TOP > 国内特許検索 > 二輪車の安定性評価システム > 明細書

明細書 :二輪車の安定性評価システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-103815 (P2018-103815A)
公開日 平成30年7月5日(2018.7.5)
発明の名称または考案の名称 二輪車の安定性評価システム
国際特許分類 B62H   1/10        (2006.01)
B62J  27/00        (2006.01)
FI B62H 1/10 Z
B62J 27/00 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-252168 (P2016-252168)
出願日 平成28年12月27日(2016.12.27)
発明者または考案者 【氏名】金田 重郎
【氏名】▲高▼橋 遼一
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】二輪車の走行中の安定性を手軽に評価することができる安定性評価システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る安定性評価システム1Aは、二輪車の走行中の安定性を評価するシステムであって、二輪車の軌跡に関する軌跡データを出力する軌跡データ出力部2Aと、軌跡データに示された軌跡を複数の区間に分割し、区間毎に軌跡の回転中心を求める回転中心計算部5と、回転中心計算部5によって求められた回転中心そのもの、または回転中心の時間変化を所定のルールにしたがって評価した結果を、人間が知覚し得る手段により提示する提示部6とを備えている。好ましくは、軌跡データ出力部2Aは、二輪車のハンドルの方位角を検知する方位角検知部3Aを含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
前輪と、後輪と、前記前輪の向きに作用するハンドルとを有する二輪車の走行中の安定性を評価する安定性評価システムであって、
前記二輪車の軌跡に関する軌跡データを出力する軌跡データ出力部と、
前記軌跡データに示された前記軌跡を複数の区間に分割し、前記区間毎に前記軌跡の回転中心を求める回転中心計算部と、
前記回転中心計算部によって求められた前記回転中心そのもの、または前記回転中心の時間変化を所定のルールにしたがって評価した結果を、人間が知覚し得る手段により提示する提示部と、
を備えたことを特徴とする二輪車の安定性評価システム。
【請求項2】
前記二輪車の走行速度を検知する速度検知部をさらに備え、
前記回転中心計算部は、前記速度検知部によって検知された前記走行速度が予め定められた閾値を上回っている前記区間についてのみ前記回転中心を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の二輪車の安定性評価システム。
【請求項3】
前記軌跡データ出力部が、前記二輪車に取り付けられる方位角検知部と、前記方位角検知部によって検知された方位角の時間変化を前記軌跡データとして出力する軌跡データ生成部とを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二輪車の安定性評価システム。
【請求項4】
前記方位角検知部が、前記二輪車の前記ハンドルに取り付けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の二輪車の安定性評価システム。
【請求項5】
前記軌跡データ出力部が、前記二輪車に取り付けられるGPS受信部と、前記GPS受信部によって特定された絶対位置の時間変化を前記軌跡データとして出力する軌跡データ生成部とを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二輪車の安定性評価システム。
【請求項6】
前記提示部が、ディスプレイを含み、
前記ディスプレイが、前記回転中心および前記評価の結果の少なくとも一方を表示する
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二輪車の安定性評価システム。
【請求項7】
前記提示部が、スピーカーを含み、
前記スピーカーが、前記評価の結果を音声によって提示する
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二輪車の安定性評価システム。
【請求項8】
前記提示部が、ライトを含み、
前記ライトが、前記評価の結果を発光によって提示する
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二輪車の安定性評価システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車の走行中の安定性を評価する安定性評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車、自動二輪車(オートバイ)等の二輪車は、我々の生活に極めて身近な移動手段である。しかしながら、二輪車は、自動車等の四輪の移動手段とは異なり本来的に不安定なので、運転者のスキル(熟練度)、および高齢化による反応時間や筋力の低下等の影響を受けやすい。このため、例えば高齢の運転者が、自分自身の反応時間等の低下に気付かずに二輪車の運転を続けることは非常に危険である。
【0003】
そこで、従来から、二輪車の走行中の安定性を評価するためのシステムが種々検討されている。例えば、特許文献1に記載のシステムは、二輪車の前輪および後輪に接地点識別特徴を取り付け、二輪車の重心位置に車両重心識別特徴を取り付け、さらに、運転者の頭部等に操縦主体重心識別特徴を取り付けた上で、走行中の二輪車および運転者を少なくとも2台の撮像装置で撮像し、これにより得た情報を解析することにより、二輪車の走行中の安定性を評価するよう構成されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-84033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシステムは、二輪車および運転者に識別特徴を取り付けるといった特別な準備が必要で、かつ、走行の様子を撮像する必要があるので、日々の走行(例えば、買い物に行くときの走行)における二輪車の安定性を手軽に評価することはできない。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、二輪車の走行中の安定性を手軽に評価することができる二輪車の安定性評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者は、二輪車の運転者が無意識のうちに回転中心の目標(以下、「目標中心」という)を設定しながらハンドル操作を行っていることを発見した。すなわち、運転者は、
(1)二輪車を直進させる場合は、二輪車から遠く離れた所に目標中心を設定し、
(2)二輪車を旋回させる場合は、二輪車に比較的近い所に目標中心を設定するとともに、回転中心が目標中心に近づくようにハンドルの切り角を大きくしていき、
(3)回転中心が目標中心に一致すると、それ以上ハンドルを切るのをやめ、
(4)所望の旋回が終了すると、再び二輪車から遠く離れた所に目標中心を設定するとともに、回転中心が目標中心に近づくようにハンドルの切り角を小さくしていく。
この結果、二輪車の回転中心は、上記(2)で設定した目標中心を先端としたV字を描く。
【0008】
併せて、本発明者は、運転者が二輪車の運転に慣れている場合とそうでない場合とでは、V字の現れ方に差異があることも発見した。
【0009】
本発明に係る二輪車の安定性評価システムは、本発明者が発見した上記の知見に基づいて、二輪車の安定性を評価するよう構成されている。より詳しくは、本発明に係る二輪車の安定性評価システムは、前輪と、後輪と、前輪の向きに作用するハンドルとを有する二輪車の走行中の安定性を評価する安定性評価システムであって、二輪車の軌跡に関する軌跡データを出力する軌跡データ出力部と、軌跡データに示された軌跡を複数の区間に分割し、区間毎に軌跡の回転中心を求める回転中心計算部と、回転中心計算部によって求められた回転中心そのもの、または回転中心の時間変化を所定のルールにしたがって評価した結果を、人間が知覚し得る手段により提示する提示部と、を備えている。
【0010】
上記二輪車の安定性評価システムは、二輪車の走行速度を検知する速度検知部をさらに備え、回転中心計算部は、速度検知部によって検知された走行速度が予め定められた閾値を上回っている区間についてのみ回転中心を求めることが好ましい。走行開始直後および走行終了直前の二輪車は、運転者のスキルや年齢にかかわらず、多かれ少なかれ不安定となる。この構成によれば、この本来的に不安定な区間の走行を評価の対象から外すことができる。
【0011】
上記二輪車の安定性評価システムの軌跡データ出力部は、例えば、二輪車に取り付けられる方位角検知部と、方位角検知部によって検知された方位角の時間変化を軌跡データとして出力する軌跡データ生成部とを含んだ構成とすることができる。
【0012】
この場合、方位角検知部は、二輪車のハンドルに取り付けられることが好ましい。運転者が直接的に操作するハンドルに方位角検知部を取り付けることにより、運転者の意思に最も忠実な回転中心を求めることができる。
【0013】
上記二輪車の安定性評価システムの軌跡データ出力部は、例えば、二輪車に取り付けられるGPS受信部と、GPS受信部によって特定された絶対位置の時間変化を軌跡データとして出力する軌跡データ生成部とを含んだ構成とすることもできる。
【0014】
上記二輪車の安定性評価システムの提示部は、回転中心および評価の結果の少なくとも一方を表示するディスプレイであってもよいし、評価の結果を音声によって提示するスピーカーであってもよいし、評価の結果を発光によって提示するライトであってもよいが、これらは単なる一例である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二輪車の走行中の安定性を手軽に評価することができる二輪車の安定性評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例に係る安定性評価システムのブロック図である。
【図2】第1実施例に係る安定性評価システムの軌跡計算部における軌跡の求め方の一例を示す図である。
【図3】第1実施例に係る安定性評価システムの軌跡計算部における軌跡の求め方の別の一例を示す図である。
【図4】第1実施例に係る安定性評価システムの回転中心計算部によって複数の区分に分割された軌跡を示す図である。
【図5】第1実施例に係る安定性評価システムの回転中心計算部によって求められた回転中心の時間変化の一例を示す図である。
【図6】二輪車を直線走行させたときに第1実施例に係る安定性評価システムが求めた軌跡および回転中心を示す図であって、(A)は若い被験者が運転を行った場合、(B)は高齢の被験者が運転を行った場合の図である。
【図7】二輪車をスラローム走行させたときに第1実施例に係る安定性評価システムが求めた軌跡および回転中心を示す図であって、(A)は若い被験者が運転を行った場合、(B)は高齢の被験者が運転を行った場合の図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る安定性評価システムのブロック図である。
【図9】本発明の第3実施例に係る安定性評価システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る二輪車の安定性評価システムの実施例について説明する。なお、以下では、前輪と、後輪と、前輪に作用するハンドルとを有する二輪自転車の走行中の安定性の評価に本発明を適用する場合について説明するが、二輪自転車は二輪車の一例に過ぎない。

【0018】
[第1実施例]
図1は、本発明の第1実施例に係る二輪車の安定性評価システム1Aのブロック図である。同図に示すように、安定性評価システム1Aは、軌跡データ出力部2Aと、回転中心計算部5と、提示部6とを備えている。軌跡データ出力部2Aは、方位角検知部3Aおよび軌跡データ生成部4Aを含む。また、提示部6は、ディスプレイ7、スピーカー8およびライト9を含む。安定性評価システム1Aは、スマートフォンのような携帯端末の形態を有していることが好ましい。

【0019】
方位角検知部3Aは、地磁気センサーからなり、予め定められた頻度で真北を0°、真東を90°、真南を180°、真西を270°とした方位角に関する方位角データを出力する。方位角検知部3Aは、安定性評価システム1Aの他の構成要素とともに二輪自転車のハンドルに取り付けられる。また、上記の方位角データの出力頻度は非常に高い。したがって、方位角検知部3Aが出力する方位角データは、時々刻々のハンドルの方位角(向き)を示していると言える。

【0020】
軌跡データ生成部4Aは、方位角検知部3Aによって検知された方位角の時間変化に関する軌跡データを生成し、これを回転中心計算部5および提示部6に向けて出力する。

【0021】
図2を参照しながら、軌跡データ生成の一例について説明する。図2(A)は、二輪自転車が真北に向かって真っ直ぐに走行しているときに、ハンドルが進行方向に対して右方向に20°切られ、その後、元に戻された場合の方位角(θ)および軌跡データ(X座標,Y座標)を示している。

【0022】
時刻t0において、軌跡データ生成部4Aは、sin0°およびcos0°を計算するとともに、sin0°を時刻t0のX座標、cos0°を時刻t0のY座標とする。時刻t0から微小時間Δtが経過した時刻t1において、軌跡データ生成部4Aは、sin0°およびcos0°を計算するとともに、直前のX座標にsin0°を足した値を時刻t1のX座標、直前のY座標にcos0°を足した値を時刻t1のY座標とする。時刻t1から微小時間Δtが経過した時刻t2においても、軌跡データ生成部4Aは、同様の計算を行う。そして、時刻t2から微小時間Δtが経過した時刻t3において、軌跡データ生成部4Aは、sin5°およびcos5°を計算するとともに、直前のX座標にsin5°を足した値を時刻t3のX座標、直前のY座標にcos5°を足した値を時刻t3のY座標とする。軌跡データ生成部4Aは、各時刻においてこのような計算を行っていくことにより、軌跡データを生成する。生成された軌跡データをグラフ化すると、図2(B)が得られる。

【0023】
図3を参照しながら、軌跡データ生成の別の一例について説明する。図3(A)は、二輪自転車が真北に向かって真っ直ぐに走行しているときに、ハンドルが進行方向に対して右方向ではなく左方向に20°切られ、その後、元に戻された場合の方位角(θ)および軌跡データ(X座標,Y座標)を示している。

【0024】
時刻t0において、軌跡データ生成部4Aは、sin0°およびcos0°を計算するとともに、sin0°を時刻t0のX座標、cos0°を時刻t0のY座標とする。時刻t0から微小時間Δtが経過した時刻t1において、軌跡データ生成部4Aは、sin0°およびcos0°を計算するとともに、直前のX座標にsin0°を足した値を時刻t1のX座標、直前のY座標にcos0°を足した値を時刻t1のY座標とする。時刻t1から微小時間Δtが経過した時刻t2においても、軌跡データ生成部4Aは、同様の計算を行う。そして、時刻t2から微小時間Δtが経過した時刻t3において、軌跡データ生成部4Aは、sin355°およびcos355°を計算するとともに、直前のX座標にsin355°を足した値を時刻t3のX座標、直前のY座標にcos355°を足した値を時刻t3のY座標とする。軌跡データ生成部4Aは、各時刻においてこのような計算を行っていくことにより、軌跡データを生成する。生成された軌跡データをグラフ化すると、図3(B)が得られる。

【0025】
二輪車の走行速度が一定の場合、図2(B)および図3(B)のX軸は東西方向に相当し、Y軸は南北方向に相当する。そして、この場合、これらの図に描かれた軌跡は、二輪車の走行経路に概ね一致する。

【0026】
回転中心計算部5は、図4に示すように、軌跡データが示す軌跡を複数の区間Z1,Z2,・・・に分割し、区間毎に軌跡の回転中心を求めるとともに、求めた回転中心に関する回転中心データを提示部6に出力する。回転中心計算部5は、例えば、各区間における軌跡の曲率に基づいて回転中心を求める。

【0027】
区間Z1~Z4のように軌跡がほぼ直線である場合(すなわち、曲率が非常に小さい場合)、回転中心は軌跡から遠く離れた所に位置することになる。一方、区間Z7,Z8のように軌跡が大きくカーブしている場合(すなわち、曲率が非常に大きい場合)、回転中心は軌跡に比較的近い所に位置することになる。

【0028】
図5を参照しながら、軌跡と回転中心の関係ついてさらに詳しく説明する。

【0029】
運転者が、二輪自転車に比較的近い所に目標中心を設定するとともに、ハンドルの切り角を大きくして二輪自転車を旋回させ始めると、図5(A)に示すように、回転中心Rが目標中心Rtに向かって直線的に近づいてくる。そして、図5(B)において、回転中心Rが目標中心Rtに接近すると、しばらくの間、回転中心Rは目標中心Rt近傍に留まる。このとき、運転者は、ハンドルの切り角を一定に維持している。また、このとき、二輪自転車は目標中心Rt側に傾いており、該目標中心Rt側に倒れようとする力と遠心力とが釣り合っている。所望の回転が終了すると、運転者は、二輪自転車から図示できない程遠く離れた所に新たな目標中心を設定するとともに、ハンドルの切り角を小さくしていく。これにより、回転中心Rは、遠方にある目標中心に直線的に近づいていく。逆に言うと、回転中心Rは、二輪自転車から遠ざかっていく。

【0030】
回転中心の時間変化であるV字の挟み角は、旋回の大きさに応じて変化する。すなわち、運転者がハンドルを大きく切って二輪自転車を大きく旋回させる場合は、挟み角は大きくなる。一方、直進中に、バランスを取るためだけに運転者がハンドルを小刻みに左右交互に切るような場合は、挟み角は小さくなる。この場合、回転中心は、I字に近いV字を描く。

【0031】
回転中心計算部5は、軌跡データから求めた全ての回転中心に関する回転中心データを提示部6に出力してもよいし、後述する評価において意味を持たない、軌跡から遠く離れた回転中心を割愛して出力してもよい。

【0032】
提示部6は、軌跡データ出力部2Aの軌跡データ生成部4Aから出力された軌跡データが示す軌跡、および回転中心計算部5から出力された回転中心データが示す回転中心をディスプレイ7に表示させる。

【0033】
図6(A)は、比較的若い被験者(以下、「被験者1」という)が二輪自転車を直線走行させた場合の表示例であり、図6(B)は、比較的高齢の被験者(以下、「被験者2」という)が二輪自転車を直線走行させた場合の表示例である。図6(B)に示された回転中心が描くV字(I字)は、図6(A)に示されたものに比べ、間隔が乱れている。また、図6(B)に描かれたV字(I字)は、図6(A)に描かれたものに比べ、先端(目標中心)が軌跡に接近している。さらに、図6(B)においては、V字(I字)の重なりが散見される。これらのことは、被験者2が、意味もなくハンドルを切ったり、またはバランスが崩れそうになったときに慌てて大きくハンドルを切ったりしたことを示していると考えられる。図6(A)および図6(B)に示された軌跡を比較するだけでは、被験者1および被験者2のこのような違いに気付くことはできない。

【0034】
図7(A)は、被験者1が道路上に配置されたロードコーンを避けるように二輪自転車をスラローム走行させた場合の表示例であり、図7(B)は、被験者2が同様の走行をさせた場合の表示例である。図7(B)に示された回転中心が描くV字は、図7(A)に示されたものに比べ、挟み角が大きい。また、図7(B)に描かれたV字(I字)は、図7(A)に描かれたものに比べ、乱れている。これらのことは、被験者2が、ぎこちなく、必要以上に大きくハンドルを切っていることを示していると考えられる。図7(A)および図7(B)に示された軌跡を比較するだけでは、被験者1および被験者2のこのような違いに明確に気付くことは困難である。

【0035】
提示部6は、回転中心の時間変化、すなわち、V字(I字)の形状および/またはV字(I字)と軌跡との位置関係を所定のルールにしたがって評価し、その結果を提示してもよい。具体的には、提示部6は、評価の結果が「走行が不安定である」となった場合に、ディスプレイ7にその旨を表示させたり、スピーカー8から音声を出力させたり、ライト9を発光させてもよい。

【0036】
また、提示部6は、上記の提示(ディスプレイ7に表示させること、スピーカー8から音声を出力させること、ライト9を発光させること)を走行中にほぼリアルタイムに行ってもよいし、不図示の記憶部に格納しておいた軌跡データおよび回転中心データを利用して、運転者等からの指令があったときに提示を行ってもよい。

【0037】
[第2実施例]
図8は、本発明の第2実施例に係る二輪車の安定性評価システム1Bのブロック図である。同図に示すように、安定性評価システム1Bは、軌跡データ出力部2Aの代わりに軌跡データ出力部2Bを備えている。そして、軌跡データ出力部2Bは、GPS受信部3Bおよび軌跡データ生成部4Bを含む。

【0038】
GPS受信部3Bは、予め定められた頻度で地球上の絶対位置に関する位置データを出力する。GPS受信部3Bは、二輪自転車の任意の場所に取り付けられる。また、上記の頻度は非常に高い。したがって、GPS受信部3Bが出力する位置データは、時々刻々の二輪自転車の絶対位置を示していると言える。

【0039】
軌跡データ生成部4Bは、GPS受信部3Bによって特定された絶対位置の時間変化に関する軌跡データを生成し、これを回転中心計算部5および提示部6に向けて出力する。

【0040】
回転中心計算部5および提示部6は、第1実施例と同じ構成を有している。

【0041】
本実施例に係る安定性評価システム1Bによれば、第1実施例に係る安定性評価システム1Aと同様の作用効果が得られる。ただし、被験者1および被験者2が二輪自転車を直線走行およびスラローム走行させているときの安定性を安定性評価システム1Bを用いて評価すると、安定性評価システム1Aを用いることにより得られた図6および図7よりもV字(I字)の数が少ない表示が得られた。このことは、方位角検知部3Aによって得られるハンドルの切り角は、GPS受信部3Bによって特定される絶対位置よりも情報量が多いことを示している。また、運転者の意思が最も反映されるのはハンドルの切り角である。したがって、評価の精度は、方位角検知部3Aをハンドルに取り付ける安定性評価システム1Aの方が高いと考えられる。

【0042】
[第3実施例]
図9は、本発明の第3実施例に係る二輪車の安定性評価システム1Cのブロック図である。同図に示すように、安定性評価システム1Cは、第1実施例の軌跡データ出力部2Aまたは第2実施例の軌跡データ出力部2Bと、回転中心計算部5の代わりの回転中心計算部5Cと、提示部6と、新たに設けられた速度検知部10とを備えている。

【0043】
速度検知部10は、二輪自転車の後輪近傍に備えられる速度センサーからなる。速度検知部10は、例えば、予め定められた時間内に通過する後輪スポークの数を計測することにより二輪自転車の走行速度を検知するとともに、検知した走行速度に関する速度データを予め定められた頻度で出力する。

【0044】
回転中心計算部5Cは、回転中心計算部5と同様、軌跡データが示す軌跡を複数の区間Z1,Z2,・・・に分割し、区間毎に軌跡の回転中心を求める。この際、回転中心計算部5Cは、区間Z1,Z2,・・・のうち、走行速度が予め定められた閾値を上回っている区間についてのみ回転中心を求める。

【0045】
提示部6は、第1実施例と同じ構成を有している。

【0046】
走行開始直後および走行終了直前の二輪自転車は、運転者のスキルや年齢にかかわらず、多かれ少なかれ不安定となる。この点、第3実施例に係る安定性評価システム1Cによれば、この本来的に不安定な区間の走行が評価の対象から外れるので、より精度の高い評価を行うことができる。

【0047】
以上、本発明に係る二輪車の安定性評価システムの第1~第3実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。

【0048】
例えば、上記した方位角検知部3Aおよび速度検知部10の構成は、単なる一例に過ぎない。方位角検知部3Aおよび速度検知部10は、同等の出力が得られる他のセンサー等からなっていてもよい。

【0049】
また、軌跡データ生成部4Aは、上記した求め方とは別の求め方によって軌跡データを生成してもよい。例えば、時々刻々の二輪車の走行速度がわかる場合、軌跡データ生成部4Aは、時刻t1のsinθと時刻t1の走行速度に比例した係数αとの積(α×sinθ)を求め、これと時刻t0のX座標とを足し合わせることにより時刻t1のX座標を計算してもよい。このような計算をすることにより、走行速度が一定ではない場合においても、二輪車の走行経路に概ね一致した軌跡データを生成することができる。

【0050】
また、提示部6は、ディスプレイ7、スピーカー8およびライト9のうちの1つ以上を含んでいればよく、これら3つの全てを含んでいる必要はない。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B,1C 安定性評価システム
2A,2B 軌跡データ出力部
3A 方位角検知部
3B GPS受信部
4A,4B 軌跡データ生成部
5,5C 回転中心計算部
6 提示部
7 ディスプレイ
8 スピーカー
9 ライト
10 速度検知部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8