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明細書 :液晶分子配向制御方法および液晶デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-031818 (P2018-031818A)
公開日 平成30年3月1日(2018.3.1)
発明の名称または考案の名称 液晶分子配向制御方法および液晶デバイス
国際特許分類 G02F   1/13        (2006.01)
FI G02F 1/13 102
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-162033 (P2016-162033)
出願日 平成28年8月22日(2016.8.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (公開1)平成28年3月3日に公益社団法人応用物理学会の第63回応用物理学会春季学術講演会のDVDが発行された (公開2)平成28年3月20日に東京工業大学大岡山キャンパスにて公益社団法人応用物理学会の第63回応用物理学会春季学術講演会においてプレゼンテーションソフトによるプレゼンテーションデータで発表された (公開3)平成28年7月2日に公益財団法人加藤山崎教育基金軽井沢研修所にて非線形音響研究会の2016年度非線形音響研究会において論文とプレゼンテーションソフトによるプレゼンテーションデータで発表された (公開4)平成28年8月19日に一般社団法人日本液晶学会の2016年日本液晶学会討論会・液晶交流会のCD配布により発表された
発明者または考案者 【氏名】小山 大介
【氏名】清水 裕貴
【氏名】谷口 聡紀
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2H088
Fターム 2H088EA44
2H088JA29
2H088MA20
要約 【課題】透明電極を用いることなく液晶分子の配向を変化させることが可能な液晶分子配向制御方法を提供する。
【解決手段】一対の基板6、7および配向膜5で液晶材料4を挟み込んだ液晶セル2において、液晶分子4aの配向を制御する液晶分子配向制御方法であって、基板6に超音波振動子3a~3dを配置する第1ステップと、超音波振動子3a~3dに液晶セル2の共振周波数を有する電気信号を印加し、液晶セル2に格子状のたわみ振動を発生させて、液晶材料4に2次元的分布の静圧を発生させる第2ステップと、を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の基板および一対の配向膜で液晶材料を挟み込んだ構成の液晶セルにおいて、前記液晶材料を構成する液晶分子の配向を制御する液晶分子配向制御方法であって、
前記基板に超音波振動子を配置する第1ステップと、
前記超音波振動子に前記液晶セルの共振周波数を有する電気信号を印加し、前記液晶セルに格子状のたわみ振動を発生させて、前記液晶材料に2次元的分布の静圧を発生させる第2ステップと、を含む
ことを特徴とする液晶分子配向制御方法。
【請求項2】
前記第1ステップでは、前記超音波振動子として第1振動子、第2振動子、第3振動子および第4振動子を、平面視矩形状の前記液晶材料の四隅に対向するように、前記液晶材料のよりも大きい平面視矩形状の前記基板の四隅に配置し、
前記第2ステップでは、前記第1振動子、前記第2振動子、前記第3振動子および前記第4振動子に共通の前記共振周波数を有する前記電気信号を印加する
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶分子配向制御方法。
【請求項3】
前記第2ステップでは、前記第1振動子、前記第2振動子、前記第3振動子および前記第4振動子に共通の位相を有する前記電気信号を印加する
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶分子配向制御方法。
【請求項4】
前記第2ステップでは、
前記基板上の第1方向において互いに離間して配置された前記第1振動子および前記第2振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記第1方向において互いに離間して配置された前記第3振動子および前記第4振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせるか、または
前記第1方向と直交する第2方向において互いに離間して配置された前記第1振動子および前記第3振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記第2方向において互いに離間して配置された前記第2振動子および前記第4振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせる
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶分子配向制御方法。
【請求項5】
前記第2ステップでは、
前記第1振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記基板上で対角に配置された前記第2振動子および前記第3振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせるとともに、前記第2振動子および前記第3振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記基板上で前記第1振動子の対角に配置された前記第4振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせる
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶分子配向制御方法。
【請求項6】
液晶分子で構成された液晶材料と、
前記液晶材料を挟んで対向配置された一対の配向膜と、
前記液晶材料および前記一対の配向膜を挟んで対向配置された第1基板および第2基板と、を備えた液晶デバイスであって、
前記第1基板または前記第2基板の一方の基板に配置された超音波振動子を備え、
前記超音波振動子は、所定の周波数の電気信号が印加されると、前記基板に格子状のたわみ振動を発生させて、前記液晶材料に2次元的分布の静圧を発生させる
ことを特徴とする液晶デバイス。
【請求項7】
前記液晶材料は、平面視矩形状に形成されたネマティック液晶層であり、
前記基板は、前記液晶材料のよりも大きい平面視矩形状に形成されており、
前記超音波振動子は、前記液晶材料の四隅に対向するように前記基板の四隅に配置された、第1振動子、第2振動子、第3振動子および第4振動子を含み、
前記第1振動子、前記第2振動子、前記第3振動子および前記第4振動子は、前記電気信号が印加されると超音波を発生させ、前記基板に前記格子状のたわみ振動を発生させる
ことを特徴とする請求項6に記載の液晶デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶分子配向制御方法および液晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶ディスプレイ等の液晶デバイスは、液晶材料(液晶層)を一対の配向膜、ガラス基板および透明電極で挟み込んだ構造になっている(例えば、特許文献1参照)。このような構造の液晶デバイスでは、外部から電界を印加することにより液晶材料を構成する液晶分子の配向を変化させて、液晶材料の透過光量を調節している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2001-11452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の液晶デバイスでは、上記のとおり、液晶材料に電界を印加するため透明電極が必要となる。透明電極としては、一般に、酸化インジウムスズ(ITO)が用いられる。酸化インジウムスズ(ITO)は、レアメタルであるインジウムを含むこと、高い透明度と低い抵抗率の両立が困難であること、透明電極の作成手法が困難であること等の問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、透明電極を用いることなく液晶分子の配向を変化させることが可能な液晶分子配向制御方法および液晶デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶分子配向制御方法は、
一対の基板および一対の配向膜で液晶材料を挟み込んだ構成の液晶セルにおいて、前記液晶材料を構成する液晶分子の配向を制御する液晶分子配向制御方法であって、
前記基板に超音波振動子を配置する第1ステップと、
前記超音波振動子に前記液晶セルの共振周波数を有する電気信号を印加し、前記液晶セルに格子状のたわみ振動を発生させて、前記液晶材料に2次元的分布の静圧を発生させる第2ステップと、を含む
ことを特徴とする。
【0007】
上記液晶分子配向制御方法において、
前記第1ステップでは、前記超音波振動子として第1振動子、第2振動子、第3振動子および第4振動子を、平面視矩形状の前記液晶材料の四隅に対向するように、前記液晶材料のよりも大きい平面視矩形状の前記基板の四隅に配置し、
前記第2ステップでは、前記第1振動子、前記第2振動子、前記第3振動子および前記第4振動子に共通の前記共振周波数を有する前記電気信号を印加する
ことが好ましい。
【0008】
上記液晶分子配向制御方法において、
前記第2ステップでは、前記第1振動子、前記第2振動子、前記第3振動子および前記第4振動子に共通の位相を有する前記電気信号を印加する
ことができる。
【0009】
上記液晶分子配向制御方法において、
前記第2ステップでは、
前記基板上の第1方向において互いに離間して配置された前記第1振動子および前記第2振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記第1方向において互いに離間して配置された前記第3振動子および前記第4振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせるか、または
前記第1方向と直交する第2方向において互いに離間して配置された前記第1振動子および前記第3振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記第2方向において互いに離間して配置された前記第2振動子および前記第4振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせる
ことができる。
【0010】
上記液晶分子配向制御方法において、
前記第2ステップでは、
前記第1振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記基板上で対角に配置された前記第2振動子および前記第3振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせるとともに、前記第2振動子および前記第3振動子に印加する前記電気信号の位相に対して、前記基板上で前記第1振動子の対角に配置された前記第4振動子に印加する前記電気信号の位相をシフトさせる
ことができる。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る液晶デバイスは、
液晶分子で構成された液晶材料と、
前記液晶材料を挟んで対向配置された一対の配向膜と、
前記液晶材料および前記一対の配向膜を挟んで対向配置された第1基板および第2基板と、を備えた液晶デバイスであって、
前記第1基板または前記第2基板の一方の基板に配置された超音波振動子を備え、
前記超音波振動子は、所定の周波数の電気信号が印加されると、前記基板に格子状のたわみ振動を発生させて、前記液晶材料に2次元的分布の静圧を発生させる
ことを特徴とする。
【0012】
上記液晶デバイスにおいて、
前記液晶材料は、平面視矩形状に形成されたネマティック液晶層であり、
前記基板は、前記液晶材料のよりも大きい平面視矩形状に形成されており、
前記超音波振動子は、前記液晶材料の四隅に対向するように前記基板の四隅に配置された、第1振動子、第2振動子、第3振動子および第4振動子を含み、
前記第1振動子、前記第2振動子、前記第3振動子および前記第4振動子は、前記電気信号が印加されると超音波を発生させ、前記基板に前記格子状のたわみ振動を発生させる
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明電極を用いることなく液晶分子の配向を変化させることが可能な液晶分子配向制御方法および液晶デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は、本発明に係る液晶デバイスを示す図である。(B)は、(A)のB枠内における拡大図である。
【図2】本発明における透過光強度分布の測定系を示す図である。
【図3】(A)は、電気信号OFF時の透過光強度分布を示す図である。(B)は、電気信号の周波数を43.9[kHz]とした時の透過光強度分布および振動強度分布を示す図である。(C)は、電気信号の周波数を70.7[kHz]とした時の透過光強度分布および振動強度分布を示す図である。
【図4】(A)は、電気信号の周波数を43.9[kHz]とした時の透過光強度波形および振動強度波形を示す図である。(B)は、電気信号の周波数を70.7[kHz]とした時の透過光強度波形および振動強度波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る液晶分子配向制御方法および液晶デバイスの実施形態について説明する。なお、本実施形態では、図1のX軸方向を長さ方向とし、Y軸方向を幅方向とし、Z軸方向を厚み方向とする。

【0016】
(液晶デバイス)
図1(A)および(B)に、本実施形態に係る液晶デバイス1を示す。図1(A)に示すように、液晶デバイス1は、液晶セル2と、4つの超音波振動子(第1振動子3a、第2振動子3b、第3振動子3c、第4振動子3d)とを備える。

【0017】
図1(B)に示すように、液晶セル2は、本発明の「液晶材料」に相当する液晶層4と、上下1対の配向膜5と、上下1対の透明基板(第1基板6および第2基板7)とを備える。

【0018】
液晶層4は、液晶分子4aで構成されており、具体的には、誘電率異方性が負のネマティック液晶の液晶分子で構成されている。液晶層4は、スペーサ(例えば、シリカ球)によって、25[μm]程度の厚みが確保されている。液晶層4は、上下1対の配向膜5で挟まれており、周囲がシール材によって封止されている。

【0019】
上下1対の配向膜5は、液晶分子4aのプレチルト角が90度となる垂直配向膜である。配向膜5は、例えば、ポリイミド系材料で構成することができる。上下1対の配向膜5で液晶層4を挟み込むことにより、液晶層4の液晶分子4aは、デフォルト状態(超音波振動子に電気信号を印加していない状態)において、配向膜5に対して垂直に立ち上がった状態になる。

【0020】
第1基板6および第2基板7は、透明電極を介することなく、液晶層4および上下1対の配向膜5を挟み込んだ状態で対向配置されている。第1基板6および第2基板7は、ともに光を透過する透明なガラス基板で構成されている。第1基板6は、長さが80[mm]、幅が80[mm]、厚みが0.7[mm]の平面視矩形状に形成されている。第2基板7は、長さが50[mm]、幅が50[mm]、厚みが0.7[mm]の平面視矩形状に形成されている。第1基板6の中央部(外周端から15[mm]以上離れた領域)に、液晶層4、上下1対の配向膜5および第2基板7が配置されている。

【0021】
第1基板6の四隅には、液晶層4、配向膜5および第2基板7の四隅に対向するように、4つの超音波振動子(第1振動子3a、第2振動子3b、第3振動子3c、第4振動子3d)が配置されている。4つの超音波振動子は、エポキシ樹脂等の接着手段により第1基板6に固着されている。4つの超音波振動子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で構成された超音波振動子であり、長さが10[mm]、幅が10[mm]、厚みが1[mm]である。超音波振動子は、ある周波数の電気信号が印加されると、その周波数に応じた超音波を発生させる。

【0022】
本実施形態では、第1振動子3a、第2振動子3b、第3振動子3cおよび第4振動子3dに、液晶セル2全体の共振周波数を有し、かつ位相が共通の電気信号(例えば、交流電圧信号)を印加する。第1振動子3a、第2振動子3b、第3振動子3cおよび第4振動子3dは、電気信号が印加されると、その電気信号の共振周波数に応じた超音波を発生する。発生した超音波は、液晶セル2に伝搬する。

【0023】
超音波が液晶セル2に伝搬すると、液晶セル2では、格子状のたわみ振動が発生する。格子状のたわみ振動とは、長さ方向および幅方向において振動強度のピークが周期的に現れる振動のことをいい、換言すれば、2次元共振モードの超音波振動のことをいう。液晶セル2で格子状のたわみ振動が発生すると、液晶層4では、格子状のたわみ振動に応じた音響定在波が発生し、液晶層4の境界面に2次元的分布の音響放射力(静圧)が働く。音響定在波の腹の部分、すなわち音響放射力の大きい部分は、液晶分子4aに働く力も大きくなるので、当該部分に存在する液晶分子4aの配向が変化する。

【0024】
結局、本実施形態に係る液晶デバイス1では、電界により液晶分子4aの配向を変化させるのではなく、超音波振動子で液晶セル2に格子状のたわみ振動を発生させ、液晶層4に2次元的分布の静圧を発生させることで、液晶分子4aの配向を強制的に変化させる。このため、本実施形態に係る液晶デバイス1によれば、透明電極を用いることなく、液晶分子4aの配向を2次元的かつ周期的に変化させることができる。

【0025】
(液晶分子配向制御方法)
次に、本実施形態に係る液晶分子配向制御方法について説明する。

【0026】
本実施形態に係る液晶分子配向制御方法は、液晶セルに含まれる基板に超音波振動子を配置する第1ステップと、超音波振動子に電気信号を印加し、液晶セルに格子状のたわみ振動を発生させて、液晶セルに含まれる液晶材料に2次元的分布の静圧を発生させる第2ステップと、を含む。

【0027】
具体的には、第1ステップにおいて、液晶セル2を作製するか予め作製された液晶セル2を用意し、液晶層4の四隅に対向するように、第1基板6の四隅に各1つの超音波振動子(第1振動子3a、第2振動子3b、第3振動子3c、第4振動子3d)を配置する。超音波振動子は、エポキシ樹脂等の接着手段により第1基板6に固着することができる。

【0028】
次いで、第2ステップにおいて、4つの超音波振動子(第1振動子3a、第2振動子3b、第3振動子3c、第4振動子3d)に、共通の周波数および位相を有する電気信号を印加して、4つの超音波振動子から超音波を発生させる。上記周波数は、液晶セル2に格子状のたわみ振動を発生させることが可能な周波数であればよいが、液晶セル2全体の共振周波数とすることが好ましい。すなわち、液晶デバイス1の場合、配向膜5で挟まれた液晶層4、第1基板6および第2基板7のそれぞれの共振周波数を合成した周波数の電気信号を各超音波振動子に印加することが好ましい。

【0029】
超音波により液晶セル2で格子状のたわみ振動が発生すると、液晶層4では、格子状のたわみ振動に応じた音響定在波が発生し、液晶層4の境界面に2次元的分布の音響放射力(静圧)が発生する。音響定在波の腹の部分、すなわち音響放射力の大きい部分は、液晶分子4aに働く力も大きくなるので、当該部分に存在する液晶分子4aの配向が変化する。

【0030】
結局、本実施形態に係る液晶分子配向制御方法では、電界により液晶分子4aの配向を変化させるのではなく、超音波振動子で液晶セル2に格子状のたわみ振動を発生させ、液晶層4に2次元的分布の静圧を発生させることで、液晶分子4aの配向を強制的に変化させる。このため、本実施形態に係る液晶分子配向制御方法によれば、透明電極を用いることなく、液晶分子4aの配向を2次元的かつ周期的に変化させることができる。

【0031】
なお、液晶分子配向制御方法では、必要に応じて、上記電気信号の周波数や位相を制御してもよい。電気信号の周波数や位相を制御することで、音響放射力(静圧)の強度分布を制御することができ、その結果、液晶分子4aの配向を調整することができる。

【0032】
液晶層4では、電気信号の周波数に応じた音響定在波が発生し、音響定在波の腹の部分において音響放射力(静圧)が最大となり、音響定在波の節の部分において音響放射力(静圧)が最小となる。このため、電気信号の周波数を変化させると、音響定在波の腹および節の位置がシフトして、音響放射力(静圧)の強度分布が変化する。その結果、液晶分子4aの配向を変化させることができる。

【0033】
また、第1振動子3aおよび第2振動子3bに印加する電気信号の位相に対して、第3振動子3cおよび第4振動子3dに印加する電気信号の位相をシフトさせることで、音響定在波の腹および節の位置を幅方向(図1のY軸方向)にシフトさせることができる。一方、第1振動子3aおよび第3振動子3cに印加する電気信号の位相に対して、第2振動子3bおよび第4振動子3dに印加する電気信号の位相をシフトさせることで、音響定在波の腹および節の位置を長さ方向(図1のX軸方向)にシフトさせることができる。その結果、音響放射力(静圧)の強度分布をシフトさせることができる。

【0034】
また、4つの超音波振動子を3つのグループに分け、超音波振動子に印加する電気信号の位相をグループ単位でシフトさせてもよい。例えば、4つの超音波振動子を第1振動子3aのグループと、第2振動子3bおよび第3振動子3cのグループと、第4振動子3dのグループに分け、第1振動子3aに印加する電気信号の位相に対して、第2振動子3bおよび第3振動子3cに印加する電気信号の位相を45度シフトさせ、第2振動子3bおよび第3振動子3cに印加する電気信号の位相に対して、第4振動子3dに印加する電気信号の位相をさらに45度シフトさせてもよい。これにより、音響定在波の腹および節の位置を斜め方向(図1のX軸およびY軸に対して45度方向、換言すれば、第1振動子3aと第4振動子3dとを結ぶ方向)にシフトさせることができる。

【0035】
(評価実験)
次に、液晶デバイス1を用いた液晶分子配向制御方法の評価実験について説明する。

【0036】
本評価実験では、4つの超音波振動子(第1振動子3a、第2振動子3b、第3振動子3c、第4振動子3d)に印加する電気信号の周波数を変えて、液晶セル2の透過光強度および振動強度を測定した。振動強度については、レーザドップラー振動計(LDV)により測定した。

【0037】
一方、透過光強度については、図2に示す測定系によって測定した。すなわち、クロスニコルに配置した2枚の偏光板10、11で液晶セル2を挟み、偏光板10側に配置したレーザ光源12から液晶セル2の厚み方向(偏光板10から偏光板11に向かう方向)にレーザ光を照射し、偏光板11側に配置した光検出器13で偏光板10、11および液晶セル2を透過したレーザ光(透過光)を検出した。レーザ光源12としては、ピーク波長が632.8[nm]、ビーム幅が2[mm]のレーザ光を照射するHe-Neレーザを用いた。

【0038】
図3(A)は、超音波振動子に電気信号を印加しない場合における透過光強度分布である。図3(B)は、4つの超音波振動子に周波数が43.9[kHz]の電気信号を同位相で印加した場合における透過光強度分布(左図)および振動強度分布(右図)である。図3(C)は、4つの超音波振動子に周波数が70.7[kHz]の電気信号を同位相で印加した場合における透過光強度分布(左図)および振動強度分布(右図)である。

【0039】
上記の43.9[kHz]および70.7[kHz]の周波数は、いずれも液晶セル2の共振周波数である。また、図3(A)~(C)の左図(透過光強度分布)および右図(振動強度分布)は、いずれも図2に示す液晶セル2のA領域に相当するものである。

【0040】
図3(A)から、超音波振動子に電気信号を印加しない場合は、透過光強度が極めて小さいことが分かる。これは、超音波振動子に電気信号を印加しない場合は、液晶分子4aがレーザ光の偏光状態に及ぼす影響が極めて小さく、レーザ光(透過光)が偏光板11により遮断されたためと考えられる。

【0041】
一方、図3(B)および(C)の透過光強度分布から、超音波振動子に電気信号を印加した場合は、透過光強度が大きくなっていることが分かる。これは、液晶セル2に格子状のたわみ振動が発生したことにより(図3(B)および(C)の振動強度分布参照)、液晶層4に2次元的分布の静圧が発生し、その静圧により液晶分子4aの配向が2次元的に変化して、レーザ光の偏光状態が変化したためと考えられる。この結果から、液晶セル2で発生する格子状のたわみ振動を制御することにより、液晶分子4aの配向を2次元的に制御できることが分かる。

【0042】
図4(A)は、A領域の中心線上すなわち図3(B)のC-C’線上における透過光強度波形および振動強度波形である。図4(B)は、A領域の中心線上すなわち図3(C)のC-C’線上における透過光強度波形および振動強度波形である。図4(A)および(B)において、実線波形が透過光強度波形であり、破線波形が振動強度波形である。また、図3(B)の丸a、丸bおよび図3(C)の丸c、丸dは、いずれも透過光強度ピークを示す。

【0043】
図4(A)および(B)から、超音波振動子に印加する電気信号の周波数を変更することで、透過光強度ピークの間隔および振動強度ピークの間隔が変化することが分かる。具体的には、電気信号の周波数を43.9[kHz]から70.7[kHz]に変更することで、透過光強度ピークの間隔および振動強度ピークの間隔が小さくなる。

【0044】
振動強度ピークの間隔が変化したのは、電気信号の周波数を変更したことにより、液晶セル2で発生する格子状のたわみ振動の周波数が変化したためと考えられる。一方、透過光強度ピークの間隔が変化したのは、液晶セル2で発生する格子状のたわみ振動の周波数が変化したことにより、液晶層4で発生する音響定在波の腹および節の位置が変化して音響放射力(静圧)の強度分布が変化し、当該強度分布に応じて液晶分子4aの配向が変化したためと考えられる。この結果から、超音波振動子に印加する電気信号の周波数を制御することで、液晶セル2で発生する格子状のたわみ振動を制御することができ、液晶分子4aの配向を2次元的に制御できることが分かる。

【0045】
以上、本発明に係る液晶分子配向制御方法および液晶デバイスの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。

【0046】
液晶セル2を構成する液晶層4、配向膜5、第1基板6および第2基板7は、液晶セル2に格子状のたわみ振動を発生させることができるのであれば、その構造、形状、寸法、材料等を適宜変更することができる。例えば、液晶層4は、誘電率異方性が負のネマティック液晶以外の液晶分子で構成することができ、配向膜5は、垂直配向膜以外の配向膜で構成することができる。

【0047】
超音波振動子は、液晶セル2に格子状のたわみ振動を発生させることができるのであれば、その構造、形状、寸法、材料、数量、配置場所等を適宜変更することができる。例えば、超音波振動子の数は、3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。なお、液晶セル2に格子状のたわみ振動を発生させることができるか否かは、レーザドップラー振動計(LDV)の測定等により予め知ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 液晶デバイス
2 液晶セル
3a、3b、3c、3d 超音波振動子
4 液晶層(液晶材料)
4a 液晶分子
5 配向膜
6 第1基板
7 第2基板
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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