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明細書 :びびり振動抑制方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-202555 (P2017-202555A)
公開日 平成29年11月16日(2017.11.16)
発明の名称または考案の名称 びびり振動抑制方法
国際特許分類 B23Q  15/12        (2006.01)
G05B  19/404       (2006.01)
FI B23Q 15/12 A
G05B 19/404 K
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-096669 (P2016-096669)
出願日 平成28年5月13日(2016.5.13)
発明者または考案者 【氏名】廣垣 俊樹
【氏名】青山 栄一
【氏名】塩田 亮祐
【氏名】青谷 凱斗
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3C001
3C269
Fターム 3C001KA07
3C001KB04
3C001TA06
3C001TB08
3C269AB05
3C269BB03
3C269JJ20
3C269MN09
3C269MN46
要約 【課題】エンドミルを用いた切削加工において加工能率および加工精度を向上させることが可能なびびり振動抑制方法を提供する。
【解決手段】エンドミル加工面を観察し、びびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βの少なくとも1つのパラメータPを算出する第1ステップ(S1)と、エンドミルの回転数SをSにして切削加工を行い、びびり模様を観察して補正後のパラメータPを算出する第2ステップ(S2~S6)と、パラメータPからパラメータPを差し引いた変化量△Pを算出する第3ステップ(S7)と、△Pが負の場合に、回転数Sを第2補正量だけ加算した回転数Sにして切削加工を行う一方、△Pが正の場合に、回転数Sを第2補正量だけ減算した回転数Sにして切削加工を行い、エンドミル加工面を観察する第4ステップ(S8~S10)を含むことを特徴とする。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
エンドミルを用いた切削加工時のびびり振動を抑制するびびり振動抑制方法であって、
被削材のエンドミル加工面に生じたびびり模様を観察し、前記びびり模様の横間隔e、縦間隔gまたは傾斜βの少なくとも1つのパラメータPを算出する第1ステップと、
前記エンドミルの回転数Sを所定の第1補正量だけ加算した回転数Sにして、前記エンドミル加工面に対して切削加工を行い、前記エンドミル加工面に生じたびびり模様を観察し、補正後の前記パラメータPであるパラメータPを算出する第2ステップと、
補正後の前記パラメータPから補正前の前記パラメータPを差し引いた変化量△Pを算出する第3ステップと、
前記変化量△Pが負の場合に、前記回転数Sを前記第1補正量よりも絶対値の小さい第2補正量だけ加算した回転数Sにして切削加工を行う一方、前記変化量△Pが正の場合に、前記回転数Sを前記第2補正量だけ減算した回転数Sにして切削加工を行い、前記エンドミル加工面を観察する第4ステップと、を含む
ことを特徴とするびびり振動抑制方法。
【請求項2】
前記パラメータPは、前記横間隔eであり、
前記パラメータPは、前記第2ステップにおいて観測した前記びびり模様の横間隔eであり、
前記変化量△Pは、補正後の前記横間隔eから補正前の前記横間隔eを差し引いた変化量△eである
ことを特徴とする請求項1に記載のびびり振動抑制方法。
【請求項3】
前記第2ステップは、
前記びびり振動のびびり振動周波数fcと、前記エンドミルの刃数Nと、前記回転数Sとを用いた第1関係式
60fc/N(k+1)≦S≦60fc/Nk
を満たす整数kを算出するステップと、
安定ポケットの間隔△Sに関する第2関係式
△S=60fc/Nk(k+1)
に前記整数kを代入して、前記間隔△Sを算出するステップと、
前記第1補正量であるp△S(ただし、pは1未満の正の補正係数)を用いた前記回転数Sに関する第3関係式
=S+p△S
に基づいて、前記回転数Sを算出するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のびびり振動抑制方法。
【請求項4】
前記第4ステップは、
前記第2補正量である(p/2)△S(ただし、pは1未満の正の補正係数)を用いた前記回転数Sに関する第4関係式
=S±(p/2)△S
に基づいて、前記回転数Sを算出するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項3に記載のびびり振動抑制方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドミルを用いた切削加工時のびびり振動を抑制するびびり振動抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本においても航空機産業や医療産業が成長しつつあるが、航空機産業や医療産業の製品においては難削材が多用されている。エンドミルを用いて難削材を切削加工する場合、びびり振動が発生しやすく、そのために十分に加工条件を上げることができず、加工能率および加工精度を向上させることが困難である。
【0003】
この点、びびり振動については、従来から、工作機械や工具系に着目した研究が多くなされている。その大部分は、事前に系の伝達関数を求めて対策するものである(例えば、特許文献1参照)。また、サーボの内部情報から対策するものもある。しかしながら、いずれも、エンドミルを用いた切削加工において実用上十分な加工能率および加工精度を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-85395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、エンドミルを用いた切削加工において加工能率および加工精度を向上させることが可能なびびり振動抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るびびり振動抑制方法は、
エンドミルを用いた切削加工時のびびり振動を抑制するびびり振動抑制方法であって、
被削材のエンドミル加工面に生じたびびり模様を観察し、前記びびり模様の横間隔e、縦間隔gまたは傾斜βの少なくとも1つのパラメータPを算出する第1ステップと、
前記エンドミルの回転数Sを所定の第1補正量だけ加算した回転数Sにして、前記エンドミル加工面に対して切削加工を行い、前記エンドミル加工面に生じたびびり模様を観察し、補正後の前記パラメータPであるパラメータPを算出する第2ステップと、
補正後の前記パラメータPから補正前の前記パラメータPを差し引いた変化量△Pを算出する第3ステップと、
前記変化量△Pが負の場合に、前記回転数Sを前記第1補正量よりも絶対値の小さい第2補正量だけ加算した回転数Sにして切削加工を行う一方、前記変化量△Pが正の場合に、前記回転数Sを前記第2補正量だけ減算した回転数Sにして切削加工を行い、前記エンドミル加工面を観察する第4ステップと、を含む
ことを特徴とする。
【0007】
上記びびり振動抑制方法において、
前記パラメータPは、前記横間隔eであり、
前記パラメータPは、前記第2ステップにおいて観測した前記びびり模様の横間隔eであり、
前記変化量△Pは、補正後の前記横間隔eから補正前の前記横間隔eを差し引いた変化量△eである
ことが好ましい。
【0008】
上記びびり振動抑制方法において、
前記第2ステップは、
前記びびり振動のびびり振動周波数fcと、前記エンドミルの刃数Nと、前記回転数Sとを用いた第1関係式
60fc/N(k+1)≦S≦60fc/Nk
を満たす整数kを算出するステップと、
安定ポケットの間隔△Sに関する第2関係式
△S=60fc/Nk(k+1)
に前記整数kを代入して、前記間隔△Sを算出するステップと、
前記第1補正量であるp△S(ただし、pは1未満の正の補正係数)を用いた前記回転数Sに関する第3関係式
=S+p△S
に基づいて、前記回転数Sを算出するステップと、を含む
ように構成することができる。
【0009】
上記びびり振動抑制方法において、
前記第4ステップは、
前記第2補正量である(p/2)△S(ただし、pは1未満の正の補正係数)を用いた前記回転数Sに関する第4関係式
=S±(p/2)△S
に基づいて、前記回転数Sを算出するステップと、を含む
ように構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンドミルを用いた切削加工において加工能率および加工精度を向上させることが可能なびびり振動抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンドミル加工面に生じたびびり模様を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るびびり振動抑制方法のフローチャートである。
【図3】(A)は、ケース1における回転数と切り込み量との関係を示す安定限界線図である。(B)は、ケース1における回転数とびびり模様の横間隔との関係を示す図である。
【図4】(A)は、ケース2における回転数と切り込み量との関係を示す安定限界線図である。(B)は、ケース2における回転数とびびり模様の横間隔との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るびびり振動抑制方法の実施形態について説明する。

【0013】
[エンドミル加工面におけるびびり模様]
まず、図1を参照して、被削材のエンドミル加工面に生じるびびり模様ついて説明する。

【0014】
図1に示すとおり、エンドミルまたは被削材を水平に(Y方向に)動かすことにより被削材の側面を切削加工した場合、切削加工時にびびり振動が発生すると(ここでは、エンドミルがX方向に単振動するものとする)、被削材の側面(エンドミル加工面)には、びびり模様と呼ばれる周期的なしま模様が生じる。

【0015】
びびり模様の横間隔、縦間隔、傾斜(角度)をそれぞれe、g、βと定義すると、これらから、びびり振動のびびり周波数fcを推定することができる。推定するびびり周波数をfc’と定義し、エンドミルの回転数をS、エンドミルの直径をD、エンドミルのねじれ角をθとすると、びびり周波数fc’は下記(1)式で表される。
【数1】
JP2017202555A_000003t.gif

【0016】
[びびり振動抑制方法]
次いで、図2を参照して、本発明の一実施形態に係るびびり振動抑制方法について説明する。以下では、エンドミル加工面に図1に示すようなびびり模様が生じているものとする。

【0017】
本発明の一実施形態に係るびびり振動抑制方法は、加速度センサ等のセンサを用いることなく(センサレスで)安定ポケットを探索する方法である。安定ポケットとは、安定限界線図において安定限界が高くなる領域、言い換えれば、びびり振動が全くもしくはほとんど生じない領域のことである。安定ポケットの条件で切削加工を行えば、加工能率および加工精度を向上させることができる。

【0018】
本実施形態に係るびびり振動抑制方法では、ステップS1のとおり、まず、被削材のエンドミル加工面に生じたびびり模様を観察し、びびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βを算出する(本発明の「第1ステップ」に相当)。

【0019】
例えば、USBカメラ等の撮影手段でびびり模様を撮影し、その画像データをパーソナルコンピュータ等の処理装置に転送する。処理装置は、転送された画像データに基づいて、びびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βを算出する。例えば、横間隔eと傾斜βを算出することで、幾何学的に縦間隔gが得られる。

【0020】
次いで、本実施形態に係るびびり振動抑制方法では、ステップS2のとおり、上記(1)式に基づいて、びびり周波数fc’を推定する。びびり周波数fc’は、エンドミルの回転数の補正を行っていない場合のびびり周波数fc’である。なお、本実施形態では、びびり周波数fc’は、固有振動数fnと大きく異ならないと仮定する。

【0021】
びびり周波数fc’を推定した後は、ステップS3のとおり、びびり周波数fc’を用いて、下記(2)式(本発明の「第1関係式」に相当)を満たす整数kを算出する。
【数2】
JP2017202555A_000004t.gif

【0022】
次いで、ステップS4のとおり、安定ポケット同士の間隔△Sは、下記(3)式(本発明の「第2関係式」に相当)で近似して算出する。すなわち、本実施形態では、エンドミルの元の回転数Sから△Sの範囲内に安定ポケットが存在すると仮定して、エンドミルの回転数Sを補正しつつ、安定ポケットを探索する。
【数3】
JP2017202555A_000005t.gif

【0023】
エンドミルの回転数Sの補正(1回目の補正)は、下記(4)式(本発明の「第3関係式」に相当)に基づいて行う。
【数4】
JP2017202555A_000006t.gif
上記(4)式において、pは1未満の正の補正係数である。上記(4)式のとおり、1回目の補正では、エンドミルの回転数Sを所定の第1補正量p△Sだけ加算した回転数Sにする(ステップS5)。

【0024】
上記びびり周波数fc’の推定からエンドミルの回転数Sの補正までの一連の処理(ステップS2~S5の処理)は、本発明の「第2ステップ」に含まれる。この一連の処理は、例えば、処理装置により行われる。処理装置は、メモリ等の記憶部を備え、当該記憶部には、上記(1)~(4)式に関するデータが格納されているものとする。

【0025】
次いで、ステップS6のとおり、回転数Sでエンドミル加工面に対して切削加工を行い、第1ステップと同様に、エンドミル加工面に生じた1回補正後のびびり模様を観察し、1回補正後のびびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βを算出する(本発明の「第2ステップ」に相当)。

【0026】
例えば、処理装置が、エンドミルの回転数Sを所定の第1補正量p△Sだけ加算した回転数Sにするための補正指令を、エンドミルの回転数を制御するコントローラに出力する。コントローラは、エンドミルが回転数Sでエンドミル加工面に対して切削加工を行うように、エンドミルを制御する。切削加工終了後、第1ステップと同様に、撮影手段でびびり模様を撮影し、その画像データを処理装置に転送する。処理装置は、転送された画像データに基づいて、びびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βを算出する。

【0027】
次いで、ステップS7のとおり、1回補正後の横間隔eから1回補正前の横間隔eを差し引いた変化量△eを算出する(本発明の「第3ステップ」に相当)。この第3ステップは、例えば、処理装置により行われる。

【0028】
次いで、ステップS8のとおり、変化量△eに応じて、エンドミルの回転数Sをさらに補正する。エンドミルの回転数Sの補正(2回目の補正)は、下記(5)式(本発明の「第4関係式」に相当)に基づいて行う。
【数5】
JP2017202555A_000007t.gif
上記(5)式において、pは1未満の正の補正係数である。なお、上記(5)式の補正係数pは、上記(4)式の補正係数pと同じ値にしてもよいし、異なる値にしてもよい。

【0029】
エンドミルの回転数Sの補正は、変化量△eが負の場合に、回転数Sを第1補正量p△Sよりも小さい第2補正量(p/2)△Sだけ加算した回転数Sにする一方、変化量△eが正の場合は、回転数Sを第2補正量(p/2)△Sだけ減算した回転数Sにする。

【0030】
次いで、ステップS9のとおり、回転数Sでエンドミル加工面に対して切削加工を行い、第1ステップと同様にエンドミル加工面を観察して、びびり模様を確認する(ステップS10)。ここまでが、本発明の「第4ステップ」に相当する。

【0031】
この第4ステップでは、例えば、処理装置が、エンドミルの回転数Sの補正を行い、当該補正に関する補正指令を、エンドミルの回転数を制御するコントローラに出力する。コントローラは、エンドミルが補正後の回転数Sでエンドミル加工面に対して切削加工を行うように、エンドミルを制御する。切削加工終了後、第1ステップと同様に、撮影手段でエンドミル加工面を撮影し、その画像データを処理装置に転送する。処理装置は、転送された画像データに基づいて、びびり模様を確認する。

【0032】
エンドミル加工面を観察した結果、びびり模様が全くもしくはほとんど生じていないことにより、びびり模様を確認することができない場合、言い換えれば、びびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βを算出できない場合は(ステップS10でYES)、本実施形態に係るびびり振動抑制方法は終了する。

【0033】
一方、びびり模様を確認することができる場合、言い換えれば、びびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βを算出できる場合は(ステップS10でNO)、これらのパラメータを算出して(ステップS6)、第3ステップおよび第4ステップを行い(ステップS7~S10)、びびり模様の横間隔e、縦間隔g、傾斜βを算出できなくなるまで、もしくは予め決めた補正回数に達するまで、上記ステップを繰り返す。

【0034】
このため、第3ステップの変化量△eの関係式△e=e-eは、△e=e-en-1と一般化することができる。ここで、添え字のnは、エンドミルの回転数の補正回数であり、1以上の整数である。また、第4ステップにおけるn回補正後のエンドミルの回転数Sは、符号関数sgnを用いて、下記(6)式で表される。
【数6】
JP2017202555A_000008t.gif
上記(6)式において、符号関数sgn(△e)は、△e>0の場合に1となり、△e<0の場合に-1となる。

【0035】
以下、探索例として、ケース1、2を示す。エンドミルの回転数の補正回数nを無限大にすると安定ポケットに収束するが、実用的ではないため、ケース1、2では、最大でn=3とした。また、補正係数pが大きいと安定ポケットを乗り越える回数が多くなり、収束が遅くなるため、上記(4)式および(5)式の補正係数pをいずれも0.5とした。さらに、刃数N=1、回転数の刻みが25[min-1]のエンドミルを使用した。

【0036】
(ケース1)
ケース1では、エンドミルの回転数Sを2850[min-1]にして、被削材の側面を切削加工した。エンドミル加工面に生じたびびり模様から得られたびびり周波数fc’は、867.5[Hz]であった。上記(2)式から得られた整数kは、17であり、上記(3)式から得られた安定ポケット同士の間隔△Sは、152[min-1]であった。算出した1回補正後のエンドミルの回転数Sは、2926[min-1]であった。そこで、エンドミルの回転数Sを2926[min-1]に最も近い2925[min-1]にして、エンドミル加工面に対して切削加工を行った。

【0037】
その後、エンドミル加工面に生じたびびり模様を観察すると、△e<0であったため(図3(B)参照)、同じ試行を行うと、回転数Sは2962[min-1]になった。同様に、もう一度補正を行うと回転数Sは、2975[min-1]になった。このように補正を3回行った回転数S=2975[min-1]の方が、初期回転数S=2850[min-1]よりも安定限界が高くなった(図3(A)参照)。

【0038】
(ケース2)
ケース2では、エンドミルの回転数Sを3075[min-1]にして、被削材の側面を切削加工した。1回補正後のエンドミルの回転数Sは3162[min-1]であり、△e>0であった(図4(B)参照)。すなわち、1回補正により安定ポケットを乗り越えたと考えられる(図4(A)参照)。そのため、2回目の補正は減算して、回転数Sは3108[min-1]になった。そして、△e<0になったので、3回目の補正は加算して、回転数Sは3130[min-1]になった。

【0039】
ケース2では、補正後の回転数の切込みが低い箇所においてびびり振動が発生したが、切込みを多くすると振動が収まった。安定ポケットにおいては、複数の周波数で振動することがあり、発生要因が難化したためと考えられるが、限界切込み量自体は上昇した(図4(A)参照)。

【0040】
これらの結果から、本発明によれば、センサレスで安定ポケットを探索することが可能であり、エンドミルを用いた切削加工において加工能率および加工精度を向上させることが可能であることが分かる。

【0041】
以上、本発明に係るびびり振動抑制方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。

【0042】
[変形例]
例えば、本発明は、エンドミルに振れがある場合でも適用できる。エンドミルに振れがある場合、安定限界線図は全体的に右側に移動するが、安定ポケットの間隔△Sは上記(3)式で得られる値とほぼ変化がないため、同じ操作を行えば(第1~第4ステップを行えば)安定ポケットに収束する。さらに、本発明は、エンドミルの刃数Nが2以上の場合であっても適用できる。

【0043】
上記実施形態では、エンドミルの半径方向の振動のみを考慮したが、本発明は、エンドミルが半径方向および送り方向の2方向に振動する場合であっても適用できる。ここで、半径方向とは、図1のX方向であり、エンドミル加工面の法線方向(エンドミルの半径方向で送り方向に垂直な方向)である。よって、半径方向および送り方向の2方向に振動した場合、2方向の加速度は、下記(7)式で表される。
【数7】
JP2017202555A_000009t.gif

【0044】
一般的には、a≠b、θ0x≠θ0yである。また、びびり振動周波数はX、Y方向共に等しいとし、fcx=fcyであるとすれば、特殊な状況を除いてエンドミルは楕円振動するため、エンドミルは2方向に振動する。びびり模様の理論において、エンドミルが送り方向に振動すると、エンドミルが通過する箇所の面積だけ多く切削される。そのため、びびり模様としては、鮮明に現れづらくなり模様の測定が困難になるが、現れるびびり模様に違いは生じない。したがって、本発明を適用できる。

【0045】
一方で、さらにエンドミルの剛性あるいは減衰が低下し、系の応答倍率が高くなり、びびり模様の横間隔eよりも大きく振動する場合は、エンドミルをY方向に送るとすると、びびり振動時の振幅は、切削抵抗とコンプライアンス伝達関数の積で表される。この振幅がびびり模様の横間隔eよりも小さくなければいけないので、下記(8)式を満たす必要がある。
【数8】
JP2017202555A_000010t.gif

【0046】
また、複数のモードで振動してモードカップリングが生じた場合、びびり振動が複雑になるが、本発明では、エンドミル加工面に発生した複数のびびり模様を観察し、振動周波数を推定して、エンドミルの振れによる振動かモードカップリングが発生しているのかを簡易的に判断することができる。

【0047】
さらに、上記実施形態では、第1ステップでびびり模様の横間隔eを算出し、第2ステップで補正後の横間隔eを算出し、第3ステップで横間隔eから横間隔eを差し引いた変化量△eを算出したが、本発明は、びびり模様の横間隔e、縦間隔gまたは傾斜βの少なくとも1つのパラメータPを用いることができる。言い換えれば、本発明は、第1ステップでパラメータPを算出し、第2ステップでパラメータPを算出し、第3ステップでパラメータPからパラメータPを差し引いた変化量△Pを算出することができる。

【0048】
上記実施形態では、第1補正量および第2補正量をともに正の値としているが、第1補正量および第2補正量をともに負の値とすることができる。後者の場合、上記(4)および(5)式において、pは1未満の負の補正係数となる。また、第2補正量は、第1補正量よりも絶対値が小さくなる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3