TOP > 国内特許検索 > 環状ペプチドNMP開始剤及びマルチブロック型高分子の製造方法 > 明細書

明細書 :環状ペプチドNMP開始剤及びマルチブロック型高分子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-123066 (P2018-123066A)
公開日 平成30年8月9日(2018.8.9)
発明の名称または考案の名称 環状ペプチドNMP開始剤及びマルチブロック型高分子の製造方法
国際特許分類 C07K   5/12        (2006.01)
C07K   1/08        (2006.01)
C08F   4/00        (2006.01)
C08F 212/10        (2006.01)
C07D 471/08        (2006.01)
FI C07K 5/12
C07K 1/08
C08F 4/00
C08F 212/10
C07D 471/08
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2017-014069 (P2017-014069)
出願日 平成29年1月30日(2017.1.30)
発明者または考案者 【氏名】古賀 智之
【氏名】東 信行
【氏名】西村 慎之介
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C065
4H045
4J015
4J100
Fターム 4C065AA09
4C065BB20
4C065CC01
4C065DD01
4C065EE05
4C065HH02
4C065JJ01
4C065KK04
4C065LL04
4C065PP03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA31
4H045FA10
4J015EA03
4J015EA04
4J100AB02P
4J100AB08P
4J100AM02Q
4J100AQ12P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA19
要約 【課題】人工ペプチドとビニルポリマーからなるマルチブロック型高分子を簡便に製造できる新しい合成法を提供する。
【解決手段】環状ペプチドNMP開始剤を使用してビニルモノマーを重合する。
JP2018123066A_000031t.gif
X1は、同一又は異なっても良いアミノ酸若しくはそれらの誘導体であり(nは1~20)、S1及びS2は、スペーサー基であり(l及びmはそれぞれ0~4)、X2は、アミノ基若しくはカルボキシル基と反応しうる側鎖官能基を有する、アミノ酸若しくは又はアミノ酸誘導体であり、Zは、ニトロキシルラジカルを発生しうる化合物である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式からなる環状ペプチドNMP開始剤
【化1】
JP2018123066A_000026t.gif

(ここで上記式において、
X1は、同一又は異なっても良いアミノ酸若しくはそれらの誘導体からなるペプチドであり(nは1~20)、
S1及びS2は、スペーサー基であり(l及びmはそれぞれ0~4)、
X2は、アミノ基若しくはカルボキシル基と反応しうる側鎖官能基を有する、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であり、
Zは、ニトロキシルラジカルを発生しうる化合物である。)。
【請求項2】
下記式からなる、請求項1記載の環状ペプチドNMP開始剤
【化2】
JP2018123066A_000027t.gif

(ここでR1~R4は同じであっても異なっていてもよいアルキル基である。)。
【請求項3】
前記スペーサー基が、ジエチレングリコール、アルキレン、アリール、及び、アルキレンエーテル基からなる群から選択される、請求項1又は2項に記載の環状ペプチドNMP開始剤。
【請求項4】
下記式からなる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の環状ペプチドNMP開始剤。
【化3】
JP2018123066A_000028t.gif

【請求項5】
下記式からなる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の環状ペプチドNMP開始剤。
【化4】
JP2018123066A_000029t.gif

【請求項6】
下記式からなる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の環状ペプチドNMP開始剤。
【化5】
JP2018123066A_000030t.gif

【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の環状ペプチドNMP開始剤を使用してビニルモノマーを重合することを特徴とする、ペプチドをビニルポリマーの主鎖に有するマルチブロック型高分子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチドNMP開始剤、及び、その開始剤を使用するマルチブロック型高分子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工ペプチドはアミノ酸配列に基づいて高次構造や多様な機能(刺激応答性や細胞親和性等)を容易に設計できる魅力的な生体高分子である。一方、ビニルポリマー等の合成高分子は、機械的特性・加工性・合成スケールの優位性の面から、大量に生産され、我々の生活に不可欠な材料となっている。
【0003】
近年、汎用高分子のもつ優位性を維持しながら、材料の更なる高機能化が求められており、機能性の高いペプチドを合成高分子に導入するハイブリッド戦略が提案されており、例えば非特許文献1,2にはその合成方法が記載されている。
【0004】
ところで従来のラジカル重合は開始反応、成長反応、停止反応、及び連鎖移動反応の4つの素反応から成り立っている。開始剤が熱、光、酸化・還元、等の様々な刺激により分解し、ラジカルが生成すると、それがモノマーに次々と反応する(成長反応)と同時に、成長末端ラジカルは再結合反応や不均化反応による停止反応を受けてデッドポリマーとなる。開始ラジカルの生成が非可逆的に進行すると共に、停止反応は拡散律速に近い速度で起こる。したがって、発生した各々のラジカル種は速やかに停止反応を受けて重合末端の活性を失う。
【0005】
それに対し、リビングラジカル重合では成長末端ラジカルがラジカル生成に対して適切な官能基を持つ休止種(dormant species)から可逆的に生成する点に特徴を持つ。すなわち、休止種P-Yから活性種(active species) Pラジカルの生成(活性化反応)、モノマーとの反応(生長反応)、そしてYとの再結合による休止種への変換反応(不活性化反応)の3つの素反応からなる。
【0006】
リビングラジカル重合には、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド介在ラジカル重合(以下NMP(Nitroxide-mediated Polymerization)と略することがある。)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、有機テルル化合物媒介リビングラジカル重合(TERP)等がある。
【0007】
NMPの重合機構はPラジカルとニトロキシルラジカルとの可逆的な解離-再結合反応である(非特許文献3)。アルコキシアミン誘導体の炭素-酸素結合が開裂し、Pラジカルと安定ラジカルであるニトロキシルラジカルを生成し、Pラジカルとモノマーが反応することによりポリマー鎖が伸長する。また、安定ラジカル効果により重合の極めて速い段階でPラジカルとニトロキシルラジカルのヘテロカップリング反応が選択的に起こる定常状態に到達することにより、リビング重合となる。またNMPのための開始剤についても種々のものが提案されている(特許文献1,2,非特許文献4)。
【0008】
ペプチドをビニルポリマー主鎖骨格に繰り返し有するマルチブロック型の合成は、その魅力的な構造特性に反して実現されていない。一般にマルチブロック型の合成は高分子末端基間反応を利用する系に限定されており、連鎖重合(ビニルポリマー)系ではこの合成戦略を利用し難いためである。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特表2006-514133号公報
【特許文献2】特表2006-516669号公報
【0010】

【非特許文献1】K.Luo et al.,Macromolecules,2011,44,2481
【非特許文献2】S.E.Grieshaber et al.,Soft Matter,2013,9,1589.
【非特許文献3】A.Goto, T.Fukuda, Macromolecules, 30, 5183-5186, (1997).
【非特許文献4】N.Ide, T.Fukuda,Macromolecules, 30, 4268-4271,(1997).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、人工ペプチドとビニルポリマーからなるマルチブロック型高分子を簡便に製造できる新しい合成法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
下記式からなる環状ペプチドNMP開始剤を使用してビニルモノマーを重合することにより、ペプチドをビニルポリマーの主鎖に有するマルチブロック型高分子を製造する。
【0013】
【化1】
JP2018123066A_000003t.gif

【0014】
ここで上記式において、X1は、同一又は異なっても良いアミノ酸若しくはそれらの誘導体からなるペプチドであり(nは1~20)、S1及びS2は、スペーサー基であり(l及びmはそれぞれ0~4)、X2は、アミノ基若しくはカルボキシル基と反応しうる側鎖官能基を有する、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であり、Zは、ニトロキシルラジカルを発生しうる化合物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人工ペプチドとビニルポリマーからなるマルチブロック型高分子を簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)とスチレンとのマルチブロックコポリマーと、そのフラグメントと、を比較したGPC測定結果を示す図である。
【図2】cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)とスチレンとのマルチブロックコポリマーと、そのフラグメントと、を比較したFT-IR測定結果を示す図である。
【図3】cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)とスチレンとのマルチブロックコポリマーと、そのフラグメントと、を比較した1H NMRスペクトル測定結果を示す図である。
【図4】cyclic(Asp-deg-(Leu-Gly)2-deg-TEMPO) (CyPI 2)を用いたスチレンとアクリロニトリルとの共重合体と、そのフラグメントと、を比較したGPC測定結果を示す図である。
【図5】cyclic(Asp-deg-(Leu-Gly)2-deg-TEMPO) (CyPI 2)を用いたスチレンとアクリロニトリルとの共重合体と、そのフラグメントと、を比較したFT-IR測定結果を示す図である。
【図6】cyclic(Asp-deg-(Leu-Gly)2-deg-TEMPO) (CyPI 2)を用いたスチレンとアクリロニトリルとの共重合体と、そのフラグメントと、を比較した1H NMRスペクトル測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。

【0018】
本発明者は鋭意研究により、ペプチド固相合成とニトロキシド介在重合とを組み合わせることにより、人工ペプチドとビニルポリマーからなるマルチブロック型高分子を簡便に製造できることを知見した。即ち、熱により可逆的に安定ラジカルを生成するNMP部をペプチド主鎖骨格に導入した環状ペプチドNMP開始剤を新規に設計・合成し、これを用いて各種ビニルモノマーをラジカル重合させる。

【0019】
環状ペプチドNMP開始剤は下記式にて示される。

【0020】
【化2】
JP2018123066A_000004t.gif

【0021】
ここで上記式において、X1は、同一又は異なっても良いアミノ酸若しくはそれらの誘導体からなるペプチドであり(nは1~20)、S1及びS2は、スペーサ基であり(l及びmはそれぞれ0~4)、X2は、アミノ基若しくはカルボキシル基と反応しうる側鎖官能基を有する、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である。

【0022】
Zは、ニトロキシルラジカルを発生しうる化合物であり、好ましくは下記式で示される。

【0023】
【化3】
JP2018123066A_000005t.gif

【0024】
ここでR1~R4は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、このアルキル基とは、置換基(この置換基は、炭素数1から4のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、エステル基、エステルアルキル基、又は、フェニル基、ピリジル基、アミノ基、水酸基、フッ素原子、塩素原子である)を1つ又は複数有してもよい、炭素数1~6の直鎖若しくは枝鎖のアルキル基である。

【0025】
Zが上記式で示される場合、環状ペプチドNMP開始剤は下記式にて示される。

【0026】
【化4】
JP2018123066A_000006t.gif

【0027】
Zは、より好ましくは下記式で示されるTEMPOである。TEMPOはニトロキシルラジカル(R2N-O?)の一種、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl)の略称である。

【0028】
【化5】
JP2018123066A_000007t.gif

【0029】
なおZは上記の式のものに限定されるものではなく、例えば下記で示されるものも使用できる(なお、上述と同様に、R1~R4は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、上述と同様にこのアルキル基は置換基を有しても良い。)。

【0030】
【化6】
JP2018123066A_000008t.gif

【0031】
【化7】
JP2018123066A_000009t.gif

【0032】
またZとしては、2,2,5-trimethyl-4-phenyl-3-azahexane nitroxide(TIPNO)やN-tert-butyl-1-diethylphosphono-2,2-dimethylpropylnitroxide(DEPN)も使用可能である。

【0033】
上記したように、X1は、同一又は異なっても良いアミノ酸若しくはそれらの誘導体からなるペプチドであり、該ペプチドは好ましくはペプチド固相合成法(以下SPPS(Solid-phase peptide synthesis)と略することがある。)により合成可能である。ここでペプチド固相合成法とは、一般に表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズ等を固相として用い、ここから脱水反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長し、目的とするペプチドの配列が出来上がったら固相表面から切り出し、目的物質を得る手法である。

【0034】
アミノ酸は、同一分子内にアミノ基とカルボキシ基を有する化合物であり、分岐状アミノ酸も包含される。ここで分岐状アミノ酸は側鎖に分岐した炭素鎖を持つアミノ酸を意味する。アミノ酸の誘導体とは、アミノ基あるいはカルボキシ基が保護基で修飾されたアミノ酸を意味する。保護基は、アミノ基、カルボキシ基の保護基として一般的に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、アミノ酸の保護基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、α-クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、t-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トシル基、メシチレンスルフォニル基、トリチル基、キサンチル基等が挙げられる。カルボン酸の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ベンジル基、O-ベンジル基、ニトロベンジル基等が挙げられる。

【0035】
上記したようにS1及びS2は、スペーサー基である。スペーサー基は、疎水性又は親水性のスペーサーの何れも使用可能であるが、好ましくは親水性スペーサーである。親水性スペーサーとしてはエチレングリコール基が好ましく、より好ましくはジエチレングリコール基である。また、アルキレン、アリール、及び、アルキレンエーテル基等も使用可能である。

【0036】
X2は、アミノ基若しくはカルボキシル基と反応しうる側鎖官能基を有する、アミノ酸若しくは又はアミノ酸誘導体であるが、ペプチド鎖末端と反応して環化できる側鎖を持つ物質であれば広く利用可能であり、好ましくは、両端にカルボキシル基を有するアミノ酸、若しくは、両端にカルボキシル基を有するアミノ酸誘導体である。ここで両端にカルボキシル基を有するアミノ酸は、例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸である。また、両端にカルボキシル基を有するアミノ酸誘導体は、例えば、リシンのN末端にペプチド結合を介してカルボキシル基を導入したリシン誘導体、セリンのヒドロキシ基にエステル結合を介してカルボキシル基を導入したセリン誘導体、トレオニンのヒドロキシ基にエステル結合を介してカルボキシル基を導入したセリン誘導体等が挙げられる。また、アジドとアルキンのクリック反応による結合も可能であり、かかる場合X2は例えば1,2,3-トリアゾール構造を有する。

【0037】
次に本実施形態にかかる環状ペプチドNMP開始剤の合成法を示す。環状ペプチドNMP開始剤を使用して、ラジカル重合性のモノマーであるX-CHCH2を反応させる。ラジカル重合性のモノマーは、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、パラクロロスチレン、ペンタフルオロスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン等が挙げられる。環状ペプチドNMP開始剤は、熱解離により可逆的に安定ラジカルを生成する。反応温度は例えば90℃以上好ましくは110℃以上である。NMPは活性化反応が比較的遅いため重合温度は比較的高い温度が好ましいからである。NMP活性化機構はdormant speciesであるアルコキシアミン誘導体の炭素-酸素結合の熱解離反応である。熱解離によりdormant species P-XからPラジカルとYラジカルとが生成する場合、Pラジカルがモノマーと反応して分子鎖を伸長した後、これがニトロキシルラジカルとカップリング反応をおこしdormant speciesへと不活性化される。重合反応中では、安定ラジカル効果によりPラジカルとニトロキシルラジカルとのヘテロカップリング反応が選択的におこる定常状態へと速やかに到達し、Pラジカルどうしのホモカップリングによるデッドポリマーの生成は抑制される。このヘテロカップリング反応、即ち不活性化反応はPラジカルのモノマーの付加反応と比較して十分に早い速度でおこるため、分子量分布が制御される。

【0038】
【化8】
JP2018123066A_000010t.gif
【実施例】
【0039】
(1)4-((((9H-fluoren-9-yl)methoxy)carbonyl)amino)-(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl) free radical (Fmoc-NH-TEMPO)の合成
下記に示すようにNH2-TEMPO 1.62g (9.45 mmol), Fmoc-OSu 3.04g (9 mmol) とトリエチルアミン 1.25 mL (9 mmol) を 20 mLのジクロロメタンに溶解させ、室温で20時間反応させた。反応後、反応溶液をヘキサン/酢酸エチル (v/v=3/7) 混合溶液100 mLに加え、pH 2の希塩酸 100 mLで3回洗浄することで、未反応のNH2-TEMPOとトリエチルアミン及びその塩酸塩を除去した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水した。脱水後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することで粗精製物を得た。展開溶媒にヘキサン/アセトン (v/v=7/3) 混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、Rf値が0.65 (TLC) のフラクションを回収した。回収した溶液から溶媒を減圧除去することで目的のFmoc-NH-TEMPO 3.05 g (7.74 mmol) を橙色固体として得た(収率: 86.0%)。電子スピンの影響により1H NMRスペクトルで検出することが不可能である。そのため、構造決定はDART-MSスペクトル測定により行った。
【実施例】
【0040】
【化9】
JP2018123066A_000011t.gif

【実施例】
【0041】
(2)tert-butyl 2-((4-((((9H-fluoren-9-yl)methoxy)carbonyl)amino)-2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-yl)oxy)-2-methylpropanoate (Fmoc-NH-TEMPO-COOtBu)の合成
下記に示すようにFmoc-NH-TEMPO 0.98 g (2.48 mmol), tert-ブチル 2-ブロモ-2-メチルプロパン酸 0.92 mL (4.96 mmol), 還元剤にCu(0) 0.158 g (2.48 mmol), 触媒としてCu(OTf)218 mg (5.96×10-2 mmol) 及びN,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン 41.6 μL (0.20 mmol) を メタノール20 mL に溶解させ、溶液を試験管に移し凍結脱気することで系内から酸素を除去した。脱気後に封管し、窒素雰囲気下60℃で24時間反応させた。反応後、反応溶液をヘキサン/酢酸エチル (v/v=1/1) 混合溶液 100 mLに加え、0.1 M EDTAaq (pH 8.0) 100 mL と 蒸留水 100 mL を用いてそれぞれ3回ずつ洗浄することで、銅と配位子及びその錯体を除去した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水した。脱水後、硫酸ナトリウムを濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することで粗精製物を得た。展開溶媒にヘキサン/ジエチルエーテル (v/v=2/1) 混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、Rf値が0.32 (TLC) のフラクションを回収した。回収した溶液から溶媒を減圧除去することで目的のFmoc-NH-TEMPO-COOtBu 0.84 g (1.56 mmol) を橙色固体として得た (収率: 69.2%)。構造決定は1H NMRスペクトル測定により行った。
【実施例】
【0042】
【化10】
JP2018123066A_000012t.gif

【実施例】
【0043】
(3)2-((4-((((9H-fluoren-9-yl)methoxy)carbonyl)amino)-2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-yl)oxy)-2-methylpropanoic acid (Fmoc-NH-TEMPO-COOH)の合成
下記に示すようにFmoc-NH-TEMPO-COOtBu 0.81 g (1.51 mmol) を2,2,2-トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン/トリイソプロピルシラン (v/v/v=8.5/1/0.5) 混合溶液30 mL に溶解させ室温で12時間反応させた。反応溶液から2,2,2-トリフルオロ酢酸とジクロロメタンを減圧除去し、ヘキサン/アセトン(v/v=2/1) 30 mLから再結晶することで目的の Fmoc-NH-TEMPO-COOH 0.36 g (0.75 mmol) を白色固体として得た (収率: 49.8%)。構造決定は1H NMRスペクトル測定により行った。
【実施例】
【0044】
【化11】
JP2018123066A_000013t.gif

【実施例】
【0045】
(4)環状ペプチドNMP開始剤の合成
下記に示すように環状ペプチドNMP開始剤cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)、cyclic(Asp-deg-(Leu-Gly)2-deg-TEMPO) (CyPI 2) 及び cyclic(Asp-deg-(Glu(OBz))4-deg-TEMPO) (CyPI 3) はFmocペプチド固相合成法によりそれぞれ合成した。まず、Fmoc-NH-SAL MBHA Resin 0.30 g (0.20 mmol) をDMF 5mLで3時間膨潤させた。次に、樹脂をピペリジン/DMF (v/v=1/4) 混合溶液で処理してFmoc基を脱保護し、DMF 5 mLで中性になるまで繰返し洗浄した。そこに、溶媒としてDMF 5 mLに溶解させたFmoc-Asp(OAl)-OH 0.24 g (0.60 mmol)、縮合剤としてDIPC 0.076 g (0.60 mmol)、 縮合促進剤としてHOBt 0.081 g (0.60 mmol) を加え、室温で3時間反応させることでアミノ酸のカップリングを行った。カップリング後、未反応の残留試薬を除去するため、DMF 5 mLで繰返し洗浄した。Fmoc基の脱保護及びアミノ酸の縮合反応サイクルを各種Fmoc-アミノ酸、Fmoc-NH-deg-COOH及びFmoc-NH-TEMPO-COOHを用いて繰返し行うことで、樹脂上に目的の配列の直鎖ペプチドを合成した。次に、樹脂を10 mLのジクロロメタン中で、触媒としてテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.023 g (0.020 mmol) 及びアリル補足剤としてフェニルシラン 0.25 mL (2.0 mmol) を用い、室温で3時間処理することでOAl基を脱保護した。反応後、DMF 5 mLで10回洗浄し、ピペリジン/DMF (v/v=1/4) 混合溶液で処理することでFmoc基の脱保護を行った。DMF 5 mLで中性になるまで繰返し洗浄し、DMF 5 mL中で樹脂上の直鎖ペプチドに縮合剤としてDIPC 0.076 g (0.60 mmol)、 縮合促進剤としてHOBt 0.081 g (0.60 mmol) を室温で6時間作用させることで、樹脂上でペプチドの分子内環化反応を行った。環化反応後、DMF 5 mLとジクロロメタン5 mLでそれぞれ数回洗浄した後に2,2,2-トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン/トリイソプロピルシラン (v/v/v=8.5/1/0.5) 混合溶液 10 mLを加えて室温で4時間反応させ、ペプチドを樹脂上から切り出した。樹脂を濾過により除去し、得られた濾液を減圧濃縮した。最後に、ジエチルエーテルを非溶媒に用いた再沈殿法により精製を行い、目的のCyPI 1,2及び3を白色固体としてそれぞれ得た。構造決定はMALDI-TOF MSスペクトル及び1H NMRスペクトル測定により行った。
【実施例】
【0046】
【化12】
JP2018123066A_000014t.gif

【実施例】
【0047】
合成して得られた環状ペプチドNMP開始剤cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)を下記に示す。
【実施例】
【0048】
【化13】
JP2018123066A_000015t.gif

【実施例】
【0049】
また、上記のように合成して得られた環状ペプチドNMP開始剤cyclic(Asp-deg-(Leu-Gly)2-deg-TEMPO) (CyPI 2)を下記に示す。
【実施例】
【0050】
【化14】
JP2018123066A_000016t.gif

【実施例】
【0051】
また、上記のように合成して得られた環状ペプチドNMP開始剤cyclic(Asp-deg-(Glu(OBz))4-deg-TEMPO) (CyPI 3)を下記に示す。
【実施例】
【0052】
【化15】
JP2018123066A_000017t.gif

【実施例】
【0053】
(5)環状ペプチドNMP開始剤を用いたマルチブロックコポリマーの合成
下記に示すように環状ペプチドNMP開始剤 CyPI 1,2及び3を用いてスチレン、パラクロロスチレン、4-ビニルピリジン及びスチレン-アクリロニトリル共重合体からなるマルチブロックポリマー (Entry A-F) の合成を行った。下記表に反応条件及び分子量を示す。
【実施例】
【0054】
【表1】
JP2018123066A_000018t.gif

【実施例】
【0055】
まず、CyPI 0.010 mmolと モノマー 1.0 mmolをモノマー濃度が6 MとなるようにDMFに溶解させ、溶液を試験管に移し凍結脱気することで系内から酸素を除去した。脱気後に封管し、窒素雰囲気下110又は120℃で18 から144時間反応させた。反応後、メタノール又はジエチルエーテルからの再沈殿により目的のポリマーを白色固体として得た。分子量と多分散度はGPC、構造決定はFT-IR及び1H NMRスペクトル測定により行った。
【実施例】
【0056】
【化16】
JP2018123066A_000019t.gif

【実施例】
【0057】
下記に示すように得られたポリマー (Entry A-F) がマルチブロック構造を有していることを確認するために、ポリマー鎖のフラグメント化を行った。まず、ポリマー 10 mgと大過剰のTEMPO 40 mg (>400 eq) を100 μLのN-メチル-2-ピロリドンに溶解させ、溶液を試験管に移し凍結脱気することで系内から酸素を除去した。脱気後に封管し、窒素雰囲気下110℃で反応させた。反応後、メタノール又はジエチルエーテルからの再沈殿により目的のフラグメント化ポリマーを橙色又は褐色固体として得た。分子量と多分散度はGPC,構造決定はFT-IR及び1H NMRスペクトル測定により行った。
【実施例】
【0058】
【化17】
JP2018123066A_000020t.gif

【実施例】
【0059】
(5-1) 環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)を用いたスチレンの重合
マルチブロックコポリマーの一合成例として、環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)を用いたスチレンの重合を下記に示す。上記と同様にCyPI 1 0.010 mmolと スチレンモノマー 1.0 mmolをモノマー濃度が6 MとなるようにDMFに溶解させた。
【実施例】
【0060】
【化18】
JP2018123066A_000021t.gif

【実施例】
【0061】
また下記に示すように得られたポリマーがマルチブロック構造を有していることの確認も行った。
【実施例】
【0062】
【化19】
JP2018123066A_000022t.gif

【実施例】
【0063】
分子量と多分散度はGPC,構造決定はFT-IR及び1H NMRスペクトル測定により行った。図1は、マルチブロックコポリマーとフラグメントとを比較したGPC測定結果を示す。なお多分散指数PDI=Mw/Mnである。図2は、マルチブロックコポリマーとフラグメントとを比較したFT-IR測定結果を示す。図3は、マルチブロックコポリマーとフラグメントとを比較した1H NMRスペクトル測定結果を示す。
(5-2) 環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)を用いた4-ビニルピリジンの重合
マルチブロックコポリマーの一合成例として、環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)を用いた4-ビニルピリジンの重合を下記に示す。上記と同様にCyPI 1 0.010 mmolと4-ビニルピリジン 1.0 mmolをモノマー濃度が6 MとなるようにDMFに溶解させた。
【実施例】
【0064】
【化20】
JP2018123066A_000023t.gif

【実施例】
【0065】
(5-3) 環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)を用いたパラクロロスチレンの重合
マルチブロックコポリマーの一合成例として、環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-Leu4-deg-TEMPO) (CyPI 1)を用いたパラクロロスチレンの重合を下記に示す。上記と同様にCyPI 1 0.010 mmolとパラクロロスチレン 1.0 mmolをモノマー濃度が6 MとなるようにDMFに溶解させた。
【実施例】
【0066】
【化21】
JP2018123066A_000024t.gif

【実施例】
【0067】
(5-4)環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-(Leu-Gly)2-deg-TEMPO) (CyPI 2)を用いたスチレンとアクリロニトリルとの共重合
マルチブロックコポリマーの一合成例として、環状ペプチドNMP開始剤 cyclic(Asp-deg-(Leu-Gly)2-deg-TEMPO) (CyPI 2)を用いたスチレンとアクリロニトリルとの共重合を下記に示す。CyPI 2 0.010 mmolとスチレン0.8 mmolとアクリロニトリル0.2 mmolをモノマー濃度が6 MとなるようにDMFに溶解させた。
【実施例】
【0068】
【化22】
JP2018123066A_000025t.gif

【実施例】
【0069】
分子量と多分散度はGPC,構造決定はFT-IR及び1H NMRスペクトル測定により行った。図4は、マルチブロックコポリマーとフラグメントとを比較したGPC測定結果を示す。図5は、マルチブロックコポリマーとフラグメントとを比較したFT-IR測定結果を示す。図6は、マルチブロックコポリマーとフラグメントとを比較した1H NMRスペクトル測定結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0070】
マルチブロック型高分子の製造に利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5