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明細書 :染色方法、染色剤、及び染色キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-162986 (P2018-162986A)
公開日 平成30年10月18日(2018.10.18)
発明の名称または考案の名称 染色方法、染色剤、及び染色キット
国際特許分類 G01N  33/48        (2006.01)
G01N   1/30        (2006.01)
C09B  57/02        (2006.01)
C09B  57/00        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI G01N 33/48 P
G01N 1/30
C09B 57/02 Z
C09B 57/00 Z
G01N 21/64 Z
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 30
出願番号 特願2017-059098 (P2017-059098)
出願日 平成29年3月24日(2017.3.24)
発明者または考案者 【氏名】稲垣 宏
【氏名】高瀬 弘嗣
出願人 【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100152272、【弁理士】、【氏名又は名称】川越 雄一郎
審査請求 未請求
テーマコード 2G043
2G045
2G052
Fターム 2G043AA01
2G043AA03
2G043BA14
2G043CA05
2G043EA01
2G043EA13
2G043FA01
2G043FA02
2G045AA25
2G045CB01
2G045FB07
2G052AA33
2G052AD14
2G052AD34
2G052AD54
2G052FA09
2G052GA32
要約 【課題】抗体よりも容易に細胞内に浸透させることができる低分子化合物を用いて、細胞又は組織に含まれるアルデヒド基を有する物質を染色するとともに、同一の細胞又は組織について任意にHE染色等の公知の染色を行うことが可能な染色方法を提供する。
【解決手段】[a]特定の化学式で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含む染色液によって、細胞又は組織を染色し、前記細胞又は組織に含まれるアルデヒド基を有する物質を染色する染色工程Xを有する、染色方法。[b]前記細胞又は組織を予め酸化処理することによって、前記細胞又は組織に含まれる多糖類が有する水酸基の少なくとも一部をアルデヒド基に変化させる酸化処理工程を有する前記染色方法。[c]前記細胞又は組織に含まれる塩基性物質を染色する染色工程Hを有する前記染色方法。[d]前記細胞又は組織に含まれる酸性物質を染色する染色工程Eをさらに有する前記染色方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含む染色液によって、細胞又は組織を染色し、前記細胞又は組織に含まれるアルデヒド基を有する物質を染色する染色工程Xを有する、染色方法。
【化1】
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[式(1)中、6個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~6の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(2)中、10個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~10の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(3)中、8個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~8の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(4)中、ジアミノベンゼン構造の3,4,5,6位の4個の水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく、前記3,4位の水素原子が除かれて炭素数4~7のシクロアルカンQが縮合していてもよく、前記シクロアルカンQを構成する1つ以上のメチレン基は、酸素同士が隣接する場合を除いて、(-O-)基又は(-NH-)基によって置換されていてもよく;
式(5)中、ベンゾフラザンが有する3個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~3の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよい。]
【請求項2】
前記細胞又は組織を予め酸化処理することによって、前記細胞又は組織に含まれる多糖類が有する水酸基の少なくとも一部をアルデヒド基に変化させる酸化処理工程を有する、請求項1に記載の染色方法。
【請求項3】
前記染色工程Xの前又は後に、前記細胞又は組織に含まれる塩基性物質を染色する染色工程Hを有する、請求項1又は2に記載の染色方法。
【請求項4】
前記染色工程Hにおいて、ヘマトキシリンを含む染色液を用いて前記塩基性物質を染色する、請求項3に記載の染色方法。
【請求項5】
前記細胞又は組織に対して、前記染色工程Xと、
前記細胞又は組織に含まれる塩基性物質を染色する染色工程Hと、を同時に行う、請求項1又は2に記載の染色方法。
【請求項6】
前記式(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物及びヘマトキシリンを含む染色液を用いる、請求項5に記載の染色方法。
【請求項7】
前記染色工程Xと前記染色工程Hを経た前記細胞又は組織に対して、前記細胞又は組織に含まれる酸性物質を染色する染色工程Eをさらに有する、請求項3~6の何れか一項に記載の染色方法。
【請求項8】
前記染色工程Eにおいて、エオジンを含む染色液を用いて前記酸性物質を染色する、請求項7に記載の染色方法。
【請求項9】
同一の組織切片に対して、前記染色工程Xと、HE染色を行う工程と、を有する請求項1に記載の染色方法。
【請求項10】
同一の細胞検体に対して、前記染色工程Xと、パパニコロウ染色を行う工程と、を有する請求項1に記載の染色方法。
【請求項11】
同一の血液標本に対して、前記染色工程Xと、ギムザ染色を行う工程と、を有する請求項1に記載の染色方法。
【請求項12】
下記の式(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含む、染色剤。
【化2】
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[式(1)中、6個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~6の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(2)中、10個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~10の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(3)中、8個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~8の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(4)中、ジアミノベンゼン構造の3,4,5,6位の4個の水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく、前記3,4位の水素原子が除かれて炭素数4~7のシクロアルカンQが縮合していてもよく、前記シクロアルカンQを構成する1つ以上のメチレン基は、酸素同士が隣接する場合を除いて、(-O-)基又は(-NH-)基によって置換されていてもよく;
式(5)中、ベンゾフラザンが有する3個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~3の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよい。]
【請求項13】
さらにヘマトキシリンが含まれている、請求項12に記載の染色剤。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の染色剤を有する、染色キット。
【請求項15】
前記染色剤とヘマトキシリンを含む染色剤とを有する、請求項14に記載の染色キット。
【請求項16】
エオジンを含む染色剤をさらに有する、請求項14又は15に記載の染色キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、染色方法、染色剤、及び染色キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組織学や病理学等の基礎研究および病理診断等の医療現場において、組織切片を光学顕微鏡で観察する際にヘマトキシリン-エオジン染色(HE染色)が行われている。ヘマトキシリンは塩基性の細胞核を青紫色に染色する性質があり、エオジンは酸性の細胞質構成成分、内分泌顆粒などを赤桃色に染色する性質がある。これらの性質を利用してHE染色された組織サンプルから、細胞の形態と病変に関する情報が得られる。
【0003】
また、組織切片について、特定の細胞構成成分(抗原)に結合可能な抗体を用いた免疫組織化学(IHC)による免疫染色が行われることがある。
特許文献1には、HE染色と免疫染色とを同一の組織切片について行うことにより、組織の形態に関する情報と、特定の細胞構成成分に関する情報とを得る組織染色方法が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2013/035688号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
免疫染色法で抗原に結合させる抗体は、抗原の大きさに比べて巨大なタンパク質分子であり、細胞膜を通過して細胞内の抗原に到達し難い問題がある。このため、組織切片をアルコールで処理することによって細胞膜を破壊し、抗体を細胞内へ侵入させる処理が行われる。しかしながら、細胞膜の破壊に伴う組織の形態変化の懸念があり、HE染色と免疫染色とを両立させることが難しい一面もある。
【0006】
本発明は、抗体よりも容易に細胞内に浸透させることができる低分子化合物を用いて、細胞又は組織に含まれるアルデヒド基を有する物質を染色するとともに、同一の細胞又は組織について任意にHE染色等の公知の染色を行うことが可能な染色方法を提供する。また、その染色方法に用いられる染色剤及び染色キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 下記の式(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含む染色液によって、細胞又は組織を染色し、前記細胞又は組織に含まれるアルデヒド基を有する物質を染色する染色工程Xを有する、染色方法。
【0008】
【化1】
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[式(1)中、6個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~6の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(2)中、10個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~10の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(3)中、8個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~8の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(4)中、ジアミノベンゼン構造の3,4,5,6位の4個の水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく、前記3,4位の水素原子が除かれて炭素数4~7のシクロアルカンQが縮合していてもよく、前記シクロアルカンQを構成する1つ以上のメチレン基は、酸素同士が隣接する場合を除いて、(-O-)基又は(-NH-)基によって置換されていてもよく;
式(5)中、ベンゾフラザンが有する3個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~3の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよい。]
[2] 前記細胞又は組織を予め酸化処理することによって、前記細胞又は組織に含まれる多糖類が有する水酸基の少なくとも一部をアルデヒド基に変化させる酸化処理工程を有する、[1]に記載の染色方法。
[3] 前記染色工程Xの前又は後に、前記細胞又は組織に含まれる塩基性物質を染色する染色工程Hを有する、[1]又は[2]に記載の染色方法。
[4] 前記染色工程Hにおいて、ヘマトキシリンを含む染色液を用いて前記塩基性物質を染色する、[3]に記載の染色方法。
[5] 前記細胞又は組織に対して、前記染色工程Xと、前記細胞又は組織に含まれる塩基性物質を染色する染色工程Hと、を同時に行う、[1]又は[2]に記載の染色方法。
[6] 前記式(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物及びヘマトキシリンを含む染色液を用いる、[5]に記載の染色方法。
[7] 前記染色工程Xと前記染色工程Hを経た前記細胞又は組織に対して、前記細胞又は組織に含まれる酸性物質を染色する染色工程Eをさらに有する、[3]~[6]の何れか一項に記載の染色方法。
[8] 前記染色工程Eにおいて、エオジンを含む染色液を用いて前記酸性物質を染色する、[7]に記載の染色方法。
[9] 同一の組織切片に対して、前記染色工程Xと、HE染色を行う工程と、を有する[1]に記載の染色方法。
[10] 同一の細胞検体に対して、前記染色工程Xと、パパニコロウ染色を行う工程と、を有する[1]に記載の染色方法。
[11] 同一の血液標本に対して、前記染色工程Xと、ギムザ染色を行う工程と、を有する[1]に記載の染色方法。
[12] 下記の式(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含む、染色剤。
【0009】
【化2】
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[式(1)中、6個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~6の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(2)中、10個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~10の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(3)中、8個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~8の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(4)中、ジアミノベンゼン構造の3,4,5,6位の4個の水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく、前記3,4位の水素原子が除かれて炭素数4~7のシクロアルカンQが縮合していてもよく、前記シクロアルカンQを構成する1つ以上のメチレン基は、酸素同士が隣接する場合を除いて、(-O-)基又は(-NH-)基によって置換されていてもよく;
式(5)中、ベンゾフラザンが有する3個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~3の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよい。]
[13] さらにヘマトキシリンが含まれている、[12]に記載の染色剤。
[14] [12]又は[13]に記載の染色剤を有する、染色キット。
[15] 前記染色剤とヘマトキシリンを含む染色剤とを有する、[14]に記載の染色キット。
[16] エオジンを含む染色剤をさらに有する、[14]又は[15]に記載の染色キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明の染色方法によれば、染色対象の細胞又は組織に含まれるアルデヒド基を有する物質に対して、前記式(1)~(5)で表される化合物を結合させ、前記化合物に由来する青色の蛍光を観測することにより、前記細胞又は組織内における前記物質に関する情報を得ることができる。また、本発明の染色方法と、HE染色、パパニコロウ染色、ギムザ染色等の従来の染色方法との両方を、同一の細胞又は同一の組織に対して実施することができる。これにより、例えば、同一の組織切片から、HE染色による組織形態に関する情報と、前記青色の蛍光観測による前記物質に関する情報とを得ることができる。つまり、従来は異なる2枚の組織切片について個別に行われていた2種類の染色を、1枚の同一組織切片について2種類の染色を同時に行うことができるので、病理診断をより迅速に且つより正確に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の染色方法における処理及び工程の順序の一例を示したフローチャートである。
【図2】実施例1で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図3】実施例2で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図4】実施例3で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図5】実施例4で染色した組織切片を光学顕微鏡で観察した透過画像である。
【図6】実施例4で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図7】実施例4で染色した組織切片の蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図8】実施例5で染色した組織切片を光学顕微鏡で観察した透過画像である。
【図9】実施例5で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図10】実施例6で染色した組織切片を光学顕微鏡で観察した透過画像である。
【図11】実施例6で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図12】実施例7で染色した組織切片を光学顕微鏡で観察した透過画像である。
【図13】実施例7で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図14】実施例8で染色した組織切片を光学顕微鏡で観察した透過画像である。
【図15】実施例8で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図16】実施例9で染色した組織切片を光学顕微鏡で観察した透過画像である。
【図17】実施例9で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図18】実施例10で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図19】実施例10で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図20】実施例11で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図21】実施例11で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図22】実施例12で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図23】実施例12で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図24】実施例13で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図25】実施例13で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図26】実施例14で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図27】実施例14で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図28】実施例15で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図29】実施例15で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図30】実施例16で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図31】実施例16で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図32】実施例17で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図33】実施例17で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図34】実施例18で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図35】実施例19で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図36】実施例19で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図37】実施例20で染色した組織切片を顕微鏡で観察した透過画像である。
【図38】実施例20で染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【図39】比較実験において、PAS染色した組織切片を光学顕微鏡で観察した透過画像である。
【図40】比較実験において、CHO染色した組織切片を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《染色対象》
本発明の染色方法が染色対象とする細胞又は組織は、生体由来の細胞又は組織であれば特に限定されず、ヒトを含めた動物に由来する細胞又は組織を染色する方法として好適である。前記細胞又は組織の種類や形態は特に限定されず、生体から分離された生きた状態の細胞又は組織であってもよいし、生体から分離された後で固定、凍結、パラフィン包埋、切片化等の従来の染色方法における公知の前処理が施された細胞又は組織であってもよい。

【0013】
《染色方法》
本発明の第一態様は、下記の式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物及び式(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含む染色液によって、細胞又は組織を染色し、前記細胞又は組織に含まれるアルデヒド基を有する物質を染色する染色工程Xを有する、染色方法である。

【0014】
【化3】
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[式(1)中、6個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~6の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(2)中、10個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~10の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(3)中、8個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~8の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく;
式(4)中、ジアミノベンゼン構造の3,4,5,6位の4個の水素原子は任意の置換基で置換されていてもよく、前記3,4位の水素原子が除かれて炭素数4~7のシクロアルカンQが縮合していてもよく、前記シクロアルカンQを構成するメチレン基の1つ以上が、酸素同士が隣接する場合を除いて、(-O-)基又は(-NH-)基によって置換されていてもよく;
式(5)中、ベンゾフラザンが有する3個の水素原子のうち少なくとも1つはRで置換されており、Rはアミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基であり、nは1~3の整数であり、Rで置換されていない水素原子は任意の置換基で置換されていてもよい。]

【0015】
前記式(1)~(5)中、環構造に結合する水素原子は任意の置換基によって置換されていてもよい。この任意の置換基としては、例えば、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖の脂肪族不飽和炭化水素基、スルホン酸基(-SOH)、カルボン酸基(-COOH)、アセチル基(-COCH)、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。さらに、前記任意の置換基として、前記脂肪族飽和炭化水素基又は前記脂肪族不飽和炭化水素基を構成する1つ以上のメチレン基が、酸素原子同士が結合する場合を除いて、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-O-C(=O)-、又は-NH-によって置換された置換基も挙げられる。
前記任意の置換基が負電荷を有する酸基である場合、その酸基はナトリウム塩、カリウム塩等の塩を形成していてもよい。前記任意の置換基が水素原子を有する場合、その水素原子はハロゲン原子によって置換されていてもよい。

【0016】
前記式(1)~(5)中、環構造に結合する水素原子を置換する前記R(官能基R)は、アミノ基(-NH)又はヒドラジン構造(-NH-NH)を末端に有する。
官能基Rは炭素数1~10の2価の有機基を含んでいてもよい。
官能基Rとしては、例えば、-(CH-NH、-(CH-NH-NH、-NH-(CH-NH、等が挙げられる。これらの官能基Rにおいて、rは0~10の整数であり、1つ以上のメチレン基が含まれる場合、各メチレン基は、酸素同士が結合する場合を除いて、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-O-C(=O)-、-NH-、又は-S-によって置換されていてもよい。
前記式(1)~(5)に複数の官能基Rが存在する場合、それらの官能基Rは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。

【0017】
式(4)のジアミノベンゼン構造に縮合していてもよい前記シクロアルカンQとしては、1つ以上のメチレン基が酸素に置換されていてもよい、炭素数5~6のシクロアルカンが好ましい。このような縮合環を有する構造の具体例として、1,2-メチレンジオキシベンゼン構造が挙げられる。

【0018】
前記式(1)~(5)で表される化合物(以下、化合物(1)~(5)と記す。)は、アミノ基又はヒドラジン構造を末端に有する官能基Rを1つ以上備えている。このため、化合物(1)~(5)から選ばれる何れか1種以上の化合物を含む染色液を染色対象の細胞又は組織に接触させて染色する(以下、CHO染色と記す。)ことにより、前記細胞又は前記組織に含まれるアルデヒド基(-CHO)を有する物質に対して、化合物(1)~(5)の官能基Rを結合させることができる。

【0019】
CHO染色によって化合物(1)~(5)が結合する前記物質は、本来的にはアルデヒド基を有さずとも、細胞又は組織を染色前に前処理することによってアルデヒド基が形成された物質であってもよい。例えば、組織切片中に存在し、多糖類を含む粘液を生産する細胞(腺細胞)をCHO染色する場合、組織切片を過ヨウ素酸で処理し、組織切片中に含まれる多糖類を酸化することにより、多糖類分子中の水酸基をアルデヒド基に酸化する前処理が挙げられる。この前処理を説明する反応式を下記に示す。下記の反応式中、R及びRは多糖類の分子鎖の一部を表す。

【0020】
【化4】
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【0021】
前記多糖類としては、酸化剤によって酸化されてアルデヒド基を生成する多糖類であれば特に限定されず、例えば、グルコースを構成単位に有する多糖類が挙げられる。具体的には、例えば、グリコーゲン、粘液たんぱく、糖蛋白、糖脂質等が挙げられる。

【0022】
CHO染色によって前記細胞又は前記組織に含まれるアルデヒド基(-CHO)を有する物質と、化合物(1)~(5)の何れかをシッフ反応により結合させた後、形成された結合(シッフ塩基)を安定化する目的で、還元的アミノ化試薬を用いることができる。還元的アミノ化試薬でシッフ塩基を安定化することにより、化合物(1)~(5)に由来する蛍光の発色を向上させることができる。
還元的アミノ化試薬としては、例えば、2-ピコリンボラン等が挙げられる。なかでも、2-ピコリンボランは溶媒の種類を問わずに使用でき、安定な化合物であるため好ましい。還元的アミノ化試薬はCHO染色で用いる化合物(1)~(5)の何れかを含む染色液に適当な濃度で予め添加しておくことができる。

【0023】
CHO染色で用いる化合物のうち、化合物(1)~(3)及び化合物(5)は、それらの骨格構造自体が蛍光性を有する。化合物(4)は染色対象が有する物質のアルデヒド基と反応して環構造を形成することによって蛍光性を獲得する(後述の反応式を参照)。したがって、アルデヒド基を有する前記物質に結合した化合物(1)~(5)は、光で励起された後に蛍光を発する。この蛍光を蛍光顕微鏡等で観測することにより、CHO染色した細胞又は組織におけるアルデヒド基を有する前記物質の分布を調べることができる。

【0024】
下記の反応式は、化合物(4)の一例がアルデヒド基を有する物質と反応することにより、蛍光性の環構造を形成する様子を示している。下記の反応式中、Rは前記物質を構成する有機基を表す。

【0025】
【化5】
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【0026】
化合物(1)~(5)が前記物質と結合した後に発する蛍光波長は、発光時の化合物の骨格構造に概ね依存し、365nm~405nm付近の波長で励起され、可視領域の波長の蛍光として観測される。これらの蛍光波長は、既存のヘマトキシリン-エオジン染色(HE染色)、パパニコロウ染色、及びギムザ染色で使用される染色物質が励起波長(365nm~405nm)で生じる可視領域波長の蛍光と重ならない。したがって、同一の染色対象について、既存の染色とCHO染色の両方を行うことができる。このことは病理検査の分野において極めて大きなメリットとなる。例えば、組織切片についてHE染色とCHO染色の両方を行うことにより、その組織切片をHE染色して着目した部位について、CHO染色で染まる物質の有無(例えば、多糖類を含む腺細胞の有無)を調べることができる。従来の病理検査においては、第一の組織切片についてHE染色を行い、精査すべき箇所が観察された場合には、第一の組織切片に隣接する第二の組織切片をPAS染色で染めて、その精査すべき箇所における多糖類の有無を調べる方法が行われている。この従来方法であると、第一の組織切片と第二の組織切片とは厳密には物理的な位置が異なる箇所を観察しているため、第一の組織切片に含まれる物質又は細胞が第二の組織切片には含まれていない、という事態が現実には起こりうる。このため、正確な病理診断を行えない事態が少なからず生じていた。また、2枚の組織切片について2種類の染色を個別に行うため、染色作業の時間やコストをより多く必要とした。しかしながら、本発明が提案するように、同一の組織切片についてHE染色、パパニコロウ染色及びギムザ染色等から選ばれる既存の染色と、CHO染色の両方を行うことによって、病理診断をより正確且つ迅速に行うことができる。さらに、従来の免疫染色法で用いられる巨大な抗体よりも細胞/又は組織に対する浸透性が高い低分子の化合物(1)~(5)を用いているので、より高感度に目的の物質を染色することができる。

【0027】
CHO染色で用いる化合物(1)~(5)は、前記物質に結合した後又は前に紫外線領域(365nm~405nm付近)の波長で励起され、可視領域の波長の蛍光を発する。この蛍光は紫外線励起によって生じるので、可視光によって生じるHE染色等の既存の染色で用いられる染色物質の自家蛍光(赤色~緑色)と区別可能であり、蛍光顕微鏡による観察に適している。また、通常の光学顕微鏡で可視光域を観察する場合にはほぼ無色であるので、HE染色等の既存の染色後の光学顕微鏡観察を妨げない。したがって、化合物(1)~(5)によるCHO染色は、既存の染色とCHO染色の両方を同一の染色対象に対して行う場合に特に有用である。さらに、化合物(1)~(5)は、ヘマトキシリンを含む染色液に混合して使用できること、従来のHE染色と同時にほぼ同じ手順でCHO染色を並行して行えること、CHO染色後に硬化剤で封入した後の退色が少ないのでCHO染色した標本を半永久的に保存できること、等の優れた利点を有する。
以下に、化合物(1)~(5)の好適な具体例を示す。

【0028】
【化6】
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【0029】
【化7】
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【0030】
【化8】
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【0031】
(染色工程X)
染色工程Xの具体的な方法としては、例えば、化合物(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる何れか1種以上の化合物を任意の濃度で含む染色液に、細胞又は組織を室温で15~30分程度浸漬させた後、取り出し、過剰な化合物を水洗する方法が挙げられる。
前記染色液に含まれる前記1種以上の化合物の合計の濃度としては、例えば0.01g/L~0.2g/Lが挙げられる。
前記1種以上の化合物が有するアミノ基又はヒドラジン構造が、前記細胞又は組織に含まれるアルデヒド基に反応してシッフ塩基を形成することが容易になる観点から、前記染色液のpHは酸性であることが好ましい。前記染色液のpHを酸性にするためは、例えば、前記染色液に塩酸を濃度0.02mol/L程度で添加することが好ましい。
さらに、シッフ塩基の安定化のため、還元的アミノ化試薬を添加することが望ましく、例えば2-ピコリンボランを濃度50mg/L程度となるように添加することが挙げられる。
前記染色液には、CHO染色を阻害しない範囲において、その他の任意成分が含まれてもよい。

【0032】
(酸化処理工程)
本発明の第一態様の染色方法は、染色工程Xの前に、染色対象である細胞又は組織を予め酸化処理することによって、前記細胞又は組織に含まれる多糖類が有する水酸基の少なくとも一部をアルデヒド基に変化させる酸化処理工程を有していてもよい。酸化処理工程は、染色工程Xに含まれるサブ工程と見なしてもよいし、染色工程Xとは独立した工程と見なしてもよい。

【0033】
前記酸化処理工程の方法としては、例えば、多糖類を染色する従来のPAS染色で行われる公知の酸化処理方法が適用できる。その具体的な方法としては、例えば、公知の酸化剤に染色対象の細胞又は組織を室温で15~30分程度浸漬した後、軽く水洗する方法が挙げられる。酸化剤の具体例は後述する。

【0034】
(染色工程H)
本発明の第一態様の染色方法は、染色工程Xの前又は後に、前記細胞又は組織に含まれる塩基性物質を染色する染色工程Hを有していてもよい。
同一の細胞又は組織試料に対して、染色工程Xと染色工程Hの両方を行うことができる。
前記塩基性物質は、前記細胞又は組織中で負(-)に帯電している部位、例えばリン酸基、カルボキシル基を有する物質であり、例えば、細胞核が挙げられる。
前記塩基性物質を染色する方法としては、従来のヘマトキシリン(Hematoxylin)を色素(色ラック)として染色するヘマトキシリン染色(H染色)が好ましい。H染色はヘマトキシリンを含む染色液を用いて従来方法と同様に行うことができる。
また、H染色に代えて、メチルグリーンやケルンエヒトロートを用いた核染色によって前記塩基性物質を染色してもよい。メチルグリーン及びケルンエヒトロートもヘマトキシリンと同様に青色の蛍光を発生せず、CHO染色を妨げることがない。

【0035】
本発明の第一態様の染色方法において、染色工程Xと染色工程Hを同時に行ってもよい。例えば、CHO染色とH染色を同時に行うことができる。CHO染色とH染色を同時に行う方法としては、CHO染色の染色液とH染色の染色液とを混合した混合染色液を細胞又は組織に接触させて同時に染色する方法が挙げられる。具体的には、例えば、化合物(1)~(5)で表される化合物の群から選ばれる何れか1種以上の化合物及びヘマトキシリンをそれぞれ任意の濃度で含む混合染色液に細胞又は組織を浸漬させて染色する方法が挙げられる。

【0036】
(染色工程E)
本発明の第一態様の染色方法は、染色工程Xの前又は後に、或いは、染色工程Hの前又は後に、前記細胞又は組織に含まれる酸性物質を染色する染色工程Eをさらに有していてもよい。
同一の細胞又は組織試料に対して、染色工程X及び染色工程Hの少なくとも一方と、染色工程Eとを行うことができる。
前記酸性物質は、前記細胞又は組織中で正(+)に帯電している部位を有する物質であり、例えば、細胞質の構成成分が挙げられる。
前記酸性物質を染色する方法は、例えば、従来のエオジン(Eosin)を色素(カラーアニオン)として、前記細胞又は組織の陽性荷電部に結合して赤色に染色するエオジン染色(E染色)が好ましい。E染色は水溶性エオジンYを含む染色液を用いて従来方法と同様に行うことができる。

【0037】
従来のヘマトキシリン-エオジン染色(HE染色)は、染色工程Hの後に染色工程Eを行うので、本発明の第一態様の染色方法においても、染色工程Hの後に染色工程Eを行う順序が好ましい。この順序において、染色工程X(例えばCHO染色)は、染色工程H(例えばH染色)の前に又は後に、或いは染色工程E(例えばE染色)の後に行うことができる。染色工程X、染色工程H、染色工程Eを行う順序の例を図1のフローチャートに示す。

【0038】
(封入工程)
上述の各染色工程の後、アルコール濃度が段階的に高められたアルコール溶液に前記細胞又は組織を浸して脱水し、キシロールによる透徹処理を行い、封入することができる。
封入された前記細胞又は組織を蛍光顕微鏡で観察すると、前記細胞又は組織を構成するアルデヒド基に結合した化合物(1)~(5)に由来する青色の蛍光を測定することができる。例えば、酸化された多糖類を含む腺細胞が青色の蛍光で染まった様子が観察される。
また、封入された前記細胞又は組織を光学顕微鏡で観察すると、染色工程H、染色工程Eで用いた色素(染色剤)に由来する色が観察される。例えば、H染色によって青色に染まった細胞核、E染色によって赤色に染まった細胞質が観察される。

【0039】
<パパニコロウ染色、ギムザ染色との併用>
後述する実施例で示すように、本発明の第一態様の染色方法において、同一の染色対象に対して、従来のパパニコロウ染色又はギムザ染色を、染色工程Xの前又は後に行うことができる。パパニコロウ染色とCHO染色、及びギムザ染色とCHO染色は、それぞれ互いに干渉せずに、各染色を単独で行う場合と同様の良好な染色結果を示す。

【0040】
《染色剤》
本発明の第二態様は、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される化合物及び前記式(5)で表される化合物の群から選ばれる1種以上の化合物(1)~(5)を含む染色剤である。
前記染色剤の形態は、化合物(1)~(5)を含む粉末又は錠剤等の固体であってもよいし、化合物(1)~(5)が任意の溶媒に任意の濃度で溶解又は分散された液体であってもよい。前記溶媒は化合物(1)~(5)を溶解又は分散可能なものであれば特に限定されず、例えば、精製水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の第1級アルコール、アセトニトリル、DMSO、ヘキサン等のその他の有機溶媒等が挙げられる。
第二態様の染色剤には、さらにヘマトキシリンが含まれていてもよい。

【0041】
《染色キット》
本発明の第三態様は、第二態様の染色剤を有する染色キットである。
前記染色キットは、染色前の組織切片を予め酸化処理する酸化剤を有していてもよい。
前記酸化剤としては、例えば、多糖類を酸化してアルデヒド基を生成する化合物Oxが挙げられる。具体的な化合物Oxとしては、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム等の化合物が挙げられる。前記酸化剤の形態は、前記化合物Oxを含む粉末又は錠剤等の固体であってもよいし、前記化合物Oxが任意の溶媒に任意の濃度で溶解又は分散された液体であってもよい。
前記染色キットの使用前において、第二態様の染色剤と前記酸化剤とは個別の容器内に入れて保管されることが好ましい。

【0042】
前記染色キットは、ヘマトキシリンを含む染色剤Hを他の染色剤とは別に有していてもよい。染色剤Hの形態は、ヘマトキシリンを含む粉末又は錠剤等の固体であってもよいし、ヘマトキシリンが任意の溶媒に任意の濃度で溶解又は分散された液体であってもよい。
前記染色キットにおいて、ヘマトキシリンは第二態様の染色剤の一成分として第二態様の染色剤に任意の濃度で含まれていてもよい。

【0043】
前記染色キットは、エオジンを含む染色剤Eを有していてもよい。染色剤Eに含まれるエオジンの形態は、エオジンを含む粉末又は錠剤等の固体であってもよいし、エオジンが任意の溶媒に任意の濃度で溶解又は分散された液体であってもよい。
前記染色キットの使用前において、第二態様の染色剤及び染色剤Hと、染色剤Eとは個別の容器内に入れて保管されることが好ましい。

【0044】
前記染色キットには、細胞又は組織切片を染色するために使用される市販の染色キットに含まれる、任意のその他の薬剤、容器、取り扱い説明書等が同梱されていてもよい。
【実施例】
【0045】
[試薬の調製]
<CHO染色剤(1)>
50%エチルアルコール(10ml)に、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)(0.01g)と1mol/L塩酸(100μl)を溶解した。得られた溶液(約10ml)に対して、エチルアルコール(10ml)に2-ピコリンボラン(0.05g)を溶解した溶液(0.5ml)を添加し、CHO染色剤(1)を調製した。
<CHO染色剤(2)>
50%エチルアルコール(10ml)に、5-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩水和物(SAN)(0.005g)と1mol/L塩酸(100μl)を溶解した。得られた溶液(約10ml)に対して、エチルアルコール(10ml)に2-ピコリンボラン(0.05g)を溶解した溶液(0.5ml)を添加し、CHO染色剤(2)を調製した。
<CHO染色剤(3)>
50%エチルアルコール(10ml)に、1,2-ジアミノ-4,5-メチレンジオキシベンゼン,二塩酸塩(MDB)(0.0025g)と1mol/L塩酸(100μl)を溶解した。得られた溶液(約10ml)に対して、エチルアルコール(10ml)に2-ピコリンボラン(0.05g)を溶解した溶液(0.5ml)を添加し、CHO染色剤(3)を調製した。
【実施例】
【0046】
<CHO染色剤(4)>
50%エチルアルコール(10ml)に、3-アミノ-クマリン(100mg/ml、DMSO溶液)(10μl)と、エチルアルコール(10ml)に2-ピコリンボラン(0.05g)を溶解した溶液(1ml)を添加し、RO水を加えて50mlにメスアップした。得られた溶液(50ml)に1mol/L塩酸(100μl)を添加し、CHO染色剤(4)を調製した。
<CHO染色剤(5)>
3-アミノ-クマリンに代えて、1-アミノ-ピレン(100mg/ml、DMSO溶液)(10μl)を用いた以外は、CHO染色剤(4)と同様にして、CHO染色剤(5)を調製した。
<CHO染色剤(6)>
3-アミノ-クマリンに代えて、4-(2-アミノエチルアミノ)-7-(N,N—ジメチルスルファモイル)ベンゾフラザン(100mg/ml、DMSO溶液)(10μl)を用いた以外は、CHO染色剤(4)と同様にして、CHO染色剤(6)を調製した。
<CHO染色剤(7)>
3-アミノ-クマリンに代えて、モノ-7-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸カリウム一水和物(100mg/ml、水溶液)(10μl)を用いた以外は、CHO染色剤(4)と同様にして、CHO染色剤(7)を調製した。
<CHO染色剤(8)>
3-アミノ-クマリンに代えて、7-アミノ-4-(トリフルオロメチル)クマリン(100mg/ml、水溶液)(10μl)を用いた以外は、CHO染色剤(8)と同様にして、CHO染色剤(8)を調製した。
【実施例】
【0047】
<CHO染色剤(9)>
50%エチルアルコール(10ml)に、4-クロロ-1,2-フェニレンジアミン(100mg/ml、DMSO溶液)(10μl)を添加し、RO水を加えて50mlにメスアップした。得られた溶液(50ml)に1mol/L塩酸(100μl)を添加し、CHO染色剤(9)を調製した。
<CHO染色剤(10)>
3-アミノ-クマリンに代えて、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸二ナトリウム塩(100mg/ml、水溶液)(10μl)を用いた以外は、CHO染色剤(4)と同様にして、CHO染色剤(10)を調製した。
<CHO染色剤(11)>
3-アミノ-クマリンに代えて、8-アミノピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩(10mg/ml、DMSO溶液)(10μl)を用いた以外は、CHO染色剤(4)と同様にして、CHO染色剤(11)を調製した。
<CHO染色剤(12)>
エチルアルコール:酢酸=9:1(体積比)の混合液(50ml)に、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸二ナトリウム塩(100mg/ml、DMSO溶液)(10μl)を添加し、さらにエチルアルコール(10ml)に2-ピコリンボラン(0.05g)を溶解した溶液(1ml)を添加し、CHO染色剤(12)を調製した。
<CHO染色剤(13)>
エチルアルコール:酢酸=9:1(体積比)の混合液(50ml)に、8-アミノピレン-1,3,6-トリスルホンサン三ナトリウム塩(10mg/ml、DMSO溶液)(10μl)を添加し、さらにエチルアルコール(10ml)に2-ピコリンボラン(0.05g)を溶解した溶液(1ml)を添加し、CHO染色剤(13)を調製した。
<CHO染色剤(14)>
50%エチルアルコール(10ml)に、7‐アミノ‐4‐メチルクマリン‐3‐酢酸(0.007g)を添加し、RO水を加えて50mlにメスアップした。得られた溶液(50ml)に、エチルアルコール(10ml)に2-ピコリンボラン(0.05g)を溶解した溶液(1ml)と、1mol/L塩酸(100μl)を添加し、CHO染色剤(14)を調製した。
【実施例】
【0048】
<マイヤーのヘマトキシリン溶液>
精製水(300ml)に硫酸カリウムアルミニウム(50g)を溶解した溶液Aを得た。
精製水(600ml)にヘマトキシリン(3g)を溶解し、ヨウ素酸ナトリウム(0.5g)を加えて溶解した溶液に、前記溶液Aを加えて混合し、抱水クロラール(50g)及びクエン酸一水和物(1.2g)をさらに加えて溶解し、マイヤーのヘマトキシリン溶液を得た。
<エオジン溶液>
蒸留水(100ml)にエオジンY(1g)を溶解し、1N塩酸を10ml加えて沈殿させた。得られた沈殿物を精製水で洗浄して風乾させ、粉末Yを得た。次いで、粉末Y(0.5g)をエチルアルコール(1000ml)に加え、保存用の溶液Yを得た。使用時には、精製水(140ml)に溶液Y(60ml)と酢酸(0.01ml)を加え、エオジン溶液を得た。
<ギルのヘマトキシリン溶液>
精製水(730ml)にエチレングリコール(250ml)とヘマトキシリン(2g)とヨウ素酸ナトリウム(0.2g)と、硫酸アルミニウム(17.6g)と酢酸(20ml)を溶解し、ギルのヘマトキシリン溶液を得た。
【実施例】
【0049】
[実施例1;CHO染色]
まず、常法により準備された人体組織のパラフィン包埋切片について、キシレン、アルコール、イオン交換水の順に浸漬する公知方法によって脱パラフィン処理を行った組織切片を得た。
次に、0.5%過ヨウ素酸ナトリウム水溶液に前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この酸化処理により、前記組織切片中の多糖類が有する水酸基の少なくとも一部がアルデヒド基に変化した。
続いて、CHO染色剤(1)50mlに、前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対してAMCが結合するCHO染色がなされた組織切片を得た。
最後に、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0050】
前記組織切片標本を蛍光顕微鏡で観察した画像を図2に示す。
図2は蛍光顕微鏡で青色の波長域を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
【実施例】
【0051】
[実施例2;CHO染色]
CHO染色剤(2)を用いた以外は、実施例1と同様にCHO染色を行った。
得られた組織切片標本の蛍光顕微鏡で観察した画像を図3に示す。
図3は蛍光顕微鏡で青色の波長域を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
【実施例】
【0052】
[実施例3;CHO染色]
CHO染色剤(3)を用いた以外は、実施例1と同様にCHO染色を行った。
得られた組織切片標本の蛍光顕微鏡で観察した画像を図4に示す。
図4は蛍光顕微鏡で青色の波長域を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
【実施例】
【0053】
[実施例4;H染色+CHO染色→E染色]
まず、常法により準備された人体組織のパラフィン包埋切片について、キシレン、アルコール、イオン交換水の順に浸漬する公知方法によって脱パラフィン処理を行った組織切片を得た。
次に、0.5%過ヨウ素酸ナトリウム水溶液に前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この酸化処理により、前記組織切片中の多糖類が有する水酸基の少なくとも一部がアルデヒド基に変化した。
続いて、CHO染色剤(1)10mlを前記マイヤーのヘマトキシリン溶液40mlに混合した溶液に、前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対してAMCが結合するCHO染色がなされたとともに、細胞核等の塩基性物質に対してヘマトキシリンが結合するヘマトキシリン染色がなされた組織切片を得た。
次いで、前記エオジン溶液に前記組織切片を3分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、細胞質等の酸性物質に対してエオジンが結合するエオジン染色がなされた組織切片を得た。
最後に、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色及びHE染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0054】
前記組織切片標本を光学顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した画像を図5~7に示す。
図5は通常の光学顕微鏡で観察した透過画像である。細胞核(青色)、細胞質(赤色~桃色)等の組織構造をはっきりと識別することができる。
図6は蛍光顕微鏡で青色の波長域を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができる。
図7は蛍光顕微鏡で緑色の波長域を観察した蛍光画像である。エオジンの自家蛍光が観察されている。図5~7を見比べて、CHO染色とHE染色は互いに干渉せずに、各々の染色が充分に行われており、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
【実施例】
【0055】
[実施例5;H染色+CHO染色]
CHO染色剤(1)10mlと前記ギルのヘマトキシリン溶液40mlとを混合した溶液に、実施例4と同様に酸化処理された組織切片を浸漬した。その後、軽く水洗し、0.5%塩酸エチルアルコールに浸漬し、過剰なヘマトキシリンを洗浄した。その他は実施例4と同様に、同一の組織切片について、CHO染色及びギルのヘマトキシリン染色を同時に行った。
【実施例】
【0056】
その結果、実施例4と同様に、光学顕微鏡の透過画像においてギルのヘマトキシリン染色による青色に染色された鮮明な核構造が観察された(図8)。さらに、蛍光顕微鏡の蛍光画像においてギルのヘマトキシリン染色によって干渉されず、多糖類を含む腺細胞等の組織構造が鮮明に観察された(図9)。
【実施例】
【0057】
[実施例6;CHO染色→H染色→E染色]
まず、実施例4と同様に、脱パラフィン及び酸化処理を行った組織切片を得た。
次に、CHO染色剤(1)10mlを蒸留水40mlに混合した溶液に、前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対してAMCが結合するCHO染色がなされた組織切片を得た。
続いて、前記マイヤーのヘマトキシリン溶液に、前記組織切片を3分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、細胞核等の塩基性物質に対してヘマトキシリンが結合するヘマトキシリン染色がなされた組織切片を得た。
最後に、実施例4と同様にエオジン染色を行い、組織切片標本を得た。
【実施例】
【0058】
本実施例では同一の組織切片についてCHO染色した後にHE染色した。その結果、実施例4と同様に、光学顕微鏡の透過画像においてHE染色による青色及び赤色に染色された鮮明な組織構造が観察された(図10)。さらに、蛍光顕微鏡の蛍光画像においてHE染色によって干渉されず、多糖類を含む腺細胞等の組織構造が鮮明に観察された(図11)。
【実施例】
【0059】
[実施例7;H染色→E染色→CHO染色]
まず、実施例1と同様に、脱パラフィンを行った組織切片を得た。この組織切片については酸化処理を行わずに染色工程へ供した。
次に、前記マイヤーのヘマトキシリン溶液に、前記組織切片を5分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、細胞核等の塩基性物質に対してヘマトキシリンが結合するヘマトキシリン染色がなされた組織切片を得た。
続いて、前記エオジン溶液に前記組織切片を5分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、細胞質等の酸性物質に対してエオジンが結合するエオジン染色がなされた組織切片を得た。
次に、酸化処理を施しCHO染色剤(1)10mlを蒸留水40mlに混合した溶液に、前記組織切片を15分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対してAMCが結合するCHO染色がなされた組織切片を得た。
最後に、実施例4と同様に脱水及び封入処理を行い、組織切片標本を得た。
【実施例】
【0060】
本実施例では同一の組織切片についてHE染色した後にCHO染色した。その結果、実施例4と同様に、光学顕微鏡の透過画像においてHE染色による青色及び赤色に染色された鮮明な組織構造が観察された(図12)。さらに、蛍光顕微鏡の蛍光画像においてHE染色によって干渉されず、多糖類を含む腺細胞等の組織構造が鮮明に観察された(図13)。
【実施例】
【0061】
[実施例8;CHO染色→パパニコロウ染色]
従来のパパニコロウ染色に供される細胞検体と同様に、脱パラフィン処理を行った細胞検体を得た。この細胞検体は、組織切片と同様に扱うことができるように、スライドガラス上に固定されている。
まず、前記細胞検体を実施例4と同様に酸化処理を行った。
次いで、CHO染色剤(1)10mlと前記ギルのヘマトキシリン溶液40mlとを混合した溶液に、前記細胞検体を20分間室温で浸漬した後、水洗した。さらに0.5%塩酸アルコールを用いて分別した後、70%エタノールから95%エタノールまで段階的にエタノール濃度を上昇させて親和した。
続いて、得られた細胞検体について、市販のオレンジG-6染色液(OG-6)、及び市販のEA50染色液を用いて、順に常法によって染色した。
最後に、エタノールで脱水して、キシレンで封入して細胞検体標本を得た。
【実施例】
【0062】
本実施例では同一の細胞検体について、CHO染色とパパニコロウ染色を行った。その結果、光学顕微鏡の透過画像において、通常のパパニコロウ染色と同様の青色~赤色に染色された鮮明な組織構造が観察された(図14)。さらに、蛍光顕微鏡の蛍光画像においてパパニコロウ染色によって干渉されず、多糖類を含む腺細胞等の組織構造が鮮明に観察された(図15)。
【実施例】
【0063】
[実施例9;CHO染色→ギムザ染色]
従来のギムザ染色に供される血球検体と同様に、スライドガラスに血球検体を塗布し、100%メタノールを用いて固定した。
まず、前記血球検体を実施例4と同様に酸化処理を行った。
次いで、CHO染色剤(1)50mlに、前記血球検体を20分間室温で浸漬した後、水洗した。
続いて、得られた血球検体について、市販のギムザ染色液を用いて、常法によって染色した。軽く水洗した後、乾燥して、キシレンに浸してから封入して血球検体標本を得た。
【実施例】
【0064】
本実施例では同一の血球検体について、CHO染色とギムザ染色を行った。その結果、光学顕微鏡の透過画像において、通常のギムザ染色と同様に青紫色に染色された(図16)。さらに、蛍光顕微鏡の蛍光画像においてギムザ染色によって干渉されず、多糖類が存在すると考えられる部位に青色の蛍光が観察された(図17)。
【実施例】
【0065】
[実施例10;CHO染色]
まず、常法により準備された人体組織のパラフィン包埋切片について、キシレン、アルコール、イオン交換水の順に浸漬する公知方法によって脱パラフィン処理を行った組織切片を得た。
次に、0.5%過ヨウ素酸ナトリウム水溶液に前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この酸化処理により、前記組織切片中の多糖類が有する水酸基の少なくとも一部がアルデヒド基に変化した。
続いて、CHO染色剤(4)50mlに、前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対して3-アミノクマリンが結合するCHO染色がなされた組織切片を得た。
最後に、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0066】
前記組織切片標本を蛍光顕微鏡で観察した画像を図18,図19に示す。
図18は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図19は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0067】
[実施例11;CHO染色]
CHO染色剤(5)を用いた以外は、実施例10と同様にCHO染色を行った。
得られた組織切片標本の蛍光顕微鏡で観察した画像を図20,図21に示す。
図20は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図21は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0068】
[実施例12;CHO染色]
CHO染色剤(6)を用いた以外は、実施例10と同様にCHO染色を行った。
得られた組織切片標本の蛍光顕微鏡で観察した画像を図22,図23に示す。
図22は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青緑色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図23は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0069】
[実施例13;CHO染色]
CHO染色剤(7)を用いた以外は、実施例10と同様にCHO染色を行った。
得られた組織切片標本の蛍光顕微鏡で観察した画像を図24,図25に示す。
図24は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図25は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0070】
[実施例14;CHO染色]
CHO染色剤(8)を用いた以外は、実施例10と同様にCHO染色を行った。
得られた組織切片標本の蛍光顕微鏡で観察した画像を図26,図27に示す。
図26は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青緑色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図27は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0071】
[実施例15;CHO染色]
実施例10と同様に脱パラフィン処理及び酸化処理を行った組織切片を得た。
次いで、55℃に加熱したCHO染色剤(9)50mlに、前記組織切片を15分間浸漬した後、水洗した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対して4-クロロ-o-フェニレンジアミンが結合するCHO染色がなされた組織切片を得た。
最後に、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0072】
前記組織切片標本を蛍光顕微鏡で観察した画像を図28,図29に示す。
図28は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青緑色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図29は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0073】
[実施例16;CHO染色]
実施例10と同様に脱パラフィン処理及び酸化処理を行った組織切片を得た。
次いで、55℃に加熱したCHO染色剤(10)50mlに、前記組織切片を30分間浸漬した後、2mMの水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対して8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸が結合するCHO染色がなされた組織切片を得た。
最後に、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0074】
前記組織切片標本を蛍光顕微鏡で観察した画像を図30,図31に示す。
図30は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図31は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0075】
[実施例17;CHO染色]
CHO染色剤(11)を用いた以外は、実施例16と同様にCHO染色を行った。
得られた組織切片標本の蛍光顕微鏡で観察した画像を図32,図33に示す。
図32は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
図33は蛍光顕微鏡で緑色の波長域(480nm)を観察した蛍光画像である。組織構造をはっきりと識別することができる。
【実施例】
【0076】
[実施例18;CHO染色]
まず、常法により準備された人体組織のパラフィン包埋切片について、キシレン、アルコール、イオン交換水の順に浸漬する公知方法によって脱パラフィン処理を行った組織切片を得た。
次に、0.5%過ヨウ素酸ナトリウム水溶液に前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この酸化処理により、前記組織切片中の多糖類が有する水酸基の少なくとも一部がアルデヒド基に変化した。
続いて、CHO染色剤(14)50mlに、前記組織切片を20分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、アルデヒド基が形成された前記多糖類に対して7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸が結合するCHO染色がなされた組織切片を得た。
最後に、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0077】
前記組織切片標本を蛍光顕微鏡で観察した画像を図34に示す。
図34は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
【実施例】
【0078】
[実施例19;H染色+CHO染色→E染色]
CHO染色剤(14)20mlと前記マイヤーのヘマトキシリン溶液20mlとを混合した溶液に、実施例18と同様に酸化処理された組織切片を浸漬した。その後、軽く水洗した。
次いで、前記エオジン溶液に前記水洗した組織切片を3分間室温で浸漬した後、水洗した。この染色により、細胞質等の酸性物質に対してエオジンが結合するエオジン染色がなされた組織切片を得た。
最後に、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色及びHE染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0079】
前記組織切片標本を顕微鏡で観察した透過画像を図35に示し、蛍光顕微鏡で観察した画像を図36に示す。
図36は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
【実施例】
【0080】
[実施例20;H染色+CHO染色]
CHO染色剤(14)20mlと前記マイヤーのヘマトキシリン溶液20mlとを混合した溶液に、実施例18と同様に酸化処理された組織切片を浸漬した。その後、軽く水洗した。
その後、常法により前記組織切片に対して脱水処理及び封入処理を行い、CHO染色及びH染色がなされた組織切片標本を得た。
【実施例】
【0081】
前記組織切片標本を顕微鏡で観察した透過画像を図37に示し、蛍光顕微鏡で観察した画像を図38に示す。
図38は蛍光顕微鏡で青色の波長域(365nm)を観察した蛍光画像である。多糖類を含む腺細胞(青色)の組織構造を黒色の背景にはっきりと識別することができ、病理診断に用いことができる高品質の画像であることが確認された。
【実施例】
【0082】
[比較例1]
化合物(1)に代えて、化合物(1)~(5)に該当しない骨格構造を有するフルオレセインイソチアシアネート(FITC)(0.005g)を使用した以外は、実施例4の手順に沿って、同一の組織切片について染色を行った。
その結果、光学顕微鏡の透過画像においてはFITCによる黄色の着色が、HE染色による青色及び赤色に干渉して、組織構造を従来のHE染色と同様に観察することは困難であった。
一方、蛍光顕微鏡の蛍光画像においてはFITCによる蛍光の波長(黄色)を観察し得ると予測していたが、実際に行ったところ、蛍光を観測できなかった。この理由として、エオジン染色が酸性条件で行われていたため、FITCから蛍光が発生しなかった又は消光したと考えられる。
以上の結果から、FITCによる染色結果を充分に把握することができなかった。
【実施例】
【0083】
[比較実験]
まず、実施例1と同様に、脱パラフィンを行った2枚の組織切片を得た。これらの組織切片は、組織において互いに隣接する部位から切り出されたものである。
得られた1枚目の組織切片を常法によってPAS染色した。2枚目の組織切片については、実施例1と同様にCHO染色剤(1)を用いてCHO染色した。染色後、常法により脱水及び封入の処理を行って、2枚の組織切片標本を得た。
PAS染色した標本を光学顕微鏡で観察した透過画像(図39)と、CHO染色した標本を蛍光顕微鏡で観察した蛍光画像(図40)と、の両方共に鮮明な画像であった。
両方の画像を比較すると、PAS染色よりもCHO染色の方が、染色されている部位同士の分解能(解像度)が高く、感度が優れていた。
【実施例】
【0084】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、細胞や組織切片を染色する技術分野、例えば、病理診断や細胞組織学の研究などの医学及び医療分野に広く適用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
38
【図40】
39