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明細書 :移動搬送機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6422482号 (P6422482)
登録日 平成30年10月26日(2018.10.26)
発行日 平成30年11月14日(2018.11.14)
発明の名称または考案の名称 移動搬送機構
国際特許分類 B60B  19/00        (2006.01)
FI B60B 19/00 G
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2016-512731 (P2016-512731)
出願日 平成27年4月6日(2015.4.6)
国際出願番号 PCT/JP2015/060779
国際公開番号 WO2015/156263
国際公開日 平成27年10月15日(2015.10.15)
優先権出願番号 2014081457
優先日 平成26年4月10日(2014.4.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年3月29日(2018.3.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】小森 雅晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100114502、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 俊則
審査官 【審査官】小河 了一
参考文献・文献 特表2013-532600(JP,A)
特開2009-179110(JP,A)
特開2013-256212(JP,A)
調査した分野 B60B 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ホイール回転中心軸を中心に回転自在に支持されるホイール部材と、
前記ホイール回転中心軸を中心とする第1の仮想円周に沿って延在する回転中心軸を中心に回転自在に、前記ホイール部材に支持された第1の副車輪と、
前記ホイール回転中心軸方向に前記第1の仮想円周から離れた位置において、前記ホイール回転中心軸を中心とする第2の仮想円周に沿って延在する回転中心軸を中心に回転自在に、前記ホイール部材に支持された第2の副車輪と、
前記ホイール回転中心軸と同軸に回転自在に配置された第1及び第2の入力部材と、前記第1及び第2の入力部材の両方に接触し、自転中心軸を中心に自転可能、かつ、前記ホイール回転中心軸のまわりを公転可能である出力部材とを含む差動機構と、
前記ホイール部材に固定され、前記差動機構の前記出力部材を、前記自転中心軸を中心に回転自在に支持する回転支持部材と、
前記第1及び第2の副車輪のうち少なくとも一つの副車輪と前記差動機構の前記出力部材との間を結合し、前記出力部材の前記自転中心軸を中心とする自転による回転を当該副車輪に伝達して当該副車輪を回転させる回転伝達部材と、
接触面に接していない前記第1及び第2の副車輪を、前記ホイール回転中心軸を中心とする径方向の外側に移動させ、当該第1及び第2の副車輪と前記差動機構の前記出力部材との間の前記回転伝達部材による結合を解除又は低減させる駆動低減機構と、
を備え、
前記第1及び第2の副車輪は、前記ホイール回転中心軸の方向から見ると、前記ホイール回転中心軸を中心とする仮想外形円の内側に、前記仮想外形円に接近又は接するように配置され、かつ、
前記仮想外形円に沿って前記第1の副車輪の隣に前記第2の副車輪が配置され、
前記ホイール部材は、前記差動機構の前記出力部材の前記ホイール回転中心軸のまわりの公転に伴って、前記ホイール回転中心軸を中心に回転することを特徴とする移動搬送機構。
【請求項2】
前記第1及び第2の副車輪は、前記ホイール回転中心軸の方向から見ると、前記仮想外形円に沿って交互に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の移動搬送機構。
【請求項3】
前記ホイール回転中心軸方向に垂直な方向から見ると、前記第1の副車輪と前記第2の副車輪は前記ホイール回転中心軸方向に離れて配置され、前記第1の副車輪と前記第2の副車輪の間に前記差動機構が配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移動搬送機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は移動搬送機構に関し、詳しくは、全方向移動可能な車輪を備えた移動搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
平面上を全方向に移動可能なロボットや、工場内の搬送設備等において、オムニホイールと呼ばれる車輪が用いられている。このオムニホイールは、主車輪の外周に副車輪を並べたものであり、副車輪の回転中心軸は主車輪の円周方向と略一致する方向に延在し、副車輪は回転自在である。オムニホイールを駆動する場合は、主車輪のみを回転駆動する。
【0003】
また、例えば図7及び図8に示すように、主車輪の回転駆動と副車輪の回転駆動とを行うことができる移動搬送機構が提案されている。図7は、この移動搬送機構の断面図であり、図8は図7の線A-Aに沿って切断した断面図である。図7及び図8に示すように、移動搬送機構110は、ホイール回転中心軸121を中心に回転自在にケーシング112に支持されているホイール部材120に、副車輪130が回転自在に支持されている。副車輪130の回転中心軸131は、ホイール回転中心軸121を中心とする仮想円周に沿って延在している。ホイール部材120と副車輪130は、モータ114a,114bの回転が差動機構140を介して配分されて回転する。差動機構140は、ホイール回転中心軸121と同軸に回転自在に配置された第1及び第2の入力かさ歯車118a,118bと、第1及び第2の入力かさ歯車118a,118bの両方に噛み合い、自転可能、かつ、ホイール回転中心軸121のまわりを公転可能である出力かさ歯車142とを含む。出力かさ歯車142は回転軸143の一端に固定され、回転軸143は、ホイール部材120に固定された回転支持部材126によって、回転自在に支持されている。モータ114a,114bの回転が第1及び第2の入力かさ歯車118a,118bに伝達されたとき、出力かさ歯車142が自転すると、出力かさ歯車142の自転による回転が副車輪130に伝達され、副車輪130が回転する。モータ114a,114bの回転が第1及び第2の入力かさ歯車118a,118bに伝達されて出力かさ歯車142が公転すると、出力かさ歯車142の公転に伴ってホイール部材120が回転する。ホイール部材120の回転は主車輪の回転を意味する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第5158698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この移動搬送機構110には、円周方向に隣り合う副車輪130の間に隙間があるため、ホイール部材120が回転する(主車輪が回転する)と床面102との接触が断続的になり、振動が発生するという課題がある。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み、主車輪が回転するときの振動を抑制することができる移動搬送機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した移動搬送機構を提供する。
【0008】
移動搬送機構は、(a)ホイール回転中心軸を中心に回転自在に支持されるホイール部材と、(b)前記ホイール回転中心軸を中心とする第1の仮想円周に沿って延在する回転中心軸を中心に回転自在に、前記ホイール部材に支持された第1の副車輪と、(c)前記ホイール回転中心軸方向に前記第1の仮想円周から離れた位置において、前記ホイール回転中心軸を中心とする第2の仮想円周に沿って延在する回転中心軸を中心に回転自在に、前記ホイール部材に支持された第2の副車輪と、(d)前記ホイール回転中心軸と同軸に回転自在に配置された第1及び第2の入力部材と、前記第1及び第2の入力部材の両方に接触し、自転中心軸を中心に自転可能、かつ、前記ホイール回転中心軸のまわりを公転可能である出力部材とを含む差動機構と、(e)前記ホイール部材に固定され、前記差動機構の前記出力部材を、前記自転中心軸を中心に回転自在に支持する回転支持部材と、(f)前記第1及び第2の副車輪のうち少なくとも一つの副車輪と前記差動機構の前記出力部材との間を結合し、前記出力部材の前記自転中心軸を中心とする自転による回転を当該副車輪に伝達して当該副車輪を回転させる回転伝達部材と、を備える。前記第1及び第2の副車輪は、前記ホイール回転中心軸の方向から見ると、前記ホイール回転中心軸を中心とする仮想外形円の内側に、前記仮想外形円に接近又は接するように配置され、かつ、前記仮想外形円に沿って前記第1の副車輪の隣に前記第2の副車輪が配置されている。前記ホイール部材は、前記差動機構の前記出力部材の前記ホイール回転中心軸のまわりの公転に伴って、前記ホイール回転中心軸を中心に回転する。
【0009】
上記構成によれば、ホイール回転中心軸の方向から見ると、仮想外形円に沿って第1の副車輪の隣りに第2の副車輪を配置して、円周方向に隣り合う副車輪の間の隙間を少なくし又は無くすことによって、ホイール部材が回転して(主車輪が回転して)副車輪が順次床面に接するときに、円周方向に隣り合う副車輪間の隙間に起因して発生する振動を抑制することができる。
【0010】
好ましくは、前記第1及び第2の副車輪は、前記ホイール回転中心軸の方向から見ると、前記仮想外形円に沿って交互に配置されている。
【0011】
この場合、仮想外形円の全周に沿って、円周方向に隣り合う副車輪の間の隙間を少なくし又は無くすことができ、円周方向に隣り合う副車輪間の隙間に起因する振動を、主車輪の回転角度に制約されることなく抑制することができる。
【0012】
好ましくは、前記ホイール回転中心軸方向に垂直な方向から見ると、前記第1の副車輪と前記第2の副車輪は前記ホイール回転中心軸方向に離れて配置され、前記第1の副車輪と前記第2の副車輪の間に前記差動機構が配置されている。
【0013】
この場合、第1の副車輪と第2の副車輪との間に差動機構を配置することによって、第1及び第2の副車輪を回転駆動するための構成を簡素化することができる。
【0014】
好ましくは、接触面に接していない前記第1及び第2の副車輪を、前記ホイール回転中心軸を中心とする径方向の外側に移動させ、当該第1及び第2の副車輪と前記差動機構の前記出力部材との間の前記回転伝達部材による結合を解除又は低減させる駆動低減機構をさらに備える。
【0015】
この場合、接触面に接していない第1及び第2の副車輪を駆動する無駄をなくして、第1及び第2の副車輪を効率よく駆動することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、主車輪が回転するときの振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】移動搬送機構の断面図である。(実施例1)
【図2】図1の線A-Aに沿って切断した断面図である。(実施例1)
【図3】図1の線B-Bに沿って切断した断面図である。(実施例1)
【図4】図1の線C-Cに沿って切断した断面図である。(実施例1)
【図5】移動搬送機構の動作を説明するための模式図である。(実施例1)
【図6】移動搬送機構の要部構成図である。(実施例1の変形例1)
【図7】移動搬送機構の断面図である。(従来例1)
【図8】図7の線A-Aに沿って切断した断面図である。(従来例1)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。

【0019】
<実施例1> まず、移動搬送機構10の構成について、図1乃至図4を参照しながら説明する。図1は、移動搬送機構10の構成を示す断面図である。図2は、図1の線A-Aに沿って切断した断面図である。図3は、図1の線B-Bに沿って切断した断面図である。図4は、図1の線C-Cに沿って切断した断面図である。

【0020】
図1に示すように、移動搬送機構10のケーシング12に、ホイール部材22と、第1及び第2の回転軸33,35とが回転自在に支持されている。

【0021】
第1の回転軸33の一端に、ケーシング12に固定された第1のモータ52から回転が伝達される。第2の回転軸35は、第1の回転軸33の外側に、第1の回転軸33と同心に配置された中空円筒状の部材である。第2の回転軸35の一端に、ケーシング12に固定された第2のモータ54から歯車56,58を介して、回転が伝達される。

【0022】
ホイール部材22の中心には貫通穴23が形成され、貫通穴23内に、ホイール部材22のホイール回転中心軸22xと同心に、第1及び第2の回転軸33,35の他端側が配置されている。第1及び第2の回転軸33,35の他端側とホイール部材22とは、軸受を介して相対回転自在に支持されている。

【0023】
図1、図2及び図4に示すように、ホイール部材22は、第1及び第2の副車輪24,26を回転自在に支持している。なお、図2及び図4には、ホイール部材22に固定された軸24k,26kを中心に、第1及び第2の副車輪24,26が軸受を介して回転自在に支持される構成を示しているが、これに限るものではない。第1の副車輪24と第2の副車輪26とは、ホイール回転中心軸22x方向に離れており、第1の副車輪24と第2の副車輪26との間に差動機構30が配置されている。

【0024】
図1及び図3に示すように、差動機構30は、第1及び第2の回転軸33,35の他端側に固定され互いに対向する入力かさ歯車32,34と、入力かさ歯車32,34に噛み合う3つの出力かさ歯車36とを含む。出力かさ歯車36は、出力かさ歯車軸37の一端に固定されている。出力かさ歯車軸37は、ホイール部材22に固定された軸受39によって回転自在に支持されている。出力かさ歯車軸37の他端には、かさ歯車38が固定されている。入力かさ歯車32,34は、差動機構の第1及び第2の入力部材である。出力かさ歯車36、出力かさ歯車軸37は、差動機構の出力部材である。軸受39は、回転支持部材である。

【0025】
差動機構には、かさ歯車の代わりに、フェースギヤ、ハイポイドギヤなどの歯車や、円筒歯車を用いた遊星歯車装置等、歯が噛み合う構成を用いることができる。また、フリクションドライブ(摩擦伝動を利用するもの)、トラクションドライブ(トラクションオイルを利用するもの)等のように、噛み合う歯がない構成を用いてもよい。ベルトやワイヤ等を介して回転を伝達する差動機構を用いてもよい。

【0026】
図2及び図4に示すように、第1及び第2の副車輪24,26は、樽状の外形を有し、第1及び第2の副車輪24,26の回転中心軸24x,26xは、ホイール回転中心軸22xを中心とする仮想円周22p,22qに沿って延在している。第1及び第2の副車輪24,26は、ホイール部材22よりも径方向外側に突出しており、ホイール部材22の回転に応じて床面2に接する。

【0027】
図1に示すように、第1及び第2の副車輪24,26は、第1及び第2の副車輪24,26の外周面24a,26aに接触する第1及び第2の駆動ローラ25,27によって回転駆動される。図3に示すように、第1及び第2の駆動ローラ25,27は、それぞれ、第1及び第2の駆動ローラ軸45,47に固定され、第1及び第2の駆動ローラ軸45,47はホイール部材22に回転自在に支持されている。第1及び第2の駆動ローラ軸45,47の一端には、互いに噛み合うかさ歯車46,48が固定されている。第1の駆動ローラ軸45の他端にはかさ歯車44が固定され、このかさ歯車44は、出力かさ歯車軸37の他端に固定されたかさ歯車38と噛み合っている。これらの第1及び第2の駆動ローラ25,27と、第1及び第2の駆動ローラ軸45,47と、かさ歯車38,44,46,48は、回転伝達部材であり、出力かさ歯車軸37の回転を第1及び第2の副車輪24,26に伝達して第1及び第2の副車輪24,26を回転させる。

【0028】
次に、移動搬送機構10の動作について、図5の模式図を参照しながら説明する。図5は、床面2から移動搬送機構10とケーシング12を見た様子を示す。図5では、ホイール部材22に第1及び第2の副車輪24,26が配置された主車輪20について、第1及び第2の副車輪24,26のうち、床面2に接する一つの副車輪28のみが図示されている。ここでは、差動機構30の一対の入力かさ歯車32,34の歯数が同じ場合をとりあげて説明する。

【0029】
差動機構30の1対の入力かさ歯車32,34の両方を同じ方向に同じ角速度で回転駆動すると、出力かさ歯車36は自転することなく、ホイール回転中心軸22xのまわりを公転する。これによって、図5(a)に示すように、第1及び第2の副車輪24,26は停止した状態で、すなわち、第1及び第2の副車輪24,26が自転しない状態で、ホイール部材22が回転し、主車輪20が矢印83に示すように回転する。その結果、矢印86で示すように、ケーシング12は床面2に対して、前後方向(図5(a)において上下方向)に相対的に移動する。

【0030】
差動機構30の1対の入力かさ歯車32,34を互いに逆方向に、絶対値が同じ角速度で回転駆動すると、出力かさ歯車36は公転することなく、自転する。これによって、図5(b)に示すように、ホイール部材22が停止した状態で、矢印85で示すように副車輪28が回転中心軸28xのまわりを回転(自転)する。その結果、矢印88で示すように、ケーシング12は床面2に対して、左右方向(図5(b)において左右方向)に相対的に移動する。

【0031】
差動機構30の1対の入力かさ歯車32,34を互いに絶対値が異なる角速度で回転駆動すると、出力かさ歯車36は、自転し、かつ公転する。これによって、図5(c)において矢印83で示すように主車輪20が回転し、矢印85で示すように副車輪28が回転(自転)する。その結果、例えば矢印87で示すように、ケーシング12は床面2に対して図5(c)に示すように斜め方向に相対的に移動する。

【0032】
移動搬送機構10は、モータ52,54の回転を制御することで、平面内の全方向の移動が可能である。

【0033】
すなわち、ケーシング12を床面2に対して前後方向(図5(a)において矢印86で示す方向)に移動させたい場合には、第1及び第2の副車輪24,26が回転しない状態でホイール部材22を回転させればよいので、出力かさ歯車36が公転しかつ自転しないように、入力かさ歯車32,34の両方を同じ方向に同じ角速度(第1の角速度比)で回転駆動するように、モータ52,54の回転を制御する。

【0034】
ケーシング12を床面2に対して左右方向(図5(b)において矢印88で示す方向)に移動させたい場合には、第1及び第2の副車輪24,26が自転し、ホイール部材22が回転しないようにすればよいので、出力かさ歯車36が自転しかつ公転しないように、入力かさ歯車32,34を互いに逆方向に絶対値が同じ角速度(第2の角速度比)で回転駆動するように、モータ52,54の回転を制御する。

【0035】
ケーシング12を床面2に対して前後方向でも左右方向でもない斜め方向(図5(c)において、例えば矢印87で示す方向)に移動させたい場合には、第1及び第2の副車輪24,26が自転し、かつホイール部材22が回転すればよいので、出力かさ歯車36が自転しかつ公転するように、入力かさ歯車32,34を、第1の角速度の比と異なりかつ第2の角速度の比と異なる角速度比で回転駆動するように、モータ52,54の回転を制御する。

【0036】
移動搬送機構10は、駆動用の全てのモータ52,54をケーシング12上に配置することができるので、使用できるモータに関する制約は少なく、幅広い種類やサイズのモータを利用することが可能である。例えば、副車輪駆動用のモータを主車輪に内蔵する場合よりも、大トルクのモータを用いることができる。したがって、副車輪のトルクを大きくすることができ、主車輪と副車輪の駆動力の差を小さくし、あるいは差を無くすことができる。また、移動搬送機構10は、モータを主車輪に内蔵しないので、モータへの電気供給等の配線が容易である。

【0037】
移動搬送機構10は、図3に示すように、第1及び第2の副車輪24,26が、ホイール回転中心軸22xの方向から見ると、仮想外形円21に沿って交互に配置されている。そのため、仮想外形円21の全周に沿って副車輪24,26の間の隙間を少なくし又は無くすことができ、円周方向に隣り合う副車輪24,26間の隙間に起因する振動を、主車輪20の回転角度に制約されることなく抑制することができる。

【0038】
なお、主車輪20の回転が1回転より小さい範囲に限定される場合や、主車輪20の一部の回転角度範囲での振動の抑制が必要な場合には、第1及び第2の副車輪24,26が交互に配置されない部分があっても構わない。この場合、仮想外形円21の一部分に沿って隣り合うように副車輪24,26を配置すれば、主車輪20の一部の回転角度範囲では、円周方向に隣り合う副車輪間の隙間に起因する振動を抑制することができる。

【0039】
第1及び第2の副車輪24,26が樽状の形状を有していると、ホイール回転中心軸22xの方向から見たとき、第1及び第2の副車輪24,26を仮想外形円21にできるだけ近付けることができるので、主車輪20が回転(ホイール部材22が回転)したときの移動搬送機構10の振動を抑制することが容易である。

【0040】
第1の副車輪24と第2の副車輪26との間に、差動機構30を配置すると、第1及び第2の副車輪24,26を回転駆動するための構成を簡素にすることができる。

【0041】
第1及び第2の副車輪24,26が、第1及び第2の副車輪24,26の外周面24a,26aに接する駆動ローラ25,27によって回転駆動されるように構成すると、第1及び第2の副車輪24,26の軸方向の端部から駆動力を伝達する場合に比べるとスペースに余裕ができるため、設計が容易になる。また、第1及び第2の副車輪24,26を軸方向に長くすることができるため、第1及び第2の副車輪24,26の中に大きい軸受を配置することも可能であり、耐荷重を高めることが容易である。

【0042】
<変形例1> 実施例1の変形例1について、図6を参照しながら説明する。図6は、実施例1の変形例1の移動搬送機構の要部構成図である。

【0043】
図6(a)に示すように、移動搬送機構10のホイール部材22に一端側が回転自在に支持され揺動自在である支持梁50の他端側に、第1及び第2の副車輪24,26の軸24k,26kが支持されている。第1及び第2の副車輪24,26は、軸24k,26kに対して回転自在に支持されている。支持梁50は、ばね等の弾性部材62によって付勢され、鎖線で示すように、床面に接していない副車輪24s,26sが、ホイール回転中心軸から離れる方向(図では下向き)に移動し、第1及び第2の副車輪24s,26sの外周面と第1及び第2の駆動ローラ25,27との接触が解除又は低減される。実線で示すように、床面に接している副車輪24,26は、ホイール回転中心軸に近づく方向(図では上向き)に移動して、第1及び第2の駆動ローラ25,27と接触し、回転駆動される。なお、弾性部材62は無くてもよい。

【0044】
図6(b)に示すように、移動搬送機構10のホイール部材22に設けられ、副車輪24,26の軸24k,26kを支持する支持箱66が、ホイール回転中心軸に近づいたり離れたりする方向(図では上下方向)に移動自在に支持されている。支持箱66は、ゴム等の弾性部材64を介して、ホイール回転中心軸から離れる方向(図では下向き)に付勢されている。第1及び第2の副車輪24,26は、軸24k,26kに対して回転自在に支持されている。鎖線で示すように、床面に接していない副車輪24t,26tは、ホイール回転中心軸から離れる方向(図では下方向)に移動し、駆動ローラ25、27との接触が解除又は低減される。実線で示すように、床面に接している副車輪24,26は、ホイール回転中心軸に近づく方向(図において上向き)に移動して、第1及び第2の駆動ローラ25,27と接触し、回転駆動される。なお、弾性部材64は無くてもよい。

【0045】
このように、床面に接していない第1及び第2の副車輪24s,26s;24t,26tを、ホイール回転中心軸を中心とする径方向の外側に移動させ、床面に接していない第1及び第2の副車輪24s,26s;24t,26tと差動機構の出力部材との間の回転伝達部材による結合を解除又は低減させる駆動低減機構をさらに備えると、移動搬送機構10の移動の際に床面に接していない第1及び第2の副車輪24s,26s;24t,26tを駆動する無駄をなくして、第1及び第2の副車輪24,26を効率よく駆動することができる。

【0046】
支持梁や支持箱、弾性部材の代わりに、副車輪を支持するホイール部材の一部を弾性変形しやすい構造にした駆動低減機構としてもよい。

【0047】
<まとめ> 以上に説明したように、第1の副車輪24と第2の副車輪26とを、ホイール回転中心軸22xの方向に離し、かつ、ホイール回転中心軸22xの方向から見ると、仮想外形円21の内側に、仮想外形円21に接近又は接するように配置すると、円周方向に隣り合う副車輪間の隙間に起因して主車輪が回転するときに発生する振動を抑制することができる。

【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。

【0049】
実施例1では第1の副車輪を3個、第2の副車輪を3個用いる場合をとりあげて説明したが、第1の副車輪の数や第2の副車輪の数は3以外でもよい。例えば、第1の副車輪は1個以上であればよく、第2の副車輪は1個以上であればよい。第1及び第2の副車輪は、実施例以外の方法で回転駆動しても構わない。例えば、第1及び第2の副車輪の軸端に回転伝達部材を結合して、第1及び第2の副車輪を回転させても構わない。

【0050】
回転伝達部材には歯車、ベルト、歯付きベルト、チェーン、ワイヤ、回転軸、軸継手などを用いることができる。

【0051】
回転伝達部材には、丸ベルトを用いてもよい。丸ベルトの循環経路を折り曲げることにより、差動機構と副車輪との間の伝達経路が簡単になる。丸ベルトは、通常は、断面が円形の無端ベルト部材であるが、断面が一定の大きさでなくてもよく、例えば、中心軸方向に断面の大きさが周期的に変化して表面に歯のような凹凸形状が形成されるものであってもよい。

【0052】
回転伝達部材には、副車輪に係合し、副車輪の外周面のうち接地面に沿って延在する表面を有する無端循環部材を用いてもよい。

【0053】
副車輪と駆動ローラとが接触する面に、凸部及び凹部を形成して噛み合わせるようにすれば、駆動ローラと副車輪との間ですべりが生じるのを防ぎ、副車輪が確実に回転駆動されるようにすることができる。

【0054】
副車輪の形状は樽状の形状以外でもよい。

【0055】
副車輪は、その回転中心軸の少なくとも一部を円弧状に保ったままその回転中心軸のまわりを変形しながら回転するものでもよい。例えば、弾性部材を用いたり、円筒形状の部品を蛇腹状に重ね合わせたりすることによって、その回転中心軸を円弧状に保ったままその回転中心軸のまわりを変形しながら回転するように構成してもよい。

【0056】
複数個の副車輪を用いる場合は、回転伝達部材を介して全ての副車輪が直接回転されるようにしてもよい。あるいは、回転伝達部材を介して直接は回転されない副車輪が、回転伝達部材を介して直接回転される副車輪と回転が伝わるように連結され、両方の副車輪が同時に回転されるようにしてもよい。

【0057】
第1の副車輪と第2の副車輪に加えて、他の副車輪を用いてもよい。例えば、ホイール回転中心軸方向に第1の副車輪と第2の副車輪から離れた(第1の仮想円周と第2の仮想円周から離れた)位置において、ホイール回転中心軸を中心とする第3の仮想円周に沿って延在する回転中心軸を中心に回転自在に、ホイール部材に支持された第3の副車輪を用いてもよい。この場合、第1乃至第3の副車輪は、ホイール回転中心軸の方向から見ると、ホイール回転中心軸を中心とする仮想外形円の内側に、仮想外形円に接近又は接するように配置され、かつ、仮想外形円に沿って第1の副車輪の隣に第2の副車輪が配置され、第2の副車輪の隣に第3の副車輪が配置されてもよい。さらに、仮想外形円に沿って第3の副車輪の隣に第1の副車輪が配置されて、仮想外形円に沿って第1の副車輪、第2の副車輪、第3の副車輪、第1の副車輪、第2の副車輪、・・・の順に配置されてもよい。同様に、第1乃至第3の副車輪に加えて、さらに他の副車輪を用いてもよい。第1及び第2の副車輪以外の他の副車輪は、回転駆動されるものでも、回転自在なもの(回転駆動されないもの)でもよい。他の副車輪が回転駆動される場合、第1及び第2の副車輪に回転を伝達する差動機構から他の副車輪に回転が伝達されても、第1及び第2の副車輪に回転を伝達する差動機構とは別系統から他の副車輪に回転が伝達されてもよい。

【0058】
出力かさ歯車の数は3以外でもよい。1つの出力かさ歯車が第1及び第2の副車輪の両方を駆動してもよいし、第1及び第2の副車輪を駆動する出力かさ歯車を別々にしてもよい。1つの出力かさ歯車が1つの副車輪を駆動してもよい。

【0059】
差動機構は第1の副車輪と第2の副車輪の間以外に配置してもよい。

【0060】
樽状の形状の副車輪は外周面の場所によって副車輪の回転中心軸からの半径が異なるため、副車輪の角速度が一定でも場所によって外周面上の速度が異なる。副車輪の回転による床面上の移動速度を、狙った速度にするためには、副車輪の外周面の床面に接している場所に応じて、差動機構の入力部材の角速度を調整すればよい。

【0061】
本発明の移動搬送機構は、副車輪が下方に突出して床面等に接する移動搬送装置に限らず、上下を反転した構成で用いることもできる。例えば、上方に突出した副車輪で被搬送物を下から支え、主車輪及び副車輪の回転の組み合わせによって、被搬送物を所望の方向に移動させたり旋回させたりする移動搬送装置にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、前進・後進のみならず、横方向、斜め方向の移動が求められる機器、例えば、車椅子、高齢者用移動装置などの福祉機器や、工場や倉庫で使用される搬送台車、搬送車、フォークリフト、移動車両などの移動搬送機器などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
2 床面(接触面)
10 移動搬送機構
12 ケーシング
20 主車輪
21 仮想外形円
22 ホイール部材
22p 仮想円周(第1の仮想円周)
22q 仮想円周(第2の仮想円周)
22x ホイール回転中心軸
24 第1の副車輪
24x 回転中心軸
25 第1の駆動ローラ(回転伝達部材)
26 第2の副車輪
26x 回転中心軸
27 第2の駆動ローラ(回転伝達部材)
28 副車輪
28x 回転中心軸
30 差動機構
32 入力かさ歯車(差動機構の第1の入力部材)
33 第1の回転軸
34 入力かさ歯車(差動機構の第2の入力部材)
35 第2の回転軸
36 出力かさ歯車(差動機構の出力部材)
37 出力かさ歯車軸(差動機構の出力部材)
38 かさ歯車(回転伝達部材)
39 軸受(回転支持部材)
44 かさ歯車(回転伝達部材)
45 第1の駆動ローラ軸(回転伝達部材)
46 かさ歯車(回転伝達部材)
47 第2の駆動ローラ軸(回転伝達部材)
48 かさ歯車(回転伝達部材)
50 支持梁(駆動低減機構)
52 第1のモータ
54 第2のモータ
62,64 弾性部材(駆動低減機構)
66 支持箱(駆動低減機構)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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