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明細書 :脳活動状態定量化方法および脳活動状態計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-046899 (P2018-046899A)
公開日 平成30年3月29日(2018.3.29)
発明の名称または考案の名称 脳活動状態定量化方法および脳活動状態計測装置
国際特許分類 A61B   5/055       (2006.01)
A61B   5/1455      (2006.01)
FI A61B 5/05 382
A61B 5/05 380
A61B 5/14 322
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-182662 (P2016-182662)
出願日 平成28年9月20日(2016.9.20)
発明者または考案者 【氏名】日和 悟
【氏名】廣安 知之
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
4C096
Fターム 4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C096AA20
4C096DA11
4C096DC25
要約 【課題】脳活動の状態を定量化すると共に、平面上に位置情報として表示できる方法を提供する。
【解決手段】脳の活動状態を、脳の部位間のつながりの中心性を示す第1の特徴量と、脳の賦活状態を示す第2の特徴量で表し、平面上の直交座標系の2つの座標軸のうち一方の座標軸を前記第1の特徴量に対応させ、かつ他方の座標軸を前記第2の座標軸に対応させ、脳の活動状態を、前記直交座標系に点として表示する。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
人間の脳における活動の状態を定量化し、その値を平面上に位置情報として表示する脳活動状態定量化方法であって、
脳の活動状態を、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量と、脳の賦活状態を示す第2の特徴量で表し、
前記平面上の直交座標系の2つの座標軸のうち一方の座標軸を前記第1の特徴量に対応させ、かつ他方の座標軸を前記第2の座標軸に対応させ、脳の活動状態を、前記直交座標系に点として表示することを特徴とする脳活動状態定量化方法。
【請求項2】
脳の任意の部位における前記第1および第2の特徴量を、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)により得られる時系列データを用いて算出する、請求項1に記載の脳活動状態定量化方法。
【請求項3】
前記時系列データは、脳の任意のボクセルの時系列データ、または複数のボクセルの時系列データの加算平均により得られる、請求項2に記載の脳活動状態定量化方法。
【請求項4】
前記第1の特徴量は、脳の任意の部位における前記時系列データを、他の部位の時系列データと比較して相関係数を算出すると共に、当該相関係数の算出を前記他の全ての部位に対して行い、算出された当該相関係数を用いて、下記のいずれかの方法によって求める、請求項3に記載の脳活動状態定量化方法。
(a)前記算出された相関係数をそのまま加え合わせて、任意の部位における第1の特徴量とする。
(b)前記算出された相関係数について、所定の閾値以上の値を示すものについて部位間の結合があると判定し、任意の部位において、相関係数が閾値以上で有る部位の数を算出し、その値を第1の特徴量とする。
(c)全ての部位間の前記相関係数を、同じ部位間の相関係数が対角要素となるように配置した相関係数行列に対して行列の最大固有値に対応する固有ベクトルを求め、その固有ベクトルの各要素の値を任意の部位における第1の特徴量とする。
【請求項5】
前記第2の特徴量は、以下の手順により求められる、請求項3または4に記載の脳活動状態定量化方法。
(a)脳の任意の部位における時系列データを、高速フーリエ変換を用いて周波数スペクトルに変換する。
(b)変換された前記周波数スペクトルの特定の周波数帯の二乗平均平方根を、全周波数帯の二乗平均平方根で除算する。
【請求項6】
前記第1の特徴量および第2の特徴量のデータを、線形判別分析、非線形判別分析または主成分分析のいずれかの手法を用いて次元の削減を行うことにより、それぞれ一次元のデータに変換する、請求項4または5に記載の脳活動状態定量化方法。
【請求項7】
人間の脳の活動状態を示す時系列データに基づいて、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量を算出する第1特徴量算出部と、
前記時系列データに基づいて、脳の賦活状態を示す第2の特徴量を算出する第2特徴量算出部と、
前記第1特徴量算出部から出力された第1の特徴量のデータおよび前記第2特徴量算出部から出力された第2の特徴量のデータについてそれぞれ線形判別分析、非線形判別分析または主成分分析のいずれかの手法を用いて次元の削減を行うことにより、一次元のデータに変換する分析部と、
前記分析部で一次元のデータに変換された第1および第2の特徴量のデータを、平面上の直交座標系の2つの座標軸に対応させて、脳活動の状態を直交座標系に点として表示する表示部と、を備えたことを特徴とする脳活動状態計測装置。
【請求項8】
脳の任意の部位における前記第1および第2の特徴量を、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)、近赤外分光計測または脳波計測のいずれかにより得られる脳活動の時系列データを用いて算出する、請求項7に記載の脳活動状態計測装置。
【請求項9】
前記時系列データは、脳の任意のボクセルの時系列データ、または複数のボクセルの時系列データの加算平均により得られる、請求項8に記載の脳活動状態計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人の様々な脳活動の状態を定量化して表示する方法およびその方法を採用した脳活動状態の計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳の賦活レベル(活動の強さ)は、磁気共鳴画像装置(以降、「MRI装置」という)などによる計測で定量化できるが(非特許文献1参照)、脳内の複数の領域がどのように繋がり、協調して活動しているかを賦活レベルから判断することはできない。
【0003】
一方、脳内の部位間の協調関係(機能的結合性)を定量化する方法として、脳活動の時系列データの相関係数を求める方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上述の方法では、活動の相対変化の類似度だけが考慮され、賦活レベルが無視されるために、活動していない脳部位間も協調関係があるとみなされる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2015-62817号公報
【0006】

【非特許文献1】心理学評論56巻3号414~454頁(2013年112月25日出版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、脳活動の状態を正確に、かつ定量的に表す方法は、未だ確立されていない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたもので、脳活動の状態を定量化すると共に、平面上に位置情報として表示できる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明にかかる脳活動状態定量化方法は、人間の脳における活動の状態を定量化し、その値を平面上に位置情報として表示する脳活動状態定量化方法であって、
脳の活動状態を、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量と、脳の賦活状態を示す第2の特徴量で表し、
前記平面上の直交座標系の2つの座標軸のうち一方の座標軸を前記第1の特徴量に対応させ、かつ他方の座標軸を前記第2の座標軸に対応させ、脳の活動状態を、前記直交座標系に点として表示することを特徴とする。
【0010】
本発明において、脳の任意の部位における前記第1および第2の特徴量を、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)により得られる時系列データを用いて算出することが好ましい。前記時系列データは、脳の任意のボクセルの時系列データ、または複数のボクセルの時系列データの加算平均により得られる。
【0011】
ここで、前記第1の特徴量は、脳の任意の部位における前記時系列データを、他の部位の時系列データと比較して相関係数を算出すると共に、当該相関係数の算出を前記他の全ての部位に対して行い、算出された当該相関係数を用いて、下記のいずれかの方法によって求めることが好ましい。
(a)前記算出された相関係数をそのまま加え合わせて、任意の部位における第1の特徴量とする。
(b)前記算出された相関係数について、所定の閾値以上の値を示すものについて部位間の結合があると判定し、任意の部位において、相関係数が閾値以上で有る部位の数を算出し、その値を第1の特徴量とする。
(c)全ての部位間の前記相関係数を、同じ部位間の相関係数が対角要素となるように配置した相関係数行列に対して行列の最大固有値に対応する固有ベクトルを求め、その固有ベクトルの各要素の値を任意の部位における第1の特徴量とする。
【0012】
また前記第2の特徴量は、以下の手順により求めることが好ましい。
(a)脳の任意の部位における時系列データを、高速フーリエ変換を用いて周波数スペクトルに変換する。
(b)変換された前記周波数スペクトルの特定の周波数帯の二乗平均平方根を、全周波数帯の二乗平均平方根で除算する。
【0013】
また前記第1の特徴量および第2の特徴量のデータを、線形判別分析、非線形判別分析または主成分分析のいずれかの手法を用いて次元の削減を行うことにより、それぞれ一次元のデータに変換することが好ましい。
【0014】
また本発明に係る脳活動状態計測装置は、
人間の脳の活動状態を示す時系列データに基づいて、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量を算出する第1特徴量算出部と、
前記時系列データに基づいて、脳の賦活状態を示す第2の特徴量を算出する第2特徴量算出部と、
前記第1特徴量算出部から出力された第1の特徴量のデータおよび前記第2特徴量算出部から出力された第2の特徴量のデータについてそれぞれ線形判別分析、非線形判別分析または主成分分析のいずれかの手法を用いて次元の削減を行うことにより、一次元のデータに変換する分析部と、
前記分析部で一次元のデータに変換された第1および第2の特徴量のデータを、平面上の直交座標系の2つの座標軸に対応させて、脳活動の状態を直交座標系に点として表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる脳活動状態定量化方法を採用すれば、脳活動の状態を、2つの特徴量として定量化すると共に、平面上の直交座標系の位置情報として、視覚を通じて確認できるために、脳活動の状態を客観的かつ容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】人間の脳のボクセルで得られるBOLD信号を示す図である。
【図2】AALにより分類された脳の各部位を示す断面図である。
【図3】脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量の算出手順を説明する図である。
【図4】脳活動の賦活状態を示す第2の特徴量の算出手順を説明する図(その1)である。
【図5】脳活動の賦活状態を示す第2の特徴量の算出手順を説明する図(その2)である。
【図6】脳の各部位において算出された第1および第2の特徴量のデータを示す図である。
【図7】平面上の直交座標系にプロットされた脳活動の状態を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる脳活動状態計測装置の全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態にかかる脳活動状態定量化方法および脳活動状態計計測装置について、図面を参照して説明する。

【0018】
<脳活動状態定量化の原理>
最初に、本発明における脳活動状態の定量化の原理について説明する。本発明における脳活動状態の定量化は、人の様々な脳活動の状態を定量化して平面上の直交座標系に表示するもので、1つの座標軸を、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量に対応させ、もう1つの座標軸を、脳活動の賦活状態を示す第2の特徴量に対応させている。

【0019】
上述の第1および第2の特徴量は、脳活動の状態を示す時系列データに基づいて算出されるが、本発明では、この時系列データとして、fMRIにより得られるデータを用いている。以下、fMRIについて説明する。

【0020】
fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)は、「機能的核磁気共鳴画像法」の略で、fは「機能的」を意味しており、MRI装置を用いて生体情報、特に脳活動の状態を計測する方法である(非特許文献1参照)。

【0021】
強力な磁場の中に人体を置いて、そこに電波を放つと水および脂肪の構成元素である水素原子核が反応し共鳴する。MRI装置は、その原理を用いて得られた信号データを画像化することにより、人体の断層画像を得るものである。

【0022】
fMRIは、MRI装置を用いて脳の活動状態を計測することを目的として開発された。血液中には、酸素と結合したオキシヘモグロビンと結合していないヘモグロビンの2つがある。酸素は人間にとってエネルギーとして使われる。つまり、神経細胞が活動を行った時に、その細胞は酸素を必要とし、血液のオキシヘモグロビンを求める。

【0023】
酸素を細胞に与えたヘモグロビンはデオキシヘモグロビンになるため、血中のオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの比率が変化する。神経細胞が活動を行うと、オキシへモグロビンが減ると同時に、それを防ぐため血流量が変化し、その部分に多くのオキシヘモグロビンが送られ、結果として、デオキシヘモグロビンが相対的に減少する。

【0024】
デオキシヘモグロビンの構造には磁場を不均一にさせる性質があり、活動があった神経細胞の部分ではデオキシヘモグロビンが減少するため、MRI信号はその領域だけ上昇する。これによりMRI装置で脳活動に関連した計測を行うことができる。この現象を一般にBOLD効果(Blood Oxygenation Level Dependent Effect)という。

【0025】
fMRIは、薬剤や放射性物質等を使用しないで検査を行うことができ、また数秒単位の時間的分解能、1mm以下の空間分解能を実現できる。以下の説明では、fMRIにより得られる時系列データを「BOLD信号」という。

【0026】
図1に、人間の脳の複数のボクセルで得られるBOLD信号を示す。ボクセル(Voxel)は3次元空間での正規格子単位であり、例えば脳を(1×1×1mm)の立方体に分割した各領域を示す。図中、BOLD信号の横軸は経過時間を表し、縦軸は信号の強度を表す。図では、部位の異なる3つのボクセルで得られるBOLD信号を示しているが、実際には、すべてのボクセルでBOLD信号が得られる。

【0027】
一方、脳の部位は、解剖学的に116の部位に分類される。この分類方法を一般にAAL(Automated Anatomical Labeling)という。図2は、AALにより分類された脳の各部位を、明度を変えて表示した断層像である。本実施の形態では、脳活動の状態を示す時系列データとして、図2に示す116に分類された部位ごとに、それぞれの部位に含まれるボクセルから出力されるBOLD信号を加算平均した信号を用いる。

【0028】
次に、図3を参照して、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量の求め方について説明する。図3(a)は、AALにより分類された任意の部位に含まれるボクセルで得られるBOLD信号を加算平均化した信号である。図中、横軸は経過時間を示し、縦軸は信号の強度を示す。

【0029】
第1の特徴量を求めるに際しては、図3(a)に示したBOLD信号を、AALにより分類される116のすべての部位において生成した後、それぞれのBOLD信号の相関係数を算出する。相関係数は、信号波形の類似の程度を示すもので、算出方法については、前述の特許文献1に詳しく説明されているため、説明を省略する。

【0030】
第1の特徴量の算出方法について具体的に説明する。脳の任意の部位におけるBOLD信号を他の部位におけるBOLD信号とそれぞれ比較して相関係数を算出する。この処理を全ての部位において行うことで、脳の部位ごとに115の相関係数が得られる。

【0031】
このようにして算出された脳の各部位における115の相関係数を用い、下記のいずれかの方法によって、任意の部位における第1の特徴量を算出する。
(a)前記算出された115の相関係数をそのまま加え合わせて任意の部位における第1の特徴量とする。
(b)前記算出された115の相関係数について、所定の閾値以上の値を示すものについて部位間の結合があると判定し、任意の部位において、相関係数が閾値以上で有る部位の数を算出し、その値を第1の特徴量とする。
(c)全ての部位間の前記相関係数を、同じ部位間の相関係数が対角要素となるように配置した相関係数行列に対して行列の最大固有値に対応する固有ベクトルを求め、その固有ベクトルの各要素の値を任意の部位における第1の特徴量とする。

【0032】
図3(b)に、上述の第3の方法により算出した相関係数行列の一例を示す。図3(b)に示す行列の縦軸および横軸は116の部位を示し、図でははっきりしないが、横軸の部位と縦軸の部位が交差する位置に、相関係数の強さを色と明度の違いにより表示している。当然のことながら、行列には、脳の全ての部位間の相関係数が、同じ部位間の相関係数が対角要素となるように配置されている。

【0033】
図3(c)は、図3(b)の相関係数行列に基づいて作成した第1の特徴量を示すグラフである。図3(c)の横軸は、ALLにより分類された116の部位を示す。一方、縦軸は、例としてAALによる116の各部位において、他の全ての部位との相関係数を加え合わせた値を示し、この値が大きい程、他の部位とのつながりが強いか、または多くの部位とのつながりがある、すなわち脳の活動において重要な役割を果たしていることを示す。

【0034】
次に、図4および図5を参照して、脳活動の賦活状態を示す第2の特徴量の求め方について説明する。図4(a)は脳の任意のボクセルにおいて生成されたBOLD信号を示したもので、横軸は時間の経過を示し、縦軸は信号の強度を示している。

【0035】
図4(a)に示したBOLD信号を高速フーリエ変換すると図4(b)に示すグラフが得られる。図4(b)において横軸はBOLD信号に含まれる周波数スペクトラムを示し、縦軸は信号のパワーを示す。

【0036】
図4(b)のグラフのデータを、下記式に基づいて算出すると、そのボクセルにおける脳活動の強さを示す値fALFFが得られる。

【0037】
【数1】
JP2018046899A_000003t.gif

【0038】
fALFF(fractional Amplitude of Low-Frequency Fluctuation)は脳の「自発的振動」をBOLD信号のパワースペクトラムにより定量化したもので、当該ボクセルにおける脳活動の強さを示している。

【0039】
図5を参照して、上述したfALFFを、AALにより分類された脳の116の部位ごとに求める際の手順を説明する。図5(a)は、任意の部位に含まれる複数のボクセルのBOLD信号を平均化した信号であり、この信号を図4で説明したのと同様の手順で処理して、部位毎のfALFFを求める。

【0040】
図5(b)は、このようにして算出した部位毎のfALFFの値であり、横軸はAALによる部位を示し、縦軸はfALFFの強度を示す。なお、図5(b)では、fALFFを、脳の全部位における加算平均値が0、標準偏差が1となるように正規化を行った値を表示している。

【0041】
なお、本実施の形態では、AALによる116の部位ごとに第1および第2の特徴量を算出したが、単独のボクセル毎、または隣接する複数のボクセルごとに第1および第2の特徴量を算出するようにしてもよい。BOLD信号を脳の部位ごとに加算平均しない場合には、前記fALFFをボクセルごとに求める。BOLD信号を部位ごとに平均化するかどうかは、中心性の特徴量を算出する場合の処理と一致させる。

【0042】
次に、図6および図7を参照して、このようにして算出した第1および第2の特徴量を平面上の直交座標系にプロットして、脳の活動状態を位置情報として視覚化する方法について説明する。

【0043】
図6(a)に示すように、脳部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量は、AALにより分割された116の部位のそれぞれから求められる。そして、被験者がN人いる場合には、第1の特徴量に関するN個のグラフが得られる。

【0044】
同様に、図6(b)に示すように、脳活動の賦活状態を示す第2の特徴量も、AALによって分割された116の部位のそれぞれから求められる。そして、被験者がN人いる場合には、第2の特徴量に関するN個のグラフが得られる。

【0045】
従って、116のそれぞれの部位について、直交座標系を構成するx軸およびy軸に第1の特徴量および第2の特徴量をプロットすることにより、脳の活動状態を平面上の位置情報(点)として視覚化できる。

【0046】
N人の被験者に同一の活動を行わせ、その際に得られる第1および第2の特徴量を平面上の直交座標系にプロットすることにより、各部位においてどのような傾向が現れるかを把握することができる。またそれを異なる活動ごとに比較することによって、活動毎の特徴を評価することもできる。

【0047】
しかし、脳の116の部位のそれぞれについて、直交座標系に表示された断片的な情報に基づいて脳の活動状態を評価することは、現実的に困難であり、このままでは脳の活動状態を評価する情報として活用することが難しい。そのため、評価する次元の数を削減して、第1の特徴量および第2の特徴量を、直交座標系の2つの座標軸のそれぞれに対応させることが好ましい。

【0048】
本発明では、上述した116の各部位で得られた第1および第2の特徴量の多次元データを一次元のデータに次元削減して、平面上の直交座標系に表示できるようにしている。次元削減は、線形判別分析、非線形判別分析、または主成分分析のいずれかを用いて行う。

【0049】
線形判別分析または非線形判別分析の場合は、2以上のfMRIデータから構成される脳状態を2群用意し、前記2群を判別するための判別軸を求め、前記判別軸を一次元データとして使用する。

【0050】
一方、主成分分析を用いる場合は、前記脳活動データに対して第1主成分軸を求め、前記第1主成分軸を一次元データとして用いる。この他、サポートベクターマシーンやニューラルネットワークなどの機械学習の方法を用いてもよい。

【0051】
図7は、このようにして一次元のデータに変換された第1の特徴量を、中心性スコアを表すx軸の値とし、第2の特徴量を、強度スコアを表すy軸の値として、直交座標系にプロットしたものである。

【0052】
ここで、x軸の名称を「中心性スコア」としたのは、第1の特徴量が脳活動において中心的な役割を果たす程度を示しているからである。「中心性」という言葉は、グラフ理論の中で用いられており、ネットワークにおける点(ノード)の重要度を、そのノードが他のノードとどれだけつながっているかなどの指標で表すものである。一方、y軸の名称を「強度スコア」としたのは、第2の特徴量が脳活動の賦活状態の強さを示しているからである。

【0053】
図7において、△印は、6名の被験者について、安静時に計測した第1および第2の特徴量を前述の手順に従って算出し、その値をプロットしたものである。同様に○印は、6名の被験者について、簡単な計算を行った時に計測した第1および第2の特徴量を同様の方法で算出し、その値をプロットしたものである。

【0054】
図7から明らかなように、安静時と活動時のそれぞれにおいて、ばらつきがあるものの、プロットされた6名の被験者の点が近似した場所に位置しており、また安静時に右下にあった点が、活動時には、矢印で示したように左上に移動している。

【0055】
上述の結果より、被験者の脳活動の状態を、平面上の直交座標系における位置情報として把握できることが分かる。逆に言えば、平面上の直交座標系にプロットされた点の位置から、被験者の脳がどのような活動状態にあるかを、推測することが可能となる。

【0056】
<脳活動状態計測装置>
図8に、本発明に係る脳活動状態定量化方法を実現する計測装置の構成を示す。
脳活動状態計測装置(以降、単に「計測装置」という)1は、MRI装置2から出力されたBOLD信号に基づいて前述した第1および第2の特徴量を算出すると共に、その値を平面上の直交座標系にプロットしてディスプレイに表示するものである。

【0057】
計測装置1は、インターフェース11、第1特徴量算出部12、第2特徴量算出部13、分析部14、表示部15および制御部16を備えている。計測装置1は、市販のパーソナルコンピュータ(以降、「PC」という)によって実現され、インターフェース11、第1特徴量算出部12、第2特徴量算出部13、分析部14および制御部16の機能は、メモリに格納されたプログラムを読み出してCPUで実行することにより実現される。また表示部15の機能は液晶ディスプレイ等によって実現される。

【0058】
図中、細い矢印の線で示したように、制御部16は、インターフェース11、第1特徴量算出部12、第2特徴量算出部13、分析部14および表示部15の各部の動作を制御する。

【0059】
また図示しないが、計測装置1には、処理に必要なデータを入力するキーボードや、第1特徴量算出部12、第2特徴量算出部13および分析部14で算出したデータを格納するHDDドライブが含まれる。

【0060】
次に、計測装置1における処理の流れを説明する。MRI装置2から出力されたBOLD信号はインターフェース11に入力され、PCで処理しやすいフォーマットのデータに変換される。

【0061】
インターフェース11で変換されたデータは、第1特徴量算出部12に入力され、図3を用いて説明した処理が施されて、図3(c)に示す第1の特徴量のデータが生成される。またインターフェース11で変換されたデータは、第2特徴量算出部13にも入力され、図4および図5を用いて説明した処理が施されて、図5(b)に示す第2の特徴量のデータが算出される。

【0062】
第1特徴量算出部12で算出された第1の特徴量のデータおよび第2特徴量算出部13で算出された第2の特徴量のデータは、分析部14に入力され、図6および図7を用いて説明した次元削減の処理が施されて、直交座標系のx軸に対応した中心性スコアおよびy軸に対応した強度スコアのデータが算出される。

【0063】
分析部14によって生成された中心性スコアおよび強度スコアのデータは、図7に示したように、直交座標系にプロットされて表示部15の画面に表示され、脳活動の状態が平面上の位置情報(点)として、視覚を通して確認できる。

【0064】
以上説明したように、本実施の形態に係る脳活動状態定量化方法は、脳の活動状態を、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量と、脳活動の賦活状態を示す第2の特徴量を用いて、平面上の直交座標系にプロットするものであり、従来、把握が難しかった脳の活動状態を、中心性スコアと強度スコアを2軸とする直交座標系の位置情報として把握できるため、様々な活用が期待できる。

【0065】
例えば、同一活動下における複数の被験者の活動状態のデータを比較することにより、当該活動に対応した直交座標系の位置情報の傾向を把握できる。また単一の被験者に異なる脳活動をさせたときの位置情報を比較することにより、活動の種類に対応した位置情報の傾向を把握できる。

【0066】
なお、本実施の形態では、脳活動の状態を示す時系列データとして、fMRIにより得られるBOLD信号を用いたが、必ずしもこの信号に限定されない。計測装置をより小型で、携帯できるようにするために、近赤外分光計測(Near Infrared Spectroscopy)で得られるオキシヘモグロビン変化量やデオキシヘモグロビン変化量、または前記オキシヘモグロビン変化量とデオキシヘモグロビン変化量との和の時系列データ、あるいは脳波計測(Electroencephalogram)により得られる脳波電圧の時系列データを用いてもよい。

【0067】
また本実施の形態では、脳の部位間のつながりにおける中心性を示す第1の特徴量として、相関係数行列を用いて算出されたデータを用いたが、脳の部位間のつながりにおける中心性を示すものであれば、他のデータを用いてもよい。同様に、本実施の形態では、脳活動の賦活状態を示す第2の特徴量として、fALFFを用いたが、これに限定されない。脳活動の賦活状態を示す他のデータを用いてもよいことは、云うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1 脳活動状態計測装置
2 MRI装置
11 インターフェース
12 第1特徴量算出部
13 第2特徴量算出部
14 分析部
15 表示部
16 制御部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7