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明細書 :トルクリミッタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-155360 (P2018-155360A)
公開日 平成30年10月4日(2018.10.4)
発明の名称または考案の名称 トルクリミッタ
国際特許分類 F16D  27/112       (2006.01)
F16D   7/02        (2006.01)
B25J  19/06        (2006.01)
FI F16D 27/112 Z
F16D 7/02 C
F16D 7/02 F
F16D 7/02 B
B25J 19/06
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2017-053823 (P2017-053823)
出願日 平成29年3月19日(2017.3.19)
発明者または考案者 【氏名】シュミッツ アレクサンダー
【氏名】汪 偉
【氏名】オルガド アレクシス カルロス
【氏名】許 ▲晋▼誠
【氏名】小林 健人
【氏名】アルバレス ロペス ハビエル
【氏名】王 語詩
【氏名】菅野 重樹
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
Fターム 3C707MS02
3C707MS27
要約 【課題】入力側から出力側へのトルク伝達の際におけるトルクリミット値を可変し、停電時等の不測の電源喪失における安全性を考慮したトルクリミッタを提供すること。
【解決手段】前記トルクリミッタ10は、入力側の駆動装置Mに繋がる入力部11と、出力側のロボットアームAに繋がる出力部12とを備えている。入力部11及び出力部12は、それらの間の磁力の調整によって相互に接続する接続状態と相互に接続していない非接続状態とを切り替え可能に離間接近する連結構造を有している。この連結構造は、印加電圧の調整により磁力の調整を可能にする電磁石17を含み、印加電圧がゼロのときに前記接続状態に設定されるとともに、所定の値の印加電圧で非接続状態とされ、当該非接続状態から印加電圧を増大すると接続状態となって入力部11及び出力部12の接合力が増大しトルクリミット値を上昇させる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
入力側の部材から出力側の部材に伝達されるトルクの上限値となるトルクリミット値の大きさを電磁的に調整可能となるようにこれら部材の間に配置されるトルクリミッタにおいて、
前記入力側の部材に繋がる入力部と、前記出力側の部材に繋がる出力部とを備え、
前記入力部及び出力部は、それらの間の磁力の調整によって相互に接続する接続状態と相互に接続していない非接続状態とを切り替え可能に離間接近する連結構造を有し、
前記連結構造は、印加電圧の調整により前記磁力の調整を可能にする電磁石を含み、前記印加電圧がゼロのときに前記接続状態に設定されるとともに、所定の値の前記印加電圧で前記非接続状態とされ、当該非接続状態から前記印加電圧を増大すると、前記接続状態となって前記入力部及び前記出力部の接合力が増大し、前記トルクリミット値を上昇させることを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項2】
前記連結構造は、前記印加電圧をゼロから前記印加電圧を次第に増大させると、前記トルクリミット値が次第に低下して前記非接続状態になる構造に設けられることを特徴とする請求項1記載のトルクリミッタ。
【請求項3】
前記連結構造は、前記印加電圧を所定の負の値にしたときに前記非接続状態となり、当該負の値からゼロに向かって前記印加電圧を変化させると、前記トルクリミット値が次第に上昇する構造に設けられることを特徴とする請求項1記載のトルクリミッタ。
【請求項4】
入力側の部材から出力側の部材に伝達されるトルクの上限値となるトルクリミット値の大きさを電磁的に調整可能となるようにこれら部材の間に配置されるトルクリミッタにおいて、
前記入力側の部材に繋がる入力部と、前記出力側の部材に繋がる出力部とを備え、
前記入力部は、印加電圧の大きさに応じて発生する磁力を変化可能な電磁石と、前記出力部との接触摩擦によって当該出力部との接合を可能にする接合部とを備え、
前記接合部は、前記電磁石側に位置する第1の入力プレートと、当該第1の入力プレートよりも前記出力部寄りに配置される第2の入力プレートとを備え、
前記出力部は、前記磁力の変化によって前記第1及び第2の入力プレートの間で移動可能に配置される出力プレートを備え、
前記出力プレートは、前記印加電圧がゼロのときに、前記第2の入力プレートに接触して前記入力部及び前記出力部を相互に接続する接続状態とされ、前記印加電圧をゼロから増大させると、前記第2の入力プレートから離間して前記第1の入力プレート側に吸引され、前記第1の入力プレートにも接触しない非接続状態を経て、前記第1の入力プレートに接触して前記接続状態になるように設けられるとともに、前記第1の入力プレートとの接触時に、前記電磁石への印加電圧を増大させる程、前記第1の入力プレートとの接合力が増大して前記トルクリミット値を上昇させることを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項5】
前記入力部は、前記第2の入力プレート及び前記出力プレートの接触による前記接続状態での最大のトルクリミット値が、前記第1の入力プレート及び前記出力プレートの接触による前記接続状態よりも小さくなるように設定されることを特徴とする請求項2記載のトルクリミッタ。
【請求項6】
入力側の部材から出力側の部材に伝達されるトルクの上限値となるトルクリミット値の大きさを電磁的に調整可能となるようにこれら部材の間に配置されるトルクリミッタにおいて、
前記入力側の部材に繋がる入力部と、前記出力側の部材に繋がる出力部とを備え、
前記入力部は、印加電圧の大きさに応じて発生する磁力を変化可能な電磁石からなる入力プレートを備え、
前記出力部は、前記入力プレートに対して離間接近可能な磁性体からなる出力プレートを備え、
前記入力プレート及び前記出力プレートは、前記印加電圧の極性を変化させることで、相互に反発して離間する方向に移動する状態と、相互に吸引して接近する方向に移動する状態とに変化可能に設けられるとともに、前記印加電圧がゼロのときに相互に接触して前記入力部及び前記出力部を相互に接続する接続状態とされることを特徴とするトルクリミッタ。
【請求項7】
前記入力プレート及び前記出力プレートは、前記印加電圧の所定の負の値で相互に非接触となる非接続状態となり、当該非接続状態から正方向に前記印加電圧を変化させると、前記接続状態となってそれらの接合力が次第に増大し、前記トルクリミット値を上昇させることを特徴とする請求項6記載のトルクリミッタ。
【請求項8】
前記入力部と前記出力部の間には、前記印加電圧がゼロのときに、前記入力プレートと前記出力プレートとを相互に接触させる押付力を付与する押付手段が設けられていることを特徴とする請求項6又は7記載のトルクリミッタ。
【請求項9】
前記印加電圧を前記電磁石に供給する電源が遮断したときに作動する電源バックアップ手段を更に設け、
前記電源バックアップ手段は、前記電源の通電時に充電され、前記電源の遮断時に、前記充電された電力を用い、前記電源に代わって前記電磁石に電力供給を行う制御回路からなることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載のトルクリミッタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッタに係り、更に詳しくは、入力側から出力側へ伝達されるトルクの上限値であるトルクリミット値を可変にするとともに、停電時等の不測の電源喪失や緊急停止時の際における安全性を考慮したトルクリミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力側から出力側に伝達されるトルクが所定値を超える過負荷状態になった場合に、当該トルクの伝達を遮断するトルクリミッタが知られている。このトルクリミッタとしては、例えば、特許文献1に開示されているように、通電による磁力を用いて入力側から出力側にトルクを伝達する電磁クラッチを用いたものがある。
【0003】
ところで、ロボットと人間とが共生する環境下においては、当該環境に対するロボットの安全対策が重要になる。この安全対策として、ロボットが所望の動作を行っている最中に環境中の人間や物体に不意に衝突した場合等において、当該人間や物体に影響を与えないようにロボットを設計することが重要である。そこで、例えば、ロボットアームと当該ロボットアームを動作させるモータとの間にトルクリミッタを配置し、それらの間に過負荷が生じた際に、モータとロボットアームとのトルクの伝達を遮断する構成を設けることが考えられる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-200353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1等の電磁クラッチを用いたトルクリミッタにあっては、非通電状態になると、電磁クラッチによる入力側から出力側の動力伝達が遮断されるため、停電時等の不測の電源喪失や緊急停止時に、安全性の低下を招く虞がある。つまり、例えば、入力側にモータを配置し、出力側にロボットアームを配置し、これらを電磁クラッチで連結する前述の構成の場合、電源喪失や緊急停止時に、モータとロボットアームが切り離されてしまう。その結果、ロボットアームは、それまでの動作による慣性で意図しない動きが行われたり、機器の重量による不意の落下を発生する等、安全性を低下させる事態が生じる虞がある。従って、電源喪失や緊急停止が発生したときには、ロボットアームの周囲の環境に対する安全性を考慮し、ロボットアームを瞬時に停止させる等の安全対策用の何等かの手段が別途必要になる。また、前記特許文献1のトルクリミッタでは、入力側から出力側へ伝達されるトルクの上限値であるトルクリミット値を可変にすることができないが、当該トルクリミット値を任意に変更できると、伝達トルク制御、安全性、直接教示等のための各種機能を実現可能になる。
【0006】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、入力側から出力側へのトルク伝達の際におけるトルクリミット値を可変にするとともに、停電時等の不測の電源喪失や緊急停止時の際における安全性を考慮したトルクリミッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、主として、本発明は、入力側の部材から出力側の部材に伝達されるトルクの上限値となるトルクリミット値の大きさを電磁的に調整可能となるようにこれら部材の間に配置されるトルクリミッタにおいて、前記入力側の部材に繋がる入力部と、前記出力側の部材に繋がる出力部とを備え、前記入力部及び出力部は、それらの間の磁力の調整によって相互に接続する接続状態と相互に接続していない非接続状態とを切り替え可能に離間接近する連結構造を有し、前記連結構造は、印加電圧の調整により前記磁力の調整を可能にする電磁石を含み、前記印加電圧がゼロのときに前記接続状態に設定されるとともに、所定の値の前記印加電圧で前記非接続状態とされ、当該非接続状態から前記印加電圧を増大すると、前記接続状態となって前記入力部及び前記出力部の接合力が増大し、前記トルクリミット値を上昇させる、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印加電圧の調整によってトルクリミット値を変化させることができ、ロボットを含む様々な機械要素に使用したときに、伝達トルク制御、安全性、直接教示等のための各種機能を実現することができる。また、印加電圧がゼロのときに、入力部と出力部の間で接続状態が確保され、動力等の入力側が非空転の状態となり、停電時等の不測の電源喪失や緊急停止時に、安全性を向上させることができる。つまり、電源で駆動する駆動装置を入力側に配置したような場合、電源喪失等により、駆動装置の駆動も停止するが、出力側が駆動装置に連結された状態となっているため、駆動装置の駆動抵抗を利用して出力側にブレーキをかけることができ、他の非常ブレーキ等の別途設ける構成を不要に、若しくは簡素化して、電源喪失等の不測の事態における周囲の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係るトルクリミッタを含む動力伝達構成を示す概念図である。
【図2】(A)、(B)は、前記トルクリミッタの作動を説明する概念図である。
【図3】第1実施形態におけるトルクリミッタの印加電圧とトルクリミットの関係を示すグラフである。
【図4】第2実施形態に係るトルクリミッタを含む動力伝達構成を示す概念図である。
【図5】第2実施形態におけるトルクリミッタの印加電圧とトルクリミットの関係を示すグラフである。
【図6】電源バックアップ手段を構成する制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)

【0011】
図1には、第1実施形態に係るトルクリミッタを含む動力伝達構成を表す概念図が示されている。この図において、前記トルクリミッタ10は、一例として、動力源となるモータ等の駆動装置Mと、駆動装置Mからの動力によって動作するロボットアームAとの間に設けられ、駆動装置MからロボットアームAにトルクの伝達を行い、当該トルクの上限値となるトルクリミット値を超えるトルクが作用した場合に、前記トルクの伝達を遮断するように構成されている。

【0012】
このトルクリミッタ10は、入力側の部材となる駆動装置Mに繋がる入力部11と、出力側の部材となるロボットアームAに繋がる出力部12とからなり、入力部11と出力部12を磁力の作用により離間接近し、それらの摩擦結合と離間を行うことで、入力部11と出力部12との間のトルクの伝達、遮断を行う電磁式摩擦クラッチからなる。

【0013】
前記入力部11は、駆動装置Mからの動力によって回転する入力シャフト14と、当該入力シャフト14の先端側に固定され、出力部12側との接合部位となる本体15とからなる。

【0014】
前記本体15は、電源Eから供給される印加電圧の調整により発生する磁力の調整を可能にする電磁石17と、出力部12との接触摩擦を利用して当該出力部12との接合を可能にする接合部18とを備えている。

【0015】
前記接合部18は、電磁石17側に位置する円盤状の第1の入力プレート21と、第1の入力プレート21よりも出力部12寄りに配置され、中央に穴が形成されたドーナツ板状をなす第2の入力プレート22と、第1及び第2の入力プレート21,22をそれらの外周側で接続する円筒状の接続部材23とからなり、第1及び第2の入力プレート21,22と接続部材23との間に出力部12の移動空間Sが形成される。

【0016】
前記出力部12は、第1及び第2の入力プレート21,22の間で移動空間S内を移動可能に配置された円盤状の出力プレート25と、出力プレート25とロボットアームAの間を連結固定する出力シャフト26とを備えている。

【0017】
前記出力プレート25は、電磁石17の磁力によって第1の入力プレート21側に吸引可能な材質によって形成されており、第1及び第2の入力プレート21,22にそれぞれ対向するように配置され、これら入力プレート21,22に対して離間接近する方向への移動が許容されるようになっている。また、出力プレート25は、電源Eから電磁石17への通電が行われていない非通電時に、図1に示される状態で、すなわち、第1の入力プレート21に非接触となる一方、第2の入力プレート22に接触する状態で配置される。

【0018】
なお、図示省略しているが、入力部11と出力部12の間には、ばねを含む付勢部材等からなる押付手段が設けられており、当該押付手段は、出力プレート25を第2の入力プレート22に接近させる方向の力を出力プレート25に付与するようになっている。

【0019】
また、後述するように、第1及び第2の入力プレート21,22は、出力プレート25との接触摩擦を利用し、相互の接触による入力部11から出力部12へのトルク伝達が可能となるが、これら入力プレート21,22において、少なくとも出力プレート25との接触面は、前記トルク伝達を可能とする接触摩擦力を発生する摩擦材によって形成される。ここでの摩擦材としては、後述する入力部11及び出力部12の間での磁力の作用を阻止しない性質のものが用いられる。

【0020】
以上の構成のトルクリミッタ10は、電源Eからの通電時に発生する電磁石17の磁力により、第1及び第2の入力プレート21,22に対する出力プレート25の離間接近が可能なり、電磁石17への印加電圧を変化させることによって、入力部11と出力部12との間での摩擦接合によるこれらの接続状態と、入力部11と出力部12の非接続状態との切り替えが可能となる。ここで、前記接続状態では、その際の接触摩擦力である接合力以下のトルクが入力部11及び出力部12の間に作用した場合、入力部11と出力部12とが相対回転不能に接続された接続状態となり、駆動装置Mからの駆動力がロボットアームAに伝達される。一方、前記接続状態で前記接合力を超えるトルクが入力部11及び出力部12の間に作用した場合、入力部11と出力部12とが相対回転可能となり、前記非接続状態と同様、入力部11が空転し、駆動装置Mからの駆動力がロボットアームAに伝達されなくなる。従って、前記接合力に相当するトルクが、入力部11から出力部12に伝達されるトルクの上限値となるトルクリミット値となる。
このトルクリミッタ10では、以下に詳述するように、電磁石17への印加電圧を変えることで、トルクリミット値が可変となるように設けられている。

【0021】
すなわち、先ず、電源Eから電磁石17への通電が行われていない非通電時においては、図1に示されるように、出力プレート25が、第1の入力プレート21に非接触となる一方、第2の入力プレート22に接触する前記接続状態となっており、このときの摩擦接合により、入力部11と出力部12の間でのトルク伝達が可能になる。この状態から、電磁石17への通電を行うと、出力プレート25が、磁力によって第1の入力プレート21側に吸引されることにより、第2の入力プレート22との接触摩擦力である接合力が徐々に低下し、図2(A)に示されるように、第2の入力プレート22から離れ、その後、移動空間S内を第1の入力プレート21に向かって移動する。このとき、印加電圧を増大することで、出力プレート25は、第1及び第2の入力プレート21,22に共に非接触となる同図(A)の前記非接続状態を経て、同図(B)に示されるように、第2の入力プレート22に非接触のまま第1の入力プレート21に接触して前記接続状態となる。そして、印加電圧を更に増大することで、第1の入力プレート21への吸引力が大きくなって、第1の入力プレート21との接合力が増大することになる。

【0022】
なお、第2の入力プレート22は、第1の入力プレート21とほぼ同一の外径となっているが、中央の穴の存在によって、第1の入力プレート21よりも出力プレート25に対して接触面積が小さくなっている。当該形状や発生可能な磁力の大きさ等により、第2の入力プレート22と出力プレート25の接合時における最大のトルクリミット値は、第1の入力プレート21と出力プレート25の接触時における最大のトルクリミット値よりも小さく設定される。

【0023】
このトルクリミッタ10によれば、以上のように入力部11と出力部12が相対移動することにより、図3に示される印加電圧に対するトルクリミット値の変化特性が得られる。

【0024】
すなわち、電磁石17への非通電時である印加電圧がゼロのときには、第2の入力プレート22と出力プレート25との面接触により、入力部11と出力部12とが接続状態になり、ある程度のトルクリミット値が得られる。
そして、電磁石17への通電を開始し印加電圧を増大することで、出力プレート25が第1の入力プレート21側に吸引され、第2の入力プレート22との接合力が次第に弱まってトルクリミット値が徐々に減少していき、ある印加電圧の値で、出力プレート25が第2の入力プレート22より離れて入力部11と出力部12とが非接続状態になり、トルクリミット値がゼロとなる。
その後、印加電圧を更に増大することで、出力プレート25が第1の入力プレート21に面接触し、入力部11と出力部12とが再び接続状態となる。そして、印加電圧を更に増大すると、第1の入力プレート21における出力プレート25の吸引力が徐々に高まってそれらの接合力が増大し、印加電圧の大きさに比例してトルクリミット値が増大することになる。

【0025】
なお、前記入力部11及び出力部12にあっては、電磁石等を用いてそれらの間の磁力を印加電圧で調整し、相互に接続する接続状態と相互に接続していない非接続状態とを切り替え可能に離間接近することで、印加電圧がゼロのときに前記接続状態に設定されるとともに、所定の値の印加電圧で前記非接続状態とされ、当該非接続状態から前記印加電圧を増大すると、前記接続状態となってトルクリミット値を上昇させる連結構造を有する限り、種々の構造や構成のものを採用することができる。

【0026】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
(第2実施形態)

【0027】
本実施形態に係るトルクリミッタ30は、図4に示されるように、第1実施形態のトルクリミッタ10に対し、入力部11及び出力部12を一部異なる構成としたところに特徴を有する。

【0028】
前記入力部11は、前記入力シャフト14と、入力シャフト14の先端側に固定されるとともに、出力部12との接合部位となる入力プレート31とを備えている。この入力プレート31は、電源Eからの印加電圧の大きさに応じて発生する磁力を変化可能な電磁石によって構成される。

【0029】
前記出力部12は、前記出力シャフト26と、入力プレート31に対して離間接近可能に設けられた円盤状の出力プレート33とを備えている。この出力プレート33は、ネオジム磁石等の磁性体により形成されている。

【0030】
また、図示省略しているが、入力部11及び出力部12の間には、入力プレート31と出力プレート33とを相互に接触させる方向の押付力を付与する押付手段が設けられており、当該押付手段により、前記第1実施形態と同様に、非通電時においても、ある程度の一定のトルクリミット値で入力部11及び出力部12を前記接続状態にするようになっている。

【0031】
この押付手段としては、出力プレート33を入力プレート31に押し付ける方向への力を付与するばねを含む付勢部材等により構成し、この際の押付力を利用した入力プレート31と出力プレート33との摩擦力による接合を行えるようにする。ここで、当該摩擦力を調整するために、入力プレート31と出力プレート33の接触面の少なくとも一方に前述の摩擦材を設けても良い。また、当該摩擦材を設けずに、又は、当該摩擦材と併用して、入力プレート31と出力プレート33の接触時に、相対回転不能に相互に係合する係合部材(図示省略)を設け、又は、それらの接触面に微視的な凹凸を形成する等の構造を採用できる。

【0032】
本実施形態のトルクリミッタ30は、次のように作動する。

【0033】
先ず、電磁石からなる入力プレート31に電源Eから通電が行われていない非通電時においては、入力プレート31と出力プレート33に接触した前記接続状態となっており、入力部11と出力部12の間でのトルク伝達が可能になる。この状態から、入力プレート31に正電圧を印加すると、磁力によって入力プレート31に対する出力プレート33の吸引力が大きくなって、入力プレート31と出力プレート33の接合力が増大する。

【0034】
一方、前記非通電時の状態から、入力プレート31に対して負電圧を印加すると、入力プレート31における磁石の極性が、正の印加電圧のときに対して反転し、入力プレート31に対する出力プレート33の反発力が発生する。このため、入力プレート31に印加される負の印加電圧を負方向に大きくする程、出力プレート33は、入力プレート31との接合力が次第に小さくなって、印加電圧が所定の負の値以上で、入力部11と出力部12とが図4の前記非接続状態となる。

【0035】
以上のように入力部11と出力部12が相対移動することで、図5に示される印加電圧に対するトルクリミット値の変化特性が得られる。すなわち、入力部11と出力部12とが非接続状態とされる所定の負の値の印加電圧から、入力プレート31への負の印加電圧を小さくすると、前記押付手段によって入力部11と出力部12が接続状態になるともに、入力プレート31に対する出力プレート33の反発力が次第に小さくなり、トルクリミット値が次第に増大する。そして、印加電圧がゼロとなる非通電時においても、ある一定のトルクリミット値が得られることになる。そして、この非通電時の状態から、入力プレート31に対して正電圧を印加すると、入力プレート31への出力プレート33の吸引力が徐々に高まり、印加電圧に比例してトルクリミット値が増大することになる。

【0036】
なお、本実施形態での印加電圧の「正」、「負」による作用は、限定的ではなく、当該極性を反転させて同様の作用効果を生じる設定としても良い。つまり、負の印加電圧で前記吸引力を発生させる一方、正の印加電圧で前記反発力を発生させることもできる。

【0037】
以上の第1及び第2実施形態によれば、入力部11に対する印加電圧の調整によって、トルクリミット値を調整できるばかりか、非通電時において、ある一定のトルクリミット値が得られるように入力部11及び出力部12の接続状態を確保できる。このため、停電時等の入力部11への電源喪失や緊急停止時等の際に、入力部11及び出力部12は、それらの接続状態が解除されず、ある程度のトルクリミット値による接続が維持されることになる。従って、この際、電源喪失等による駆動装置Mの停止を利用し、ロボットアームAの慣性動作にブレーキをかけることができ、当該慣性動作によるロボットアームAの周囲の人や物に対する不意の衝突等を回避し、安全性を向上させることができる。

【0038】
また、入力部11と出力部12とを磁力の作用にて摩擦結合する電磁式摩擦クラッチが用いられるため、高いトルク/質量比や停電時のバックドライバビリティを確保することができる。

【0039】
なお、入力部11及び出力部12にあっては、前記各実施形態の態様に限定されるものではなく、前記各実施形態で採用した次の連結構造を有する限り、種々の構成を採用することができる。

【0040】
すなわち、この連結構造としては、電磁石等を用いてそれらの間の磁力を印加電圧で調整することで、相互に接続する接続状態と相互に接続していない非接続状態とを切り替え可能に離間接近させ、更に、印加電圧がゼロのときに前記接続状態とし、所定の値の印加電圧で前記非接続状態とし、当該非接続状態から印加電圧を増大すると、前記接続状態となってトルクリミット値を上昇させる構造である限り、種々のものを採用することができる。

【0041】
また、前記各実施形態に対し、トルクリミッタ10,30の電磁石17,31に印加電圧を供給する電源Eが遮断したときに作動する電源バックアップ手段を更に設けることができる。この電源バックアップ手段は、電源Eの通電時に充電され、電源Eの遮断時に、前記充電された電力を用い、電源Eに代わって電磁石17,31に電力供給を行う制御回路からなる。

【0042】
前記制御回路は、図6に示されるように、ダイオード41、抵抗42、リレースイッチ43、コンデンサ44、電源Eの印加電圧を調整するコントローラ45等を含んで構成されている。すなわち、この制御回路では、通電時に、トルクリミッタ10,30への電力供給が行われるとともに、コンデンサ44を利用した充電状態となる。一方、電源Eが喪失すると、リレースイッチ43が同図中破線の位置に切り替わり、コンデンサ44での充電を利用して、トルクリミッタ10,30に電力供給が行われることになる。

【0043】
この変形例によれば、停電時等の入力部11への電源喪失の際、その前の充電による電力を用い、入力部11及び出力部12を非通電時よりも高いトルクリミット値の状態に短時間で戻すことが可能になり、停電等の電源喪失が生じても、ロボットアームAの継続動作が可能になる。

【0044】
なお、本発明におけるトルクリミッタ10は、前記実施形態における適用例に限らず、他の構成のロボットの他、機械や機器等の動力伝達系統全般に適用することができる。

【0045】
また、は、前記各実施形態の態様における入力部11の構成要素と出力部12の構成要素について、前記入力部11及び前記出力部12との間で逆に配置することも可能である。

【0046】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 トルクリミッタ
11 入力部
12 出力部
15 本体
17 電磁石
18 接合部
21 第1の入力プレート
22 第2の入力プレート
25 出力プレート
30 トルクリミッタ
31 入力プレート
33 出力プレート
A ロボットアーム(出力側の部材)
E 電源
M 駆動装置(入力側の部材)
S 移動空間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5