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明細書 :金属材料の押出加工用金型およびこの金型を用いた金属材料の結晶微細化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-149547 (P2018-149547A)
公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 金属材料の押出加工用金型およびこの金型を用いた金属材料の結晶微細化方法
国際特許分類 B21C  25/02        (2006.01)
B21C  23/08        (2006.01)
FI B21C 25/02 Z
B21C 23/08 Z
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2017-045565 (P2017-045565)
出願日 平成29年3月10日(2017.3.10)
発明者または考案者 【氏名】宮本 博之
【氏名】駒田 直紀
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4E029
Fターム 4E029MB09
要約 【課題】金属材料に効率よくせん断ひずみを加えることによって結晶の微細化を図り、レアメタル等の添加を行わなくても、材料の強度を靭性を損なうことなく高めることができる金属材料押出加工用金型およびこの金型を用いた金属材料の結晶微細化方法の提供。
【解決手段】円柱状の金属材料を押出加工する押出加工経路11が、この押出加工経路11の出口まで達し、円柱状をした材料装填部12と、材料装填部12に連設され、金属材料を断面円形から楕円形に変形させる材料断面変形部13と、材料断面変形部13で楕円形状に変形された金属材料を、楕円形を保ちながら徐々にねじり率が増大するねじり形状をした非線形ねじり部14と、この非線形ねじり部14の出口の回転を阻害しない状態を保ちつつ楕円形状になった金属材料を円柱状に形状回復させる断面形状回復部15を備える構成とした。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
柱状の金属材料を押出加工する押出加工経路を備える金属材料の押出加工用金型であって、
前記押出加工経路が、押出加工経路の材料押出方向出口側端に、押出軸周りのねじり率が徐々に増大する内面ねじり形状をした非線形ねじり部を備えていることを特徴とする押出加工用金型。
【請求項2】
押出加工経路が、押出加工経路入口から押出加工経路内に通された柱状の金属材料を、押出しに伴い、材料押出方向に直交する1軸方向の経路幅が小さくなるように断面形状が変化する内面形状をした材料断面変形部を非線形ねじり部の押出方向上流側に備えている請求項1に記載の押出加工用金型。
【請求項3】
柱状の金属材料を押出加工する押出加工経路を備える金属材料の押出加工用金型であって、
前記押出加工経路が、材料断面変形部と、この材料断面変形部に連設された非線形ねじり部と、この非線形ねじり部に連設されるとともに、前記押出加工経路の押出方向後端に設けられた断面形状回復部を備え、
前記材料断面変形部は、断面円形の材料入口と、断面非円形の材料出口を有し、前記材料断面変形部を通過する金属材料が断面円形から断面非円形に変形可能な内面形状に形成されていて、
前記非線形ねじり部は、押出軸周りのねじり率が材料押出方向入口から出口に向かって徐々に増大する内面ねじり形状をしており、
前記断面形状回復部は、出口が円形をしていて、前記材料押出方向に直交する断面形状が、前記材料押出方向の入口から出口に向かって、前記非線形ねじり部出口側端の断面非円形から断面円形に徐々に変化するとともに、
前記非線形ねじり部出口のねじり率を前記断面形状回復部出口まで維持する、あるいは、前記断面形状回復部出口に向かってねじり率を徐々に増大させるように作用する内面形状に形成されていることを特徴とする押出加工用金型。
【請求項4】
非円形が楕円形である請求項3に記載の押出加工用金型。
【請求項5】
押出加工経路が、経路入口側端部に、柱状の金属材料が装填される材料装填部を備えている請求項1~請求項4のいずれかに記載の押出加工用金型。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の押出加工用金型で柱状金属材料を押出加工する押出工程を備えることを特徴とする金属材料の結晶微細化方法。
【請求項7】
請求項3~5のいずれかに記載の押出加工用金型で押出加工された加工柱状金属材料をさらに請求項3~5のいずれかに記載の押出加工用金型で押出加工する工程を備えている請求項6に記載の金属材料の結晶微細化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の押出加工用金型およびこの金型を用いた金属材料の結晶微細化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機器や装置の高性能化を図るために、機器や装置に用いる金属材料の強度や靭性の改善が求められている。
たとえば、金属材料中にレアメタルを添加して金属材料の強度や靭性を改善することが行われている。
【0003】
しかし、レアメタルは、高価であるため、その使用量を削減する動きが活発化している(非特許文献1参照)。
そのため、レアメタルの添加を抑えることができる代替金属材料の開発や、レアメタルのリサイクル技術の開発が求められている(非特許文献2参照)。
【0004】
一方、金属材料の強度は、転位と呼ばれる材料中の線欠陥と密接な関係がある (非特許文献3参照)。
上記転位に影響を与えて、金属材料の強度を向上させる代表的な方法としては、加工強化および固溶強化が挙げられる。
【0005】
加工強化は、金属材料に塑性変形を与え、変形部分に転位を堆積させることにより金属材料の強度を向上させる方法である。
しかし、加工強化は、材料の強化に伴い、靱性が低下するという問題がある。
【0006】
一方、固溶強化は、合金などのように材料に他物質を混入させ、転位の移動を抑制し、材料の強度を向上させる方法である。
しかし、固溶強化は、他物質を混入させるため、リサイクル性の点に問題がある。
【0007】
これに対し、加工強化および固溶強化の欠点をもたない強化方法として、超微細粒(以下、「UFG」と記す)を形成する方法が注目を集めている。
UFGの形成は、材料の組織をナノレベルまで微細化し、転位が動きにくい粒界を増加させることにより、他の強化方法と比較し靭性を損なわずに材料の強度を向上させることができる(非特許文献4参照)。
【0008】
さらに、UFGの形成を用いた強化方法では、材料中に他物質を混入させないため、リサイクル性の点で有利である(非特許文献5参照)。
UFGを形成する代表的な加工方法としては、高圧ねじり(以下、「HPT」と記す)加工および等経路角押出し(以下、「ECAP」と記す)加工などの強ひずみ加工(以下、「SPD」と記す)が挙げられる(非特許文献6参照)。
【0009】
しかし、上記HPT加工は、コインサイズの材料の加工に限定されるという問題があり、ECAP加工は、不連続な加工工程を必要とするという問題がある。
すなわち、HPT加工およびECAP加工は生産性の点で問題がある。
【0010】
HPT加工およびECAP加工に比べ、生産性の良いSPD加工方法としては、ねじり押出 (以下、「TE」記す) 加工が挙げられる(非特許文献7参照)。
TE加工は、ねじりによるせん断ひずみを原材料に導入し、UFGを形成させる方法である(非特許文献8参照)。
【0011】
また、TE加工の場合、1つの経路に複数のねじりを有することにより、生産性を向上させることができる。
しかし、上記従来のTE加工では、金型が複数のねじり部を有する構成を採用しても、強度や靭性の十分な向上が望めない。
【0012】
その原因としては、以下のようなことが考えられる。
すなわち、従来のTE加工においては、ねじり部において、材料の送り量(押出量)と、材料のねじり率が一定である線形ねじりであるため、押出される金属材料はねじり部の入口においてせん断変形を受けた後、せん断変形がほとんど加わらない状態で経路に沿って回転移動する(剛体変形)。
【0013】
そのため、従来のTE加工においては、押出加工される金属材料に導入されるせん断ひずみはねじり部入口に限定され、効率よく結晶を微細化することができない。
【0014】
なお、UFGは、ひずみが大きくなるに伴って形成しやすくなる。したがって、従来のTE加工におけるせん断ひずみを増大させることにより、UFGの形成を促進できると考えられる。
そこで、金型のねじり部を金属材料の押出方向下流側に向かってねじり率が徐々に大きくなるような内面螺旋形状として、ねじり部を通過する金属材料のねじり率を下流側に向かって徐々に大きくすることによって、せん断ひずみを金属材料に継続して加えながら純銅を押出すようにした押出加工方法、すなわち、非線形ねじり押出法(nonlinear twist extrusion 、以下、「NTE」と記す)が発明者らによってすでに提案されている(非特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【0015】

【非特許文献1】呉碩, 森貞好昭, 藤井英俊, 志賀千晃, 摩擦攪拌接合を利用した高張力鋼材のレアメタル削減に関する検討一般社団法人溶接学会 (2012), pp.1-2.
【非特許文献2】鈴木弘樹,松川泰之,藤井正彦,丹羽直毅,一之瀬和夫,久保木功,小久保邦雄,湯本敦史,結晶粒微細化を目的とした強加工法の開発, 工学院大学研究報告, Vol. 109 (2010), pp.7-12.
【非特許文献3】渡辺義見, 三浦博己, 三浦誠司, 渡邊千尋, 図でよくわかる機械材料学 (2012), p.90.
【非特許文献4】日本材料学会編, 改訂機械材料学 (2011), pp.227-228.
【非特許文献5】堀田善治, 巨大ひずみ加工による超微細組織制御, 軽金属学会, Vol. 60, No. 3 (2010), p.134.
【非特許文献6】堀田善治, 超強加工によるバルク材の超微細組織化と力学特性向上, 鉄と鋼, Vol. 94, No. 12 (2008), p.25.
【非特許文献7】Beygelzimer, Y., Dmitry O. and Varyukhin, V., A new severe plastic deformation method: twist extrusion, Ultrafine Grained Materials II (2002), pp297-304.
【非特許文献8】Orlov, D., Todaka, Y., Umemoto, M., Beygelzimer, Y. and Tsuji, N., Comparative analysis of plastic flow and grain refinement in pure aluminium subjected to simple shear-based severe plastic deformation processing, Materials transactions, Vol.53, No.1 (2012), pp.17-25.
【非特許文献9】松本崇, ねじり押出しによる純銅の結晶粒微細化, 同志社大学大学院修士論文 (2016), pp1-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記先に提案されたNTE加工方法では、従来のTE加工法に比べ、強度の向上が認められるものの、まだまだ、十分な強度向上が認められないことがわかった。
そこで、本発明の発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、上記先に提案されたNTE加工方法の場合、金型の押出加工経路の出口側に、加工されたSPD加工銅材を、加工前の銅材と同じ断面形状にして押出すようにした四角筒状の保形部を備えていることが原因ではないかということに想い到った。
【0017】
すなわち、上記先に提案されたNTE加工方法では、非線形ねじり部でねじり加工された金属材料が、押出加工経路の出口においてねじられた形状から急激に原形に戻されるため、金属材料にねじり方向と逆方向のひずみ(以下、「ひずみの往復」と記す)が発生し、このひずみの往復の発生により、ひずみの一部が解消され、せん断ひずみの導入量は減少すると考えられる。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みて、金属材料に効率よくせん断ひずみを加えることによって結晶の微細化を図り、レアメタル等の添加を行わなくても、材料の強度を靭性を損なうことなく高めることができる金属材料の押出加工用金型およびこの金型を用いた金属材料の結晶微細化方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明にかかる第1の押出加工用金型(以下、「本発明1の金型」とのみ記す)は、柱状の金属材料を押出加工する押出加工経路を備える金属材料の押出加工用金型であって、前記押出加工経路が、押出加工経路の材料押出方向出口側端に、押出軸周りのねじり率が徐々に増大する内面ねじり形状をした非線形ねじり部を備えていることを特徴としている。
本発明において、上記ねじり率とは、ねじり角/移動距離を意味する。
【0020】
上記本発明1の金型において、押出加工経路が、押出加工経路入口から押出加工経路内に通された柱状の金属材料を、押出しに伴い、材料押出方向に直交する1軸方向の経路幅が小さくなるように断面形状が変化する内面形状をした材料断面変形部を非線形ねじり部の材料押出方向上流側に備えていてもよい。
すなわち、上記のように、材料断面変形部において、押出加工経路内を押出される金属材料を押出加工経路内で扁平形状に変形させることによって金属材料の中央部に圧力が集中的にかかり、中央部の結晶が微細化され、材料の外周方向だけでなく、中央部の強度向上が望める。
【0021】
また、本発明にかかる第2の押出加工用金型(以下、「本発明2の金型」とのみ記す)は、柱状の金属材料を押出加工する押出加工経路を備える金属材料の押出加工用金型であって、前記押出加工経路が、材料断面変形部と、この材料断面変形部に連設された非線形ねじり部と、この非線形ねじり部に連設されるとともに、前記押出加工経路の押出方向後端に設けられた断面形状回復部を備え、前記材料断面変形部は、断面円形の材料入口と、断面非円形の材料出口を有し、前記材料断面変形部を通過する金属材料が断面円形から断面非円形に変形可能な内面形状に形成されていて、前記非線形ねじり部は、押出軸周りのねじり率が材料押出方向入口から出口に向かって徐々に増大する内面ねじり形状をしており、前記断面形状回復部は、出口が円形をしていて、前記材料押出方向に直交する断面形状が、前記材料押出方向の入口から出口に向かって、前記非線形ねじり部出口側端の断面非円形から断面円形に徐々に変化するとともに、前記非線形ねじり部出口のねじり率を前記断面形状回復部出口まで維持する、あるいは、前記断面形状回復部出口に向かってねじり率を徐々に増大させるように作用する内面形状に形成されていることを特徴としている。
【0022】
本発明2の金型において、非円形とは、長軸と短軸を持つような形状であれば特に限定されないが、たとえば、楕円形が挙げられる。
【0023】
以下に、本発明2の金型の断面形状回復部の内面形状について、たとえば、非円形が楕円形で、非線形ねじり部出口のねじり率を断面形状回復部出口まで維持する場合を例にして詳しく説明する。
すなわち、非円形が楕円形であるとき、非線形ねじり部の出口で金属材料はその断面形状が楕円形になっている。
【0024】
そして、断面形状回復部では、押出方向に直交方向の断面が押し出しに伴い楕円率が小さくなり、最終的に円になる。すなわち、徐々に長軸長さが短くなり、短軸長さが逆に長くなり、最終的に長軸と短軸の長さが一致した状態になる。
すなわち、断面形状回復部は、楕円の長軸側の楕円弧に沿う部分が他の部分より凹んだ状態になり、凹みによって形成された溝状部分が、押出方向下流側に向かってねじれながら徐々に溝深さが浅くなり、最終的に溝深さ0(断面円形)となる。
【0025】
本発明の金型において加工される金属材料としては、特に限定されず、たとえば、銅、アルミニウム、鉄やこれらの合金が挙げられる。
本発明において柱とは、柱状になっていれば、特に限定されないが、たとえば、円柱、楕円柱、角柱などが挙げられる。
【0026】
本発明の金型は、特に限定されないが、押出加工経路が、経路入口側端部に、柱状の金属材料を装填するとともに、プランジャが入り込む材料装填部を備えていてもよい。
すなわち、柱状の金属材料を押出軸に合わせた状態でセットしてスムーズに押出加工を行うことができる。
また、上記材料装填部の長さは、特に限定されないが、柱状の金属材料の全長より長くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明1の金型は、柱状の金属材料を押出加工する押出加工経路を備える金属材料の押出加工用金型であって、前記押出加工経路が、押出加工経路の材料押出方向出口側端に、押出軸周りのねじり率が徐々に増大する内面ねじり形状をした非線形ねじり部を備えているので、非線径ねじり部を通過する金属材料の押出方向に直交する断面内でのねじり率が押出方向に向かって徐々に大きくなり、非線形ねじり部において連続してせん断ひずみが加わる。したがって、非線形ねじり部において金属材料を効率よく微細結晶化できる。
【0028】
そして、非線径ねじり部を通過した加工金属材料は、非線径ねじり部出口でのねじり率を維持した状態でそのまま回転しながら押出加工経路から押し出されるので、ひずみの往復が発生せず、非線形ねじり部でのせん断ひずみによる微細結晶が維持された、強度的に優れた加工金属材料が得られる。
【0029】
本発明2の金型は、柱状の金属材料を押出加工する押出加工経路を備える金属材料の押出加工用金型であって、前記押出加工経路が、材料断面変形部と、この材料断面変形部に連設された非線形ねじり部と、この非線形ねじり部に連設されるとともに、前記押出加工経路の押出方向後端に設けられた断面形状回復部を備え、前記材料断面変形部は、断面円形の材料入口と、断面非円形の材料出口を有し、前記材料断面変形部を通過する金属材料が断面円形から断面非円形に変形可能な内面形状に形成されていて、前記非線形ねじり部は、押出軸周りのねじり率が材料押出方向入口から出口に向かって徐々に増大する内面ねじり形状をしており、前記断面形状回復部は、出口が円形をしていて、前記材料押出方向に直交する断面形状が、前記材料押出方向の入口から出口に向かって、前記非線形ねじり部出口側端の断面非円形から断面円形に徐々に変化するとともに、前記非線形ねじり部出口のねじり率を前記断面形状回復部出口まで維持する、あるいは、前記断面形状回復部出口に向かってねじり率を徐々に増大させるように作用する内面形状に形成されているので、上記本発明1の金型と同様に、ひずみの往復が発生せず、非線形ねじり部でのせん断ひずみによる微細結晶が維持された、強度的に優れた加工金属材料が得られる。
【0030】
すなわち、断面形状回復部が、前記非線形ねじり部出口のねじり率を前記断面形状回復部出口まで維持する、あるいは、前記断面形状回復部出口に向かってねじり率を徐々に増大させるように作用する内面形状に形成されているので、ひずみの往復が発生しない。
【0031】
しかも、材料断面変形部を備えているので、材料断面変形部を通過する金属材料が扁平形状に変形され、この変形によって金属材料の中央部に圧力が集中的にかかる。
したがって、材料断面変形部を通過する金属材料の中央部の結晶が微細化され、この金型を用いて得られる加工金属材料は、外周方向だけでなく、中央部の強度向上が望める。
【0032】
また、断面形状回復部を出た加工金属材料が円形をしているので、押し出された加工柱状金属材料を同じ金型を用いて再び押出加工することができる、あるいは、同形の金型を複数直列状態に接続すれば、上流側の金型で加工された加工柱状金属材料が、下流側の金型で、再び押出加工できる。
したがって、1つの定型の金型を作製するだけで、非線形ねじり部を複数回通過させてより微細結晶構造を備えた金属材料を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明2の金型の1つの実施の形態の概略説明図である。
【図2】図1の金型の非線形ねじり部および断面形状回復部におけるねじり角,せん断ひずみおよび微小せん断ひずみの想定図である。
【図3】図1の金型の、非線形ねじり部および断面形状回復部におけるねじり角と、材料の送り量の関連を説明する図である。
【図4】楕円型線形ねじりとしたときの、線形ねじり部および断面形状回復部におけるねじり角,せん断ひずみおよび微小せん断ひずみの想定図である。
【図5】本発明1の金型の1つの実施の形態の概略説明図である。
【図6】本発明2の金型の模擬押出実験に用いた模擬割型の写真写しである。
【図7】模擬押出実験に用いた模擬金型を組み立てた状態の写真写しである。
【図8】模擬押出実験に用いた円柱状特殊粘土の写真写しである。
【図9】特殊粘土のひずみおよび応力の関係を示す図である。
【図10】模擬押出実験における各パスにおける特殊粘土の状態の写真写しであって、同図(a)加工前、同図(b)は1パス後、同図(c)は2パス後、同図(d)は3パス後、同図(e)は4パス後を示している。
【図11】模擬押出実験におけるパス数および押出し後の試験片におけるせん断ひずみの実験値および理論値を対比して示す図である。
【図12】本発明2の金型の実施例としての純銅押出実験に用いた金型の割型の写真写しである。
【図13】実施例としての純銅押出実験に用いた金型を組み立てた状態の写真写しである。
【図14】実施例の0パス銅、0.4パス銅、0.6パス銅、および1パス銅の短軸および長軸方向におけるビッカース硬さの平均値を示した図である。
【図15】実施例の0パス銅、0.4パス銅、0.6パス銅、および1パス銅の、中心からの距離を変化させた際の短軸方向におけるビッカース硬さを示した図である。
【図16】0パス銅、0.4パス銅、0.6パス銅、および1パス銅の、中心からの距離を変化させた際の長軸方向におけるビッカース硬さを示した図である。
【図17】実施例における1パス後のビッカース硬さの平均値と、非特許文献9に記載のTE加工方法を用いた場合の1パス後のビッカース硬さの平均値データを比較して示した図である。
【図18】実施例の1パス銅の中心からの距離を変化させた際の短軸方向におけるビッカース硬さを、比較例としての非特許文献9のTE加工方法のデータを比較して示した図である。
【図19】実施例の1パス銅の中心からの距離を変化させた際の短軸方向におけるビッカース硬さを、比較例としての非特許文献9のTE加工方法のデータを比較して示した図である。
【図20】実施例の1パス銅、2パス銅、4パス銅のそれぞれの試験片について、その下面(押出方向先端面)におけるビッカース硬さの平均値を示した図である。
【図21】実施例の1パス銅、2パス銅、4パス銅のそれぞれの試験片について、その上面(押出方向後端面)におけるビッカース硬さの平均値を示した図である。
【図22】実施例の0パス銅および1パス銅のそれぞれの微細組織を電子線後方散乱回折(以下、「EBSD」と記す)測定し、その結果を、非特許文献9(比較例)のEBSD測定結果と対比して示す写真写しである。
【図23】1パス銅および4パス銅の上面(押出方向後端面)の、EBSD測定から算出した中心と周辺の平均結晶粒径を0パス銅と対比して示した図である。
【図24】1パス銅および4パス銅の下面(押出方向先端面)の、EBSD測定から算出した中心と周辺の平均結晶粒径を0パス銅と対比して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明2の金型の1つの実施の形態をあらわしている。

【0035】
図1に示すように、この金型1は、円柱形状をした金属材料を押出加工するようになっていて、材料装填部12と、材料断面変形部13と、非線形ねじり部14と、断面形状回復部15とからなる押出加工経路11を備えている。
材料装填部12は、押出方向の長さが押出加工される金属材料の長さより長く、後述するプランジャの断面とほぼ同じか少し大きい断面形状をしている。

【0036】
材料断面変形部13は、その入口(押出方向上流端)の端面形状が金属材料を挿入可能な円形をしているとともに、出口形状が所望の楕円率の楕円となっているとともに、入口から出口に向かって押出方向に直交する断面の断面積をほぼ一定に保ちながら、入口から出口(押出方向下流端)に向かって押出方向に直交する1軸(以下、「X軸」と記す)方向の幅が徐々に小さくなるとともに、このX軸に直交する1軸(以下、「Y軸」と記す)方向の幅が、徐々に大きくなるように変形した筒形をしている。

【0037】
非線形ねじり部14は、材料断面変形部13の断面楕円形を保ちながら、押出に伴って無段階で徐々にねじり率が増加するねじり溝を備えた内面螺旋形状の筒形に形成されている。

【0038】
断面形状回復部15は、出口が円形をしていて、非線形ねじり部14の出口のねじり率を維持しながら、材料押出方向に直交する断面形状が、材料押出方向の入口から出口に向かって、非線形ねじり部14出口側端の断面非円形から断面円形に徐々に変化している。
すなわち、断面形状回復部15は、内面に、楕円の長軸側の楕円弧にあたる部分の軌跡に沿う螺旋溝が形成されている。
また、この螺旋溝は、非線形ねじり部14の出口のねじり率を維持しながら、入口から出口に向かって徐々に溝深さが浅くなり、最終的に溝深さが0(断面円形)となるように形成されている。

【0039】
この金型1は、プランジャを備えた押出装置にセットされて以下のようにして円柱形の金属材料を押出加工することができる。
(1)材料断面変形部13の入口の内径と同じ外径の円柱形の金属材料を材料装填部12に装填する。なお、金属材料表面には予め潤滑剤を塗布しておくことが好ましい。
(2)装填された金属材料をプランジャによって断面形状回復部15方向に押し込む。
(3)プランジャが材料装填部12に所定の押し込み長さ分押し込まれたのち、プランジャを材料装填部12から抜き出し、新しい金属材料を材料装填部12に装填する。
(4)新しく装填された金属材料を、再びプランジャによって断面形状回復部15方向に押し込む。この押し込みによって、先に押し込まれて材料押出経路1中に留まっている金属材料が後から押し込まれる金属材料によって材料押出経路1の出口方向に押し出される。
すなわち、(3)、(4)を繰り返すことによって押出加工された金属材料(以下、「加工金属材料」と記す)が円柱状になってつぎつぎに材料押出経路1から押し出される。

【0040】
このようにして得られる加工金属材料は、材料断面変形部13において、入口から出口に達するまでにX軸方向に圧を受けながら断面楕円形状に変形していく。
したがって、材料断面変形部13を通過する間に中心部付近の結晶が微細化されるとともに、非線形ねじり部14において、金属材料にねじりを加えることが可能となる。

【0041】
そして、非線形ねじり部14では、金属材料が楕円形を保ちながら螺旋形状の内面に沿いながら押し出されるが、楕円の長軸側の壁面がはまり込むねじれ溝のねじり率が徐々に大きくなっているので、非線形ねじり部14内を押し出される金属材料のねじり率が、押出方向の下流に向かって徐々に大きくなる。
したがって、非線形ねじり部14では、押し出しに伴って徐々に金属材料のねじり率が大きくなる非線形ねじりが金属材料に加わり、金属材料の剛体変形を抑制し、図2および図3に示すように、非線形ねじり部14全体において金属材料にせん断ひずみを導入することができる。
したがって、非線形ねじり部14では、入口から出口まで通過する金属材料にせん断ひずみが継続して加わり、金属材料の結晶の微細化が促進される。

【0042】
つぎに、断面形状回復部15では、非線形ねじり部14を出た材料が、非線形ねじり部14の出口の金属材料のねじり率を維持した状態で断面円形になるように変形される。
したがって、図2に示すように、非線形ねじり部14を出た加工金属材料に、ひずみの往復が発生することなく、非線形ねじり部14でのせん断ひずみを維持した状態で加工金属材料が断面形状回復部15の出口から押し出される。

【0043】
すなわち、この金型1を用いた押出加工を行うようにすれば、他の材料を添加することなく金属材料の結晶構造を効率よく微細化でき、強度的に優れ、リサイクル性を兼ね備えた加工金属材料を得ることができる。
また、この実施の形態によれば、得られる加工金属材料は、加工前の金属材料と同様の円柱形状に押し出されるので、さらに、結晶の微細化を望むのであれば、得られた加工金属材料を再び金型1の押出加工経路11に通すようにすればよい。

【0044】
なお、上記のように再び金型1の押出加工経路11に通す場合、加工金属材料を同じ金型1に通すようにしてもよいし、上流側の金型1の押出加工経路11の出口と下流側の金型1の押出加工経路11の入口とが一致するように複数台の金型1を連結するようにしても構わない。
また、上記のように複数台の金型を連結する場合、2台目以降の金型は、材料装填部12のないものを用いても構わない。すなわち、上流側の断面形状回復部15の出口と、下流側の金型1の材料形状変形部13の入口とを連結するようにしても構わない。

【0045】
図5は、本発明1の金型の1つの実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この金型100は、材料押出経路101が、材料装填部110と、この材料装填部110に連設された非線形ねじり部120からなる。

【0046】
材料装填部110は、正四角筒形状をしている。
非線形ねじり部120は、材料押出方向に直交する断面が正四角形をしていて、材料押出方向に向かってねじり率が徐々に増大する四角形の各コーナーがはまり込むねじり溝を備えた内面形状をしている。
なお、図5中、400はプランジャである。

【0047】
この金型100は、上記のようになっており、非線形ねじり部120を通過する金属材料600は、そのコーナー部が、非線形ねじり部120のねじり溝にそってねじられながら押し出される。
すなわち、ねじり溝のねじり率が材料押出方向に向かって無段階で徐々に増大しているので、非線形ねじり部120を通過する金属材料600には、非線形ねじり部120の入口から出口までせん断ひずみが連続的に加わり、非線形ねじり部120において金属材料600を効率よく微細結晶化できる。
そして、非線形ねじり部120を通過して押し出された加工金属材料610は、非線形ねじり部120のねじり率を維持した状態で押し出されるので、ひずみの往復が発生せず、非線形ねじり部120出口での微細結晶構造が維持される。

【0048】
上記の実施の形態では、非線形ねじり部が無段階でねじり率が大きくなる内面形状に形成されていたが、一定間隔ごとに一定ねじり率部分と、ねじり率増大部分とを繰り返し設けた内面形状としても構わない。
上記本発明2の実施の形態では、材料断面変形部の出口と非線形ねじり部の入口が連結されていたが、材料断面変形部と非線形ねじり部との間に線形ねじり部を設けるようにしても構わない。

【0049】
上記本発明2の実施の形態では、断面形状回復部で材料装填部に装填される金属材料と同じ径の加工金属材料に形状回復させるようにしていたが、非線形ねじり部において金属材料にかかる背圧を大きくするために、材料の回転を阻害しない範囲で装填される金属材料より小径に絞る絞り部を材料加工経路の出口に設けるようにしても構わない。

【0050】
なお、参考として、金型を楕円型線形ねじりとしたときの、線形ねじり部および断面形状回復部におけるねじり角,せん断ひずみおよび微小せん断ひずみの想定図を図4に示す。図4中、140は線形ねじり部、150は断面形状回復部である。
図4に示すように、楕円型線形ねじりでは、線形ねじり部140の入口でひずみがせん断変形を受けた後、同じ送り量かつねじり角で線形ねじり部140内を回転移動する(剛体変形)ことがわかる。そして、形状回復部150の入口で、逆方向のひずみ(以下、「ひずみの往復」と記す)が加わることがわかる。

【0051】
〔模擬押出実験〕
3DプリンタCONNEX500(OBJET製)を用いて、透明樹脂Vero Clear RGD810(Stratasys製)により、図6に示す締め付けボルト挿通孔を備えた2つの模擬割型2a,2bを作製した。
そして、2つの模擬割型2a,2bを締め付けボルト挿通孔が一致するように組み合わせ、ボルト挿通孔に挿通したボルトにより、2つの模擬割型2a,2bを固定し、上記金型1と同様の構成をした材料押出経路11を有し、材料押出経路11の各部12~15の寸法形状が以下の表1に示すとおりの、図7に示すような模擬金型1aを得た。

【0052】
なお、表1中、12は材料投入部、13は材料断面変形部、14は非線形ねじり部、15は断面形状回復部、a1は材料形状変形部13の出口(終端)の楕円の長半径、b1は材料形状変形部13の出口(終端)の楕円の短半径である。
また、表1におけるパラメータは解析ソフトDEFORM-2D/3D V11.0(ヤマナカゴーキン製)を用いて算出した押出しの最大荷重において、プランジャおよび固定用のねじの破壊が発生しない値を設定している。
表2に、上記解析ソフトの解析条件を示す。

【0053】
【表1】
JP2018149547A_000003t.gif

【0054】
【表2】
JP2018149547A_000004t.gif

【0055】
また、図7に示すように、模擬金型1aを固定する冶具3を3DプリンタReplicator(Marker Bot製)により作製し、4本のねじで模擬金型1aと図示していない引張試験機AGS-10kNX(島津製作所製)に固定した。加えて、ステンレス鋼(SKD11)製のプランジャ4が倒れないように3DプリンタCube X(3D Systems製)により作製した直径10 mmの貫通穴を有する支え台5を使用した。

【0056】
つぎに、図8に示す半径5mmの円柱状特殊粘土Floss WAX十字入り(日本ハードウエア製、以下、「特殊粘土」とのみ記す)を上記模擬金型1aの材料装填部12に装填したのち、図示していない引張試験機AGS-10kNX(島津製作所製)の圧縮機能により、押出試験片が断面形状回復部15の出口から取り出せるようになるまで,プランジャ4によって特殊粘土を押出し速度10 mm/minで,繰り返し押出した。
なお、図9に日本ハードウエアにより提供された上記特殊粘土のひずみおよび応力の関係を示す。図9より、特殊粘土は金属同様の加工硬化性を有することがわかる。

【0057】
そして、加工前の特殊粘土を図10(a)に、模擬金型1aの材料押出経路11に1回通した1パス加工特殊粘土を図10(b)に、模擬金型1aの材料押出経路11に2回通した2パス加工特殊粘土を図10(c)に、模擬金型1aの材料押出経路11に3回通した3パス加工特殊粘土を図10(d)に、模擬金型1aの材料押出経路11に4回通した4パス加工特殊粘土を図10(e)に、それぞれ示した。

【0058】
図10(a)~図10(e)より、パス数が増大するに伴い押出し後の試験片に発生するくびれが大きくなっていることがわかる。これは、凹凸の発生により経路に沿う部分と沿わない部分の摩擦差によりくびれが発生したと考えられる。
図11に模擬押出実験におけるパス数および押出し後の試験片におけるせん断ひずみの実験値および理論値を対比して示す。

【0059】
図11より、パス数を増加させるに伴いせん断ひずみが増加していることがわかる。さらに、ねじりによるせん断ひずみの実験値は理論値と比較し小さい。図10より、摩擦により試験片にくびれが生じているため、ねじりによるせん断変形が抑制されたと考えられる。

【0060】
なお、せん断ひずみγは、せん断ひずみの定義を用いておおよその値を算出した。
ただし,計算の簡略化のため非線形ねじり部14出口のねじり角θmaxが保持されると仮定し,下式(1)のように、そのねじり角θmaxからせん断ひずみγを求めた。

【0061】
【数1】
JP2018149547A_000005t.gif
なお、n=1のときは従来の線形ねじりであり,n<1のときは非線形ねじりである。そのため、非線形ねじりのせん断ひずみは従来の線形ねじりと比較し、n倍大きくなる。

【0062】
(実施例)
図12に示す、上記模擬金型1aと同じ形状をした材料押出経路11を有する金型1bとなるステンレス鋼(SKD11)製の割型2c、2bと、ステンレス鋼(SKD11)製のプランジャ4を用意した。なお、割型2c、2dは、材料押出経路形成部を切削加工する時のアンダーカットをなくすため、非線形ねじれ部14の形成部および断面形状回復部15の形成部にあたる部分の接合面がそれぞれ側面視波形になっている。
図13に示すように、割型2c、2dの接合面を密着させた状態で、上記模擬金型1aと同様に、2つの割型2c、2dをボルトナットで固定することによって金型1bを形成するとともに、金型1bを鋼板7,7で挟んだ状態で図示していない引張試験機AGS-10kNX(島津製作所製)に固定した。

【0063】
つぎに、押出し用の材料に直径9 mm長さ18-35 mmの工業用純度銅を、上記金型1bを用い、断面形状回復部15の出口から取り出せるまで,プランジャ4によって押出速度0.5-10 mm/minの範囲で,繰り返し押し出した。
なお、工業用純度銅には、押出前に、潤滑剤(協同油脂製フルトライボMG)を塗布した。

【0064】
上記加工前の工業用純度銅(以下、「0パス銅」と記す)、金型1bの材料断面変形部13の出口に達した工業用純度銅(以下、「0.4パス銅」と記す)、非線形ねじり部14の出口に達した工業用純度銅(以下、「0.6パス銅」と記す)、金型1bの材料加工経路11を1回通過した工業用純度銅(以下、「1パス銅」と記す)、金型1bの材料加工経路11を2回通過した工業用純度銅(以下、「2パス銅」と記す)、金型1bの材料加工経路11を4回通過した工業用純度銅(以下、「4パス銅」と記す)のそれぞれについて、以下のようにしてビッカース硬さをそれぞれ調べた。
なお、ビッカース硬さ試験は、各試験片を、断面が鏡面になるまで機械研磨を行ったのち、ビッカース硬さ試験機としてデジタルビッカース硬度計VMT-7(株式会社マツザワ製)を使用し、負荷荷重9.807 Nおよび保持時間15 sの試験条件で、各試験片の断面の長軸方向および短軸方向に中心から1 mm間隔で行った。

【0065】
図14に、0パス銅、0.4パス銅、0.6パス銅、および1パス銅の短軸および長軸方向におけるビッカース硬さの平均値を示した(図中、NTEは本実施例、以下同様)。
図14に示すように、0.4パス銅でビッカース硬さが約3倍増加し、その後のパスでは減少している。このことから、0.4パス銅は楕円変形の終了位置であるため、楕円変形がビッカース硬さに及ぼす影響が大きいと考えられる。

【0066】
また、図15に、0パス銅、0.4パス銅、0.6パス銅、および1パス銅の、中心からの距離を変化させた際の短軸方向におけるビッカース硬さを示した。
図15に示すように、0.4パス銅、0.6パス銅、および1パス銅は、いずれも短軸方向において、中心からの距離が小さくなるに伴いビッカース硬さが大きくなっている。

【0067】
また、解析ソフトDEFORM-2D/3D V11.0(ヤマナカゴーキン製)を用いて部分の相当塑性ひずみを解析したところ、0.4パス部分では、中心からの距離が小さくなるに伴い、相当塑性ひずみが大きくなることがわかった。
図15と、上記相当塑性ひずみの解析結果から、楕円変形における硬さの影響が大きく、相当塑性ひずみの導入量が中心からの距離が小さくなるに伴い大きくなるため、短軸方向において中心からの距離が小さくなるに伴いビッカース硬さが大きくなったと考えられる。

【0068】
図16に、0パス銅、0.4パス銅、0.6パス銅、および1パス銅の、中心からの距離を変化させた際の長軸方向におけるビッカース硬さを示した。
図16に示すように、長軸方向において1パスのみ中心から5 mmの位置でビッカース硬さが大きくなっている。これは、短軸方向と比較し、径の大きい長軸方向においてねじりによるせん断ひずみの影響が発生したためであると考えられる。

【0069】
図17に、本実施例における1パス後のビッカース硬さの平均値と、非特許文献9に記載のTE加工方法(以下、「比較例」と記す)を用いた場合の1パス後のビッカース硬さの平均値データを比較して示した。
図17に示すように、本実施例の場合、短軸方向も長軸方向も、比較例と同程度のビッカース硬さであった。

【0070】
なお、比較例で押出加工された銅材は、長方形で長軸(対角線)が、本実施例の楕円の長軸の2倍であった。
一方、上記式(1)より、半径が大きくなるに伴い、せん断ひずみが大きくなることがわかる。

【0071】
したがって、本実施例における非線形ねじり部14および断面形状回復部15の効果が径の差によるせん断ひずみの増加の効果と相殺し、比較例とほぼ同じビッカース硬さの平均値を示したと考えられる。
すなわち、長軸長さが同じ程度であれば、本実施例の金型1bを用いる方法の方が、非特許文献9に記載のTE方法に比べ、結晶を微細化することができると考えられる。

【0072】
図18に、本実施例の1パス銅の中心からの距離を変化させた際の短軸方向におけるビッカース硬さを、比較例としての非特許文献9のTE加工方法のデータを比較して示し、図19に、本実施例の1パス銅の中心からの距離を変化させた際の短軸方向におけるビッカース硬さを、比較例としての非特許文献9のTE加工方法のデータを比較して示した。
図18および図19より、比較例では中心からの距離が小さくなるに伴い、ビッカース硬さが小さくなっていることがわかる。
すなわち、その原因は、本実施例では、材料断面変形部13での楕円変形の影響が大きく、上記解析結果のとおり、中心の硬さが大きくなるため、中心からのビッカース硬さが比較例に対して逆傾向を示したと考えられる。

【0073】
図20に、本実施例の1パス銅、2パス銅、4パス銅のそれぞれの試験片について、その下面(押出方向先端面)におけるビッカース硬さの平均値を示し、図21に、上面(押出方向後端面)におけるビッカース硬さの平均値を示した。
図20より、下面においてパス数を増加させた際、ビッカース硬さの平均値はほぼ同じである。
これは、目視により試験片を確認したところ、試験片の下面付近においてねじりは小さかったため、パス数の増加により得られるせん断ひずみが小さかったことによるものであると考えられる。

【0074】
また、図21より、上面においてパス数を増加させた際、ビッカース硬さの平均値は大きくなり、4パスで最大の134HVとなる。
これは、目視により試験片を確認したところ、試験片の上面においてねじりが大きかったため、ねじりによるせん断ひずみが増加したことによるものであると考えられる。

【0075】
直径9 mmおよび長さ20 mmの円柱状の無酸素銅を組織の均一化のため873 Kおよび60 minにより熱処理を行い、EBSD(電子線後方散乱回折)測定に用いる結晶構造確認用銅材(以下、「確認用銅材」と記す)を作製した。
この確認用銅材を、上記金型1bを用い、断面形状回復部15の出口から取り出せるまで,プランジャ4によって押出速度10 mm/minで,繰り返し押し出した。

【0076】
そして、金型1bの材料加工経路11を1回通過した確認用銅材(以下、「1パスEBSD用銅」と記す)、金型1bの材料加工経路11を2回通過した確認用銅材(以下、「2パスEBSD用銅」と記す)、金型1bの材料加工経路11を1回通過した確認用銅材(以下、「4パスEBSD用銅」と記す)を得た。

【0077】
本実施例の加工前の上記確認用銅材(以下、「0パスEBSD用銅」と記す)および1パスEBSD用銅のそれぞれの微細組織をEBSD測定し、その結果を、非特許文献9(比較例)のEBSD測定結果と対比して図22に示した。
なお、上記EBSD測定は、鏡面になるまで機械研磨を行った後、走査型電子顕微鏡JSM-7001FD(日本電子製)および解析ソフトINCA Crystal(Oxford Instruments製)を用いて行った。また、平均結晶粒径は、解析ソフトINCA Crystalにより出力された結晶粒の平均面積を円に近似した場合の直径とした。

【0078】
図22より、結晶粒を比較すると、本実施例の1パスEBSD用銅は中心と比較し、周辺の結晶粒が大きいのに対し、比較例の1パス後は、中心と比較し、周辺の結晶粒が小さく、本実施例と逆傾向を示していることがわかる。

【0079】
これは、図15および上記解析結果より、本実施例の方法では、楕円変形の影響が大きく、中心のひずみが大きくなるためであると考えられる。
さらに、図18より、ビッカース硬さが大きくなるに伴い、結晶粒は小さくなるという相関関係があると分かる。

【0080】
上記1パスEBSD用銅および4パスEBSD用銅の上面(押出方向後端面)の、EBSD測定から算出した中心と周辺の平均結晶粒径を図23に、0パスEBSD用銅と対比して示した。
また、上記1パスEBSD用銅および4パスEBSD用銅の下面(押出方向先端面)の、EBSD測定から算出した中心と周辺の平均結晶粒径を図24に、0パスEBSD用銅と対比して示した。

【0081】
図23および図24に示すように、4パスEBSD用銅の上面および中心の平均結晶粒径は、それぞれ1パスEBSD用銅の下面および周辺と比較し小さい傾向にある。
すなわち、ビッカース硬さが大きくなるに伴い、平均結晶粒径は小さくなるという傾向があると分かる。
また、図23および図24に示すように、4パスEBSD用銅の最小の平均結晶粒径は、25.5 μmであった。

【0082】
したがって、平均結晶粒径はナノレベルではないが、圧力のかかる上面において平均結晶粒径は小さくなる傾向が大きいため、背圧を加えることが可能になれば、下面において、微細化を促進できると考えられる。
さらに、上面において、下面と同様に背圧により圧力が増加するため、微細化をさらに促進できると考えられる。

【0083】
すなわち、背圧を加えることにより、材料押出経路を通過する金属材料全体において微細化を促進できると考えられる。
したがって、背圧が金属材料に加わりやすい金型構造に変更するなどすれば、さらに効率よく微細化することが可能であると考えられる。
【符号の説明】
【0084】
1,1b、10 金型
1a 模擬金型
11、101 材料押出経路
12、110 材料装填部
13 材料断面変形部
14,120 非線形ねじり部
15 断面形状回復部
2a,2b 模擬割型
2c、2d 割型
3 治具
4,400 プランジャ
5 支え台
7 鋼板
600 金属材料
610 加工金属材料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23