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明細書 :液晶可変焦点レンズおよび焦点距離制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6414994号 (P6414994)
公開番号 特開2018-092069 (P2018-092069A)
登録日 平成30年10月12日(2018.10.12)
発行日 平成30年10月31日(2018.10.31)
公開日 平成30年6月14日(2018.6.14)
発明の名称または考案の名称 液晶可変焦点レンズおよび焦点距離制御方法
国際特許分類 G02F   1/13        (2006.01)
G02B   3/14        (2006.01)
G02B   1/06        (2006.01)
G02B   3/00        (2006.01)
FI G02F 1/13 505
G02B 3/14
G02B 1/06
G02B 3/00 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2016-236802 (P2016-236802)
出願日 平成28年12月6日(2016.12.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 (公開1)平成28年10月にAcoustical Society of America(米国音響学会)のウェブサイトのアドレスhttp://acousticalSociety.orgにて5▲th▼ Joint Meeting of the Acoustical Society of America and Acoustical Society of Japan(第5回日米音響学会ジョイントミーティング)の予稿集の要旨が公開された。 (公開2)平成28年12月1日にAcoustical Society of America(米国音響学会)及び一般社団法人日本音響学会主催の5th Joint Meeting of the Acoustical Society of America and Acoustical Society of Japan(第5回日米音響学会ジョイントミーティング)においてプレゼンテーションソフトによるプレゼンテーションデータによって発表された。
審査請求日 平成29年9月19日(2017.9.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】小山 大介
【氏名】清水 裕貴
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】岩村 貴
参考文献・文献 特開2013-142867(JP,A)
特開2013-061549(JP,A)
特表2010-518444(JP,A)
特開2006-078650(JP,A)
特開平09-005695(JP,A)
特公昭48-037853(JP,B1)
米国特許第4338821(US,A)
調査した分野 G02F 1/13
G02B 1/06
G02B 3/14
G02B 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
液晶分子からなる液晶層と前記液晶層を挟んで対向配置された第1基板および第2基板とを含む液晶レンズを備える、液晶可変焦点レンズであって、
前記第1基板または前記第2基板の少なくとも一方の基板に配置された、前記液晶レンズの共振周波数に一致した周波数をもつ超音波を発生させる超音波振動子を備え、
前記超音波振動子は、
振動強度が前記液晶層の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる1次モードのたわみ振動を前記液晶レンズに発生させ、前記液晶層の厚みを変化させて前記液晶分子の配向を変化させる
ことを特徴とする液晶可変焦点レンズ。
【請求項2】
前記超音波振動子は、前記第1基板に配置され、かつ前記液晶層および前記第2基板から離れている
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶可変焦点レンズ。
【請求項3】
前記第1基板は、円盤形状に形成され、
前記液晶層および前記第2基板は、前記第1基板よりも小径の円盤形状に形成され、前記第1基板の中心側に配置され、
前記超音波振動子は、前記液晶層および前記第2基板の径よりも大きく、かつ前記第1基板の径よりも小さい内径をもつ円環形状に形成され、開口部に前記液晶層および前記第2基板が収まるように前記第1基板に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶可変焦点レンズ。
【請求項4】
前記液晶層は、ネマティック液晶層である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶可変焦点レンズ。
【請求項5】
第1基板および第2基板で液晶層を挟み込んだ液晶レンズの焦点距離を制御する焦点距離制御方法であって、
前記液晶レンズの共振周波数に一致した周波数をもつ超音波を発生させる超音波振動子を用いて、振動強度が前記液晶層の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる1次モードのたわみ振動を前記液晶レンズに発生させ、前記液晶層の厚みを変化させて前記液晶層の液晶分子の配向を変化させる
ことを特徴とする焦点距離制御方法。
【請求項6】
前記超音波振動子に印加する入力電圧の周波数を固定した状態で、前記入力電圧の振幅値を変化させる
ことを特徴とする請求項5に記載の焦点距離制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶可変焦点レンズおよび焦点距離制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラモジュールに搭載される光学レンズとして、可変焦点レンズが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された可変焦点レンズは、圧電アクチュエータによってレンズ形状が変わり、焦点距離が変わる。この可変焦点レンズがカメラモジュールに搭載された場合、圧電アクチュエータの存在により、カメラモジュールの薄型化が制限される。
【0003】
別の光学レンズとして、液晶可変焦点レンズが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載された液晶可変焦点レンズは、透明電極に電圧が印加されることによって液晶層の屈折率が変わり、焦点距離が変わる。透明電極には、一般に、酸化インジウムスズ(ITO)が用いられる。酸化インジウムスズ(ITO)は、レアメタルであるインジウムを含むこと、高い透明度と低い抵抗率の両立が困難であること、透明電極の作成手法が困難であること等の問題がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2001-257932号公報
【特許文献2】特開2009-80152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、薄型化が可能で、かつ透明電極を用いることなく焦点距離を変えることが可能な、液晶可変焦点レンズおよび焦点距離制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶可変焦点レンズは、
液晶分子からなる液晶層と前記液晶層を挟んで対向配置された第1基板および第2基板とを含む液晶レンズを備える、液晶可変焦点レンズであって、
前記第1基板または前記第2基板の少なくとも一方の基板に配置された、前記液晶レンズの共振周波数に一致した周波数をもつ超音波を発生させる超音波振動子を備え、
前記超音波振動子は、
振動強度が前記液晶層の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる1次モードのたわみ振動を前記液晶レンズに発生させ、前記液晶層の厚みを変化させて前記液晶分子の配向を変化させる
ことを特徴とする。
【0007】
上記液晶可変焦点レンズにおいて、
前記超音波振動子は、前記第1基板に配置され、かつ前記液晶層および前記第2基板から離れている
ことが好ましい。
【0008】
上記液晶可変焦点レンズは、
前記第1基板は、円盤形状に形成され、
前記液晶層および前記第2基板は、前記第1基板よりも小径の円盤形状に形成され、前記第1基板の中心側に配置され、
前記超音波振動子は、前記液晶層および前記第2基板の径よりも大きく、かつ前記第1基板の径よりも小さい内径をもつ円環形状に形成され、開口部に前記液晶層および前記第2基板が収まるように前記第1基板に配置されている
ように構成できる。
【0009】
上記液晶可変焦点レンズにおいて、例えば、
前記液晶層は、ネマティック液晶層である。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る焦点距離制御方法は、
第1基板および第2基板で液晶層を挟み込んだ液晶レンズの焦点距離を制御する焦点距離制御方法であって、
前記液晶レンズの共振周波数に一致した周波数をもつ超音波を発生させる超音波振動子を用いて、振動強度が前記液晶層の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる1次モードのたわみ振動を前記液晶レンズに発生させ、前記液晶層の厚みを変化させて前記液晶層の液晶分子の配向を変化させる
ことを特徴とする。
【0011】
上記焦点距離制御方法は、
前記超音波振動子に印加する入力電圧の周波数を固定した状態で、前記入力電圧の振幅値を変化させる
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薄型化が可能で、かつ透明電極を用いることなく焦点距離を変えることが可能な、液晶可変焦点レンズおよび焦点距離制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)は、本発明に係る液晶可変焦点レンズを示す図である。(B)は、(A)のB枠内における拡大図である。
【図2】(A)は、本発明における超音波振動子の下面側を示す図である。(B)は、本発明における超音波振動子の上面側を示す図である。
【図3】たわみ振動が発生している時の、本発明における液晶分子の配向の一例を示す図である。
【図4】(A)は、超音波を発生させていない時のリタデーション変化を示す図である。(B)は、周波数60[kHz]の超音波を発生させた時のリタデーション変化を示す図である。(C)は、周波数217[kHz]の超音波を発生させた時のリタデーション変化を示す図である。
【図5】(A)および(B)は、超音波を発生させていない時のテストターゲットの見え方を示す図である。(C)は、周波数60[kHz]の超音波を発生させた時のテストターゲットの見え方を示す図である。(D)は、周波数217[kHz]の超音波を発生させた時のテストターゲットの見え方を示す図である。
【図6】(A)は、周波数60[kHz]の超音波を発生させた時の、液晶レンズ表面の振動強度を示す図である。(B)は、周波数217[kHz]の超音波を発生させた時の、液晶レンズ表面の振動強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る液晶可変焦点レンズおよび焦点距離制御方法の実施形態について説明する。本実施形態では、図1のZ軸方向を厚み方向とする。

【0015】
[液晶可変焦点レンズ]
図1(A)に、本実施形態に係る液晶可変焦点レンズ1を示す。液晶可変焦点レンズ1は、円盤形状に形成された液晶レンズ2と、円環形状に形成された超音波振動子3とを備える。

【0016】
図1(B)に示すように、液晶レンズ2は、液晶層4と、液晶層4を挟んで対向配置された第1ガラス基板5(本発明の「第1基板」に相当)および第2ガラス基板6(本発明の「第2基板」に相当)とを含む。第1ガラス基板5および第2ガラス基板6は、それぞれ液晶層4側の面に配向膜7、8が設けられている。

【0017】
第1ガラス基板5は、径が40[mm]、厚みが0.7[mm]の円盤形状に形成されている。第2ガラス基板6は、径が25[mm]、厚みが0.7[mm]の円盤形状に形成されている。第1ガラス基板5と第2ガラス基板6の間に、厚みが50[μm]の液晶層4が形成されている。

【0018】
液晶層4は、誘電率異方性が負のネマティック液晶の液晶分子4aからなる。液晶層4は、スペーサ(例えば、PETフィルム)によって、50[μm]の厚みが確保されている。液晶層4の周囲は、エポキシ樹脂によってシールされている。

【0019】
上下1対の配向膜7、8は、液晶分子4aのプレチルト角が90度となる垂直配向膜である。配向膜7、8は、ポリイミド系の材料で構成される。配向膜7、8により液晶層4を挟み込むことで、超音波振動子3が超音波を発生させていない時、液晶分子4aは配向膜7、8に対して垂直に立ち上がった状態になる(図1(B)参照)。

【0020】
図1(A)に示すように、液晶層4および第2ガラス基板6は、第1ガラス基板5における中心側の領域に配置されている。第1ガラス基板5における周縁側の領域には、円環形状の超音波振動子3が配置されている。

【0021】
超音波振動子3は、内径が30[mm]、外径が40[mm]、厚みが1[mm]の円環形状に形成されている。超音波振動子3は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で構成されたアニュラ型の圧電超音波振動子である。超音波振動子3は、液晶層4および第2ガラス基板6から離れた状態で、開口部に液晶層4および第2ガラス基板6が収まるように、エポキシ樹脂等の接着手段によって第1ガラス基板5に固着されている。

【0022】
図2(A)に示すように、超音波振動子3の下面側(第1ガラス基板5側)は、アルミニウムからなる負電極3aが形成されている。図2(B)に示すように、超音波振動子3の上面側は、下面側から折り返された負電極3aと、アルミニウムからなる正電極3bとが形成されている。負電極3aと正電極3bとの間は、絶縁されている。

【0023】
超音波振動子3は、正電極3bおよび負電極3aに印加される交流の入力電圧に応じた超音波を発生させる。本実施形態では、超音波振動子3は、液晶レンズ2の共振周波数に一致した周波数をもつ超音波を発生させる。

【0024】
液晶レンズ2の共振周波数に一致した周波数をもつ超音波が液晶レンズ2に伝搬すると、液晶レンズ2では、1次モードのたわみ振動が発生する。1次モードのたわみ振動とは、振動強度が液晶層4の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる振動のことをいう。

【0025】
液晶レンズ2で1次モードのたわみ振動が発生すると、液晶層4では、1次モードのたわみ振動に応じた音響定在波が発生する。液晶層4と第1ガラス基板5(配向膜7)との境界面、第1ガラス基板5と空気との境界面、液晶層4と第2ガラス基板6(配向膜8)との境界面、第2ガラス基板6と空気との境界面には、音響放射力(静圧)が働く。この音響放射力によって、液晶層4の厚みがわずかに変化する。

【0026】
本実施形態では、液晶層4の厚みが大きくなる。すなわち、第1ガラス基板5が下側に変位し、第2ガラス基板6が上側に変位する。第1ガラス基板5の変位と第2ガラス基板6の変位との関係は、上下対称にはならず、いずれか一方が大きくなる。

【0027】
液晶層4の厚みが変化すると、液晶分子4aの配向が変化する。液晶層4の厚みの変化は、液晶層4の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなるので、液晶分子4aの配向変化も、液晶層4の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる。また、音響放射力は、境界面に働き、液晶層4の厚み方向において連続的に変化するので、液晶分子4aの配向も、液晶層4の厚み方向において連続的に変化する。図3に、音響放射力により変化した液晶分子4aの配向の一例を示す。図3では、液晶分子4aの配向変化のみを示し、液晶層4の厚みの変化は示していない。

【0028】
上記のとおり、液晶分子4aの配向は、液晶層4の中心側から周縁側に向かって連続的に変化し、かつ液晶層4の厚み方向においても連続的に変化する。すなわち、液晶層4は、空間的に屈折率が変化し、焦点を形成するレンズとして機能する。

【0029】
また、超音波振動子3は、入力電圧の周波数が変化すると超音波の周波数を変化させ、入力電圧の振幅値が変化すると超音波の振動強度を変化させる。このため、例えば、入力電圧の周波数を固定し、入力電圧の振幅値を変化させることにより、超音波振動子3は、液晶レンズ2の焦点距離を変化させることができる。

【0030】
結局、液晶可変焦点レンズ1は、超音波振動子3によって液晶レンズ2に1次モードのたわみ振動を発生させることで、液晶層4の厚みを変化させることができる。したがって、液晶可変焦点レンズ1は、レンズ形状を変化させるための機械的可動部(例えば、圧電アクチュエータ)がいらないので、薄型化が可能になる。また、液晶可変焦点レンズ1は、透明電極を用いることなく焦点距離を変えることが可能になる。

【0031】
[焦点距離制御方法]
次に、本実施形態に係る焦点距離制御方法について説明する。

【0032】
本実施形態に係る焦点距離制御方法は、超音波振動子3を用いて液晶レンズ2の焦点距離を制御するための方法である。すなわち、本実施形態に係る焦点距離制御方法では、液晶レンズ2の共振周波数に一致した周波数をもつ超音波を、超音波振動子3で発生させて、液晶レンズ2に伝搬させる。

【0033】
そのために、超音波振動子3に印加する入力電圧の周波数を、予め決めておくことが好ましい。入力電圧の周波数は、超音波振動子3、第1ガラス基板5、第2ガラス基板6の物性値(例えば、第1ガラス基板5および第2ガラス基板6のヤング率、ポアソン比および密度、超音波振動子3の弾性定数マトリックス、密度および圧電定数マトリックス)を用いて、シミュレーションで計算することができる。

【0034】
液晶レンズ2の共振周波数に一致した周波数をもつ超音波が、液晶レンズ2に伝搬すると、液晶レンズ2では、1次モードのたわみ振動が発生し、液晶層4では、1次モードのたわみ振動に応じた音響定在波が発生する。

【0035】
そして、液晶層4と第1ガラス基板5(配向膜7)との境界面、第1ガラス基板5と空気との境界面、液晶層4と第2ガラス基板6(配向膜8)との境界面、第2ガラス基板6と空気との境界面には、音響放射力(静圧)が働く。この音響放射力によって、液晶層4の厚みがわずかに変化する。

【0036】
液晶層4の厚みの変化は、液晶層4の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる。このため、液晶分子4aの配向変化も、液晶層4の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなる。また、音響放射力は、境界面に働き、液晶層4の厚み方向において連続的に変化する。このため、液晶分子4aの配向も、液晶層4の厚み方向において連続的に変化する。その結果、液晶層4が、焦点を形成するレンズとして機能する。

【0037】
さらに、本実施形態に係る焦点距離制御方法では、超音波振動子3に印加する入力電圧の周波数を固定した状態で、入力電圧の振幅値を変化させてもよい。液晶レンズ2において1次モードのたわみ振動が発生している場合、入力電圧の振幅値を大きくすることで、焦点距離を短くすることができる一方、入力電圧の振幅値を小さくすることで、焦点距離を長くすることができる。

【0038】
結局、本実施形態に係る焦点距離制御方法は、超音波振動子3によって液晶層4の厚みを変化させることにより、液晶レンズ2の焦点距離を制御できる。したがって、本実施形態に係る焦点距離制御方法は、レンズ形状を変化させるための機械的可動部(例えば、圧電アクチュエータ)を液晶レンズ2に設ける必要がないので、液晶レンズ2の薄型化が可能になる。また、本実施形態に係る焦点距離制御方法は、液晶レンズ2に透明電極を用いることなく焦点距離を変えることが可能になる。

【0039】
[評価実験]
次に、液晶可変焦点レンズ1の評価実験について説明する。評価実験では、ピーク間電圧値Vppが5[V]の入力電圧(連続正弦波電圧)を、超音波振動子3に印加した。

【0040】
図4(A)~(C)は、偏光顕微鏡(倍率5倍の対物レンズ)を用いて、クロスニコル下でオルソスコープ観察を行った時の液晶レンズ2(第2ガラス基板6の上面)の画像である。図4(A)は、超音波振動子3が超音波を発生させていない時、図4(B)は、超音波振動子3が周波数60[kHz]の超音波を発生させた時、図4(C)は、超音波振動子3が周波数217[kHz]の超音波を発生させた時の画像である。これらの図は、液晶レンズ2のリタデーションの変化を示す。なお、周波数60[kHz]および周波数217[kHz]は、いずれも液晶レンズ2の共振周波数である。

【0041】
図4(A)に示すように、超音波振動子3が超音波を発生させていない時は、配向膜7、8によって液晶分子4aが垂直配向しており、面内方向において屈折率が変化していないため、画像は全体的に暗い。一方、図4(B)、(C)では、画像中にリタデーションの変化に伴う色調変化が見られる。図4(B)、(C)の画像から、超音波によって液晶分子4aの配向が変化したことが分かる。

【0042】
図5(A)~(D)は、光学顕微鏡を用いて、単ニコル観察を行った時のテストターゲットの画像である。単ニコル観察では、光学顕微鏡とテストターゲットとの間に、液晶可変焦点レンズ1および偏光板を挿入した。図5(A)、(B)は、超音波振動子3が超音波を発生させていない時、図5(C)は、超音波振動子3が周波数60[kHz]の超音波を発生させた時、図5(D)は、超音波振動子3が周波数217[kHz]の超音波を発生させた時の画像である。なお、超音波振動子3が超音波を発生させていない時に、予め光学顕微鏡の焦点をテストターゲットの表面に合わせた。

【0043】
図5(A)の画像と比較して図5(C)の画像がぼやけていることから、超音波によって、焦点位置が変化したことが分かる。同様に、図5(B)の画像と比較して図5(D)の画像がぼやけていることから、超音波によって、焦点位置が変化したことが分かる。この結果は、液晶分子4aの配向が、液晶層4の厚み方向において連続的に変化したことを示す。

【0044】
図6(A)、(B)は、レーザドップラー振動計(LDV)を用いて観察した、第2ガラス基板6上面の振動強度分布を示す画像である。図6(A)は、超音波振動子3が周波数60[kHz]の超音波を発生させた時、図6(B)は、超音波振動子3が周波数217[kHz]の超音波を発生させた時の画像である。

【0045】
図6(A)、(B)から、液晶レンズ2において、1次モードのたわみ振動が発生したことが分かる。また、たわみ振動の振動強度が、第2ガラス基板6の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなっていることが分かる。この結果は、液晶分子4aの配向変化が、液晶層4の中心側から周縁側に向かって連続的に小さくなっていることを示す。

【0046】
図6(A)、(B)から分かるように、たわみ振動の波長は、超音波の周波数が大きいほど小さくなる。また、図4(A)、(B)から分かるように、リタデーションの変化に伴う色調変化のピッチも、超音波の周波数が大きいほど小さくなる。この結果は、たわみ振動とリタデーションの変化との間に相関があることを示す。

【0047】
以上、本発明に係る液晶可変焦点レンズおよび焦点距離制御方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。

【0048】
液晶レンズ2は、超音波振動子3により1次モードのたわみ振動が発生して、液晶層4の厚みが変化するのであれば、液晶層4、第1ガラス基板5、第2ガラス基板6の構造、形状、寸法、材料等を適宜変更することができる。例えば、液晶層4は、誘電率異方性が負のネマティック液晶以外の液晶分子で構成してもよい。第1ガラス基板5および第2ガラス基板6の代わりに、高分子フィルム等のフィルム材を使用してもよい。

【0049】
超音波振動子3は、液晶レンズ2の共振周波数に一致した周波数をもつ超音波を発生させることができるのであれば、構造、形状、寸法、材料等を適宜変更することができる。例えば、第1基板および第2基板としてフィルム材を使用する場合、スパッタリング等の方法で、フィルム材に超音波振動子3を形成してもよい。

【0050】
超音波振動子3は、液晶レンズ2に1次モードのたわみ振動を発生させることができるのであれば、液晶レンズ2の任意の場所に配置することができる。超音波振動子3は、分割して配置することもできる。

【0051】
上下1対の配向膜7、8は、垂直配向膜以外のものを使用することができる。例えば、配向膜7、8として、超音波振動子3が超音波を発生させていない時に液晶分子4aが配向膜7、8に対して水平に寝た状態になる水平配向膜を使用してもよい。この場合、超音波振動子3が超音波を発生させると、一部の液晶分子4aが起き上がり、液晶層4の屈折率が空間的に変化する。また、配向膜7、8のいずれか一方に垂直配向膜を使用し、他方に水平配向膜を使用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 液晶可変焦点レンズ
2 液晶レンズ
3 超音波振動子
4 液晶層
4a 液晶分子
5 第1ガラス基板(第1基板)
6 第2ガラス基板(第2基板)
7、8 配向膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5