒドロキシ基又はカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、二官能及び三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成し、モノリス体のヒドロキシ基に多空間体のヒドロキシ基又はカルボキシ基の少なくとも一方を結合したシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体。多空間体が空間率が90.0~99.9%である複合体。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有し、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランの合計に対して前記二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下である水性溶液に、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、
前記多空間体を前記水性溶液に浸漬した状態で、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合することを特徴とするシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造方法。
【請求項2】
前記多空間体が、繊維状素材で構成されており、該多空間体の空間率が90.0%以上99.9%以下であることを特徴とする請求項1に記載するシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造方法。
【請求項3】
前記多空間体は、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよび硝子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載するシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造方法。
【請求項4】
前記二官能アルコキシシランのアルコキシ基を除く二つの官能基のうち少なくとも一方、および、前記三官能基アルコキシシランのアルコキシ基を除く一つの官能基が、メチル基、フェニル基、フロロアルキル基、ビニル基またはメルカプトプロピル基であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載するシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造方法。
【請求項5】
前記水性溶液が含有するCTAC、酢酸および溶媒の合計に対して、前記CTACが1.2質量%以上4.0質量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載するシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造方法。
【請求項6】
アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有し、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランの合計に対して前記二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下である水性溶液に、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、
前記多空間体を前記水性溶液に浸漬した状態で、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合することにより得られることを特徴とするシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体。
【請求項7】
シリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体と、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体との複合体であって、
前記シリコーン製モノリス体と前記多空間体とは、前記シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方との結合により接合されており、
前記多空間体が有する空間部に占める前記シリコーン製モノリス体の充填率が50%以上98%以下であることを特徴とするシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体。
【請求項8】
前記多空間体が、繊維状素材で構成されており、
該多空間体の空間率が、90.0%以上99.9%以下であることを特徴とする請求項6または7に記載するシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体。
【請求項9】
前記多空間体は、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよび硝子から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載するシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体。
【請求項10】
アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有し、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランの合計に対して前記二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下である水性溶液に、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、
前記多空間体を前記水性溶液に浸漬した状態で、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合することにより得られることを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載するシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、化学、薬品、食品、環境保全等様々な分野において、不要な疎水性物質の除去や有用な疎水性物質の分離精製に用いる吸着材となりうるシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や家庭からの廃水には油等の疎水性物質が含まれており、環境保全の観点から、これら疎水性物質は除去する必要がある。
【0003】
このような油等の疎水性物質を除去する方法としては、該疎水性物質を吸着可能な疎水性のポリマー等で形成された吸着材に疎水性物質を含む廃水を接触させることにより、吸着材に疎水性物質を吸着させて廃水から疎水性物質を除去する方法がある(特許文献1および2等参照)。
【0004】
ここで、疎水性物質を吸着可能な疎水性のポリマーとして、二官能基のアルコキシシランと、三官能基のアルコキシシランとの両方を出発原料とし、ゾルゲル反応によりこれらのシランを共重合させ、Si-O結合のネットワークを形成させると共に相分離を行い、連続貫通流路と化学種を溶解できるシリコーン骨格とを有するエアロゲル又はキセロゲルのシリコーン製モノリス体がある(特許文献3参照)。特許文献3に記載された、二官能のアルコキシシランと三官能のアルコキシシランを原料としてゾルゲル反応によりアルコキシシランを共重合および相分離させたシリコーン製モノリス体は、柔軟性があることや、大きな外表面積を持つこと及び表面官能基を選定できるなど吸着材として優れた性質を持つ。また、特許文献4の、二官能基のアルコキシシランと三官能基のアルコキシシランを原料としてゾルゲル反応によりアルコキシシランを共重合および相分離させさらに撥液性基を結合させて得られるポリシロキサンも、特許文献3と同様に柔軟性等の特性を有するものである。
【0005】
しかしながら、特許文献3のシリコーン製モノリス体や特許文献4のポリシロキサンは強度が低いため、多量の流体を高速で流す必要があるプロセス等、例えば、上記した疎水性物質を含む廃水を吸着材に通液して処理するプロセス等への適用が困難である。また、強度が低いため、吸着材への負荷の大きい水蒸気による吸着材の再生法は適用できないという問題も生じる。そして、特許文献3のシリコーン製モノリス体や特許文献4のポリシロキサンは疎水性なため、水性である廃水を通液し難く疎水性物質を除去し難いという問題もある。なお、このような問題は、工場や家庭からの廃水を吸着材で処理する場合に限られず、その他疎水性物質を含む水においても同様に存在する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平8-10611号公報
【特許文献2】特許第3546052号
【特許文献3】特開2014-61457号公報
【特許文献4】特開2015-48417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの課題に鑑み、本発明は、強度が高く、疎水性物質含有水から好適に疎水性物質を除去できる吸着材となりうる複合体およびその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造方法は、アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有し、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランの合計に対して前記二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下である水性溶液に、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、前記多空間体を前記水性溶液に浸漬した状態で、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合することを特徴とする。
【0009】
前記多空間体が、繊維状の素材で構成されており、該多空間体の空間率が90.0%以上99.9%以下であることが好ましい。
【0010】
前記多空間体は、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよび硝子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
前記二官能アルコキシシランのアルコキシ基を除く二つの官能基のうち少なくとも一方、および、前記三官能基アルコキシシランのアルコキシ基を除く一つの官能基が、メチル基、フェニル基、フロロアルキル基、ビニル基またはメルカプトプロピル基であることが好ましい。
【0012】
前記水性溶液が含有するCTAC、酢酸および溶媒の合計に対して、前記CTACが1.2質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体は、アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有し、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランの合計に対して前記二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下である水性溶液に、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、前記多空間体を前記水性溶液に浸漬した状態で、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合することにより得られることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体は、シリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体と、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体との複合体であって、前記シリコーン製モノリス体と前記多空間体とは、前記シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方との結合により接合されており、前記多空間体が有する空間部に占める前記シリコーン製モノリス体の充填率が50%以上98%以下であることを特徴とする。
【0015】
前記多空間体が、繊維状素材で構成されており、該多空間体の空間率が、90.0%以上99.9%以下であることが好ましい。
【0016】
前記多空間体は、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよび硝子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
上記シリコーン製モノリス体と多空間体との複合体は、アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有し、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランの合計に対して前記二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下である水性溶液に、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、前記多空間体を前記水性溶液に浸漬した状態で、前記二官能アルコキシシラン及び前記三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と前記多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合することにより得られたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体は、シリコーン製モノリス体を、表面にヒドロキシ基やカルボキシ基を有する多空間体の表面で成長させて複合体としているため、強度が高く、また、疎水性物質含有水から好適に疎水性物質を除去できる。また、強度が高いため、水蒸気により再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明において生じる反応を模式的に示す図である。
【図2】本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の外観を模式的に示す図である。
【図3】多空間体を用いずに二官能アルコキシシラン、三官能アルコキシシラン、CTACおよび尿素を含む水性溶液のみを用いてゾルゲル反応させた場合に得られるシリコーン製モノリス体の側面の写真および上面のSEM写真である。
【図4】本発明の複合体を、挟み込んだスペーサーと共に巻き込んで円柱状にした例を示す図である。
【図5】本発明の複合体を用いた疎水性物質含有水の処理方法に適用できる水処理装置の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の複合体を用いた疎水性物質含有水の処理方法に適用できる水処理装置の一例を示す模式図である。
【図7】多空間体として用いた不織布のSEM写真である。
【図8】実施例1で得られた複合体のSEM写真である。
【図9】比較例1で得られた複合体のSEM写真である。
【図10】比較例2で得られた複合体のSEM写真である。
【図11】実施例1~2の油分吸着試験結果を示す図である。
【図12】実施例1、3~5の油分吸着試験結果を示す図である。
【図13】実施例1、6~11の油分吸着試験結果を示す図である。
【図14】実施例12~36の油分吸着試験結果を示す図である。
【図15】実施例1の複合体の再生試験結果を示す図である。
【図16】実施例37で得られた複合体のSEM写真である。
【図17】実施例1、37の油分吸着試験結果を示す図である。
【図18】実施例1の複合体の再生試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造方法は、アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有し、二官能アルコキシシラン及び三官能アルコキシシランの合計に対して二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下である水性溶液に、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体を浸漬し、多空間体を前記水性溶液に浸漬した状態で、二官能アルコキシシラン及び三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合するものである。

【0021】
具体的にはまず、アルコキシ基を二つ有する二官能アルコキシシランと、アルコキシ基を三つ有する三官能アルコキシシランと、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)と、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを含有する水性溶液を準備する。

【0022】
本発明においては、二官能アルコキシシランと、三官能アルコキシシランと、CTACと、尿素およびアンモニアの少なくとも一方と、酢酸とを全て含有する水性溶液を用いる必要がある。これらの成分を一つでも含まない水性溶液を用いた場合は、多空間体が有する微細な空間部でシリコーン製モノリス体のネットワーク構造が形成されないため、本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体を得ることができない。

【0023】
二官能アルコキシシランは、アルコキシ基を二つ有し、アルコキシ基以外の官能基を二つ有し、これらの基がケイ素原子に直結している化合物である。二官能アルコキシシランによりゾルゲル反応により生じるSi-O結合のネットワーク中に平面的な結合が生じるため、得られるシリコーン製モノリス体は柔軟性を示すと考えられる。

【0024】
二官能アルコキシシランが有するアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。二官能アルコキシシランが有する二つのアルコキシ基は、同一でも異なっていてもよい。

【0025】
二官能アルコキシシランが有するアルコキシ基以外の官能基としては、メチル基、フェニル基、フロロアルキル基、ビニル基、メルカプトプロピル基等が挙げられる。これらの基は疎水性であり、重合により形成されるシリコーン製モノリス体の表面にこれらの基が存在することにより、シリコーン製モノリス体はより疎水性になる。

【0026】
二官能アルコキシシランの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。

【0027】
三官能アルコキシシランは、アルコキシ基を三つ有し、アルコキシ基以外の官能基を一つ有し、これらの基がケイ素原子に直結している化合物である。三官能アルコキシシランが有するアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。三官能アルコキシシランが有する三つのアルコキシ基は、同一でも異なっていてもよい。

【0028】
三官能アルコキシシランが有するアルコキシ基以外の官能基としては、メチル基、フェニル基、フロロアルキル基、ビニル基、メルカプトプロピル基等が挙げられる。

【0029】
三官能アルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。

【0030】
上記水性溶液の溶媒としては、水が挙げられる。

【0031】
二官能アルコキシシラン、三官能アルコキシシラン、溶媒等の各成分は、それぞれ1種のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0032】
水性溶液中に含まれる二官能アルコキシシラン及び三官能アルコキシシランは、二官能アルコキシシラン及び三官能アルコキシシランの合計に対して二官能アルコキシシランが25体積%以上60体積%以下であり、好ましくは30体積%以上55体積%以下である。25体積%未満や60体積%を超える場合は、反応させてもゲル化しないまたは強度が非常に弱く脆いためシリコーン製モノリス体を形成できない。

【0033】
水性溶液中に含まれるCTACの含有量は特に限定されないが、水性溶液が含有するCTAC、酢酸および溶媒の合計に対してCTACが1.2質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。

【0034】
水性溶液中に含まれる尿素やアンモニアの含有量は酢酸に対して十分過剰な量であれば良いが酢酸に対してモル比で約10倍量程度が好ましい。

【0035】
本発明で用いる多空間体は、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するものである。ヒドロキシ基やカルボキシ基は、多空間体の基材表面にシリコーン製モノリス体を結合、固定化できる量であればよく、メチル基等の疎水基が共存していても良い。

【0036】
多空間体とは、空間が多い、すなわち空間率が高い構造物である。多空間体は高い空間率を有するため、シリコーン製モノリス体は多空間体の基材表面のヒドロキシ基やカルボキシ基を足掛かりとし、三次元的に多空間体の空間内及び近傍で成長する。これにより、多空間体とシリコーン製モノリス体との複合体の中には、液体または気体が通過できるような適度な空間が維持されることとなる。多空間体の空間率は、好ましくは90.0%以上99.9%以下であり、さらに好ましくは95.0%以上99.0%以下である。「多空間体の空間率」とは、多空間体中の空間部(すなわち多空間体を構成する基体以外の領域)の容積の比率である。具体的には、多空間体の空間率は、単位体積において、多空間体の質量を、多空間体を構成する基体(例えば、後述する繊維状素材)の密度で除して該基体の体積を求め、これを多空間体の体積から減じて、多空間体が有する空間部の容積とし、該多空間体が有する空間部の容積の多空間体の体積に対する比率(多空間体が有する空間部の容積/多空間体の体積)である。

【0037】
多空間体は、繊維状素材で構成されていることが好ましい。繊維状素材で構成された多空間体としては、不織布、織物等が挙げられる。繊維状素材で構成された多空間体は比較的柔軟性があるため、シリコーン製モノリス体自体が有する柔軟性をある程度保ったまま複合体の強度を向上させることができる。

【0038】
多空間体が繊維状素材で構成されている場合の繊維状素材の直径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。繊維状素材の直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から求めることができる。

【0039】
また、多空間体の大きさは、例えば、縦10~1000mm、横10~1000mm、厚さ1~50mmとすることができる。

【0040】
多空間体の材質は、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するものであり、加工性、耐熱性や、耐薬品性からポリエステルが好ましいが、表面にヒドロキシ基やカルボキシ基を有した素材、あるいはエッチング処理、プラズマ処理等により、ヒドロキシ基やカルボキシ基が表面に付与された素材、具体的には例えば、表面にヒドロキシ基やカルボキシ基を有するポリ塩化ビニルや硝子、あるいはエッチング処理、プラズマ処理等により、ヒドロキシ基やカルボキシ基が表面に付与されたポリ塩化ビニルや硝子等でもよい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。表面にヒドロキシ基やカルボキシ基を実質的に有さない多空間体、例えばフェノール樹脂や活性炭繊維を用いた場合は、後述する比較例に示すように、多空間体にシリコーン製モノリス体が結合し難く、本発明の複合体が得られない。

【0041】
次に、上記水性溶液に多空間体を浸漬する。
そして、多空間体を水性溶液に浸漬した状態で、二官能アルコキシシラン及び三官能アルコキシシランをゾルゲル反応により共重合させSi-O結合のネットワークを形成および相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体を形成すると共に、該シリコーン製モノリス体のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と多空間体のヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方とを結合することにより、本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体が得られる。

【0042】
上記反応について、図1を用いて説明する。図1は、多空間体としてポリエステルからなる繊維からなる不織布を用い且つ尿素を用いた例である。図1に示すように、二官能アルコキシシランと三官能アルコキシシランをゾルゲル反応させると、二官能アルコキシシランと三官能アルコキシシランが酢酸を触媒として加水分解し、該加水分解物が緩やかに結合し尿素の分解により生じたアンモニアを触媒として脱水反応が生じることにより、二官能アルコキシシランと三官能アルコキシシランが共重合してSi-O結合のネットワークを形成する、すなわちポリシロキサン(シリコーン骨格)を形成する。そして、CTACの存在下に上記ゾルゲル反応を行うため、二官能アルコキシシランと三官能アルコキシシランの加水分解物が結合する際に、相分離が生じて、多数の粒子状のポリシロキサンがつながって一体化した形状(モノリス体)になる。この多数の粒子状のポリシロキサンがつながって一体化したものが、シリコーン製モノリス体である。シリコーン製モノリス体は白色である。この粒状のポリシロキサンは、例えば直径2μm以上6μm以下である。なお、粒状ポリシロキサンの直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から求めることができる。また、二官能アルコキシシランを用いるため、ゾルゲル反応で生じるSi-O結合のネットワーク中に平面的な結合が生じるため、得られるシリコーン製モノリス体は柔軟性を示すと考えられる。なお、多空間体と完全に分離したポリシロキサンは、当然複合体を構成しない。

【0043】
本発明においては、上記ゾルゲル反応を、表面にヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有する多空間体をゾルゲル反応液である上記水性溶液に浸漬した状態で行うため、多空間体(図1においては、ポリエステル繊維)の表面やその近傍で上記相分離が生じ、相分離により生じた多数の粒子状ポリシロキサンが多空間体の表面に堆積する。すなわち、多空間体表面でシリコーン製モノリス体が成長する。そして、この時、多空間体の表面に存在するヒドロキシ基やカルボキシ基と、ゾルゲル反応で生じたアルコキシ基に由来するヒドロキシ基とが結合する。したがって、Si-O結合のネットワーク化で相分離を起こす際に多空間体表面のヒドロキシ基やカルボキシ基も該ネットワークの中に取り込まれることになる。これにより、ゾルゲル反応で得られたシリコーン製モノリス体と多空間体とが強固に接合した複合体が形成される。

【0044】
反応条件は、上記ゾルゲル反応による共重合および相分離、ならびに多空間体の表面に存在するヒドロキシ基やカルボキシ基とゾルゲル反応で生じたアルコキシ基に由来するヒドロキシ基とが結合する反応を生じさせることができれば、特に限定されないが、例えば上記水性溶媒を撹拌や加熱等することにより、製造することができる。例えば、加熱温度は40℃以上90℃以下、加熱時間は1時間以上24時間以下である。なお、上記反応はアンモニアの揮散を防ぐため、密閉状態で行うことが好ましい。

【0045】
このようにして得られたシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の模式図を図2に示す。図2に示すように、シリコーン製モノリス体と多空間体との複合体(以下単に「複合体」とも記載する。)1は、多空間体2とシリコーン製モノリス体3とが絡み合ったものであり、シリコーン製モノリス体3のアルコキシ基に由来するヒドロキシ基と多空間体2が表面に有するヒドロキシ基やカルボキシ基との結合により接合(一体化)されたものである。

【0046】
そして、該複合体1は、多空間体2を構成する基材(例えば繊維状素材)の表面から三次元的にシリコーン製モノリス体3が成長することにより形成されるため、空隙が形成され、この空隙が液体または気体が通過あるいは入り込むことができる流路4となる。一方、多空間体2を用いずに上記水性溶液のみを用いてゾルゲル反応させた場合は、図3に示すように、シリコーン製モノリス体は本発明の複合体よりも空間が非常に少ないものであり、液体または気体が通過または入り込み難い。また、シリコーン製モノリス体は疎水性のため、水性液体は通過または入り込み難い。なお、図3は多空間体を用いずに二官能アルコキシシラン、三官能アルコキシシラン、CTACおよび尿素を含む水性溶液のみを用いてゾルゲル反応させた場合に得られるシリコーン製モノリス体の側面の写真(図3(a))および上面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(図3(b))である。

【0047】
このような本発明の複合体は、多空間体を用いているため、シリコーン製モノリス体単独よりも強度が高いものである。ここで、特許文献4には、繊維の混入により機械的特定を向上させることができる旨の記載があるが、「繊維の混入」とは一般的には繊維を添加して混ぜ合わせることであり、本発明のように、繊維等で構成される多空間体(繊維等で作られる成形体)を反応物質を含む水性溶液に浸漬した状態で該反応物質を反応させるものではない。また、特許文献4のように繊維を単に混入させただけでは、本発明のように液体または気体が通過あるいは入り込むことができる流路を確保することはできない。

【0048】
また、本発明の複合体は、疎水性のシリコーン製モノリス体を有するため、疎水性物質を吸着することができる。そして、シリコーン製モノリス体は、多数の粒により形成されているため、表面積が大きく多量の疎水性物質を吸着することができる。

【0049】
したがって、本発明の複合体は、高速で疎水性物質を含む液体またはガスを通液等させる用途、例えば疎水性物質を含む水から疎水性物質を除去する疎水性物質含有水の処理に用いる吸着材に好適である。

【0050】
また、本発明の複合体を構成するシリコーン製モノリス体は、ポリシロキサン骨格で形成されているため、適当な多空間体を選択することにより、低温から高温(例えば液体窒素温度-195.8℃から320℃まで)広い範囲で使用することが可能である。

【0051】
本発明の複合体は、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率が好ましくは50%以上98%以下、さらに好ましくは55%以上92%以下である。該充填率が50%以上98%以下であると、液体や気体が通過または入り込むことができる流路が十分に確保でき気体や液体がシリコーン製モノリス体表面に到達しやすくなる。「多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率」とは、多空間体が有する空間部の容積に対するシリコーン製モノリス体の体積の比率である。具体的には、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は、複合化しようとするシリコーン製モノリス体の見掛比重を予め測定しておき、シリコーン製モノリス体の添着質量(多空間体に結合したシリコーン製モノリス体の質量)をこの見掛比重で除してシリコーン製モノリス体の体積を求め、該シリコーン製モノリス体の体積を多空間体の空間部の容積で除して求めることができる。多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は、例えば用いる多空間体の空間率や、水性溶液中の二官能アルコキシシランおよび三官能アルコキシシランの含有量等で調製することができる。

【0052】
本発明の複合体は、空隙率が好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは9.0%以上40%以下である。空隙率が5%以上50%以下であると、液体や気体が通過または入り込むことができる流路が十分に確保でき気体や液体がシリコーン製モノリス体表面に到達しやすくなる。本発明の複合体の「空隙率」とは、複合体に対する複合体の空間部の比率であり、複合体の体積から上記のシリコーン製モノリス体の添着質量から求めたシリコーン製モノリス体の体積及び多空間体を構成する基体の体積を減じて、これを複合体の体積で徐して求めることができる。なお、「複合体の空間部」にはシリコーン製モノリス体が有する空間容積は含まない。空隙率は、例えば用いる多空間体の空間率や、水性溶液中の二官能アルコキシシランおよび三官能アルコキシシランの含有量等で調製することができる。

【0053】
なお、多空間体を用いずに二官能アルコキシシラン、三官能アルコキシシラン、CTACおよび尿素を含む水性溶液のみを用いてゾルゲル反応させた場合は、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率を50%以上98%以下とすることや、複合体の空隙率が5%以上50%以下とすることはできない。

【0054】
本発明の複合体において、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は、好ましくは0.060g/cm以上0.120g/cm以下、さらに好ましくは0.070g/cm以上0.112g/cm以下である。添着量が0.060g/cm未満の場合は、シリコーン製モノリス体の表面積が小さくなるため疎水性物質の吸着量が少なくなる傾向があり、また、0.120g/cmを超えると、複合体の空隙率が小さくなり液体や気体が通過または入り込み難くなる。「シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量」とは、多空間体1cm当たりに添着されたシリコーン製モノリス体の質量であり、シリコーン製モノリス体を添着した多空間体1cmあたりの質量を測定し、これから1cmの多空間体の質量を差し引くことにより求めることができる。

【0055】
本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体は、疎水性物質を吸着する吸着材として使用することができる。上記本発明の複合体は、そのまま吸着材として用いてもよいし、例えば、不織布等の布状や板状の場合は、必要に応じて挟み込んだスペーサーと共に巻き込んで円柱状とし、これをカラムにそのまま充填して、吸着カラムとして使用してもよい。また、不織布等の布状の場合には、用いる多空間体の親水性や、原料アルコキシシランの親油性の調整及び官能基の選定により、分離膜として使用することもできる。不織布を多空間体として用いた本発明の複合体を、挟み込んだスペーサーと共に巻き込んで円柱状とした例を、図4に示す。図4示すように、複合体11は、通液方向に平行なスペーサー12が複数設けられ、そのスペーサー12と共に巻かれて円柱状の吸着材として用いることができる。また、特許文献3や特許文献4のシリコーンモノリス体は柔軟性が高く強度が低いため、加工やカラムへの充填がし難いが、本発明の複合体は柔軟性だけでなく強度も高いため、加工やカラムへの充填がし易い。したがって、所望の形状の吸着材とすることができ、液体や気体の所望の流路を確保し易い。

【0056】
このような本発明の複合体を吸着材として用いて、疎水性物質含有水を処理することができる。具体的には、本発明の複合体を用いた疎水性物質含有水の処理方法は、疎水性物質を含む水を本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体からなる吸着材に接触させて、疎水性物質を吸着材に吸着させることにより、水から疎水性物質を除去するものである。

【0057】
吸着材に疎水性物質含有水を接触させる方法は、通常の吸着材と同様の方法を適用することができ、例えば、吸着材に疎水性物質含有水を通液するラテラルフロー(側流)やパラレルフロー(並行流)とすることができる。

【0058】
疎水性物質としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、植物油、鉱物油等が挙げられる。

【0059】
疎水性物質を含む水としては、工場や家庭からの廃水、レストラン等の厨房排水、タンカーなどのバラスト水や原油・天然ガス採掘時の随伴水等が挙げられる。

【0060】
このような本発明の複合体を用いた疎水性物質含有水の処理方法について、図5を用いてさらに説明する。図5は、本発明の複合体を用いた疎水性物質含有水の処理方法を適用できる水処理装置の一例を示す模式図である。

【0061】
図5に示す水処理装置は、本発明の複合体をカラムに充填した吸着カラム21aおよび21bと、吸着カラム21aおよび21bに被処理水である疎水性物質含有水を供給する被処理水供給ライン23と、吸着カラム21aおよび21bで処理された被処理水が排出される被処理水戻りライン24とを有する。また、図5の水処理装置は、吸着カラム21aおよび21bの下流側から吸着カラム21aおよび21bを再生するための水蒸気を供給する再生用水蒸気供給ライン25と、吸着カラム21aおよび21bから再生用水蒸気を排出する再生用水蒸気戻りライン26を有する。

【0062】
このような水処理装置を用いて、疎水性物質含有水として油を含有する油含有水を処理する場合、まず、油含有水が被処理水供給ライン23から吸着カラム21aおよび21bに供給される。この吸着カラム21aおよび21bを通過する時に、油含有水が本発明の複合体からなる吸着材に接触すると、油が複合体に吸着され、油が除去された被処理水が、吸着カラム21aおよび21bから被処理水戻りライン24へ排出され、回収される。

【0063】
このようにして、疎水性物質含有水を処理することができる。本発明においては、吸着材として用いた複合体の強度が高いため、多量の被処理水を高速で流すこともでき、高効率で疎水性物質含有水を処理することができる。

【0064】
また、油含有水を処理すると、吸着カラム21aおよび21bに充填された吸着材に油が吸着するため、吸着材の油吸着能が経時的に低下する。そこで、例えば油含有水を吸着カラム21aおよび21bに所定時間通液後に、油含有水の供給を止め、再生用水蒸気供給ライン25を通じて吸着カラム21aおよび21bの下流側から水蒸気を供給することにより、吸着材が吸着した油を除去することができ、吸着材を再生することができる。吸着材から除去された油は水蒸気と共に再生用水蒸気戻りライン26から排出され、比重分離等により油分を分離する油分分離槽22に導入される。そして、油分分離槽22で油が分離された凝縮水は凝縮水戻りライン27を経て被処理水供給ライン23に供給され、油分分離槽22で分離された油は分離油分排出ライン28から排出され回収される。

【0065】
このようにして、疎水性物質(図5においては油)を吸着させた本発明の複合体からなる吸着材を、水蒸気と接触させることにより、吸着材から疎水性物質を除去することができる。吸着材の強度が低い場合はこの水蒸気による再生はできないが、本発明においては吸着材として用いた複合体の強度が高いため、水蒸気により再生することができる。

【0066】
なお、図5においては、吸着カラムとして吸着カラム21aおよび21bの二つを設けたが、吸着カラムは一つでも、三つ以上でもよい。吸着カラムを複数とすることにより、吸着による疎水性物質含有水の処理と水蒸気による吸着材の再生を交互に(順々に)行うことができ、被処理水を処理し続けることができる。

【0067】
また、本発明の複合体にひまし油等の抽出剤を吸着させて、この抽出剤を吸着させた状態で、該複合体に疎水性物質を含む水を接触させて該疎水性物質を複合体に吸着させることもできる。このように抽出剤、特にひまし油を複合体に吸着させることにより、疎水性物質の除去量を増加させることができる。

【0068】
抽出剤としては、油脂が好適に用いられるが、特に動植物油脂類、例えば、ひまし油、大豆油、ヤシ油、アマニ油、ニシン油等が挙げられる。

【0069】
抽出剤を本発明の複合体に添着させる方法は特に限定されず、例えば、抽出剤に複合体を浸漬する等して複合体に抽出剤を吸い込ませた後に、必要に応じて乾燥等すればよい。

【0070】
本発明の複合体にひまし油等の抽出剤を添着させたものを吸着材として用いて疎水性物質含有水を処理する方法について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の複合体を用いた疎水性物質含有水の処理方法を適用できる水処理装置の一例であり、図5の構成に加えて、さらに分離油分排出ライン28を経た分離油分から抽出剤を分離する構成であり、図5と同じ構成には同じ番号を付し重複する説明は省略する。

【0071】
図6に示す水処理装置は、分離油分排出ライン28を経た分離油分から、ヒーター34等で加熱することにより分離油分から抽出剤を分離する抽出剤分離槽31を有する。そして、抽出剤分離槽31で分離された抽出剤は抽出剤戻りライン32を経て吸着カラム21aおよび21bに供給されることで、再び吸着材に抽出剤を添着させることもできる。また、抽出剤分離槽31で抽出剤が分離された残りの分離油分は、分離油分排出ライン33から排出され回収される。

【0072】
水処理の最中に抽出剤が流出するため、抽出剤を吸着カラム21aおよび21bの上流側から供給して失われた抽出剤を補給したり、上記図6で示すように、再生に用いた水蒸気を更に加熱して油分を揮散回収し、抽出剤が含まれる凝縮液を吸着カラム21aおよび21bに上流側から再度供給するようにしてもよい。

【0073】
上記では、疎水性物質含有水に本発明の複合体を接触させて疎水性物質を除去する疎水性物質含有水の処理方法について示したが、疎水性物質含有水に限らず、疎水性物質を含むガスに本発明の複合体を接触させて吸着させることにより疎水性物質を除去することもできる。また、医薬品等の有用な疎水性物質を含む水やガスに本発明の複合体を接触させて該疎水性物質を分離、精製や濃縮することもできる。いずれの処理においても、本発明の複合体は強度が高いため、流体(液体、気体)を高速で流すことができ、高効率で行うことができる。

【0074】
また、本発明のシリコーン製モノリス体と多空間体との複合体は、触媒作用を有する疎水性物質を担持する触媒担体として使用することもできる。具体的には、本発明の複合体に触媒作用を有する疎水性物質を吸着させることにより担持させ、該触媒作用を有する疎水性物質を担持させた複合体を、触媒として用いることができる。本発明の複合体は強度が高いため、例えば反応を撹拌しながら行う場合の反応触媒としても使用することができる。触媒作用を有し且つ本発明の複合体に担持(吸着)させることができる疎水性物質として、例えば、有機金属触媒や有機触媒等を挙げることができる。また、吸着材と同様に、触媒作用を有する疎水性物質を担持させた本発明の複合体に水蒸気を接触させることにより、該疎水性物質を除去することもできる。
【実施例】
【0075】
以下に、本発明の更なる理解のために実施例を用いて説明するが、実施例はなんら本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0076】
<実施例1>シリコーン製モノリス体と多空間体との複合体の製造
酢酸5mmol/L水溶液504.7gに尿素168.35g、CTAC(n-hexadecyl trimethyl ammonium chloride)26.95gを30~35℃に保ちながら30分間撹拌を行い溶解させて水性溶媒を調製した。
この水性溶媒にメチルトリメトキシシラン105mlとジメチルジメトキシシラン70mlを加えて約60分間さらに撹拌を行うことにより、水性溶液を得た。
ポリエチレンテレフタレートからなる繊維状素材で構成された不織布(繊維直径30μm、厚さ4mm、空間率98.8%)を縦125mm×横200mmに切り出してステンレスパットに入れ、これに不織布が浸漬するよう上記の水性溶液を注ぎ込んだ。浸漬する前のポリエチレンテレフタレートの不織布を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を、図7(a)および(b)に示す。
【実施例】
【0077】
次に、水性溶液が揮散しないようにステンレスパットの開口部をラップして、ステンレスパットを80℃の恒温槽に入れて約9時間加熱した。これにより、メチルトリメトキシシランとジメチルジメトキシシランがゾルゲル反応により共重合してSi-O結合のネットワークを形成すると共に相分離することによりシリコーン骨格を有するシリコーン製モノリス体が形成され、且つ、該シリコーン製モノリス体のメトキシ基に由来するヒドロキシ基と不織布のヒドロキシ基とが結合した。その後、恒温槽から取り出し、室温において水で泡が出でなくなるまで洗浄後、80℃(空気中)で乾燥して、水性溶媒を除去した。これにより、シリコーン製モノリス体(ポリシロキサン組成の柔軟性多孔性体)と多空間体(ポリエチレンテレフタレートの不織布)を一体化させた複合体が得られた。
【実施例】
【0078】
得られた複合体をSEMにより観察した結果を図8に示す。また、得られた複合体の空隙率は33.7%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は65.9%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0801g/cmであった。
【実施例】
【0079】
<比較例1>
ポリエチレンテレフタレートの不織布(繊維直径30μm、厚さ4mm、空間率98.8%)の代わりに、フェノール樹脂製の不織布(日本カイノール(株)S-211、繊維直径30μm、厚さ4mm、空間率98.8%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
得られた複合体をSEMにより観察した結果を図9に示す。図9に示すように、親水性樹脂ではないフェノール樹脂を用いた比較例1では、メチルトリメトキシシランとジメチルジメトキシシランがゾルゲル反応により共重合および相分離したが、相分離したポリシロキサンは不織布を構成する繊維表面にほとんど結合せず、不織布の表面は該ポリシロキサンでほとんど覆われていなかった。
【実施例】
【0080】
<比較例2>
ポリエチレンテレフタレートの不織布(繊維直径30μm、厚さ4mm、空間率98.8%)の代わりに、活性炭素繊維製の不織布(日本カイノール(株)CAN-211-15、繊維直径30μm、厚さ4mm、空間率98.8%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
得られた複合体をSEMにより観察した結果を図10に示す。図10に示すように、親水性樹脂ではない活性炭素繊維を用いた比較例2では、メチルトリメトキシシランとジメチルジメトキシシランがゾルゲル反応により共重合および相分離したが、相分離したポリシロキサンは不織布を構成する繊維表面にほとんど結合せず、不織布の表面は該ポリシロキサンでほとんど覆われていなかった。
【実施例】
【0081】
<油分吸着試験>
外側に温水を流せる長さ300mm、直径10mmの硝子管に直径3mmの硝子ビーズを高さ100mmまで入れ、実施例1で得られた複合体を、図4に示すようにスペーサーを設けスペーサーと共に巻き込んで円柱状とし、図4において上下方向が通水方向となるようにしてそのまま硝子管に高さ100mm(約8cm)まで充填した。さらに直径3mmの硝子ビーズを空間が無くなるように詰めて吸着カラムを構成した。
温度を一定とするために吸着カラム(硝子管)の外側に25℃にコントロールされた水を流した後、トルエン150ppmを溶解させたイオン交換水300ml/h(液空間速度(LHSV)=37.5h-1、空塔速度3.82m/h)を定量ポンプ(ダブルプランジャーポンプ)で通液した。
通液後、30分毎に吸着カラム出口液を採取してトルエンの濃度をガスクロマトグラフで測定した。ガスクロマトグラフの条件を下記に示す。
ガスクロマトグラフ;島津GC-2014 FID検出器
カラム;SPB-20(微極性、15m×0.53mm×1.0μm、supelco製)
温度プログラム;38℃-5℃/分-100℃-10℃/分-220℃(24.4分)
内部標準法(2-ヘプタノン)
結果を表1および図11に示す。
【実施例】
【0082】
表1および図11に示すように、実施例1の複合体を用いることにより、トルエンが水から除去された。なお、実施例1の複合体の通液後の形状を観察したところ、通液前と実質的に変化していないことから、シリコーン製モノリス体と多空間体とは強固に結合していると判断できる。
【実施例】
【0083】
【表1】
JP2017136552A_000003t.gif
【実施例】
【0084】
<実施例2>
実施例1のメチルトリメトキシシランをビニルトリメトキシシランに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。実施例1と同様に、シリコーン製モノリス体と多空間体を一体化させた複合体が得られた。
得られた複合体の空隙率は36.2%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は63.4%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0760g/cmであった。
【実施例】
【0085】
<アルコキシ基を除く官能基の影響>
実施例1で得られた複合体の代わりに実施例2で得られた複合体を用いて、上記<油分吸着試験>を行った。結果を表1および図11に示す。
表1および図11に示すように、実施例1および実施例2の油分吸着能に差は見られないことから、シリコーン製モノリス体が形成できれば、原料アルコキシシランのアルコキシ基を除く官能基の吸着能に対する影響は無いものと判断できる。
【実施例】
【0086】
<実施例3~5>
二官能アルコキシシランと三官能アルコキシシランの量をそれぞれ表2に示す量に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。実施例1と同様に、それぞれシリコーン製モノリス体と多空間体を一体化させた複合体が得られた。
実施例3で得られた複合体の空隙率は33.8%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は65.8%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0799g/cmであった。実施例4で得られた複合体の空隙率は29.6%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は70.1%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0851g/cmであった。実施例5で得られた複合体の空隙率は29.2%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は70.5%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0856g/cmであった。
【実施例】
【0087】
<二官能基アルコキシシランと三官能基アルコキシシランの比の影響>
実施例1で得られた複合体の代わりに各実施例3~5で得られた複合体を用いて、上記<油分吸着試験>を行った。結果を表2および図12に示す。
表2および図12に示すように、二官能基であるジメチルジメトキシシランの比が大きくなると破過までに吸着する油分量が多くなる傾向が見られる。しかし、60%超ではシリコーン製モノリス体が形成できなかった。また、25%未満でも同様にシリコーン製モノリス体が形成できなかった。
【実施例】
【0088】
【表2】
JP2017136552A_000004t.gif
【実施例】
【0089】
<実施例6~11>
CTAC、酢酸および溶媒の合計(本実施例においては、上記水性溶媒の合計量)に対するCTAC添加量をそれぞれ表3に示す濃度に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。実施例1と同様に、それぞれシリコーン製モノリス体と多空間体を一体化させた複合体が得られた。
実施例6で得られた複合体の空隙率は18.5%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は81.2%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0987g/cmであった。実施例7で得られた複合体の空隙率は19.5%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は80.3%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0975g/cmであった。実施例8で得られた複合体の空隙率は16.7%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は83.1%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.1010g/cmであった。実施例9で得られた複合体の空隙率は18.1%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は81.7%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.0992g/cmであった。実施例10で得られた複合体の空隙率は15.5%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は84.3%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.1024g/cmであった。実施例11で得られた複合体の空隙率は8.5%、多空間体が有する空間部に占めるシリコーン製モノリス体の充填率は91.4%、シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量は0.1110g/cmであった。
【実施例】
【0090】
<CTAC添加量の影響>
実施例1で得られた複合体の代わりに各実施例6~11で得られた複合体を用いて、上記<油分吸着試験>を行った。結果を表3および図13に示す。
表3および図13に示すように、CTAC、酢酸および溶媒の合計に対するCTAC濃度が1.2質量%以上4.0質量%以下で破過までに吸着する油分量が特に多く、水性溶媒中の濃度が2質量%付近で破過までに吸着する油分量が最大となった。
【実施例】
【0091】
【表3】
JP2017136552A_000005t.gif
【実施例】
【0092】
<実施例12~36>
シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量がそれぞれ表4に示す量になるように水性溶液のメチルトリメトキシシランとジメチルジメトキシシランの添加量を代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。実施例1と同様に、それぞれシリコーン製モノリス体と多空間体を一体化させた複合体が得られた。
【実施例】
【0093】
<添着量の影響>
実施例1で得られた複合体の代わりに各実施例12~36で得られた複合体を用いて、上記<油分吸着試験>を行った。結果を表4および図14に示す。表4および図14において、「シリコーン製モノリス体の多空間体に対する添着量」を「添着量」と表記する。
表4および図14に示すように、添着量が0.060g/cm未満では、シリコーン製モノリス体が少なく表面積が小さいため、破過までに吸着する油分量は比較的少なかったが、添着量の増加と共に吸着する油分量は多くなった。ただし、添着量が0.120g/cmを超えると、複合体の空隙率が小さくなり液体や気体が通過または入り込み難くなり吸着量は増加しなくなった。
【実施例】
【0094】
【表4】
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【実施例】
【0095】
<水蒸気による再生試験>
実施例1で作製した複合体を用いて油分吸着試験を行った後の吸着カラムに、水蒸気(111℃、55.5g/h)を1時間(h)流した後、冷却して再度、油分吸着試験を行った。これを3回繰り返した。結果を図15に示す。
図15に示すように、再生3回後も複合体の油分吸着能力に変化が見られず、油分を吸着した水蒸気を通すことにより、再生可能であることが確認された。
【実施例】
【0096】
<実施例37>ひまし油の添着
実施例1で得られた複合体が保持できる油分を予め測定しておき、これに相当する量のメタノールで希釈したひまし油を実施例1で得られた複合体に吸い込ませ、十分に風乾した後、75℃で一昼夜乾燥した。これに容量で20倍の水を加えて煮沸処理を1時間行い、吸着できないひまし油を除去した。
75℃で一昼夜乾燥した後に重量を測定した結果、実施例1で得られた複合体質量に対して0.9~0.95(質量で48.5wt%)のひまし油が添着されたことが分かった。得られたひまし油添着複合体をSEMにより観察した結果を図16に示す。
【実施例】
【0097】
<ひまし油添着の効果確認>
実施例1で得られた複合体の代わりに実施例37で得られた複合体を用いて、上記<油分吸着試験>を行った。結果を図17に示す。
図17に示すように、実施例37の複合体は、破過までに除去できるトルエンは実施例1の複合体に対して約1.5倍となった。また、実施例37の複合体の破過曲線から予想される総除去量は実施例1の複合体に対して約3倍となると考えられる。
【実施例】
【0098】
<ひまし油添着の水蒸気による再生試験>
実施例1で作製した複合体を用いて油分吸着試験を行った後の吸着カラムの代わりに、実施例37で得られた複合体を用いて油分吸着試験を行った後の吸着カラムを用いて上記<水蒸気による再生試験>を行った。結果を図18に示す。
図18に示すように、再生を繰り返すたびに総吸着容量が低下していくことが分かる。少しずつ添着したひまし油が除去されていったと考えられる。また、水蒸気再生を3回行った後、ひまし油を再度添着した結果、ほぼ初期の総トルエン吸着量に戻った。
【符号の説明】
【0099】
1、11 シリコーン製モノリス体と多空間体との複合体
2 多空間体
3 シリコーン製モノリス体
12 スペーサー
21a、21b 吸着カラム
22 油分分離槽
23 被処理水供給ライン
24 被処理水戻りライン
25 再生用水蒸気供給ライン
26 再生用水蒸気戻りライン
27 凝縮水戻りライン
28 分離油分排出ライン
31 抽出剤分離槽
32 抽出剤戻りライン
33 分離油分排出ライン
34 ヒーター
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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